説明

生物移動水路側溝

【課題】里山や耕地に生息している小動物や生物類は採食や繁殖のためすみなれた土地を移動するとき、農業用水路や側溝水路に行当り転落することがよくあり、これを救出するための誘導水路を提供する。
【解決手段】水路を形成する側溝ブロックEに誘導水路を形成するためL字形ブロックBを添接して誘導水路を形成し、この誘導水路に水路工事現場で採取した排土と乾燥粘土を混合し、これによって脱出用の傾斜面の盛土を形成する。これにより転落した小動物や生物はすみなれた土の臭いや感触を覚えており、これに誘われて誘導水路内に入り脱出が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は山野や荒地あるいは耕地に生息している小動物や生物等が目的をもって移動している際に、農業用水路や道路側溝等に行当り、又は遮られたとき、一旦水路に落下転落しても這い上ることが出来ることで新しい移動地に移ることのできる生物移動水路側溝に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用水路や道路側溝等に誤って転落した小動物等の脱出をうながすための水路等についてはいくつかの技術が開発されている。そしてこれらは側溝脇に脱出用の側溝を設けたもので多くは段状か坂道によって形成されている。
【特許文献1】実開平06−79883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、これら脱出用の側溝はコンクリート2次製品で階段をつくるか傾斜道を作っているが水量が多いときなどは仲々這い上れない。また傾斜面に土を敷いて植生を図る脱出用の水路も見られるが、前記のように水量が多いときには、土も流されて手掛りもなくなる。そして転落した小動物が、このような側路に救われるのはきわめて偶然にすぎない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
小動物や生物は、このような水路に誤って転落することは少く、その殆どは環境が適さなくなったことや、採食や生殖の問題で移動を余儀なくされていることにある。発明者はこの点に鑑み鋭意研究を続けた結果本発明に到達したものであって、本発明は、従来からの脱出用の水路に加えて、水路底や這い上る傾斜面に現場発生土を用いて盛土をし、これのみでは水流による流出のおそれがあるため、乾燥粘土を混合して搗き固めて水路底面や傾斜面を形成し、防水層を作る。また周辺に植生を促し、その周辺環境に適応することにある。
【0005】
このように本発明において現場発生土を用いることは、この地に生息している小動物や生物が残した臭いや接触環境に頼るため水中にあったとしても、この位置の存在に気付くことが出来て、誘導水路に導かれ這い上る可能性が高い。
【0006】
さらにこの誘導効果を高めるために誘導水路に布片や植生マットを配置することによって、この効果は更に高められる。そして植生マットは盛土の吸い出し防止になる。また先の盛土に使用する現場発生土と乾燥粘土との混合比は1:1が適当である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上述のように水路に誘導水路を設けて、底面及び傾斜面に盛土して現場発生土を用いることによって、水路に落ちた小動物や生物が、この棲みなれた臭いに引かれ、環境を感じて誘導水路にたどりつき這い上ることができ、小動物や生物の移動が行えるため、生物環境を破壊することなく自然を守ることができるという自然保護に卓越した作用効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
添付図面により、本考案を実施するための最良の形態を説明すると、図1は、本発明の生物移動水路側溝の誘導水路(1)の平面図であって、Aは水路を形成する側溝ブロックを示し、Bは誘導水路(1)を形成するL字形ブロックである。
図2は誘導水路(1)の断面図を示し、図3は水路を形成する側溝ブロックA,Aの接続部分で、両ブロックA,A間に誘導水路(1)に通じる空間(2)を設ける。図4は水路の片側に誘導水路(1)を設けた平面図を示している。即ち、図1は請求項1及び2の平面図であり、図4は請求項3の平面図を示している。また誘導水路(1)の勾配は目的
に合せて自由に設定できる。
【実施例1】
【0009】
添付図面の図1及び図2により本発明の請求項1に記載の実施例を説明すると、既設側溝Eは荒地と耕地の境に敷設されている農業用の水路であって幅員は90cmのU字形コンクリートブロックである。この側溝ブロックEの接続部分80cmを両側壁及び底面を切除して空隙部分を形成する。そして、この空隙部分の側部の両側にL字形コンクリート
ブロックBを配置する。この配置手段はL字形ブロックの短辺部(1)を側溝ブロックEの切欠部に当接させるように密着配置すると、L字形ブロックの長辺側の内側と既設ブロックEの外側の間で誘導水路(1)が形成される。
【0010】
この形成された誘導水路(1)の既設側溝内と誘導水路Bの接続部には平面状に、さらに誘導水路(1)の平面部から出口側Dにかけては傾斜面を形成するための盛土をする。
【0011】
この盛土は、水路施工現場で掘出した現場発生土と乾燥粘土を1:1の割合で混合した混合土を搗き固めて形成する。このとき現場発生土を使用する理由は、この周辺に生息している小動物、生物等が臭いや環境等に親しみ易いためであり乾燥粘土を使用することは防水性を保つことによる。そしてこの表面に植生マットを敷設して完成させる。この植生
マットは盛土の吸い出し防止材となる。
【実施例2】
【0012】
請求項2に記載の実施例で、新設の水路形成により実施例であって図1及び図2を参照する。施工に当って使用する側溝ブロックEは幅60cm、高さ120cm、長さ3mのU字形ブロックである。水路の総延長は約900mであって、その中間に2ヶ所の誘導水路を設ける。水路の形成に当っては、誘導水路設置場所のU字形ブロックEに対して次の
ブロックE1を敷設する際に間隙を設けて設置する。この間隙を60cmとし、この間隙空間を請求項1の切除することによって形成した空隙部分とし、以下請求項1の工法と同様にL字形ブロックBを両側に設置して誘導水路Bを形成し、盛土を施工して完成させる。
【実施例3】
【0013】
請求項3に記載の実施例で、側溝ブロックEの片側側壁端及びこれに相当する底面を80cm長さ切除することによって空隙部が形成される。そしてこの空隙部の側面にL字形コンクリートブロックを配置する。このL字形ブロックの配置手段は、前記実施例と同様に図示するようにL字形コンクリートブロックの短辺部を側溝ブロックEの切欠部に当接させて配置し、すると、L字形ブロックの長辺部の内側と側溝ブロックEの外側との間に誘導水路(1)が形成される。しかる後この誘導水路Bに前記各実施例同様に盛土を施工することによって既設側溝による水路の右岸或は左岸に本発明の誘導(脱出)水路が形成される。そしてこのような誘導水路を水路の上流又は下流に数ヶ所間隔を置いて設置することによって小動物・生物の移動を援助する効果は現われる。
【0014】
図5に示すブロックは変形のL字形コンクリートブロックB1で、このブロックB1はL字形の長辺の底部に支持板(3)を設けたブロックである。このL字形ブロックB1は誘導水路として構成した際には、この支持板(3)を盛土の下に設けることによって盛土の崩れを防ぐ役目をなし、常に水量の多い水路や水流の激しい水路などに必要に応じて使
用して効果をあげる。
【0015】
請求項4及び5の実施例については、特に図示していないが、誘導水路の傾斜面や側壁表面に水路に親和性のよい布やメッシュ、不織布等の小片を敷設することや垂下懸吊させて小動物がつかまりやすくするか、生物が付着しやすくすることとする。
【産業上の利用可能性】
【0016】
上述の如く本発明は小動物や生物の移動をし易いように考えているため、自然の生態系を損うことなく環境を保全できるため環境保護のため、本発明の水路の利用価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1,2の誘導水路の平面図
【図2】誘導水路の断面図
【図3】誘導水路の側面図
【図4】実施例3の誘導水路の平面図
【図5】特殊L形ブロックの斜視図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側溝ブロックの対向する両側壁及び底面を切除して空隙部を形成し、該切除部の両側壁の外側部にL字形ブロックの短辺部分を当接して側溝ブロック側壁外側とL字形ブロックの内側部によって誘導水路を形成し、該誘導水路底部から出口にかけて施工現場発生土と乾燥粘土の混合土によって、盛土を行い、展圧して傾斜面を形成し、底部空隙部にも前記盛土を行って底面を形成することを特徴とした生物移動水路側壁。
【請求項2】
接続して埋設する側溝ブロックを間隙を設けて設置し、該間隙のある両側壁の外側部にL字形ブロックの短辺部分を当接して、L字形ブロックの内側と側溝ブロックの側壁外側によって誘水通路を形成し、該誘導水路底部の底部から出口にかけて施工現場発生土と乾燥粘土の混合土によって、盛土を行い、展圧して傾斜面を形成し、底面空隙部にも前記盛土を行い底面を形成することを特徴とした生物移動水路側壁。
【請求項3】
側溝ブロックの片側側壁及びこれに相当する底面を切除して空隙部を形成し、該切除部の側壁外側にL字形ブロックの短辺部を当接して、L字形ブロックの内側と側溝ブロックの側壁外側によって誘導水路を形成し、該誘導水路の底部から出口にかけて施工現場発生土と乾燥粘土の混合土によって、盛土を行い、展圧して傾斜面を形成し、底部空隙部にも前記盛土を行って底面を形成することを特徴とした生物移動水路側壁。
【請求項4】
誘導水路を形成するL字形ブロックBにおいてL字形の長辺に支持板(3)を設けた変形L字形ブロックB1を用いたことを特徴とした請求項1,2又は3に記載の生物移動水路側溝。
【請求項5】
生物移動底面の盛土面に布メッシュ、不織布、植生マット等の植物親和性物を敷設することを特徴とした請求項1,2又は3に記載の生物移動水路側壁。
【請求項6】
L字形ブロックによって形成された誘導水路の側壁内面に凹凸面を設けて布メッシュ、不織布等の小片を接着させることを特徴とした請求項1,2又は3に記載の生物移動水路側壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−280952(P2009−280952A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288096(P2007−288096)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(397010653)
【Fターム(参考)】