説明

生化学試料を評価する装置

生化学試料(1)を評価する装置であって、試料支持体(2)、評価回路(10)に接続される感光層(3)を持つ画像検出装置、及び試料(1)用照明装置を有するものが記載される。簡単な構造条件を与えるため、試料支持体(2)上に設けられる画像検出装置の感光層(3)が、2つの電極薄膜(5,6)の間にある有機半導体に基く光活性薄膜(4)を含み、これらの電極薄膜のうち光活性薄膜(4)と試料(1)との間にある電極薄膜(6)が、少なくとも部分的に透明に構成されていることが、提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学試料を評価する装置であって、試料支持体、評価回路に接続される感光層を持つ画像検出装置、及び試料用照明装置を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
生体分子層と試薬との特定の反応の際色変化として認められる色吸収のスペクトル変化が生体分子層内に起こるか、又は光による励起によって適当にマークされる生体分子が例えば蛍光を発するという事情は、画像検出装置により、吸収特性のスペクトル変化又は蛍光の放射について、このような試料を検査するのに使用することができる。この目的のため、支持体上における試料の配置に相当するマトリクス配置の感光素子の層を画像検出装置に設けることが公知であり(ドイツ連邦共和国特許出願公開第10146902号明細書)、それにより、照らされる試料からレンズ装置を介して個々の感光素子により受光される光を、個々の試料に対応させて評価することができる。感光素子として、薄膜技術のフォトダイオード又はフォトトランジスタが使用され、その出力を個々に評価回路に読込むことができる。生体試料を評価するこの公知の装置の欠点は、とりわけ画像検出装置に伴う費用であり、この費用は、画像検出装置の構造に関係するだけでなく、試料支持体と画像検出装置との間のレンズ装置、及びレンズ装置又は画像検出装置に対する試料支持体の精確な整列にも関係している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って本発明の基礎になっている課題は、簡単な構造的手段により確実な試料評価を保証できるように、最初にあげた種類の生化学試料を評価する装置を構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、試料支持体上に設けられる画像検出装置の感光層が、2つの電極薄膜の間にある有機半導体に基く光活性薄膜を含み、これらの電極薄膜のうち光活性薄膜と試料との間にある電極薄膜が、少なくとも部分的に透明に構成されていることによって、与えられた課題を解決する。
【0005】
有機半導体に基く光活性薄膜を使用するため、従来の溶媒中における有機半導体の可溶性に基く比較的簡単な構造条件が生じる。これは次のことを意味している。即ち有機半導体に基く画像検出装置は無機半導体に基くフォトダイオード又はフォトトランジスタに比較して少ない費用で、生化学試料用支持体上に設けることができ、それにより、レンズ装置をなくすことができるという利点をもって、試料に対する感光層の直接対応が可能になる。これは、個別試料の検出に対して有効であるだけでなく、支持体上に設けられかつ試料配置に一致するマトリクス配置で感光素子を割当てられねばならない多数の試料の評価に対しても有効である。
【0006】
有機半導体に基く光活性薄膜の荷電粒子の可動性が無機半導体と比較して低いため、個々の感光範囲を互いに区画する特別な手段は必要でない。この目的のため、光活性薄膜用の両方の電極薄膜は、互いに交差する導体条片から構成すればよく、これらの導体条片が、交差範囲において、光活性薄膜に感光素子を区画する。なぜならば、比較的小さい電荷可動性のため、電荷移動はほぼ導体条片の交差範囲に限定され、光活性薄膜内における導体条片の隣接する交差範囲の間の電荷運動の影響は一般に無視できるからである。
【0007】
感光層は、試料支持体の試料から遠い方の側に設けるか、又は試料支持体と試料との間に設けることができる。両方の実施形態において、試料から来る光は、レンズ装置なしに直接光活性薄膜を介して検出可能である。しかし試料支持体の試料から遠い方の側にある光活性薄膜は、試料支持体が少なくとも一部透明であることを必要とする。
【0008】
試料と試薬との反応のため生じる光吸収のスペクトル変化が監視されると、光活性薄膜とは反対の側から試料を照らして、透過光従って光吸収を検出することができる。試料における光反射を利用すると、外部からのこのような試料照明は必要でない。光により励起される放射例えば蛍光放射による評価に対しても同じことが当てはまる。これらの場合反射に必要な光、又は適当にマークされる生体分子の放射の励起のために必要な光は、試料から遠い方にある感光層の側にある発光層から送られ、このため感光層は透明に構成され、それにより、光活性薄膜のために有機半導体を使用することに関して、困難は生じない。試料から遠い方にある感光層の側に発光層を設けると、装置が外部の照明条件とは無関係にされ、それにより使用可能性が拡大され、簡単な取扱いが保証される。
【0009】
発光層はエレクトロルミネセンスダイオードから薄膜技術で構成することができる。発光層が、有機半導体に基く光活性薄膜を、2つの電極薄膜の間に持ち、これらの電極薄膜のうち光活性薄膜と感光層との間にある電極薄膜が、少なくとも部分的に透明であると、特に有利な構造条件が生じる。それにより発光層に対して、特に発光層の光活性薄膜用の両方の電極薄膜が、互いに交差する導体条片を持ち、これらの導体条片が、交差範囲において、光活性薄膜に発光素子を区画している時、構造及び起動に関して、感光素子の層におけるのと同じような利点が役立つ。
【0010】
感光層及び発光層に対してそれぞれ1つの光活性薄膜が使用されると、両方の光活性薄膜の互いに向き合う側にある電極薄膜を絶縁層により互いに分離することができる。しかし感光層の光活性薄膜と発光層の光活性薄膜に対して、両方の層の間に共通な電極薄膜を設けることも可能であり、それにより構造が簡単化される。
【0011】
有機半導体に基く光活性薄膜は感光層としても発光層としても使用できるので、光活性薄膜の選ばれた範囲が、両方の電極薄膜の対応する導体条片を介して、発光のため電圧を印加されると、特別な発光層は必要でない。この発光範囲を介して、検出すべき試料に光を当てて、試料により反射される光又は送出される光により励起される放射を、発光範囲に隣接する感光範囲によって検出することができる。
【0012】
僅かな励起エネルギで高い光感度及び良好な発光効率に対する要求は、光活性薄膜の構造に関して一般に異なる手段を求める。このため発光素子の範囲にある光活性薄膜は、感光素子の範囲に対して異なる構造を持つことができる。光活性薄膜の感光範囲に対して、2つの分子成分、即ち電子供与体としての共役重合体成分及び受容体としてのフラーレン成分を使用することができ、一方発光素子に対しては共役重合体のみが使用される。電子受容体がないことにより、これらの重合体範囲に電圧を印加する際、光を発生することができる。
【0013】
感光素子の出力信号は、それぞれ起動される発光素子の場所的状態に関係して、評価回路へ読込み可能である。この場合発光素子の起動に関係して、試料を個々に又はグループ毎に評価することができ、それにより任意の順序で順次に起動される発光素子のために利用可能な励起エネルギが限定される。更に感光素子の出力信号は、発光素子の起動に時間的に関係して、評価回路へ読込み可能である。この手段により、蛍光放射を励起するため発生される光が、蛍光放射の測定を妨げないようにすることができる。
【0014】
図面には本発明の実施例が示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1によれば、評価すべき生化学試料1は、透明な試料支持体2上に、連続する薄膜の形で又は互いに分離した範囲で設けられている。試料1から遠い方にある透明な試料支持体2の側には、感光層3が設けられ、試料と試薬との適当な反応の際起こる光放射の吸収のスペクトル変化が、透過光の検出又は適当にマークされる生体分子の光により励起される蛍光放射により、求められる。図2からわかるように、感光層3を試料1と試料支持体2との間に設けることができるので、試料1は場合のよっては絶縁層を感光層3上に設けられる。この場合試料支持体2は透明に構成する必要がない。
【0016】
図3及び4によれば、感光層3は、互いに交差する導体条片7,8から成る2つの当接する電極薄膜5,6の間に、光活性薄膜4を持っている。光活性薄膜4は有機半導体に基いて構成されており、その電荷可動性は薄膜面に対して平行に比較的小さいので、導体条片7,8の交差範囲に、互いにほぼ分離された感光素子9が生じる。光活性薄膜4は異なるように構成できるが、光活性薄膜4が、2つの分子有機成分、即ち電子供与体としての共役重合体成分及び電子受容体としてのフラーレン成分から合成されていると、感光素子の構成に関して特に有利な状態が生じる。感光素子9は、図4にブロック回路図で示されているように、導体条片7,8を介して評価回路10に接続されている。層3の感光素子9の出力信号は、従って任意の順序で試料1を評価する評価回路10へ読込むことができる。試料1が受ける光放射は、試料1と光活性薄膜4との間の電極薄膜6を貫通せねばならないので、電極薄膜6は少なくとも部分的に透明に構成される。
【0017】
試料1の照明は、外部から、即ち感光層3から遠い方にある試料1の側から行うことができる。しかし図5、6及び7に示すように、試料1を照明するため、試料支持体2に付属する発光層11を設けると、有利な構造状態が生じる。図1による感光層3の配置から出発する図5の装置は、試料支持体2から遠い方にある感光層3の側に発光層11を持っている。これは、光活性薄膜4だけでなくこれに当接する電極薄膜5,6も少なくとも部分的に透明に構成されねばならないことを意味する。図6及び7による装置は、図2による感光層3の配置から出発しており、図6によれば、発光層11が試料支持体2と感光層3との間に設けられている。これとは異なり図3によれば、発光層11は、感光層3から遠い方にある試料支持体2の側に移され、この場合試料支持体2は少なくとも部分的に透明でなければならない。
【0018】
発光層11は、有利に感光層3に応じて、2つの電極薄膜13と14との間に、図8に示すように光活性薄膜12を持つことができる。これらの電極薄膜13及び14は再び互いに交差する導体条片15,16を含み、これらの導体条片の交差範囲に、個々に起動可能な発光素子17が生じる。個々の導体条片15及び16は、制御装置18を介して電圧を印加されて、感光素子の層3の光活性薄膜4及び場合によっては試料支持体2を貫通する光放射を送出するたまそれぞれ起動される素子17を励起し、それにより適当なマーク付けの際放射を送出するように試料1が励起され、この放射が層3の感光素子9により検出され、評価回路10において評価される。感光素子9の出力信号を読込むため、発光素子17の起動の場所的関係及び時間的関係が利用されて、試料1が受ける光のほかに更に層11の発生される光により生じる感光素子の基本負荷を考慮する測定を、このような測定が同様に可能であっても、避ける。
【0019】
有機半導体に基く光活性薄膜の構造のため、導体条片の交差範囲に生じるこのような光活性薄膜の範囲は、電圧印加に応じて発光素子としても感光素子としても役立つ。従って光活性薄膜4が導体条片7及び8の所定の交差範囲に発光素子17を形成する時、発光素子の別個の層11を設ける必要がない。図9には、付加的な発光素子17を持つこのような層3が示されている。この目的のため、感光素子9及び発光素子17用の光活性薄膜4は、異なる構造を持つことができる。発光素子17の範囲において、光活性薄膜4はなるべく1つの共役重合体のみから成り、一方残りの範囲にある光活性薄膜は、2つの分子有機成分、即ち電子供与体としての共役重合体成分及び電子受容体としてフラーレン成分から成っている。図9には素子9及び17用のこれらの異なる範囲が示され、感光素子9は導体条片7,8を介して評価回路10に接続され、発光素子17は、発光素子17の範囲で互いに交差する導体条片7,8に接続されている制御装置18を介して起動される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】 生化学試料を評価する本発明による装置を簡単化した断面図で示す。
【図2】 本発明による装置の構造変化例の図1に対応する図を示す。
【図3】 感光素子の層の基本構造を断面図で示す。
【図4】 図3による感光素子の層を一部切開いた平面図で示す。
【図5】 感光素子の層のほかに発光素子の層を持つ本発明による装置の別の実施例を示す。
【図6】 図5に相当する装置の変形実施例を示す。
【図7】 図5に相当する装置の変形実施例を示す。
【図8】 発光素子の層を一部切開いた平面図で示す。
【図9】 感光素子及び発光素子を形成する光活性薄膜を一部切開いた平面図で示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生化学試料を評価する装置であって、試料支持体、評価回路に接続される感光層を持つ画像検出装置、及び試料用照明装置を有するものにおいて、試料支持体(2)上に設けられる画像検出装置の感光層(3)が、2つの電極薄膜(5,6)の間にある有機半導体に基く光活性薄膜(4)を含み、これらの電極薄膜のうち光活性薄膜(4)と試料(1)との間にある電極薄膜(6)が、少なくとも部分的に透明に構成されていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
光活性薄膜(4)用の両方の電極薄膜(5,6)が、互いに交差する導体条片(7,8)から構成され、これらの導体条片(7,8)が、交差範囲において、光活性薄膜(4)に感光素子(9)を区画していることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
感光層(3)が、少なくとも部分的に透明な試料支持体(2)の試料(1)から遠い方の側に設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
感光層(3)が試料支持体(2)と試料(1)との間に設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
照明装置が、少なくとも部分的に透明に構成される感光層(3)の試料(1)から遠い方の側に、発光層(11)を持っていることを特徴とする、請求項1〜4の1つに記載の装置。
【請求項6】
発光層(11)が、有機半導体に基く光活性薄膜(12)を、2つの電極薄膜(13,14)の間に持ち、これらの電極薄膜のうち光活性薄膜(12)と感光層(3)との間にある電極薄膜(14)が、少なくとも部分的に透明であることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
発光層(11)の光活性薄膜(12)用の両方の電極薄膜(13,14)が、互いに交差する導体条片(15,16)を持ち、これらの導体条片(15,16)が、交差範囲において、光活性薄膜(12)に発光素子(17)を区画していることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
感光層(3)の光活性薄膜(4)と発光層(11)の光活性薄膜(12)が、それらの間に共通な電極薄膜を持っていることを特徴とする、請求項1〜5及び請求項6又は7の1つに記載の装置。
【請求項9】
光活性薄膜(4)が、感光素子(9)の横で、両方の電極薄膜(5,6)の導体条片(7,8)の選ばれた交差範囲に、発光素子(17)を形成していることを特徴とする、請求項2〜4の1つに記載の装置。
【請求項10】
光活性薄膜(4)が、発光素子(17)の範囲に、感光素子(9)の範囲に対して異なる構造を持っていることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
感光素子(9)の出力信号が、それぞれ起動される発光素子(17)の場所的状態に関係して、評価回路(10)へ読込み可能であることを特徴とする、請求項5〜10の1つに記載の装置。
【請求項12】
感光素子(9)の出力信号が、発光素子(17)の起動に時間的に関係して、評価回路(10)へ読込み可能であることを特徴とする、請求項5〜11の1つに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−512691(P2008−512691A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533819(P2007−533819)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【国際出願番号】PCT/AT2005/000338
【国際公開番号】WO2006/026796
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(507108519)ナノイデント・テヒノロギース・アクチエンゲゼルシヤフト (3)
【Fターム(参考)】