説明

生物活性材料の高圧噴霧乾燥

本発明は、例えば生物活性材料を含有する安定な粉末粒子を提供する組成物および方法を提供する。本方法には、例えば増粘剤、有機溶媒、および/または界面活性剤を含む溶液または懸濁液中の生物活性材料の高圧噴霧が含まれる。製剤は、治療用生物活性材料を噴霧してアミノ酸および糖を含有する粉末粒子とするために提供される。本発明の組成物は、例えば高い初期純度、高い保存安定性、および高濃度での再構成を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧乾燥粒子形成および生物活性材料の保存の分野にある。本発明は、例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ウイルス、細菌、抗体、細胞、リポソーム、ワクチンおよび/または同等物などの生物活性材料の高圧噴霧乾燥のための製剤を提供する。高圧噴霧により、例えばより短時間で、より低温で、付随する感受性分子の分解は少ないままに、微細な噴霧液滴を乾燥させることが可能となる。高圧噴霧のための生物活性材料からなる製剤には、例えば生物活性材料、アミノ酸および糖が含まれる。高圧噴霧は粉末粒子を生じ、そこに組み込まれた生物活性材料はより高い濃度でより容易に再構成することができる。本発明は、処理変量を調節することにより噴霧液滴径および粉末粒径を正確に制御するための方法およびシステムを提供する。
【背景技術】
【0002】
貯蔵中の生物材料を保存するための方法は、食品の保存から現代の薬学的組成物の保存に至るまで、長い歴史を有する。生物材料はこれまで乾燥、塩蔵、冷凍、凍結保護、噴霧乾燥、および凍結乾燥されてきた。最適な保存方法は、許容可能な劣化の程度、所望の貯蔵時間、および生物材料の種類によって決まる。
【0003】
何世紀もの間、食品は後日の消費のために乾燥によって保存されてきた。豊作時に収穫された食品は、日光に干されて過剰な水が取り除かれる。乾燥は食品を腐敗細菌および腐敗菌の増殖に適さない状態にすることができる。植物および動物組織が自己を破壊する自己分解プロセスも、乾燥によって防ぐことができる。塩蔵食品は同様の保存効果をもたらすことができる。乾燥および塩蔵食品は通常外見の新鮮さと栄養価が低下する。酵素および医薬品などの生物活性材料を乾燥および塩蔵すると、材料を変性させる熱、酸化、脱水、ラジカルおよび過酸化物の生成、光褪色などにより活性が破壊され得る。
【0004】
噴霧乾燥は、食品加工および医薬品製造に用いられており、塩蔵または緩慢乾燥にまさる利点がいくつかある。水は、溶存生体分子の微細なミストを熱ガス流へ噴霧することにより迅速に除去することができる。乾燥粒子は、水性バッファーで迅速に再構成するための表面積対体積比が大きい。例えばPlatzら、米国特許第6,165,463号、「Dispersible Antibody Compositions and Methods for Their Preparation and Use」では、患者への医薬品の吸入投与のための乾燥粉末粒子が噴霧乾燥により調製される。希釈溶液中の生体分子を中圧で(例えば80psi)一次乾燥用の熱ガス流(例えば98〜105℃)へ噴霧した後、粒子を長時間高温(例えば67℃)に曝露することによりさらに脱水する。このような処理工程は食品および頑丈な生体分子には適しているが、感受性分子はこれらの方法のストレス、長期間の乾燥、および高温により変性するか、またはそうでなければ失活することがある。
【0005】
冷凍は生体分子を保存するのに有効な方法であり得る。低温は分解反応速度を遅らせることができる。冷凍は、分解反応への水の利用可能性を減らし、汚染微生物を減らすことができる。氷は、空気との接触が遮断されることにより分子の酸化を減らすことができる。しかし、冷凍は、溶液の未凍結域中のタンパク質を変性することのできる塩濃度、または細胞構造に穴を開けるおそれのある尖った氷の結晶の形成など、マイナスの効果を有することがある。冷凍により引き起こされる損傷のいくつかは、冷凍温度を下げて氷結晶の形成を阻害することにより変性を防ぐ凍結保護剤の添加により緩和することができる。凍結融解による分解が避けられる場合であっても、冷凍装置の連続運転により、冷凍庫での貯蔵による保存が不便となることもある上に費用がかかることもある。
【0006】
凍結乾燥法は、冷凍と乾燥の利点を多く有する。冷凍により分解を停止させた後、脱水することにより製品の貯蔵安定性が高くなる。凍結水の真空への移行による昇華による乾燥であれば、いくつかの噴霧乾燥法の高熱を避けることができる。凍結乾燥した製品は、室温でさえも貯蔵安定性がかなり高い。しかし、冷凍段階の間も分子はなお変性塩濃度に直面している。さらに、多くの凍結乾燥プロトコールは、含水率を下げるために高温での長時間の二次乾燥段階を必要とする。凍結乾燥材料の嵩高い固まりは再構成を遅らせる可能性があり、吸入による送達のためには微細に粉砕する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
過剰な熱、化学薬品、または剪断応力により純度を損失することなく、生物活性材料を含有する安定な粒子を調製するための組成物および方法に対する要求が依然として必要とされている。得られる粉末粒子の安定性を高め、再構成時間を減らすことのできる生物活性材料の高圧噴霧乾燥のための製剤が望ましい。本発明は、これらの特長および以下の概説により明らかとなる他の特長を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、例えば限定されるものではないが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ウイルス、細菌、抗体、細胞、リポソーム、ワクチンおよび/または同等物を含む、処理変性の少ない生物活性材料の安定な組成物を調製するための方法を提供する。例えば粘度のある溶液を高圧で噴霧乾燥することによる、粉末粒子を調製する方法は、剪断応力および熱応力による分解を減らす。本発明は、噴霧した液滴および乾燥した粉末粒径を正確に合わせるための処理パラメータの調節を提供する。適した糖およびアミノ酸濃度を有する製剤から高圧噴霧乾燥した粉末粒子は、安定性および貯蔵期間が増加する。このような製剤から噴霧された粉末粒子は、必要以上の凝集なく、迅速に高濃度に再構成することができる。
【0009】
本発明の方法による生物活性材料の噴霧乾燥に好ましい製剤は、例えばアミノ酸および糖を含む。アミノ酸は、例えば双性イオン、酸化防止剤、バッファー、安定剤、充填剤、可溶化剤、および/または同等物として働いて粉末粒子製品の品質を向上させることができる。糖は、例えば増粘剤、安定剤、充填剤、可溶化剤、および/または同等物として働き得る。本発明の一態様において、治療用生物活性材料を噴霧乾燥するための製剤は、約4重量%〜約10重量%の治療用生物活性材料、約0.1mM〜約50mMの1種類以上の合計アミノ酸、約0.5重量%〜約4重量%の糖、および水を含む。所望により、生物活性材料は、液体製剤中に約103TCID50/mL〜約1012TCID50/mLで存在するウイルスである。製剤は、所望により、例えば界面活性剤およびポリマーを含む。好ましい製剤は、約8重量%の生物活性材料、約10mMのヒスチジン(pH6.0)、約0.5%のアルギニン、および約2%のスクロースを含む。
【0010】
特定の製剤中の抗体生物活性材料は、一般に、患者への投与において治療薬として作用することのできるモノクローナル抗体である。抗体はIgGであることが多い。具体的に言えば、本発明において使用される抗体としては、限定されるものではないが、合成抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換えによって作出された抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、細胞内抗体、一本鎖Fvs(scFv)(例えば単一特異性および二重特異性のものなどを含む)、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、ジスルフィド結合したFvs(sdFv)、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、およびエピトープ結合フラグメント、ならびに毒素と複合体化した抗体が挙げられる。多くの実施形態では、製剤は約8重量%の抗体を含む。
【0011】
本発明の生物活性材料製剤に好ましいアミノ酸としては、例えばグリシン、ヒスチジンおよびアルギニンが挙げられる。好ましい実施形態では、アミノ酸は約1mM〜約20mMのヒスチジンまたは約0.1重量%〜約2重量%のアルギニンを含む。より好ましい実施形態では、1種類以上のアミノ酸は約10mMのヒスチジンおよび約30mMのアルギニンを含む。
【0012】
生物活性材料製剤に好ましい糖としては、例えばスクロース、トレハロース、およびマンニトールが挙げられる。多くの製剤が約2重量%の糖を含む。
【0013】
生物活性材料製剤に含まれる他の賦形剤としては、ポリマーおよび界面活性剤が挙げられる。例えば製剤に約0.01%〜約0.2%のポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートまたはポリエチレングリコールソルビタンモノラウレートを含めることができる。製剤には、例えば約0.5%〜約0.05%のポリビニルピロリドン(PVP)を含めることができる。
【0014】
生物活性材料を噴霧する方法では、製剤は高圧で噴霧乾燥されて微細な乾燥粉末粒子を形成する。このような粉末粒子は一般に、1mlまたは1モルあたり約200mgの生物活性材料濃度へ迅速に再構成することができる上、純度および活性は乾燥前の製剤と実質的に変わらないまま維持される。
【0015】
生物活性材料を高圧噴霧乾燥するための本発明の方法には、生物活性材料、糖およびアミノ酸を含有する水性製剤を調製する段階と;製剤を高圧で噴霧する段階と;噴霧液滴を乾燥させる段階が含まれる。例えば、本方法には、約4重量%〜約10重量%の生物活性材料、および好ましくは約8重量%の生物活性材料、約0.1mM〜約50mMの1種類以上の合計アミノ酸、および約0.5重量%〜約4重量%の糖を含む水性懸濁液または溶液を調製する段階と;懸濁液または溶液をノズルから高圧で噴霧して微細な液滴のミストを形成する段階と;液滴を乾燥させて粉末粒子を形成する段階と;粒子を回収する段階による、生物活性材料の粉末粒子を調製する段階が含まれる。所望により、生物活性材料は、液体製剤中に約103TCID50/mL〜約1012TCID50/mLで存在するウイルスである。好ましい実施形態では、生物活性材料は、配列番号1〜20のいずれかのペプチド配列、またはその保存的変異体を含み、糖はスクロースであり、粒子を乾燥している間の乾燥チャンバーの乾燥ガス出口温度は約40℃〜約60℃の範囲である。
【0016】
本方法の特定の実施形態では、抗体製剤が噴霧される。抗体は上記に定義されるものなど、いずれの種類の抗体であってよい。本発明の高圧噴霧乾燥法に好ましい抗体としては、限定されるものではないが、例えば:抗RSV、抗hMPV、抗avb3インテグリン、抗avb5インテグリン、抗αIIb/β3インテグリン、抗α4インテグリン、抗EphA2、および抗EphA4、抗EphB4、抗IL9、抗IL4、抗IL5、抗IL13、抗IL15、抗CTLA4、抗PSA、抗PSMA、抗CEA、抗cMET、抗C5a、抗TGF−β、抗HMGB−1、抗インターフェロンαおよび抗インターフェロンα受容体、抗IFNβおよびγ、抗キチナーゼ、抗TIRC7、抗T細胞、MT−103BiTE(商標)、抗EpCam、抗Her2/neu、抗IgE、抗TNF−α、抗VEGF、抗EGFおよび抗EGF受容体、抗CD22、抗CD19、抗Fc、抗LTA、抗Flk−1、および抗Tie−1が挙げられる。特に、本方法により粉末粒子を製造するための抗体には、配列番号1〜20のいずれかのペプチド配列を有する抗体が含まれる。
【0017】
本方法の処理パラメータを調節して所望の特徴をもつ粉末粒子を得ることができる。製剤および/または加圧微粒化ガスに好ましい噴霧圧は、約800psi〜約1800psi、または約1300psiである。好ましい製剤噴霧液滴は直径約3μm〜約30μmである。製剤は、乾燥チャンバーとして働く、または乾燥チャンバー流体的に連通する粒子形成容器へ噴霧することが好ましい。乾燥チャンバーは乾燥ガス入口および出口を有することができる。好ましい乾燥条件には、粒子形成中の乾燥ガスの出口温度が約40℃〜約60℃の温度を含むことが挙げられる。好ましい粉末粒子の平均粒子径は、例えば迅速な再構成または肺の投与のためには約2μm〜約10μmである。
【0018】
生物活性材料を含有する乾燥粉末粒子は、例えば水の添加により粉末粒子から再構成して1ミリリットルあたり約200mgの抗体を含有する溶液または懸濁液を提供することができる。再構成された溶液または懸濁液は、疾患状態を治療するために、例えばヒト患者へ皮下注射により投与することができる。
【0019】
また、安定な粒子を調製する方法には、例えば生物活性材料と増粘剤を含む水性懸濁液または溶液(製剤)を調製する段階、製剤をノズルから高圧で噴霧して微細な液滴のミストを形成する段階、液滴を乾燥させて粉末粒子を形成する段階、および粒子を回収する段階が含まれる。増粘剤は、例えば増粘剤を含まない製剤に対して5%以上の粘度増加をもたらすのに十分な、または0.05センチポイズ以上の粘度増加をもたらすのに十分な濃度で存在することができる。
【0020】
本方法の生物活性材料には、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ウイルス、細菌、抗体、細胞、リポソーム、および/または同等物が挙げられる。例えば生物活性材料は、約1mg/ml〜約200mg/ml、約5mg/ml〜約80mg/ml、または約50mg/mlの濃度で処理製剤中に存在することができる。所望により、生物活性材料は、例えば製剤中に存在するウイルスが約2log FFU(フォーカス形成単位)/ml〜12log FFU/ml、または約8log FFU/mlの力価であり得る。
【0021】
増粘剤は、例えばポリオールおよび/またはポリマーであり得る。例えばポリオールは、トレハロース、スクロース、ソルボース、メレジトース、グリセロール、フルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、パラクトース、グルコース、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、トレイトール、ソルビトール、ラフィノース、および/または同等物であり得る。例示的なポリマー増粘剤としては、デンプン、デンプン誘導体、カルボキシメチルデンプン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、デキストラン、デキストリン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒト血清アルブミン(HSA)、イヌリン、ゼラチン、および/または同等物が挙げられる。本発明の増粘剤は、製剤中に例えば約0.1重量パーセント〜約20重量パーセント、2重量パーセント〜8重量パーセント、または6重量パーセントの量で存在することができる。所望により、増粘剤は、例えば50%、0.05センチポイズ、または100センチポイズの粘度増加をもたらすのに十分な濃度、あるいはそれ以上の濃度で存在することができる。
【0022】
本方法の溶液または懸濁液は、界面活性剤および/または双性イオンを含み得る。本方法における界面活性剤としては、例えばポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート(例えばTween 80)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(例えばTween 20)、またはポリエチレンおよびポリプロピレングリコールのブロックポリマー(例えばプルロニックF68)、および/または同等物が挙げられる。本方法の双性イオンとしては、例えばアルギニン、ヒスチジン、グリシン、および/または同等物が挙げられる。噴霧液滴の平均サイズは、例えば好ましくはスクロースの存在下で、製剤中の界面活性剤の濃度を変えることにより調節することができる。
【0023】
本方法のノズルからの高圧噴霧としては、例えば液体の高圧噴霧、高圧ガスを用いる微粒化、および/または冷流体への噴霧が挙げられる。噴霧は、高圧窒素ガスの微粒化によるものであり得る。ノズルの内径は、例えば約50μm〜約500μm、約75μm〜約150μmであるか、またはノズルオリフィスの内径が約100μmであり得る。高圧噴霧ノズルは、例えば噴霧液滴の分散を促進するための、高圧微粒化ガス用のチャネルを備える微粒化ノズルであり得る。窒素などの高圧微粒化ガスは、ガスの臨界点との差が少なくとも10%または15%の圧力および/または温度であり得る。
【0024】
本発明の方法には、例えば懸濁液および/または溶液液滴を噴霧凍結乾燥することが含まれ得る。微細な液滴は、例えば冷流体へ浸漬されて、液滴を凍らせることができる。冷流体は、例えば気体または液体アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、および/または窒素であり得る。冷流体の温度は、例えば約−80℃〜約−200℃であり得る。液滴は、例えば真空を適用し、液滴の周囲環境の温度を上げることによって乾燥させて粉末粒子を形成することができる(例えば凍結乾燥させる)。この真空は、約200トル未満または約10トル未満のガス圧であり得る。
【0025】
溶液または懸濁液は、高圧で噴霧して微細な液滴のミストを生成することができる。この高圧とは、例えば約200psi〜約2500psiの間、約1000psi〜1500psiの間、または約1300psiであり得る。微細なミストには、平均直径約2μm〜約200μm、約3μm〜約70μm、約5μm〜約30μm、または約10μmの液滴が含まれ得る。
【0026】
液滴を、例えば微細なミストからのガスを乾燥ガスで置換して水蒸気および噴霧ガスを除去することにより、乾燥して粉末粒子を形成することができる。乾燥ガスは、例えば温度約25℃〜約99℃、約35℃〜約65℃、または約55℃の、窒素などの実質的に不活性のガスであり得る。本発明の粉末粒子の平均粒径は、約0.1μm〜約100μm、または約2μm〜約10μmであり得る。
【0027】
本発明の方法は、製品純度に有意な減少なく、高い工程収率を提供できる。例えば本方法は、約40パーセント〜約98パーセント、または約90パーセントの工程収率(例えば比活性保持率)を有し得る。タンパク質生物活性材料の製品純度は噴霧を行っても高いままであり、例えば粉末粒子の再構成時の凝集物およびフラグメントの合計は約5パーセント未満、4パーセント、3パーセント、2パーセント以下である。タンパク質生物活性材料の製品純度もしくは比活性またはウイルス生物活性材料の生存率は、液滴の乾燥の前後で実質的に同じであり得る。
【0028】
粉末粒子は、例えば本発明の方法に従って生物活性材料を投与するために用いることができる。粉末粒子は、鼻腔および/または肺経路からの吸入により哺乳類へ送達することができる。あるいは、注射による生物活性材料の送達のために粉末粒子を水性バッファーで再構成することができる。本方法の粉末粒子は、例えば約1mg/mL〜約400mg/mL、または5mg/mL〜約200mg/mLの濃度で生物活性材料の製剤へ再構成することができる。実質的に等張の(重量モル浸透圧濃度が生理学的値の約10%以内)再構成された材料は、抗体を約200mg/mLの濃度で含み得る。
【0029】
本発明の組成物は、例えば高濃度の純度の高い生物活性材料の溶液へ容易に再構成される安定な粉末粒子であり得る。本発明の組成物は、例えば生物活性材料および増粘剤を含む水性製剤を調製する段階、製剤をノズルから高圧で噴霧して微細な液滴のミストを形成する段階、液滴を乾燥させて粉末粒子を形成する段階、および粒子を回収する段階を含む方法により作製される、生物活性材料を含有する粒子であり得る。増粘剤は、例えば増粘剤を含まない溶液の懸濁液に対して5%以上の粘度増加、または0.5センチポイズの粘度増加をもたらすのに十分な濃度で存在し得る。
【0030】
生物活性材料は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ウイルス、細菌、抗体、細胞、リポソームおよび/または同等物であり得る。生物活性材料は、処理製剤中に、例えば約1mg/ml〜約200mg/ml、約5mg/ml〜約80mg/ml、または約50mg/mlの濃度で存在することができる。インフルエンザウイルスなどのウイルス生物活性材料は、製剤中に約2log FFU/ml〜約12log FFU/ml、または約8log FFU/mlの力価で存在することができる。粉末粒子製品において、生物活性材料は、例えば粉末粒子中に約0.1重量パーセント以下〜約80重量パーセントの量で存在することができる。
【0031】
例示的な実施形態では、組成物のうちの生物活性材料は、処理製剤中に約0.5重量パーセント〜約20重量パーセント、または約8重量パーセントの量で存在することができる。組成物のうちの増粘剤には、例えばスクロースまたはトレハロースなどのポリオール、あるいはヒドロキシエチルデンプン(HES)、デキストラン、デキストリン、イヌリン、またはポリビニルピロリドン(PVP)などのポリマーが含まれ得る。スクロースは、製剤中に約1重量パーセント〜約10重量パーセント、または約6重量パーセントの量で存在することができる。水性製剤は、抗体をアルギニンおよびスクロースと組み合わせて含むことができる。所望により、増粘剤にはPVPを含むことができる。
【0032】
生物活性材料を含有する組成物は、例えば賦形剤(乾燥時の他の全固形分)の生物活性材料に対する比が約1/100〜約100/1、約2/3〜約3/2、または約1/1である粉末粒子であり得る。粉末粒子の生物活性材料組成物には、例えばスクロースを約30重量パーセント〜約60重量パーセントの量で加えることができる。粉末粒子は約5パーセント未満の水分を含み得る。
【0033】
粉末粒子中の生物活性材料は非常に安定であり、例えば約4℃で1年、5年、または約7年間保存した後に粉末粒子を再構成すると凝集物は約3%未満であり得る。本発明の製剤および方法を用いて乾燥して粉末粒子とした生物活性材は、例えば約25℃で0.1年、0.5年、1年、または約1.5年以上保存した後に粉末粒子を再構成すると凝集物は約3%未満であり得る。
【0034】
本発明の生物活性材料組成物は、再構成された粉末粒子であり得る。例えば水性バッファーを粉末粒子へ添加して再構成された生物活性材料の製剤を形成することができる。このような溶液は、例えば処理工程中で噴霧された製剤と実質的に類似している。所望により、粉末粒子を適切なバッファーで再構成して等張性および/または高い生物活性材料濃度などの所望の特性をもたらすことができる。再構成された生物活性材料の溶液または懸濁液は、例えば約0.1mg/ml未満〜約500mg/mlの濃度であり得る。好ましい実施形態では、粉末粒子は、10分以下で、例えば約200mg/mlの生物活性材料濃度へ再構成できる。もう1つの好ましい実施形態では、粉末粒子を再構成して最大約200mg/mlの生物活性材料濃度を含有する実質的に等張の製剤とすることができる。
【0035】
再構成された生物活性材料の組成物は、溶液を50mg/ml〜500mg/ml以上含み、凝集物またはフラグメントは約3パーセント未満である。好ましい実施形態では、生物活性材料は200mg/ml以上の濃度で再構成される。このような組成物は、増粘剤を含む生物活性材料の水性製剤を調製する段階、製剤をノズルから高圧で噴霧して微細な液滴のミストを形成する段階、液滴を乾燥させて粉末粒子を形成する段階、粒子を回収する段階、および粒子を水溶液中で再構成する段階からなる方法により製造することができる。組成物は、増粘剤を用いて粘度が50%、0.05センチポイズ以上増加した製剤から調製することができる。生物活性材料の粒子を噴霧乾燥するための製剤には、一般に、例えばかなりの量のアミノ酸および糖が含まれる。
【0036】
本発明の組成物には、例えばポリオールおよび/またはポリマーの増粘剤が含まれ得る。組成物のうちのポリオールは、例えばトレハロース、スクロース、ソルボース、メレジトース、グリセロール、フルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、パラクトース、グルコース、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、トレイトール、ソルビトール、ラフィノース、および/または同等物であり得る。組成物のうちのポリマーは、例えばデンプン、デンプン誘導体、カルボキシメチルデンプン、イヌリン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、デキストラン、デキストリン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒト血清アルブミン(HSA)、ゼラチン、および/または同等物であり得る。組成物を作製する処理工程中の製剤は、増粘剤を、例えば約0.1重量パーセント〜約20重量パーセント、または約5重量パーセントの量で有し得る。
【0037】
組成物の処理工程中で噴霧される水溶液または懸濁液には、例えばアルギニン、ヒスチジン、グリシン、および/または同等物の双性イオンが含まれ得る。アルギニンは、処理工程製剤中に、例えば約0.1重量パーセント〜約5重量パーセント、または約0.5重量パーセントの量で存在することができる。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、約0.4%〜約4%の濃度のスクロースおよび約0.1%〜約0.5%の濃度のアルギニンを含有する製剤から調製される。
【0038】
組成物の処理工程中で噴霧される水溶液または懸濁液には、例えば界面活性剤が含まれ得る。界面活性剤は、例えばポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリエチレンおよびポリプロピレングリコールのブロックポリマー、例えばTween 80、Tween 20、プルロニックF68、および/または同等物であり得る。
【0039】
本発明は、例えば微粒化高圧窒素ガスを用い、かつ/または冷流体への高圧噴霧により組成物を作製する方法を提供する。組成物を調製するための方法は、例えば微細な液滴の冷流体への浸漬の結果、液滴を冷凍する段階、その後真空を適用して、かつ液滴の温度を上昇させることによる、凍結液滴を乾燥させる段階を提供し得る。
【0040】
組成物の粉末粒子は、例えば平均粒径(サイズ)、製法、および成分比率の点で変化することがある。例えば粉末粒子の平均サイズは、約0.1μm〜約100μm、または約2μm〜約10μmで変動することがある。粉末粒子には、例えば約20重量パーセント〜約60重量パーセント、または約40重量パーセントの量のスクロースが含まれ得る。粉末粒子組成物には、濃度約1重量%〜約20重量%、または約5重量%のアルギニンが含まれ得る。粉末粒子の組成物には、濃度約0重量%〜約5重量%、または約0.05重量%〜約0.5重量%のPVPが含まれ得る。
【0041】
噴霧液滴のサイズは、本発明のシステムおよび方法において、1以上のパラメータを調節することにより制御できる。例えば液滴または粒子のサイズは、製剤中の界面活性剤の率を調節すること、噴霧圧力を調節すること、微粒化ガス圧を調節すること、粘度を調節すること、製剤中の全固形分を調節すること、製剤の流速を調節すること、質量流量比(微粒化ガス流に対する製剤流)を調節すること、製剤の温度を調節すること、および/またはその種のことにより制御することができる。
【0042】
本発明の組成物は、例えば平均粒径が約2μm〜約200μm、粒子密度が約1、および純度約90パーセント超の生物活性材料(凝集も断片化もされていない)が40重量パーセント〜約60重量パーセントの乾燥粉末粒子を含む。好ましい実施形態では、粒径は10μm未満であり、生物活性材料純度は97%以上である。乾燥粒子の組成物は安定であり、例えば約4℃で約1年〜約7年間保存後に粉末粒子を再構成すると生物活性材料の凝集は約3%未満である。粉末粒子の組成物は、約25℃で約0.1年〜約1.5年間保存した後に再構成すると、例えば凝集物は約3%未満であり得る。このような粉末粒子組成物には、例えば約40重量パーセント〜約60重量パーセントのスクロースもしくはトレハロース、および/またはアルギニンが含まれる。
【0043】
本発明の好ましい組成物では、ウイルスを含有する粒子は、ウイルスおよびスクロースを含有する水性製剤懸濁液または溶液を調製する段階、懸濁液または溶液をノズルから高圧で噴霧して微細な液滴のミストを形成する段階、液滴を乾燥させて粉末粒子を形成する段階、および粒子を回収する段階により調製される。懸濁液中に増粘剤が存在していると、粘度を50%、0.05センチポイズ以上増加させることができる。高圧噴霧は、ガスの臨界点との差が少なくとも10%の温度および圧力のガスを用いて微粒化することであり得る。ウイルスには、インフルエンザウイルスが含まれる。本発明の方法および製剤を用いると、回収された粒子中のウイルスの生存率は有意に低下しない。
【0044】
定義
本発明を詳細に記載する前に、本発明は、記載される特定の方法または生物材料に限定されず、変化し得ることが当然理解される。また、本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を説明する目的のためのみに用いられ、限定する目的で用いられるものではないことも当然理解される。本明細書および添付される請求項において用いられる単数形の「a」「an」および「the」は、文脈上別に指示されている場合を除いて、複数への言及が含まれることがある。従って、例えば「ポリオール」への言及には2以上のポリオールの組合せも含まれることがあり;「糖」への言及には1以上の糖の混合物なども含まれることがある。
【0045】
別に定義される場合を除いて、本明細書において用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明に属する当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等であればいかなる方法および材料も本発明の試験のための実行に用いることができるが、好ましい材料および方法は本明細書に記載されている。本発明の記載および請求において、下記の定義に従って以下の用語が用いられる。
【0046】
本明細書において用いられる用語「粒径」とは、一般に粒子の物理的な平均直径をさす。
【0047】
本発明の生物活性材料との関連での用語「比活性」とは、物質量に対する生物活性(例えば適切な生物検定により決定できる)をさす。例えば高純度の未変性生物活性材料は、高い比活性を有し得る。変性生物活性材料は低い比活性を有し得る。高純度の生物活性材料は、例えばサイズ排除クロマトグラフィーで測定するとフラグメント、二量体、三量体および凝集物が少ない。
【0048】
本明細書において用いられる用語「高圧噴霧」とは、標準的な噴霧乾燥機に用いられるよりも大きな圧力で供給された製剤をオリフィスから噴霧することをさす。高圧とは、例えば約200psiを上回る。好ましい高圧噴霧圧力は約1000psi〜約2000psiである。高圧噴霧には、例えばガスの臨界圧力(所与の温度での)および/または臨界温度(所与の圧力での)を10%上回る、または15%上回る圧力差のガスで製剤を加圧および/または微粒化することが含まれる。
【0049】
本明細書において用いられる用語「増粘剤」とは、製剤の粘度を有意に増加させる本発明の製剤中の分子種をさす。例えば分子種は実質的に製剤の粘度を増加させ、製剤中に噴霧されたタンパク質の剪断応力による変性を有意に低下させる量で製剤に含まれる増粘剤であり得る。好ましい増粘剤としては、例えばポリオール、ポリマー、糖、およびポリ糖類が挙げられる。
【0050】
本明細書において用いられる用語「生物活性材料」とは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ウイルス、細菌、抗体、細胞、リポソーム、ワクチンおよび/または同等物をさすか、または当業者が一般に称するものをさす。
【0051】
用語「治療用生物活性材料」は、上記に定義される生物活性材料であり、この生物活性材料は適切に処方されて生物活性によりもたらされる治療を必要とするヒトまたは動物被験体へ投与される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
本発明は、例えばペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ウイルス、細菌、抗体、細胞、リポソーム、ワクチンなどの生物活性材料を含有する安定な粒子を調製するための組成物および方法を提供する。本方法は、例えば高い噴霧圧を用いて微細なミストを乾燥ガス暖熱流へ注入することにより高い乾燥ガス熱を用いずに噴霧液滴を迅速に乾燥して粒子とすることを含む。治療用生物活性材料の噴霧乾燥に好ましい製剤には、容易に再構成される安定な粉末粒子を形成するためのアミノ酸および糖が含まれる。
【0053】
本発明の方法は、治療用生物活性材料の高圧噴霧乾燥に好ましい製剤を提供する。この製剤は、容易に高い濃度へ再構成される安定な粉末粒子を提供することができる。製剤には、例えば水溶液または懸濁液中の約4重量%未満〜約10重量%の治療用生物活性材料、約0.1mM〜約50mMの1種類以上の合計アミノ酸、および約0.5重量%〜約4重量%の糖を含めることができる。生物活性材料が、例えば弱毒生ウイルスワクチン中のウイルスである場合、このウイルスは約103TCID50/mL〜約1012TCID50/mL、または約105TCID50/mL〜約109TCID50/mLの量で液体製剤中に存在することができる。他の構成物を製剤に加えて、例えば安定性、再構成時間、および物理的特性に所望の利点をもたらすことができる。
【0054】
本発明の方法は、一般に、例えば組成物中の生物活性材料を増粘剤とともに高圧で噴霧乾燥して、瞬時に乾燥されて純度または生存率の初期低下のほとんどない粉末粒子となる微細な液滴を生成することを提供する。初期純度の高さおよび賦形剤の保護効果により、例えば粉末粒子の貯蔵のための長い保存期間と優れた安定性がもたらされる。微細な粉末粒子と高溶解性の賦形剤により、生物活性材料を比活性の高い状態で高い濃度へ即座に再構成することが可能となる。
【0055】
粉末粒子を調製するための本発明の方法には、例えば約8%の生物活性材料、約0.5%のアルギニン、および約2%のスクロースを含む製剤を高圧噴霧して乾燥粉末とすることが含まれる。あるいは、生物活性材料が生ウイルスである場合は、例えば約103TCID50(50%組織培養感染量)/mL〜約1012TCID50/mLで存在する弱毒ウイルスに対して、生物活性材料はさらに低い質量比で存在することができる。本発明の一態様では、乾燥粉末粒子を、皮下注射のために約200mg/mLの生物活性材料濃度へ再構成することによりヒト患者へ投与することができる。
【0056】
高圧噴霧乾燥法
本発明の方法は、純粋かつ安定な生物活性材料の高速乾燥のために高圧噴霧と保護製剤とを組み合わせる。本発明の方法は、例えば糖およびアミノ酸を含む生物活性材料の水性製剤を調製すること、懸濁液または溶液をノズルから高圧で噴霧して微細な液滴のミストを形成すること、液滴を乾燥させて粉末粒子を形成すること、および保存または即時使用のために粒子を回収することによる、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ウイルス、細菌、抗体、細胞、リポソーム、ワクチンおよび/または同等物などの生物活性材料を含有する粉末粒子の製造を含む。
【0057】
本方法は、例えば生物活性材料の感受性、予想される保存条件、および投与経路案に応じて適した製品を提供するように修正することができる。剪断応力保護に加えて、抗酸化、生物活性材料との水素結合による分子の水和水への置換、再構成を助ける高い溶解度、およびヒトにおける注射の安全性を含む所望の特性をもたらすことのできる、様々の増粘剤、例えばポリオールおよびポリマーなどが利用できる。生物活性材料の製剤を噴霧するための高圧は、例えば水圧、加圧ガス、またはHPLCポンプなどの高圧ポンプにより供給することができる。液滴の乾燥は、例えば冷凍および昇華、湿度および/または温度制御乾燥ガスの温熱流、および/または流動床中の懸濁液により達成することができる。粒子の回収には、粒子のサイズ分類、濾過、沈降、密閉容器への充填などが含まれ得る。本発明の粒子は、例えば吸入による生物活性材料の投与のため、注射による投与のための再構成のため、長期参照用の分析用参照試料の保存のためなどに用いることができる。
【0058】
噴霧用の生物活性材料製剤の調製
関心対象の生物活性材料を、糖およびアミノ酸を含む溶液に加えて本発明の噴霧乾燥製剤を調製することができる。成分の溶解度を高めるため、酸化を低減させるため、粘度を増加させるため、バルクを増やすため、表面張力を低下させるため、粒子の空隙率を減らすため、pHを制御するためおよび/または同等目的のためにさらなる賦形剤を加えることができる。
【0059】
個々の構成物は、製剤中の成分として複数の役割を果たすことができる。例えばアミノ酸は、安定剤、バッファー、酸化防止剤、充填剤などであり得る。糖は、安定剤、再構成促進剤、凍結保護剤、充填剤、増粘剤などであり得る。増粘剤、賦形剤、バッファー、糖、アミノ酸、界面活性剤、安定剤および/または同等物などの製剤成分は、製剤中の成分の役割に寄与する個々の異なる構成物の累積によって表されることがある。
【0060】
本発明の好ましい生物活性材料は抗体およびワクチンであるが、方法および製剤は、例えば工業用試薬、分析用試薬、医薬、治療薬などに適用することができる。本発明の生物活性材料としては、例えばペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ウイルス、細菌、抗体、モノクローナル抗体、細胞、リポソームおよび/または同等物が挙げられる。これらの材料の液体製剤の調製段階は、各材料の固有の感受性に応じて変化し得る。
【0061】
噴霧用の液体製剤は、水溶液中で生物活性材料、糖、アミノ酸、およびさらなる賦形剤を混合することにより調製することができる。抗体などの多くの生物活性材料は、容易に水溶液へ溶けることができる。例えばいくつかのペプチド、ウイルス、細菌、およびリポソームなどの他の生物活性材料は、製剤中で懸濁液として存在する粒子であり得る。生物活性材料が溶液中に存在しようと、懸濁液中に存在しようと、例えばそれらを製剤へ混合する際に剪断応力または高温の厳しい条件を避けることが多くの場合に必要である。他の製剤構成物が溶液となるために熱または強い攪拌を必要とする場合は、例えば別々に溶解してから、冷却後に生物活性材料と緩やかに混合すればよい。
【0062】
最終製剤中の全固形分は、例えば本発明の高粘度および/または急速低温乾燥態様の提供を促進するため、一般に高い。例えば本発明において噴霧用の処理製剤は、約5パーセント〜約50パーセントの全固形分(乾燥残留物)、約10パーセント〜20パーセントの全固形分、または約15パーセントの全固形分を含むことができる。高圧噴霧用の製剤は、室温で水(0.01ポアズ)よりも有意に大きな粘度、および、追加の増粘剤を添加せずに生物活性材料製剤よりも大きな粘度を有することができる。例えば増粘剤の添加は、噴霧用の製剤の粘度を0.02センチポイズ、0.05センチポイズ、0.1センチポイズ、0.5センチポイズ、1センチポイズ、5センチポイズ、10センチポイズ、0.5ポアズ、1ポアズ、5ポアズ、10ポアズ以上増加させることができる。別の態様では、増粘剤の添加は、噴霧用の製剤の粘度を1%、5%、25%、50%、100%、500%以上増加させることができる。好ましい実施形態では、増粘剤は、粘度を0.05センチポイズ以上増加させるのに十分な、または製剤の粘度を5%以上増加させるのに十分な濃度で存在する。好ましい実施形態では、増粘剤の添加は、増粘剤をさらに添加しない同一の製剤と比較して生物活性材料の失活、断片化または凝集に有意な(例えば測定可能な)減少をもたらす。
【0063】
製剤中の生物活性材料の濃度は、例えば比活性、賦形剤の濃度、投与経路、および/または生物活性材料の使用目的によって大いに異なる可能性がある。生物活性材料が例えば吸入または注射による治療投与のための抗体、または局所投与のためのリポソームである場合、必要な濃度は高くなり得る。生物活性材料が、例えばペプチドワクチン、生弱毒ウイルス、ワクチン接種用の死滅ウイルス、または細菌である場合、必要な材料の濃度は相当低くなり得る。概して、生物活性材料は、本発明の溶液または懸濁液中に例えば約1mg/mL未満〜約200mg/ml、約5mg/ml〜約80mg/ml、または約50mg/mlの濃度で存在することができる。ウイルス粒子は、製剤中に例えば約10pg/ml〜約50mg/mlまたは約10ug/mlの量で存在することができるか;あるいは、例えば液体製剤中に約103TCID50/mL〜約1012TCID50/mLの量で存在することができる。
【0064】
本発明の増粘剤は、一般に、例えば生物活性材料の剪断破壊または変性に対し有意な保護を提供するのに十分な高い濃度で溶液または懸濁液へ溶けるかまたは効果的に懸濁することのできる糖または水溶性ポリマーである。概して、増粘ポリマーの有効量は、溶液中の長い分子により生じる高い粘度に起因して、糖に必要とされる有効量よりも少ない。増粘剤は、例えば約0.05重量パーセント〜約30重量パーセント、約0.1重量パーセント〜約20重量パーセント、または約2重量パーセント〜約6重量パーセントの量で本発明の製剤中に存在することができる。多くの増粘剤が、例えば冷凍および乾燥などの他の処理応力下で生物活性材料に例えば保護作用をもたらすことのできる、炭水化物である。
【0065】
本発明の製剤は、例えば関係する特定の生物活性材料と相溶性の界面活性剤を含むことができる。界面活性剤は、高濃度での凝集または沈殿を避けるために他の製剤成分の溶解度を高めることができる。界面活性剤は、例えば、生物活性材料が気液界面で変性しないように、および/または噴霧により一層微細な液滴が形成されるように製剤の表面張力を低下させることができる。界面活性剤は、本発明の溶液または懸濁液中に約0.005パーセント〜約1パーセント、約0.01パーセント〜約0.5パーセント、または約0.02パーセントの量で存在することができる。
【0066】
生物活性材料を噴霧乾燥するための製剤
本発明の製剤は、優れた再構成特性を有する安定な粉末粒子を噴霧するために特に有用であり得る。生物活性材料の噴霧乾燥に特に有用な製剤には、例えば4重量%〜10重量%の生物活性材料、0.5%〜4%の糖および約0.1mM〜約50mMのアミノ酸を含めることができる。また、製剤に、例えば界面活性剤、ポリマー、および/または約pH6以下のpHをもたらすバッファーを含めることも有益であり得る。好ましい実施形態では、生物活性材料の高圧噴霧乾燥のための製剤は、例えば約8重量%の生物活性材料、約10mMのヒスチジン、約0.5%のアルギニンおよび約2%のスクロースを約pH6で含み得る。他の好ましい実施形態では、ワクチンの高圧噴霧乾燥のための製剤は、例えば約103TCID50/mL〜約1012TCID50/mL弱毒ウイルス、約10mMヒスチジン、約0.5%アルギニンおよび約2%のスクロースを約pH6で含む。
【0067】
特定の製剤の利益を受ける治療用生物活性材料としては、例えばペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ウイルス、細菌、抗体、細胞、リポソーム、ワクチンなどが挙げられる。
【0068】
製剤のうちの抗体としては、限定されるものではないが、配列を有する抗体、または相補性決定領域(CDR)の配列を含有する抗体、または:1)米国特許第5,824,307号;Johnson S,ら,「Development of a Humanized Monoclonal Antibody(MEDI−493)with Potent In Vitro and In Vivo Activity Against Respiratory Syncytial Virus.」J.Infect Dis.,176(5):1215−24,(1997,Nov);米国特許第6,656,467号、または米国出願公開特許第20030091584号に開示される抗RSV抗体;または2)米国特許第6,531,580号、米国特許出願第20030166872号、またはWu,H.ら,「Stepwise In Vitro Affinity Maturation of Vitaxin,an αvβ3−Specific Humanized mAb」,Proc Natl Acad Sci U S A,26;95(11):6037−42,(1998 May)に開示されるαvβ3;または3)米国特許出願公開第20040091486号に開示される抗EphA2抗体中の新規な配列の単なる保存的変異体である配列を含有する抗体が挙げられる。好ましい実施形態では、生物活性材料は上記に定義される抗体である。具体的に意図される抗体としては、限定されるものではないが、抗RSV、抗hMPV、抗avb3インテグリン、抗avb5インテグリン、抗αIIb/β3インテグリン、抗α4インテグリン、抗EphA2、および抗EphA4、抗EphB4、抗IL9、抗IL4、抗IL5、抗IL13、抗IL15、抗CTLA4、抗PSA、抗PSMA、抗CEA、抗cMET、抗C5a、抗TGF−β、抗HMGB−1、抗インターフェロンαおよび抗インターフェロンα受容体、抗IFNβおよびγ、抗キチナーゼ、抗TIRC7、抗T細胞、MT−103BiTE(商標)、抗EpCam、抗Her2/neu、抗IgE、抗TNF−α、抗VEGF、抗EGFおよび抗EGF受容体、抗CD22、抗CD19、抗Fc、抗LTA、抗Flk−1、および抗Tie−1が挙げられる。
【0069】
本発明において用いられるワクチン抗原としては、限定されるものではないが、全ウイルス生ワクチン、全ウイルス死ワクチン、サブユニットワクチン、精製または組換えウイルス抗原、組換えウイルスワクチン、抗イディオタイプ抗体、癌ワクチン、およびDNAワクチンであり得るウイルスワクチンが挙げられる。特定の好ましい実施形態では、生物活性材料はワクチン抗原である。具体的に意図されるワクチンは、次の:エプスタイン・バーウイルス、連鎖球菌、肺炎球菌、RSV(呼吸器合胞体ウイルス)、PIV(パラインフルエンザウイルス)、hMPV(ヒトメタニューモウイルス)、EphA2癌ワクチン、HPV(ヒトパピローマウイルス)HPV−16、HPV−18、CMV(サイトメガロウイルス)、ニューモシスチス・カリニ、インフルエンザウイルス、風疹、麻疹、流行性耳下腺炎、炭疽菌、ボツリヌス中毒症、エボラ、水痘、帯状疱疹、天然痘、ポリオ、黄熱病、B型肝炎、リフトバレー熱、結核、ウイルス性髄膜炎、汎発性インフルエンザ、鳥インフルエンザ、およびアデノウイルスの1以上の抗原を含む。
【0070】
糖は、噴霧乾燥のための生物活性材料製剤に多くの有用な特性をもたらすことができる。製剤中の糖は、安定性を高め、再構成を加速し、噴霧および投与中などの剪断変性を減らすことができる。本発明において、糖は、高圧噴霧乾燥のための製剤中に約0.1重量%〜約8重量%以上、約0.5%〜約4%、約1%〜約3%、または約2%の量で存在するのが好ましい。好ましい糖は、一般に還元糖ではない。バイオマテリアル製剤を噴霧乾燥するための例示的な糖としては、スクロース、マンニトールおよび/またはトレハロースが挙げられる。
【0071】
アミノ酸は、例えば安定性を高めるため、pHを緩衝するため、易溶性のバルクをもたらすためおよび/または同等目的のために、生物活性材料の高圧噴霧乾燥のための製剤中に含むことができる。本発明において、生物活性材料の噴霧のための製剤には、例えばアミノ酸を約0.05mM〜約100mM、約0.1mM〜約50mM、約1mM〜約30mM、または約20mMの合計アミノ酸量で含むことができる。好ましいアミノ酸としては、例えばグリシン、ロイシン、ヒスチジンおよびアルギニンが挙げられる。製剤中の好ましいヒスチジン濃度は約2mM〜約20mM、または約10mMである。製剤中の好ましいアルギニン濃度は約5mM〜約50mM、約10mM〜約40mMまたは約30mM(約0.5重量%)である。当然、ヒスチジンまたはアルギニンを含まない製剤も想定されるが、一般にあまり好ましくない。
【0072】
好ましい実施形態では、製剤中の少なくとも1種類のアミノ酸はロイシンなど、小さな疎水性アミノ酸である。小さな疎水性アミノ酸の製剤中での使用は、特に、有機溶媒の存在下で噴霧された粉末の特性に有益であり得る。例えば、ロイシンをエタノールに媒介される噴霧乾燥処理と組み合わせると、得られる粉末の分散性および流動性を改善することができる。溶媒と小さな疎水性アミノ酸の組合せを用いて噴霧された粉末に関して、粒子間の凝集力および再構成時間を減らすこともできる。好ましい溶媒噴霧技術には、0〜2% w/vのロイシンおよび/またはマンニトールを有する製剤を用いる噴霧が含まれ得る。
【0073】
界面活性剤は、生物活性材料の高圧噴霧乾燥のための製剤中に、例えば生物活性材料の安定性を高めるためおよび再構成時間を減らすために含めることができる。界面活性剤は、0%〜約2%、約0.001%〜約1%、約0.01%〜約0.5%、約0.05%〜約0.2%、または約0.1%の量で製剤中に存在することができる。高圧噴霧製剤に好ましい界面活性剤としては、0.01%〜約0.2%の非イオン性界面活性剤、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween−20)またはポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート(Tween−80)が挙げられる。
【0074】
アミノ酸および糖に加えて、ポリマーを生物活性材料の高圧噴霧乾燥のための製剤に加えることができる。好ましいポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)である。ポリマーは、製剤中に存在する場合には、約0.01%〜約2%、約0.05%〜約0.5%、または約0.1%〜約0.2%の量が好ましい。
【0075】
高圧噴霧乾燥の特定の実施形態では、生物活性材料は配列番号1〜20のいずれかの配列、またはその保存的変異体を有すると記載される抗体である。1アミノ酸配列中の1または少数のアミノ酸が高い類似特性をもつ異なるアミノ酸で置換されている保存的アミノ酸置換も、開示された構築物に高度に類似していると容易に同定される。開示された各配列のこのような保存的変異体が、本発明の特徴である。当業者であればコード配列中の単一のアミノ酸または僅かな割合のアミノ酸(一般的に5%未満、より一般的に4%、2%または1%未満)を変更、付加または欠失する個別の置換、欠失または付加が、変更の結果アミノ酸の欠失、アミノ酸の付加、またはアミノ酸の化学的に類似したアミノ酸での置換となる「保存的に修飾された変異体」であることを認識するであろう。従って、列挙された本発明のポリペプチド配列の「保存的変異体」には、僅かな割合、一般的に5%未満、より一般的に2%または1%未満のポリペプチド配列のアミノ酸の、同じ保存的置換群中の保存的に選択されたアミノ酸での置換が含まれる。保存的変異体には、特に、同定された抗体の特異性または親和性を実質的に変えないものが含まれる。
【0076】
【表1】

表1において、同じ群の1つのアミノ酸と別のアミノ酸での置換を、保存的変異体置換と考えることができる。
【0077】
製剤の噴霧
本発明の製剤は、例えばスプレーノズルから高圧で噴霧されて微細な液滴のミストを生成する。噴霧パラメータは、例えば溶液の粘度、所望の粒径、意図される乾燥方法、微粒化ノズルの設計、および/または生物活性材料の感受性に応じて変動し得る。
【0078】
高圧噴霧は、例えば液滴が微細であるため、および最終的にその結果得られた乾燥粉末粒子が微細であるという理由で、低圧噴霧法にまさる有意な利点を有する。図1に示されるように、高圧噴霧(プロット10)は1未満の質量流量比(MFR―液体流あたりの微粒化ガスの質量流量の比)で10μm未満の液滴径が得られるのに対し、標準法(低圧微粒化ノズル、プロット11)は10μm未満の液滴径を得るために約15の範囲のMFRを必要とすることがある。高圧噴霧は、微粒化ガスの使用を有意に減少させることができる上に、低圧噴霧法で得られるよりも一層微細な平均液滴径を噴霧することができる。所望により、微粒化ガスの同時放出を行わずに高圧噴霧を行うことができる、すなわち、高圧の液体をガス噴射せずにノズルから噴霧することができる。
【0079】
製剤は、所望の液滴径を提供するのに効果的な圧力でノズルから噴霧することができる。一般に圧力が高いほど、例えば小さな液滴径が得られる。例えば溶液の粘度が高いほど、所望の液滴径を得るために高い圧力が必要とされることになる。例えば界面活性剤が存在すると、高圧噴霧法で所望の液滴径を得るために必要な圧力は低くなる場合が多い。製剤が加圧ガス流の存在下での噴霧により微粒化されている場合、質量流量比が液滴径に作用し得る。本発明の噴霧圧は、例えば約200psi(重量ポンド毎平方インチ)〜約5000psi、約500psi〜2500psi、1000psi〜1500psi、または約1300psiであり得る。噴霧液滴径および/または乾燥粒径は、例えば製剤中の界面活性剤の割合を調節すること、噴霧圧力を調節すること、微粒化ガス圧力を調節すること、粘度を調節すること、製剤中の全固形分を調節すること、製剤の流速を調節すること、質量流量比を調節すること、製剤の温度を調節すること、および/または同種類のことによって制御することができる。
【0080】
液滴のスプレーが高圧微粒化ガスで微粒化される場合、微粒化ガスは、例えばガスの臨界点との差が少なくとも10%、または少なくとも15%、または少なくとも20%の圧力または温度を有し得る。図2に示されるように、多くのガスは、加圧および/または冷却することにより気体の状態から液体または固体の状態への相転移をもたらすことができる。気体状態からのこれらの転移は臨界圧力および/または臨界温度で起こり得る。本発明の一態様では、いくつかの実施形態において、微粒化ガスは、所与温度でのガスの臨界圧よりも10%を上回って、15%を上回って、または20%を上回って低い。本発明の一態様は、いくつかの実施形態において、微粒化ガスが、所与圧力でのガスの臨界温度(ケルビン温度で測定)よりも10%を上回って、15%を上回って、または20%を上回って高い。
【0081】
一実施形態では、例えば所与噴霧圧で噴霧された液滴径の制御を向上させるために、製剤には増粘剤と界面活性剤の両方が含まれる。増粘剤の存在下で噴霧された液滴径は、一般に増粘剤を含まない溶液のものよりも大きい。界面活性剤の存在下で噴霧された液滴径は、一般に界面活性剤を含まない溶液のものよりも小さい。しかし、製剤に増粘剤と界面活性剤の両方が含まれる場合、予期せぬ有用な結果を得ることができる場合がある。圧力、界面活性剤、増粘剤および液滴径の間の相互関係を示すために、例えば図3に示されるような、微粒化圧力に対する液滴径のグラフを作成することができる。ある程度の圧力、例えば900〜1100psiでは、界面活性剤(Tween 80)および/または増粘剤(スクロース)を含む水よりも純水30のほうが小さな液滴径へ噴霧することができる。他の圧力、例えば約1300psi〜約2200psiでは、界面活性剤を含有する溶液または懸濁液のほうが純水よりも小さな液滴径へ噴霧することができる。いくらか強化された界面活性剤の噴霧圧の制御範囲では、界面活性剤は増粘剤を含有する溶液または懸濁液の液滴径に特に有意な影響を及ぼすことができる。例えば1500psiでの20%スクロース溶液31の平均液滴径は約14μmで水よりも大きくなり得るが、平均液滴径は0.1%Tween 80 32を含む20%スクロース溶液に関して約8μmで水よりも小さくなり得る。本発明の一実施形態では、噴霧された製剤の液滴径は、特定の微粒化圧で界面活性剤濃度の調節により制御される。例えば界面活性剤濃度を漸増させて調節すると、たとえ他のパラメータ、例えばオリフィス内径、増粘剤濃度、圧力、およびMFRが一定に維持されている場合でさえ、調整された液滴径をもたらすことができる。強化された界面活性剤の制御範囲は、関心対象の生物活性物質、界面活性剤、増粘剤の組合せについて経験的に決定することができる。
【0082】
生物活性材料の高圧噴霧乾燥に特に適した本発明の方法には、例えば、糖およびアミノ酸を含む生物活性材料の好ましい製剤を噴霧して液滴のミストを形成すること、および液滴を乾燥させて粉末粒子を形成することが含まれる。製剤は、「生物活性材料を噴霧乾燥するための製剤」の項に記載されるように、例えば約4重量%〜約10重量%の生物活性材料(または任意選択の記載ウイルス濃度)、約0.1mM〜約50mMのアミノ酸、および約0.5%〜約4%の糖から構成され得る。噴霧は高圧、例えば約200psi〜約5000psi、約800psi〜約1800psi、約1000psi〜約1500psi、または約1300psiであってよい。生物活性材料の高圧噴霧は、任意の適した液滴径を生成するが、好ましい液滴は約0.5μm〜約100μm、約1μm〜約50μm、約2μm〜約20μm、約7μm〜約18μmまたは約10μm〜約15μmの乾燥粉末粒子径を生成する。例えば、乾燥前の液滴径は、約1μm〜約200μm、約2μm〜約100μm、約3μm〜約30μm、約10μm〜約20μmまたは約15μmとなり得る。
【0083】
液滴径は、微粒化ガスおよび製剤の質量流量比(MFR)の影響を受け得る。図4Aのグラフの左側に示されるように、所与の微粒化圧に関して低いMFR条件下では、より大きな粒子が形成される。グラフの右側に示されるように、所与の微粒化圧に関して高いMFR条件下では、噴霧された液滴の乾燥でより小さな粉末粒子が形成される。この知見の1つの説明は、微粒化ガスの相対流量が高いほど、所与の流体流を小さい液滴に分裂させることができるというものであり得る。多くの場合、平均液滴径(および最終乾燥粒径)は、微粒化ガス圧力が一定のままである間に高圧噴霧される製剤の流速を調節することによって調整することができる。所望により、図4Bに示されるように、製剤の流れが一定に維持されている間に、加圧微粒化ガス流を変化させることによりMFRを変化させて液滴径を調節することができる。
【0084】
好ましい一実施形態では、製剤は加圧窒素ガスの微粒化流で高圧噴霧乾燥される。窒素ガス流での微粒化は、微粒化ガスを用いない直接高圧噴霧と比較して所与の圧力で液滴径を小さくするのに役立ち得る。窒素は比較的不活性であり、生物活性材料を例えば酸化から保護することができるという点で、加圧空気での微粒化にまさる利点がある。窒素は、水溶液中で酸を形成せず、水蒸気を保持する能力が大きいという点で、二酸化炭素にまさる利点がある。窒素は、これらも高圧噴霧乾燥法に用いることのできるヘリウムおよびアルゴンなど他の実質的に不活性なガスよりも廉価である。微粒化窒素での高圧噴霧に適切なノズルとしては、例えばデュアルチャネル微粒化ノズルおよび液体と微粒化ガスの交差部分がT字型のノズルが挙げられる。図4Bに示されるように、乾燥液滴の粒径は、一般に所与のMFRで微粒化圧が高くなるにつれて小さくなる。
【0085】
もう1つの好ましい実施形態では、生物活性材料は、有機溶媒の存在下で製剤として噴霧乾燥することができる。一般に製剤および溶媒は、高圧噴霧ガス、例えば窒素および/または二酸化炭素などとともにノズルから噴霧される。例えば製剤を、溶媒およびガスの個別入力とともに、入口が3つある起沸微粒化ノズルへ導入することができる。1つのノズル入口は、高圧噴霧微粒化ガス(例えば窒素もしくはCO2)専用であり、1つの入口は(液体)製剤および有効成分専用であり、もう1つの入口は液滴の蒸発挙動を改変する有機溶媒専用であってよい。メタノールおよび/またはエタノール(製剤と噴霧溶媒の合計に対して1〜50% v/vの濃度範囲)は、蒸発効率を改善することが見出されており、例えば粒子表面の形態、粉末粒径、および/または粒子密度に影響を及ぼす。これらの変更は、肺の奥までの送達の向上を目的とした、粉末の分散性および流動性の改善に役立ち得る。
【0086】
高圧噴霧乾燥法は、例えばより多量の製剤を噴霧することによりスケールアップすることができる。例えば多重スプレーノズルを用いることにより、高圧で噴霧することにより、高い製剤流速で噴霧することにより、および/またはより大きい内径のスプレーオリフィスから噴霧することにより、より多くの量を噴霧することができる。図5は、高圧スプレーノズル構成のいくつかの例を示す。図5Bは、オリフィス部に絞りのある高圧液体スプレーノズルを示す。例えば図5Aおよび5Cに示されるように、微粒化ノズルから噴霧すると、MFRは製剤の流速とともに変化し、その結果所与の微粒化ガス圧で液滴径が変化する。これは、液体の流速が増加するにつれて、微粒化ガスの流れが制限されるようになるためである。例えば図6に示されるように、250μmオリフィスから2500psiのガスで微粒化される製剤に関して、液体供給速度が増加するにつれて、液滴径は約30ml/分の液体流速で非線形的に増加し始める(プロット60)。これは液体の流れにより微粒化ガス流が制限される結果MFRが低下するためである。このような液滴径の急速な増加は、500μmオリフィスから1170psiガスで微粒化される製剤に関してプロット61に示されるように、オリフィス内径の大きな微粒化ノズルを用いることによって遅らせることができる。
【0087】
入口が3つあるスプレーノズルは、どのような機能構成をとることもできる。例えばノズルは、「T字」交差部分への入口を有するか、放射状に整列された入口を有するか、または入力流体を段階的に組合せることができる。図10Aは、ガス、製剤および溶媒がどのように組み合わされて、流体入口のT字交差部分を有するノズルからどのように噴霧されるかを示す。図10Bは、流体の放射状の導入および組合せを示す(図10Cは示されるように10Bの断面である)。図10Dは、ノズル出口でガス流で吸引される前に製剤および溶媒を予備的に組合せることを示す。
【0088】
剪断応力に感受性のある分子、粒子、および細胞の生物活性材料は、高圧で噴霧すると変性または失活することがある。この問題は、例えば増粘剤とともに噴霧することで減少させることができる。例えば図7は、噴霧乾燥の前後の抗体溶液のサイズ排除分析を示す。図7Aは噴霧前の抗体のサイズ排除クロマトグラフを示す。図7Bは有効量の増粘剤を加えずに噴霧した後の抗体のサイズ排除クロマトグラフを示し、グラフ中で凝集物70の量は約6倍増加し、フラグメント71の量は僅かに増加している。抗体の凝集物は、抗体タンパク質の剪断応力変性、および関連する抗体分子間の異常な疎水性相互作用によって低い比活性を有し得る。図7Cは、噴霧の前に溶液中に増粘剤を含めることにより凝集および断片化から保護された同じ抗体のサイズ排除クロマトグラフを示す。
【0089】
本発明のスプレーノズルは、所望の液滴の微細なミストを提供するように適合させることができる。ノズルは、例えば製剤を高圧で内径約50μm〜約500μm、約75μm〜約250μm、または約100μmのスプレーオリフィスへ供給する導管を有し得る。オリフィスの直径が大きいほど、例えば高い生産速度が得られるが、液滴径も大きくなり得る。ノズルは、アトマイザーとして構成することができる、すなわち、液滴の分散を支援するため加圧ガスを製剤流へ送る二次チャネルを備えることができる。ノズルには、例えば付加的流体(例えば溶媒)を流れへ混合するための付加的なチャネルを含めることができる。
【0090】
処理製剤は、ノズルから高圧で噴霧され、本発明の所望の粉末粒子へ容易に乾燥される微細な液滴を形成する。液滴は、例えば不活性温熱乾燥ガス流、200トル以下の真空、または冷凍流もしくは冷流体のプールへ噴霧することができる。液滴の平均径は、約2μm〜約200μm、約3μm〜約70μm、約5μm〜約30μm、または約10μmであり得る。液滴を例えば約−80℃〜約−200℃の気体または液体、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、または窒素の冷熱流中で凍結させる場合、液滴を昇華により乾燥させて液滴とほぼ同じ大きさであるが密度の低い(かつ空気動力学的な直径の低い)粒子を形成することができる。製剤の全固形分が多い場合は、乾燥粒子は例えばより大きくおよび/またはより高密度となり得る。
【0091】
液滴の乾燥
噴霧した液滴を乾燥させて粉末粒子を形成することができる。本発明の方法を用いて噴霧された液滴は、例えば過度の高温にせずに乾燥させて、高純度、高比活性、および高安定性の粒子を高い回収率で得ることができる。乾燥は、例えば温度、湿度、および/または圧力を制御された環境への曝露によるものであり得る。乾燥は、氷の昇華、真空乾燥、乾燥ガスとの接触、流動床での懸濁、乾燥チャンバーでの保持、および/または同種類によるものであり得る。一次乾燥には、一般に、例えば製剤の液滴から液体または氷水バルクを除去することが含まれる。二次乾燥には、一般に、例えば粒子から捕捉した水分および/または水和水を残留水分15パーセント、残留水分10パーセント、残留水分5パーセント、残留水分3パーセント、残留水分1パーセント以下のレベルまで除去することが含まれる。
【0092】
乾燥は、例えば湿度および/または温度に関して制御された乾燥ガス流へ液滴を噴霧することによるものであり得る。乾燥パラメータを制御して、例えば所望の活性、密度、残留水分、および/または安定性をもつ粒子を得るために必要な条件をもたらすことができる。乾燥パラメータは、処理要件、例えば乾燥時間、乾燥チャンバー保持時間、凝集予防などに適合する時間枠内で所望の粒子特性をもたらすように制御することができる。ガスは、例えば水蒸気を置換する窒素などの不活性ガス、および製剤の噴霧ミストから生じる他のガスであってよい。乾燥ガスは、例えば乾燥ガスの再利用を促進するため、高圧噴霧ガスと同じガスであってよい。ガスは、例えば水分を吸収し液滴の蒸発速度を速めるため、相対湿度の低い乾燥ガスであってよい。ガスは、例えば約10℃〜約90℃、約15℃〜約70℃、約25℃〜約60℃、または約35℃〜約55℃の温度に制御することができる。乾燥チャンバー入口での乾燥ガスの温度を制御して、乾燥チャンバー出口での乾燥ガス温度を約30℃〜約80℃、約40℃〜約60℃、または約50℃とすることができる。乾燥温度は、例えば粒子の空隙率、密度、安定性、および/または再構成時間の変化を避けるため、粒子構成物のガラス転移温度(Tg)より低く維持することができる。本発明の小さい粒径、噴霧の大きさ、噴霧の乱れ、および高い全固形分により、例えば多くの感受性生物活性材料を実質的に分解しない短い乾燥時間および低い乾燥温度が可能となる。
【0093】
液滴は、例えば噴霧されたミストまたは部分的に乾燥した粒子へ真空を適用することにより(気圧よりも低いガス圧、例えば200トル、約100トル、約50トル、約10トル以下)乾燥させることができる。真空乾燥は、例えば液滴から水を急速に「沸騰させる」または昇華させる上に、液滴の温度を下げるという利点がある。液滴の温度は、液体水から気体への相転移の間に潜熱が失われるにつれて低下する。従って、真空乾燥は、生物活性材料への熱応力を有意に低下させることができる。冷流体流中で凍結した、または乾燥工程中に潜熱の損失により凍結した液滴の場合、真空圧は水を固体氷相から気相へと直接昇華させて、フリーズドライ(凍結乾燥した)粒子が得られる。
【0094】
二次乾燥条件を用いて、例えば粒子の含水率をさらに下げることができる。粒子をチャンバー中で回収し、例えば真空(気圧より低い圧力)下で、約2時間〜約5日間、または約4時間〜約48時間、約20℃〜約99℃、約25℃〜約65℃、または約35℃〜約55℃の温度に保って、残留水分を減らすことができる。二次乾燥は、乾燥ガスの上昇気流をチャンバーに供給することにより加速されて粉末粒子の流動床懸濁液を生成することができる。残留水分の少ない粒子ほど、一般により優れた経時的貯蔵安定性を示す。二次乾燥は粉末粒子の残留水分が約0.5パーセント〜約10パーセント、または約5パーセント未満となるまで継続できる。残留水分値が非常に低いと、生物活性材料分子のなかには水和水分子の損失で変性するものもあり得る。この変性は、多くの場合、水素結合分子、例えば糖、ポリオール、および/またはポリマーを、処理製剤に供給することにより緩和することができる。
【0095】
本発明の粉末粒子は、例えば製品の取り扱い、再構成、および/または投与要件に適した大きさにすることができる。例えば吸入による鼻腔内送達投与のための生物活性材料の粉末粒子は約20μm〜約150μm以上で、吸入による肺の奥への送達のための粒子の約2μm〜約10μm(平均物理的直径)よりも大きくなり得る。再構成に時間がかかる製品の平均粒径を小さくして粒子の溶解を速くすることができる。フリーズドライ粒子の噴霧は、例えば残留固形分のケーキ構造を崩壊させることなく液滴から氷を除去することができるため、低密度であり得る。このような粒子は、例えばその小さな空気力学的半径のために吸入投与に容認される物理的に大きな径を有し得る。凍結乾燥粒子は、例えば液滴から乾燥させた粒子より大きく、凍結乾燥粒子の多孔性により迅速な再構成特性をなお保持することができる。本発明の凍結乾燥粉末粒子の平均物理的直径は、例えば約0.1μm〜約200μm、または約2μm〜約100μm、または約10μmであり得る。
【0096】
ウイルスまたは抗体以外の生物活性材料を含む製剤のスプレーミスト液滴の乾燥は、一般に上記のように進めることができる。好ましい実施形態では、生物活性材料製剤を高圧噴霧した液滴は、例えば約30℃〜約80℃の温度を有する乾燥ガスと接触する。乾燥ガス入口および乾燥ガス出口を有する乾燥チャンバーで液滴を乾燥させるのが好ましい。本発明の抗体を含有する高圧噴霧した液滴を乾燥させるために好ましい出口ガス温度は、約30℃〜約80℃、約40℃〜約60℃、または約50℃である。好ましい乾燥ガスとしては、空気または不活性ガス、例えば窒素が挙げられる。乾燥チャンバーにおいてさらなる液滴を乾燥させるため、例えば乾燥ガスを戻す前に水を除去することおよび温度を調節することにより、乾燥チャンバー出口からのガスを再利用することがさらに好ましい。生物活性材料製剤の乾燥粉末粒子は、乾燥チャンバーまたは他の回収容器から回収することができる。粉末粒子は、例えば吸入により、乾燥注射により、または再構成時の注射により、粉末粒子として投与することができる。
【0097】
粒子の平均サイズおよびサイズ均一性は、例えば噴霧パラメータを調節することにより、かつ/または乾燥パラメータを調節することにより制御することができる。例えば平均液滴径は、上記の「製剤の噴霧」の項に記載されるように、ノズルサイズ、溶液圧、溶液粘度、および溶液成分、などの影響を受け得る。平均粒径、およびサイズ分布は、粒子の収縮または凝集に影響を及ぼす乾燥条件、例えば凍結乾燥の使用、乾燥の完全性、正電荷の中和、乾燥中の粒子密度、乾燥速度、乾燥温度、および/または同等による影響を受け得る。粒子の平均サイズおよびサイズ均一性は、下記の「粒子の回収」の項に記載されるように選択することができる。
【0098】
粒子の回収
本発明の粉末粒子は、処理流から例えば沈降または濾過により物理的に回収することができる。噴霧乾燥処理中の生物活性材料活性(例えば抗体力価またはプラーク形成単位)の回収率は、回収された物質の物理的回収時に比活性(材料質量あたりの測定活性値)を掛けた積である。
【0099】
粉末粒子の物理的回収は、例えば噴霧乾燥装置に残留または放出された材料の量および粒径選択法により被った損失に依存し得る。例えば、生物活性材料を含有する材料は、配管内、および噴霧乾燥装置の表面で失われることがある。溶液または粒子は、処理中に失われることがあり得る。例えば望ましくない噴霧液滴の凝集が大きくなって処理流から脱落する場合か、または小さな液滴が乾燥して極めて小さい粒子となり、収集チャンバーを通過して処理廃ガス流中に入る場合である。本発明の工程収率(入力生物活性材料が処理工程を経て回収される割合)は、例えば約40パーセント〜約98パーセント、約90パーセント以上となり得る。
【0100】
所望の平均サイズおよびサイズ範囲の粒子は、例えば濾過、沈降、衝撃吸収、および/または他の当分野で公知の手段により選択することができる。粒子は、均一な孔径をもつ1つ以上のフィルターで選別することによりサイズ分類することができる。大きな粒子は、液体またはガスの移動流中で粒子の懸濁から落下させることにより分離することができる。小さな粒子は、大きな粒子が沈降する速度で液体またはガスの移動流中で押し流されることにより分離することができる。大きな粒子は、運動量の少ない粒子を運び去る復帰ガス流からの面衝撃により分離することができる。
【0101】
活性のある生物活性材料の回収は、例えば噴霧乾燥処理中に経験する物理的損失、物質の破壊、変性、凝集、断片化、酸化、および/または同等の現象による影響を受け得る。本発明の方法は、例えば剪断応力を低下させ、乾燥時間を減らし、乾燥温度を下げ、および/または安定性を高める噴霧乾燥技術を提供することにより、先行技術よりも改良された生物活性の回収を提供する。例えば、本発明の方法により噴霧乾燥されたモノクローナル抗体は、初期製造時および4℃で約7年間まで保存した後にも、凝集および断片化を4パーセント未満とすることができる。本発明の方法は、高圧噴霧前の製剤中の同じ生物活性材料と比較して活性または生存率が実質的に変わらない生物活性材料を有する乾燥粉末を提供することができる。
【0102】
生物活性材料の投与
本発明の生物活性材料は、適切な場合には、例えば哺乳類へ投与できる。本発明の生物活性材料としては、例えばペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ウイルス、細菌、抗体、細胞、リポソーム、および/または同等物が挙げられ、本明細書に定義される通りである。このような物質は、例えば消化管吸収、局所適用、吸入、および/または注射により患者への投与に利点をもたらすことのできる治療薬、栄養剤、ワクチン、医薬品、予防薬、および/または同等物として作用することができる。所望により、細胞または組織を本発明の生物活性材料と接触させて生物学的効果または応答をもたらすことができる。
【0103】
生物活性材料は、局所適用により患者へ投与することができる。例えば患者の皮膚への投与のため、粉末粒子を軟膏、軟膏担体、および/または浸透剤と直接混合することができる。あるいは、適用前に他の成分と混合する前に、粉末粒子を例えば水性溶媒で再構成してもよい。
【0104】
本発明の生物活性材料は、吸入により投与することができる。空気力学的直径約10μm以下の乾燥粉末粒子は、肺投与のために肺へ吸入され得る。所望により、空気力学的直径約20μm以上の粉末粒子を鼻腔内または上気道に投与し、そこで患者の粘膜への衝撃により空気流から放出させることができる。あるいは水性のミストとして吸入投与するために、粉末粒子を懸濁液または溶液へ再構成してもよい。
【0105】
本発明の生物活性材料は、注射により投与することができる。粉末粒子は、例えば高圧の空気噴射を用いて直接患者の皮下へ投与できる。より一般には、粉末粒子を例えば中空注射針での注射用に滅菌水性バッファーで再構成することができる。このような注射は、必要に応じて例えば筋肉内、静脈内、皮下、くも膜下腔内、腹腔内などに行うことができる。本発明の粉末粒子は、用量および取り扱い事項に合わせて約1mg/ml未満〜約500mg/ml、または約5mg/ml〜約400mg/ml、または約200mg/mlの生物活性材料濃度の溶液または懸濁液へ再構成することができる。再構成された粉末粒子は、例えば多重ワクチン接種、点滴静注による投与などのために、さらに希釈することができる。
【0106】
本発明の組成物
本発明の組成物は、一般に本発明の方法を用いて調製された乾燥粉末中の、抗体などの生物活性材料である。組成物の目的用途に適合させるため、本明細書に記載されるように、生物活性材料、処理段階、処理パラメータ、および組成物成分の多数の組合せが利用できる。
【0107】
本発明の組成物は、例えば、上記「方法」の項に記載されるように、生物活性材料(例えば治療用抗体またはワクチン)および増粘剤からなる水性製剤を調製する段階、製剤をノズルから高圧で噴霧して微細な液滴のミストを形成する段階、液滴を乾燥させて粉末粒子を形成する段階、および粒子を回収する段階により作出される、生物活性材料を含有する粉末粒子を提供する。組成物の特定の実施形態では、粉末粒子は200mg/ml溶液、400mg/ml溶液、またはそれ以上の濃縮溶液へ再構成することのできる生物活性材料として抗体を含み、この抗体の凝集物またはフラグメントは約3パーセント未満である。本発明の組成物には、例えば高純度および高比活性の生物活性材料の安定な粉末粒子および高度に濃縮された溶液が含まれる。ウイルス生物活性材料を含有する粉末粒子は、ウイルス、スクロース、および界面活性剤からなる懸濁液を高圧噴霧することにより調製することができる。ウイルスの粒子組成物は、約101TCID50/mL〜約1012TCID50/mL、または約106TCID50/mL〜約109TCID50/mLの量で存在するウイルスを含む液体製剤から加工される場合が多い。本発明の乾燥粉末粒子組成物にはウイルスが例えば約101TCID50/gから1012TCID50/g以下の量で存在することができる。乾燥粉末粒子組成物にはウイルスが例えば約101TCID50/g、約102TCID50/g、約103TCID50/g、約104TCID50/g、約105TCID50/g、約106TCID50/g、約107TCID50/g、約108TCID50/g、約109TCID50/g、約1010TCID50/g、または約1011TCID50/gの量で存在することができる。
【0108】
粉末粒子
本発明の粉末粒子は、本発明の処理製剤の乾燥液滴である。粒子は、例えば糖、アミノ酸、界面活性剤、ポリオール増粘剤および/またはポリマー増粘剤などの賦形剤の乾燥マトリックス中の安定な生物活性材料が含まれる。粒子の平均物理的直径(サイズ)は、例えば約0.1μm〜約200μm、約1μm〜約100μm、約2μm〜約30μm、約4μm〜約20μmまたは15μm、あるいは約7μm〜約10μmである。生物活性材料は、粉末粒子中に賦形剤に関して重量比で例えば約1/100未満〜約100/1、約1/5〜約5/1、または約2/3〜約3/2、または約1/1の比で存在することができる。一実施形態では、本発明の粉末粒子は平均直径約5μmであり、約55重量パーセントの抗体、約15重量パーセントのアルギニン、約2重量パーセントのポリビニルピロリドン、約33重量パーセントのスクロース、および約5%の水分を含む。もう1つの実施形態では、本発明の組成物は、約55重量パーセントの抗体、約21重量パーセントのアルギニン、約1重量パーセントのポリビニルピロリドン、約14重量パーセントのスクロース、および約5%の水分を含む乾燥粉末粒子を含む。もう1つの実施形態では、乾燥粉末粒子組成物は、例えば生弱毒ウイルス約0.01重量%、約15パーセントのアルギニン、70パーセントのポリオール、および5パーセント未満の水分を含む。
【0109】
生物活性材料
組成物(粉末粒子)の生物活性材料としては、例えば抗体、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ウイルス、細菌、細胞、リポソーム、および/または同等物が挙げられ、本明細書に定義される通りである。本発明の粉末粒子中の生物活性材料は、例えばその調製の際に使用される剪断応力が低く、乾燥温度が低く、保護的な賦形剤を含み、および乾燥時間が短いことにより、粉末粒子の乾燥時に高純度かつ高活性であり得る。生物活性材料は、例えば初期処理分解が少ないことおよび組成物の賦形剤に保護的な面があることにより、粉末粒子中で安定している。組成物の生物活性材料は、例えば粒子の表面積対体積比の高いことおよび組成物の賦形剤によりもたらされる溶解度の向上により分解されずに高濃度で再構成することができる。
【0110】
本発明に従う高圧噴霧乾燥のための製剤は、例えば本発明の生物活性材料を約1mg/ml未満〜約400mg/ml、約5mg/ml〜約200mg/ml、または約50mg/mlの量で含む。本発明の乾燥粉末粒子中の生物活性材料は、例えば約0.1重量パーセント未満〜約80重量パーセント、約40重量パーセント〜約60重量パーセント、または約50重量パーセントの量で存在することができる。再構成された組成物の生物活性材料は、例えば約0.1mg/ml未満〜約500mg/ml、約5mg/ml〜約400mg/ml、約100mg/ml〜約300mg/ml、または約200mg/mlの濃度で存在することができる。本発明の一態様において、生物活性材料は、噴霧される懸濁液中に、約2log FFU/ml〜約12log FFU/ml、または乾燥粉末粒子1グラムあたり約3log FFU(フォーカス形成単位)〜13log FFUの力価で存在するウイルスである。
【0111】
増粘剤
本組成物の増粘剤としては、例えば本発明の溶液または懸濁液を高圧で噴霧する際の剪断応力に対し生物活性材料に保護をもたらすことのできる、ポリオールおよび/またはポリマーが挙げられる。増粘剤は、最終的に粉末粒子バルクのかなりの部分となって、付加的な利点をもたらすことができる。例えば、粒子中の増粘剤は、例えば乾燥で失った水和水分子の代わりとなる水素結合を提供することにより生物活性材料を安定化させるのを助けること、高濃度でのより迅速な再構成のために粒子の溶解度を高めること、ガラス状のマトリックスを提供して反応速度を遅らせること、および不安定化分子(酸素など)が生物活性材料と接近するのを物理的に遮断することができる。
【0112】
増粘剤として有用なポリオールは、例えば組成物の目的用途に適合するべきである。例えばヒトへの注射を目的とする粒子中の増粘剤は、一般に安全と認識されるべきである。増粘ポリオールとしては、例えばトレハロース、スクロース、ソルボース、メレジトース、グリセロール、フルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、パラクトース、グルコース、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、トレイトール、ソルビトール、ラフィノース、および/または同等物が挙げられる。非還元糖は、例えば生物活性材料がペプチドである場合に、側鎖の化学修飾を避けるために一般に推奨される。
【0113】
増粘剤として有用なポリマーとしては、例えばデンプン、デンプン誘導体、カルボキシメチルデンプン、イヌリン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、デキストラン、デキストリン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒト血清アルブミン(HSA)、ゼラチン、および/または同等物が挙げられる。多くのポリマーは、例えば重量による溶液中の粘度がポリオールよりも高いので、低い濃度で適切な剪断応力保護を提供できる場合が多い。
【0114】
増粘剤は、噴霧乾燥前の本発明の製剤中に約0.1重量パーセント〜約20重量パーセント、約2重量パーセント〜8重量パーセント、または約6重量パーセントの量で存在することができる。多くの実施形態では、ポリオール増粘剤は製剤中に約2〜6重量パーセントで存在するのに対し、ポリマー増粘剤は約0.5〜2重量パーセントで存在する。増粘剤は、製剤の粘度を約5%以上、または0.05センチポイズ以上増加させるのに十分な濃度で本発明の製剤中に存在することが好ましい。
【0115】
他の賦形剤
本発明の組成物は、適切な特性および利点を提供するさらなる賦形剤(例えば溶媒または生物活性材料でないもの)を含むことができる。例えば、組成物は界面活性剤、双性イオン、バッファーなどを含むことができる。
【0116】
界面活性剤を、例えば組成物成分の溶解度を高めるため、および/または表面張力を低下させるために、本発明の製剤中に含めることができる。界面活性剤は、例えば特定の生物活性材料を荷電基または水素結合基で包囲することによりその生物活性材料の懸濁液または溶解度を高めることができる。界面活性剤は、例えば水にさらすことによる賦形剤マトリックスの溶解を加速させることにより、粉末粒子の再構成に役立ち得る。表面張力を低下させることにより、界面活性剤は、生物活性材料によっては噴霧中の液滴の空気/液体界面で生じることのある凝集および構造変化を減らすことができる。製剤の界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、またはポリエチレンおよびポリプロピレングリコールのブロックポリマー、例えばTween 80、Tween 20、またはプルロニックF68などの任意の適切な界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、製剤中に約0.01重量パーセント〜約2重量パーセント、約0.02重量パーセント〜0.5重量パーセント、約0.1重量パーセント〜0.3重量パーセント、または約0.2重量パーセントの量で存在することができる。界面活性剤は、上記のように、液滴径および粒径の制御に利点をもたらすことができる。
【0117】
アミノ酸などの双性イオンを、例えば生物活性材料または界面活性剤の荷電基の対イオンとして組成物中に含めることができる。これらの対イオンが存在すると、例えば生物活性材料を非変性構造のまま保持する助けとなり、凝集を防ぎ、荷電した生物活性材料の処理装置の表面への吸着を阻害することができる。双性イオンは、例えば脱アミド化反応から生物活性材料を保護する助けとなり、酸化防止剤として働き、pH緩衝能を提供することができる。本発明の双性イオンとしては、例えばアルギニン、ロイシン、ヒスチジン、グリシン、および/または同等物が挙げられる。双性イオンは、本発明の粉末粒子中に全固形分の約0.1パーセント〜約20パーセント、約0.5パーセント〜約15パーセント、約1パーセント〜約10パーセント、または約7パーセントの量で存在することができる。
【0118】
バッファーを、例えばpHを制御するため、製品安定性を増加させるため、および/または投与の快適性を高めるために本発明の組成物に含めることができる。組成物のバッファーとしては、例えばリン酸、炭酸、クエン酸、グリシン、アミノ酸、酢酸などが挙げられる。
【0119】
以下の実施例は例証のために提供されるものであり、特許請求の範囲に記載する発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0120】
抗体の高圧噴霧乾燥
抗体は、一般に所望の粉末粒子を提供するために次の条件下で高圧噴霧乾燥される。約1〜2ml/分で流れる約8%モノクローナル抗体の製剤を、150μmノズルから1300psiで15〜25ml/分の窒素流とともに乾燥チャンバーへ噴霧する。乾燥チャンバー(Buchi 191モデル)は、60℃〜80℃のチャンバー入口から40℃〜60℃の出口への30m3/hr窒素乾燥ガス流(24℃にて3〜7% RH)を有する。
【0121】
水溶液製剤を、8重量パーセントのRSVに対するモノクローナル抗体、2重量パーセントのスクロース、0.2重量パーセントのPVP、10mMのヒスチジン、0.5重量パーセントのアルギニン、および0.2重量パーセントのTween−20をpH6.0で含むように調製する。製剤をノズルから約1300psiで噴霧して平均直径約10μmの液滴を提供する。液滴を、入口温度約60℃から出口温度約45℃の乾燥窒素ガス流中で乾燥させて平均直径約4μmおよび水分5パーセント未満の粉末粒子を生成する。粉末粒子をまず抗体濃度が200mg/mLまで、凝集物およびフラグメント合計が3パーセント未満の溶液へ再構成する。
【0122】
水溶液製剤を、8重量パーセントのαvβ3インテグリンに対するモノクローナル抗体、2重量パーセントのスクロース、pH6.0の10mMのヒスチジン、0.5重量パーセントのアルギニン、および0.2重量パーセントのTween−80を含むように調製する。製剤をノズルから約1300psiで噴霧して平均直径約10μmの液滴を提供する。液滴を、入口温度約60℃から出口温度約45℃の乾燥窒素ガス流中で乾燥させて平均直径約4μmおよび水分5パーセント未満の粉末粒子を生成する。
【0123】
水溶液を、8重量パーセントのモノクローナル抗体、6重量パーセントのスクロース、0.2重量パーセントのPVP、および2重量パーセントのアルギニンを含むように調製する。溶液をノズルから約1150psiで噴霧して平均直径約10μmの液滴を提供する。液滴を、約60℃〜約45℃の温度の乾燥窒素ガス流中で乾燥させて、平均直径約4μmおよび残留水分5パーセント未満の粉末粒子を生成する。粉末粒子をまず抗体濃度が500mg/mLまで、凝集物およびフラグメント合計が3パーセント未満の溶液へ再構成した。図8は、高濃度で再構成され、50℃で9日間以上保存した後の抗体を示す。粉末粒子は安定した状態を保ち、傾向分析は4℃で約7年以上または25℃で約1.5年の保存で凝集物は3パーセント未満との安定性を予測している。
【0124】
高圧噴霧乾燥製剤に関する安定性の別の例では、水溶液を、8重量パーセントのモノクローナル抗体、6重量パーセントのスクロース、0.002%のTween 20、および2重量パーセントのアルギニンを含むように調製する。この溶液を、ノズルから約1300psiで、乾燥チャンバー出口温度が約45℃の入口窒素乾燥ガス温度約60℃へ噴霧した。安定性データは、乾燥粉末粒子が4℃で6年を超える保存または25℃で約2年の保存後の付加的な凝集物を約1.5%しか形成しないことを示す。
【0125】
別の例では、張度の低い、速溶性の製剤を高圧噴霧乾燥して安定な粉末粒子を調製する。1300psiで、乾燥チャンバー出口温度が約45℃の温度約60℃の入口窒素乾燥ガスへ微粒化窒素とともに高圧噴霧するための水溶液を、8重量パーセントのモノクローナル抗体、2重量パーセントのスクロース、0.008%のTween 20、および0.5重量パーセントのアルギニンを含むように調製した。乾燥粉末は室温で回転振盪を用いて、僅か10分間の溶解時間で180mg/mlの抗体濃度まで再構成された。このような製剤には、迅速に注射の準備ができ、注射部位での痛みおよび刺激を減らすという実用的な利点がある。安定性データは、4℃で2年を超えて保存すると乾燥粉末中に2%の付加的な凝集物が形成されることを示している。
【実施例2】
【0126】
生ウイルスの高圧噴霧乾燥
処方物AVO47r(5%スクロース、2%トレハロース、10mMメチオニン、1%アルギニン、0.2%プルロニックF68、50mM KPO4、pH7.2)中の約7.5log FFU/mlの生インフルエンザウイルスからなる水溶液を調製し、1300psiで入口温度55℃の乾燥チャンバーへ高圧噴霧した。乾燥粉末を再構成しても有意な生存率低下は示されず、力価は約7.5log FFU/mLであった。生存率が1log低下するために、製剤は温度を増した保存温度37℃で23日間を要した。
【実施例3】
【0127】
高圧噴霧乾燥システム
高圧噴霧乾燥システムには、例えば製剤を高圧スプレーノズルへ送達するための高圧ポンプシステム、ならびに、液滴および粒子を調整ガス流で運ぶための噴霧乾燥システムが含まれ得る。図9に示されるように、生物活性材料を含む製剤90は、高圧ポンプ92を用いて保持容器から高圧スプレーノズル91へ運ばれる。ガス供給源93からの高圧ガスは高圧ガスポンプ94を介して送り込まれて粒子形成容器96中で製剤を液滴の微細なミストスプレー95へ微粒化する。温度制御ガス97をファン98によりスプレーから水蒸気を置換する流れに引き込み、液滴95を乾燥させて粉末粒子99とする。粉末粒子99は、残留水分を許容レベルまで除去する二次乾燥チャンバー100へ運ばれる。粉末粒子生成物は、回収用の乾燥チャンバー100の底部の収集容器101へ沈降した。
【0128】
高圧噴霧は、高圧ノズルからの直接の高圧噴霧、ガス噴射を用いるスプレーの微粒化、および/または冷流体への高圧噴霧など、当分野で公知の様々な方法で達成することができる。高圧噴霧のためには、HPLCポンプなどの高圧ポンプによるか、または保持容器へ高圧ガスを適用することにより、製剤をノズルへ供給すればよい。微粒化噴霧のためには、加圧ガスをスプレー出口オリフィスの近傍の出口から放出させて、噴霧される液滴をさらに崩壊および分散させればよい。噴霧凍結乾燥のためには、粒子形成容器中の冷ガスまたは冷液(例えば約−80℃以下)へ液滴を噴霧すればよい。
【0129】
温度制御ガスでの液滴の乾燥には、噴霧ガスの置換および温度、湿度、および/または圧力の制御されたガス中への水の蒸発が含まれ得る。ファン98はガス流97を液滴スプレー95へ引き込み、水蒸気、および/または揮発性溶液成分などの噴霧ガスを置換することができる。温度調節器102は、ガスが粒子形成容器96に入る前に温度を調節する加熱器または冷房装置であり得る。ガスは湿度調節器103(コンデンサーコイルまたは乾燥剤)を流過して水分を除去することができる。収集容器と流体接触させた真空ポンプは、乾燥チャンバーからガスを除去し、液滴からの蒸発を速めるかまたは凍結液滴を凍結乾燥することができる。乾燥ガスは、フィルター、乾燥器、熱交換器、活性炭床、または粒子形成および乾燥チャンバーを経たガスを再生利用するために回復させるための他の装置を通ることができる。処理ガスは、閉じられた導管システム中で再循環することができ、またはシステムを環境制御チャンバー内に封入することができる。例えば、再生利用ループには、環境制御チャンバーを含めることができる、例えば噴霧乾燥システム全体を環境チャンバーに収容することができる。再循環ガス中の温度センサーおよび湿度センサーは、加熱、冷却、および/または湿度管理装置を調節するために適合させることができる。
【実施例4】
【0130】
抗体アミノ酸配列
本発明は、1994年8月15日出願のJohnsonらの米国特許第5,824,307号、「Human−Murine Chimeric Antibodies Against Respiratory Syncytial Virus」;Johnson Sら、「Development of a Humanized Monoclonal Antibody(MEDI−493)with Potent In Vitro and In Vivo Activity Against Respiratory Syncytial Virus.」J.Infect Dis.1997 Nov;176(5):1215−24;2001年1月26日出願のYoungらの米国特許第6,656,467号、「Ultra High Affinity Neutralizing Antibody」;2001年11月28日出願のYoungの米国特許出願公開第20030091584号、Methods of Administering/Dosing Anti−RSV Antibodies for Prophylaxis and Treatment」;1999年6月24日出願のHuseらの米国特許第6,531,580号「Anti−αvβ3 Recombinant Human Antibodies and Nucleic Acids Encoding Same」;2002年11月25日出願のHuseらの米国特許出願第20030166872号、「Anti−αvβ3 Recombinant Human Antibodies,Nucleic Acids Encoding Same and Methods of Use」;Wu,H.ら「Stepwise In Vitro Affinity Maturation of Vitaxin,an αvβ3−Specific Humanized mAb」,Proc Natl Acad Sci U S A.1998 May 26;95(11):6037−42;および、2003年5月12日出願のKinchらの米国特許出願公開第20040091486号、「EphA2 Agonistic Monoclonal Antibodies and Methods of Use Thereof」に開示された抗体の噴霧乾燥を含む。これらの参照文献の各々は、参照によりその全文を本明細書に組み入れる。
【0131】
次の表には、本発明の製剤および方法に有用な抗体に好ましいアミノ酸配列が収載されている。
表2―抗体のアミノ酸配列
【0132】
A)抗RSV抗体の配列は、出願番号20030091584号に公開されているように、次の配列のうちの1つ以上を含み、B)抗αvβ3抗体の配列は米国特許第6,531,580号に公開されているように、次の配列のうちの1つ以上を含む。
【表2】

【0133】
本発明の製剤および方法で用いる好ましいRSVに対する抗体としては、CDR1配列番号1または9、CDR2配列番号2または11、および/またはCDR3配列番号3または12を含む重鎖ペプチド配列;あるいはその保存的変異体を含む抗体が挙げられる。さらに好ましいRSVに対する抗体としては、配列番号7または14のペプチド配列を含む重鎖可変領域、あるいはその保存的変異体が挙げられる。
【0134】
本発明の製剤および方法で用いる好ましいRSVに対する抗体としては、CDR1配列番号4または13、CDR2配列番号5、および/またはCDR3配列番号6を含む軽鎖ペプチド配列;あるいはその保存的変異体を含む抗体が挙げられる。さらに好ましいRSVに対する抗体としては、配列番号8または10のペプチド配列を含む軽鎖可変領域、あるいはその保存的変異体が挙げられる。
【0135】
本発明の製剤および方法で用いる最も好ましいRSVに対する抗体としては、CDR1配列番号1または9、CDR2配列番号2または11、および/またはCDR3配列番号3または12を含む重鎖ペプチド配列を含む抗体;かつ、CDR1配列番号4または13、CDR2配列番号5、および/またはCDR3配列番号6を含む軽鎖ペプチド配列を含む;あるいはその保存的変異体を含む抗体が挙げられる。
【0136】
インテグリンαvβ3に対する抗体に関して、本発明の製剤および方法で用いる好ましい抗体としては、CDR1配列番号15、CDR2配列番号17、および/またはCDR3配列番号18を含む重鎖ペプチド配列を含む抗体;あるいはその保存的変異体が挙げられる。αvβ3に対する好ましい抗体としては、CDR1配列番号19、CDR2配列番号20、および/またはCDR3配列番号16を含む軽鎖ペプチド配列;あるいはその保存的変異体を含む抗体が挙げられる。最も好ましい抗体は、CDR1配列番号15、CDR2配列番号17、およびCDR3配列番号18を含む重鎖ペプチド配列;ならびにCDR1配列番号19、CDR2配列番号20、およびCDR3配列番号16を含む軽鎖ペプチド配列;あるいはその保存的変異体を含む。
【実施例5】
【0137】
溶媒とともに噴霧するための製剤
下のデータ表には、EtOH噴霧乾燥処理で用いた製剤の組合せが記載される。
【表3】

【0138】
本明細書に記載される実施例および実施形態は単に例証目的のためのものであり、それを踏まえて種々の改変および変更が当業者に示唆されるが、それらも本出願の精神および範囲および添付の請求項の範囲内にあることは当然理解される。
【0139】
前記の発明は明確に理解できるように多少詳細に記載したが、本開示を一読すれば本発明の真の範囲を逸脱することなく形態および細部において種々の変更が可能であることは当業者に自明である。例えば上記のあらゆる技術および装置は必要以上の実験をせずに種々の組合せで用いることができる。
【0140】
本願で引用した全ての刊行物、特許、特許出願、および/または他の文献は、各個別の刊行物、特許、特許出願、および/または他の文献が参照によりあらゆる目的において組み込まれると個別に示されているのと同程度に、参照によりその全開示内容をあらゆる目的において組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】高圧で噴霧した溶液と低圧で噴霧した溶液の質量流量比(MFR)に対する液滴径を比較したグラフである。
【図2】ガスの相転移の臨界温度および圧力点を示すグラフである。
【図3】増粘剤および/または界面活性剤を含有する溶液の微粒化圧に対する液滴径を示すグラフである。
【図4】AおよびBはそれぞれ質量流量比および微粒化圧に対する乾燥粉末粒径を示すグラフである。
【図5】典型的な高圧噴霧ノズルの概略図である。
【図6】圧力と微粒化ノズルオリフィス内径の組合せについて液体流速に対する液滴径を示すグラフである。
【図7】高圧噴霧乾燥法での変性を増粘剤が防止することを示すクロマトグラフ図である。
【図8】本発明の再構成された組成物の高純度、高濃度、および高安定性を示すクロマトグラフ図である。
【図9】典型的な高圧噴霧乾燥システムの概略図である。
【図10】A〜Dは、入口が3つある典型的な高圧噴霧ノズルの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体またはワクチンを噴霧乾燥するための製剤であって、
約4重量%〜約10重量%の抗体またはワクチン抗原;
約0.1mM〜約50mMの1種類以上の合計アミノ酸;
約0.5重量%〜約4重量%の糖;および
水;
を含み、噴霧乾燥して粉末粒子を形成することのできる、製剤。
【請求項2】
抗体がIgGを含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
抗体がモノクローナル抗体を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
抗体が、RSV、hMPV、インテグリン、avb3インテグリン、avb5インテグリン、αIIb/β3インテグリン、α4インテグリン、EphA2、EphA4、EphB4、IL9、IL4、IL5、IL13、IL15、CTLA4、PSA、PSMA、CEA、cMET、C5a、TGF−β、HMGB−1、インターフェロンα、インターフェロンα受容体、IFNβおよびγ、キチナーゼ、TIRC7、T細胞、MT−103BiTE(商標)、EpCam、Her2/neu、IgE、TNF−α、VEGF、EGF、EGF受容体、CD22、CD19、Fc、LTA、Flk−1、およびTie−1からなる群から選択される抗原に特異的親和性をもつモノクローナル抗体を含む、請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
抗体が、配列番号1〜20のいずれかのペプチド配列、またはその保存的変異体を含む、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
RSVに特異的親和性をもつ抗体が、配列番号1または9の重鎖CDR1ペプチド配列、配列番号2または11のCDR2ペプチド配列、および配列番号3または12のCDR3ペプチド配列;配列番号7または14の重鎖可変領域ペプチド配列;あるいはその保存的変異体を含む、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
RSVに特異的親和性をもつ抗体が、配列番号4または13の軽鎖CDR1ペプチド配列、配列番号5のCDR2ペプチド配列、および配列番号6のCDR3ペプチド配列;配列番号8または10の軽鎖可変領域ペプチド配列;あるいはその保存的変異体を含む、請求項5に記載の製剤。
【請求項8】
インテグリンに特異的親和性をもつ抗体が、配列番号15の重鎖CDR1ペプチド配列、配列番号17のCDR2ペプチド配列、および配列番号18のCDR3ペプチド配列;配列番号19の軽鎖CDR1ペプチド配列、配列番号20のCDR2ペプチド配列、および配列番号16のCDR3ペプチド配列;またはその保存的変異体を含む、請求項5に記載の製剤。
【請求項9】
ワクチンが、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、肺炎連鎖球菌、RSV、パラインフルエンザウイルス(PIV)、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)、EphA2、ヒトパピローマウイルス(HPV)、HPV−16、HPV−18、サイトメガロウイルス(CMV)、インフルエンザウイルス、風疹、麻疹、流行性耳下腺炎、炭疽菌、ボツリヌス中毒症、エボラ、水痘、帯状疱疹、天然痘、ポリオ、黄熱病、B型肝炎、リフトバレー熱、結核、髄膜炎、汎発性インフルエンザ、鳥インフルエンザ、アデノウイルスおよびニューモシスチス・カリニからなる群から選択されるウイルスまたはウイルス抗原を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項10】
製剤が、約8重量%の抗体またはワクチン抗原を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項11】
1種類以上のアミノ酸が、約1mM〜約20mMのヒスチジン、約0.5重量%〜約2重量%のロイシンまたは約0.1重量%〜約2重量%のアルギニンを含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項12】
1種類以上のアミノ酸が、約10mMのヒスチジンおよび約30mMのアルギニンまたは約1重量%のロイシンを含む、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
糖が、スクロース、トレハロースまたはマンニトールを含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項14】
製剤が、約2重量%の糖を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項15】
約0.01%〜約0.2%のポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートまたはポリエチレングリコールソルビタンモノラウレートをさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項16】
約0.5%〜約0.05%のポリビニルピロリドンをさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項17】
製剤が、約8重量%の抗体、約10mMのヒスチジン、約0.5%のアルギニンおよび約2%のスクロースを含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項18】
製剤が、約8重量%の抗体、約1%のロイシン、約1%のマンニトールおよび約2%のスクロースを含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項19】
約6のpHをさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項20】
粉末粒子が、高圧噴霧乾燥により形成される、請求項1に記載の製剤。
【請求項21】
請求項1の製剤から噴霧乾燥された粉末粒子。
【請求項22】
再構成すると1mlあたり約200mgの抗体濃度となる、請求項1に記載の粉末粒子。
【請求項23】
ワクチンを噴霧乾燥するための製剤であって、前記製剤が
液体製剤中に約103TCID50/mL〜約1012TCID50/mLの量で存在するウイルスまたはウイルス抗原;
約0.1mM〜約50mMの1種類以上の総アミノ酸;
約0.5重量%〜約4重量%の糖;および、
水;
を含み、噴霧乾燥して粉末粒子を形成することのできる、製剤。
【請求項24】
治療用抗体を噴霧乾燥するための製剤であって、前記製剤が
配列番号1〜20のいずれかのペプチド配列またはその保存的変異体を含む1以上の治療用抗体;
1種類以上のアミノ酸;
糖;および、
水を含む、製剤。
【請求項25】
抗体またはワクチンを含む粉末粒子を調製する方法であって、前記方法が
約4重量%〜約10重量%の抗体または液体製剤中に約103TCID50/mL〜約1012TCID50/mLの量で存在するウイルスもしくはウイルス抗原、
約0.1mM〜約50mの1種類以上の合計アミノ酸、および
約0.5重量%〜約4重量%の糖を含む水性製剤を調製する段階と;
製剤をノズルから高圧で噴霧し、それにより微細な液滴のミストを形成する段階と;
液滴を乾燥させて粉末粒子を形成する段階と;
粒子を回収する段階とを含む、方法。
【請求項26】
製剤が約8重量%の抗体を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
抗体が、RSV、hMPV、avb3インテグリン、avb5インテグリン、αIIb/β3インテグリン、α4インテグリン、EphA2、EphA4、EphB4、IL9、IL4、IL5、IL13、IL15、CTLA4、PSA、PSMA、CEA、cMET、C5a、TGF−β、HMGB−1、インターフェロンα、インターフェロンα受容体、IFNβおよびγ、キチナーゼ、TIRC7、T細胞、MT−103BiTE(商標)、EpCam、Her2/neu、IgE、TNF−α、VEGF、EGF、EGF受容体、CD22、CD19、Fc、LTA、Flk−1、Tie−1からなる群から選択される抗原に特異的親和性をもつモノクローナル抗体を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
ワクチンが、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、肺炎連鎖球菌、RSV、パラインフルエンザウイルス(PIV)、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)、EphA2、ヒトパピローマウイルス(HPV)、HPV−16、HPV−18、サイトメガロウイルス(CMV)、インフルエンザウイルス、風疹、麻疹、流行性耳下腺炎、炭疽菌、ボツリヌス中毒症、エボラ、水痘、帯状疱疹、天然痘、ポリオ、黄熱病、B型肝炎、リフトバレー熱、結核、髄膜炎、汎発性インフルエンザ、鳥インフルエンザ、アデノウイルス、およびニューモシスチス・カリニからなる群から選択されるウイルスまたはウイルス抗原を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
抗体が、配列番号1〜20のいずれかのペプチド配列、またはその保存的変異体を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
RSVに特異的親和性をもつ抗体が、配列番号1または9の重鎖CDR1ペプチド配列、配列番号2または11のCDR2ペプチド配列、および配列番号3または12のCDR3ペプチド配列;配列番号7または14の重鎖可変領域ペプチド配列;あるいはその保存的変異体を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
RSVに特異的親和性をもつ抗体が、配列番号4または13の軽鎖CDR1ペプチド配列、配列番号5のCDR2ペプチド配列、および配列番号6のCDR3ペプチド配列;配列番号8または10の軽鎖可変領域ペプチド配列;またはその保存的変異体を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
インテグリンに特異的親和性をもつ抗体が、配列番号15の重鎖CDR1ペプチド配列、配列番号17のCDR2ペプチド配列、および配列番号18のCDR3ペプチド配列;配列番号19の軽鎖CDR1ペプチド配列、配列番号20のCDR2ペプチド配列、および配列番号16のCDR3ペプチド配列;またはその保存的変異体を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
1種類以上のアミノ酸が、約10mMのヒスチジン、約1%のロイシンまたは約0.5%のアルギニンを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
糖が約2%のスクロースを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
高圧が、約800psi〜約1800psiの圧力を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項36】
高圧が、約1300psiの圧力を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
液滴の直径の範囲が約3μm〜約30μmである、請求項25に記載の方法。
【請求項38】
前記乾燥が、出口を有する粒子形成容器中で液滴を乾燥ガスと接触させる段階を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項39】
粒子形成中の出口温度が、約40℃〜約60℃の温度を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
乾燥ガスが、出口から出た後に再利用される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
平均粉末粒径が、約2μm〜約10μmである、請求項25に記載の方法。
【請求項42】
粉末粒子の、1ミリリットルあたり約200mgの抗体を含有する溶液または懸濁液への再構成をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項43】
再構成した溶液または懸濁液をヒト患者へ投与する段階をさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記噴霧が、ノズル中で製剤と有機溶媒を組み合わせることを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項45】
抗体が配列番号1〜20のいずれかのペプチド配列、またはその保存的変異体を含み;
糖がスクロースを含み;かつ、
粒子乾燥中の乾燥ガスの出口温度が、約40℃〜約60℃の温度を含む、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−505192(P2008−505192A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527797(P2007−527797)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/020792
【国際公開番号】WO2005/123131
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(503306054)メッドイミューン バクシーンズ,インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】