説明

生物学的流体の濾過方法

【課題】白血球の高い除去効率及び濾過時間の短縮化を両立することが可能な生物学的流体の濾過方法を提供すること。
【解決手段】本発明はフィルターを用いた生物学的流体の濾過方法であり、フィルターを通過させるべき生物学的流体の全量に含まれる白血球の数をN個とし、フィルターの濾過面積をAcmとしたとき、比率N/Aが2.8×10〜2.3×10個/cmである条件下において、
a)該流体の全量うち、50体積%以上80体積%以下の量について線速度0.20〜1.50ml/分/cmでフィルターを通過させる工程と、
b)工程a)における該流体の線速度の値よりも低い値に線速度を変更し、該流体の残りの量について線速度0.04〜0.14ml/分/cmでフィルターを通過させる工程と、
を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的流体から凝集物や白血球等の好ましくない成分を除去する為の濾過方法に関する。
【背景技術】
【0002】
輸血の分野において、血液製剤中に含まれている混入白血球を除去してから血液製剤を輸血する、いわゆる白血球除去輸血が普及している。これは、輸血に伴う頭痛、吐き気、悪寒、非溶血性発熱反応などの比較的軽微な副作用や、受血者に深刻な影響を及ぼすアロ抗原感作、ウィルス感染、輸血後GVHDなどの重篤な副作用が、主として血液製剤中に混入している白血球が原因で引き起こされることが明らかにされたためである。白血球除去方法には、いくつかの方法がある。そのうちフィルター法は、白血球除去性能に優れていること、操作が簡便であること、およびコストが安いことなどの利点を有するため現在普及している。
【0003】
フィルター法における濾過条件に関し、特許文献1〜3には濾過流速を一定に保つ試みが記載されており、これに適した濾過装置についての検討がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−155374号公報
【特許文献2】特開平09−140787号公報
【特許文献3】特開平11−216179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、生物学的流体(例えば、全血及び血液製剤)をフィルターへと移送する手段として、重力を利用する場合とポンプを利用する場合がある。これらのいずれの場合においても濾過処理が進行するに従ってフィルターが目詰まりして流速が著しく低下するという問題がある。
【0006】
上記特許文献1〜3に記載の発明は、このような問題に対処すべくなされたものであり、フィルター又はこれに連結するチューブの構成を工夫することに濾過流速を一定に維持しようとしたものである。例えば、特許文献2に記載の発明にあっては、フィルターの直後に細い径の回路を入れ、濾過処理の全過程を通して一定の流速で血液がフィルターを通過するようにコントロールしている。
【0007】
しかし、従来の濾過方法では、白血球の高い除去効率を維持しながら、濾過時間を短縮化することは困難であった。そこで、本発明は、白血球の高い除去効率及び濾過時間の短縮化を両立することが可能な生物学的流体の濾過方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、フィルターを用いた生物学的流体の濾過方法であって、フィルターを通過させるべき生物学的流体の全量に含まれる白血球の数をN個とし、フィルターの濾過面積をAcmとしたとき、比率N/Aが2.8×10〜2.3×10個/cmである条件下において、
a)該流体の全量うち、50体積%以上80体積%以下の量について線速度0.20〜1.50ml/分/cmでフィルターを通過させる工程と、
b)工程a)における該流体の線速度の値よりも低い値に線速度を変更し、該流体の残りの量について線速度0.04〜0.14ml/分/cmでフィルターを通過させる工程と、
を備える方法を提供する。上記生物学的流体としては、血液及び血液成分を含む流体が挙げられる。生物学的流体の全量は100〜400mlの範囲の特定の量であることが好ましい。
【0009】
上記濾過方法においては、濾過処理の途中で生物学的流体の流量を意図的に低下させることで、以下の通り、白血球の高い除去効率及び濾過時間の短縮化を両立できる。まず、工程a)は、濾過材の白血球吸着能が高い状態でなされるものであり、主に濾過処理の合計時間の短縮化に貢献する。つまり、工程a)においては単位時間当たりにフィルターを通過する流体の量を比較的多く設定しても、フィルターで捕捉されずに下流側に流れる白血球を十分に少ない量に抑えることができる。その後の工程b)は、濾過材の白血球吸着能が低下してきた状態でなされるものであり、主に白血球の高い除去効率に貢献する。つまり、工程b)においては、単位時間当たりにフィルターを通過する流体の量を工程a)よりも少なくすることで、フィルター内において白血球を確実に捕捉する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、白血球の高い除去効率及び濾過時間の短縮化を両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る濾過方法に用いる濾過装置の一例を示す模式図である。
【図2】図1に示す濾過装置が備えるフィルターの一例を示す平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】線速度の経時変化を示すグラフである。
【図5】本発明に係る濾過方法に用いる濾過装置の他の例の示す模式図である。
【図6】フィルターの他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第一実施形態>
[濾過装置]
図1に示す濾過装置50Aは、血液を収容したバッグ21と、フィルター10と、血液回収用のバッグ22とを備え、これらが上方から下方に向けてこの順序で並ぶように配置されている。フィルター10はバック21,22とチューブ25,26によって接続されており、チューブ25の途中にはロバートクランプ27およびチャンバー28が配設されている。
【0013】
フィルター10は、輸血用の血液から副作用の原因となる微小凝集物や白血球を除去するためのものであり、矩形扁平状の形状を有する。図2,3に示す通り、フィルター10はシート状の濾過材1と、これを収容する可撓性容器3と、血液処理領域Rを画成する内側接合部5と、外側接合部6とを備える。
【0014】
容器3の一方面F1には入口7が設けられており、他方面F2には出口8が設けられている。入口7および出口8にはチューブ接続用のポート7a,8aがそれぞれ設けられている。フィルター10は、使用時において、入口7から流入した血液が鉛直方向下向きに流れて出口8に至るように、入口7が上方に位置し、出口8が下方に位置するように鉛直方向に配置される。以下、フィルター10の構成について説明するが、フィルター10の要素の位置関係の説明はフィルター10の使用時の配置に基づいて行う。
【0015】
フィルター10は、濾過材1の形状が長方形であり、内側接合部5の形状も長方形である。内側接合部5は、濾過材1と容器3とを一体的に接合してフィルター10の血液処理領域R(以下、「領域R」という。)を画成している。
【0016】
領域Rは、内側接合部5と同様、その形状が長方形である。領域Rは、図2に示す通り、鉛直方向に延びる辺S1,S2が左右に配置されるように形成されている。領域Rの上部に入口用ポート7aが形成されており、下部に出口用ポート8aが形成されている。
【0017】
濾過材1は、血液に含まれる凝集物や白血球を吸着する性能を有するシート状の濾過材用材料を所定のサイズに切断したものである。
【0018】
濾過材用材料としては、柔軟性を有したものが好ましく、メルトブロー法などによって製造された不織布等の繊維構造物や、連続した細孔を有する多孔質体(スポンジ状構造物)、多孔膜などが挙げられる。濾過材用材料として、繊維構造物、多孔質体または多孔膜からなるもの、あるいは、これらを基材とし、その表面に化学的または物理的な改質を施したものを使用してもよい。濾過材用材料は、繊維構造物、多孔質体または多孔膜を単層で用いてもよいし、これらを組み合わせて複数層で用いてもよい。
【0019】
上記繊維構造物の素材としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリトリフルオロエチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリスチレンなどが挙げられる。濾過材1またはその基材として繊維構造物を使用する場合、繊維構造物はほぼ均一な繊維径を有する繊維からなるものであってもよいし、国際公開第97/232266号に開示されているような、繊維径の異なる、複数種の繊維が混繊された形態であってもよい。濾過後の血液の白血球数を5×10個/単位以下にまで減じるには、濾過材1を形成する繊維の平均繊維径は、好ましくは3.0μm以下であり、より好ましくは0.9〜2.5μmである。
【0020】
上記多孔質体または多孔膜の素材としては、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、セルロースアセテート、ポリビニルホルマール、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタンなどが挙げられる。濾過後の血液の白血球数を5×10個/単位以下にまで減じるには、多孔質体または多孔膜の平均孔径は2μm以上10μm未満であることが好ましい。
【0021】
容器3を形成するための可撓性を有する樹脂シートまたはフィルムを準備する。容器3の素材としては、例えば、軟質ポリ塩化ビニル;ポリウレタン;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン;スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体の水添物;スチレン−イソプレン−スチレン共重合体またはその水添物等の熱可塑性エラストマー;ならびに、熱可塑性エラストマーとポリオレフィン、エチレン−エチルアクリレート等の軟化剤との混合物等が挙げられる。滅菌のための高圧蒸気や電子線の透過性が良好であること、更には遠心時の負荷に耐える強靭性を有する点から、容器3の素材として、軟質塩化ビニル、ポリウレタン、ポリオレフィン、および、これらを主成分とする熱可塑性エラストマーが特に好適である。
【0022】
内側接合部5を形成することによって、濾過材1と容器3とを一体的に接合してフィルター10の領域Rを画成する。内側接合部5は、例えば高周波溶着によって形成することができる。外側接合部6も内側接合部5と同様、高周波溶着によって形成することができる。
【0023】
なお、入口用ポート7aおよび出口用ポート8aは、容器3の所定の位置に、例えば溶着によってそれぞれ設け、入口7および出口8を通じて領域Rと外部とを連通させればよい。上記過程を経ることにより、フィルター10が製造される。
【0024】
[濾過方法]
本実施形態に係る濾過方法は、バッグ21に収容されている血液(生物学的流体)の全量をフィルター10に供給し、血液に含まれる白血球を除去するためのものである。バッグ21内の血液量は100〜400mlの範囲の特定の量であることが好ましい。バッグ21に収容されている血液に含まれる白血球の数をN個とし、フィルター10の濾過面積をAcmとしたとき、この方法は比率N/Aが2.8×10〜2.3×10個/cm(好ましくは8.0×10〜2.3×10個/cm)である条件下で実施されるものであり、以下の工程a)および工程b)がこの順序で実施される。
a)バッグ21内の血液の全量うち、80体積%以下の量について線速度0.20〜1.50ml/分/cmでフィルター10を通過させる工程。
b)工程a)における血液の線速度の値よりも低い値に線速度を変更し、バッグ21内の血液の残りの量について線速度0.04〜0.14ml/分/cmでフィルターを通過させる工程。
【0025】
なお、本発明でいう「線速度」は、フィルター10に供給する血液の単位時間当たりの量(ml/分)をフィルター10の有効濾過膜面積(領域Rの面積)で除して得られる値を意味する。
【0026】
工程a)において、フィルター10を通過させる血液の量は、バッグ21内の血液の全量の80体積%以下であるが、好ましくは50体積%以上80体積%以下である。この量が80体積%を超えると、工程a)の終盤におけるフィルター10の白血球捕捉能の低下に伴い、白血球の除去効率が不十分となる。他方、この量が50体積%未満であると、濾過処理の短縮化が不十分となりやすい。
【0027】
工程a)における血液の線速度は、上記の通り、0.20〜1.50ml/分/cmである。この線速度は好ましくは0.50〜1.50ml/分/cmであり、より好ましくは1.00〜1.50ml/分/cmである。線速度が0.20ml/分/cm未満であると、濾過処理の短縮化が不十分となり、他方、1.50ml/分/cmを超えると、白血球の除去効率が不十分となる。
【0028】
工程a)の後、血液の線速度を変更して工程b)を実施する。操作の容易性の点から、図4の実線L1で示すように、血液の線速度を不連続に変化させることが好ましい。図4の実線L1は本実施形態における線速度の変化を示し、破線L2,L3は従来の濾過方法における線速度を示すものである。破線L2は線速度が濾過処理の全期間にわたって一定になるように条件を調整した場合を示す。破線L3は濾過処理の全期間にわたってフィルターの上流側と下流側の差圧を一定に維持した場合を示し、線速度が連続的に低下している。
【0029】
本実施形態のように、重力を利用して濾過処理を行う場合、線速度を不連続に変化させるには、バッグ21の位置を下方に移動させてもよいし、あるいは、ロバートクランプ27を操作してチューブ25の流路を狭めてもよい。
【0030】
工程b)における血液の線速度は、上記の通り、0.04〜0.14ml/分/cmである。この線速度は好ましくは0.07〜0.13ml/分/cmであり、より好ましくは0.10〜0.13ml/分/cmである。線速度が0.04ml/分/cm未満であると、濾過処理の短縮化が不十分となり、他方、0.14ml/分/cmを超えると、白血球の除去効率が不十分となる。工程b)における線速度は、工程a)における線速度の3〜70%であることが好ましく、5〜20%であることがより好ましい。
【0031】
本実施形態に係る濾過方法によれば、白血球の高い除去効率及び濾過時間の短縮化を両立できる
【0032】
<第二実施形態>
本実施形態は、血液を移送する手段としてポンプを利用した濾過装置を用いる点において、第一実施形態と相違する(図5参照)。図5に示す濾過装置50Bは、血液を収容したバッグ21と、ポンプPと、フィルター10と、血液回収用のバッグ22とを備え、これらが上流側から下流側に向けてこの順序で並ぶように配置されている。この場合、フィルター10は必ずしも鉛直方向に配置しなくてもよい。
【0033】
[濾過方法]
本実施形態に係る濾過方法は、バッグ21に収容されている血液(生物学的流体)の全量をポンプPでフィルター10に供給し、血液に含まれる白血球を除去するためのものである。本実施形態に係る濾過方法は、重力の代わりにポンプPを利用することの他は、第一実施形態と同様である。すなわち、バッグ21に収容されている血液(100〜400ml)に含まれる白血球の数をN個とし、フィルター10の濾過面積をAcmとしたとき、この方法は比率N/Aが2.8×10〜2.3×10個/cm(好ましくは8.0×10〜2.3×10個/cm)である条件下で実施されるものであり、上述の工程a)および工程b)がこの順序で実施される。
【0034】
なお、本実施形態のように、ポンプを利用して濾過処理を行う場合、工程b)において線速度を不連続に変化させるには、ポンプの吐出量を変更すればよい。
【0035】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、濾過材1が長方形の場合を例示したが、図6(a)に示すように、濾過材1は正方形であってもよい。あるいは、濾過材1は円形、楕円形又は多角形(例えば、正六角形)であってもよい。また、上記実施形態においては入口7と出口8とを結んだ線が濾過材1の辺S1,S2と平行になるように構成されたフィルター10を使用する場合を挙げたが、図6(b)に示すように、入口7と出口8とを結んだ線が濾過材1の対角線と一致するフィルターを使用してもよい。
【0036】
濾過処理すべき生物学的流体は、全血に限られるものではなく、赤血球製剤、血小板製剤又は血漿製剤などの血液製剤であってもよい。また、遠心分離装置による処理が施され、バッグ内に複数の成分が分離した状態で収容された生物学的流体から白血球を除去するのに本発明の濾過方法を適用してもよい。なお、上記実施形態においては、フィルター10が遠心分離装置による処理にも適したものとするため、容器3として可撓性を有する材料を採用する場合を挙げたが、濾過材1を収容する容器は硬質の材料からなるものであってもよい。
【実施例】
【0037】
実施例により本発明をより詳細かつ具体的に説明するが、本発明は、これらによって範囲を限定されるものではない。
【0038】
[血液中の白血球数の定量方法]
血液中の白血球濃度は、フローサイトメトリー法で行った。フローサイトメーター(BECTON DICKINSON社製 FACSCalibur)を使用し、サンプリングした血液100μL中の白血球数を、ビーズ入りLeucocountキット(日本ベクトン・ディッキンソン社)を用いて計数した。
また、残存白血球数は下記式を用いて求めた。
残存白血球数(個)=濾過後血液の白血球濃度(個/μL)×[(濾過後血液の回収重量(g)÷1.08(濾過後血液の比重))×10
【0039】
(実施例1)
赤血球製剤(白血球数:9.6×10個)320mlをFlexRCフィルター(旭化成メディカル(株)社製、有効濾過膜面積42.2cm)を用いて濾過した。フィルターは赤血球製剤を流す前に、線速度0.47ml/分/cmで十分にプライミングを行った。赤血球製剤256mlを線速度1.05ml/分/cmで濾過した後(工程a))、残りの赤血球製剤64mlを線速度0.10ml/分/cmで濾過した(工程b))。以下、工程a)における線速度を「第1線速度」といい、工程b)における線速度を「第2線速度」という。なお、赤血球製剤の移送にはポンプを使用した。
【0040】
濾過時間は21.0分(5.8分+15.2分)、残存白血球数は4.3(Log WBC)個であった。比較例1に比べて濾過時間が短縮され、白血球の除去効率が向上していることが明らかとなった。
【0041】
(実施例2)
第1線速度を0.20ml/分/cmにした以外は実施例1と同様に濾過処理を行った。濾過時間は45.5分(30.3分+15.2分)、残存白血球数は4.3(Log WBC)個であった。比較例1に比べて濾過時間が短縮され、白血球の除去効率が向上していることが明らかとなった。
【0042】
(実施例3)
第1線速度を1.45ml/分/cmにした以外は実施例1と同様に濾過処理を行った。濾過時間は19.4分(4.2分+15.2分)、残存白血球数は4.5(Log WBC)個であった。比較例1に比べて濾過時間が短縮され、白血球の除去効率が向上していることが明らかとなった。
【0043】
(実施例4)
第2線速度を0.13ml/分/cmにした以外は実施例3と同様に濾過処理を行った。濾過時間は15.9分(4.2分+11.7分)、残存白血球数は5.0(Log WBC)個であった。比較例1に比べて濾過時間が短縮され、白血球の除去効率が向上していることが明らかとなった。
【0044】
(実施例5)
第2線速度を0.04ml/分/cmにした以外は実施例3と同様に濾過処理を行った。濾過時間は42.1分(4.2分+37.9分)、残存白血球数は4.5(Log WBC)個であった。比較例1に比べて濾過時間が短縮され、白血球の除去効率が向上していることが明らかとなった。
【0045】
(比較例1)
赤血球製剤(白血球数:9.6×10個)320mlを血液バックとフィルター間の落差75cmで濾過処理を行った。初期線速0.18ml/分/cm、平均線速度0.16ml/分/cm、最終線速度0.14ml/分/cmであった。濾過時間は47.4分、残存白血球数は5.2(Log WBC)個であった。
【0046】
(比較例2)
第1線速度を1.60ml/分/cmにした以外は実施例1と同様に濾過処理を行った。濾過時間は19.0分(3.8分+15.2分)、残存白血球数は5.7(Log WBC)個であった。残存白血球数が6.0を超える結果となった。
【0047】
(比較例3)
第2線速度を0.16ml/分/cmにした以外は実施例3と同様に濾過処理を行った。濾過時間は13.7分(4.2分+9.5分)、残存白血球数は5.3(Log WBC)個であった。白血球の除去効率が比較例1と比べて低下していることが明らかとなった。
【0048】
(比較例4)
第2線速度を0.03ml/分/cmにした以外は実施例3と同様に濾過処理を行った。濾過時間は54.8分(4.2分+50.6分)、残存白血球数は5.3(Log WBC)個であった。比較例1に比べて濾過時間が長くなる結果となった。
【0049】
(比較例5)
第1線速度で濾過する量を288mlにした以外は実施例1と同様に濾過処理を行った。濾過時間は14.1分(6.5分+7.6分)、残存白血球数は6.0(Log WBC)個であった。白血球の除去効率が比較例1と比べて低下していることが明らかとなった。
【0050】
(比較例6)
線速度を途中で変更することなく、一定の値(0.02ml/分/cm)とした以外は実施例1と同様に濾過処理を行った。濾過時間は379分、残存白血球数は3.9(Log WBC)個であった。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【符号の説明】
【0054】
10…フィルター、50A,50B…濾過装置、P…ポンプ、R…血液処理領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルターを用いた生物学的流体の濾過方法であって、
前記フィルターを通過させるべき生物学的流体の全量に含まれる白血球の数をN個とし、前記フィルターの濾過面積をAcmとしたとき、比率N/Aが2.8×10〜2.3×10個/cmである条件下において、
a)該流体の全量うち、50体積%以上80体積%以下の量について線速度0.20〜1.50ml/分/cmで前記フィルターを通過させる工程と、
b)工程a)における該流体の線速度の値よりも低い値に線速度を変更し、該流体の残りの量について線速度0.04〜0.14ml/分/cmで前記フィルターを通過させる工程と、
を備える方法。
【請求項2】
前記生物学的流体は、血液及び血液成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生物学的流体の全量は、100〜400mlの範囲の特定の量である、請求項1又は2に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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