説明

生物学に導かれた適応的な治療計画

治療システムは、画像化器、治療計画器、及び治療装置を含む。治療計画器は、治療処方装置を含む。治療処方装置は、人間の患者又は他の対象に適用される、所望の治療を計算する。治療処方システムは、病状モデル及び患者に固有な生物学的パラメーター履歴を使うことにより、適用される治療を最適化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は医療における治療計画に関する。本願発明には、特定の応用として、外部放射線治療及び分子治療学がある。しかし、本願発明は、治療を患者又は他の対象に適用する、他の状況にも関する。
【背景技術】
【0002】
計算機断層撮影法(CT)の画像は、腫瘍学における放射線治療計画(RTP)に関して広く使われている。治療計画を立てるためには、腫瘍及び危険器官をCT画像で見つけて線引きする。そして、適切な放射線照射量を処方する。処方された治療計画は、通常、目標の組織に適用される放射線照射量を最大化し、同時に、周辺の組織及び危険器官を損なうことを最小化するように設計される。
【0003】
分割放射線治療では、処方された放射線照射量を、所望の期間に渡って、分割して適用する。例えば、何週間かの治療計画に渡って分割する。分割照射によって、健康な組織が、望まれない放射線の効果から、少なくとも部分的に回復できる。従って、目標の組織に対して、1回の適用のみで通常照射されうる放射線量に比べて、より多量の放射線を合計で照射できる。
【0004】
従来は、患者に分割放射線治療計画を適用する場合は、人工的な又は自然な基準マーカーに関して放射線ビームを一致させていた。基準マーカーとは例えば刺青若しくは他の適用されるマーカー、骨及び他の解剖学的な構造、又は類似物である。基準マーカーは、目標の領域に既知の関係を持つ。しかし、解剖学的な変化、分割治療と分割治療の間でマーカーが変わる、及び1回の分割治療の最中でも患者が動く、等の要因により、うまく放射線ビームを一致させられなかったり、他の位置決めの誤りが起こったりしていた。その結果として、実際の被爆が、治療計画とは違うものになり得る。
【0005】
画像に導かれた放射線治療技法又は適応的な放射線治療(ART)技法が、このようなくい違いを減らすのは、分割治療に対して、画像に基づく補正を適用することによる。その結果、適用される放射線照射を、最初に計算した計画に、より近付けるように、調整できる。特許文献1〜3及び非特許文献1〜4を参照のこと。
【0006】
ARTとは対照的に、生物学に導かれた放射線治療(BGRT)は、機能的画像化技法を利用する。機能的画像化技法は、代謝パラメーターの情報を提供する。適切な機能的パラメーターの事前の知識を使うことにより、治療計画を計算する。この治療計画は、目標組織への期待される治療効果を最適化する。非特許文献5を参照のこと。治療計画を計算したら、計画を分割して又は他の方法で適用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】Erbel et al., Method for creating or updating a radiation treatment plan, European patent application EP1238684 (2005).
【特許文献2】Ruchala et al., Method for modification of radiotherapy treatment delivery, United States patent publication 20050201516 (2005).
【特許文献3】Amies et al., Active therapy redefinition, United States patent publication 20040254448 (2004).
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Rehbinder et al., Adaptive radiation therapy for compensation of errors in patient setup and treatment delivery, Med Phys. vol. 31, no. 12, pp. 3363-3371 (2004).
【非特許文献2】Lam et al., An application of Bayesian statistical methods to adaptive radiotherapy, Phys Med Biol. vol. 50, no. 16, pp. 3849-3858 (August 2005).
【非特許文献3】Schaly et al., Image-guided adaptive radiation therapy (igart): Radiobiological and dose escalation considerations for localized carcinoma of the prostate, Med Phys. vol. 32, no. 7, pp. 2193-2203 (July 2005).
【非特許文献4】Yan et al., Computed tomography guided management of interfractional patient variation, Seminars in Radiation Oncology, vol. 15, no. 3, pp. 168-179 (July 2005).
【非特許文献5】Xing et al., Inverse planning for functional image-guided intensity-modulated radiation therapy, Phys Med Biol. vol. 47, pp. 3567-3578 (2002).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ARTの技法とBGRTの技法は、病気の治療でうまく用いられている。しかし、改良の余地もある。とりわけ、望ましいのは、特定の病状の生物学的変化又は特定の患者の生物学的変化を考慮に入れるように、治療計画を調整することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明の諸観点は、これらの課題及び他の課題を解決する。
【0011】
本願発明の1つの観点によれば、治療処方装置は、数学的な病状モデル及び対象に固有な生物学的パラメーター履歴を使う。これにより、所望の治療を立案する。この治療を対象に適用する。病状モデルは、治療に対する病状の反応をモデル化する。生物学的パラメーター履歴は、対象の機能的画像化検査から得た生物学的パラメーター値を含む。
【0012】
本願発明の別の観点によれば、治療処方方法は、数学的な病状モデル及び対象に固有な生物学的パラメーター履歴を使う工程を含む。これにより、所望の治療を立案する。この治療を対象に適用する。病状モデルは、治療に対する病状の反応をモデル化する。生物学的パラメーター履歴は、対象の機能的画像化検査から得た生物学的パラメーター値を含む。
【0013】
本願発明の別の観点によれば、治療処方装置は、病状に適用される治療を計算する。この計算は、所望の生物学的パラメーター値、生物学的パラメーターの測定された値、及び数学的な病状モデルに基づく。数学的な病状モデルは、治療に対する病状の反応をモデル化する。生物学的パラメーターは、病状に対する治療の適用に引き続き、測定される。その測定した値は、空間的に変化する生物学的パラメーター値を含む。
【0014】
本願発明の別の観点によれば、計算機可読格納媒体は命令を含む。その命令を計算機が実行すると、計算機は、次を含む方法を実行する:所望の生物学的パラメーター値、対象に固有な測定された生物学的パラメーター履歴、及び数学的な病状モデルを使うことにより、対象の病状に適用される所望の治療を立案する。
【0015】
本願発明の別の観点によれば、装置は治療計画システム及び治療装置を含む。治療計画システムは:
対象の所望の生物学的なパラメーター値;
対象の病状を示す対象に固有な生物学的パラメーター履歴;及び
治療に対する病状の反応をモデル化する病状モデル;
の関数として、対象に適用される継続した治療の特性を立案する。治療装置は、治療計画システムに電気的に接続して動作する。これにより、立案された特性を受け取り、その立案された特性によって治療を適用する。
【0016】
本願発明の別の観点によれば、方法は次を含む:
適用された治療に対する患者集団の測定された反応を示すデータを得る工程;
得たデータを計算機可読格納媒体に格納する工程;及び
計算機網において治療計画システムにそのデータを利用可能にする工程。
【0017】
このデータは次を含む:第1の測定された生物学的パラメーター値;適用された治療;及び、適用された治療に対する反応を示す、第2の測定された生物学的パラメーター値。第1の測定された生物学的パラメーター値及び第2の測定された生物学的パラメーター値は、対象集団の構成員の機能的画像化検査から得られる。
【0018】
本願発明の更なる観点は、当業者であれば、以下の詳細な記述を読みかつ理解することによって、認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】治療計画システムを示す。
【図2】生物学的パラメーター履歴を示す。
【図3】病状モデルを示す。
【図4】治療に対する予期された反応を示す。
【図5】治療方法を示す。
【図6】治療方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、種々の部品及び部品の配置の形態を取ってもよい。本発明は、種々の工程及び工程の配置の形態を取ってもよい。図面を参照するのは、好適な実施例を例示する目的のみである。図面を本発明を限定するように解釈してはならない。
【実施例】
【0021】
図1を参照する。生物学に導かれた適応的な放射線治療(BGART)システム100は、画像化器102、適応的治療計画システム104、及び治療装置106を含む。
【0022】
画像化器102は、解剖学的画像化器108及び機能的画像化器110を含む。解剖学的画像化器108は、解剖学的な画像化の様態である。解剖学的画像化器108は、例えば、計算機断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像(MR)、X線、蛍光透視鏡、又は他の走査器である。解剖学的画像化器108は、患者又は対象101を示す解剖学的な情報を提供する。機能的画像化器110は、機能的な画像化の様態である。機能的画像化器110は、例えば、陽電子放出断層撮影法(PET)、単一陽電子放出計算機断層撮影法(SPECT)、機能的MR(fMR)、又は他の走査器である。機能的画像化器110は、機能的情報を提供する。画像化器102はまた、一致部112を含む。一致部112は、解剖学的画像化器108が生成した容積測定データと、機能的画像化器110が生成した容積測定データを、一致又は相関させる。これにより、例えば、患者の全体の動き及び患者の周期的な動きを補正する。
【0023】
1つの実装では、画像化器102は、複合走査器である。例えば、PET/CT複合システム、SPECT/CT複合システム、PET/MR複合システム、又は、SPECT/MR複合システムである。このような複合システムでは、2つ以上の画像取得様態が、典型的には、共通のガントリー構造を共有する。さもなくば、このような複合システムでは、2つ以上の画像取得様態が、互いに近くに位置する。例えば、このような複合システムでは、2つ以上の画像取得様態で、各々の検査領域が少なくとも部分的に、重なる又は共通の縦軸方向に並ぶように、配置される。複数の操作の間に患者の位置を変える必要性を減らすために、複合システムは、典型的に、患者の支持台を共有する。患者の支持台を用いて、必要に応じて、患者の検査領域の各々を様々に位置付けることができる。
【0024】
図1を続けて参照する。適応的治療計画システム104は、画像化器102に電気的に接続して動作する。適応的治療計画システム104は、生物学的パラメーター計算下位システム114、輪郭化下位システム116、治療処方下位システム118、及び治療計算装置である照射量計算下位システム120を含む。
【0025】
生物学的パラメーター計算下位システム114は、機能的画像化器110からの情報を用いて、1つ以上の生物学的パラメーターマップを生成する。生物学的パラメーターマップは、対象の関心領域の生物学的パラメーター又は生物学的諸パラメーターを示す。腫瘍学の場合では、例えば、典型的な生物学的諸パラメーターは、次を含んでもよい:腫瘍の放射線感受性(例えば、FMISOのようなトレーサーを使うPETの走査から得られる);又は腫瘍の増殖(例えば、FLTのようなトレーサーを使うPETの走査から得られる)。他の生物学的パラメーターを考えることもできる。このことは、特定の機能的画像化器110の特性及び特定のトレーサーの特性並びに応用に固有の他の要求次第である。
【0026】
以下の議論では、種々の生物学的パラメーターをbと書く。ここでiはN以下の正の整数である。良い空間的な精確度を得るには、一般に、ボクセルの水準で生物学的パラメーター及び他のパラメーターをモデル化する。しかし、モデル化を所望の粒度の水準で行ってもよい。このことは、要求される精確度、画像化器102の特性、及びアプリケーションに固有な他の要素に依存する。
【0027】
輪郭化下位システム116は、解剖学的画像化器108及び/又は生物学的パラメーター計算下位システム114からの情報を使って、画像データの1つ以上の関心領域を線引きする。従って、例えば、輪郭化下位システム116は、1つ以上の病的な領域を線引きしてもよい。病的な領域とは、例えば腫瘍又は治療を要する他の病巣である。輪郭化下位システム116は、また、放射線が当たるのを避けるのが望ましい、健康な組織の1つ以上の領域を線引きしてもよい。
【0028】
生物学的に適応した治療処方下位システム118は、生物学的パラメーター計算下位システム114及び輪郭化下位システム116からの情報を使って、所望の治療Dを計算する。放射線腫瘍学の例の場合では、所望の治療Dは、目標照射量マップを含んでもよい。目標照射量マップは、腫瘍の1つ以上の領域に適用される、所望の放射線照射量を示す。目標照射量マップはまた、分割治療と分割治療の間の、所望の期間を示す。所望の治療Dはまた、放射線を当てないのが望ましい、線引きされた健康な領域に、それでもどうしても当たってしまう、放射線の最大照射量の情報を提供してもよい。
【0029】
下記に、より詳細に記述する通り、治療処方下位システム118はまた、病状モデル122及び生物学的パラメーター履歴情報124を適用することにより、特定の患者又は特定の病状の、観察された特性に基づいて、治療を適応又は他の仕方で調整する。例えば、以前に適用した治療に対する、病状の反応又は病状に隣接する健康な組織の反応に基づく。
【0030】
治療計算装置である治療照射量計算下位システム120は、治療処方下位システム118からの所望の治療Dを、解剖学的データ、生物学的データ、輪郭データ、及び/又は他のデータと組み合わせて使う。これにより、目標の治療を近似する治療計画を計算する。放射線腫瘍学の応用の場合では、治療は、外部の放射線医療装置を用いて行われることになる。この場合、治療計算装置である治療照射量計算下位システム120は、既知の強度変調放射線治療(IMRT)又は他の技法を使って、1つ以上の所望の放射線経路、被爆時間、及び類似の情報を計算する。これにより、適用する放射線照射量の空間的な分布が、目標照射量マップを近似する。
【0031】
治療装置106は、治療計画システム104と、電子的又は他の網通信インターフェースによって通信する。治療装置106は、所望の治療Dを患者又は対象に適用する。前述の議論は放射線腫瘍学及び外部の放射線治療装置の使用に焦点を当てた。しかし、理解すべきは次である。即ち、他の外部治療装置106及び非外部治療装置106も考えられ、また、他の外部治療装置106及び非外部治療装置106を選択してもよい。この選択は、関連する病状及び所望の治療の様態のような要因に基づく。このような治療装置は次を含むがこれらに限定されない:近接照射治療装置;高密度焦点式超音波(HIFU)装置;凍結療法装置;並びに熱及び/又は高周波焼灼装置。このような治療装置は更に次を含むがこれらに限定されない:外科装置;並びに分子若しくは化学(例えば化学療法)治療装置。
【0032】
生物学的に適応した治療処方下位システム118を、次により詳しく記述する。前述の通り、治療処方下位システム118は、病状モデル122及び生物学的パラメーター履歴情報124を適用することにより、特定の患者又は特定の病状の特性に従って、治療を調整する。概して望ましいのは、病状モデル122が、生物学的システムの伝達関数をできるだけ厳密にモデル化することである。しかし、当業者が理解する通り、病状モデル122は、不完全なものである確率が高い。病状モデル122が不完全であるのは、多くの要因のせいである。要因とは例えば、(測定できる)パラメーターの数及び選択、患者及び病状に固有の変動、等である。
【0033】
さて、1つの観点から見ると、治療処方下位システム118を、繰り返しシステム又は閉ループシステムを実装する部分と見なすことができる。このシステムは、関連する生物学的パラメーター又は諸パラメーターbの実際の値bi,actualと所望の値bi,targetを入力として受け取る。治療処方下位システム118は、病状モデル122及び生物学的パラメーター履歴情報124を使うことにより、治療を調節する。これにより、実際の生物学的パラメーターの値又は諸値bi,actualが、所望の生物学的パラメーターの値又は諸値bi,targetを近似する。繰り返すが、実際の生物学的パラメーターの値bi,actual及び所望の生物学的パラメーターの値bi,targetを、ボクセルの水準又は他の所望の粒度の水準でモデル化してもよい。
【0034】
図2を参照する。生物学的パラメーター履歴情報124を、多次元の行列として視覚化できる。この行列は、1つ以上の生物学的パラメーターbの値を含む。この1つ以上の生物学的パラメーターbの値は、1つ以上の回数であるt回測られたものである。例えば、ある患者に適用した分割治療の経過の最中で何回も測る。当業者は次を理解できる:図2は、生物学的パラメーター履歴情報124を、図示するのに都合のよいやり方で示しているが、生物学的パラメーター履歴情報124を、いかなる適切なデータ構造に組織化してもよい。例えば、計算機可読記憶装置に組織化してもよい。
【0035】
図3を参照する。病状モデル122は、1つ以上の測定された生物学的パラメーターの値であるbi,actual及び1つ以上の所望の生物学的パラメーターの値であるbi,targetを、入力として受け取り、出力を生成する。この出力は、所望の治療Dを含む。図3に、より詳しく示す通り、例として示す経験的病状モデル122は、次を含む:データベース302;ヒストグラム304;及び治療推定器306。
【0036】
データベース302を、情報の提供源と見なすことができる。この情報は、ある対象集団の構成員について適用した治療に対する期待される反応、及び/又は、ある対象集団の構成員について適用した治療の効果についての情報である。データベース302は、複数の症例から得た測定された生物学的パラメーターであるbi,actual及び複数の症例から得た処方された治療Dを含む。図に示す通り、データベース302は、一連の項目を次の形式で含む:dt,b(t),b(t),Dapplied;ここで、b(t)は時刻tにおける生物学的パラメーターbの測定された値であり、b(t)は時刻tにおける生物学的パラメーターbの測定された値であり、Dappliedは適用された治療である。分割治療の場合は、Dappliedは、適用された分割照射量及び回数のリストを表現できる。データベースの項目はまた、追加の情報又は異なる情報を含んでもよい。例えば次を含んでもよい:患者の年齢及び他の人口統計的データ;病巣の位置;造影剤;並びに他の情報で特定の治療に対する反応に影響すると期待されるもの。
【0037】
情報をデータベース302から得ることによって、適用された治療Dに対する期待される反応についてのより一般化した情報を得ることができる。例えば、データベース302から得た情報を使って、条件付きの2次元ヒストグラムを生成できる。このヒストグラムは、bi,response(dt,D)|bi,initialという形式を取る。ここで、bi,responseは、治療Dを適用した後の時刻dtにおける生物学的パラメーターbの予期される値を示す。ここで初期生物学的パラメーターの値をbi,initialとする。
【0038】
図4に、適当な2次元のヒストグラムの例を示す。ある初期生物学的パラメーターbi,initialについて、ヒストグラムを使って、例えば、次のような組み合わせを判断できる:放射線照射量d及び時間間隔dt、これにより目標状態bi,targetが結果として生ずると期待される。図4に示す通り、可能な組み合わせを、所望の生物学的パラメーター値bi,targetに位置する平面に配置する。同様に、ヒストグラムの頂点(又は谷、これはデータの表示方法による)を使って、最大の効果を生ずると期待される治療Dを識別できる。2次元のヒストグラムを例示したが、3次元以上のヒストグラムを生成してもよい。
【0039】
生物学的パラメーター履歴情報124を使って、選んだ治療Dを更に詳細化してもよい。従って、例えば、以前に適用した治療に対する特定の患者の測定した反応を、病状モデル122と病状モデル122に従って調整した選んだ治療Dとによって予期される反応に対して、比べてもよい。例えば、特定の患者が、病状モデル122によって予期される反応よりも、望ましくないように反応した場合には、適用する照射量を上げるように調整してもよい。
【0040】
治療推定器306は、情報を、ヒストグラム304及び所望の目標状態の生物学的パラメーター値bi,targetから受け取る。これにより、治療推定器306は、治療Dを選ぶ。この治療Dにより、所望の目標状態が得られると推定される。次に注意。即ち、所望の目標状態の生物学的パラメーター値bi,targetを、次に基づいて決めてもよい:文献;病状モデル122;操作者の経験;又は他の要因。治療推定器306が1つ以上の可能な治療Dを識別した場合には、治療推定器306は、所望の規則に基づいて、適切な治療を推薦してもよい。規則とは、例えば、目標状態に達するまでの、最小照射適用量d及び最小期待時間dtである。又は、治療推定器306が1つ以上の可能な治療Dを識別した場合には、治療推定器306は、可能な治療の中から利用者が治療を選ぶことを要求してもよい。
【0041】
前述の通りシステム100の1つの実装を記載した。しかし、変化も考えられる。例えば、画像化器102を、複合画像化システム以外で実装してもよい。従って、解剖学的画像化器108及び機能的画像化器110を、別々のシステムで実装してもよい。又は、解剖学的画像化器108及び機能的画像化器110を、単一の画像化器で実装してもよい。この単一の画像化器を使って、解剖学的情報と機能的情報の双方を得られる。例えば、このような単一の画像化器としては、fMR走査器がある。解剖学的画像化器108を省いてもよい。
【0042】
治療計画システム104を、有利には、計算機ワークステーションで実装する。計算機ワークステーションとは、例えば、汎用又は他の計算機である。計算機は、グラフィカル利用者インターフェース(GUI)を持つ。GUIによって、計算機は、利用者と対話する。治療計画システム104を、画像化器102に関連するワークステーションに組み込んでもよい。治療計画システム104は、複数の計算機を使ってもよい。治療計画システム104は、他の方法で実装してもよい。一致システム112も、同様に、画像化器102とは別に実装してもよい。一致システム112を、治療計画システム104の部分として実装してもよい。一致システム112を、他の方法で実装してもよい。次が考えられる。即ち、種々の計算機は、計算機可読格納媒体を、含む又は他の仕方で利用する。計算機可読格納媒体は、命令を含む。この命令を計算機の処理装置又は計算機の諸処理装置が実行すると、その計算機は、前述の手法を実行することになる。
【0043】
前述の経験に基づく病状モデル122の議論を、ヒストグラム304に関して記載した。しかし、他の適切な数学的モデルを用いてもよい。更に、病状モデル122は、放射線生物学に基づいてもよく、解析に基づいてもよい。そのような場合では、所望の治療Dの計算は、適切な数学的モデルを使ってもよい。病状モデル122はまた、規則に基づいてもよい。例えば、病状モデル122は、専門家システムに基づく実装に関連してもよい。
【0044】
データベース302はまた、種々の代替の治療に関する情報を含んでもよい。例えば、1つ以上の分子薬剤に対する反応に関する情報を含んでもよい。データベース302はまた、種々の治療の様態に関する情報を含んでもよい。例えば、データベース302は、次に関する情報を含んでもよい:照射治療に対する反応;分子治療に対する反応;熱治療に対する反応;又はは他の治療に対する反応;これらの治療は、個別に適用されてもよく、調整して適用されてもよく、又は、他の治療に対する補助的な治療であってもよい。従って、病状モデル122はまた、1つ以上の治療の型に対する病状の反応をモデル化してもよい。従ってまた、病状モデル122を用いて、現在の治療の最適化を推薦してもよいのみならず、代替の治療又は補助の治療を推薦してもよい。この点に関して、所望の分子薬剤若しくは他の治療の様態、投与の水準、又は治療の間隔をも、治療を決定するための入力として、受け入れてもよい。データベース302からの情報及び/又は生物学的パラメーター履歴情報124を使って、治療計画の傾向を表示してもよい。
【0045】
データベース302を、治療計画システム104に格納する必要は無い。実際、データベース302それ自体が、治療処方下位システム118から直接利用できる必要は無い。この場合、データベース302を使って、適切な病状モデル122を作ってもよい。すると、この適切な病状モデル122を、治療計画システム104から利用できる。何れにしても、データベース302又はデータベース302から導出した情報を、計算機可読記憶装置に格納してもよい。この計算機可読記憶装置は、治療計画システム104から利用できる。又は、この計算機可読記憶装置を、網から利用できる。網の例は病院のHIS(病院情報管理システム)/RIS(放射線科情報管理システム)システム、DICOMインターフェース、インターネット等である。病状モデル122をまた、時々更新してもよい。これにより、データベース302における変更を反映する。データベース302も、同様に、時々更新してもよい。これにより、追加のデータ又は異なるデータを反映する。
【0046】
同様に、生物学的パラメーター履歴情報124を、治療計画ワークステーションに格納する必要は無い。代わりに、所望の生物学的パラメーター履歴情報124を、遠隔地に格納してもよく、必要に応じて利用してもよい。例えば、所望の生物学的パラメーター履歴情報124を、病院のHIS(病院情報管理システム)/RIS(放射線科情報管理システム)システム、DICOMインターフェース、インターネット、又は他の適切な通信網を経由して使ってもよい。
【0047】
放射線腫瘍学以外の応用も考えられる。例えば、記載した技法を、分子治療及び化学治療にも適用できる。当業者は更に別の応用も考えられる。
【0048】
図5を参照する。システム100の動作を説明する。機能的情報を得るのが工程502である。例えば、この際に機能的画像化器110を使う。解剖学的情報が必要であれば、同様に取得する。また、必要な、一致、輪郭化、及び他の類似の工程を実施する。結果の画像データを、生物学的パラメーター履歴情報124に格納する。次に注意。即ち、有利には、最初の画像集合を、最初の治療の前に得ておく。
【0049】
機能的画像化器110からの情報を使って、所望の機能的パラメーターである生物学的パラメーターbを計算する。これが工程504である。
【0050】
工程506で、所望の状態又は所望の諸状態であるbi,target、実際の状態又は実際の諸状態であるbi,actual、及び病状モデル122を使って、所望の治療Dを計算する。次に注意。即ち、以前に適用された治療を変化させることに加えて、所望の治療Dはまた、治療計画の変更を推薦してもよい。例えば、分子治療から放射線治療への変更を推薦してもよい。また、追加の治療又は他の補助的な治療を適用することへの変更を推薦してもよい。利用者に、目標情報であるbi,targetを入力する又は他の方法で確認するように、入力を促してもよい。次に注意。即ち、この段階での目標状態は、最終的な所望の目標状態である必要は無い。最終的な所望の目標状態とは、例えば、腫瘍学における応用の場合であれば、腫瘍が有意に不活性である生物学的パラメーター値である。即ち、この段階での目標状態は、代わりに、中間的な目標状態であってもよい。分割治療の場合であれば、例えば、この中間的な目標状態を、現在の治療が何回目であるかによって決めてもよい。これにより、治療の分割に応じた、動く目標を適用する。次に注意。即ち、目標を、有利には、次の条件で選ぶ。即ち、合理的な、適切な、その他の、照射量、治療間隔、又は他の治療のパラメーターを使って、目標を達成できると期待できるという条件である。実際の状態の情報である生物学的パラメーターの値bi,actualを、有利には、生物学的パラメーター履歴情報124から得る。利用者に、提案の治療Dを確認する又は他の方法で承認するように、入力を促してもよい。
【0051】
治療Dを適用するのが工程508である。この点に関して、次に注意。即ち、治療は、1回以上の分割照射の適用を含んでもよい。
【0052】
以上の処理過程を必要に応じて繰り返す。これが工程510である。例えば、病状が所望の状態又は所望の諸状態bi,targetに達するまで繰り返す。理解できる通り、このように繰り返すことにより、病状モデル122の不完全さの影響を減らすことができる。また、後続の測定からの情報を使って、治療を適応できる。これにより、適用した治療に対する特定の患者の実際の反応を、より細かく反映できる。
【0053】
図6を参照する。適切な治療技法を更に記述する。
【0054】
602で、第1の生物学的パラメーターの測定値bi,measured(x,y,z,t)を時刻tで得る。この例ではボクセル水準の測定値とするが、類似の測定値を画像空間における複数のボクセルについて得ることも考えられる。繰り返すが、測定値を、他の水準の粒度で得てもよい。
【0055】
第1の空間的に変化する治療D(x,y,z,t1,2)を計算し、適用する。これが604である。この図に示す例では、第1の照射を第1の空間領域606に渡って適用する。また、第2の照射を第2の空間領域608に渡って適用する。繰り返すが、所望の照射量を、ボクセルの水準又は他の所望の水準で、計算し及び/又は変化させてもよい。
【0056】
610で、第2の生物学的パラメーターの測定値bi,measured(x,y,z,t)を所望の時刻tで得る。この得た値を、目標状態bi,target(x,y,z)と比べる。
【0057】
必要であれば、第2の空間的に変化する治療D(x,y,z,t1,2)を計算し、適用する。これが606である。図に示す通り、治療処方下位システム118は、病状モデル122及び/又は生物学的パラメーター履歴情報124に基づいて、適用された治療の、空間的な広がり及び照射水準(612及び614)を変化させる。
【0058】
616で、第3の生物学的パラメーターの測定値bi,measured(x,y,z,t)を所望の時刻tで得る。この得た値を、目標状態bi,target(x,y,z)と比べる。この処理過程を、望む通り、病状が目標状態bi,target(x,y,z)に達するまで繰り返してもよい。
【0059】
本発明を好適な実施例を参照して記載した。読者は前述の詳細な記載を理解することによって改造及び変更を思いついてもよい。そのような改造及び変更が、添付の特許請求の範囲又はその均等物の範囲に収まる限り、本願発明は、そのような改造及び変更の全てを含むものとして解釈されることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
病状モデル及び対象に固有な生物学的パラメーター履歴を使う、治療処方装置、ここで、前記治療処方装置は、前記対象に適用される所望の治療を立案し、前記病状モデルは、治療に対する病状の反応をモデル化し、前記生物学的パラメーター履歴は、前記対象の機能的画像化検査から得られた生物学的パラメーター値を含む。
【請求項2】
適用された治療に対する観察された反応に基づいて、前記所望の治療を繰り返し調整する、請求項1の装置。
【請求項3】
測定された生物学的パラメーター値が、所望の値に達するまで、前記所望の治療を繰り返し調整する、請求項2の装置。
【請求項4】
前記病状モデルは、適用される型の前記治療に対する対象集団の前記反応を示す、経験的に導出されたモデルである、請求項1の装置。
【請求項5】
前記病状モデルは、前記生物学的パラメーター値の変化を、時間の関数としてモデル化する、請求項1の装置。
【請求項6】
前記対象に固有な生物学的パラメーター履歴は、複数の空間的に変化する生物学的パラメーター値を含む、請求項1の装置。
【請求項7】
機能的画像化器を含む、請求項1の装置。
【請求項8】
治療計算装置を含む、請求項1の装置、ここで、前記治療計算装置は、治療装置により適用される治療を計算する。
【請求項9】
治療装置を含む、請求項8の装置、ここで、前記治療装置は、前記治療計算装置と電気的に通信して動作する。
【請求項10】
前記治療は、強度変調放射線治療を含む、請求項1の装置。
【請求項11】
グラフィカル利用者インターフェースを含む、請求項1の装置、ここで、前記グラフィカル利用者インターフェースは、前記所望の治療を示す情報を、人間の利用者に示す。
【請求項12】
病状モデル及び対象に固有な生物学的パラメーター履歴を使う工程を含む、治療処方方法、ここで、前記治療処方方法は、前記対象に適用される所望の治療を立案し、前記病状モデルは、治療に対する病状の反応をモデル化し、前記生物学的パラメーター履歴は、前記対象の機能的画像化検査から得られた、空間的に変化する生物学的パラメーター値を含む。
【請求項13】
前記所望の治療の適用後に行われた、前記対象の機能的画像化検査から、生物学的パラメーター値を得る工程;及び
使う前記工程を繰り返す工程;
を含む、請求項12の方法。
【請求項14】
得られた前記生物学的パラメーター値を、所望の値と比べる工程を含む、請求項12の方法。
【請求項15】
前記所望の治療は、放射線照射量及び治療間隔を含む、請求項12の方法。
【請求項16】
前記所望の治療は、分割治療を含む、請求項12の方法。
【請求項17】
前記所望の治療は、熱エネルギー、高周波エネルギー、又は音エネルギーの、前記適用を含む、請求項12の方法。
【請求項18】
前記所望の治療は、分子治療又は化学治療を含む、請求項12の方法。
【請求項19】
前記病状モデルは、解析モデルを含む、請求項12の方法。
【請求項20】
前記病状モデルは、多次元ヒストグラムを含む、請求項12の方法。
【請求項21】
前記所望の治療を示す情報を、治療装置に、電子通信インターフェースを経由して、通信する工程を含む、請求項12の方法。
【請求項22】
病状に適用される治療を計算する、治療処方装置、ここで、前記計算は:
所望の生物学的パラメーターの値;
前記生物学的パラメーターの測定された値;及び
病状モデル;
に基づき、前記病状モデルは、治療に対する病状の反応をモデル化し、前記生物学的パラメーターは、前記病状に対する治療の前記適用に引き続き、測定され、前記測定された値は、空間的に変化する生物学的パラメーターの値を含む。
【請求項23】
前記治療は、外部放射線治療を含む、請求項22の装置。
【請求項24】
前記計算された治療は、空間的に変化する放射線照射量を含む、請求項22の装置。
【請求項25】
前記治療を、患者に固有な生物学的パラメーター履歴に基づいて計算する、請求項22の装置。
【請求項26】
機能的画像化器を含む、請求項22の装置、ここで、前記機能的画像化器は、前記病状を示す機能的画像データを得る。
【請求項27】
治療装置を含む、請求項22の装置、ここで、前記治療装置は、前記計算された治療を前記病状に適用する。
【請求項28】
計算機可読記憶器を含む、請求項22の装置、ここで、前記計算機可読記憶器は、適用される型の前記治療に対する患者集団の前記反応を示すデータを含む。
【請求項29】
命令を含む計算機可読格納媒体、ここで、前記命令を計算機が実行すると、前記計算機は、方法を実行し、前記方法は、所望の生物学的パラメーター値、対象に固有な測定された生物学的パラメーター履歴、及び病状モデルを使うことにより、前記対象の病状に適用される所望の治療を立案する工程を含む。
【請求項30】
前記生物学的パラメーター値は、前記病状の放射線感受性又は前記病状の増殖を示す、請求項29の計算機可読格納媒体。
【請求項31】
前記病状モデルは、規則に基づくモデルを含む、請求項29の計算機可読格納媒体。
【請求項32】
治療計画システム及び治療装置を含む装置、ここで前記治療計画システムは:
対象の所望の生物学的なパラメーター値;
前記対象の病状を示す、対象に固有な生物学的パラメーター履歴;及び
治療に対する前記病状の反応をモデル化する、病状モデル;
の関数として、前記対象に適用される継続した治療の特性を立案し、前記治療装置は、前記治療計画システムに電気的に接続して動作することにより、前記立案された特性を受け取り、前記治療装置は、前記立案された特性によって、治療を適用する。
【請求項33】
前記治療装置は、放射線治療装置を含む、請求項32の装置。
【請求項34】
前記特性は、放射線照射量を含む、請求項32の装置。
【請求項35】
前記特性は、治療の型を含む、、請求項34の装置。
【請求項36】
治療の前記型は、放射線治療及び化学治療のうちの、少なくとも1つを含む、請求項35の装置。
【請求項37】
前記対象に固有な生物学的パラメーター履歴は、前記対象の機能的画像化検査からの情報を含む、請求項32の装置。
【請求項38】
継続して適用される治療の特性を示す情報を、人間に知覚可能な形式で示すための手段を含む、請求項32の装置。
【請求項39】
適用された治療に対する患者集団の測定された反応を示すデータを得る工程、ここで、前記データは:
第1の測定された生物学的パラメーター値;
前記適用された治療;及び
前記適用された治療に対する反応を示す、第2の測定された生物学的パラメーター値;
を含み、前記第1の測定された生物学的パラメーター値及び前記第2の測定された生物学的パラメーター値は、前記患者集団の構成員の機能的画像化検査から得られる;
前記データを計算機可読格納媒体に格納する工程;並びに
計算機網において、治療計画システムに前記データを利用可能にする工程;
を含む方法。
【請求項40】
前記計算機網はインターネットを含む、請求項39の方法。
【請求項41】
前記格納されたデータを更新する工程を含む、請求項39の方法。
【請求項42】
前記データは、適用された治療に対する前記患者集団の複数の構成員の各々の前記測定された反応を含む、請求項39の方法。
【請求項43】
前記データは、ヒストグラムを含む、請求項39の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−545394(P2009−545394A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522938(P2009−522938)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/074077
【国際公開番号】WO2008/016795
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】