説明

生物学的液体分析カートリッジ

生物学的液体サンプルの分析カートリッジが提供される。カートリッジは、ハウジングと、液体モジュールと、分析チャンバーとを有する。液体モジュールは、サンプル収集ポート及びイニシャル流路を有すると共に、ハウジングに接続されている。イニシャル流路は毛管力によりサンプルが吸引される大きさに形成されると共に、収集ポートと液体連通状態にされる。イニシャル流路は、収集ポート内に配置された少なくとも一部の液体サンプルがイニシャル流路内に吸引されるように、収集ポートに対して固定される。分析チャンバーはハウジングに接続されると共に、イニシャル流路と液体連通状態にされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年12月18日に出願された米国仮特許出願第61/287,955号明細書及び、2009年12月30日に出願された米国仮特許出願第61/291,121号明細書に開示された本質的内容の利益を享受し、それを参照により援用される。
【0002】
本発明は、生物学的液体分析(biologic fluid analyses)の装置に関し、特に、分析する生物学的液体サンプルを収集し、処理し、包有するカートリッジ(cartridges)に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、例えば全血(whole blood)や尿、脳髄(cerebrospinal)、体腔内(body cavity fluids)等の生物学的液体サンプルは、スライドガラス上に塗布して顕微鏡の下に塗りつけて評価される無希釈の微量な微粒子や細胞を有する。このような塗布により妥当な結果は得られるが、細胞の完全性(cell integrity)、正確性、データの信頼性は技術者の経験や技能に大きく依存する。
【0004】
サンプル量の希釈を含む生物学的液体サンプルを評価する他の公知の方法は、サンプルをチャンバーの中に配置し、希釈したサンプル内の構成成分を手動で評価及び計数している。
【0005】
サンプル内の構成成分に高い濃縮性がある場合は希釈が必要であり、サンプル内における構成成分の含有率差異を相殺する手段として可変容積を試験できる計数容器や装置を備えることは非現実的である。そのため、血球を計数する所定の作業のために多数の異なる希釈が必要になる。
【0006】
サンプル中の全血は典型的な単位体を結成し、例えば1マイクロリットル(1μl)の血液サンプル中に、赤血球(RBCs)は約4.5x106存在するが、血小板は0.25x106、白血球(WBCs)は0.007x106のみ存在する。
【0007】
WBC値を決定するためには、全血液サンプルを正確な希釈技法により、約1:256を希釈上限として1部の血液から20部の希釈剤(1:20)の範囲内で希釈しなければならない。また、一般的にRBCsを一以上の試薬と選択的に溶解させる必要もある。
【0008】
WBCsが観察できるように、溶解するRBCsは視界から効果的に取り除かれる。血小板値を決定するためには、血液サンプルを1:100から1:50000の範囲で希釈しなければならない。しかしながら、血小板の計数はサンプル中のRBCsの溶解を必要としない。この方法による全血サンプルの評価は、希釈行程に時間を費やしてコストが高くなり、サンプルデータ内の希釈による誤差率が増加する等の欠点を有している。
【0009】
生物学的液体サンプルを評価する他の方法として、一以上の小径オリフィスに希釈液サンプルを通過させて循環させ、単一ファイル中で流体力学的に焦点が合わせられたフローセルを透過する散乱光中の異なる構成成分を感知する電気抵抗計測や光学システムを使用する流動細胞計測法(flow cytometry)がある。
【0010】
全血液の場合、サンプルはWBCsや血小板に対して多数のRBCsを緩和するように希釈されなければならず、また、個々のセルが分析されるようにセル間の間隔を適正に維持して併発を低減しなければならない。
【0011】
流動細胞計測法の欠点は、サンプル分析に必要な液体処理や多様な試薬をコントロールするために、メンテナンスに労力や費用が掛かることにある。
【0012】
生物学的液体サンプルを評価する他の最新方法として、総WBC値を得るために、評価する特異なサブタイプのWBCsに焦点を合わせるものがある。この方法は、厚さ25ミクロンの透明パネルで形成された内部チャンバーを有するキュベット(cuvette)を利用する。
【0013】
透明パネルを透過する光は、WBCsのためのキュベットをスキャンする。試薬中のキュベットは、光によって励起される時にWBCsの発光を生じさせる。WBCsの発光は、特定のタイプのWBCsが存在することを示している。
【0014】
この方法において、赤血球は吸収層の一部を形成するため、血小板と同様、計数や評価を行うことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、実質的に無希釈の生物学的液体サンプルを評価するための方法及び装置に関し、正確な結果が得られ、多量の試薬を不要とし、評価中にサンプル液の流動を不要とし、粒子の組成分析を可能にし、かつ、コスト効率を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様は、生物学的液体サンプル(biological fluid sample)の分析カートリッジ(analysis cartridge)を備えている。カートリッジは、ハウジング(housing)と、液体モジュール(fluid module)と、分析チャンバー(analysis chamber)とを有する。液体モジュールは、サンプル収集ポート(sample acquisition port)と、イニシャル流路(initial channel)とを有すると共に、ハウジングに連結されている。
【0017】
イニシャル流路は、毛管力(capillary force)によって液体サンプルが吸引される大きさに形成されており、収集ポートと液体連通状態にされる。収集ポート内に配置された少なくとも一部の液体サンプルがイニシャル流路内に引き込まれるように、イニシャル流路は収集ポートに対して固着される。
【0018】
分析チャンバーはハウジングに接続されると共に、イニシャル流路と液体連通状態にされる。
【0019】
本発明の他の態様は、生物学的液体サンプルの分析カートリッジを備えている。カートリッジは、ハウジングと、液体モジュールと、画像処理トレイ(imaging tray)とを備えている。
【0020】
液体モジュールは、サンプル収集ポートと、イニシャル流路とを備えている。液体モジュールはハウジングに接続されると共に、イニシャル流路は収集ポートと液体連通状態にされる。画像処理トレイは分析チャンバーを有する。
【0021】
トレイは、ハウジングに対して選択的に開位置または閉位置に配置可能に構成されている。閉位置において、分析チャンバーはイニシャル流路と液体連通状態にされる。
【0022】
本発明の他の態様は、生物学的液体サンプルの分析カートリッジを備えている。カートリッジは、サンプル収集ポートと、流路と、一以上の流動性攪乱物質(flow disruptors)と、分析チャンバーとを備えている。
【0023】
収集ポートはパネルに取り付けられると共に、流路はパネル内に配置されている。流路は収集ポートと液体連通状態にされる。流動性攪乱物質は流路内に配置される。分析チャンバーは流路と液体連通状態にされる。
【0024】
本発明の特徴及び利点は、以下に記載された発明の詳細な説明、及び添付図面から明らかになる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、実質的に無希釈の生物学的液体サンプルを評価するための方法及び装置に関し、正確な結果が得られ、多量の試薬を不要とし、評価中にサンプル液の流動を不要とし、粒子の組成分析を可能にし、かつ、コスト効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、生物学的液体分析装置を示している。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係るカートリッジにおいて、液体モジュールと画像処理トレイが閉位置にある状態を示す図式的な平面図である。
【図3】図3は、本実施形態のカートリッジにおいて、ハウジングの外側にある液体モジュールを示す組立分解図である。
【図4】図4は、本実施形態のカートリッジにおいて、ハウジングの外側にある画像処理トレイを示す組立分解図である。
【図5】図5は、本実施形態のカートリッジにおいて、液体モジュールが開位置にある状態を示している。
【図6】図6は、本実施形態に係るカートリッジの端面図である。
【図7】図7は、液体モジュールの平面図である。
【図8】図8は、収集ポートを含む液体モジュールの断面図である。
【図9】図9は、図8中の収集ポートの断面図において、本実施形態のバルブが開位置及び閉位置にある状態を示している。
【図10】図10は、図8中の収集ポートの断面図において、本実施形態のバルブが開位置及び閉位置にある状態を示している。
【図11】図11は、図8中の収集ポートの断面図において、本実施形態のバルブが開位置及び閉位置にある状態を示している。
【図12】図12は、図8中の収集ポートの断面図において、本実施形態のバルブが開位置及び閉位置にある状態を示している。
【図13】図13は、ハウジングカバー内に位置する液体モジュールが開位置にある状態を示す下面図である。
【図14】図14は、ハウジングカバー内に位置する液体モジュールが閉位置にある状態を示す下面図である。
【図15】図15は、本実施形態の流動性攪乱物質が流路内に配置された状態を示す第二の流路の図式的な透視図である。
【図16】図16は、本実施形態の流動性攪乱物質が流路内に配置された状態を示す第二の流路の図式的な透視図である。
【図17】図17は、本実施形態の流路形状変化を示す第二の流路の模式的な透視図である。
【図18】図18は、本実施形態の流路形状変化を示す第二の流路の模式的な透視図である。
【図19】図19は、収集流路に配置されたサンプル拡大鏡の概略図である。
【図20】図20は、ハウジングベースの平面図である。
【図21】図21A〜21Cは、サンプルチャンバーの模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1に示すように、本実施形態の生物学的液体サンプルのカートリッジ20は、例えば全血サンプル(whole blood sample)や他の生物液体検体(biologic fluid specimen)等の生物学的液体サンプルを受容するように動作可能である。ほとんどの実施形態において、サンプルを支持するカートリッジ20は、サンプル画像の分析や処理をコントロールするための画像ハードウェアやプロセッサを備えた自動分析装置22に用いられる。
【0028】
分析装置22は、米国特許第6,866,823号明細書(本明細書にそのまま援用される)に開示されている利用可能なタイプの分析装置と類似する。しかしながら、本実施形態のカートリッジ20は特定の分析用装置への利用に限定されるものではない。
【0029】
図2〜6に示すように、カートリッジ20は液体モジュール24と、画像処理トレイ26と、ハウジング28とを備えている。液体モジュール24及び画像処理トレイ26は、ハウジング28の横方向端部に接続されている。
【0030】
[液体モジュール]
図7〜10に示すように、本実施形態の液体モジュール24は、サンプル収集ポート30と、オーバフロー流路(overflow passage)32と、イニシャル流路34と、バルブ36と、第二の流路38と、一以上のラッチ(latches)40と、圧縮空気供給源(air pressure source)42と、外部空気圧ポート(external air pressure port)44と、外側縁部46と、内側縁部48と、これら外側縁部46と内側縁部48との間に延在する第一の横側縁部50と、第二の横側縁部52とを備えている。
【0031】
サンプル収集ポート30は、外側縁部46と第二の横側縁部52との交差位置に配置されている。収集ポート30は、一又は二個のボウル(bowl)54と入口端64とを有する。ボウル54は、上表面56と下表面58との間に延在する。収集ポート30は、さらにサンプル取入口(sample intake)60と、ボウル〜取入口流路62と、入口端〜取入口流路66とを備えている。他の実施形態において、収集ポート30及びサンプル取入口は、例えば収集ポート30が外側縁部から内向きに配置され、かつ、サンプル取入口60がボウル54や取入口60と接続する中間流路を有するよりも、ボウル54と連絡する方向に位置される液体モジュール24の別の場所に配置されている。
【0032】
部分球状により規定される凹状の幾何学的形状は、ボウル下表面58の中心にサンプルを収集させる重力を促進する。他の凹状の幾何学的形状は、円錐状又は角錐状の幾何学的形状を含む。ボウル54は、特定の幾何学的形状に限定されるものではない。ボウル54の容量は、例えばカートリッジ20が血液サンプルの分析のために設計される実施例を満足する容量で選択され、典型的に最適な約50マイクロリットル(50μl)で設定される。
【0033】
ボウル〜取入口流路62は、ボウル54の下表面58に配置されると共に、ボウル54内に堆積した液体をボウル54からサンプル取入口60まで流通させる。他の実施形態において、ボウル〜取入口流路62は、流路62内に配置されたサンプルを、毛管力によって流路62からサンプル取入口60まで吸引させる横断面形状を備えている。
【0034】
例えば、ボウル〜取入口流路62は、側壁から側壁までの離間距離が流路62内に吸引されるサンプルに作用する毛管力を許容する、実質的に直線状の横断面形状を有する。サンプル取入口60と隣接する流路62の一部分は、液体サンプルの取入口60への流入を促進させる湾曲下面を有する。
【0035】
入口端64は、出口端46と第二の横側縁部52との交差部分に隣接して配置されている。図7に示す本実施形態において、入口端64はテーパー付き突起の端部に配置されている。テーパー付き突起は、使用者に、例えば指又はヒールプリック(heel prick)、動脈又は静脈源から吸引した血液サンプル等を収集ポート30に吸引することができるか否かを識別させる視覚補助を与える。入口端64は必ずしも必要ではなく、ボウル54のみを有するものであってもよい。
【0036】
入口外側端〜取入口流路66は、入口端64とサンプル取入口60との間に延在する。他の実施形態において、入口端〜取入口流路66は、流路66内に配置されたサンプルを、毛管力によって流路66からサンプル取入口60まで吸引させる横断面形状を有する。例えば、入口端〜取入口流路66は、側壁から側壁までの離間距離が流路66に吸引されるサンプルに作用する毛管力を許容する、実質的に直線状の横断面形状を有する。サンプル取入口60に隣接する流路66の一部分は、液体サンプルの取入口60への流入を促進させる湾曲下面を有する。
【0037】
サンプル取入口60は、ボウル54と入口端64との間に延在するイニシャル流路34及び、流路62,66を液体連通状態にする。図7〜10に示す実施形態において、サンプル取入口60は流路62,66まで実質的に垂直に延びている。上述したように、他の実施形態において、サンプル取入口60はボウル54と直接連絡するように配置されている。
【0038】
イニシャル流路34は、サンプル取入口60と第二の流路38との間に延在する。イニシャル流路34の容量は、分析に適切な液体サンプルを保持できるように十分大きく確保されており、他の実施形態においては、イニシャル流路内でサンプルの混合を許容するように十分大きく確保されている。イニシャル流路34の横断面形状は、イニシャル流路34に配置されたサンプル液体が毛管力により取入口60から流路内に吸引される大きさで形成されている。
【0039】
他の実施形態において、一以上の検査試薬67(例えば、ヘパリン、EDTA等)は、イニシャル流路34内に堆積される。サンプル液体がイニシャル流路34に吸引されるので、検査試薬67はサンプルと少なくとも部分的に混合される。サンプル取入口60と反対側のイニシャル流路34の端部は、第二の流路38に向けて開口し、それによりイニシャル流路34から第二の流路38内への液体連通流路が形成される。
【0040】
他の実施形態において、一以上のフラグポート(flag ports)39(図7参照)は、第二の流路38と隣接するイニシャル流路34内を横方向に延びる。フラグポート39の形状は、イニシャル流路内を流れるサンプルがフラグポート39に到達すると共に、毛管力によってポート39内に吸引されるように形成される。ポート39内のサンプルの有無は、イニシャル流路34内のサンプルの位置を確認することで感知される。
【0041】
好ましくは、フラグポート39は、一部分のサンプルだけが必要とされる時に、内部にあるサンプルの視認性を向上させるように、その高さを横幅よりも短く形成されている。フラグポート39は空気口を備えている。
【0042】
他の実施形態において、イニシャル流路34(又はフラグポート39)は、サンプル拡大鏡(sample magnifier)41を備えており(図19参照)、好ましくは第二の流路38に隣接して配置されている。サンプル拡大鏡41は、流路34の一以上又は両側部(例えば、上部及び下部)に配置されたレンズを備えている。
【0043】
レンズはイニシャル流路34の位置合わせされた部分を拡大し、それによりイニシャル流路34内にあるサンプルの存在の検出が容易になる。好ましくは、レンズの倍率は、流路(又はポート)の位置合わせされた部分内にあるサンプルを使用者が視覚により容易に判別できるように、十分に大きい値で設定されている。
【0044】
第二の流路38は、イニシャル流路34と排出ポート68を含む先端部との間に延在する。第二の流路38とイニシャル流路34との間の交差部分は、サンプルが毛管力によってイニシャル流路34から第二の流路38に吸引されない断面形状で形成されている。
【0045】
他の実施形態において、第二の流路38はサンプル計量ポート(sample metering port)72を有する。第二の流路38は、サンプル内のサンプル組成や試薬を混合させるべく、第二の流路38内を前後進する液体の移動を許容する十分に大きな容量で形成されている。
【0046】
他の実施形態において、第二の流路38内からの空気の排出を許容すると同時に、ポート68から流路38への液体サンプルの排出を阻止するように、ガス透過・液体非透過性膜(gas permeable and liquid impermeable membrane)74が排出ポート68に配置されている。
【0047】
サンプル計量ポート72は、サンプルが毛管力によって第二の流路38から吸引されることを許容する断面形状を備えている。他の実施形態において、サンプル計量ポート72の容量は、例えば分析のために好ましいサンプル量と実質的に等しい所定の容量で設定されている。計量ポート72は、第二の流路38からトレイ24(閉位置でサンプル分析チャンバー118の一部であるパネル122の外表面に配置される)の外表面まで延びている。
【0048】
バルブ36は、イニシャル流路34とサンプル取入口60との間の液体の流れ(空気の流れを含む)を阻止するように、液体モジュール24内に配置されている。バルブ36は、開位置と閉位置との間を選択的に作動可能である。開位置において、バルブ36はサンプル取入口60と流路34の第二の流路38と隣接する部分との間の液体の流れを妨げない。閉位置において、バルブ36はイニシャル流路34とサンプル取入口60との間の液体の流れを実質的に阻止する。
【0049】
図9,10に示す本実施形態において、バルブ36は偏向膜76(例えば、親水性の感圧性接着テープ)と、片持ち架設されたバルブアクチュエータ78(図13,14参照)とを備えている。アクチュエータ78は、流路34と取入口60との間を液体シールするために、膜76をイニシャル流路34と連絡するように移動可能である。
【0050】
図9は、本実施形態のバルブ36が開位置にあって、液体がサンプル取入口60からイニシャル流路34に流入する状態を示している。図10は、本実施形態のバルブ36が閉位置にあって、膜76がサンプル取入口60からイニシャル流路34への液体の流れを阻止する状態を示している。
【0051】
図9,10に示されたバルブ36は、本実施形態のバルブとして適用可能な一例である。バルブ36はこの実施形態に限定されない。バルブ36は、イニシャル流路34内のバルブ36と第二の流路38との間に配置される液体が分析に最適な量になれば、例えばイニシャル流路34やサンプル取入口60の他の位置に設けられてもよい。
【0052】
図11,12に示すように、他の実施形態において、上述したようにバルブ36は開位置と閉位置との間を作動するが、単純な機械構造よりも磁気的な機械構造が用いられている。本実施形態において、バルブ36は、磁気的に引き付けられる部材154(例えばスチール製ボールベアリング)と、ボウルキャップ136内に配置されたマグネット156とを有する(図11参照)。
【0053】
液体モジュール24は、第一のポケット158と、第二のポケット160とを有する。第一のポケット158は、偏向膜76の下方にある液体モジュール24内に配置されている。第二のポケット160は、偏向膜76及びイニシャル流路34の上方に配置されると共に、第一のポケット158と位置合わせされた液体モジュール24内に配置されている。
【0054】
第一のポケット158及び第二のポケット160は、液体モジュール24が閉位置にある場合(図12参照)に、ボウルキャップ136と位置合わせされる液体モジュール(例えば、ボウル54)の部分と実質的に位置合わせされる。
【0055】
磁気引力がない場合(例えば、図11に示すように液体モジュール24が開位置にある時)は、部材154が第一のポケット158内に存在するため、偏向膜76は屈折させない。すなわち、イニシャル流路34は閉塞されない。液体モジュール24が閉位置にある場合、マグネット156が部材154を引き付けて、偏向膜76は第二のポケット160内に屈折される。その結果、偏向膜76はイニシャル流路34を閉塞して、サンプル取入口60とイニシャル流路34との間の液体の流れ(空気の流れを含む)を阻止する。
【0056】
他の実施形態において、マグネット156は液体モジュールハウジング28内に配置され、部材154及び偏向膜76はイニシャル流路34の上方にある液体モジュール24内に配置されている。液体モジュールの閉位置において、マグネット156は部材154と整列して、サンプル取入口60とイニシャル流路34との間の液体の流れを阻止するために、マグネット156と偏向膜76とを下方に引き下げる。
【0057】
他の実施形態において、圧縮空気供給源42(例えば図7参照)は、選択的可変容積(例えば、隔壁や気孔等)と、アクチュエータ80(図13,14参照)とを有する。圧縮空気供給源42は所定の空気量を含むと共に、通気路82に接続されている。
【0058】
通気路82は、バルブ36に係合するイニシャル流路34と第二の流路38との間に横たわるイニシャル流路34の交点に接続されている。アクチュエータ80は容量を圧縮するように作動可能で、それにより通気路とイニシャル流路34とに圧縮空気を送出する。
【0059】
図13,14に示す本実施形態において、アクチュエータ80は液体モジュール24に片持ち架設で接続されており、アクチュエータ80に作用する力は容量源を圧縮するための自由端を形成する。上述した本実施形態の圧縮空気供給源42は、圧縮された空気の供給源として適用可能なものの一例である。本発明はこれに限定されない。
【0060】
外部空気ポート44は、圧縮空気供給源42(図7参照)と隣接する液体モジュール24内に配置されている。通気路84は、外部空気ポート44とイニシャル流路34内に延びる通気路82とを接続する。外部空気ポート44は、選択的に圧縮空気を供給、又は、真空を引き出す分析装置22に付随した空気源を受容するように構成されている。
【0061】
キャップ86(例えば破断可能な膜)は、外部空気ポート44に接続されている外部空気供給源にガスや液体が浸透して透過することを防止するために、外部空気ポート44を密閉する。他の実施形態において、カートリッジ20は外部空気ポート44のみを備え、圧縮空気供給源42を備えていない。
【0062】
他の実施形態において、カートリッジ20はイニシャル流路34内に配置又は形成された一以上のサンプル流動性攪乱物質(sample flow disrupters configured)と、第二の流路38とを備えている。図15,16に示す本実施形態において、攪乱物質は第二の流路38内に配置されてサンプルの流れを攪乱する形状の構造体146である。通常の流動状態において、攪乱物質はサンプル内の構成成分を実質的に均一な方法で十分に攪乱する。
【0063】
攪乱構造体146の一例は、例えば可変径コイルを有するワイヤーコイル146a(図15参照)である。他の例として、攪乱構造体146は互いに接続された複数の十字構造146bを備えている。これらは攪乱構造体146の例示であって、本発明はこれら例示に限定されるものではない。
【0064】
他の実施形態において(図17,18参照)、一方又は両方の流路34,38は、通常の作動状態(例えば回転数等)で第二の流路38内のサンプル流動を攪乱する流路形状に形成されたサンプル流動性攪乱物質146を備えている。攪乱物質は構成成分をサンプル内で実質的に均等に分散させる。
【0065】
例えば、図17に示す本実施形態の第二の流路38は、収縮された断面領域の部分148を有する。収縮部分148の両端部は、第一の断面形状から第二の断面形状に移行する第二の流路38の過渡領域150a,150bを備えている。第二の流路38内の液体流動は第一の過渡領域(transition area)150aに衝突して縮小領域148で加速された後、第二の過渡領域(transition area)150bを通過して縮小領域から排出されて減速される。
【0066】
過渡領域150a,150b内の領域率の変化及び、縮小領域146と第二の流路38に隣接する部分との間の断面領域の差異は、サンプル内に望ましい非層流(例えば乱流)を生じさせる急激な領域率の変化や大きな差異に変更することが可能である。サンプル流動を乱流(非層流)させる程度は、サンプル分析に望ましい混合量を生じさせるために調整可能である。
【0067】
図18は、第二の流路38内のサンプル流動を攪乱する他の例の流路形状変化152を示している。この例において、流路はサンプル流動に乱流を生じさせる曲線通路状で形成されている。曲線通路の直線通路からの偏差や率は、流れを攪乱させる程度に影響を与え、例えば大きな偏差や率はサンプル流動により大きな乱流を生じさせる。
【0068】
図7〜10に示すように、オーバフロー流路32は、吸引口88と、流路90と、空気排出ポート92とを備えている。吸引口88は、流路32とボウル54との間を液体連通状態にする。図9,10に示すように、吸引口88は、所定量の液体がボウル54内に収集されて吸引口88に流れ込む前にイニシャル流路34が満たされるように、ボウル54内の高さに位置される。
【0069】
流路90は、サンプル液体が流路90に引き込まれて流通することを許容する断面形状を備えている。流路90は、多くの使用で予測される余剰のサンプル液体を保持するのに適した容量を備えている。空気排出ポート92は、吸引口88と対向する流路90の端部に隣接して配置されている。空気排出ポート92は、流路90への余剰サンプルの吸い込みを防止するように、流路90内への空気の流入を許容する。
【0070】
オーバフロー流路90、イニシャル流路34、通気路82,84及び、第二の流路38は、液体モジュール24内に配置されて収容されている。本発明の液体モジュール24は、特定の構成に限定されるものではない。例えば、液体モジュール24は、互いに連結された二つの係合パネルで形成されてもよい。上述した流路34,90,38及び、通気路82,84は、一枚のパネル、二枚のパネル又は、二枚のパネル間に集合的に形成することができる。図2〜4に示す液体モジュール24は、外表面94(すなわち上表面)を有する。
【0071】
他の実施形態において、上部パネル94の一以上の部分(例えば、イニシャル流路34や第二の流路38の上方に配置された部分)、もしくは、他のパネルは、制御目的のために上述の流路34,38内にあるサンプルの存在を感知できるように、透明に形成されている。他の実施形態において、上部パネル94全体は透明であり、デカール96はパネル94の領域に張り付けられている。
【0072】
図13,14に示すように、少なくとも一つの液体モジュールラッチ40はハウジング28から外方に延びる機構98と係合する構造を備えている。他の実施形態において、ラッチ40は一端部に配置されたタブ100を有する片持ちアームとして構成されている。
【0073】
[画像処理トレイ]
図4に示すように、画像処理トレイ26は、長手方向に延びる第一のサイドレール102と、長手方向に延びる第二のサイドレール104と、幅方向に延びるエンドレール106とを備えている。サイドレール102,104は互いに実質的に平行、かつ、エンドレール106に対して実質的に垂直に配置されている。
【0074】
画像処理トレイ26は、サイドレール102,104によって定義される領域に配置されたチャンバー窓108と、エンドレール106とを備えている。棚板110は、窓108の周囲を囲うように、窓108と上述のレール102,104,106との間に延在する。
【0075】
画像処理トレイ26は、ハウジング28内で画像処理トレイ26を選択的に固定する少なくとも一個のラッチ部材112を備えている。図4に示す本実施形態において、一対のラッチ部材112は棚板110から外向きに片持ち架設されている。一対のラッチ部材112は、それぞれハウジング28の内側に取り付けられてタブ142(図20参照)を受容する開口部114を有する。
【0076】
画像処理トレイ26がハウジング28内に完全に収容されると、ラッチ部材開口部114はタブ142に位置合わせされると共に、タブ142を受容する。以下に説明するように、ハウジング28は、両方のタブに隣接するアクセスポート144を有する。アクチュエータ(例えば、分析装置22内に組み込まれた)は、画像処理トレイ26のハウジング28に対する移動を許容するために、ラッチ部材112をタブ142から選択的に切断するアクセスポート144を貫通して延在する。
【0077】
サンプル分析チャンバー118は、チャンバー窓108と位置合わせされた画像処理トレイ26に取り付けられている。チャンバー118は、第一のパネル120と、第二のパネル122とを備えている。これらパネルの少なくとも一方は、パネル120,122間に配置された生物学的液体サンプルが分析目的のために画像処理されるように、十分な透明性を備えている。
【0078】
第一及び第二のパネル120,122は互いに平行に位置合わせされると共に、互いに表面を対向させて間隔を隔てて配置される。パネル120,122間の位置合わせは、光が一方のパネルに垂直に伝達すると共に、一方のパネル、サンプル、他方のパネルを透過することができる領域を定めている。対向するパネル表面の離間距離(以下、チャンバー高さともいう)は、二枚のパネル間に配置された生物学的液体サンプルが両パネルと接触する距離で設定されている。一方または両方のパネル120,122は、例えば溶接、機械的固定具、接着剤等によって画像処理トレイ窓108の周囲に配置された棚板110に取り付けられている。
【0079】
図21A〜21Cに示すように、適用可能なチャンバー118の例は、本明細書にそのまま援用される米国特許第2007/0243117号明細書に開示されている。このチャンバーの実施形態において、第一及び第二のパネル120、122は互いに少なくとも三つのセパレータ124(一般的な球状ビーズ)により区分けされている。
【0080】
少なくとも一方のパネル120,122もしくはセパレータ124は、チャンバー高さ126がセパレータ124の平均高さと近似することを許容するために、十分な可撓性を備えている。相対柔軟度(relative flexibility)は、セパレータ124内の小さな許容自由度にかかわらず、チャンバー118を実質的に均一な高さ126にする。
【0081】
例えば、セパレータ124が相対的な柔軟性を備えているこれらの実施形態(図21B参照)において、ほとんどのセパレータ124がパネル120,122の内表面と接触するように、大きなセパレータ124aは圧縮される。それによって、チャンバー高さ126はセパレータの径と実質的に等しくなる。対照的に、第一のパネル120がセパレータ124及び第二のパネル122よりも柔軟性のある部材で形成されている場合(図21C参照)、第一のパネル120は周囲のセパレータ124よりも大きい特定のセパレータ124aにオーバーレイ(overlay)すると共に、大きなセパレータ124aの周囲でテントのように屈曲する。
【0082】
この方法において、小さなローカル領域は平均チャンバー高さ126から逸脱するが、全てのチャンバーのサブ領域(テント領域を含む)における平均高さは、セパレータの平均外径と近似する。サンプルに作用する毛管力は、セパレータ124の圧縮やパネル120,122の屈曲に必要な力を与える。
【0083】
透明プラスティックフィルムを含むパネル材料は、例えばアクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terphthalate:PET)、環式オレフィン共重合体(cyclic olefin copolymer:COC)である。一枚のパネル(例えば、下方に延伸されたパネル122)は、材料帯で厚さ約50ミクロン(50μ)に形成され、他のパネル(例えば、上部パネルに延伸されたパネル120)は同一の材料ではあるが、厚さ約23ミクロン(23μ)に形成されている。
【0084】
購入可能な球状のポリスチレンビーズを含むセパレータ124の例として、Thermo Scientific of Fremont社(米国カリフォルニア州)のカタログ番号4204Aに直径4ミクロン(4μ)が開示されている。本発明のカートリッジは、これら例示したパネルやセパレータに限定されるものではない。
【0085】
チャンバー118は、約0.2〜1.0マイクロリットル(μl)のサンプルを保持する一般的なサイズであるが、その大きさは特定の容量に限定されず、分析用途に応じて変更することができる。チャンバー118は、液体サンプルを静止状態で保持することが可能である。ここでいう“静止状態”の定義は、サンプルが分析のためにチャンバー118内に配置されると共に、分析の間は意図的に動かされないことをいう。
【0086】
主に血液サンプルのブラウン運動(Brownian motion)によって生じる本発明の使用を不能にしない血液サンプル内の拡張運動は、構成成分(constituents)を形成する。本発明のカートリッジは、この特定のチャンバー118の実施形態に限定されるものではない。
【0087】
[ハウジング]
図3〜6,14,20に示すように、本実施形態のハウジング28は、ベース128と、カバー130と、液体モジュール24を受容する開口部132と、トレイ開口部134と、ボウルキャップ136と、バルブ作動機構138と、空気供給源作動機構140とを備えている。ベース128及びカバー130は、例えば接着剤や機械的固定具等により互いに取り付けられると共に、ハウジング28内に配置された内部キャビティ(internal cavity)を含むハウジング28を選択的に形成する。他の実施形態として、ベース128及びカバー130は一体形成することもできる。
【0088】
液体モジュール24を受容するための開口部132は、カバー130の少なくとも一部分に配置されている。開口部132は、液体モジュール24が開口部132内に収容された際に、液体モジュール24の上表面94を実質的に露出させるように構成されている。一方又は両方のカバー130に装着(又は形成)される案内表面は、液体モジュール24のハウジング28に対する直線動作を案内して、相対的なスライド移動を可能にする。
【0089】
案内表面は、一以上の液体モジュールラッチ40と係合するための機構98を備えている。後述するように、機構98(図13,14参照)は、液体モジュール24の横方向の移動を規制するために、ラッチ40と協働する。ボウルキャップ136は、カバー130から外側に延在すると共に、開口部132の一部に突出している。
【0090】
バルブ作動機構138は、ハウジング28の外側から、液体モジュール24がハウジング28内にスライドして液体モジュール24に取り付けられたバルブアクチュエータ78が機構138と接触する内部キャビティの位置まで伸びている。同様に、空気供給源作動機構140は、ハウジングの外側から、液体モジュール24がハウジング28内にスライドして液体モジュール24に取り付けられたバルブアクチュエータ78が機構138と接触する内部キャビティの位置まで伸びている。
【0091】
画像処理トレイ26は、ハウジング28内に挿入、又は、トレイ開口部134を貫通してハウジング28の外側に配置されている。一方又は両方のベース128及びカバー130に装着(又は形成)された案内表面は、画像処理トレイ26のハウジング28に対する直線動作を案内して、相対的なスライド移動を可能にする。
【0092】
ハウジング28は、画像処理トレイ26のラッチ部材112内に配置された開口部114と係合するように位置合わせされた一以上のタブ142を備えている。ハウジング28は、さらにタブ142と隣接する点検ポート144を備える。点検ポート144を通過するアクチュエータ(分析装置22に組み込まれた)は、画像処理トレイ26のハウジング28に対する移動を許容するために、ラッチ部材112をタブ142から選択的に切り離すことが可能に構成されている。
【0093】
[分析装置]
上述したように、本実施形態の生物学的液体サンプルのカートリッジ20は、画像処理ハードウェアと、サンプル画像の分析及び処理を制御するプロセッサとを備える自動分析装置22の使用に適用される。本実施形態のカートリッジ20は、任意の特定の分析装置22への使用に限定されるものではないが、米国特許6,866,823号明細書に開示された分析装置22に類似するものは使用可能な装置の一例を示している。本実施形態のカートリッジ20の説明及び理解を助けるために、使用可能な分析装置22の一般的な特徴を以下に説明する。
【0094】
分析装置22は、対物レンズ(objective lens)と、カートリッジ保持部と、操作子装置(manipulating device)と、サンプル照明装置と、解像機構(image dissector)と、プログラム可能な分析器 ( programmable analyzer)とを備えている。一方又は両方の対物レンズとカートリッジ保持装置とは、互いに近接または離間する方向に移動可能である。
【0095】
サンプル照明装置は所定の光波長を使用する。サンプルを透過する光、もしくは、サンプルから発せられる蛍光は、解像機構に捕捉されると共に、捕捉光の信号はプログラム可能な分析器に送られて画像処理工程に用いられる。画像は、捕捉された光透過率(又は蛍光)の強度がユニットベース毎で決定されることを可能にする方法で生成される。
【0096】
適用可能な解像機構の一例は、サンプルを透過する光の画像を電子データフォーマットに変換する電荷結合素子(CCD)タイプの画像センサである。相補型金属酸化膜半導体(CMOS)タイプの画像センサは、適用可能な他の画像センサの一例である。 プログラム可能な分析器は、カートリッジ保持部や操作子装置、サンプル照明装置、解像機構に接続された中央演算処理装置(CPU)を有する。CPUは、信号を受信して本実施形態の方法を実現する必要な機能を選択的に実行するように適合(例えば、プログラム)されている。
【0097】
[操作]
図5,13に示すように、本実施形態のカートリッジ20は、最初に液体モジュール24が開位置にセット(もしくは配置)される。この位置において、収集ポート30は生物学的液体サンプルを受容するように配置される。ハウジング28に取り付けられた機構98と係合する液体モジュールラッチ40は、液体モジュール24を開位置(例えば、図13参照)に維持する。液体モジュール24が開位置に配置されると、バルブ36はサンプル取入口60とイニシャル流路34との間の液体通路が開放される開位置に配置される。
【0098】
臨床医師(clinician)や他の使用者は、入口端64やボウル54の中に、注射器、患者の指や踵、動脈や静動脈から取り出した生物学的液体サンプル(例えば血液)を投入する。サンプルは、最初に流路62及び、又はボウル54の中に配置されると共に、サンプル取入口60に吸引される(例えば、毛管力により)。
【0099】
ボウル54に配置されたサンプルの量は、オーバフロー流路取入口88と係合するのに十分な量であって、毛管力はサンプルをオーバフロー流路90に流し込むように作用する。ボウル54内の液体レベルがオーバフロー流路取入口88よりも下がるまで、サンプルはオーバフロー流路32内に取り入れ続けられる。オーバフロー流路32に取り入れられたサンプルは、その後オーバフロー流路90内に残る。サンプルが流路90に取り入れられるので、オーバフロー排出ポート92は空気の放出を許容する。
【0100】
ボウル54内のサンプルは、ボウルベース表面58に配置されたボウル〜入口流路62内に重力によって引き込まれる。ボウル〜取入口流路62及び、又は入口端〜取入口流路66にサンプルが一旦取り入れられると、重力及び毛管力はサンプルをサンプル取入口60内に移動させ、引き続きイニシャル流路34内に移動させる。
【0101】
毛管力によってイニシャル流路34内に引き込まれたサンプルは、サンプルの前端部“ボーラス(bolus)”が第二の流路38の入口に到達するまでイニシャル流路34内を流れ続ける。イニシャル流路34及び、又はフラグポート39が使用者に目視可能な(拡大鏡による補助を含む)これらの実施形態において、使用者は十分な量のサンプルがカートリッジ20に取り入れられたかを容易に確認することができる。
【0102】
上述したように、カートリッジ20の特定の実施形態において、一以上の試薬67はイニシャル流路34の周囲及び内部に配置される(全血分析におけるヘパリンやEDTA)。これらの実施形態において、サンプルはイニシャル流路34内を流通するので、試薬67はイニシャル流路34内に存在する間にサンプルと混合される。使用者は、引き続き液体モジュール24をハウジング28内にスライドさせる。
【0103】
液体モジュール24がハウジング28内にスライドされるので、シーケンス事象(sequence of events)が生じる。液体モジュール24が内方向にスライドされて、最初にバルブアクチュエータ78とバルブ作動機構138とが係合する。その結果、バルブ36が開位置から閉位置に作動して、サンプル取入口60とイニシャル流路34との間の液体の流通が阻止される。
【0104】
液体モジュール24がハウジング28内にさらにスライドされると、圧力供給源アクチュエータ80は空気圧供給源42に空気通路82内の空気圧を増加させる空気供給源作動機構140と係合する。液体サンプルに作用するより高い空気圧がイニシャル流路34内に生じて、液体サンプル(及び試薬)の少なくとも一部を第二の流路38内に押し入れる。閉じられたバルブ36は、サンプルがサンプル取入口60に流し戻されることを阻止する。
【0105】
液体モジュール24がハウジング28内に完全にスライドされると、両ラッチ40の端部に配置されたタブ100はハウジング28に取り付けられた機構98と係合して、液体モジュール24をハウジング28内に固定する。完全に挿入されて固定された状態で、ボウルキャップ136はサンプル取入口60を覆う。液体モジュール24はその後、分析が実行されるまで格納される干渉防止状態(tamper-proof state)になる。干渉防止状態は、サンプルカートリッジ20の操作及び搬送を促進させる。空気圧供給源42を備えない実施形態において、サンプルはこの状態でイニシャル流路34内に存在する。
【0106】
使用者がカートリッジ20を分析装置22に挿入した後、分析装置22はカートリッジ20を位置決めする。サンプル収集とサンプル分析との間には典型的な一定の時間がある。全血サンプルの場合、血液サンプル内の構成成分(例えば、RBCs,WBCs,血小板,血漿)は沈殿して不均一に分散される。このような場合、構成成分がサンプル内で実質的に均等に分散されるように、分析に先立ってサンプルを混合させることに相当な利点がある。
【0107】
これを支障なく行うために、液体モジュール24に配置された外部空気ポート44は、分析装置22内に配置された外気供給源プローブを受け入れるように動作可能である。外部空気供給源は、空気通路82,84及びイニシャル流路34内の空気圧を増加させる空気の流れ生じさせると共に、液体サンプルに作用する推進力を生じさせる。
【0108】
外部空気供給源は、空気通路82,84及びイニシャル流路34内の空気圧を減少させる真空を引くことが可能であり、サンプルを反対方向に引き込む推進力を生じさせる。イニシャル流路34及び第二の流路38内におけるサンプルを前後進させるサイクルによって、液体サンプルは均一に分散される。
【0109】
これらの実施形態において、イニシャル流路34及び第二の流路38内には、一以上の攪乱物質146が形成もしくは配置されている。攪乱物質の流動は、サンプル内にける構成成分(及び、又は試薬)の混合を促進させる。本実施形態によれば、サンプルを攪乱物質146に通過させることで、十分なサンプルの混合が達成される。上述したように、他の実施形態においてサンプルは循環される。
【0110】
他の実施形態において、十分なサンプルの混合は、カートリッジ全体を一定期間にわたり所定の振動数で振動させることにより達成される。カートリッジの振動は、例えば分析装置22内に配置されたカートリッジ保持部及び操作子装置(manipulating device)、又は外部変換器(external transducer)等によって行われる。
【0111】
十分な量が混合された後、外部空気供給源は、計量ポート72に位置合わせされた位置から第二の流路38の遠端部に向けてサンプルを押圧する正圧を与えるように作動する。排出ポート68に隣接して配置されたガス透過性・液体非透過性部材74は、チャンバー38内の空気の流出を許容する一方、液体サンプルの流出を阻止する。
【0112】
液体サンプルが第二の流路38内を流れて計量ポート72に到達するので、所定量の液体サンプルが毛管力によってサンプル計量ポート72内に引き込まれる。サンプルに作用する力(例えば、流路内の遠端部にあるサンプルに作用する圧縮空気)は、計量ポート72内に配置されたサンプルを排出させる。
【0113】
画像処理トレイ26及び液体モジュール24がハウジング28に対して閉位置にある時(図2参照)、サンプル計量ポート72は分析チャンバー118の上部パネル120の端部と隣接する分析チャンバー118の下部パネル122の一部に位置合わせされる。サンプルは、計量ポート72から排出されると共に、チャンバーの下部パネル122の上表面に配置される。
【0114】
サンプルが堆積されると、毛管作用によってサンプルはチャンバー118の縁部と接触してチャンバー118内に引き込まれる。毛管力は、分析目的のために許容可能な量のサンプルをチャンバー118内に流布させる。
【0115】
画像処理トレイ26のロックを解除するように、画像処理トレイラッチ部材112は分析装置22に組み入れられたアクチュエータによって係合される。画像処理のために分析チャンバー118が露出するように、画像処理トレイ26はハウジング28から引き出される。分析が一旦完了すると、画像処理トレイ26はハウジング28内に戻されて再びロックされる。カートリッジ20はその後、操作者によって分析装置22から取り除かれる。閉位置(図2参照)において、カートリッジ20は下方周囲への漏出防止や使用者の取り扱いを安全にする方法でサンプルを収容する。
【0116】
他の実施形態において、画像処理トレイは異なる機構を用いることでロック及びロックを解除することができる。本実施形態において、ラッチ部材112は棚板110から外向きに片持ち架設されると共に、ハウジング28の内側に取り付けられたタブ142(もしくは他の機械的留め具)を受容するための開口部114を有する。本実施形態において、ラッチ部材はさらに磁気的に引き付けられる部材を有する。
【0117】
磁気源(例えば、マグネット)は、分析装置22内に備えられる。ラッチ部材112を解除するために、磁気源はラッチ112に取り付けられた部材を引き付けるように作用する。磁気源と部材との間の引き付け力は、片持ち架設されたラッチをタブ142との係合から解除し、ハウジング28に対する画像処理トレイ26の移動を許容させる。
【0118】
以上、本発明を特定の実施形態を参照して説明したが、本発明を逸脱しない範囲で種々の変更や同等の部材に代替されることは当業者に理解されるであろう。さらに、特定の状況や部材を本質的範囲から逸脱しない本発明の教示に適用するために多くの修正がおこなわれるであろう。すなわち、本発明の実行のために最良の形態として説明した特定の実施形態に限定されないことを意図している。
【0119】
このような変形例の一例により、本発明のカートリッジ20は、液体モジュール24内に配置された外部空気供給源を収容するための外部空気ポート44を備えている。他の実施形態において、例えば、液体モジュール24内に配置され、熱源にさらされる時に正圧及び負圧を供給できるガスブラダー(gas bladder)等の空気圧供給源は、液体モジュール24に含めることが可能である。
【0120】
他の変形例の一例として、本発明のカートリッジは、分析チャンバー118の特定の実施形態を有するものとして上述されている。上述したカートリッジの実施形態はチャンバーに特に有用なものだが、他のチャンバー構造にも適用することができる。
【0121】
本発明の変形例のさらなる一例として、カートリッジは特定のラッチ機構40,112を備えている。本発明はこれら特定のラッチの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0122】
20 カートリッジ
22 分析装置
24 液体モジュール
26 画像処理トレイ
28 ハウジング
30 サンプル収集ポート
32 オーバフロー流路
34 イニシャル流路
36 バルブ
38 第二の流路
40 ラッチ
42 圧縮空気供給源
44 外部空気圧ポート
54 ボウル
62 ボウル〜取入口流路
66 入口外側端〜取入口流路
72 サンプル計量ポート
74 ガス透過・液体非透過性膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的液体サンプルの分析カートリッジであって、
ハウジングと、
サンプル収集ポート及びイニシャル流路を有すると共に、前記ハウジングに接続された液体モジュールと、
前記ハウジングに接続された分析チャンバーと、を備え、
前記イニシャル流路は、毛管力によってサンプルを吸引する大きさに形成されると共に、前記サンプル収集ポートと液体連通状態にされ、かつ、前記サンプル収集ポート内に配置されたサンプルの少なくとも一部が前記イニシャル流路内に吸引されるように前記サンプル収集ポートに固定され、
前記分析チャンバーは、前記イニシャル流路と液体連通状態に配置可能であることを特徴とするカートリッジ。
【請求項2】
前記液体モジュールが前記ハウジングに対して選択的に開位置及び閉位置に配置可能である請求項1記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記液体モジュールが開口キャビティ内に配置されると共に、前記ハウジングに対して開位置と閉位置との間をスライド移動可能に構成されている請求項2記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記サンプル収集ポートが前記液体モジュールの上表面から外方に延在すると共に、前記上表面が前記液体モジュールの開位置及び閉位置において前記キャビティ内に露出される請求項3記載のカートリッジ。
【請求項5】
一方又は両方の前記イニシャル流路及び第二の流路の少なくとも一部分が上表面から視認可能である請求項4記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記液体モジュールが閉位置でロック可能である請求項2記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記サンプル収集ポートが、ボウルと、前記ボウルを覆う大きさに形成されたボウルキャップを含むハウジングとを備える請求項6記載のカートリッジ。
【請求項8】
前記液体モジュールが、前記イニシャル流路と前記分析チャンバーとの間に配置された第二の流路をさらに備えると共に、前記イニシャル流路内の液体サンプルは前記分析チャンバーに到達する前に前記第二の流路を通過し、前記イニシャル流路と前記第二の流路との交差部分が、毛管力によるサンプルの前記イニシャル流路外、及び前記第二の流路内への吸引を阻止する請求項1記載のカートリッジ。
【請求項9】
選択的に開位置及び閉位置に作動可能なバルブをさらに備え、
前記バルブが、前記サンプル収集ポートに隣接して配置されると共に、閉位置において前記サンプル収集ポートと前記イニシャル流路との間の液体流通状態を閉鎖するように作動可能な請求項8記載のカートリッジ。
【請求項10】
前記バルブが機械的に作動可能な請求項9記載のカートリッジ。
【請求項11】
前記バルブが磁気的に作動可能な請求項9記載のカートリッジ。
【請求項12】
選択的に容積を可変な空気圧供給源をさらに備え、
前記空気圧供給源が、前記交差部分と前記サンプル収集ポートとの間に前記バルブが配置された交差位置で前記イニシャル流路と液体連通状態になる請求項9記載のカートリッジ。
【請求項13】
前記交差部分と前記サンプル収集ポートとの間に前記バルブが配置された交差位置で前記イニシャル流路と液体連通状態になる外部空気ポートをさらに備え、
前記外部空気ポートが、周囲の空気圧よりも高い又は低い圧力で空気を供給するように作動可能な空気供給源と係合するように構成されている請求項9記載のカートリッジ。
【請求項14】
一方又は両方の前記イニシャル流路及び前記第二の流路内に配置された一以上の流動性攪乱物質をさらに備える請求項8記載のカートリッジ。
【請求項15】
前記イニシャル流路及び前記第二の流路内のサンプル流動に乱流を生じさせるように、一方又は両方の前記イニシャル流路及び主要な流路はその流路形状を変化させる請求項8記載のカートリッジ。
【請求項16】
前記イニシャル流路は容量を有すると共に、前記カートリッジはオーバフロー流路をさらに備え、
前記オーバフロー流路は、前記サンプル収集ポート内に流入したサンプル量が前記イニシャル流路の容量を超えたときに液体サンプルを受容するように配置される請求項1記載のカートリッジ。
【請求項17】
前記オーバフロー流路は、毛管力によってサンプルを吸引する大きさに形成されている請求項16記載のカートリッジ。
【請求項18】
前記イニシャル流路と液体連通状態の一以上のフラグポートをさらに備え、
前記フラグポートが、液体サンプルを受容してその存在を視覚的に示すように構成されている請求項1記載のカートリッジ。
【請求項19】
少なくとも一つの拡大鏡部分をさらに備え、
前記拡大鏡部分が、前記イニシャル流路もしくはフラグポートの像を拡大するレンズを含む請求項1記載のカートリッジ。
【請求項20】
前記分析チャンバーは、画像処理トレイに取り付けられ、
前記画像処理トレイが、前記ハウジングに対して、前記分析チャンバーが分析のために視認可能になる開位置及び、前記分析チャンバーが前記イニシャル流路と液体連通状態になり、かつ、分析のために視認できなくなる閉位置に選択的に配置可能である請求項1記載のカートリッジ。
【請求項21】
前記画像処理トレイは閉位置に選択的にロック可能に構成されると共に、閉位置において前記ハウジング内に配置される請求項20記載のカートリッジ。
【請求項22】
前記画像処理トレイを閉位置に選択的にロックもしくはロックを解除する磁気的に作動可能なラッチをさらに備える請求項21記載のカートリッジ。
【請求項23】
生物学的液体サンプルの分析カートリッジであって、
ハウジングと、
サンプル収集ポート及びイニシャル流路を有すると共に、前記ハウジングに接続された液体モジュールと、
分析チャンバーを有する画像処理トレイと、を備え、
前記イニシャル流路は、前記サンプル収集ポートと液体連通状態にされると共に、
前記画像処理トレイは、前記ハウジングに対して選択的に開位置及び閉位置に配置可能に構成され、
閉位置において、前記分析チャンバーが前記イニシャル流路と液体連通状態になることを特徴とするカートリッジ。
【請求項24】
前記分析チャンバーは、前記画像処理トレイが前記ハウジングに対して開位置にある時に分析のために視認可能となり、前記画像処理トレイが前記ハウジングに対して閉位置にある時に視認できなくなる請求項23記載のカートリッジ。
【請求項25】
前記画像処理トレイが閉位置に選択的にロック可能に構成されると共に、閉位置において前記ハウジング内に配置される請求項23記載のカートリッジ。
【請求項26】
前記画像処理トレイを閉位置に選択的にロックもしくはロックを解除する磁気的に作動可能なラッチをさらに備える請求項23記載のカートリッジ。
【請求項27】
生物学的液体サンプルの分析カートリッジであって、
パネルに取り付けられたサンプル収集ポートと、
前記パネルに配置されると共に、前記サンプル収集ポートと液体連通状態にされる流路と、
前記流路内に配置もしくは形成された一以上の流動性攪乱物質と、
イニシャル流路を有すると共に、前記ハウジングに接続された液体モジュールと、
前記流路と液体連通状態にされる分析チャンバーと、を備えることを特徴とするカートリッジ。
【請求項28】
前記流動性攪乱物質は、前記流路及び流路形状変化の内部に配置された一方又は両方の機構を含み、前記攪乱物質が前記流路内のサンプル流動を混合するように作動可能な請求項27記載のカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【公表番号】特表2013−515240(P2013−515240A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544908(P2012−544908)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/061080
【国際公開番号】WO2011/075667
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(501354521)アボット ポイント オブ ケア インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】