説明

生地状の被処理物の処理装置および処理方法

【課題】 ランニングコストの上昇を抑えたうえで被処理物の処理性を向上させることのできる処理装置および処理方法の提供。
【解決手段】 生地状の被処理物を入れる回転ドラムを横軸回りに回転または揺動させ、該回転ドラム内の処理液に被処理物を接触させて該被処理物を処理する処理装置であって、回転ドラムの回転または揺動時に、回転ドラム内の処理液にその下側から流体を噴出させる噴出口部が設けられている構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維、合成皮革、綿、レーヨン、セルローズ系繊維およびセルローズ系繊維を含む混紡品等の生地状の被処理物に、染色等の処理を施すための処理装置および処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の処理装置として、例えば下記特許文献1に示すものが提案されている。
この処理装置は、横軸回りに回転可能な回転ドラムを有した構成であり、回転ドラム内に被処理物を入れ、回転ドラム内に処理液を入れた状態で回転ドラムを横軸回りに回転させて、回転ドラムの回転途中で生地状の被処理物を落下させ(崩れさせ)、その衝撃で被処理物に染色加工等の処理を施すといった処理方法が行われる。
このような処理の際には、被処理物を落下させて被処理物に染色加工等の処理を施すと被処理物が傷みやすいから、回転ドラムをできるだけ低回転とすることが好ましい。
【特許文献1】特開2001−55662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、回転ドラムを低回転とすると、処理液あるいは処理液中の被処理物の撹拌性が低下し易く、また、被処理物へ付与する揉み動作性の低下が懸念され、染色等の加工性の低下が考えられる。
そこで、回転ドラムを低回転させるのではなく、処理液の量を増加させる(高浴比とする)ことで、被処理物へ付与する揉み動作性の低下による染色等の加工性の低下を解消することが考えられる。しかしながら、処理液の量を増加させると、その分だけ処理液の昇温のためのエネルギーを多く必要とする等のランニングコストが高くなる。
【0004】
そこで本発明は、上記従来の問題に鑑み、ランニングコストの上昇を抑えたうえで被処理物の処理性を向上させることのできる処理装置および処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、生地状の被処理物を入れる回転ドラムを横軸回りに回転または揺動させ、該回転ドラム内の処理液に被処理物を接触させて該被処理物を処理する処理装置であって、前記回転ドラムの回転または揺動時に、回転ドラム内の処理液にその下側から流体を噴出させる噴出口部が設けられていることを特徴としている。
【0006】
上記構成によれば、回転ドラム内に被処理物を入れ、回転ドラムの回転または揺動時に噴出口部から流体を噴出させることで、回転ドラム内の処理液が効率よく撹拌されるから、被処理物の量と処理液の量との比である浴比を低くした(低浴比とした)状態であっても、処理液が被処理物に均一に接触し易くなる。
被処理物は、合成繊維、合成皮革、綿、レーヨン、セルローズ系繊維およびセルローズ系繊維を含む混紡品等の生地状物(薄状体)であって、これを加工処理する場合に、流体によって処理液が撹拌されることで生地状物の皺部分を含めて全体に均一的に処理液が接触する状態をつくり易くなり、噴出口部から流体が噴出されてこれが処理液に浸漬された生地状物に当てられることで、処理液中で被処理物自体が撹拌されて、生地状物に発生する皺発生部分の位置が変化に富んで、被処理物全体の加工処理が均一になる。
流体としては、被処理物の処理に応じて、処理液そのものである場合、空気等の気体の場合、蒸気である場合等がある。
また、回転ドラムとして、その内部を隔壁により複数の部屋に仕切ったタイプ、回転ドラムの周壁内周面に、該回転ドラムの回転または揺動の際に被処理物を係止するための係止リブが設けられたタイプを含む。さらに回転ドラムは円筒状に限らず角筒状のものも含む。
【0007】
本発明の処理装置では、回転ドラムは槽体に内装され、回転ドラムの周壁面に処理液を通過させ得る孔部が形成され、噴出口部は、その流体噴出端を回転ドラムの横軸の軸線方向における孔部に対応する位置で回転ドラムの周壁面の外側から流体を回転ドラムの中心へ向けて噴出させるよう配置されていることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、槽体内で横軸回りに回転または揺動している回転ドラムの周壁面の孔部から回転ドラム内に向けて、噴出口部の噴出端から流体が噴出される。
【0009】
本発明の処理装置では、孔部が回転ドラムの周壁面の周方向同一面内に離間して複数形成されることで回転ドラムの周壁面に孔部群が設けられたことを特徴としている。
【0010】
上記構成によれば、回転ドラムの横軸回りの回転または揺動に伴って、孔部群が噴出口部の噴出端に対応するよう位置した際には流体が回転ドラム内に噴出され、孔部群が噴出口部の噴出端に対応するよう位置から外れた際には、流体が直接的には回転ドラム内に噴出されなくなるように、流体が間欠的に回転ドラム内に噴出されるから、被処理物の量と処理液の量との比である浴比を低くしたとしても、回転ドラム内の処理液に周期的流動(脈動)が発生して、被処理物に対する揉み性、すなわち被処理物全体を均一に揉む度合が良好となる。
【0011】
本発明の処理装置では、孔部群が回転ドラムの横軸の軸線方向に離間して複数設けられ、噴出口部は横軸の軸線方向における孔部群に対応する位置にそれぞれ設けられていることを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、回転ドラムの横軸回りの回転または揺動に伴って、回転ドラム内の複数箇所において処理液の脈動が発生するから、被処理物に対する揉み性がいっそう向上する。
【0013】
本発明の処理装置では、噴出口部の流体噴出端は、回転ドラムの中心の垂直方向下方から回転ドラムの周方向に80°の範囲内に配置されていることを特徴としている。
【0014】
処理液の下方から流体を噴出する際には、噴出口部に対して処理液の液面が低いほうが噴出された流体のエネルギーが拡散されにくい。したがって、噴出口部の流体噴出端を上記の位置に設定することにより、低浴比を確保した状態で処理液および処理液中で被処理物の撹拌が充分に行える。
よって、流体は処理液中において被処理物に移動力を付与でき処理液を充分に撹拌し得る吐出力(吐出エネルギー)を有することが必要である。この吐出力は、回転ドラム内の処理液の量に応じ、少なくとも流体が処理液の液面に到達することが好ましい。
被処理物を下方から突上げるようにして揉むように構成した場合では、噴出口部の流体噴出端を回転ドラムの中心の垂直方向下方から回転ドラムの周方向に80°の範囲内に配置して回転ドラム内に流体を噴出することが、低浴比とした上での処理液の撹拌性、処理液中での被処理物の撹拌性に優れることがわかった。
【0015】
本発明の生地状の被処理物の処理方法は、処理液および被処理物を回転ドラムに入れた状態で該回転ドラムを横軸回りに回転動作または揺動動作させ、該動作中に、回転ドラム内の処理液に、その下側から該処理液を撹拌し得る流体を噴出させることを特徴としている。
【0016】
上記方法によれば、流体の噴出によって回転ドラム内の処理液が撹拌され、また流体が被処理物に当たって被処理物自体に動作が与えられるから、少ない量の処理液であっても被処理物の処理が均一になって、被処理物の処理性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の処理装置によれば、回転ドラムの回転または揺動時に噴出口部から流体を噴出させることで、回転ドラム内の処理液を効率よく撹拌することができるから、被処理物の量と処理液の量との比である浴比を低くした(低浴比とした)状態、すなわちランニングコストの上昇を抑えた上で、処理液を被処理物に均一に接触させることができ、被処理物は、合成繊維、合成皮革、綿、レーヨン、セルローズ系繊維およびセルローズ系繊維を含む混紡品等の生地状物(薄状体)であって、これを加工処理する場合に、流体によって処理液が撹拌されることで生地状物の皺部分を含めて全体に均一的に処理液が接触する状態をつくり易くなり、噴出口部から流体が噴出されてこれが処理液に浸漬された生地状物に当てられることで、処理液中で被処理物自体が撹拌されて、生地状物に発生する皺発生部分の位置が変化に富んで、被処理物全体の加工処理を均一に行うことができ、被処理物の処理性を向上させることができる。
【0018】
本発明の処理方法によれば、流体の噴出によって回転ドラム内の処理液が撹拌され、また流体が被処理物に当たって被処理物自体に動作が与えられるから、少ない量の処理液であっても被処理物の処理が均一になって、被処理物の処理性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る処理装置を、染色装置を例にして説明する。
図1は本発明の実施形態の処理装置の全体構成を示す正面図、図2は要部拡大正面図、図3は図2のD−D方向からの矢視図で、要部拡大側面図である。
【0020】
この処理装置1によって染色処理される対象物として、合成繊維、合成皮革、綿、レーヨン、セルローズ系繊維およびセルローズ系繊維を含む混紡品等の生地状物が挙げられる。
図1に示すように、処理装置1は、筐状の装置本体2を有する。装置本体2は前面壁3の側部に装置を駆動・停止操作するための操作パネル4を有する。装置本体2の内部には、略円筒状の染色槽5が固定されている。この染色槽5は、その前側壁5aの中心側一部に円形の開口6が形成され、開口周面に円筒状の第一入出口用部材7が前方および後方に突出するよう挿通・嵌着されている。
【0021】
第一入出口用部材7の前部には、該第一入出口用部材7をその前面で開閉する扉部材8が、縦方向のヒンジ部材を介して取付けられている。この扉部材8は、装置本体2の前面壁3の上下・左右方向途中に形成された開口3aの位置に横方向で略合致するよう配置され、開口3aは扉部材8の開閉に支障がない大きさに形成されている。染色槽5の後側壁11の中心部には横軸体13の軸方向途中部分が挿通されている。
【0022】
染色槽5はその後側壁11が、装置本体2に支持手段14を介して取付けられている。
また、装置本体2内に、染色槽5内の圧力を調節するためのバルブ機構(「バルブヘッダ」とも呼ばれる)46が設けられている。
【0023】
染色槽5には、染色槽5の径に対して所定の径だけ小さく、染色槽5と同心の回転ドラム15が、横軸16(水平軸線)回りに回転自在に内装配置されている。この横軸16は横軸体13の軸心である。
回転ドラム15は略円筒状に形成され、装置本体2の前面壁3側に前側壁5aを有し、その中心側一部が前方に突出されて第二入出用口部材17が形成されている。この第二入出用口部材17は、染色槽5の第一入出口用部材7と同心であり、第二入出用口部材17の先端部分は、第一入出口用部材7に径方向の隙間を介して横軸16方向途中まで内装されている。
【0024】
回転ドラム15は染色槽5の後側壁11に横軸16方向で対向する後側壁12を有し、後側壁12には横軸体13の先端部分13aが挿通固定されている。すなわち回転ドラム15は、横軸体13に片持支持された状態で横軸体13の軸心回りに回転可能となっている。
なお、横軸体13は支持手段14に、横軸16方向に離間した一対の軸受装置18を介して軸心回りに回転自在に設けられている。横軸体13の後端部に、駆動モータ20のモータ軸受け20aが同心に連結されている。
【0025】
回転ドラム15の周壁22はパンチングメタルによって形成されている。すなわち、周壁22には多数の同径のパンチング孔23が周方向および横軸方向に整然と並ぶよう形成されており(図では一部のみ表している)、これによって、回転ドラム15内と染色槽5内とで処理液24が行き来できるようになっている。また、横軸16方向に離間した列毎の、周方向に離間して形成された複数のパンチング孔23が孔部群25として構成されている。
回転ドラム15の周壁22の内周面には断面三角形状の係止リブ19が取付けられている。この場合、係止リブ19は周壁22の内周面に、例えば周方向90°置きに配置されており、各係止リブ19は、略回転ドラム15の横軸16に沿う方向の長さに渡って延長されている。
【0026】
前述したように、染色槽5には、染色槽5の径に対して所定の径だけ小さい回転ドラム15が内装されており、したがって染色槽5の周壁21内周面と回転ドラム15回転ドラム15の周壁22の外周面との間には、径方向の隙間Bを有している。この隙間Bは、後述する噴出ノズル30A,30Bの先端部分を挿入できる径方向幅に設定されている。
【0027】
この実施形態における処理装置1は、回転ドラム15内にある処理液24を撹拌させ、しかも被処理物26に移動力(撹拌力)を付与するよう流体27を噴出させる流体噴出装置28を有する。なお、この場合の流体27としては、処理液24としての染色用液である。要するに、処理液24を流体27として循環させている。
【0028】
流体噴出装置28は、噴出口部としての前記噴出ノズル30A,30Bと流体27の循環経路31とを有する。
噴出ノズル30A,30Bのノズル本体34は、染色槽5の周壁21に挿通固定されている。噴出ノズル30A,30Bの先端部分は円錐台形状に形成されて、前記隙間Bに挿入されている。噴出ノズル30A,30Bは、その先端部分にある流体噴出端32から、回転ドラム15内の処理液24に対して下方から回転ドラム15の回転中心に向けて流体27が所定の速度・流量で噴出されるよう構成されており、このため噴出ノズル30A,30Bは、その流体噴出端32が回転ドラム15における所定の孔部群25との同一断面内(横軸16に直交する断面内)にあるように設けられている。なお、流体噴出端32は、回転ドラム15の周壁22の外周面にわずかな隙間を介して対向している。
【0029】
噴出ノズル30A,30B(流体噴出端32)の回転ドラム15に対する周方向位置について述べると、処理装置1を正面視して、回転ドラム15の周壁22の外周面の直下位置Pを含んで、該直下位置Pから周方向上方に所定角度θ、この場合は80°の範囲内に配置されている。
図の場合では、噴出ノズル30A,30Bは、周壁22の外周面の直下位置Pにはなく、直下位置Pから周方向80°の範囲内の反対位置で、左右一対で配置されている。また周方向には左右同一位置で、横軸16方向に離間して一対で設けられている。
【0030】
循環経路31は、染色槽5の内部空間35と、回転ドラム15の内部空間36と、染色槽5の周壁21の下部に形成された循環用孔37と、ポンプ33を途中に有して循環用孔37と噴出ノズル30A,30Bを接続する循環用管路38とから構成されている。
循環用管路38の接続管29の一端部は循環用孔37に接続され、接続管29の他端部は噴出ノズル30A,30B側に接続され、接続管29の途中に前記ポンプ33が接続され、接続管29においてポンプ33の上流側に、接続管29に流体27を供給するための供給口29aが接続され、供給口29aには流体27の接続管29への供給を制御するバルブ機構(符号省略)が接続されている。
循環用管路38と噴出ノズル30A,30Bとは、シール性を確保した継手40を介して接続されている。
なお、図3において符号45は、処理液24の排水用口部を示している。
【0031】
上記構成の処理装置1における被処理物26の染色方法について、まず概略を説明する。
回転ドラム15内の処理液24に下方から流体27を噴出させて、処理液24(流体27)を撹拌するとともに、被処理物26自体を流体27の噴出力(噴出エネルギー)によって移動(撹拌)させ、しかも回転ドラム15を回転させつつその回転途中で被処理物26を回転ドラム15内で落下させることで被処理物26自体に回転揉み動作を付与する。これによって、被処理部26を均等に染色することができるようにしている。
【0032】
さらに具体的に説明すると、ヒンジ部材回りに扉部材8を開け、被処理物26を第一入出口用部材7、第二入出口用部材17から回転ドラム15内に投入して扉部材8を閉じる。被処理物26の種類や量等の被処理物26に関する情報を、操作パネル4を操作して入力し、装置を駆動すると、被処理物26の情報に応じて被処理物26が浸漬される程度の量の処理液24が、供給管路構造29の供給口29aから染色槽5内に供給される。
処理液24は直接的には染色槽5内に供給されるが、回転ドラム15の周壁22にはパンチング孔23が多数形成されているから、染色槽5内に供給された処理液24はパンチング孔23を通って回転ドラム15内にも侵入し、染色槽5内の処理液24と回転ドラム15内の処理液24が同一レベルになり、被処理物26が処理液24に浸漬される。
【0033】
続いて駆動モータ20が駆動して、横軸体13とともに回転ドラム15が染色に応じた速度で横軸16回りに回転を開始する。回転ドラム15の回転速度は、一例として、回転ドラム15の径が1400mmの場合には6〜7rpmが好ましく、最大でも9rpmである。また、回転ドラム15の径が700mmの場合では15rpmとするのが好ましい。なお、回転ドラム15の回転方向は、図3において反時計方向である。
【0034】
被処理物26は、回転ドラム15が回転すると、係止リブ19に係止されつつ上方へ移動し、被処理物26は回転ドラム15の回転途中で回転ドラム15内に落下することで、ある程度の衝撃が付与される。一旦落下した被処理物26は回転ドラム15の回転によって再び上方へ移動して落下し、ある程度の衝撃を付与されながら処理液24に浸漬される。回転ドラム15が回転している間は、被処理物26は上記動作を繰返しながら、染色される。
【0035】
一方で、回転ドラム15の回転とは別動作として、ポンプ33の駆動によって処理液24が循環経路31を循環している。すなわち、ポンプ33の駆動によって、噴出ノズル30A,30Bの流体噴出端(噴出口)32から所定の速度・流量で流体27(この場合、処理液24と同等)が噴出している。
そして、噴出ノズル30A,30Bは、その先端部分にある流体噴出端32から、回転ドラム15内の処理液24に対して下方から回転ドラム15の回転中心に向けて流体27が噴出されるよう構成されている。また、噴出ノズル30A,30Bは、その流体噴出端32が回転ドラム15における所定の孔部群25との同一断面内にあるように設けられており、回転ドラム15の周壁22の孔部群25は、周方向に離間したパンチング孔23によってなるから、回転ドラム15の回転中において、流体噴出端32がパンチング孔23に対向した状態では、流体27は直接的に回転ドラム15内に噴出されて回転ドラム15内の処理液24を撹拌させるとともに、被処理物26に向けて流体27が噴出されることでその噴出エネルギーによって被処理物26に移動力を付与して被処理物26の皺発生部分の位置が効果的に変更され、また、揉み動作が行われる。
【0036】
回転ドラム15が回転して、流体噴出端32がパンチング孔23間に対向した状態では、流体27は直接的に回転ドラム15内に噴出されず、回転ドラム15の回転によって、流体噴出端32がパンチング孔23に対向した状態となると、流体27は直接的に回転ドラム15内に噴出される、といった動作を繰返す。
換言すれば、回転ドラム15の回転中に、流体27が回転ドラム15内に噴出されたり、噴出されなかったりする動作を繰返す。これによって、回転ドラム15内の処理液24に周期的流動(脈動)が発生して、被処理物26に対する揉み性、すなわち被処理物全体を均一に揉む度合が良好となる。
また、この実施形態では、さらに均一な染色性を得るために、回転ドラム15を一方向である反時計方向に継続して回転させた後に、他方向である時計方向に回転を継続させる。
【0037】
噴出ノズル30A,30Bは、直下位置Pから周方向80°の範囲内で、左右一対で配置しており、両側の噴出ノズル30A,30Bから流体27を噴出しているが、回転ドラム15が反時計方向に回転すると、処理液24の液面24aを均せば右上がり、すなわち直下位置Pからして回転ドラム15の回転方向側が上がる。よって左右の噴出ノズル30A,30Bから噴出される流体27が処理液24、被処理物26に与える撹拌性は異なることが考えられる。しかしながら、少なくとも右側列の噴出ノズル30Aからの流体27が、処理液24に対してその下側から噴出されてしかも処理液24および処理液24中での被処理物26の撹拌性を確保できれば、均一な染色性の実現を担保することができる。
【0038】
このような作用効果は、回転ドラム15を時計方向に回転させた場合では、左右の噴出ノズル30A,30Bでその機能が反対になり、左側列の噴出ノズル30Bからの流体27が、処理液24に対してその下側から噴出されてしかも処理液24および処理液24中での被処理物26の撹拌性を確保できれば、均一な染色性の実現を担保することができる。
【0039】
上記のように、本発明の実施形態によれば、回転ドラム15の回転に伴う動作と、流体27の噴出に伴う動作の双方で被処理物26を染色するから、被処理物26の染色の均一性を向上させることができる。
さらに、回転ドラム15の回転に伴う動作と、流体27の噴出に伴う動作の双方で被処理物26を染色するから、被処理物26の量と処理液24の量との比である浴比を低くする(低浴比とする)ことができ、ランニングコストを低下させることができる。
【0040】
素材によっては、高浴比での処理を必要とする被処理物26も存在するが、流体27は処理液24の下側から上方へ向けて噴出されるので、処理液24の上側から流体27を噴出する場合に比べて処理液24の撹拌性が良好であり、したがって比較的高浴比での処理を必要とする被処理物26を扱う場合であっても、従来に比べて低浴比としたうえで染色することができる。
さらに、従来に比べて低浴比とすることで、処理液24を必要な温度にまで上昇させ維持するための熱エネルギーを少なくさせることができ、この点においてもランニングコストを低下させることができる。
【0041】
また、回転ドラム15の回転に伴う動作と、流体27の噴出に伴う動作の双方で被処理物26を染色するから、回転ドラム15の回転速度をこれまでに比べて落としても、被処理物26の染色の均一性を向上させることができ、したがって、回転ドラム15の回転速度を落とすことで、その分だけ被処理物26に与える衝撃(ダメージ)を小さくすることができる。
特に、係止リブ19を設けたタイプの回転ドラム15では、係止リブ19を設けている分だけ被処理物26に与える衝撃が大きくなり、染色動作中の該衝撃による被処理物26の傷みを抑える必要があるといった点についても、回転ドラム15の回転速度を落とすことでこのような懸念を解消することが可能になる。
【0042】
噴出ノズル30A,30Bの流体噴出端32の位置は、その所定角度θが上記の範囲であれば特に限定される必要はないが、所定角度θは、扱う被処理物26の材質、処理液24の量、回転ドラム15の回転速度等の条件を考慮して、最も撹拌効率のよい(均一な染色ができる)位置に設定することが好ましく、また流体27の噴出速度、噴出流量も同様である。
【0043】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の範囲内で多くの構成変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、噴出ノズル30A,30Bは、回転ドラム15の周壁22の外周面の直下位置Pから周方向上方に所定角度θの範囲内に左右一対、横軸16方向で一対配置している。しかし、これに加えて、周壁22の外周面の直下位置Pにも配置して、回転ドラム15内に流体27を噴出するよう構成することもできる。この場合では、回転ドラム15が反時計方向に回転している時は、直下位置Pの噴出ノズル(図示せず)と右側列の噴出ノズル30Aとからの流体27の噴出により、処理液24および処理液24中で被処理物26を充分に撹拌し、回転ドラム15が時計方向に回転しているときは直下位置Pの噴出ノズルと左側列の噴出ノズル30Bとからの流体27の噴出で処理液24および処理液24中で被処理物26を充分に撹拌するよう構成することができる。
【0044】
このように三列あるいはそれ以上の数の列の噴出ノズルを設けることができ、しかもその噴出ノズルの設置位置は、横軸16方向に離間した噴出ノズルどうしで、直下位置Pに対して周方向に対称ではなく、周方向に非対称(異なる角度)で配置することも可能である。
さらに、例えば回転ドラム15を反時計方向に回転させる場合には右側列の噴出ノズル30Aのみから流体27を噴出させるよう構成し、回転ドラム15を時計方向に回転させる場合には左側列の噴出ノズル30Bから流体27を噴出させるよう構成するなど、回転ドラム15の回転方向に応じて用いる噴出ノズルを適宜選択するよう、循環経路31を含めて構成を変更し、制御することができる。
【0045】
上記実施形態では、回転ドラム15の周壁22には多数の同径のパンチング孔23を周方向および横軸方向に整然と並ぶよう形成した場合を示したが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、例えば噴出ノズル30A,30Bに対向する孔を長孔にして、この長孔を回転ドラム15の周壁22に周方向の間隔を置いて形成するようにしてもよい。この場合では、孔を周方向に長くした分だけ、回転ドラム15内への流体27の直接的な噴出時間が長くなり、しかも脈動を確保することができるので、撹拌性をさらに向上させることが可能になる。
【0046】
上記実施形態では、回転ドラム15は反時計方向の回転、または時計方向の回転を選択して染色処理を行ったが、これに限定されない。すなわち、例えば回転ドラム15を横軸16回りに所定角度で揺動を繰返すよう制御することで染色処理するよう駆動モータ20を制御することも可能である。この場合、パンチング孔23あるいは長孔を、必ずしも周壁22の全面に形成する必要はなく、揺動させる角度に応じた領域にのみ形成すればよい。
噴出ノズルの流体噴出端32は円形に開口される構成に限定されず、回転ドラム15の周壁22の周方向に沿ってある程度の長さを有していてもよく、例えば周壁22に上記のようなパンチング孔23を形成した場合では、流体噴出端32の長さに応じて、対向するパンチング孔23から回転ドラム15内に流体27を噴出させて、処理液24に脈動を発生させることが可能となる。
【0047】
さらに、上記実施形態では、噴出ノズル30A,30Bを染色槽5の周壁21に固定したが、これに限定されない。
すなわち、例えば図4の拡大正面図に示すように、ノズル本体34(噴出ノズル30A,30Bの先端部分)を、その流体噴出端32が回転ドラム15内に開放するように周壁22に固定してもよい。この場合、ポンプ33から圧送されてくる流体27をノズル本体34側に供給できるよう、径方向の隙間B内で、所定の長さを有するフレキシブルな接続管50によって、ノズル本体34とポンプ33側とを接続する。
このようにすることによって、回転ドラム15を揺動するとその動作に伴って接続管50が回転ドラム15を揺動に支障なく伸縮し、処理液24を回転ドラム15に直接供給する手段を設け、パンチング孔23等を省略すれば処理液24は径方向の隙間Bには至らないから、染色槽5を省略することも可能となり、その分だけ処理液24の使用量を減らすことが可能となり、しかも被処理物26を均一に染色処理することができる。
【0048】
上記各実施形態は、被処理物26を染色処理する場合で説明したが、本発明の処理装置1は、被処理物26の染色限定されることなく、処理液24を水とした染色後の染色定着処理や、処理液24を、洗剤を投入した洗濯水として被処理物26を洗濯することもできる。
また、流体27としては液体に限定されず、水蒸気や、空気、ガス等であってもよく、染色処理であれば、噴出ノズルから空気を噴出させることでも処理液24、処理液24中で被処理物26の撹拌ができ、均一な染色性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態の処理装置の全体構成を示す正面図
【図2】同じく要部拡大正面図
【図3】同じく要部拡大側面図
【図4】他の実施形態を示す処理装置の要部拡大正面図
【符号の説明】
【0050】
1…処理装置、2…装置本体、3…前面壁、3a…開口、5…染色槽、6…開口、8…扉部材、13…横軸体、15…回転ドラム、16…横軸、18…軸受装置、19…係止リブ、20…駆動モータ、21,22…周壁、23…パンチング孔、24…処理液、24a…液面、25…孔部群、26…被処理物、27…流体、28…流体噴出装置、29…接続管、29a…供給口、30A,30B…噴出ノズル、31…循環経路、32…流体噴出端、33…ポンプ、34…ノズル本体、35,36…内部空間、37…循環用孔、38…循環用管路、50…接続管、P…直下位置、θ…所定角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地状の被処理物を入れる回転ドラムを横軸回りに回転または揺動させ、該回転ドラム内の処理液に被処理物を接触させて該被処理物を処理する処理装置であって、
前記回転ドラムの回転または揺動時に、回転ドラム内の処理液にその下側から流体を噴出させる噴出口部が設けられていることを特徴とする生地状の被処理物の処理装置。
【請求項2】
回転ドラムは槽体に内装され、回転ドラムの周壁面に処理液を通過させ得る孔部が形成され、噴出口部は、その流体噴出端を回転ドラムの横軸の軸線方向における孔部に対応する位置で回転ドラムの周壁面の外側から流体を回転ドラムの中心へ向けて噴出させるよう配置されていることを特徴とする請求項1記載の生地状の被処理物の処理装置。
【請求項3】
孔部が回転ドラムの周壁面の周方向同一面内に離間して複数形成されることで回転ドラムの周壁面に孔部群が設けられたことを特徴とする請求項2記載の生地状の被処理物の処理装置。
【請求項4】
孔部群が回転ドラムの横軸の軸線方向に離間して複数設けられ、噴出口部は横軸の軸線方向における孔部群に対応する位置にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項3記載の生地状の被処理物の処理装置。
【請求項5】
噴出口部の流体噴出端は、回転ドラムの中心の垂直方向下方から回転ドラムの周方向に80°の範囲内に配置されていることを特徴とする請求項2ないし請求項4の何れかに記載の生地状の被処理物の処理装置。
【請求項6】
処理液および被処理物を回転ドラムに入れた状態で該回転ドラムを横軸回りに回転動作または揺動動作させ、該動作中に、回転ドラム内の処理液に、その下側から該処理液を撹拌し得る流体を噴出させることを特徴とする生地状の被処理物の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−24591(P2010−24591A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189592(P2008−189592)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000152480)株式会社日阪製作所 (60)
【Fターム(参考)】