説明

生物医学的電極およびその形成方法

【課題】疎水性材料を組み込む生物医学的電極、およびその形成方法を提供すること。
【解決手段】第一の面および第二の面を規定する導電性部材;この導電性部材の第一の面に配置された導電性組成物であって、この導電性組成物は、治療有効量の疎水性医薬を含む、導電性組成物;ならびにこの導電性部材と電気的に連絡する電気リード線を備える、生物医学的電極が提供される。一つの実施形態において、上記疎水性医薬はビタミンEである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、生物医学的電極に関し、そして特に、疎水性材料を組み込む生物医学的電極およびその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物医学的電極は、電気信号または電流を、患者の身体と外部設備または遠隔設備(例えば、診断デバイス、治療デバイスおよび/もしくは監視デバイス)との間で伝達するために使用される。このような電極は、代表的に、導電性組成物またはヒドロゲルおよび導線を備え、この導電性組成物またはヒドロゲルは、患者の皮膚に接触可能であるかまたは他の様式で接触可能であり、そしてこの導線は、この導電性組成物および外部設備に電気的に接続される。従来の生物医学的電極としては、ECG(心電計)監視電極、TENS(経皮的電気神経刺激)電極、および除細動電極が挙げられる。電極はまた、電気外科分散パッドとして使用され、そして創傷処置用途において、使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電極の使用に付随する共通の問題としては、患者の皮膚の刺激、火傷および/または乾燥が挙げられる。
【0004】
従って、患者の皮膚に治療有効レベルの治癒または処置を提供する目的で、疎水性医薬(例えば、ビタミンEまたは抗酸化物質特性を有する他のビタミン)を、電極の親水性材料(例えば、導電性組成物またはヒドロゲル)に組み込むことが望ましい。
【0005】
患者の皮膚と接触するための、治療有効レベルの疎水性医薬を含む導電性組成物を含む電極を形成または構築する方法を提供することが、さらに望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
第一の面および第二の面を規定する導電性部材;
該導電性部材の該第一の面に配置された導電性組成物であって、該導電性組成物は、治療有効量の疎水性医薬を含む、導電性組成物;ならびに
該導電性部材と電気的に連絡する電気リード線、
を備える、生物医学的電極。
(項目2)
前記疎水性医薬がビタミンEである、上記項目に記載の電極。
(項目3)
前記導電性組成物が、約0.01%〜10%のビタミンEを含む、上記項目のうちのいずれかに記載の電極。
(項目4)
前記導電性組成物が、約10%より多いビタミンE、約0.01%〜10%のビタミンA、および約0.01%〜10%の魚油のうちの1つを含む、上記項目のうちのいずれかに記載の電極。
(項目5)
銀および塩化銀のうちの少なくとも1つのコーティングを、前記導電性部材の前記第一の面および前記第二の面のうちの少なくとも一方の少なくとも一部分にさらに備える、上記項目のうちのいずれかに記載の電極。
(項目6)
前記導電性組成物が親水性ヒドロゲルであり、そして前記疎水性医薬がビタミンE酢酸エステルであり、該ビタミンE酢酸エステルが、該ヒドロゲルと、不透明なエマルジョンの形成を防止するような量の界面活性剤を介して組み合わせられている、上記項目のうちのいずれかに記載の電極。
(項目7)
第一の面および第二の面を有する導電性部材を提供する工程;
該導電性部材の該第一の面に導電性組成物を提供する工程であって、該導電性組成物は、該導電性組成物に関連する治療有効量の疎水性医薬を含む、工程;
該導電性部材の該第二の面に裏打ち部材を提供する工程;ならびに
電気リード線を該導電性部材および該導電性組成物のうちの少なくとも一方と電気的に連絡させて提供する工程
を包含する、電極を形成する方法。
(項目8)
前記疎水性医薬が、ビタミンE、ビタミンAおよび魚油のうちの1つである、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記導電性組成物が、約0.01%〜10%のビタミンEを含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目10)
銀または銀/塩化銀のコーティングを、前記導電性部材の前記第一の面および前記第二の面のうちの少なくとも一方の少なくとも一部分に提供する工程をさらに包含する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目11)
前記導電性組成物を提供する工程が、
ある量の疎水性医薬を提供する工程;
ある量の界面活性剤を提供する工程;
該界面活性剤と、疎水性材料および抗酸化物質のうちの少なくとも1つとを複合体化させる工程;
ある量の親水性材料を提供する工程;ならびに
該複合体化した界面活性剤および該疎水性医薬を、該親水性材料と組み合わせる工程
を包含する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目12)
前記導電性組成物が親水性ヒドロゲルであり、そして前記疎水性医薬がビタミンE酢酸エステルであり、そして前記方法が、該ビタミンE酢酸エステルと該ヒドロゲルとを、不透明なエマルジョンの形成を防止するような量の界面活性剤を介して組み合わせる工程をさらに包含する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目13)
前記界面活性剤が脂肪族ポリエステルである、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目14)
2−(アクリルアミド)−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(NaAMPS)を量り取り、そして該NaAMPSを容器に入れる工程;
架橋剤を量り取り、そして該架橋剤を該NaAMPSに添加してモノマー溶液を形成する工程;
アクリル酸を量り取り、該アクリル酸を該モノマー溶液に添加する工程;
塩を量り取り、該塩を該モノマー溶液に添加する工程;
約10分間混合する工程;
グリセロールを量り取り、該グリセロールを該モノマー溶液に添加する工程;
シリカを量り取り、該シリカを該モノマー溶液に添加する工程;
水酸化ナトリウムを該モノマー溶液に滴下して、該モノマー溶液のpHを約3.50±0.05にする工程;
該モノマー溶液に対してある量の界面活性剤およびビタミンE酢酸エステルを量り取る工程;
該界面活性剤および該ビタミンE酢酸エステルを該モノマー溶液に添加する工程;
触媒を量り取り、該触媒を該モノマー溶液に添加する工程;
該モノマー溶液を約30分間混合する工程;
該モノマー溶液をリリースライナー上にコーティングする工程;ならびに
該モノマー溶液のコーティングをキセノンアークUVランプで約25秒間照射する工程
を包含する、生体適合性導電性組成物を形成する方法。
(項目15)
約45.416グラムのNaAMPS;
約2.980グラムの架橋剤;
約2.780グラムのアクリル酸;
約2.000グラムの塩化ナトリウム;
約42.665グラムのグリセロール;
約2.490グラムのシリカ;
約0.122グラムの塩化ナトリウム;
約0.050グラムの界面活性剤;
約1.000グラムのビタミンE酢酸エステル;および
約0.497グラムの触媒
のうちの少なくとも1つを提供する工程をさらに包含する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目16)
pHプローブを使用して前記モノマー溶液のpHを測定する工程をさらに包含する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0007】
(摘要)
本開示は、疎水性材料を組み込む生物医学的電極、およびその形成方法に関する。
【0008】
(要旨)
本開示は、疎水性材料を組み込む生物医学的電極、およびその形成方法に関する。
【0009】
本開示の1つの局面によれば、被験体の皮膚に選択的に取り付けるための電極が提供される。この電極は、第一の面および第二の面を規定する導電性部材;この導電性部材の第一の面に配置された導電性組成物であって、この導電性組成物は、治療有効量の疎水性医薬を含む、導電性組成物;ならびにこの導電性部材と電気的に連絡する電気リード線を備える。この導電性組成物の疎水性医薬は、被験体の皮膚の刺激、損傷、乾燥および火傷のうちの少なくとも1つのレベルを低下させる。
【0010】
この疎水性医薬は、ビタミンEであり得る。この導電性組成物は、約10%のビタミンEを含み得る。この疎水性医薬は、ビタミンAまたは魚油であり得る。
【0011】
この電極は、この導電性部材の第二の面に配置された裏打ち部材をさらに備え得る。この電極は、この導電性組成物の表面に選択的に除去可能に接着されたリリースライナーをさらに備え得る。
【0012】
この電極は、この導電性組成物を支持する強化部材をさらに備え得る。この強化部材は、織地および/または不織地の布またはスクリムであり得る。この強化部材は、例えば、金属フィラメントまたはカーボンフィラメントを内部に提供することによって、導電性にされ得る。この電極は、この導電性部材の第一の面および第二の面の少なくとも一部分に配置された、銀(Ag)または銀/塩化銀(Ag/AgCl)をさらに含み得る。
【0013】
この導電性組成物は、ヒドロゲルであり得る。この導電性組成物は、親水性ヒドロゲルであり得、そしてこの抗酸化物質は、疎水性ビタミンE酢酸エステルである。ビタミンE酢酸エステルは、不透明なエマルジョンの形成を防止するような量の界面活性剤を介して、ヒドロゲルと組み合わせられ得る。
【0014】
電気リード線は、ピグテール型のリード線、スナップ型リード線またはタブ型リード線であり得る。
【0015】
本開示のなお別の局面によれば、電極を形成する方法が提供される。この方法は、第一の面および第二の面を有する導電性部材を提供する工程;この導電性部材の第一の面に導電性組成物を提供する工程であって、この導電性組成物は、この導電性組成物に関連する治療有効量の疎水性医薬を含む、工程;裏打ち部材をこの導電性部材の第二の面に提供する工程;ならびに電気リード線をこの導電性部材およびこの導電性組成物のうちの少なくとも一方と電気的に連絡させて提供する工程を包含する。
【0016】
この疎水性医薬は、ビタミンEであり得る。この導電性組成物は、約0.01%〜10%のビタミンEを含み得る。
【0017】
この方法は、この導電性部材の第一の面および第二の面のうちの少なくとも一方に堆積された、銀または塩化銀を提供する工程をさらに包含し得る。
【0018】
この方法は、この導電性組成物の外側表面にリリースライナーを提供する工程をさらに包含し得る。
【0019】
この導電性組成物は、ヒドロゲルであり得る。この導電性組成物は、親水性ヒドロゲルであり得、そしてこの疎水性医薬は、ビタミンE酢酸エステルである。この方法は、このビタミンE酢酸エステルとこのヒドロゲルとを、不透明なエマルジョンの形成を防止するような量の界面活性剤を介して組み合わせる工程をさらに包含し得る。
【0020】
導電性組成物を提供する工程は、ある量の疎水性材料および疎水性医薬のうちの少なくとも1つを提供する工程;ある量の界面活性剤を提供する工程;この界面活性剤とこの疎水性医薬とを複合体化させる工程;ある量の親水性材料を提供する工程;ならびにこの複合体化した界面活性剤およびこの疎水性医薬と、この親水性材料とを組み合わせる工程を包含し得る。
【0021】
この方法は、導電性組成物内に強化部材を提供する工程をさらに包含し得る。
【0022】
本開示のさらなる局面によれば、生体適合性導電性組成物を形成する方法が提供され、この方法は、2−(アクリルアミド)−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(NaAMPS)の溶液を量り取り、このNaAMPSを容器に入れる工程;架橋剤を量り取り、このNaAMPSに添加して、モノマー溶液を形成する工程;アクリル酸を量り取り、このモノマー溶液に添加する工程;塩を量り取り、このモノマー溶液に添加する工程;約10分間混合する工程;グリセロールを量り取り、このモノマー溶液に添加する工程;シリカを量り取り、このモノマー溶液に添加する工程;水酸化ナトリウムをこのモノマー溶液に滴下して、このモノマー溶液のpHを約3.50±0.05にする工程;このモノマー溶液に対するある量の界面活性剤およびビタミンE酢酸エステルを量り取る工程;この界面活性剤およびビタミンE酢酸エステルをこのモノマー溶液に添加する工程;触媒を量り取り、このモノマー溶液に添加する工程;このモノマー溶液を約30分間混合する工程;このモノマー溶液をリリースライナー上にコーティングする工程;ならびにこのモノマー溶液のコーティングをキセノンアークUVランプで約25秒間照射する工程を包含する。
【発明の効果】
【0023】
疎水性材料を組み込む生物医学的電極、およびその形成方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、層が分離されたリード線型として示される、本開示の例示的な電極の概略斜視図である。
【図2】図2は、図1の電極の断面図である。
【図3】図3は、本開示の実施形態によるスナップ型電極の断面図である。
【図4】図4は、本開示の実施形態によるタブ型電極の断面図である。
【図5】図5は、本開示の原理に従う、電極を製造する方法を図示する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付の図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、本開示の実施形態を図示し、そして上に与えられた本開示の一般的な説明および以下に与えられる実施形態の詳細な説明と一緒に、本開示の原理を説明する役に立つ。
【0026】
(実施形態の詳細な説明)
本開示のシステムおよび方法の実施形態が、ここで図面を参照しながら詳細に記載される。図面において、同じ参照番号は、類似の要素または同一の要素を識別する。
【0027】
最初に図1および図2を参照すると、本開示の実施形態による電極が、一般に、電極100として示されている。電極100は、導電性部材102を備え、この導電性部材は、患者に対する第一の面または皮膚面102a、および第一の面102aの反対側の第二の面102bを規定する。導電性部材102は、導電性の炭素、アルミニウム、スズまたは他の任意の適切な導電性材料から作製され得る。代替例として、導電性部材102は、導電性プラスチック材料を含み得る。導電性部材102は、第一の面102aまたは第二の面102bの少なくとも一部分に配置された、銀(Ag)材料または銀/塩化銀(Ag/AgCl)材料を含み得る。第一の面102aまたは第二の面102bのうちのいずれかはまた、その第一の面102aまたは第二の面102bのいずれかの上に、銀(Ag)組成物または銀/塩化銀(Ag/AgCl)組成物またはインク106のコーティングを有し得る。
【0028】
電極100は、導電性部材102の第一の面102aに隣接して配置された導電性組成物104をさらに備え、この導電性組成物は、被験体の皮膚への塗布/接着または被験体の皮膚との接触のためのものである。導電性組成物104は、例えば、Promeon RG−63Bヒドロゲル(Tyco Healthcare Group LP(Covidienとして事業経営中))から作製され得るが、これに限定されない。図1および図2に見られるように、いくつかの実施形態において、導電性組成物104は、強化部材を組み込み得る。強化部材は、この導電性組成物中に包埋されているか、またはヒドロゲルの構造を支持する、織地または不織地の布またはガーゼ材料(例えば、スクリム)105であり得る。この強化部材は、導電性材料から作製され得る。導電性組成物104は、任意の様々な市販の導電性ヒドロゲルであり得る。導電性組成物104は、一般に親水性である。
【0029】
導電性組成物104は、この導電性組成物中に組み込まれた、治療有効量の疎水性医薬を含む。この疎水性医薬としては、ビタミンE、ビタミンAなどが挙げられ得るが、これらに限定されない。例えば、導電性組成物104は、この導電性組成物中に組み込まれたビタミンE酢酸エステルを含み得る。この導電性組成物と組み合わせられ得る抗酸化物質のさらなる親水性医薬としては、ビタミンA、ビタミンC、魚油、または抗酸化物質特性に起因して皮膚状態を処置するために通常使用される他の任意の組成物が挙げられるが、これらに限定されない。この疎水性医薬は、被験体の皮膚の刺激、損傷、火傷、または乾燥のある程度の軽減をこの被験体の皮膚に提供するために充分な量で、導電性組成物104に添加される。この疎水性医薬は、導電性組成物104中に、約0.01%〜10%の濃度で提供され得る。
【0030】
親水性導電性組成物104に添加される疎水性材料の量は、この親水性導電性組成物の不透明なエマルジョンが回避されるような量である。1つの例示的な実施形態において、導電性組成物104は、食品等級の界面活性剤(例えば、約0.05%の濃度のAntarox(登録商標)BL236(脂肪族ポリエーテルであり、Rhone Poulenc,Courbevoie,Franceから市販されている))を含み、この界面活性剤は、ビタミンE酢酸エステルと複合体を形成して、ビタミンE酢酸エステルをヒドロゲル中に運ぶために使用される。
【0031】
一般に、ビタミンEは、抗酸化物質特性を示し、この特性は、身体組織を、フリーラジカルと呼ばれる望ましくない物質により引き起こされる損傷から保護することを補助する。フリーラジカルは、細胞、組織、および器官を害し得る。導電性組成物104に治療有効量の疎水性医薬(例えば、ビタミンE酢酸エステル)を提供することによって、電極100を皮膚に適用する際に、患者の皮膚は、この皮膚に対するいずれかの刺激、損傷、火傷、乾燥のある程度の軽減を受ける。
【0032】
図1および図2に戻って参照すると、第一面のリリースライナー114は、導電性組成物104に除去可能に固定される。リリースライナー114は、片面または両面にリリースコーティング(例えば、シリコーン)を有するフィルムまたは紙基材から作製され得る。リリースライナー114は、導電性組成物104(例えば、ヒドロゲル)を保護および/または保存し、そして被験体の皮膚への適用前に除去される。リリースライナー114は、電極100の使用後に導電性組成物104に再度適用されて、導電性組成物104が引き続いて使用されることを防止し得る。
【0033】
リリースライナー114は、剥離紙、または蝋もしくはコーティングを付けられたプラスチックのフィルム(例えば、シリコーンでコーティングされたポリエチレンテレフタレートフィルム)であり得、これは、電極を被験体の皮膚に適用する前に、電極100を保護するために使用され得る。
【0034】
1つの実施形態において、電極100は、導電性部材102の第二の面102bに隣接して配置された、裏打ち部材108をさらに備え得る。特定の実施形態において、裏打ち部材108は、銀コーティング106の上に重なり得る。裏打ち部材108は、非導電性材料(例えば、布、生地、プラスチック材料など)から製造される。
【0035】
電極100は、電気リード線を、(図1および図2に見られるような)リード線112の形態でさらに備える。リード線112は、ピグテール構成を有し、これは、少なくとも1つの導電性部材102および電源(図示せず)と電気的に連絡する。外部設備から被験体の皮膚への電気経路は、リード線112から導電性部材102および銀コーティング106を通り、導電性組成物104を通って被験体へと延びる。
【0036】
使用において、リリースライナー114が電極100から除去される。次いで、電極100が被験体の皮膚に適用され、その結果、導電性組成物104がこの被験体の皮膚に接着される。次いで、電極100が外部医療設備(図示せず)に、当該分野において周知である任意の接続手段によって(例えば、リード線112を介して)電気的に接続される。電極100は、例えば、当業者に公知である手段によって電気刺激デバイスに接続される、TENS電極であり得る。
【0037】
ここで図3を参照すると、電極100は、スナップ型電極として構成され得、このスナップ型電極は、電気スナップコネクタ212の形態の電気リード線を備える。スナップコネクタ212は、ポストまたは要素212aを備え、このポストまたは要素は、導電性部材102と接触し、そして銀コーティング106および裏打ち部材108を通って延びる。スナップコネクタ212は、ポスト212aに接続されるヘッドまたはスタッド212bを備える。
【0038】
ここで図4を参照すると、電極100は、タブ型電極として構成され得、ここで、裏打ち部材108は、導電性部材102の外周または縁部を越えて延びる部分108aを備え、これにより、タブを規定する。図4に見られるように、銀コーティング106は、裏打ち部材108のタブ部分108aの表面上に広がる。
【0039】
ここで図5を参照して、本開示の実施形態による電極100の形成の流れ図が示され、説明される。本方法によれば、ある量の疎水性医薬(例えば、ビタミンE酢酸エステル)が提供される。例えば、約1.0グラムのビタミンE酢酸エステルが提供され得る。ある量の界面活性剤(例えば、約0.05%の濃度のAntarox(登録商標)BL236(脂肪族ポリエーテルであり、Rhone Poulenc,Courbevoie,Franceから市販されている))もまた提供される。例えば、約0.5グラムの界面活性剤が提供され得る。食品等級の界面活性剤が使用されることが企図される。次いで、界面活性剤およびビタミンE酢酸エステルは、互いに複合体を形成する。
【0040】
ある量の親水性材料が提供される。例えば、約98.95%のヒドロゲルが、導電性組成物の基礎を形成し得る。次いで、複合体を形成した界面活性剤およびビタミンE酢酸エステルが、このヒドロゲルと、当業者に公知の様式で、エマルジョンを形成しないような様式で、組み合わせられる。提供されるビタミンEの量は、電極100が患者の皮膚に適用される場合に、この患者の皮膚に治療効果を提供するために充分であることが企図される。
【0041】
本開示の原理に従う導電性組成物104を混合する方法は、以下の工程を包含し、これらの工程のうちの少なくともいくつかは、連続的に行われる。
【0042】
1. 2−(アクリルアミド)−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(NaAMPS)の溶液を約45.416グラム量り取り、きれいな容器(例えば、100mlのガラスビーカー)に入れる工程;
2. この容器を電気ミキサーの下に置く工程であって、このミキサーは、3枚刃のプロペラ型混合棒を備え得る、工程;
3. 架橋剤(例えば、水溶液中1%のMBA)を量り取り(約2.980グラム)、そしてこの架橋剤をミキサー中のNaAMPSのボルテックスに添加する工程;
4. アクリル酸を約2.780グラム量り取り、そしてこのアクリル酸をモノマー溶液のボルテックスに添加する工程;
5. 塩(塩化ナトリウムNaCl)を約2.000グラム量り取り、そしてこの塩をモノマー溶液のボルテックスに添加する工程;
6. 混合を約10分間続ける工程;
7. 約42.665グラムの量のグリセロールを量り取り、そしてこのグリセロールをモノマー溶液のボルテックスに添加する工程;
8.約2.490グラムのシリカを量り取り、そしてこのシリカをモノマー溶液のボルテックスに添加する工程;
9.較正したpHプローブをこの混合ボルテックスの縁部に配置する工程;
10. 水酸化ナトリウム(NaOHの50%溶液)をこのモノマー溶液に滴下して、このモノマー溶液のpHを3.50±0.05にする工程(約0.122グラム);
11. その後、pHプローブを除去する工程;
12. 約0.050グラムの量の界面活性剤(Antarox(登録商標)BI−236(脂肪族ポリエーテルRhone Poulencであり、RhonePoulenc,Franceから市販されている))および約1.000グラムの量のビタミンE酢酸エステルを量り取り、そしてこの界面活性剤およびビタミンE酢酸エステルをモノマー溶液のボルテックスに添加する工程;
13. 約0.497グラムの量の触媒(3%触媒溶液)を量り取り、そしてこの触媒をモノマー溶液のボルテックスに添加する工程;
14. このモノマー溶液を約30分間混合する工程;
15. このモノマー溶液を25ミル(約0.64mm)の厚さでリリースライナー上にコーティングする工程;
16. このモノマー溶液のコーティングをキセノンアークUVランプで約25秒間照射する工程;ならびに
17. 得られたポリマーフィルムをリリースコーティングされたポリエチレンフィルムで覆い、そしてポリフォイルパウチ(poly−foil pouch)でシールする工程。
【0043】
次いで、ビタミンEを少量加えたヒドロゲルが、当該分野において公知である方法に従って、電極100の構築において使用され得る。
【0044】
本開示によれば、電極100を形成する方法は、例えば、第一の面および第二の面を有する導電性部材を提供する工程;この導電性部材の第一の面に導電性組成物を提供する工程であって、この導電性組成物は、この導電性組成物に関連する治療有効量の疎水性医薬を含む、工程;この導電性部材の第二の面に裏打ち部材を提供する工程;ならびに電気リード線を導電性部材および導電性組成物のうちの少なくとも一方と電気的に連絡させて提供する工程を包含する。
【0045】
抗酸化物質は、ビタミンEであり得る。導電性組成物は、約0.01%〜10%のビタミンEを含み得る。
【0046】
この方法は、銀(Ag)または銀/塩化銀(Ag/AgCl)の組成物またはインクを、導電性部材の第一の面および第二の面のうちの少なくとも一方の少なくとも一部分に提供する工程をさらに包含し得る。
【0047】
この方法は、導電性組成物の外側表面にリリースライナーを提供する工程をさらに包含し得る。
【0048】
この導電性組成物は、ヒドロゲルであり得る。この導電性組成物は、親水性ヒドロゲルであり得、そしてこの医薬は、疎水性ビタミンE酢酸エステルである。この方法は、ビタミンE酢酸エステルとヒドロゲルとを、エマルジョンの形成を防止するような量の界面活性剤を介して組み合わせる工程をさらに包含し得る。
【0049】
導電性組成物を提供する工程は、ある量の疎水性材料のうちの少なくとも1つを提供する工程;ある量の界面活性剤を提供する工程;この界面活性剤とこの疎水性物質とを複合体化させる工程;ある量の親水性材料を提供する工程;ならびにこの複合体を形成した界面活性剤および疎水性材料と、抗酸化物質とを、この親水性材料と組み合わせる工程を包含し得る。
【0050】
この方法は、導電性組成物中に強化部材を提供する工程をさらに包含し得る。
【0051】
上記開示の種々の実施形態ならびに他の特徴および機能、またはこれらの代替例が、所望であれば、他の多くの異なるシステムまたは用途に組み合わされ得ることが理解される。また、これらの実施形態の現在予測または認識されない種々の代替例、改変、バリエーションまたは改善が、当業者によって後になされ得、これらもまた、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。特許請求の範囲において具体的に記載されない限り、特許請求の範囲の工程または構成要素は、任意の特定の順序、数、位置、大きさまたは材料に関して、本明細書または他のいずれかの請求項により示唆も含意もされないべきである。
【符号の説明】
【0052】
100 電極
102 導電性部材
104 導電性組成物
106 インク
108 裏打ち部材
114 リリースライナー
112 リード線
212 スナップコネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の面および第二の面を規定する導電性部材;
該導電性部材の該第一の面に配置された導電性組成物であって、該導電性組成物は、治療有効量の疎水性医薬を含む、導電性組成物;ならびに
該導電性部材と電気的に連絡する電気リード線、
を備える、生物医学的電極。
【請求項2】
前記疎水性医薬がビタミンEである、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記導電性組成物が、約0.01%〜10%のビタミンEを含む、請求項2に記載の電極。
【請求項4】
前記導電性組成物が、約10%より多いビタミンE、約0.01%〜10%のビタミンA、および約0.01%〜10%の魚油のうちの1つを含む、請求項2に記載の電極。
【請求項5】
銀および塩化銀のうちの少なくとも1つのコーティングを、前記導電性部材の前記第一の面および前記第二の面のうちの少なくとも一方の少なくとも一部分にさらに備える、請求項1に記載の電極。
【請求項6】
前記導電性組成物が親水性ヒドロゲルであり、そして前記疎水性医薬がビタミンE酢酸エステルであり、該ビタミンE酢酸エステルが、該ヒドロゲルと、不透明なエマルジョンの形成を防止するような量の界面活性剤を介して組み合わせられている、請求項1に記載の電極。
【請求項7】
第一の面および第二の面を有する導電性部材を提供する工程;
該導電性部材の該第一の面に導電性組成物を提供する工程であって、該導電性組成物は、該導電性組成物に関連する治療有効量の疎水性医薬を含む、工程;
該導電性部材の該第二の面に裏打ち部材を提供する工程;ならびに
電気リード線を該導電性部材および該導電性組成物のうちの少なくとも一方と電気的に連絡させて提供する工程
を包含する、電極を形成する方法。
【請求項8】
前記疎水性医薬が、ビタミンE、ビタミンAおよび魚油のうちの1つである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記導電性組成物が、約0.01%〜10%のビタミンEを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
銀または銀/塩化銀のコーティングを、前記導電性部材の前記第一の面および前記第二の面のうちの少なくとも一方の少なくとも一部分に提供する工程をさらに包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記導電性組成物を提供する工程が、
ある量の疎水性医薬を提供する工程;
ある量の界面活性剤を提供する工程;
該界面活性剤と、疎水性材料および抗酸化物質のうちの少なくとも1つとを複合体化させる工程;
ある量の親水性材料を提供する工程;ならびに
該複合体化した界面活性剤および該疎水性医薬を、該親水性材料と組み合わせる工程
を包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記導電性組成物が親水性ヒドロゲルであり、そして前記疎水性医薬がビタミンE酢酸エステルであり、そして前記方法が、該ビタミンE酢酸エステルと該ヒドロゲルとを、不透明なエマルジョンの形成を防止するような量の界面活性剤を介して組み合わせる工程をさらに包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記界面活性剤が脂肪族ポリエステルである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
2−(アクリルアミド)−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(NaAMPS)を量り取り、そして該NaAMPSを容器に入れる工程;
架橋剤を量り取り、そして該架橋剤を該NaAMPSに添加してモノマー溶液を形成する工程;
アクリル酸を量り取り、該アクリル酸を該モノマー溶液に添加する工程;
塩を量り取り、該塩を該モノマー溶液に添加する工程;
約10分間混合する工程;
グリセロールを量り取り、該グリセロールを該モノマー溶液に添加する工程;
シリカを量り取り、該シリカを該モノマー溶液に添加する工程;
水酸化ナトリウムを該モノマー溶液に滴下して、該モノマー溶液のpHを約3.50±0.05にする工程;
該モノマー溶液に対してある量の界面活性剤およびビタミンE酢酸エステルを量り取る工程;
該界面活性剤および該ビタミンE酢酸エステルを該モノマー溶液に添加する工程;
触媒を量り取り、該触媒を該モノマー溶液に添加する工程;
該モノマー溶液を約30分間混合する工程;
該モノマー溶液をリリースライナー上にコーティングする工程;ならびに
該モノマー溶液のコーティングをキセノンアークUVランプで約25秒間照射する工程
を包含する、生体適合性導電性組成物を形成する方法。
【請求項15】
約45.416グラムのNaAMPS;
約2.980グラムの架橋剤;
約2.780グラムのアクリル酸;
約2.000グラムの塩化ナトリウム;
約42.665グラムのグリセロール;
約2.490グラムのシリカ;
約0.122グラムの塩化ナトリウム;
約0.050グラムの界面活性剤;
約1.000グラムのビタミンE酢酸エステル;および
約0.497グラムの触媒
のうちの少なくとも1つを提供する工程をさらに包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
pHプローブを使用して前記モノマー溶液のpHを測定する工程をさらに包含する、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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