説明

生物学的活性化合物の特性化方法

生物学的要素及び少なくとも1つの細胞を含む三次元培養を開始するために、細胞混合物を回転可能なバイオリアクタに配置する工程;前記回転可能なバイオリアクタ中で前記細胞を制御可能に増殖させる工程;及び生物学的活性化合物を特性化するために前記生物学的要素を検査する工程によって、生物学的活性化合物を特性化する方法。本発明は、好ましくは、細胞を時間変動する電磁気力に曝露する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、生物学的活性化合物の特性化の分野に関する。より具体的には、本発明は、生物学的活性物質を特性化するための、回転可能なバイオリアクタにおける三次元培養の制御可能な増殖方法に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本発明は、米国出願番号60/764524、出願日2006年2月2日、名称「薬効検査のプロセス」の優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
大部分の生物学的に活性な化合物は、分子から大規模な組織構造までの生物学的プロセスの全ての段階において生じる詳細な構造及び化学プロセスに基づいた特定の組織機能をターゲットにする。このような生物学的活性化合物の有効性の検査、及び、作用のメカニズムの究明は、高忠実性の細胞及び組織が求められ、通常、従来の生体外(in-vitro)培養(巨視的な作用のため)、動物、最終的には人間の臨床検査において実施されている。しかしながら、これらの各方法は、低い忠実性及び/又は道徳性による制限がある。さらに、生物学的活性化合物の作用の特定の詳細なメカニズム又は物理的サイトを研究する力は、これらの従来の検査方法によって制限されている。同様のことが、有毒化学物質及び有毒物質のメカニズム及び有毒性の度合いの把握、或いは、試薬の生物学的活性の把握及び特性化についても言える。検査に動物を利用する場合、生物学的環境は、非常に複雑であり、制御不可能であり、交絡因子が多く、しばしば人間の状態の表現に乏しく、また、道徳的制限を受ける。二次元培養、又は、かき混ぜ、攪拌、及びその他の培養混合方法を必要とする培養など、従来の培養は、生体内組織微環境において細胞が相互作用しているような、細胞との生物学的活性相互作用を、再現することができない。従来の非回転システム、すなわち、自由浮遊回転物質を含まないシステムにおいて固定マトリックスを利用した他の培養技術もまた、これらの研究の実施において、忠実性、正確性、分析可能性、及び実用性の制限がある。ヒトの検査は、多くの動物検査特有の道徳的制限同様、明白な道徳的制限を有する。
【0004】
互いに、細胞を支持し、基質を力学的に支持する第1の機能細胞の構造関係は、正確且つ自然な細胞及び組織の特異的挙動を可能にする。接合部複合体、腺形成、細胞極性、及び細胞を支持するあらゆる正しい幾何学的関係、並びに無細胞要素が、細胞や組織の特異的挙動をとりなす。さらに、個々の細胞及び組織は、これらの特徴及びその他の特徴に依存する形で機能する。他の特徴もまた、ムチン、分泌ホルモン(膵臓ベータ細胞より分泌されたインスリン)、細胞内可溶性シグナル、細胞膜表面マーカー、膜結合型酵素、免疫識別マーカー、接着分子、液胞、貯蔵及び放出された神経伝達物質、並びに筋肉におけるミオシン収縮繊維、肝細胞におけるグリコーゲン及び共役毒素除去プロセスのような細胞内特殊機構等のより大きな組織構造において、細胞間関係及び細胞間の三次元相互作用に寄与する。個々の細胞機能及び細胞間相互作用は、これら及び他の特徴に依存する。
【0005】
生物学的活性化合物の有効性及び毒性は、生物学的活性化合物が細胞、組織及び/またはこれらの特徴に対して有する作用を把握することによって、検査及び測定される。このような測定可能な応答としては、遺伝的表現、核型、成長率特性、多細胞及び単一細胞形態学、新陳代謝測定、及び細胞間関係等が挙げられる。これら及びその他の応答は、よく知られているが、従来の培養方法では、細胞及び細胞相互作用が、実質的に生体内の(in vivo)状態を再現し、また、生物学的活性化合物に対するあらゆる応答が生物学的活性物質に対する生体内の(in vivo)細胞応答の正確な反映となるように、充分量の細胞及び組織を成長させることができないという問題がある。従って、多くの細胞及び組織及び長時間にわたる加速的成長を支持できない、従来の培養システムでは、生物学的活性化合物をその作用を検査することによって特性化するための正確な生体外モデルを提供することができない。
【0006】
単培養及び共培養の両方における、様々な正常及び腫瘍性の哺乳類の組織の成長は、バッチ式及びかんりゅう式両方の回転壁容器(Schwarz らの米国特許 No. 4,988,623, (1991)及び Schwarz らの米国特許 No. 5,026,590, (1991))、及び、従来の平板培地又はフラスコベースの培養システムにおいて確立されている。ある応用においては、これら培養システムにおける三次元構造、例えば、組織の成長は、成体適合性ポリマー及び微小担体の形成において固体マトリックスの支持によって促進されている。
回転楕円体(球状)成長の場合、三次元構造は、マトリックスの支持なしでもたらされる[Goodwin, et al., In Vitro Cell Dev. Biol., 28 A: 47-60(1992), Goodwin, et al., Proc. Soc. Exp. Biol. Med., 202:181-192 (1993), Goodwin, et al., J. Cell Biochem., 51:301-311 (1993), Goodwin, et al., In Vitro Cell Dev. Biol. Anim., 33:366-374 (1997)]。しかしながら、ヒト組織は、従来の培養条件下、制御された成長誘導及び三次元組織の点で、非常に不応性である。実際の微小重力及びより少ない程度に、回転擬似微小重力は、細胞増殖の促進を可能にした。
【0007】
培養における神経成長を促進するために静電場を利用する試みがなされている。胚発生の変更に成功し、単離された神経軸策の方向成長が無事成し遂げられている。しかしながら、上記をもたらす成長の増強又は遺伝的活性の実際の促進は、成し遂げられていない。成長の助長及び三次元の哺乳類神経組織の配向を目的とする機械装置が最近利用可能となっている。FukudらのU.S. Pat. No. 5,328,843では、神経細胞又は神経軸策を配向させるために、ステンレス鋼の髭剃り用刃の間に形成された区間を利用している。さらに、電位を帯電させた電極を、軸策応答の強化を目的として使用している。AebischerのU.S. Pat. No. 5,030,225では、人体の内部で働く神経の再生に、帯電された、移植可能なチューブ状膜を使用することが述べられている。WolfらのU.S. Pat. No. 6,485,963では、電磁力を細胞成長の増大に利用しているが、多くの場合、細胞成長又は増殖は、必要な検査又は病人の処理にとって充分に早く進まなかった。
【0008】
従って、細胞及び組織における生物学的活性化合物の作用を検査するために、生体内微環境を本質的に再現し、その結果、生体内の状態を高度に表現した応答を提供する、生体外培養システムの必要性が残っている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、生物学的活性化合物の特性化方法であって、細胞及び生物学的要素を含む三次元培養を開始するために、細胞混合物を回転可能なバイオリアクタに配置する工程、前記回転可能なバイオリアクタの回転によって、前記三次元培養中の前記細胞を制御可能に増殖させると同時に、前記細胞の三次元形状及び細胞間支持及び細胞間形状を維持する工程、前記三次元培養に生物学的活性化合物を導入する工程及び生物学的活性化合物を特性化する検査を行い、前記生物学的要素を検査する工程、を含む方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
最も単純な表現において、回転可能なバイオリアクタは、実施において実質的に水平な軸の周りを回転可能で、且つ内部及び外部を有する、培養チャンバを含む。培養チャンバの内部は、生物学的要素の混合物を移動可能に受け取れる空間の輪郭を示す。培養チャンバは、実質的に円柱状であることが好ましい。回転可能なバイオリアクタの好ましい態様において、導電性コイルは、培養チャンバの外部を包み込んでおり、好ましくは培養チャンバに貼り付けられており、さらに好ましくは、培養チャンバに移動可能に貼り付けられている。TVEMF源は、使用時、培養チャンバ内で生物学的要素を増殖させるため、TVEMFが、培養チャンバの内部及び生物学的要素混合物に供給されるよう、動作可能なように導電性コイルと接続されている。培養チャンバは、使用時、生物学的要素混合物が培養チャンバの内部に配置されるように、少なくとも1つの開口部を有している。開口部は、培養培地及び/又は生物学的活性化合物の交換、及び被検用生物学的要素の試料の除去にも好ましくは使用され、また、開口部は、シリンジの使用に適していることが好ましい。
【0011】
図において、図1は、回転可能なバイオリアクタ10の好ましい態様の高側面断面図である。この好ましい態様において、モーターハウジング12は、ベース14に支持されている。モータ16は、モーターハウジング12内に取り付けられ、第1ワイヤ18及び第2ワイヤ20によって、制御手段を有するコントロールボックス22へ接続されており、制御手段では、コントロールノブ24を回転することによりモータ16の速度を増加的に制御することができる。モーターハウジング12から延在しているのは、モーターシャフト26である。回転可能な台28は、培養チャンバ32を移動可能に支える回転可能なバイオリアクタホルダー30を移動可能に支える。該培養チャンバ32は、使い捨てであること、また、実質的に円柱型であることが好ましく、バイオリアクタホルダー30内に、好ましくは回転可能に、好ましくはねじ34で取り付けられる。培養チャンバ32は、回転可能な台28に好ましくは回転可能に取り付けられる。回転可能な台28は、モーターシャフト26によって支えられる。使用の際には、コントロールノブ24を回転させると、培養チャンバ32が回転する。「回転する」及び類似する用語は、使用時、培養チャンバの回転が、細胞、組織又は細胞集団と回転可能なTVEMFバイオリアクタの内部との衝突を防止することを意味する。培養チャンバはかん流であることが好ましい。
【0012】
本発明の回転可能なバイオリアクタ10の培養チャンバは、好ましくは使い捨て、つまり、後の培養で必要に応じて、廃棄され、新しいものが使用されてもよい。また、回転可能なバイオリアクタ10は、後の培養のため、各使用後及び再使用後、殺菌、例えば、オートクレーブ内で殺菌されていることが好ましい。使い捨ての培養チャンバ32は、無菌環境において、製造及び包装され、その結果、その他の使い捨て医療用具とほとんど同様に医療的又は専門的研究に使用可能である。
【0013】
図2は、回転可能なバイオリアクタ10の側面透視図である。図2は、コントロールノブ54を有し、且つベース44によって支持されたモーターハウジング42を示している。モーターハウジング42から延びているのは、モーターシャフト56である。回転可能な台58は、培養チャンバを移動可能に支える回転可能なバイオリアクタホルダ60を、移動可能に支える。導電性コイル59は、培養チャンバの外部の周囲に巻きついている。導電性コイル59は、電気を通す導電性材料により作られていることが好ましく、導電性材料は限定されないが、次のような導電性材料が挙げられる;銀、金、銅、アルミニウム、鉄、鉛、チタン、ウラン、強磁性金属、及び亜鉛、又はこれらの組み合わせ。導電性コイル59は、また塩水を含んでいることが好ましい。導電性コイル59はまた、ソレノイドであることが好ましい。さらに、導電性コイル59は、電気絶縁体の中に収容されていることが好ましい。電気絶縁体としては限定されず、ゴム、プラスチック、シリコーン、ガラス及びセラミック等が挙げられる。導電性コイル59が培養チャンバの周囲に巻きついていてもよく、結果として、培養チャンバは導電性コイル59の形状を支持しており、実質的に長円断面を有することが好ましく、楕円断面を有することがより好ましく、円形断面を有することが最も好ましい。好ましくは使い捨ての培養チャンバと一体の導電性コイル59は、使い捨ての培養チャンバと共に回転可能なバイオリアクタ10内に取り付けられ、動作可能なようにTVEMF源64に接続される。使い捨ての培養チャンバが廃棄されるとき、導電性コイル59も共に廃棄される。
【0014】
共に導電性コイル59と一体化された、第1の導電性ワイヤ62及び第2の導電性ワイヤ66は、第1の端部において、使用時にTVEMFを発生させるためにオンにされるソースノブ65を有するTVEMF源に、動作可能なように接続される。ワイヤ62、66は、第2の端部において、導電性コイル59の回転を促進する、少なくとも1つのリングに接続される。コントロールノブ54がオンにされると、培養チャンバ及び導電性コイル59は同時に回転する。さらに、導電性コイル59は、培養チャンバへの貼り付き及び包囲を維持し、使用時、培養チャンバ内の細胞にTVEMFを供給する。
【0015】
回転可能なバイオリアクタの培養チャンバは、三次元培養における呼吸ガス交換のサポート、三次元培養における栄養素の供給及び三次元培養からの代謝老廃物の除去のための培養培地フローループ100が取り付けられることが好ましい。図3に示す培養培地フローループ100の好ましい態様は、培養チャンバ119、酸素供給器121、好ましくはメインポンプ115の使用によって培養培地の方向性フローを促進する器具、及び、培養培地要件の選択的な投入のための供給マニホールド117を有している。培養培地要件としては、限定されないが、栄養素106、バッファー105、新鮮培地107、サイトカイン109、成長因子111、及びホルモン113等が挙げられる。この好ましい態様において、メインポンプ115は、供給マニホールド117から酸素供給器121へ新鮮培養培地を供給する。酸素供給器121では、培養培地は酸素が送り込まれ、培養チャンバ119を通る。使用済み培養培地中の排出物は、培養チャンバ119から除去、好ましくはメインポンプ115によって除去され、排出物118に送られる。排出物118に移動させられなかった残りの培養培地量は、供給マニホールド117に戻され、ポンプ115によって酸素供給器112を通って培養チャンバ119へと再循環する前に、供給マニホールド117にて、培養培地要件の新鮮な充足を受けることが好ましい。
【0016】
培養培地フローループ100のこの好ましい態様においては、培養チャンバ119内を一定条件に保つ化学センサー(図示せず)に応答して調整が行われる。二酸化炭素圧の制御、及び、酸又は塩基の導入によってpHが調整される。酸素、窒素及び二酸化炭素は、細胞呼吸をサポートするためにガス交換システム(図示せず)に溶解される。培養培地フローループ100は、酸素を追加し、循環ガス容量から二酸化炭素を除去する。図3は、本発明において使用される培養培地フローループの好ましい態様の1つであるが、発明はこれに限定されることを意図するものではない。限定されるものではないが、酸素、栄養素、バッファー、新鮮培地、サイトカイン、成長因子及びホルモン等の培養培地要件の回転可能なTVEMFバイオリアクタへの導入は、排出物及び二酸化炭素の制御及び除去が実施されるように、手動、自動、又は他の制御方法で行うことができる。
【0017】
本発明で意図する回転TVEMFバイオリアクタに対しては、本発明の範囲から逸脱しない範囲で、様々な変更を加えることができるため、ここに含まれる全ての事項は、限定としてではなく、説明として解釈される。
【0018】
(発明の詳細な説明)
以下の定義は、本発明の文脈において定義された用語の説明及び理解を助けるものである。定義は、これらの用語を本明細書を通じた記載以下に限定するものではない。さらに、いくつかの定義がTVEMFに関して含まれるが、これに関する全ての定義は、互いに補完するように考えられるべきであり、互いに反するように解釈すべきでない。
【0019】
本発明において使用される用語「TVEMF」は、「時間変動する電磁気力(time varying electromagnetic force)」である。上述したように、本発明のTVEMFは、デルタ波であり、より好ましくは微分方形波であり、最も好ましくは、方形波(フーリエ曲線に従う)である。TVEMFは、以下の1つから選ばれることが好ましい;
(1)100ガウス未満の力振幅及び1000ガウス/秒より大きいスルーレートを有するTVEMF、(2)100Hz未満の周波数において、実質的に低い力振幅の二極性方形波であるTVEMF、(3)100%未満の負荷サイクルにおいて、実質的に低い力振幅の方形波であるTVEMF、(4)1ms未満の持続パルスに対して、1000ガウス/秒より大きいスルーレートを有するTVEMF、(5)1%未満の負荷サイクルにおいて、スルーレート二極性方形波関数形式パルスを有するTVEMF、(6)最大振幅100ガウス未満の力振幅及びスルーレート二極性方形波関数形式パルスを有し、負荷サイクルが1%未満であるTVEMF、(7)三次元培養を通して一定の力強度を発生させるソレノイドコイルを使用して適用されるTVEMF、及び(8)磁束の空間勾配及び三次元培養に集中された磁束を提供するフラックスコンセントレーターを利用して適用されるTVEMF。
振動する電磁力強度における周波数域は、三次元培養において所望の細胞刺激を得るために選択できるパラメータである。しかしながら、これらパラメータは、本発明の他の態様に基づいて変化するため、本発明のTVEMFを限定するものではない。TVEMFは、例えば、EN131細胞センサーガウスメータ(Cell Sensor Gauss Meter)など一般的な装置で測定することができる。
【0020】
本発明において使用される用語"導電性コイル"は、電気を通す任意の導電性材料を指し、これらに限定されないが、以下のような導電性材料が挙げられる;銀、金、銅、アルミニウム、鉄、鉛、チタン、ウラン、強磁性金属、及び亜鉛、又はこれらの組み合わせ。導電性コイルは、また塩水を含んでいることが好ましい。導電性コイルはまた、ソレノイドであることが好ましい。さらに、導電性コイルは、電気絶縁体の中に収容されていることが好ましい。電気絶縁体はこれらに限定されないが、ゴム、プラスチック、シリコーン、ガラス及びセラミック等が挙げられる。導電性コイルは、回転可能なTVEMFバイオリアクタの培養チャンバの外部に巻きついていてもよく、その結果、培養チャンバが導電性コイルの形状を支持することが好ましく、実質的に長円断面を有することが好ましく、楕円断面を有することがより好ましく、円形断面を有することが最も好ましい。培養チャンバの形状及び導電性コイルの形状は、実質的に似ているため、培養チャンバは、導電性コイルの形状を支持することが好ましい。「巻きつく」というのは、導電性コイルが培養チャンバを取り囲み、実施において、培養チャンバの内部及びその中の細胞に実質的に均一なTVEMFが供給されることを意図する。「取り囲む」というのは、導電性コイルが培養チャンバを取り囲み、使用時、培養チャンバの内部に、好ましくは実質的に均一なTVEMFを供給することを意味する。
【0021】
本発明において使用される用語「生物学的要素」は、本発明の方法の制御可能な増殖工程における、回転可能なバイオリアクタ内の三次元培養の一部を指す。生物学的要素は、培養中、又は、培養完了後又は電子顕微鏡法等の特殊分析技術のために培養を中止した後の追加手法によって検査されることが好ましい。生物学的要素は生物学的活性物質を特性化するために検査される。生物学的要素は、活性化T細胞等の任意の形状の細胞、膜、細胞壁(植物の場合)等の任意の細胞の一部、及び/又は、ミトコンドリア等の細胞内オルガネラであることが好ましい。また、検査される好ましい生物学的要素は、ムチン、コラーゲン、及びマトリックスのような分泌物質、分泌ホルモン(膵臓ベータ細胞からのインスリン)、分泌された細胞間構造成分、導入された構造マトリックス、接着マトリックス、成長基質、細胞間可溶性シグナル、細胞膜表面マーカー、膜結合型酵素、免疫識別マーカー、接着分子、液胞、貯蔵及び放出された神経伝達物質、及び筋肉におけるミオシン収縮繊維等の細胞内特殊機構、グリコーゲン、培地、被検査化合物、疑わしい被検査毒素、被検査試薬、菌類、及び幹細胞における共役複合体等が挙げられる。生物学的要素は、増殖中、回転可能なバイオリアクタ内の三次元培養に含まれるウイルスであることが好ましい。このようなウイルスは、これらに限定されるものではないが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、鳥インフルエンザ、サル免疫不全ウイルス(SIV)、肝臓炎、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ヘルペスウイルス等が挙げられ、ウイルスDNAを含んでいてもよいし、又はレトロウイルスの場合にはウイルスRNA及び粒子を含んでいてもよい。生物学的要素はまた、細菌性細胞であることが好ましい。生物学的要素はまた、他にヌクレアーゼ、DNA、RNA、タンパク質、ナノ粒子のような人工生物活性粒子、及び/又は遺伝子であることが好ましいが、これらに限定されない。生物学的要素は、細胞混合物中に含まれているか、又は、三次元培養に添加されるか、又は細胞混合物の添加前に回転可能なバイオリアクタ内に配置されることが好ましい。生物学的要素は、生物学的活性化合物を特性化する検査の重点である。
【0022】
本発明において使用される用語「生物学的活性化合物」は、任意の生物学的物質、合成品又は非合成品を指し、本発明の方法によって特性化されるものである。生物学的活性化合物は、これらに限定されないが、任意の形態、例えば、粉末、液体、蒸気、及び気体でもよい。生物学的活性化合物はまた、これらに限定されないが、タンパク質、細胞、化学物質、気体、金属、成長因子、放射物、ナノ粒子、ウイルス、細菌、及び/又は水、及び/又はこれら複数の組み合わせであることが好ましい。生物学的活性化合物はまた、細胞と生物学的要素を含む三次元培養の任意の部分に対して毒性のある物質であることが好ましい。
本発明において使用される用語、毒は、細胞又は組織機能に悪影響を与える又は正常な機能から逸れさせることが予測される又は知られている、任意の材料又は物理的プロセスを指す。毒は、好ましくは重金属であり、また、好ましくは、熱曝露、放射線暴露又は電気暴露が好ましい。さらに、生物学的活性化合物は、細胞及び生物学的要素を含む三次元培養に影響のある、試薬が好ましい。
本発明において使用される用語「試薬」は、細胞又は組織の、機能、構造、機構、成長、寿命、遺伝的構成物、成長特性、分泌物、分化状態、分化系統傾向、又は表面マーカー発現、代謝状態、細胞間オルガネラ構造、膜構造、又は造腫瘍に変化を生じさせるのに利用される任意の物質又は物理的プロセスを指す。細胞への輸送及びグルコースの内部輸送を起こすインスリンのような好ましい生物学的活性化合物に加えて、生物学的活性化合物は、エレクトロポレーション、ケモポレーション(chemoporation)、ナノ粒子相互作用等の試薬処置を意味することが好ましい。ポレーション方法は、モノクローナル抗体産生のためのハイブリドーマの生成に特に便利である。理論に拘束されないが、ハイブリッド形成において、形質転換された細胞−免疫学的細胞間の遺伝子交換を最大化するためには、回転壁培養により実現する高分散された三次元培養内容物は理想的である。これは、価値ある抗体を生産する、待望のハイブリッドの収率向上を成功させるかもしれない。生物学的活性化合物の好ましい例としては、これらに限定されないが、さらに、インスリン、インターロイキン、成長因子、分化モジュレータ、走化性物質、阻害剤等が挙げられる。本発明によれば、生物学的活性化合物は、生物学的要素への影響を検査することによって特性化することができる。
【0023】
本発明において使用される用語「細胞」は、例えば、個細胞(individual cell)、組織、細胞集合体、ハイブリッド細胞、微小担体ビーズ等の細胞付着担体に予備的に付着した細胞、細胞様構造、又は無傷の組織切除等の、あらゆる形態の細胞を指す。本発明において細胞は、真核細胞が好ましく、さらに原核細胞が好ましい。本発明において使用できる細胞は、哺乳類の細胞が好ましく、さらにヒト細胞が好ましく、成人幹細胞がより好ましく、末梢血成体幹細胞が最も好ましく、さらに好ましくは間葉細胞である。本願発明の方法において使用可能な他の哺乳類の細胞は、これらに限定されないが、心臓細胞、肝臓細胞、造血細胞、皮膚細胞、筋肉細胞、腸細胞、膵臓細胞、中枢神経系細胞、軟骨細胞、結合肺細胞、脾臓細胞、骨細胞及び腎臓細胞等が好ましい。
【0024】
本発明において使用される用語「回転可能なバイオリアクタ」は、内部及び外部を有し、速度で回転可能な培養チャンバに接続されたモーターを含む。回転可能なバイオリアクタは、実質的に円柱状であることが好ましい。また、回転可能なバイオリアクタは、培養チャンバの外部に巻きついた導電性コイルを有することが好ましい。さらに、回転可能なバイオリアクタは、三次元培養への培養培地の流れ及び三次元培養内を通る培養培地の流れが促進されるように、それに取り付けられた培養培地フローループを有していてもよい。培養チャンバを通る培養培地の流れは、かん流でもよい。
TVEMF源は、動作可能なように導電性コイルに接続されていることが好ましい。使用時、回転可能なバイオリアクタは、回転し、理論に縛られないが、発明の詳細において例として述べたように、その回転は三次元培養を育成、支持、維持するよう制御される。導電性コイルを有する好ましい態様において、TVEMFは、TVEMF源によって発生させられ、適したガウスレベルは、導電性コイルを経て培養チャンバの内部に伝えられる。回転可能なバイオリアクタの容積は、約15mLから約2Lが好ましい。回転可能なバイオリアクタの例(限定することを意味するものではない)として、ここで図1及び図2の例を参照する。
【0025】
回転可能な培養チャンバの培養チャンバは、作動時においてチャンバ壁が培養培地に対して動き出すように、内部に回転可能な培養チャンバ壁を有し、だからこそ、三次元培養であり、その結果、培養培地には流動応力が本質的にない。また、培養チャンバは、培養培地、細胞及び/又は生物学的要素又はこれらの一部を、追加及び/又は除去するため、及び生物学的活性物質を導入するため、少なくとも1つの開口部を有している。回転可能なバイオリアクタの培養チャンバは、実質的に、水平に配置される。また、培養チャンバは、2つの端部を有する実質的な円柱状であり、実質的に水平な軸の周囲を回転可能であることが好ましい。培養チャンバは、その中の生物学的要素、培養培地、及び/又は三次元培養を、必要におうじて評価できるように、一部分において透明であることが好ましい。さらに、培養チャンバは、生物学的要素、三次元培養及び/又は細胞を評価するために顕微鏡が取り付けられていることが好ましい。理論に縛られないが、回転可能なバイオリアクタ中で細胞を回転させることは、長時間にわたる細胞の制御可能な増殖を提供し、同時に、複雑な三次元形状、細胞間支持及び細胞の形状を育成、支持、及び維持する。
【0026】
本発明において使用される用語「細胞混合物」及びこれに類似する用語は、細胞の混合物を指し、細胞と他の物質との混合物であることが好ましく、他の物質としては、これらに限定されないが、培養培地(添加物あり及びなし)、プラズマ(plasma)、バッファー、及び防腐剤等が挙げられる。細胞混合物は、また生物学的要素を含んでいてもよい。
【0027】
本発明において使用される用語「三次元培養」は、本発明の方法によって制御可能に増殖される回転可能なバイオリアクタの培養チャンバ中の細胞及び生物学的要素を指す。三次元培養内の細胞は、培養チャンバ内で育成、支持、及び維持される三次元形状、細胞間支持及び細胞間形状を有している。三次元培養内の細胞は、本質的に、生体内の細胞と同じ三次元形状、細胞間支持及び細胞間形状を有している。三次元組織、非壊死細胞集団、及び/又は組織様構造は、三次元培養において、細胞から成長し、栄養を補給され、さらに増殖し、同時に生体内の微環境を再現する。三次元培養は、実験の目的に応じて、増殖(数を増加させる)し、栄養を補給し又は変性してよい。言い換えれば、生物学的活性化合物の特性化に必要な、生物学的活性化合物の作用及び/又は好ましい微環境に応じて、三次元培養は制御可能に増殖される。ここで、制御可能に増殖とは、好ましくは、三次元培養又はその一部の増殖、維持、又は変性を意味する。
【0028】
本発明において使用される用語「動作可能なように接続」及びこれに類似する用語は、実施において、TVEMF源が、回転可能なバイオリアクタの培養チャンバの内部及びその内部に含まれる三次元培養に、TVEMFを与える手段で、培養チャンバにTVEMFが接続、好ましくは移動可能に接続されうることを意味する。TVEMF源は、使用時、培養チャンバの内部へ、好ましくは実質的に均一に、TVEMFを与えられるなら、動作可能なように接続されている。
【0029】
本発明において使用される用語「曝露(exposing)」及び類似する用語は、回転可能なバイオリアクタの培養チャンバの内部に含まれる三次元培養に、TVEMFを与えるプロセスを指す。実施において、回転可能なバイオリアクタの培養チャンバの外部に巻きついた導電性コイルへTVEMF源を経て、好ましいガウス範囲及び好ましい波形が伝えられるように、TVEMF源は、オンにされ、上記好ましいガウス範囲及び好ましい波形に設定される。そして、TVEMFは、培養チャンバ内において細胞を含む三次元培養へ伝えられ、こうして細胞はTVEMF、好ましくは均一なTVEMFに曝露される。
【0030】
本発明において使用される用語「培養培地」及び類似する用語は、これらに限定されないが、長期間、細胞の生命を維持する栄養である成長培地及び栄養素等を含む液体を指す。培養培地は、これらに限定されないが、次のいずれかに富んでいてよい;成長培地、バッファー、成長因子、ホルモン、及びサイトカイン。培養培地は、回転可能なバイオリアクタの培養チャンバ内の懸濁用細胞混合物に供給され、増殖をサポートする。培養培地は、回転可能なバイオリアクタの培養チャンバに添加される前に、細胞混合物と混合されることが好ましく、又は、細胞混合物が添加される前に培養チャンバに添加され、回転可能なバイオリアクタ中で培養培地と細胞が混合されることがさらに好ましい。培養培地は、増殖中、必要に応じて、富栄養化及び/又はリフレッシュさせることが好ましい。培養培地に含まれる排出物は、培養培地自身同様、必要に応じて、増殖中、培養チャンバ中の三次元培養から取り除くことが好ましい。培養培地に含まれる排出物は、これらに限定されないが、代謝老廃物、死細胞及びその他毒性破片が有り得る。培養培地は、酸素が混入されることが好ましく、酸素、二酸化炭素及び機能を運ぶ窒素を有することが好ましい。
【0031】
本発明において使用される用語「配置(placing)」及び類似の用語は、回転可能なバイオリアクタに細胞を添加する前に、細胞混合物と培養培地を混合するプロセスを指す。また、用語「配置」は、回転可能なバイオリアクタ内に既に存在する培養培地に細胞混合物を添加することを指すことが好ましい。細胞は、微小担体ビーズ等の細胞付着担体と共に、回転可能なバイオリアクタ内に配置されることが好ましい。
【0032】
本発明において使用される用語「制御可能な増殖」及び類似する用語は、培養チャンバの回転によって、回転可能なバイオリアクタ内の細胞の数を増加させる、維持する、又は減少させるプロセスを指す。また、好ましい態様において、制御可能な細胞増殖は、三次元培養をTVEMFにさらすことを含む。細胞は分化させることなく増殖させることが好ましい。細胞数の増加を望む場合には、例えば、培養培地の体積を70mlから10mlまで減らし、その結果によりml当たりの細胞数を増加させるような、液体体積の単純な減少によっては、明らかに単位体積当たりの細胞数は増加しない。回転可能なバイオリアクタ内での好ましい細胞増殖(数の増加)による制御可能な細胞増殖は、増殖前の細胞と実質的に同様の三次元形状を有する細胞、好ましくは、自然な設定又は細胞が自然に存在する生体内微環境である組織において、細胞が発現するのと実質的に同様な形状及び細胞間相互作用を有する細胞を提供する。また、制御可能な増殖は、例えば、好ましい生物学的活性化合物の作用が細胞数の増加抑制であるような三次元培養への栄養の補給を指すことが好ましい。三次元培養は、生物学的活性化合物の特性化のために栄養を補給されることがより好ましい。
また、回転可能なバイオリアクタの三次元培養における制御可能な細胞増殖は、例えば、好ましい生物学的活性化合物の作用が三次元培養の変性であるような、変性培養を指すことが好ましい。三次元培養は、好ましい生物学的化合物の特性化のために、意図的に変性されることがより好ましい。また、増殖の他の局面では、本発明の細胞の例外的な特性化を提供するかもしれない。
【0033】
細胞及び/又は組織は、生物学的活性化合物の特性化のための生物学的要素の検査に必要な限り、増殖されることが好ましい。三次元培養は、回転可能なバイオリアクタイ内で少なくとも160日間増殖されることが好ましい。
【0034】
本発明において使用される用語「回転(rotating)」及び類似の用語は、回転可能なバイオリアクタの培養チャンバの回転を指し、該回転可能なバイオリアクタは、実質的に円柱状であり、実質的に水平面で回転することが好ましい。回転速度は、約1RPMから約120RPM、特に約2RPMから約30RPMに及ぶことがより好ましい。回転可能なバイオリアクタは、自動で回転可能であるか手動で回転可能であることが好ましい。さらに、回転速度は、手動で調節、開始、又は停止可能であることが好ましく、又は、センサーを使用することによって自動で調節、開始又は停止可能であることがより好ましい。
【0035】
本発明において使用される用語「生物学的活性化合物の導入(introducing)」は、制御可能な増殖工程の前、間、及び/又は後で、培養チャンバへ生物学的活性化合物を加えるプロセスを指す。生物学的活性化合物は、本願発明の方法の間及び様々な工程の前及び/又は後に、必要に応じて加えられることが好ましい。実施される好ましい検査に応じて、生物学的活性化合物は、本願発明の方法を通して、異なる濃度及び様々な回数で加えることができる。生物学的活性化合物は、三次元培養に本質的に含まれていてもよい。
【0036】
本発明において使用される用語「検査(testing)」は、生物学的活性化合物の生物学的要素に対する作用又は作用の無さを分析することによって、生物学的活性化合物の特性化を行うプロセスを指す。検査される生物学的要素に応じて、検査は変わる。例えば、生物学的活性化合物が生物学的要素のDNA又はRNAに作用すると予測される場合には、ポリメラーゼ連鎖反応によってDNAへの作用又は逆転写ポリメラーゼ連鎖反応によってRNAへの作用を検査することによって、生物学的活性化合物を特性化することが可能である。他の検査及び検査方法は、限定されないが、次の様な機器及び技術が挙げられる:質量分析、フローサイトメトリー、蛍光抗体法(immunoflourescence)、クロマトグラフィー、単クローン抗体及び二クローン抗体(mono- and bi-clonal antibodies)、生存能力検査、毒性検査、種検査(species test)、バイオアッセイ、希釈及び有効濃度検査、用量反応検査、有害廃棄物検査、致死濃度検査、スクリーニング検査、半止水検査(static renewal test)、細胞数及び組織成長検査、並びに放射性標識法(radiolabelling)。好ましくは、本発明は、造腫瘍及び遺伝子異常へのその作用を検査することによって生物学的活性化合物を特性化する方法を提供する。
生物学的活性化合物を特性化する本発明の方法によって実施されうる検査の他の例としては、これらに限定されないが、遺伝的表現、核型、成長率特性、多細胞及び個細胞形態学(multicellular and individual cellular morphology)、代謝測定、及び細胞内関係に関わる検査が挙げられる。検査は、接合部複合体、線形成、細胞極性、及び細胞間の幾何学的関係(細胞間形状)及び無細胞成分の測定を対象とすることが好ましい。本発明は、生体内状態において見られるのと本質的には同じ微環境における、生物学的活性化合物の生物学的要素への作用を検査することによって、細胞の三次元形状が自然環境における状態を維持し、その結果生物学的活性化合物を特性化するための生物学的要素が提供されるよう、制御可能な細胞増殖の工程を含む方法を提供するものである。生物学的要素は、生物学的活性化合物の作用、生物学的作用、有効性、伝達性、利用性及び/又は有毒性のメカニズムの特性化を検査することができる。
【0037】
本発明において使用される用語「特性化」は、生物学的要素の検査を行うことによって、好ましい生物学的活性化合物が生物学的要素に対して有する作用を決定するプロセスを指す。検査は、生物学的活性化合物の有効性及び毒性の検査を行うことが好ましい。生物学的要素は、生物学的活性化合物の作用、生物学的作用、有効性、伝達性、利用性及び/又は有毒性のメカニズムの特性化を検査することができる。
【0038】
本発明において使用される用語「細胞間形状」は、他の細胞に関する細胞の空間、細胞間の距離、及び細胞間の物理的関係等の細胞の形状を指す。例えば、本発明の好ましい態様において、細胞、組織、細胞集合体、及び細胞様構造を含む増殖させた細胞を利用する場合、細胞は、互いに生体内の微環境と同じ関係を維持する。増殖させた細胞は、例えば、二次元増殖チャンバとは異なり、細胞間の自然な間隔の範囲内である。二次元増殖チャンバではこのような間隔は時間及び増殖を経て保たれない。
【0039】
本発明において使用される用語「細胞間支持」は、ある細胞が隣接する細胞に提供する支持を指す。例えば、組織、細胞集合体、組織様構造、及び細胞は、例えば化学的相互作用、ホルモン性相互作用、神経性相互作用(適用できる場合、又は適切な場合)等の他の細胞との相互作用を維持する。加えて、細胞は互いに構造的な支持を提供する。細胞には、細胞間支持を提供するために物理的な接触は必要ない。本発明において、これら相互作用は、正常機能のパラメータ内に維持され、例えば、他の細胞に有毒な又はダメージを与えるシグナルを送信し始めないことを意味する(自然な細胞及び組織環境においてこのようなことが行われない限り)。
【0040】
本発明において使用される用語「三次元形状」は、三次元状態(細胞の自然な状態と同じ又は非常に似た状態)の細胞の形状を指し、例えば、細胞が平板化又は伸張されるペトリ皿内で成長させたセルに見られる二次元形状とは対照的である。理論に縛れないが、細胞が、回転可能なバイオリアクタの三次元培養において、三次元の細胞集合体、組織及び/又は組織様構造に成長できると同時に、三次元形状、細胞間支持及び細胞間形状を維持するように、細胞の三次元形状は、維持され、支持され、保存される。培養チャンバ中で三次元培養を回転させることによって、その中の細胞は、振動、気泡の使用、攪拌のような攪拌環境で成長させた細胞とは違って、三次元形状、細胞間形状及び細胞間支持を維持することができる。さらに、回転可能なバイオリアクタの回転は、細胞が、生体内の微環境の細胞に見られるような三次元性を構築及び維持できるように、細胞が互いにごく接近し多状態を維持する。
【0041】
本発明の細胞の「細胞間支持」及び「細胞間形状」及び「三次元形状」の維持に関する上記3つの定義それぞれにおいて、「本質的に同じ」及び「実質的に同じ」は、例えば、三次元培養に対して、正常に機能しない、有毒である、又は有害であるような方法で細胞が変化しないように、自然の形状及び支持が増殖に提供されることを意味する。本発明の細胞は、それどころか、増殖の間及び増殖後、生体内の状態を再現する。
【0042】
実施において、細胞混合物は、回転可能なバイオリアクタの培養チャンバ内に配置される。好ましい一態様において、培養チャンバは、ある期間にわたって回転し、同時にTVEMFはTVEMF源によって培養チャンバ中で発生する。「同時に(while at the same time)」というのは、TVEMFの伝達開始が、培養チャンバの回転が開始される前、同時、又は後でよいことを意図する。より複雑な回転可能なバイオリアクタにおいて、培養培地要件、好ましくは、これらに限定されないが、例えば、細胞に栄養を提供する、成長培地、バッファー、栄養素、ホルモン、サイトカイン及び成長因子等で富栄養化した培養培地は、定期的にリフレッシュするか又は除去することができる。回転可能なバイオリアクタの三次元培養中に含まれる生物学的要素は、増殖工程の間中、いつでも検査することができる。さらに、特性化される生物学的活性化合物は、回転可能なバイオリアクタにおける三次元培養の開始前、間、又は後のいつでも、三次元培養に導入することができる。生物学的要素の検査によって、生物学的活性化合物の特性化が可能となる。
【0043】
使用中、回転可能なバイオリアクタは、安定した培養環境を提供する。安定した培養環境は、流動せん断応力の最小化と同時に、細胞及び基質の空間的定位の三次元的自由度の提供、及び増殖の持続のための特別な空間領域における細胞の局在性の向上によって、細胞が導入され、懸濁され、集められ、培養され、及び、細心の注意を要する三次元構造の完全性の良好な維持又は向上が維持される。回転可能なバイオリアクタにおける制御可能な細胞増殖の好ましい態様において、これら三つの基準(以下、上記三基準という)が提供され、同時に、細胞はTVEMFに曝露される。本発明において特に興味深いのは、培養チャンバの次元、細胞の沈降速度、回転速度、外部重力場、TVEMF、及び生物学的活性化合物と生物学的要素の相互作用である。
【0044】
本発明は、生体内の分解プロセスをよく表現する、生物学的活性化合物への応答における細胞分解プロセスさえも提供する。例えば、造腫瘍細胞及び組織の大きさ及び数におけるいくらかの減少の有無の決定や、作用メカニズムの決定による、化学療法剤のような生物学的活性化合物の特性化は、関連する生物学的要素の検査を伴ってもよい。化学療法剤に対する応答における腫瘍減少の成功のいずれもが、化学療法剤の有効性を示すであろう。この場合、腫瘍への生物学的活性化合物の輸送は、細胞内部又は周囲への侵入及びその他の処理や薬品によりその輸送が強化される方法で分析することができる。細胞内部のサブボリューム(sub-volume)内又は細胞表面上の培養組織構成物における薬品分布の識別は、有効な薬品の輸送(有毒化合物分析又は試薬作用)の正確な理解に重要である。培養されたモデル腫瘍はその後、従来の組織及び細胞の超微細構造分析、分子分析、免疫学的分析、物理学的分析によって、潜在的な治療(化学治療薬、放射療法、ナノ粒子作用、又はこれらの組み合わせ)に対する応答が分析される。
この好ましい態様において、生物学的活性化合物は、化合物又は免疫生細胞(養子免疫治療法−キラーT細胞活性により自身を修飾させることが可能)さえも含む抗体のような免疫活性要素からなる。そのようなものとして、生物学的活性化合物は、生きた細胞成分を含むことが好ましい。この生きた細胞成分は、運動の自由度が与えられ、ターゲットの組織(この場合は腫瘍)と自由に相互作用できる本発明によって、特に充分に検査することができる。
【0045】
回転可能なバイオリアクタの操作において言及した安定した培養環境は、培養培地の条件、特に流速勾配が、細胞の導入よりも重要であり、細胞の導入の際、細胞のほぼ均一な懸濁を支持し、その結果、細胞混合物を追加すると三次元培養が開始される。
好ましい態様において、培養培地は、初期において、同様に回転している回転可能なバイオリアクタの回転チャンバ壁の範囲内で軸方向に水平回転するほぼ固形物に安定化する。この条件下、培養チャンバ壁は、培養チャンバの内容物と同じ角速度で動いている。なぜなら、開始時の過渡現象及び関連する過渡流速勾配は消滅するからである。培養チャンバの内容物を初期において回転させるために、培養チャンバ壁を培養培地に対して動かす。培養チャンバのスピンダウン中にも起こるこの過渡現象の間、充分な流速勾配及び関連する流体せん断応力が存在する。培養チャンバ及び内容物が安定状態に達した後、これら勾配は、充分に減少し、流体せん断応力場は最小になる。安定化した培養環境の培養培地に、細胞は導入され、移動し、三次元培養が開始、維持される。三次元培養は、重力、遠心力及びコリオリの力(coriolus force)の影響を受けて動き、三次元培養の培養培地内の細胞、粒子、又はいずれの他の要素の存在も、培養培地に副次的効果を引き起こす。用語「要素」というのは、三次元培養の培養培地中に存在するあらゆるものを含んでおり、特に限定されないが、ウイルス、ナノ粒子、排出物、死細胞、細胞及びその中の他のいずれの物体があげられる。培養チャンバに対する培養培地の充分な移動、十分な流体せん断力、及び他の流体運動は、培養培地中のこれら細胞、粒子、及び/又は要素の存在に起因する。
【0046】
これら要素のいくつかは、他の要素は培養チャンバ内の液体部分内を自由に動ける状態で、利便性又は効果の点で、培養チャンバ壁回転に固定されることが好ましい。このように固定される要素は、より緻密な観察又は単に操作者の利便性(例えば、特定の要素を後で配置するなど)のため、回転する液体だけで懸濁させるには重すぎる物体(例えば担体など)、培養チャンバ内の低沈降誘発残存流体せん断によってさえダメージを受け、自由に懸濁された要素により受ける不可避の壁衝突によって悪影響を受ける要素でよい。このような固定される要素の導入が、本明細書の主題である生物学的活性化合物の検査と無関係に、培養プロセス自体において進歩を示すことに注目すべきである。例えば、回転する培養チャンバ内に心臓弁形成基材を「取り付け」、改良した心臓弁を形成するためにその基材の取り付け具にさらに細胞を導入する例が挙げられる。
【0047】
大抵の場合、安定化した培養環境における細胞は、好ましくは1秒あたり0.5cm未満の低速度で沈降を開始する。従って、三次元培養のこの初期段階において、回転速度(好ましくは約1〜約120RPM、さらに好ましくは約2〜約30RPM)及びチャンバの直径(好ましくは約0.5〜約36インチ)を広範囲から選択することができる。好ましくは、最低回転速度が有利である。機器摩耗及びその他の三次元培養のハンドリングに関連するロジスティックを最小化するからである。
【0048】
理論に縛られないが、角速度における外部重力ベクトルに関して実質的に水平な軸に対する回転は、三次元培養内の懸濁された細胞の軌道経路を最適化する。実施において、細胞は、増殖して細胞集合体の塊、三次元組織、壊死してない細胞塊、及び/又は組織様構造を形成し、三次元培養の進行に伴いそのサイズが大きくなる。三次元形状、細胞間形状及び細胞間支持のような細胞間の相互作用は、自然環境の細胞において見られる生体内微環境を、本質的に実質的に再現する。三次元培養の進行は、三次元培養における三次元細胞塊の直径の増加を目視、手動又は自動で決定することで評価することが好ましい。三次元培養における細胞集合体、組織、壊死してない細胞塊、又は組織様構造のサイズ及び/又は数の増減は、特定の経路の最適化のために回転速度の適切な調整を必要とする。培養チャンバの回転は、衝突頻度、衝突強度、及び他の細胞に対する細胞の局在性、また、回転可能なTVEMFバイオリアクタの培養チャンバの制限境界を最適に制御する。
回転を制御するためには、下方側の内部及び上方側の外部に向かって、細胞が過度に変形しているのが観察される場合、1分間当たりの回転数(RPM)は増加させることが好ましい。細胞に外壁への過度な遠心分離物(centrifugate)が観察される場合には、RPMは減少させることが好ましい。理論に縛られないが、高い細胞沈降速度又は高い重力強さに関して、作動限界に達した際には、操作人は、これら条件の両方に満足できず、上記3基準対策として性能低下を受け入れざるを得ない。
【0049】
細胞沈降速度及び外部重力場は、三次元培養の培養培地を通して細胞及び/又は要素の偏流を重力的に誘発するために、回転可能なバイオリアクタの作動範囲内でさえ得られる流体せん断応力に下限を課す。計算及び測定は、この最小流体せん断応力を、外部重力場強度に対する細胞及び/又は要素の最終的な沈降速度(培養培地を通して)から得られるものに非常に近くする。細胞と培養培地の相互作用に起因する副次的効果と共に、遠心分離及びコリオリの誘導運動[古典角運動学は、物体の質量(m)、その回転座標系における速度(vr)、及びレファレンスの回転座標系における速度(D)に対するコリオリの力に関する次のような方程式を提供している:Famous=−2m(w x vr)]は、細胞の増殖に伴い流体せん断応力のレベルをさらに下げるように作用する。
【0050】
理論に縛られないが、外部重力場が低下すると、非常に密度が高く大きな三元構造を得ることができる。最小の流体せん断応力レベルを得るためには、培養培地と実質的に同じ速度で培養チャンバを回転させることが好ましい。理論に縛られないが、これは、三次元培養に誘発される流体速度勾配を最小化する。細胞のサイズ(及び関連する沈降速度)を上記三基準を満しうる増殖速度の範囲に維持するためには、組織形成の速度及びサイズの制御が有効である。しかしながら、速度勾配及び結果として生じる流体せん断応力は、三次元細胞集合体に対するせん断応力の効果の研究等、特定の研究目的のために、意図的に導入及び制御されることが好ましい。さらに、増殖工程の過渡現象の停止は、他にも理由があるが、初期システムの開始、サンプルの捕捉、システムのメンテナンス及び三次元培養の終了の間、ロジスティカルな目的のため、許可され、許容される。
【0051】
重力に対して実質的に垂直な軸の周りの細胞の回転は、様々な沈降速度を実現することができる。これら沈降速度は、全て、本発明に従えば、何秒(沈降特性が大きい場合)から何時間(沈降差が小さい場合)の時間範囲の延長期間の間、異なる領域に空間的に局在したままである。理論に縛られないが、これは、多細胞構造を形成し、三次元培養において互いに関連するために必要に応じて相互作用できる充分な時間を、これら細胞に許容している。細胞は、好ましくは、必要に応じて回転可能なバイオリアクタで増殖することが好ましい。細胞は、少なくとも160日間、回転可能なバイオリアクタで増殖し続けることが好ましい。
【0052】
培養チャンバの寸法は、本発明の三次元培養における細胞の経路にも影響を与える。培養チャンバの直径は、適した体積を有するものから選ばれることが好ましく、三次元培養を視野にいれて、充分な細胞の播種密度を許容する、約15mLから約2Lから選ばれることが好ましい。理論に縛られないが、遠心力に起因する外側細胞の偏流は、培養チャンバのより大きな半径及び急速な細胞の沈降によって拡大する。このように、三次元培養の最終段階(高い沈降速度で最も大きな細胞集合体が形成されるとき)において予測される組織の沈降特性に応じて、培養チャンバの最大半径を限定することが好ましい。
【0053】
三次元培養における細胞の経路は、重力、遠心力及びコリオリ効果(coriolus effects)の結果生じる細胞の運動を組み入れて、解析的に計算される。これら支配方程式のコンピューターシュミレーションは、操作者が、プロセスをモデル化し、特定の計画された三次元培養の条件を満たしている(又は最適な)パラメータを選択することを許容する。図4は、外部(非回転)の基準座標系から観察された細胞経路の典型的な形を示している。
図5は、RPMに応じてプロットした理想円形流線形からの細胞の半径偏差のグラフである(典型的には、1秒あたり0.5cmの最終速度で沈降する細胞)。このグラフ(図5)は、重力沈降により生じる、正弦波的に変動する細胞の半径方向偏差の減少振幅を示している。図5はまた、RPMの増加に伴う遠心力に起因する細胞の半径方向偏差の増加(一回転当たり)を示している。これら相反する制限は、チャンバ壁への細胞衝突又はチャンバ壁における細胞の蓄積を最小化するのに好ましい最適なRPMの注意深い選択に影響する。外部重力場強度の増加又は細胞沈降速度の増加に伴って、有効なRPM選択に関して、さらに制限的な曲線族が発生する。この曲線族、又は好ましくはこれら支配軌道方程式を解くコンピューターモデルが、与えられた外部重力場強度における、与えられた沈降速度の細胞の増殖のために、最適なRPM及びチャンバ直径の選択に利用されることが好ましい。理論に縛られないが、典型的な三次元培養が増殖されるにつれて、組織、細胞集合体及び組織様構造はサイズ及び沈降速度が増加するため、回転速度は同じことを最適化するように調整されることが好ましい。.
【0054】
三次元培養において、培養培地の回転基準座標系からの細胞軌道(図4)は、回転重力ベクトル(図6)の影響の下、ほぼ円形の経路に近づくように見える。理論に縛られないが、2つの擬似力、コリオリ力及び遠心力は、回転(加速された)基準座標系から生じ、他のほぼ円形の経路のひずみを生じさせる。より高い重力レベル及びより高い細胞沈降速度は、非回転参照座標系において見られるような理想円形軌道からのより大きな軌道偏位に相当する大きな半径方向の円形経路を生じさせる。回転基準座標系において、理論に縛られないが、沈降速度の異なる細胞は、重力ベクトルが回転しない;細胞は沈降しているが、小さい円をなしている(回転基準座標系において観察されるように)場合よりも、実質累積分離を大幅に減少させつつ、長期間互いの近くで空間的に局在した状態を維持すると考えられる。このように、実施において、回転可能なバイオリアクタは、機械的に相互作用するのに十分な時間で、且つ、生体内で見られるのと同じ細胞間支持及び細胞間形状を実質的に再現する可溶な化学的シグナルを通じて、沈降特性の異なる細胞を提供する。実施において、本発明は、好ましくは、約0cm/秒から最大10cm/秒の沈降速度を提供する。
【0055】
さらに、実施において、本発明の培養チャンバは、これらに限定されないが、好ましくは、新鮮な培養培地、細胞混合物、生物学的要素及び生物学的活性化合物を投入するため、並びに、代謝老廃物及び生物学的要素のサンプルを含む使用済み培養培地の量を取り除くため、少なくともひとつの開口部を有している。培養培地の交換は、新鮮な又は再循環させた培養培地が、代謝ガスの交換、栄養素の供給、及び代謝老廃物の除去をサポートするのに充分な速度で、培養チャンバ内で移動する、培養培地ループによって行うことが好ましい。これは、他の静止している三次元培養をわずかに分解するかもしれない。従って、何時間から何ヶ月の間、充分に代謝負荷をサポートできる長期間三次元培養を提供するために、これらに限定されないが、三次元培養の培養培地に対する呼吸ガス交換、栄養素供給、成長因子供給等の好ましい要素をサポートするメカニズム、及び、代謝老廃物を除去するメカニズムを導入することが好ましい。
【0056】
本発明は、好ましくは三次元培養、ひいては生物学的要素及び細胞をTVEMFに曝露することが好ましい。TVEMFは、それらの三次元形状、細胞間支持及び細胞間形状を維持する細胞の加速増殖を提供するだけでなく、さらに、増殖中の細胞のいくつかの特性、例えば、成長促進遺伝子のアップレギュレーション又は成長抑制遺伝子のダウンレギュレーションに影響を与えるかもしれない。電磁場はTVEMF源によって生じる。実施において、回転可能なバイオリアクタの導電性コイルは、培養チャンバと共に、すなわち、培養チャンバと同じ軸の周囲を同じ方向に、回転可能であることが好ましい。また、導電性コイルは、回転可能なかん流TVEMF‐バイオリアクタの培養チャンバに対して固定されていることが好ましい。導電性コイルは、一体化、すなわち、回転可能なTVEMFバイオリアクタの培養チャンバの導電性コイルの培養チャンバの外部の周囲に貼り付けられて該外部に巻きついていることが好ましい。TVEMF源は、動作可能なように、回転可能なTVEMFバイオリアクタに接続される。本発明の方法は、これら上記三基準を従来得られなかった方法で提供し、充分な増殖(単位体積あたりの数、組織に関する直径又は濃度における増加)が十分な時間をかけて確認されるよう、三次元培養を最適化すると同時に、増殖を促進及びサポートする。
【0057】
回転可能なバイオリアクタの作動によって生成される質的に特有な細胞に加えて、理論に縛られないが、細胞及び組織の培養のための全培養チャンバ体積の利用効率の向上が、実質的に均一な均質懸濁の実現によって得られる。従って、回転可能なバイオリアクタは、実施において、同じ回転可能なバイオリアクタでの細胞数の増加を、より少ない人材で有利に提供する。たくさんの細胞種類が本方法に利用できる。本発明の増殖された細胞及び組織は、上記且つ本発明を通して示したように、自然発生的な、増殖されていない細胞及び組織と本質的に同じ三次元形状、細胞間支持及び細胞間形状を有するため、基本的な細胞及び組織の生物学研究の他、生体内細胞の挙動の正確な生体外(in vitro)モデルを必要とする臨床応用もまた、本発明及び本発明を用いる方法が促進する応用である。生体内の状態を非常によく再現する環境における生物学的活性化合物の検査は、役立つ。
【0058】
生物学的活性化合物の毒性及び有効性は、生物学的活性化合物の特性化を行うことで検査できる。生物学的活性化合物を検査するためには、生体外組織モデルを正確に形成することがおおいに望ましい。回転可能なバイオリアクタは、生体内微環境を詳しく表現する方法で、細胞が生物学的活性化合物に応答する、本質的に静止した三次元培養を含む均一で便利な生体外条件を提供することができる。
【0059】
異なる薬物群は、明らかに異なる作用メカニズムを有するが、本発明が取り組む、薬開発プロセスが共有する一般的特徴がある。例えば、抗ウイルス薬の場合、ウイルス粒子の完全な生活環は、介入の機会を提供する。ウイルス生活環は、少なくとも、ウイルス粒子の初期輸送及び標的細胞の近くへの配置、細胞膜貫通、遺伝子結合、ウイルスサブ粒子の生成、ウイルス粒子の集合、ウイルスの放出を含む。ウイルス生活環におけるこれら特定の工程は、抗ウイルス薬等の生物学的活性化合物がターゲットとし、有効性を検査される工程である。従って、このような検査は、本発明のように、回転可能なバイオリアクタにおける増殖によって提供される生体内微環境を非常に良く再現した、高品質の細胞及び多細胞組織レベルの挙動を必要とする。本発明の方法によって好ましくは検査されるウイルスの重要な例には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、鳥インフルエンザ、肝臓炎、ヘルペスウイルス等が挙げられ、レトロウイルスRNA(逆転写酵素依存性)同様、感染ウイルス粒子に基づいた標準DNAが挙げられる。同様のプログラムが、生物学的活性化合物の効果の検査、好ましくは、毒物曝露に関する中毒症候群が検査される細菌感染に対する抗細菌剤の効果の検査に続き、是正の介入(例えば、重金属曝露)の方法を提供することが好ましい。
【0060】
他の生物学的活性化合物は、該生物学的活性化合物が、正常な組織及び細胞の機能を、正常な細胞及び組織の機能に潜在的に回復させる又は病的状態を阻止するよう調整できるかどうかを含め、正常な細胞及び組織の機能及び形態学に対するその効果を決定するために検査されることが好ましい。理論に縛られないが、病的状態において、正常な細胞及び組織の機能は、大抵、メカニズムの問題の規制及びフィードバックのために、強く又は弱く発現する。例えば、成人発症の糖尿病の場合、少ない細胞膜インスリン受容体、効果のない受容体、又は遮断された受容体のいずれかのために、インスリンに対する細胞応答(グルコースの認知)が不十分である。成人発症の糖尿病に対する処置が検査される薬の定常流は、これら細胞の機能と構造を正常に修正するように指示される。実質的に生体内の状態を再現する生体外モデルでは、細胞が生体内微環境と実質的に同じ三次元形状、細胞間支持及び細胞間形状を有しており、生体内の状態を再現する細胞及び組織の機能に栄養を補給し、本発明に生物学的活性化合物の効果の検査を提供し、それによって生物学的活性化合物の特性化が行われる。
【0061】
生物学的活性化合物の有効性が検査されるのと同時に、薬に曝露され、生体外において忠実性を強化するように培養された標的細胞及び/又は標的組織及び他の関連のない組織に対する毒性も、本発明の方法によって検査されることが好ましい。機能異常の組織及び細胞は、これらに限定されないが悪質形質転換した(ガン性の)組織等の病原の標的に対する生物学的活性化合物の潜在的有効性評価のために、回転可能なバイオリアクタの三次元培養において、培養されることが好ましい。悪性組織に対して検査される、いくつかの好ましい生物学的活性化合物としては、限定されないが、化学療法薬、放射線療薬、抗転移性薬、腫瘍欠陥性除去薬及びナノ粒子試薬等が挙げられる。また、ハイブリッド細胞株は、本発明の方法によって検査されることが好ましい。
【0062】
将来、ナノ粒子(「ナノ粒子」という用語は、人工生物活性粒子を意味する)治療法(ガン及び非転移性の病状の補正)に大きな期待ができること、及びこれらの発展は、生体外モデル(病的及び正常の両方)における正確な組織培養次第であることは、注目すべきことである。従って、ナノ粒子機能の検査を行う生物学的活性化合物は、回転可能なバイオリアクタにおける本発明の増殖プロセスによって検査されることが好ましい。ナノ粒子の機能としては特に限定されないが、次のような機能、例えば、ホーミング機能、目標識別機能、接着機能、アドミタンス機能、直接粒子介入機能;薬放出、粒子のライフタイム/ライフサイクル、分解、及びクリアランス等の第2の粒子機能;が挙げられる。治療の目的を達成して変化したウイルスからなるハイブリッドも同様に検査されることが好ましい。
【0063】
本発明は、幹細胞再生の薬理学的な修飾、変化又は修正のメカニズム、並びに、幹細胞(又は前駆細胞)プールを再生する経路及び幹細胞から所望の組織(又は関係する前駆系統)を生成する経路の両方に導かれる分化進行を、検査する好ましい方法も提供する。本発明は、好ましい態様において、生体外において幹細胞を正確に増殖すると同時に、生体内において見られるのと本質的に同じ三次元形状、細胞間支持及び細胞間形状を維持する方法を提供する。このような好ましい態様において、可溶で直接接触する制御メカニズムに対する応答を検査されうる幹細胞を有する三次元培養は、移植品質アセスメントなどの非直接臨床用途のために検査されることも好ましい。本発明の幅広い適用性を明らかにするため、いくつかの付加的な好ましい態様は、腎細菅及び腎基質複合体における利尿性能及び腎臓毒性の検査;回転可能なバイオリアクタ内でのスムースな筋肉培養における血圧制御処理に対する応答;及び自己免疫モデルにおける生物学的活性化合物の検査を含んでいる。
【0064】
本発明は、ここで述べた結果及び利点を得るためにうまく適用させる。そこに内在する結果及び利点も同様である。発明の範囲から逸脱せずに、ここに含まれる全ての事柄は、限定ではなく説明として解釈されることを意図する。当業者にとって、様々な変更が発明の精神及び範囲を逸脱しない範囲でなされることは明らかであり、ゆえに、発明は、図面、明細書の記載に限定されずに、添付の請求項の記載に限定されるのみである。
【0065】
(実施方法)
実施において、回転可能なバイオリアクタは、好ましくは15mL〜約2Lの培養チャンバを有し、培養培地、細胞、生物学的活性化合物、及び/又は所望の三次元培養の培養培地の好ましい他成分を追加するための体積だけの余裕を残して、適切な培養培地で完全に満たされ、ヒト細胞を増殖するには、アルブミン(5%)及びG‐CSFが補足されることが好ましい。制御環境である培養器は、回転可能なバイオリアクタを完全に取り囲むこのとが好ましく、約5%CO2及び約21%酸素に設定されることが好ましく、また、温度は、約26℃〜約41℃に設定されることが好ましく、約37℃±2℃がさらに好ましい。回転可能なバイオリアクタは、積分温度計、加熱器、及びエアコントロール(CO2、O2及び/又は窒素の制御を含む)を有していることが好ましい。
【0066】
まず、安定した培養環境を培養培地に作る。回転は、約10RPMで開始することが好ましい。10RPMは、微小担体ビーズの軌道曲線を形成する好ましい速度である。このとき、該ビーズは、重力誘起沈降又は回転誘起遠心分離のいずれかによってチャンバ壁に明らかにと堆積しい。このようにして、回転可能なバイオリアクタは、三次元培養において、最小の流体速度勾配及び流体せん断応力を発生させる。
【0067】
細胞付着担体を使用する場合、細胞付着担体は、最適な密度、好ましくは培養培地1ml当たり細胞付着担体5mg、を得るために、細胞と同時に又は連続して、培養チャンバに導入されることが好ましく、足場依存性細胞用の細胞付着担体は微小担体が好ましい。細胞混合物は、三次元培養を開始するために、培養チャンバの開口部から安定した培養環境に投入されることが好ましく、供給システムを通過する間の細胞のダメージを最小化するために、短時間、特に2分で投入されることが好ましい。細胞混合物及び/又は細胞付着担体は、使用するのであれば、シリンジによって供給されることが好ましい。
【0068】
細胞の投入が完了した後、培養チャンバは実質的に水平な軸に対する初期の回転に素早く戻り、好ましくは1分未満で、好ましくは10RPMにすることによって、細胞が得られる流体せん断応力を最小レベルに戻す。初期ローディング及び取り付け段階の間、細胞は、短時間、好ましくは2〜4時間、さらに好ましくは、過渡現象フローを弱めるのに充分な時間、平衡を保つようにする。
【0069】
本発明において検査される生物学的活性化合物は、細胞増殖の前、間、及び/又は後に、三次元培養に投入される。生物学的活性化合物の投入方法は、生物学的活性化合物がとる形態(すなわち、ガス、液体、又は固体)、及び、生物学的活性化合物が培養チャンバに投入される際に通る開口部に依存する。さらに、濃度は、最終的に行われる好ましい検査及び生物学的活性化合物の望ましい結果に依存する。
【0070】
三次元培養の増殖の進行に伴い、集まった細胞のサイズ及び沈降速度は、生物学的活性化合物の影響に依存して増加することが予測され、今や増大した組織片の直径の理想円形流線形からの重力誘起軌道ひずみを減少させるために、システムの回転速度は増加させてもよい(好ましくは約1〜2RPMずつ増加)。生物学的活性化合物、集まった細胞、又は細胞集合体の作用によって、サイズは増加又は減少する。どちらにしても、三次元培養の回転速度は、回転可能なバイオリアクタの内部との衝突を防ぐために調節される必要がある。壁衝突は好ましくないが、起こり得ることである。しかしながら、回転可能なバイオリアクタは、たとえあったとしても静止三次元培養を乱さないような充分に低いエネルギー衝突であるが、いかなる衝突にも、備えてある。
【0071】
増殖中、培養チャンバ内の三次元培養の回転速度は、三次元培養中の細胞が実質的に水平軸に又はその周囲にとどまるように見積もり、調整される。回転速度の増加が、細かい構造のさらなる三次元成長を阻害する過度な壁衝突を防止するのは当然である。例えば、三次元培養の細胞が、回転周期の下方側で過度に内側及び下方側へ落ち、且つ、回転周期の上方側で過度に外側に落ち且つ上方側に充分に落ちない場合、回転における増加は好ましい。好ましくは、使用者は、細胞の三次元形状、細胞間支持及び細胞間形状が維持されるように、最小壁衝突の頻度及び強度を助長する回転速度をなるべく選択するよう忠告される。本発明の好ましい速度は、約2から約30RPMであり、より好ましくは、約10から約30RPMである。
【0072】
三次元培養は、好ましくは透明な培養チャンバを通して視覚的に評価され、手動で調節されることが好ましい。三次元培養の評価及び調節は、培養チャンバ内の細胞の位置を監視するセンサー(例えば、レーザーなど)によって自動的に行われてもよい。細胞の動きを過度に示すセンサー信号は、自動的にメカニズムに適宜回転速度を調節させるだろう。
【0073】
細胞混合物の初期ロード及び好ましくは取り付け段階後、細胞付着担体が利用される(2〜4時間)場合、本発明の好ましい態様において、TVEMF源はオンにされ、TVEMF出力が培養チャンバ内の三次元培養に所望の電磁場を発生させるよう調節される。TVEMFは、初期ロード及び取り付け段階の間、三次元培養に加えられることが好ましい。増殖が終了するまで、増殖時間の間、TVEMFが三次元培養に供給されることが好ましい。
【0074】
導電性コイルの大きさ、及び、回転可能なTVEMFバイオリアクタの培養チャンバの周囲に巻きつける回数は、TVEMFが導電性コイルに供給される際に、回転可能なTVEMFバイオリアクタの培養チャンバの三次元培養内にTVEMFを発生させるものである。TVEMFは、以下の1つから選ばれることが好ましい;
(1)100ガウス未満の力振幅及び1000ガウス/秒より大きいスルーレートを有するTVEMF、(2)100Hz未満の周波数において、実質的に低い力振幅の二極性方形波であるTVEMF、(3)100%未満の負荷サイクルにおいて、実質的に低い力振幅の方形波であるTVEMF、(4)1ms未満の持続パルスに対して、1000ガウス/秒より大きいスルーレートを有するTVEMF、(5)1%未満の負荷サイクルにおいて、スルーレート二極性方形波関数形式パルスを有するTVEMF、(6)最大振幅100ガウス未満の力振幅及びスルーレート二極性方形波関数形式パルスを有し、負荷サイクルが1%未満であるTVEMF、(7)細胞混合物を通して一定の力強度を発生させるソレノイドコイルを使用して適用されるTVEMF、及び(8)磁束の空間勾配及び細胞混合物に集中された磁束を提供するフラックスコンセントレーターを利用して適用されるTVEMF。
振動する電磁力強度における振幅幅は、三次元培養において細胞の所望の刺激をもたらすために選択することができるパラメータである。しかしながら、これらパラメータは、本発明のTVEMFを限定するものではなく、本発明の他の態様に基づいて変化する。TVEMFは、例えば、EN131細胞センサーガウスメータ(Cell Sensor Gauss Meter)など一般的な装置で測定することができる。
【0075】
急速細胞増殖及び全代謝要求の増加は、三次元培養を富栄養化する好ましい成分の断続的な追加を必要とする。該成分としては、例えば、栄養素、新鮮な成長培地、成長因子、ホルモン及びサイトカイン等が挙げられるが、これらに限定されない。この追加は、グルコース及び他の栄養素レベルを維持するために必要に応じて増やすことが好ましい。回転可能なバイオリアクタにおける、細胞及び組織の急速培養の間、排出物を含む培養培地は、必要に応じて取り除かれることが好ましい。生物学的要素の試料もまた、検査される三次元培養から取り除かれてもよく、培養チャンバの回転は、実際に操作するために一時停止させてよい。三次元培養は、優れた細胞軌道の選択が可能なポイント、すなわち、低せん断三次元培養に関して、性能をいくらか低下させる制約が重力によって導入されるポイントを超えて進歩することが好ましい。さらに、増殖後、細胞を治療目的、例えば、組織の再生、研究、及び病気の治療等のために利用することができる。
【実施例】
【0076】
以下の実施例は、発明の好ましい説明であって、発明を限定することを意図したものではない。
【0077】
[実施例1 成体幹細胞及び生物学的活性化合物の増殖]
(準備)
図1及び図2の好ましい態様において示された、回転可能なバイオリアクタの75ml培養チャンバは、洗剤、及び、消毒に望ましい濃度の殺菌消毒剤溶液(Roccal II)で洗浄し、続く大量のすすぎで清浄し、高品質の脱イオン水に浸漬することによって準備されることが好ましい。回転可能なバイオリアクタは、オートクレーブによって殺菌した後、培養培地で一度ゆすぐ。回転可能なバイオリアクタの使い捨て培養チャンバを利用する場合、使い捨て培養チャンバは既に殺菌され、ただ包装を取り除き、モーターに取り付ける必要があるだけであることが好ましい。導電性コイルを有する好ましい態様では、導電性コイルは、回転可能なバイオリアクタのTVEMF源に接続される。
【0078】
(末梢血幹細胞の増殖)
回転可能なバイオリアクタは、イソコフ改変ダルベッコ培地(Isocove’s modified Dulbecco’s medium;IMDM、GIBCO, Grand Island N‐Y.)からなる培養培地で満たし、5%ヒトアルブミン、100ng/ml組み換えヒトG−CSF(Amgen社、Thousand Oaks, CA)、及び100ng/ml組み換えヒト幹細胞因子(SCF、Amgen)を補給することが好ましい。さらに、D−ペニシラミン[D(‐)‐2−Amino−3−mercapto−3−methylbutonoic acid](Sigma‐Aldrich)銅キレート剤のDMSO溶液を、回転可能なバイオリアクタ内に10ppmの量で導入することが好ましい。末梢血からの成体幹細胞(CD34+/CD38−)は、0.75×10細胞/mLの濃度で回転可能なバイオリアクタの培養チャンバに配置されることが好ましい。培養チャンバは細胞混合物をそこに配置する前に、平衡化されることが好ましい。図3の好ましい態様に描かれているような培養培地フローループを利用する場合には、培養培地の平衡化は、安定した培養環境を形成するのに好ましい。安定した培養環境は、細胞混合物を添加するのに実質的に低いせん断応力レベルを提供する。
【0079】
モーターは、好ましくは、おおよそ30RPMの速度に作動させられる。培養チャンバ及び培養チャンバ内の培養培地が平衡化されている場合、回転速度は、好ましい回転速度までゆっくりと戻される。回転可能なバイオリアクタの回転は、好ましくは、毎日評価され、壁衝突を防ぎ、且つ、三次元培養の細胞を培養チャンバの実質的に中央に配置させておく速度が維持されるように調節されることが好ましい。TVEMF源は、好ましいガウス及び振動範囲、好ましくは、約1mA〜約1,000mAに作動させられることが好ましい。増殖は、好ましくは7日間継続され、終了したら、その時点で細胞が検査される。
【0080】
(試料及び結果)
少なくとも2つの末梢血幹細胞を、上記で述べた条件下、回転可能なバイオリアクタで増殖させることが好ましい。サンプル1は、7日間増殖し、その後顕微鏡で生存能力を評価する。第1のサンプルでは細胞が正常な状態を維持し、増殖していることが予測される。生物学的活性化合物は、サンプル2の三次元培養の初期に導入することが好ましい。生物学的活性化合物は、3ppmの緑膿菌バクテリアであることが好ましい。サンプル1及びサンプル2間の増殖条件は、バクテリア以外、同じにすることが好ましい。7日後、実験培養は、終了し、細胞の生存能力を顕微鏡で評価する。微視的検査によって、細菌性生物学的活性化合物を含むサンプル2の細胞は死に、一方、サンプル1の細胞は生存能力と正常状態を維持することが明らかとなることが予測される。このような結果によって、この好ましいバクテリアを、末梢血流に侵入させれば、害があるおそれがあることが予測される。細胞の生存能力は、当技術分野で周知のいずれの周知容認方法によって決定される。
【0081】
[実施例2 ラットの腎細胞及び生物学的活性化合物の増殖]
(準備)
回転可能なバイオリアクタは上記実施例1と同様にして準備する。
【0082】
(ラット腎細胞の増殖)
ラットの腎細胞は、安楽死させたSprague−Dawleyラット(Harlan Sprague‐Dawley, Cleveland Ohio)から採取した腎皮質から単離した。簡単に言えば、137mmolNaCl、5.4mmolKCl、2.8mmolCaCl2、1.2mmolMgCl2、10mmolHEPES−Tris、pH7.4のバッファー中で、腎皮質をはさみでばらばらにし、細かくみじん切りすることが好ましい。みじん切りにした組織は、0.1%タイプ4コラゲナーゼ及び0.1%トリプシンの生理食塩水溶液10ml中に入れることが好ましい。組織を含む溶液は、37℃の震盪水浴中、断続的に滴定を行いながら、45分間、インキュベーションすることが好ましい。細胞は、遠心分離機中に置き、穏やかに遠心分離(800rpm、5分間)を行い、浮遊物を吸引し、0.1%ウシ血清を含む5mlの腎細胞バッファー中に再懸濁し、微細メッシュ(70mm)に通すことが好ましい。メッシュを通過した画分は、5%ウシ血清アルブミンの不連続勾配の上に重層し、穏やかに遠心分離(800rpm、5分間)することが好ましい。浮遊物は、ラットの腎細胞の細胞ペレットは残して、再び捨てるべきである。この時点で、細胞は、将来遣うために、必要に応じて冷凍(好ましくは‐80℃、より好ましくは、液体窒素中で)することが好ましい。
【0083】
ラットの腎細胞ペレットは、おおよそ1×106細胞/mLの濃度で、DMEM/F−12培地(シプロフロキサシン及びファンギゾン(fungizone)処理)中に再懸濁することが好ましい。少なくとも2つの細胞のサンプル(1×106細胞/mL)を、回転可能なバイオリアクタの培養チャンバ内で増殖させることが好ましい。回転可能なバイオリアクタは、5%CO2、95%O2培養器中に置くか、又はその濃度に調節する一体型気圧温度計を有しているべきである。ラットの腎細胞は好ましくは、7日間増殖されるべきである。
【0084】
(サンプル及び結果)
ラットの腎細胞のサンプル1は、いずれの生物学的活性化合物を含むいかなる添加剤もなしで増殖されるべきである。生物学的活性化合物、10ppmジイソオクチルフタレート可塑剤は、サンプル2の三次元培養開始時に導入されることが好ましい。サンプル1及びサンプル2は共に、好ましくは7日後、顕微鏡測定等による当技術分野で周知の方法で、細胞の生存能力を評価されるべきである。サンプル1の細胞は、回転可能なバイオリアクタ内に配置された少なくとも7倍に増殖することが予測される。一方、サンプル2の大部分は死ぬことが予測される。このような結果は、ジイソオクチルフタレートが、体内に入り、腎細胞に蓄積した場合には、有毒であることを予測させる。生物学的活性化合物以外、全ての他の条件は、サンプル1及び2の間で、好ましくは同じにする。加えて、培養条件及び回転可能なバイオリアクタの回転は、実施例1と同じにすることが好ましい。しかしながら、三次元培養は、本実施例2では、TVEMFに曝露しないことが好ましい。
【0085】
[実施例3 ラット腎細胞及び生物学的活性化合物の増殖]
(準備)
回転可能なバイオリアクタは、上記実施例1と同様に準備する。
【0086】
(ラット腎細胞の増殖、サンプル、及び結果)
実施例3において、サンプル2におけるジイソオクチルフタレート可塑剤を好ましくは10ppmシスプラチンに置き換えることを除いては実施例2を繰り返す。検査は実施例2と同じ条件下、10回繰り返すことが好ましい。ほとんど全ての場合において、サンプル1の細胞は生存能力を維持することが予測される。サンプル2の細胞、及び、10ppmのシスプラチンを有する大多数の場合においてラットの腎細胞は、正常状態及び生存能力を維持することが予測される。従って、このような結果により、ラットの腎細胞に10ppmのシスプラチンを添加し、回転可能なバイオリアクタにおいて増殖させることには、悪影響がないことが予測され、結局は、むしろシスプラチンが腎不全の防止に役立つということを示唆している。付随研究では、ヒトにシスプラチンを使用する前に、シスプラチンを使用することによる腎不全の防止を実施すべきである。
【0087】
[実施例4 末梢血幹細胞及び生物学的活性化合物の増殖]
(準備)
回転可能なバイオリアクタは、上記実施例1と同様に準備する。
【0088】
(末梢血幹細胞の増殖)
回転可能なバイオリアクタは、イソコフ改変ダルベッコ培地(Isocove’s modified Dulbecco’s medium;IMDM、GIBCO, Grand Island N‐Y.)からなる培養培地で満たし、5%ヒトアルブミン、100ng/ml組み換えヒトG−CSF(Amgen社、Thousand Oaks, CA)、及び100ng/ml組み換えヒト幹細胞因子(SCF、Amgen)を補給することが好ましい。さらに、D−ペニシラミン[D(‐)‐2−Amino−3−mercapto−3−methylbutonoic acid](Sigma‐Aldrich)銅キレート剤のDMSO溶液を、回転可能なバイオリアクタ内に10ppmの量で導入することが好ましい。末梢血からの成体幹細胞(CD34+/CD38−)は、0.75×10細胞/mLの濃度で回転可能なバイオリアクタの培養チャンバに配置されることが好ましい。
【0089】
末梢血幹細胞の2つのサンプルは、この方法により調製されることが好ましい。サンプル1は、肝障害が知られていない人に由来することが好ましい。サンプル2は、肝障害が知られている人に由来することが好ましい。サンプルは、上記のように調製され、実施例1において記載した条件下且つ同じ濃度で、2つの異なる回転可能なバイオリアクタ内に配置される。生物学的活性化合物、20ppmアセトアミノフェノンは、三次元培養の初期においてサンプル2に加えられる。実施例1のように、サンプル1及びサンプル2は共に、増殖プロセスの継続中、約1mA〜約1,000mAのTVEMFに曝露されることが好ましい。
【0090】
(結果)
14日間の終わりに、例えば、血球計数器付きの顕微鏡で、各サンプルの生存能力を評価し、細胞の数を数えることが好ましい。サンプル1の細胞は、回転可能なバイオリアクタ中に配置した数の少なくとも10倍に増殖することが予測される。また、サンプル2の細胞は死にも増えもせず、変化しないことが予測される。このような結果により、20ppmのアセトアミノフェンの存在下、肝臓組織が再生するという潜在的な課題が予測される。肝細胞をアセトアミノフェンに曝露する効果を決定するために、さらなる試験を実施すべきである。
【0091】
従って、急速且つ充分な細胞増殖は、ここで述べたように、本発明の回転可能なバイオリアクタ内の増殖によって成し遂げられることが予測される。また、急速且つ充分な増殖は、生体内の微環境と実質的に同じ三次元性及び細胞間相互作用に伴って起こることが予測される。
【0092】
本発明では、その精神と範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができるため、発明は、実施例を含む、図及び明細書の範囲によって限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】回転可能なバイオリアクタの好ましい態様の高側面図である。
【図2】回転可能なバイオリアクタの好ましい態様の側面斜視である。
【図3】回転可能なバイオリアクタの培養キャリアフローループの好ましい態様の概略を説明するものである。
【図4】非回転基準座標系における典型的な細胞の軌道経路である。
【図5】1回転当たりの細胞の偏差の大きさのグラフである。
【図6】培養培地の回転基準座標系で観察された細胞経路を示すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的活性化合物の特性化方法であって、
細胞及び生物学的要素を含む三次元培養を開始するために、細胞混合物を回転可能なバイオリアクタに配置する工程;
前記三次元培養中の前記細胞を制御可能に増殖させると同時に、前記回転可能なバイオリアクタの回転によって前記細胞の三次元形状及び細胞間支持及び細胞間形状を維持する工程;
前記三次元培養に生物学的活性化合物を導入する工程;及び
病理学的化合物を特性化する検査を使用することで、前記生物学的要素を検査する工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記生物学的要素が、細胞、細胞の一部、分泌物(ムチン、コラーゲン、マトリックス)、分泌ホルモン、分泌された細胞間構造成分、導入された構造マトリックス、接着マトリックス、成長基質、ナノ粒子、細胞間可溶性シグナル、細胞膜表面マーカー、膜結合型酵素、免疫識別マーカー、接着分子、液胞、貯蔵及び放出された神経伝達物質、細胞内部特殊化機構、グリコーゲン、培地、被検査化合物、疑わしい被検査毒素、被検査試薬、菌類、共役複合体、組織、酵素、DNA、RNA、ウィルス、タンパク質、人口生物活性粒子及び遺伝子からなる群より選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記回転可能なバイオリアクタが回転するチャンバ壁を有し、前記三次元培養の一部が該回転チャンバ壁に対して固定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞の制御可能な増殖工程が、さらに前記細胞を時間変動する電磁気力に曝露する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞が、前記回転可能なバイオリアクタに配置された数の少なくとも7倍に増殖される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞が、真核生物、原核生物、動物、菌類、植物、機能異常を示す細胞、細胞を含むナノ粒子、ハイブリッド細胞、細胞ハイブリッドを含む改変ウィルスよりなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞が、真核生物、原核生物、動物、菌類、植物、機能異常を示す細胞、細胞を含むナノ粒子、ハイブリッド細胞、細胞ハイブリッドを含む改変ウィルスよりなる群から選ばれる、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞が、真核生物、原核生物、動物、菌類、植物、機能異常を示す細胞、細胞を含むナノ粒子、ハイブリッド細胞、細胞ハイブリッドを含む改変ウィルスよりなる群から選ばれる、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記動物細胞が、哺乳類の成体幹細胞である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記動物細胞が、哺乳類の成体幹細胞である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記動物細胞が、哺乳類の成体幹細胞である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記検査が、移植特性、毒性、有効性、病理学、造腫瘍、遺伝的表現、核型、成長率特性、マルチ細胞形態学、個細胞形態学、細胞間関係、新陳代謝測定、ウイルスライフサイクルの一部、利尿薬の性能、腎毒性、血圧コントロール、及びナノ粒子機能からなる群より選ばれる少なくとも1種を目的とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記生物学的活性化合物が、粉末、液体、蒸気及び気体からなる群より選ばれる形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記生物学的活性化合物が、タンパク質、少なくとも1つの細胞、毒素、試薬、化学物質、気体、金属、金属複合物、放射物、少なくとも1つのナノ粒子、少なくとも1つのウィルス、タンパク質、抗菌剤、エレクトロポレーション、ケミカルポレーション、免疫細胞の活性化誘導体及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記検査が、幹細胞再生の病理学的調節、幹細胞再生の変更、幹細胞再生の矯正、幹細胞分化の病理学的調節、幹細胞分化の変更、及び幹細胞分化の矯正の機構からなる群より選ばれる少なくとも1つの特性化を目的とする、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記検査が、幹細胞再生の病理学的調節、幹細胞再生の変更、幹細胞再生の矯正、幹細胞分化の病理学的調節、幹細胞分化の変更、及び幹細胞分化の矯正の機構からなる群より選ばれる少なくとも1つの特性化を目的とする、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記検査が、幹細胞再生の病理学的調節、幹細胞再生の変更、幹細胞再生の矯正、幹細胞分化の病理学的調節、幹細胞分化の変更、及び幹細胞分化の矯正からなる群より選ばれる少なくとも1つの特性化を目的とする、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記回転可能なバイオリアクタが、約1rpmから約120rpmの速度で回転する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記回転可能なバイオリアクタが、約2rpmから約30rpmの速度で回転する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記回転可能なバイオリアクタが、約10rpmから約30rpmの速度で回転する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記生物学的活性化合物が、前記細胞の制御可能な増殖工程の前に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記生物学的活性化合物が、前記細胞の制御可能な増殖工程中に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記生物学的要素が、前記回転可能なバイオリアクタ中に細胞混合物を配置する前に検査される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記生物学的要素が、前記細胞の制御可能な増殖工程中に検査される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記生物学的要素が、前記細胞の制御可能な増殖工程後に検査される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記生物学的要素が、前記細胞の制御可能な増殖工程中及び該工程後に検査される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記生物学的要素が、前記細胞の制御可能な増殖工程前、該工程中及び該工程後に検査される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
さらに、前記生物学的要素を哺乳類の組織移植に使用する工程を含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−525045(P2009−525045A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553323(P2008−553323)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/002626
【国際公開番号】WO2007/092222
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(507288659)リジェネテック,インコーポレイテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】REGENETECH, INC.
【住所又は居所原語表記】1323 Creekford Circle, Sugar Land, Texas 77478, United States of America
【Fターム(参考)】