説明

生態系配慮型水路構造及びそれに用いるコンクリート製の水路ブロックとコンクリート製の水路構築ブロック

【課題】 水路の通水能力を良好に発揮させつつ、水路周辺部で水生植物を繁茂させて水生動物等の生息空間を形成する。又、水生植物の刈り取り労力を軽減して水路維持管理の容易化を達成する。
【解決手段】 三面張の水路3において、水路底部5の側部分に底部開口9を貫設する。底部開口9は、水路の延長方向に約40cmの間隔で配置する。底部開口9は水生植物の繁茂部となる。水路の底面10の面積に対する全ての底部開口9の合計面積の割合は約15%に設定する。水路側壁部6には、底部開口9に対応させてその上側に位置する如く側壁開口11を貫設し、該側壁開口11の裏面側は栗石充填部12で塞ぐ。側壁開口11の下端は、水路の最低水位以下に設定すると共に、側壁開口11の上端は、水路の最大水位に略合致させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生態系配慮型水路構造及びそれに用いるコンクリート製の水路ブロックとコンクリート製の水路構築ブロックに関するものである。より詳しくは、河川や農業用水路等の水路において、水路としての通水機能が有効に発揮されると共に、魚類や水生昆虫等の水生動物、水草等の水生植物の生息・生育を促進し得る等の生態系に配慮されており、然も、水生植物の刈り取り労力を低減し得る等の水路維持管理の容易化が達成される生態系配慮型水路構造に関するものである。又該水路構造に用いるコンクリート製の水路ブロックとコンクリート製の水路構築ブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川や農業用水路等の水路において、魚類や水生昆虫等の水生動物、水草等の水生植物の生息・生育に良好な環境を与えて生態系を改善せんとする水路構造として、特開平5−302312号公報や特開平9−165733号公報が開示する生態系改善型護岸構造が提案されている。
【0003】
特開平5−302312号公報が開示する護岸構造は、図24に示すように、直立壁板部aの下部に底板部bを水平に連結したL型ブロック本体cの該底板部bの先側部分の上面で、上方向に向けて仕切り体dが立設されており、前記直立壁板部aと仕切り体dとの間の空間eに栗石等の生態系保持用部材fが収容されると共に、前記直立壁板部aには、上下方向に長いスリットgが設けられていた。そして、該スリットgから流れ出る地下水が前記空間eに滞留することにより、該空間e内に水が確保され、生物や植物が生育できるようになされていた。又、左右のL型ブロック本体c,cの底板部b,b間で、水路の底部に河床板hが設置され、該河床板hの中央部分に設けられた窪み空間jに、栗石等の生態系保持用部材fが収容されてなるものであった。
【0004】
又、前記特開平9−165733号公報が開示する護岸構造は、開口部k,kを有する擁壁部mと、該擁壁部mの下部で左右両側に張り出した底板部nとからなり、該擁壁部mの岸部側の側面に蓋受け用突部pが設けられた本体ブロックqと、前記底板部nの岸部側張り出し部分rに水平壁部sが載置される魚巣ブロックtと、魚巣ブロックtの垂直壁部uと前記本体ブロックqの前記蓋受け用突部pに載置される蓋ブロックvと、擁壁部mと魚巣ブロックt及び蓋ブロックvによって囲まれ、開口部kを介して水路と連通し、垂直壁部uのスリットxを介して岸部yの土壌と連通する魚巣用空間zと、左右の水路側張り出し部分r,r間をなす水路の底部中央部分に形成された窪み空間iと、前記魚巣用空間zに収容される栗石等からなる生態系保持用部材fとから構成されていた。
【0005】
前記した護岸構造は何れも、水路の中央部分に窪み空間が設けられると共に該窪み空間に生態系保持用部材が収容されており、水路を流れる流水に含まれる土砂を該生態系保持用部材の空隙に次第に堆積させ、この部分で水生植物を定着させ繁茂させることによって、水生植物の群落内の空間を稚魚や幼魚或いは水生昆虫等の小動物が逃げ込むのに適した環境を提供せんとするものであった。しかしながら、かかる護岸構造によるときは、生態系改善上や水路の維持管理上、次のような問題点があった。
【0006】
農業用水路等の水路における通水状態は、一般に、通水断面の中心部(水路の中央部)で最も流速が早く、周辺に向かうほど流速が遅くなる。そして、農業用水路等の水路に生息する魚類や水生昆虫、底生動物等の水生動物は、このような水路の水の流れの特性から、流速の小さな水路周辺部を休息場所や隠れ家とし、又、産卵場所や餌場とする習性がある。
【0007】
然るに前記従来の護岸構造によるときは、水路底部の中央部分に設けられていた窪み空間で水草等の植物が繁茂するので該繁茂によって水の流れ状態が変わり、水路周辺部の流れが速くなった。その結果、従来は水生動物の良好な生息空間であった水路周辺部が生息空間として適さなくなる問題が生じた。
【0008】
なお前記前者の護岸構造によるときは、前記直立壁板部aと仕切り体d間の空間に、栗石等の生態系保持用部材fが収容されて水草等の植物が生育可能であるため、この空間部分では魚類や水生昆虫等が生息可能であった。しかしながら、前記仕切り体(立壁)dの外面側は前記のように速い流速に晒されるため、やご等の水生昆虫や両生類等がこの仕切り体(立壁)の外面d1を這い上がろうとしても叶わず、これらの水生動物にとっては、前記空間は生息場所として機能できなかったのである。
【0009】
又前記後者の護岸構造によるときは、前記本体ブロックqの底板部の水路側張り出し部分r上に栗石等の生態系保持用部材fが載置されてはいても、前記のように水路周辺部での流速が速いことから、平滑コンクリート面上に載置された前記栗石等は水流の勢いで流され易かった。かかることから、水路側張り出し部分rでは水草等が生えにくく流速の小さい環境が形成され難いことから、水路周辺部は水生動物の生育場所として不適切であったのである。
【0010】
又前記従来の護岸構造には、このような生態系上の問題点があった他、前記植物の繁茂によって水路の通水能力が阻害されないように、草刈りメンテナンスに多くの労力を要する水路管理上の問題もあった。加えて、前記前者の護岸構造では、生態系保持用部材を収容する空間が水路内に設けられていたために、水路の通水断面積がそれだけ小さくなり、大量降雨等によって水量が増加したときは水位が急激に上昇して危険であった。
【特許文献1】特開平5−302312号公報(2−3頁、図3、図4)
【特許文献2】特開平9−165733号公報(2−3頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みて開発されたものであり、水路の通水能力を良好に発揮させることができると共に、水路周辺部における水生植物の繁茂を促して流速の遅い部分形成し、その中を魚類や水生昆虫等の水生動物の生息空間となし得る等の生態系に配慮されており、更に、水生植物の刈り取り労力を低減し得る等、水路維持管理の容易化を達成できる生態系配慮型水路構造の提供を課題とするものである。又、かかる水路構造を構成するのに適したコンクリート製の水路ブロックとコンクリート製の水路構築ブロックの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため本発明は以下の手段を採用する。
即ち本発明に係る生態系配慮型水路構造は、水路底部とその両側の水路側壁部がコンクリート製とされた水路において、前記水路底部の側部分に、該水路底部を貫通する底部開口が設けられ、又、水路の延長方向で見た該底部開口の配置間隔は、10cm〜500cmに設定されると共に前記水路の底面の面積に対する前記底部開口の全ての合計面積の割合は10〜30%に設定されており、又前記夫々の水路側壁部には前記底部開口に対応させてその上側に位置するように側壁開口が貫設されており、該側壁開口の裏面側は、前記水路側壁部の裏側に設けられた栗石充填部で塞がれており、又前記側壁開口の下端は前記水路の最低水位以下にあると共に前記側壁開口の上端は前記水路の最大水位に略合致させてあることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の係る生態系配慮型水路構造のより具体的な態様は、矩形板状の底板の左右両側で側板が立設され該両側板間で水路部を形成するコンクリート製の水路ブロックが、該水路部を連通させて順次連結されることにより構築されたコンクリート製の水路において、前記底板の連結によって形成された水路底部の側部分に、該水路底部を貫通する底部開口が設けられ、水路の延長方向で見た該底部開口の配置間隔は、10cm〜500cmに設定されると共に、前記水路の底面の面積に対する前記底部開口の全ての合計面積の割合は10〜30%に設定されており、又、前記側板の連結によって形成された水路側壁部には前記底部開口に対応させてその上側に位置する如く側壁開口が貫設されており、該側壁開口の裏面側は、前記水路側壁部の裏側に設けられた栗石充填部で塞がれており、又、前記側壁開口の下端は前記水路の最低水位以下にあると共に前記側壁開口の上端は、前記水路の最大水位に略合致させてあることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の係る生態系配慮型水路構造のより具体的な他の態様は、側板部の下端に底板部が略水平に突設されてなるコンクリート製の水路構築ブロックが、該底板部を対向状態にして左右側に設置され、左右夫々の側において前記水路構築ブロックが順次連結されると共に、対向状態にある両底板部間にコンクリートが打設されて水路底部が構築されたコンクリート製の水路において、前記底板部の所要のものに、該底板部を貫通する底部開口が設けられ、水路の延長方向で見た該底部開口の配置間隔は、10cm〜500cmに設定されると共に、前記水路の底面の面積に対する前記底部開口の全ての合計面積の割合は10〜30%に設定されており、又、前記側板の連結によって形成された水路側壁部には前記底部開口に対応させてその上側に位置する如く側壁開口が貫設されており、該側壁開口の裏面側は、前記水路側壁部の裏側に設けられた栗石充填部で塞がれており、又、前記側壁開口の下端は前記水路の最低水位以下にあると共に前記側壁開口の上端は、前記水路の最大水位に略合致させてあることを特徴とするものである。
【0015】
前記各生態系配慮型水路構造において、前記底部開口は、水路の延長方向に長く形成するのがよい。又前記側壁開口の下端は、前記水路の底面の10〜15cm上に位置するように設定されたり、前記水路の底面と略同高さに設定されたりする。
【0016】
又前記各生態系配慮型水路構造は、具体的には、前記最大水位が水路高さの80〜90%に設定されると共に、前記側壁開口の上端の上限が、設定された最大水位よりも該最大水位の10%に相当する分だけ上に設定されると共に、前記側壁開口の上端の下限が、設定された最大水位よりも該最大水位の20%に相当する分だけ下に設定される。
【0017】
又前記各生態系配慮型水路構造において、前記水路側壁部の内面に、前記側壁開口を閉塞しないように木製被覆材を張り付けるのがよい。
【0018】
本発明に係るコンクリート製の水路ブロックは、矩形板状の底板の左右両側で側板が立設され該両側板間で水路部を形成する如くなされ、該底板の側部分に底部開口が貫設されると共に、前記側板には、前記底部開口に対応させてその上側に位置する如く上下に長い側壁開口が貫設されており、該側壁開口の下端は前記水路の最低水位以下にあると共に該側壁開口の上端は前記水路の最大水位に略合致させてあることを特徴とするものである。
【0019】
又本発明に係るコンクリート製の水路ブロックの他の態様は、矩形板状の底板の左右両側で側板が立設され該両側板間で水路部を形成する如くなされ、該底板の左右両側部分に、左右対向状態で底部開口が貫設されており、前記水路部の底面の面積に対する前記底部開口の全ての合計面積の割合は10〜30%に設定されており、又、前記両側板には、前記底部開口に対応させてその上側に位置する如く上下に長い側壁開口が貫設されており、該側壁開口の下端は前記水路部の最低水位以下にあると共に前記側壁開口の上端は、前記水路の最大水位に略合致させてあることを特徴とするものである。
【0020】
本発明に係るコンクリート製の水路構築ブロックは、側板部の下部に底板部が略水平に突設され、該底板部に、該底板部を貫通する底部開口が設けられると共に、前記側板部には前記底部開口に対応させてその上側に位置する如く側壁開口が貫設されており、該側壁開口の下端は前記水路の最低水位以下にあると共に該側壁開口の上端は、前記水路の最大水位に略合致させてあることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は以下の如き優れた効果を奏する。
(1) 本発明は、水路底部とその両側の水路側壁部がコンクリート製とされた水路の該水路底部の側部分に底部開口を設けると共に、該底部開口に対応させて、前記水路側壁部に側壁開口を設ける構成を採用し、該水路底部における水生植物の繁茂場所を底部開口に特定している。
従って本発明によるときは、水路の通水能力を良好に発揮させることができると共に、水路の側部分では水生植物を繁茂させ得ることから、該繁茂によって、魚類や水生昆虫類、両生類等の小動物の生息に適した流速の遅い生息空間を形成できる。然も、繁茂した水生植物が水路の底部側と前記側壁開口とを繋ぐことで二つの生息空間が連続状態となるため、水生昆虫や両生類等が両生息空間を行き来でき、より自然環境に近い生態系が確保されることになる。即ち、水路の生態系を改善できることとなる。
そして本発明においては、水路の長さ方向で見た底部開口の配置間隔を最低10cmに設定しているため、前後隣り合う底部開口での水生植物繁茂部間には最低10cm程度の途切れ部が生ずる。該途切れ部は、魚類等が水路横断方向で自由に移動できるようになすと共に、新鮮な水路水を該途切れ部を通して、水生植物繁茂部の内部空間や水生植物繁茂部と水路側壁部との間の空間部に流入させることができ、該水生植物繁茂部の内部空間等の水が淀んで酸素不足になるのを防止できるため、魚類等の生息を良好となし得る。
又前記側壁開口は、水路側壁部の裏側の地下水を排出させる機能も有するため、水路の安定性向上にも寄与できる。
加えて、水路の底面の面積に対する前記底部開口の合計面積の割合は10〜30%に設定されているため、水路の側部分での水生植物の繁茂によって前記のように生態系を改善できながら、水生植物の繁茂を必要最小限度に抑制して草刈りメンテナンスの労力を低減でき水路管理の容易化を図り得る。
【0022】
(2) 特に、底部開口を水路の延長方向に長く形成することにより、水生植物の繁茂によって流水が受ける抵抗を極力小さくできる。
【0023】
(3) 又水路側壁部の表面に、前記側壁開口を閉塞しないように熱伝導率の低い間伐材等の木製被覆材を張り付ける場合は、水路の景観を向上させ得るだけでなく、太陽熱による水路側面の温度上昇を抑制して水生昆虫類や両生類等が該水路側面を登り易くなし得るため、水路の生態系をより一層改善できる。
【0024】
(4) 水路の延長方向で見て隣り合う側壁開口間の間隔が長い場合、その間においても側壁開口を設けることにより、水路側壁部の裏側における地下水の排出を円滑化できる。又、底部開口で繁茂した水生植物による前記繋ぎ効果は達成されないとしても、側壁開口は魚巣として機能できる。
【0025】
(5) 本発明に係るコンクリート製の水路ブロックやコンクリート製の水路構築ブロックによるときは、これらのブロックが底部開口と側壁開口を共に具えているため、生態系配慮型水路構造を合理的に構成できる。
【実施例1】
【0026】
図1〜4において本発明に係る生態系配慮型水路構造1は、田2に隣接した農業用の水路3に応用されており、水路底部5と左右両側の水路側壁部6,6がコンクリート製とされた三面張の水路3において、該水路底部5の左右両側部分7,7に左右対向状態で、その長さ方向に10cm〜500cmの間隔で底部開口9が並設されている。本実施例においては40cm間隔で並設されている。そして、該水路3の延長方向で見た水路の底面10の面積に対する前記底部開口9の全ての合計面積の割合は10〜30%に設定されており、本実施例においては15%程度に設定されている。又前記夫々の水路側壁部6,6には、前記底部開口9に対応させてその上側に位置するように側壁開口11が設けられており、該側壁開口11の裏面側は、該水路側壁部11の裏側に設けられた栗石充填部12で塞がれている。そして図2に示すように、該側壁開口11の下端13は水路3の最低水位LA以下にあると共に、該側壁開口11の上端15は、前記水路3の最大水位LBに略合致させてある。図2、図4においては、該下端13を、水路の底面10の10〜15cm上に位置するように、例えば10cm上に位置するように設定されている。又左右の水路側壁部11,11に、生態系と景観を考慮して、前記側壁開口11を閉塞しないように木製被覆材16が張り付けられている。
【0027】
これをより具体的に説明すれば、前記水路3は、プレキャストコンクリート製のU字溝状の水路ブロック17をその水路部19を連通させて順次連結することにより構築されている。該水路ブロック17は、図5〜6に示すように、矩形板状の底板20の左右両側で側板21,21が外方に稍傾斜状態で一連に立設され該両側板21,21間で前記水路部19を形成する。又、その内面部の下端両側は円弧面22,22に形成され、該円弧面22,22の下縁23,23間が前記水路部19の底面25とされると共に、両側板21,21の上端は外方に屈曲され、屈曲部26の上面27は平坦に形成されている。又前記底板20の左右部分の前後に、左右対向状態で、底板20の長さ方向(水路の延長方向)に長い矩形状の前記底部開口9,9が貫設されている。
【0028】
該水路ブロック17の各部の寸法を図3、図5〜6に基づいて例示すれば、ブロックの前後長さL1が200cm、前記水路部19の底面25の左右幅L2が200cm、水路上端の左右幅L3が250cm、水路高さL4が150cm、ブロック厚さL5が14cmに設定されている。又前記底部開口9は、その長辺長さL6が60cmでその短辺長さL7が25cmに設定され、その深さはブロック厚さに相応して14cmである。又、前後隣り合う底部開口9,9間の間隔L8は40cmに設定されると共に、該底部開口9とブロックの前後端29,30間の長さL9は20cmに設定されている。そして、前記水路部19の底面25の面積が40000cmで、4つの底部開口9,9,9,9の合計面積が600cmであることから、水路部の底面25の面積に対する底部開口9の全ての合計面積の割合は15%程度となる。
【0029】
又前記両側板21,21には、上下に長い矩形状を呈する前記側壁開口11の3本が、側板21の前後方向(水路部19の延長方向)に、所要間隔を置いて平行状態で貫設されている。該側壁開口11の上下長さは110cmで、その幅は10cmに、又側壁開口11,11間の間隔は15cmに設定されている。そして該側壁開口11の下端13は、水路部底面25の10cm上に位置するように高さL10が設定されると共に、該側壁開口11の上端15は、前記水路部の底面25の120cm上に位置するように高さL11が設定されている。
【0030】
前記3本の側壁開口11,11,11は、図6に示すように、両端に位置する側壁開口11a,11bの外側の縁31,32が前記底部開口9の前後端33,35に合致されている。そして該側壁開口11の下端13は、前記のように水路の最低水位LA以下に設定されるのであるが、生態系を維持するに必要な最低水位LAを10〜15cmとすれば、側壁開口11の前記下端13の高さ10cmは、最低水位LA以下にある。又該側壁開口11の上端15は、前記のように水路の最大水位に略合致させてあるが、最大水位LBは通常、水路高さH(図2)の80〜90%の位置に設定されるため、水路高さHが150cmである本実施例においては最大水位LBが120〜135cmとなり、側壁開口11の前記上端15の高さ120cmは、最大水位以下にある。
【0031】
かかる構成の水路ブロック17を図4に示すように、接合端面36,36間に止水材を介在させて地盤36に敷設し、且つ、水路ブロック17,17相互を連結金具37を用いてボルト39で連結することにより前記水路3が構築される。そして水路底部5の左右両側部分7,7には、前記底部開口9が40cmの間隔で並設されており、左右の底部開口9,9は対向している。
【0032】
このように水路3を構築した後、両水路側壁部6,6の裏側に、図2に示すように、前記側壁開口11の上下端に亘る範囲で前記栗石充填部12が形成されるのであるが、使用する栗石40の粒径は、該栗石40が前記側壁開口11から零れ出ないように例えば150mm程度に設定される。又該栗石充填部12は、図2に示すように、前記水路側壁部6の外面41に接する側を除いて吸い出し防止シート42で覆われている。該吸い出し防止シート42は、透水性は有するが、裏側の土砂が栗石充填部12に流出するのを阻止するものである。
【0033】
該吸い出し防止シート42で被覆された前記栗石充填部12を施工する要領を図7に基づいて説明すれば、先ず、該吸い出し防止シート42の下側部分を前記水路側壁部6の外面41に当接させ、該当接シート部44の上端高さにまで土砂45を埋め戻す。その後、該埋め戻した土砂の上面46を、形成せんとする栗石充填部12の厚さに相当する幅で覆う。その後、吸い出し防止シート42を立ち上げながらその立上りシート部47と水路側壁部6との間に栗石40を充填していき、該立上りシート部47の裏側に土砂45を順次埋め戻す。このような栗石40の充填は、前記側壁開口11の上端高さまで行なう。然る後、完成された栗石充填部12の上面49を吸い出し防止シート42の上側部分50で覆うと共に、該吸い出し防止シート42の上端部分50を前記水路側壁部6の上端部分の外面52に当接状態にする。その後、水路側壁部6の上端高さまで土砂45を埋め戻す。これにより、吸い出し防止シート42で覆われた栗石充填部12が水路側壁部6の裏側に形成され、従って前記側壁開口11の裏面側は栗石充填部12で塞がれた状態となる。なお前記栗石充填部12は、前記水路側壁部6の全長に亘って連続状態に形成される他、例えば前記3本の側壁開口11,11,11の組毎に不連続状態で形成されることもある。
【0034】
本実施例においては、水路3を構築した後、図1〜2に示すように、水路側壁部6,6の内面53に、前記側壁開口11を閉塞しないように木製被覆材16が張り付けられる。該木製被覆材16は、間伐材を半割りして形成されており、その長さ方向を縦にして張り付けられている。その張り付けは、例えば図8に示すように、前記内面53に埋設したインサート55に螺合されたステンレスボルト56を用い、前記木製被覆材16の両端寄り部位57,57を固定して行う。同様にして前記屈曲部26の前記上面27にも、前記半割りの木製被覆材16をその長さ方向を水路延長方向にして固定している。
【0035】
このように構築された水路3においては、前記底部開口9で水生植物が定着し、図9〜10に示すように、地山58に根が張って水生植物59が良好に繁茂する。底部開口9は、前記のように水路底部5の左右両側部分にのみ設けられているため、水生植物の繁茂は水路の両側部分では発生しているが、通水の中心的機能を果たす水路中央部分ではその発生が抑制されている。
【0036】
このように水路中央部分では水生植物の発生が抑えられているため、水路の通水能力を良好に確保できる。そして、水路の両側部分(水路周辺部)では、繁茂した水生植物が障害物となって流速が遅くなり、又、日陰となる内部空間が形成されるため、該内部空間は、水生動物(例えば、遊泳力の弱いメダカ等の小魚や幼魚、貝類、ゲンゴロウやヤゴ等の水生昆虫)や両性類等の陸水動物の好適な休息場所、産卵場所、成育場所となり、又、好適な隠れ家、餌場となる。そして底部開口9は前記のように40cm間隔で設けられているため、図10に示すように、前後隣り合う底部開口9,9での水生植物繁茂部60,60間には40cm程度の途切れ部61が生ずる。従って、この途切れ部61において魚類等が水路横断方向で自由に移動できると共に、新鮮な水路水が該途切れ部61を通して、水生植物繁茂部60の内部空間や水生植物繁茂部60と水路側壁部6との間の空間部に流入できる。この流入によって、該水生植物繁茂部60の内部空間等の水が淀んで酸素不足になるのを防止でき、魚類等の生息を良好となし得るのである。
【0037】
又前記底部開口9で繁茂した植物が、該底部開口9の上側に位置する前記側壁開口11に達し或いは該側壁開口11を覆った状態となることによって、繁茂した植物を介して、水路の底部側62から側壁開口11に至る連続した生息空間が形成される。そのため、水路底部5で生息する昆虫類や両生類が、前記植物の茎や葉を伝って上方向に移動し前記側壁開口11に至ることができる。そして該側壁開口11の奥側には栗石充填部12があるため、側壁開口11や栗石充填部12の隙間は、水生動物や陸水動物の休息場所や隠れ家となる。該側壁開口11や栗石充填部12は、水路の水位如何によっては、水没状態となる場合や水没はしないが湿った状態となる場合、更には乾いた状態となる場合が生ずるが、このような種々の環境を提供できることは水生動物や陸水動物にとって好都合である。
【0038】
又前記木製被覆材16の表面63は、コンクリートの表面とは異なり太陽熱で熱くなりにくく又滑りにくいため、植物の茎や葉を伝って上方向に移動したヤゴ等の水生昆虫や両生類等は、前記木製被覆材16の表面63を伝って水路側壁部6を上方向に容易に移動できる。そして木製被覆材16の表面63で苔等が繁殖した場合は、これが水生昆虫等の餌ともなり得る。
【0039】
このように構築された水路3によるときは、水生植物の発生が抑えられている水路の中央部分において良好な通水能力を確保できると共に、水路底部の側部分の前記水生植物繁茂部60では、その内部空間を水が通過できるため、水路内に張り出した生息空間を仕切り体で形成する従来の護岸構造における場合とは異なり、水生植物繁茂部60が通水断面積を減少させることが少ない。なお本実施例においては、水生植物の繁茂部となる底部開口9を、水路の延長方向に長いものとして構成しているため、該底部開口9が水路3の幅方向に長い場合に比し、流水の受ける抵抗をより小さくできて好ましい。
【0040】
そして前記側壁開口11は、その下端13が水路3の最低水位以下に設定されると共に、その上端15が水路3の最大水位に略合致させてあるため、水位の変動があっても該側壁開口11の全部又は一部分が水に浸かった状態にあり、少なくとも湿った状態にある。そのため該側壁開口11は、常に、水生動物の休息場所や退避場所、産卵場所等の生息空間となり得る。
【0041】
又前記のように、水路3の延長方向で見た水路3の底面10の面積に対する底部開口9の全ての合計面積の割合が15%程度に設定されているため、前記のように生態系に好ましい環境を形成できると共に、所要の通水能力を確保できる。然も、水生植物が繁茂する底部開口9の合計面積は15%程度に設定されているため、通水能力を確保するために草刈りメンテナンスに多くの労力を要するといった従来の問題点も解消できる。
【0042】
又、前記側壁開口11の裏側には栗石充填部12が設けられていることから、水路側壁部6の裏側における地下水が該栗石充填部12内を通って水路3に速やかに排出される。地下水がこのように排出されることから、浮力による水路3の浮き上がりを防止でき水路の安定性を向上させ得る。なお、このように地下水が水路3に排出される際、前記吸い出し防止シート42が、栗石充填部12内への土砂の流入を効果的に防止する。そして該栗石充填部12は、前記側壁開口11の下端13が水路3の最低水位以下に位置されると共にその上端15が水路3の最大水位に略合致されているため、水深の如何によらず、側壁開口11の少なくとも下端側は、通常、水没状態となる。このように水没状態にある側壁開口部分65は魚巣としても機能できる。そして、降雨時や灌漑時等の増水期において流速が最大となったときも、水没状態にある側壁開口部分は魚類等の逃げ場所として好都合となる。
【0043】
前記のように本発明においては、水路の底面10の面積に対する前記底部開口9の全ての合計面積の割合を10〜30%に設定しているが、該割合が30%を越えた場合は、生態系を改善する上からは一層好ましいが、水路の通水能力を確保するために草刈りメンテナンスが必要となったりして好ましくない。一方、前記割合が10%よりも小さいと、生態系改善効果が得られにくくなるために好ましくない。
【0044】
なお、水生植物の植生を促すために、前記底部開口9に栗石を充填する場合もあるが、該底部開口9には自然に土砂が堆積されることから、水生植物の植生の上からは、該底部開口9に栗石を充填することは必ずしも必要でない。
【実施例2】
【0045】
図11〜12は、本発明に係る生態系配慮型水路構造1の他の態様を示すものであり、水路3は、図13に示す水路構築ブロック66を用いて構築されている。
【0046】
該水路構築ブロック66は、図13、図12に示すように、側板部67の下部に底板部69を略水平に突設してなるL字型を呈しており、該底板部69に、前記と同様の底部開口9が、前後に40cmの間隔を置いて貫設されている。又、前記側板部67には前記底部開口9に対応させてその上側に位置するように、上下に長い3本の側壁開口11,11,11が、前記実施例におけると同様の配置で貫設されている。そして、該側壁開口11の下端13は前記水路の最低水位LA以下にあると共に前記側壁開口11の上端15は、前記水路の最大水位LBに略合致させてある。該上端位置及び該下端位置の一例は、前記実施例に示したと同様である。
【0047】
かかる構成の水路構築ブロック66を用いて水路3を構築するには、図13に示すように、該水路構築ブロック66を、両底板部69,69を対向状態にして且つ該対向状態にある底板部69,69間に所要間隔を設けて地盤36の左右側に敷設すると共に、接合端面36,36間に止水材を介在させ且つ連結金具37を用いてボルト39で連結する。又図12に示すように、該底板部69,69間にコンクリートを現場打ちすることにより水路底部5を形成する。形成された水路3の各部の寸法は、前記実施例におけると同様である。
【0048】
このようにして水路3を構築した後、前記と同様にして、両水路側壁部6,6の裏側に栗石充填部12を形成する。又前記と同様にして、両水路側壁部6,6の内面に木製被覆材16を張り付ける。
【0049】
このように構築された水路3の底部開口9における水生植物の繁茂状態は図14に示すようであり、水路中央部分では水生植物の発生が抑えられているため、水路中央部分での通水能力を良好に確保できる。
【0050】
そして、水路の両側部分(水路周辺部)では、繁茂した水生植物59が障害物となって流速が遅くなり、又、日陰となる内部空間が形成されるため、該内部空間は、水生動物(例えば、遊泳力の弱いメダカ等の小魚や幼魚、貝類、ゲンゴロウやヤゴ等の水生昆虫)や両性類等の陸水動物の好適な休息場所、産卵場所、成育場所となり、又、好適な隠れ家、餌場となる。そして底部開口9は前記のように40cm間隔で設けられているため、前後隣り合う底部開口9,9での水生植物繁茂部60,60間には40cm程度の途切れ部61が生ずる。従って、この途切れ部61において魚類等が水路横断方向で自由に移動できると共に、新鮮な水路水が該途切れ部61を通して、水生植物繁茂部60の内部空間や水生植物繁茂部60と水路側壁部6との間の空間部に流入できる。この流入によって、該水生植物繁茂部60の内部空間等の水が淀んで酸素不足になるのを防止でき、魚類等の生息を良好となし得るのである。
【0051】
又、水路の両側部分(水路周辺部)では、水生植物の繁茂によって、魚類や水生昆虫類、両性類等の小動物の生息に適した流速の遅い生息空間が前記と同様に形成される。又、前記底部開口9で繁茂した植物は、図14に示すように、該底部開口9の上側に位置する如く設けられた前記側壁開口11に達し或いは該側壁開口11を覆った状態となることによって、繁茂した植物を介して、水路の底部側62から側壁開口11に至る連続した生息空間が形成される。そのため、水路底部5で生息する昆虫類や両生類が、前記植物の茎や葉を伝って上方向に移動し前記側壁開口11に至ることができる。そして該側壁開口11の奥側には栗石充填部12があるため、側壁開口11や栗石充填部12の隙間は、水生動物や陸水動物の生息場所や隠れ家となる。該側壁開口11や栗石充填部12は、水路3の水位如何によっては、水没状態となる場合や水没はしないが湿った状態となる場合、更には乾いた状態となる場合が生ずるが、このような種々の環境を提供できることは水生動物や陸水動物にとって好都合である。
【0052】
又前記木製被覆材16の表面63は、コンクリートの表面とは異なり太陽熱で熱くなりにくく又滑りにくいため、植物の茎や葉を伝って上方向に移動したヤゴ等の水生昆虫や両生類等は、前記木製被覆材16の表面63を伝って水路側壁部6を上方向に容易に移動できる。そして木製被覆材16の表面63で苔等が繁殖した場合は、これが水生昆虫等の餌ともなり得る。この点は前記実施例におけると同様である。
【0053】
なお本実施例においても、水生植物の繁茂部となる底部開口9を、水路の延長方向に長いものとして構成しているため、底部開口9が水路3の幅方向に長い場合に比し、流水の受ける抵抗をより小さくできて好ましい。そして前記側壁開口11は、その下端13が水路3の最低水位以下に設定されると共に、その上端15が水路3の最大水位以下に略合致されているため、水位の変動があっても該側壁開口11の全部又は一部分が必ず水に浸かった状態にある。そのため該側壁開口11は、常に、水生動物の休息場所や退避場所、産卵場所等の生息空間となり得る。
【0054】
又前記のように、水路3の延長方向で見た水路の底面10の面積に対する底部開口9の全ての合計面積の割合が15%程度に設定されているため、前記のように生態系に好ましい環境を形成できると共に、所要の通水能力を確保できる。然も、水生植物が繁茂する底部開口9の合計面積は15%程度に設定されているため、通水能力を確保するために草刈りメンテナンスに多くの労力を要するといった従来の問題点も解消できる。
【0055】
又、前記側壁開口11の裏側には栗石充填部12が設けられていることから、水路側壁部6の裏側における地下水が該栗石充填部12内を通って水路3に速やかに排出される。地下水がこのように排出されることから、浮力による水路3の浮き上がりを防止でき水路の安定性を向上させ得る。なお、このように地下水が水路3に排出される際、前記吸い出し防止シート42が、栗石充填部12内への土砂の流入を効果的に防止する。そして該栗石充填部12は、前記側壁開口11の下端13が水路3の最低水位以下に位置されると共にその上端15が水路3の最大水位に略合致されているため、水深の如何によらず、側壁開口11の少なくとも下端側は、通常、水没状態となる。このように水没状態にある側壁開口部分65は魚巣としても機能できる。そして、降雨時や灌漑時等の増水期において流速が最大となったときも、水没状態にある側壁開口部分は魚類等の逃げ場所として好都合となる。
【実施例3】
【0056】
本発明は、前記実施例で示したものに限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。その一例を挙げれば次のようである。
(1) 本発明において、水路3の延長方向で見た底部開口9の配置間隔が10cm〜500cmであるとは、図15に示すように、単一の底部開口9が水路の長さ方向で見て10cm〜500cmの間隔で配置されることを意味することの他、図16に示すように、底部開口9を例えば10cm間隔で複数個配置した後、500cmの間隔を置いて更に10cm間隔で複数個配置する場合を含むものである。なお該下限値(10cm)は、前記水生植物繁茂部60,60間の前記途切れ部61における魚類等の自由な移動を阻害しないように、且つ、水生植物繁茂部60の内部空間等の水が酸素不足になるのを防止できる程度に該途切れ部61を通して水路水を該内部空間等に流入させ得るように設定されている。
このように、水路の延長方向で見た底部開口9,9間の間隔を大きく設定する場合は、図15〜16に示すように、底部開口9が設けられた水路ブロック17又は水路構築ブロック66と、底部開口9が設けられていない水路ブロック70との組み合わせによって水路を構築する。
【0057】
(2) 図17は、本発明に係る生態系配慮型水路構造1のその他の態様を示すものであり、水路底部5に設けられた底部開口9が左右対向状態ではなく千鳥状態に設けられている。かかる水路底部5は、例えば図17に示すように、底板20の一側部分にのみ底部開口9が設けられた水路ブロック17を交互に左右逆向きにして敷設して構築されることの他、底部開口9が設けられていない水路ブロック17を間に挟んで構築されることもある。又図18に示すように、底板部69に底部開口9が設けられた水路構築ブロック66に、底板部69に底部開口9が設けられていない他の水路構築ブロック71を連結し、且つ、底部開口9が左右対向状態にならないようにし、両底板部69,69間にコンクリートを打設することにより構築されることもある。又図19においては、例えば水路ブロック17を用いて構築された水路5の水路底部5の一側部分にのみ底部開口9が設けられている。
このように構築された水路においても、前記底部開口9で水生植物が繁茂することによって、魚類等の生息空間を形成できる。又、水生植物の繁茂が、底部開口9が設けられた水路底部5の側部分に特定されるため、水路の通水能力が良好に確保される。
【0058】
(3) 前記底部開口9の平面視の形態は、前記長方形状の他、円形状や菱形状、六角形状、水路の延長方向に長い楕円形状や六角形状等、各種形態に設定され得る。
【0059】
(4) 本発明において、底部開口9に対応させてその上側に位置する如く側壁開口11を設けるとは、該底部開口9の前後幅(水路の延長方向で見た幅)の範囲に側壁開口11が存することを意味しており、例えば図20や図21に示す態様も含まれる。
【0060】
(5) 図22は側壁開口11の他の態様を示すものであり、側壁開口11の下端13が水路の底面10と面一に設定されている。
【0061】
(6) 前記水路側壁部6の内面53に木製被覆材16を張り付ける場合、全ての木製被覆材16をその軸線を水路の延長方向にして張り付けられることもある。この場合、該木製被覆材16が側壁開口11を横切るように且つ上下の木製被覆材16,16間に間隔を開けて該側壁開口11を閉塞しないように張り付けるのがよい。
【0062】
(7) 該木製被覆材16の張り付けは、前記ボルト固定の他、接着手段によってもよい。
【0063】
(8) 水路側壁部6に設ける側壁開口11は、図23に示すように、前記底部開口9に対応しない部分にも設けられる場合がある。このように設けられた側壁開口11の裏面側にも栗石充填部12を設けることにより、該側壁開口11も、底部開口9に対応して設けられた前記側壁開口11におけると同様に、水路3内に地下水を排出する機能を有すると共に、水位が高い場合には魚巣として機能できる。
【0064】
(9) 本発明において水路3は、直線状態ではなく蛇行状態に構築されることもある。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る水路構造を説明する斜視図である。
【図2】その断面図である。
【図3】その平面図である。
【図4】水路ブロックの連結状態を示す斜視図である。
【図5】水路ブロックを示す斜視図である。
【図6】その断面図である。
【図7】栗石充填部の施工工程を説明する断面図である。
【図8】水路側壁部の内面に木製被覆材をボルト固定した状態を示す断面図である。
【図9】水路底部における水生植物の繁茂状態を示す断面図である。
【図10】その斜視図である。
【図11】本発明に係る水路構造の他の態様を示す斜視図である。
【図12】その断面図である。
【図13】水路構築ブロックを地盤の左右に敷設した状態を示す斜視図である。
【図14】水路構築ブロックを用いて構築された水路の、水路底部での水生植物の繁茂状態を示す断面図である。
【図15】底部開口の他の配置状態を示す平面図である。
【図16】底部開口のその他の配置状態を示す平面図である。
【図17】底部開口のその他の配置状態を示す平面図である。
【図18】底部開口のその他の配置状態を示す平面図である。
【図19】底部開口のその他の配置状態を示す平面図である。
【図20】底部開口に対応させて設けた側壁開口の他の態様を示す断面図である。
【図21】底部開口に対応させて設けた側壁開口のその他の態様を示す断面図である。
【図22】側壁開口の下端を水路の底面と面一に設定した水路を示す斜視図ある。
【図23】底部開口に対応しない部分にも側壁開口を設けた水路を示す斜視図である。
【図24】従来の水路構造を示す断面図である。
【図25】従来の水路構造の他の態様を示す断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 水路構造
3 水路
5 水路底部
6 水路側壁部
9 底部開口
10 水路の底面
11 側壁開口
12 栗石充填部
13 側壁開口の下端
15 側壁開口の上端
16 木製被覆材
17 水路ブロック
19 水路部
20 底板
21 側板
40 栗石
42 吸い出し防止シート
59 水生植物
61 途切れ部
66 水路構築ブロック
67 側板部
69 底板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路底部とその両側の水路側壁部がコンクリート製とされた水路において、前記水路底部の側部分に、該水路底部を貫通する底部開口が設けられ、又、水路の延長方向で見た該底部開口の配置間隔は、10cm〜500cmに設定されると共に前記水路の底面の面積に対する前記底部開口の全ての合計面積の割合は10〜30%に設定されており、又前記夫々の水路側壁部には前記底部開口に対応させてその上側に位置するように側壁開口が貫設されており、該側壁開口の裏面側は、前記水路側壁部の裏側に設けられた栗石充填部で塞がれており、又前記側壁開口の下端は前記水路の最低水位以下にあると共に前記側壁開口の上端は前記水路の最大水位に略合致させてあることを特徴とする生態系配慮型水路構造。
【請求項2】
矩形板状の底板の左右両側で側板が立設され該両側板間で水路部を形成するコンクリート製の水路ブロックが、該水路部を連通させて順次連結されることにより構築されたコンクリート製の水路において、前記底板の連結によって形成された水路底部の側部分に、該水路底部を貫通する底部開口が設けられ、水路の延長方向で見た該底部開口の配置間隔は、10cm〜500cmに設定されると共に、前記水路の底面の面積に対する前記底部開口の全ての合計面積の割合は10〜30%に設定されており、又、前記側板の連結によって形成された水路側壁部には前記底部開口に対応させてその上側に位置する如く側壁開口が貫設されており、該側壁開口の裏面側は、前記水路側壁部の裏側に設けられた栗石充填部で塞がれており、又、前記側壁開口の下端は前記水路の最低水位以下にあると共に前記側壁開口の上端は、前記水路の最大水位に略合致させてあることを特徴とする生態系配慮型水路構造。
【請求項3】
側板部の下部に底板部が略水平に突設されてなるコンクリート製の水路構築ブロックが、該底板部を対向状態にして左右側に設置され、左右夫々の側において前記水路構築ブロックが順次連結されると共に、対向状態にある両底板部間にコンクリートが打設されて水路底部が構築されたコンクリート製の水路において、前記底板部の所要のものに、該底板部を貫通する底部開口が設けられ、水路の延長方向で見た該底部開口の配置間隔は、10cm〜500cmに設定されると共に、前記水路の底面の面積に対する前記底部開口の全ての合計面積の割合は10〜30%に設定されており、又、前記側板の連結によって形成された水路側壁部には前記底部開口に対応させてその上側に位置する如く側壁開口が貫設されており、該側壁開口の裏面側は、前記水路側壁部の裏側に設けられた栗石充填部で塞がれており、又、前記側壁開口の下端は前記水路の最低水位以下にあると共に前記側壁開口の上端は、前記水路の最大水位に略合致させてあることを特徴とする生態系配慮型水路構造。
【請求項4】
前記底部開口は、水路の延長方向に長く形成されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の生態系配慮型水路構造。
【請求項5】
前記側壁開口の下端が、前記水路の底面の10〜15cm上に位置することを特徴とする請求項1、2又は3記載の生態系配慮型水路構造。
【請求項6】
前記側壁開口の下端が前記水路の底面と略同高さにあることを特徴とする請求項1、2又は3記載の生態系配慮型水路構造。
【請求項7】
前記最大水位は水路高さの80〜90%に設定されると共に、前記側壁開口の上端の上限は、設定された最大水位よりも該最大水位の10%に相当する分だけ上に設定される共に、前記側壁開口の上端の下限は、設定された最大水位よりも該最大水位の20%に相当する分だけ下に設定されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の生態系配慮型水路構造。
【請求項8】
前記水路側壁部の内面に、前記側壁開口を閉塞しないように木製被覆材が張り付けられていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の生態系配慮型水路構造。
【請求項9】
請求項2記載の生態系配慮型水路構造を構成するコンクリート製の水路ブロックであって、矩形板状の底板の左右両側で側板が立設され該両側板間で水路部を形成する如くなされ、該底板の側部分に底部開口が貫設されると共に、前記側板には、前記底部開口に対応させてその上側に位置する如く上下に長い側壁開口が貫設されており、該側壁開口の下端は前記水路の最低水位以下にあると共に該側壁開口の上端は前記水路の最大水位に略合致させてあることを特徴とする生態系配慮型水路構造を構成するコンクリート製の水路ブロック。
【請求項10】
請求項2記載の生態系配慮型水路構造を構成するコンクリート製の水路ブロックであって、矩形板状の底板の左右両側で側板が立設され該両側板間で水路部を形成する如くなされ、該底板の左右両側部分に、左右対向状態で底部開口が貫設されており、前記水路部の底面の面積に対する前記底部開口の全ての合計面積の割合は10〜30%に設定されており、又、前記両側板には、前記底部開口に対応させてその上側に位置する如く上下に長い側壁開口が貫設されており、該側壁開口の下端は前記水路部の最低水位以下にあると共に該側壁開口の上端は、前記水路の最大水位に略合致させてあることを特徴とする生態系配慮型水路構造を構成するコンクリート製の水路ブロック。
【請求項11】
請求項3記載の生態系配慮型水路構造を構成するコンクリート製の水路構築ブロックであって、側板部の下部に底板部が略水平に突設され、該底板部に、該底板部を貫通する底部開口が設けられると共に、前記側板部には前記底部開口に対応させてその上側に位置する如く側壁開口が貫設されており、該側壁開口の下端は前記水路の最低水位以下にあると共に該側壁開口の上端は、前記水路の最大水位に略合致させてあることを特徴とする生態系配慮型水路構造を構成するコンクリート製の水路構築ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2006−37626(P2006−37626A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222075(P2004−222075)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000137074)株式会社 ホクコン (40)
【Fターム(参考)】