説明

生物組織薄切片作製法及び粘着性プラスチックフィルム

【課題】パラフィン等で包埋した生物試料から、皺、収縮、損壊等がなく、形状の保たれた大きくて薄い生物組織薄切片をスライドグラス上に作製する。
【解決手段】有機溶媒に容易に溶解する粘着剤を、水に容易に溶解するプラスチックフィルム上に塗布して作製した粘着性プラスチックフィルムをパラフィン等で包埋した生物試料の所定面に貼り付け、所定の刃物により粘着性プラスチックフィルムを貼り付けた状態で、所定の厚さの薄切片を作製する。次いで、粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた薄切片をスライドグラスに密着し、粘着性プラスチックフィルムと薄切片が密着したスライドグラスから、まず基材のプラスチックフィルムを水で溶解除去し、次いで薄切片に付着した粘着剤と試料包埋剤のパラフィンを有機溶媒で溶解除去し、生物組織薄切片のみをスライドグラス上に残す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラフィン等で包埋した生物試料から薄い薄切片をスライドグラス上に作製するのに好適な生物組織薄切片作製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生命科学の研究では、組織機能を解明するために光学顕微鏡による組織の観察が必要で、より正確な組織像を観察するために、形状(例えば、組織の形や各組織の位置関係)が正確に保たれた薄い薄切片標本をスライドグラス上に作製しなくてはならない。従来の方法では、生物試料を包埋したパラフィンブロックをミクロトームで切削し、その薄切片をスライドグラスに密着することにより薄切片標本を作製している。しかし、この薄切片作製の切削工程で、薄切片に、皺、収縮、損壊等が発生するために組織の形態や形状が保たれた薄い薄切片をスライドグラス上に作製することが困難で、特に大きくて薄い(例えば、大きさ30mm×40mmで、厚さ2μm程度)薄切片を作製することができなかった。この問題を解決するために、粘着テープで薄切片を粘着支持することにより薄切片を作製する方法が、特開平9−281011号公報に提案されている。その方法では、粘着テープを薄切面に密着した状態で薄切片を採取し、次いで粘着テープに貼り付いた薄切片と粘着テープの両者をスライドグラスに密着した後、粘着テープを引き剥がすことにより薄切片をスライドグラスに残すようにしている。この方法では、粘着テープを引き剥がす際に、薄切片の一部が粘着テープと共に剥離し、薄切片が損壊する欠点がある。この問題を解決するために、本願発明者によって、特開2004−37434号公報に生物組織薄切片作製方法と薄切片支持用粘着性プラスチックフィルムが提案されている。提案された粘着性プラスチックフィルムは、薄くて透明なプラスチックフィルム上に有機溶媒に浸漬すると容易に溶解する粘着剤で粘着層を形成したものである。その粘着性プラスチックフィルムを薄切片の支持材として用いて作製した薄切片を、粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態でスライドグラスに密着した後、スライドグラスを有機溶媒に浸漬して粘着性プラスチックフィルムの粘着剤を溶解除去することにより、薄切片からプラスチックフィルムを剥離除去し、皺、収縮、損壊等のない薄切片をスライドグラス上に作製する方法が記載されている。しかし、この方法では、プラスチックフィルムがスライドグラスに強く密着しているため、プラスチックフィルムとスライドグラスの間隙への有機溶媒の浸透が妨げられ、粘着剤の溶解除去に長い時間(半日以上)を必要とする欠点がある。
【特許文献1】 特開平9−281011号公報
【特許文献2】 特開2004−37434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記に述べているように、従来の方法では、パラフィン包埋試料から、皺、収縮、損壊等がなく、組織の形態や形状が良好に保たれた大きな生物組織薄切片(例えば、大きさ30mm×40mm程度)、あるいは薄い生物組織薄切片(例えば、厚さ2μm程度)をスライドグラス上に効率よく作製することができなかった。
【0004】
本発明は、この問題を解決するために、水と有機溶媒で容易に溶解除去できる粘着性プラスチックフィルムを薄切片の支持材として用いて、パラフィン等で包埋した試料からスライドグラス上に生物組織薄切片を効率よく作製する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、第一発明は、水あるいは有機溶媒で溶解除去できる粘着性プラスチックフィルムを、パラフィン包埋した生物試料の薄切面に貼り付け、粘着性プラスチックフィルムを貼り付けた状態で、包埋試料を刃物で切削することにより薄切片を作製し、その粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた薄切片をスライドグラスに密着する。
【0006】
次いで、粘着性プラスチックフィルムと薄切片が貼り付いたスライドグラスから、まずプラスチックフィルムを水にいれて溶解除去し、次いで薄切片に付着している粘着剤と包埋剤であるパラフィンの両者を有機溶媒で溶解除去し、生物組織薄切片のみをスライドグラス上に作製する。
【0007】
また、第二発明は、有機溶媒で溶解する粘着剤を水溶性プラスチックフィルム上に塗布することにより、水溶性プラスチックフィルム上に粘着層を形成した粘着性プラスチックフィルムを、パラフィン包埋した生物試料の薄切面に貼り付け、粘着性プラスチックフィルムを貼り付けた状態で、パラフィン包埋試料から刃物で、皺、収縮、損壊等のない薄切片を作製する。
【0008】
次いで、粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた薄切片をスライドグラスに密着した後、まず粘着性プラスチックフィルムと薄切片が貼り付いたスライドグラスから水溶性プラスチックフィルムを水にいれて取り除き、次いで薄切片が貼り付いたスライドグラスを有機溶媒に浸漬して、薄切片に付着している粘着剤と包埋剤であるパラフィンの両者を溶解除去することにより、皺、収縮、損壊等のない生物組織薄切片を効率よくスライドグラス上に作製する。
【0009】
また、第三発明は、樹脂等で包埋した生物試料、あるいは水溶性包埋剤で凍結包埋した試料から薄切片をスライドグラス上に作製するために、包埋試料の薄切面に、有機溶媒で容易に溶解する粘着剤で水溶性プラスチックフィルム上に粘着層を形成した粘着性プラスチックフィルムを貼り付け、粘着性プラスチックフィルムを貼り付けた状態で、包埋試料を刃物で切削することにより薄切片を作製する。そして、粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた薄切片をスライドグラスに密着した後、まず粘着性プラスチックフィルムと薄切片が貼り付いたスライドグラスから水溶性プラスチックフィルムを水にいれて取り除き、次いで薄切片が貼り付いたスライドグラスを有機溶媒に浸漬して、薄切片に付着している粘着剤を溶解除去することにより、樹脂包埋された生物組織薄切片をスライドグラス上に効率よく作製する。
【0010】
また、第四発明は、非水溶性プラスチックフィルム上に密着した水溶性プラスチックフィルムの上に有機溶媒で溶解する粘着剤を塗布することにより、水溶性プラスチックフィルム上に粘着層を形成した粘着性プラスチックフィルムを、パラフィン包埋した試料の薄切面に貼り付けた状態で、パラフィン包埋試料から皺、収縮、損壊等のない薄切片を作製する。
【0011】
次いで、粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた薄切片をスライドグラスに密着した後、まず粘着性プラスチックフィルムと薄切片が貼り付いたスライドグラスから非水溶性プラスチックフィルムを取り除き、次いで水中に浸漬することにより水溶性プラスチックフィルムを取り除き、その後、薄切片に残存した粘着性プラスチックフィルムの粘着剤と包埋剤であるパラフィンの両者を有機溶媒で溶解除去することにより、皺、収縮、損壊等のない生物組織薄切片をスライドグラス上に効率よく作製する。
【0012】
また、第五発明は、粘着性プラスチックフィルムをパラフィン等の包埋剤で包埋した生物試料の薄切面に貼り付けて薄切片を作製し、粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた状態の薄切片をスライドグラスに密着した後、粘着性プラスチックフィルムのプラスチックフィルムを水で溶解除去し、次いで粘着剤とパラフィンを有機溶媒で溶解除去して薄切片のみをスライドグラスに残すことにより生物組織薄切片をスライドグラス上に作製するために、有機溶媒で容易に溶解する粘着剤を、水で容易に溶解する透明なプラスチックフィルムの片側に塗布してプラスチックフィルム上に粘着層を形成し、その上に粘着面を保護するための剥離紙を密着してテープ状、あるいはシート状の粘着性プラスチックフィルムを作製する。使用時に薄切面の大きさに切断し、切断した粘着性プラスチックフィルムから剥離紙を取り除いて薄切片支持用として使用できる粘着性プラスチックフィルムを作製する。
【0013】
また、第六発明は、粘着性プラスチックフィルムをパラフィン等の包埋剤で包埋した生物試料の薄切面に貼り付けて薄切片を作製し、粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた状態の薄切片をスライドグラスに密着した後、粘着性プラスチックフィルムの基材であるプラスチックフィルムを水で溶解除去し、次いで粘着剤とパラフィンを有機溶媒で溶解除去して薄切片のみをスライドグラスに残すことにより生物組織薄切片をスライドグラス上に作製する操作過程の作業を容易に、しかも効率よく実施するために、有機溶媒で容易に溶解する粘着剤を、水で容易に溶解するプラスチックフィルムの片面上に塗布して、プラスチックフィルム上に粘着層を形成し、次いで、粘着層の上に帯状の薄いプラスチックフィルムを所定の間隔で密着して粘着性を有する領域と粘着性の無い領域を設け、粘着性の無い領域で挟まれる粘着性を有する領域の長さが上記包埋試料の薄切方向の長さとほぼ等しくし、その上に粘着面を保護するための剥離紙を密着する。使用時に薄切面の大きさに切断し、切断した粘着性プラスチックフィルムから剥離紙を取り除いて薄切片支持用として使用できる粘着性プラスチックフィルムを作製する。
【0014】
また、第七発明は、粘着性プラスチックフィルムをパラフィン等の包埋剤で包埋した生物試料の薄切面に貼り付けて薄切片を作製し、粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた状態の薄切片をスライドグラスに密着した後、粘着性プラスチックフィルムの基材であるプラスチックフィルムを水に入れてから取り除き、次いで粘着剤とパラフィンを有機溶媒で溶解除去して薄切片のみをスライドグラスに残すことにより生物組織薄切片をスライドグラス上に作製する操作過程の作業を容易に、しかも効率よく実施するために、非水溶性プラスチックフィルム上に密着した水溶性プラスチックフィルムの上に有機溶媒で容易に溶解する粘着剤を塗布することにより、水溶性プラスチックフィルム上に粘着層を形成し、その粘着層の上に剥離紙を密着することによりテープ状、又はシート状の粘着性プラスチックフィルムを作製し、使用時に適当な大きさに切断した後、粘着性プラスチックフィルムから剥離紙を取り除いて使用する粘着性プラスチックフィルムを作製する。
【0015】
また、第八発明は、粘着性プラスチックフィルムをパラフィン等の包埋剤で包埋した生物試料の薄切面に貼り付けて薄切片を作製し、粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた状態の薄切片をスライドグラスに密着した後、粘着性プラスチックフィルムの基材であるプラスチックフィルムを水に入れてから取り除き、次いで粘着剤とパラフィンを有機溶媒で溶解除去して薄切片のみをスライドグラスに残すことにより生物組織薄切片をスライドグラス上に作製する操作過程の作業を容易に、しかも効率よく実施するために、非水溶性プラスチックフィルム上に水溶性プラスチックフィルムを密着し、その上に有機溶媒で容易に溶解する粘着剤を塗布することにより、水溶性プラスチックフィルム上に粘着層を形成し、粘着層の上に帯状の薄い非水溶性プラスチックフィルムを所定の間隔で密着して、粘着性を有する領域と粘着性の無い領域を設け、粘着性の無い領域で挟まれる粘着性を有する領域の長さが請求項4に記載した包埋試料の薄切方向の長さとほぼ等しくなるようにした粘着性プラスチックフィルム上に剥離紙を密着し、使用時に適当な大きさに切断し、次いで、切断した粘着性プラスチックフィルムから剥離紙を取り除いて使用する粘着性プラスチックフィルムを作製する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は以上に説明した構成により、次のような効果を奏する。
第一発明及び第二発明によれば、第五発明及び第六発明の粘着性プラスチックフィルムを薄切片支持材として用いることにより、パラフィン等で包埋した生物試料から、皺、収縮、損壊等がなく、形態や形状が保たれた厚さ2〜10μmの薄切片を効率よく作製できる。そして、その粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた薄切片をスライドグラスに密着した後、スライドグラスを水中に放置することにより、まずプラスチックフィルムを水で溶解除去し、次いで有機溶媒に浸漬することにより粘着剤とパラフィンの両者を溶解除去することができるために、薄切片支持材として用いた粘着性プラスチックフィルムを、組織試料に損壊を生じさせないで完全に除去することができるので、形状の保たれた生物組織薄切片のみをスライドグラス上に確実に残すことができる。これらの効果により、皺、収縮、損壊等がなく、形状の保たれた生物組織薄切片をスライドグラス上に効率よく作製することができる。
【0017】
第三発明によれば、第五発明及び第六発明の粘着性プラスチックフィルムを薄切片支持材として用いる事により、樹脂(例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂)で包埋した試料、あるいは水溶性包埋剤で凍結包埋した試料を薄切する際に、皺、収縮、損壊等がなく、形態や形状が保たれた薄い(例えば、厚さ2〜10μm)薄切片を効率よく作製できる。そして、その粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた薄切片をスライドグラスに密着した後、スライドグラスを水中に放置することにより、まずプラスチックフィルムを水で溶解除去し、次いで有機溶媒に浸漬することにより薄切片に付着した粘着剤を溶解除去することができるために、薄切片に損壊を与えないで、形状の保たれた薄切片をスライドグラス上に効率よく作製することができる。
【0018】
第四発明によれば、第七発明及び第八発明の粘着性プラスチックフィルムを薄切片支持材として用いることにより、水溶性プラスチックフィルムが非水溶性プラスチックフィルムで支持されているために、粘着性プラスチックフィルムの取扱が容易となり、パラフィン等で包埋した生物試料から、皺、収縮、損壊等がなく、形態や形状が保たれた厚さ2〜10μmの薄切片を効率よく作製できる。そして、その粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた薄切片をスライドグラスに密着した後、非水溶性プラスチックフィルムを取り除いてから、スライドグラスを水中に浸漬することにより水溶性プラスチックフィルムを除去し、次いで有機溶媒により粘着剤とパラフィンを溶解除去することができるために、薄切片支持材として用いた粘着性プラスチックフィルムを、組織試料に損壊を生じさせないで完全に除去することができ、形状の保たれた生物組織薄切片のみをスライドグラス上に確実に残すことができる。
【0019】
第五発明によれば、水溶性プラスチックフィルム上に有機溶媒で容易に溶解する粘着剤の層を形成し、その上に剥離紙を密着することにより作製したテープ状、あるいはシート状の粘着性プラスチックフィルムを包埋試料の薄切面の大きさに切断し、切断した粘着性プラスチックフィルムから剥離紙を取り除いて薄切片支持材として用いる構成になっているために、皺、収縮、損壊等のない薄い薄切片を作業性良く作製することができる。しかも薄切片の支持に用いる粘着性プラスチックフィルムの溶解除去では、最初に基材の水溶性プラスチックフィルムを水で溶解除去する構成となっているために、薄切片が貼り付いた粘着性プラスチックフィルムを水に浸漬することにより、プラスチックフィルムが水で溶解除去されて粘着層を露出することができる。その結果、粘着層と包埋剤であるパラフィンを有機溶媒で、容易に、確実に、しかも短時間(例えば、5分程度)で溶解除去できることになり、パラフィン等で包埋した生物試料から、形状が保たれ、損壊のない生物組織薄切片をスライドグラス上に確実に効率良く作製することができる。
【0020】
第六発明によれば、有機溶媒で容易に溶解する粘着剤の層を形成した水溶性プラスチックフィルム上に薄切片採取作業を容易に実施するための掴む領域として粘着力を有しない領域を設けてあり、その粘着性プラスチックフィルムを薄切片支持材として用いて薄切片を作製するため、皺、収縮、損壊等のない薄切片を作業性良く作製することができる。しかも薄切片支持に用いた粘着性プラスチックフィルムは、最初に基材のプラスチックフィルムを水で溶解除去する構成になっているために、薄切片が貼り付いた粘着性プラスチックフィルムを水に浸漬することにより、プラスチックフィルムを溶解除去して粘着層を露出することができる。その結果、粘着層と包埋剤であるパラフィンを有機溶媒(例えば、アルコール、キシレン等)で容易に、しかも確実に溶解除去できることになり、パラフィン等で包埋した生物試料から、形状が保たれ、損壊のない生物組織薄切片をスライドグラス上に作製する作業を効率よく実施することができる。
【0021】
第七発明によれば、非水溶性プラスチックフィルム上に密着した水溶性プラスチックフィルムの上に有機溶媒で容易に溶解する粘着剤の層を形成し、その上に剥離紙を密着することにより作製したテープ状、あるいはシート状の粘着性プラスチックフィルムを包埋試料の薄切面の大きさに切断し、切断した粘着性プラスチックフィルムから剥離紙を取り除いて薄切片支持材として用いる構成になっているために、皺、収縮、損壊等のない薄い薄切片を作業性良く作製することができる。しかも薄切片の支持に用いる粘着性プラスチックフィルムの除去では、非水溶性プラスチックフィルムを取り除いた後、水溶性プラスチックフィルムを水に入れて取り除く構成となっているために、基材の非水溶性プラスチックフィルムと水溶性プラスチックフィルムを完全に取り除くことができ、粘着層を露出することができる。その結果、粘着層と包埋剤であるパラフィンを有機溶媒で、容易に、確実に、しかも短時間(例えば、5分程度)で溶解除去できることになり、パラフィン等で包埋した生物試料から、形状が保たれ、損壊のない生物組織薄切片をスライドグラス上に確実に効率良く作製することができる。
【0022】
第八発明によれば、非水溶性プラスチックフィルム上に密着した水溶性プラスチックフィルムの上に有機溶媒で容易に溶解する粘着剤の層を形成し、その上に薄切片採取作業を容易に実施するための掴む領域として粘着力を有しない領域を設けてあり、その粘着性プラスチックフィルムを薄切片支持材として用いて薄切片を作製するため、皺、収縮、損壊等のない薄切片を作業性良く作製することができる。しかも薄切片支持に用いた粘着性プラスチックフィルムの除去では、非水溶性プラスチックフィルムを取り除いた後、水溶性プラスチックフィルムを水に入れて取り除く構成になっているために、薄切片に貼り付いた粘着性プラスチックフィルムを完全に取り除いて粘着層を露出することができる。その結果、粘着層と包埋剤であるパラフィンを有機溶媒(例えば、アルコール、キシレン等)で容易に、しかも確実に溶解除去できることになり、パラフィン等で包埋した生物試料から、形状が保たれ、損壊のない生物組織薄切片をスライドグラス上に作製する作業を効率よく実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施の形態について説明する。
【0024】
まず、本発明の概要について説明すると、本発明は、水あるいは有機溶媒で容易に溶解除去できる粘着性プラスチックフィルムを、パラフィン包埋した生物試料の薄切面に貼り付け、粘着性プラスチックフィルムを貼り付けた状態で、包埋試料を刃物で切削することにより薄切片を作製し、その粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた薄切片をスライドグラスに密着する。
【0025】
次いで、粘着性プラスチックフィルムと薄切片が貼り付いたスライドグラスから、まずプラスチックフィルムを水で溶解除去し、次いで薄切片が貼り付いたスライドグラスを有機溶媒に浸漬することにより、薄切片に付着している粘着剤と包埋剤であるパラフィンの両者を有機溶媒で溶解除去し、生物組織薄切片のみをスライドグラス上に残すことにより、生物組織薄切片をスライドグラス上に作製する。
【0026】
また、本発明は、有機溶媒で溶解する粘着剤を水溶性プラスチックフィルム上に塗布することにより、水溶性プラスチックフィルム上に粘着層を形成した粘着性プラスチックフィルムを、パラフィン包埋した生物試料の薄切面に貼り付け、粘着性プラスチックフィルムを貼り付けた状態で、パラフィン包埋試料から刃物で、皺、収縮、損壊等のない薄い薄切片を作製する。
【0027】
次いで、粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた薄切片をスライドグラスに密着し、粘着性プラスチックフィルムと薄切片が貼り付いたスライドグラスから、まずプラスチックフィルムを水で溶解除去し、次いで薄切片が貼り付いたスライドグラスを有機溶媒に浸漬して、薄切片に付着している粘着剤と包埋剤であるパラフィンの両者を有機溶媒で溶解除去することにより、皺、収縮、損壊等のない生物組織薄切片を効率よくスライドグラス上に作製する。
【0028】
また、本発明は、樹脂等で包埋した生物試料、あるいは水溶性包埋剤で凍結包埋した試料から薄切片をスライドグラス上に作製するために、包埋試料の薄切面に、有機溶媒で溶解する粘着剤で水溶性プラスチックフィルム上に粘着層を形成した粘着性プラスチックフィルムを貼り付け、粘着性プラスチックフィルムを貼り付けた状態で、包埋試料を刃物で切削することにより薄切片を作製する。そして、粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた薄切片をスライドグラスに密着した後、まず粘着性プラスチックフィルムと薄切片が貼り付いたスライドグラスからプラスチックフィルムを水で溶解除去し、次いで薄切片が貼り付いたスライドグラスを有機溶媒に浸漬して、薄切片に付着している粘着剤を有機溶媒で溶解除去することにより、樹脂包埋された薄切片をスライドグラス上に効率よく作製する。
【0029】
また、本発明は、有機溶媒で溶解する粘着剤を、非水溶性プラスチックフィルム上に密着した水溶性プラスチックフィルムの上に塗布することにより、水溶性プラスチックフィルム上に粘着層を形成した粘着性プラスチックフィルムを、パラフィン包埋した生物試料の薄切面に貼り付け、粘着性プラスチックフィルムを貼り付けた状態で、パラフィン包埋試料から刃物で、皺、収縮、損壊等のない薄い薄切片を作製する。
【0030】
次いで、粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた薄切片をスライドグラスに密着した後、まず粘着性プラスチックフィルムと薄切片が貼り付いたスライドグラスから非水溶性プラスチックフィルムを取り除き、次いで水中に浸漬することにより水溶性プラスチックフィルムを取り除き、次いで薄切片に残存した粘着性プラスチックフィルムの粘着剤と包埋剤であるパラフィンの両者を有機溶媒で溶解除去することにより、皺、収縮、損壊等のない生物組織薄切片を効率よくスライドグラス上に作製する。
【0031】
また、本発明は、粘着性プラスチックフィルムを、パラフィン等の包埋剤で包埋した生物試料の薄切面に密着して薄切片を作製し、粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた状態の薄切片をスライドグラスに密着した後、粘着性プラスチックフィルムのプラスチックフィルムを水で溶解除去し、次いで薄切片に付着している粘着剤と包埋剤であるパラフィンを有機溶媒で溶解除去して薄切片のみをスライドグラスに残すことにより生物組織薄切片をスライドグラス上に作製するために、有機溶媒で容易に溶解する粘着剤を、水で容易に溶解する薄くて透明なプラスチックフィルムの片側に塗布し、プラスチックフィルム上に粘着層を形成し、その上に粘着面を保護するための剥離紙を密着してテープ状、あるいはシート状の粘着性プラスチックフィルムを作製し、使用時に薄切面の大きさに切断し、切断した粘着性プラスチックフィルムから剥離紙を取り除いて、薄切片支持に使用できる粘着性プラスチックフィルムを作製する。
【0032】
また、本発明は、粘着性プラスチックフィルムを、パラフィン等の包埋剤で包埋した生物試料の薄切面に密着して薄切片を作製し、粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた状態の薄切片をスライドグラスに密着した後、粘着性プラスチックフィルムのプラスチックフィルムを水で溶解除去し、次いで薄切片に付着している粘着剤と包埋剤であるパラフィンを有機溶媒で溶解除去して生物組織薄切片のみをスライドグラスに残すことにより生物組織薄切片をスライドグラス上に作製する操作過程の作業を容易に、しかも効率よく実施するために、有機溶媒で容易に溶解する粘着剤を、水で容易に溶解するプラスチックフィルムの片面に塗布して、プラスチックフィルム上に粘着層を形成し、次いで粘着層の上に帯状の薄いプラスチックフィルムを所定の間隔で密着して粘着性を有する領域と粘着性の無い領域を設け、粘着性の無い領域で挟まれる粘着性を有する領域の長さが、包埋試料の薄切方向の長さとほぼ等しくし、その上に粘着面を保護するための剥離紙を密着した粘着性プラスチックフィルムを作製し、使用時に薄切面の大きさに切断し、そして剥離紙を取り除いて薄切片支持に使用できる粘着性プラスチックフィルムを作製する。
【0033】
また、本発明は、粘着性プラスチックフィルムを、パラフィン等の包埋剤で包埋した生物試料の薄切面に密着して薄切片を作製し、粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた状態の薄切片をスライドグラスに密着した後、粘着性プラスチックフィルムのプラスチックフィルムを水に入れてから取り除き、次いで薄切片に付着している粘着剤と包埋剤であるパラフィンを有機溶媒で溶解除去して薄切片のみをスライドグラスに残すことにより生物組織薄切片をスライドグラス上に作製するために、有機溶媒で容易に溶解する粘着剤を、非水溶性プラスチックフィルム上に密着した水溶性プラスチックフィルムの上に塗布して、水溶性プラスチックフィルム上に粘着層を形成し、その上に粘着面を保護するための剥離紙を密着してテープ状、あるいはシート状の粘着性プラスチックフィルムを作製し、使用時に薄切面の大きさに切断し、切断した粘着性プラスチックフィルムから剥離紙を取り除いて、薄切片支持に使用できる粘着性プラスチックフィルムを作製する。
【0034】
また、本発明は、粘着性プラスチックフィルムを、パラフィン等の包埋剤で包埋した生物試料の薄切面に密着して薄切片を作製し、粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた状態の薄切片をスライドグラスに密着した後、粘着性プラスチックフィルムのプラスチックフィルムを水にいれてから取り除き、次いで薄切片に付着している粘着剤と包埋剤であるパラフィンを有機溶媒で溶解除去して生物組織薄切片のみをスライドグラスに残すことにより生物組織薄切片をスライドグラス上に作製する操作過程の作業を容易に、しかも効率よく実施するために、有機溶媒で容易に溶解する粘着剤を、非水溶性プラスチックフィルム上に密着した水溶性プラスチックフィルムの上に塗布して、水溶性プラスチックフィルム上に粘着層を形成し、次いで粘着層の上に帯状の薄いプラスチックフィルムを所定の間隔で密着して粘着性を有する領域と粘着性の無い領域を設け、粘着性の無い領域で挟まれる粘着性を有する領域の長さが、包埋試料の薄切方向の長さとほぼ等しくし、その上に粘着面を保護するための剥離紙を密着した粘着性プラスチックフィルムを作製し、使用時に薄切面の大きさに切断し、そして剥離紙を取り除いて薄切片支持に使用できる粘着性プラスチックフィルムを作製する。
【0035】
次に具体的な実施例について説明する。包埋試料の薄切を実施する際に、薄切片の支持材として用いる粘着性プラスチックフィルムは、次の第1実施例又は第2実施例により作製する。
【0036】
・第1実施例
第1実施例における、粘着性プラスチックフィルムは、水溶性プラスチックフィルムあるいは非水溶性プラスチックフィルム上に密着した水溶性プラスチックフィルムの上に、有機溶媒で容易に溶解する粘着剤を塗布し、乾燥後、粘着面を保護するための剥離紙を密着する。使用時に包埋ブロックの薄切面の大きさに切断し、剥離紙を取り除いて薄切片支持用の粘着性プラスチックフィルムとして使用する。
【0037】
・第2実施例
第2実施例における、粘着性プラスチックフィルムの作製手順について、図1〜図5を参照して説明する。まず、図1及びその断面図である図2に示すように、透明な水溶性プラスチックフィルム2の上に、有機溶媒で容易に溶解する粘着剤1を塗布する。この際、図2の(B)で示すように、粘着性プラスチックフィルムの基材として、第2の非水溶性プラスチックフィルム7を密着した水溶性プラスチックフィルムを使用することもできる。粘着剤1の乾燥後、図1に符号4で示す粘着領域の幅が、図6に符号11で示す包埋試料ブロック10の薄切方向とほぼ同等の長さになるように、図1に符号5および符号6で示す幅の第1の非水溶性プラスチックフィルム3を粘着面に密着する。第1の非水溶性プラスチックフィルム3は、水又は有機溶媒に溶解するものも使用できるが、それらに溶解しないプラスチックフィルムが効率よく作業できる。次いで、図2に示すように剥離紙8を粘着性プラスチックフィルムの粘着面に密着する。使用時に図6に示すように、粘着性プラスチックフィルムの粘着面の大きさが、包埋試料ブロック10の薄切面の大きさとほぼ同等になるように、図3に示す切断線9にそって切断し、図4及びその断面図である図5に示す薄切片支持用の粘着性プラスチックフィルムを作製する。
【0038】
次に、上記で説明した薄切片支持用の粘着性プラスチックフィルムを用いて、パラフィン等で包埋した生物試料からスライドグラス上に生物組織薄切片を作製する生物組織薄切片作製法について、順に説明する。
i)上記の手順で作製した薄切片支持用の粘着性プラスチックフィルムを、図6に示すように包埋試料ブロック10の薄切面に貼り付ける。
ii)この状態で、所定の薄切用ナイフ13で切削することにより、図7に示すように薄切片が粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた状態で採れる。
iii)図8に示すように、粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた薄切片14を下に向けて温水15に浮かべ、次いでスライドグラス16で、すくい上げることにより薄切片14と粘着性プラスチックフィルムをスライドグラス16に密着する。これ以外の方法でも、粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた薄切片14を、スライドグラス16に確実に密着することができればよい。
iv)密着後、ホットプレート(35〜45℃)上に置いて乾燥することにより、薄切片14をスライドグラス16に密着する(図9)。第2の非水溶性プラスチックフィルム7を密着した水溶性プラスチックフィルムで作製した粘着性プラスチックフィルムを使用した場合、図9の(B)に示すように、乾燥後、第2の非水溶性プラスチックフィルム7をピンセット等で取り除く。
v)次いで、図10の(A)に示すように、粘着性プラスチックフィルムと薄切片14が密着したスライドグラス16を水18に入れることにより、図10の(B)に示すように粘着性プラスチックフィルムの基材である水溶性プラスチックフィルム2を溶解除去する。水溶性プラスチックフィルムの除去は、完全に溶解除去することもできるが、表面が溶解した時にピンセットで取り除くこともできる。
vi)次いで、図11の(A)に示すように、水溶性プラスチックフィルム2が除去されたスライドグラス16を有機溶媒I19(例えば、アルコール)に浸漬し、粘着剤1を溶解除去することにより、図11の(B)に示すように、スライドグラス16上に薄切片のみを残す。
vii)次いで、図12の(A)に示すように、水溶性プラスチックフィルム2と粘着剤1が溶解除去されたスライドグラス16を、有機溶媒II22に浸漬し、試料包埋剤20(例えば、パラフィン)を溶解除去することにより、図12の(B)に示すように生物組織薄切片21のみをスライドグラス16上に残す。この際、粘着剤1と試料包埋剤20を同時に溶解除去できる有機溶媒(例えば、キシレン)を使用することにより、粘着剤1と試料包埋剤20を同時に溶解除去することもできる。
viii)図12の(B)に示すように、薄切片から試料包埋剤20を溶解除去し、生物組織薄切片21のみを残したスライドグラス16を100%エタノール中に移す。
ix)次いで、スライドグラス16を水溶液中に移した後、研究目的に応じて染色する。
【0039】
上記の手順により、パラフィン等で包埋した試料から、各組織の位置関係を正確に保ち、さらに組織構造を良好に保った薄い(例えば、厚さ2〜10μm)生物組織薄切片を容易に、しかも効率よくスライドグラス上に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施の形態による粘着処理したプラスチックフィルムの平面図である。
【図2】図1のI−I線に沿う断面図で、(A)は水溶性プラスチックフィルムのみを基材として作製した粘着性プラスチックフィルムの断面で、(B)は非水溶性プラスチックフィルム上に密着した水溶性プラスチックフィルムを基材として作製した粘着性プラスチックフィルムの断面ある。
【図3】図1の粘着処理したプラスチックフィルムの切断個所を示す平面図である。
【図4】図3に示す切断線に沿って切断した粘着処理したプラスチックフィルムの平面図である。
【図5】図4のII−II線に沿う断面図で、(A)は水溶性プラスチックフィルムのみで作製した粘着性プラスチックフィルムの断面で、(B)は非水溶性プラスチックフィルムを密着した水溶性プラスチックフィルムで作製した粘着性プラスチックフィルムの断面ある。
【図6】図4の粘着性プラスチックフィルムから剥離紙を取り除き、粘着性プラスチックフィルムを包埋試料ブロックの薄切面に貼付した斜視図である。
【図7】図4の粘着性プラスチックフィルムを用いて、薄切片の作製を実施している状態を示す断面図である。
【図8】粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた薄切片を温水に浮かべ、スライドグラスに密着する状態を示す断面図である。
【図9】水溶性プラスチックフィルムで作製した粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた薄切片をスライドグラスに密着した状態を示す断面図(A)と、非水溶性プラスチックフィルムを密着した水溶性プラスチックフィルムで作製した粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた薄切片をスライドグラスに密着した後、非水溶性プラスチックフィルムを取り除く状態を示す断面図(B)である。
【図10】粘着性プラスチックフィルムと薄切片が密着したスライドグラスを水に入れて、水溶性プラスチックフィルムを除去している状態を示す断面図(A)と、水溶性プラスチックフィルムを除去した状態を示す断面図(B)である。
【図11】水溶性プラスチックフィルムを除去したスライドグラスから、粘着剤を有機溶媒Iで溶解除去している状態を示す断面図(A)と、粘着剤を除去した状態を示す断面図(B)である。
【図12】粘着性プラスチックフィルムを除去したスライドグラス上の薄切片から、試料包埋剤(例えば、パラフィン)を有機溶媒IIで溶解除去している状態を示す断面図(A)と、試料包埋剤を溶解除去してスライドグラス上に生物組織薄切片のみを残した状態を示す断面図(B)である
【符号の説明】
【0041】
1…粘着剤、2…水溶性プラスチックフィルム、3…第1の非水溶性プラスチックフィルム、4…粘着領域、5…非粘着域、6…非粘着域、7…第2の非水溶性プラスチックフィルム、8…剥離紙、9…切断線、10…包埋試料ブロック、11…包埋試料ブロックの縦(薄切方向)の長さ、12…包埋試料ブロックの横の長さ、13…薄切用ナイフ、14…薄切片、15…温水、16…スライドグラス、17…容器、18…水、19…有機溶媒I、20…試料包埋剤、21…生物組織薄切片、22…有機溶媒II

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒あるいは水で溶解する粘着性プラスチックフィルムを、パラフィン包埋した生物試料の薄切面に貼り付け、粘着性プラスチックフィルムを貼り付けた状態で、包埋試料を刃物で切削することにより薄切片を作製し、その粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた薄切片をスライドグラスに密着し、次いで粘着性プラスチックフィルムと薄切片が貼り付いたスライドグラスから、まず粘着性プラスチックフィルムのプラスチックフィルムを水で溶解除去し、次いで薄切片に付着して残存している粘着剤と包埋剤であるパラフィンの両者を有機溶媒で溶解除去し、生物組織薄切片のみをスライドグラス上に残すことを特徴とする生物組織薄切片作製法。
【請求項2】
有機溶媒で溶解する粘着剤を、水溶性プラスチックフィルム上に塗布することにより、水溶性プラスチックフィルム上に粘着層を形成した粘着性プラスチックフィルムを、パラフィン包埋した生物試料の薄切面に貼り付け、粘着性プラスチックフィルムを貼り付けた状態で、包埋試料を刃物で切削することにより薄切片を作製し、その粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた薄切片をスライドグラスに密着し、次いで水に入れてから、まずスライドグラスから水溶性プラスチックフィルムを取り除き、その後、薄切片に付着している粘着剤と包埋剤であるパラフィンの両者を有機溶媒で溶解除去し、生物組織薄切片のみをスライドグラス上に残すことを特徴とする生物組織薄切片作製法。
【請求項3】
樹脂で包埋した生物試料の薄切面、あるいは水溶性包埋剤で凍結包埋した生物試料の薄切面に、有機溶媒で溶解する粘着剤を水溶性プラスチックフィルム上に塗布することにより水溶性プラスチックフィルム上に粘着層を形成した粘着性プラスチックフィルムを貼り付け、粘着性プラスチックフィルムを貼り付けた状態で、包埋試料を刃物で切削することにより薄切片を作製し、その粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた薄切片をスライドグラスに密着し、次いで水に入れてから、まず粘着性プラスチックフィルムと薄切片が貼り付いたスライドグラスから水溶性プラスチックフィルムを水に入れて取り除き、次いで薄切片に付着した粘着剤を有機溶媒で溶解除去することにより、生物組織薄切片をスライドグラス上に作製することを特徴とする生物組織薄切片作製法。
【請求項4】
非水溶性プラスチックフィルム上に密着した水溶性プラスチックフィルムの上に有機溶媒で溶解する粘着剤を塗布することにより、水溶性プラスチックフィルム上に粘着層を形成した粘着性プラスチックフィルムを、パラフィン包埋した試料の薄切面に貼り付け、粘着性プラスチックフィルムを貼り付けた状態で、包埋試料を刃物で切削することにより薄切片を作製し、その粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた薄切片をスライドグラスに密着した後、まず粘着性プラスチックフィルムと薄切片が貼り付いたスライドグラスから非水溶性プラスチックフィルムを取り除き、次いで水にいれてから水溶性プラスチックフィルムを取り除き、次いで薄切片に残存した粘着性プラスチックフィルムの粘着剤と、包埋剤であるパラフィンの両者を有機溶媒で溶解除去し、生物組織薄切片のみをスライドグラス上に残すことを特徴とする生物組織薄切片作製法。
【請求項5】
請求項1、請求項2又は請求項3の生物組織薄切片作製法に使用する粘着性プラスチックフィルムであって、
その構成は、有機溶媒で容易に溶解する粘着剤を、水で容易に溶解する透明なプラスチックフィルムの片側に塗布することにより、プラスチックフィルム上に粘着層を形成し、その粘着層の上に剥離紙を密着することによりテープ状、又はシート状の粘着性プラスチックフィルムを作製し、使用時に薄切面の大きさに切断した後、粘着性プラスチックフィルムから剥離紙を取り除いて使用することを特徴とする粘着性プラスチックフィルム。
【請求項6】
請求項1、請求項2又は請求項3の生物組織薄切片作製法に使用する粘着性プラスチックフィルムであって、
その構成は、有機溶媒で容易に溶解する粘着剤を、水で容易に溶解する薄くて透明なプラスチックフィルムの片側に塗布することにより、プラスチックフィルム上に粘着層を形成し、粘着層の上に帯状の薄いプラスチックフィルムを所定の間隔で密着して、粘着性を有する領域と粘着性の無い領域を設け、粘着性の無い領域で挟まれる粘着性を有する領域の長さが請求項1、請求項2あるいは請求項3に記載した包埋試料の薄切方向の長さとほぼ等しくなるようにした粘着性プラスチックフィルム上に剥離紙を密着し、使用時に薄切面の大きさに切断し、次いで、切断した粘着性プラスチックフィルムから剥離紙を取り除いて使用することを特徴とする粘着性プラスチックフィルム。
【請求項7】
請求項4の生物組織薄切片作製法に使用する粘着性プラスチックフィルムであって、
その構成は、非水溶性プラスチックフィルム上に水溶性プラスチックフィルムを密着し、その上に有機溶媒で容易に溶解する粘着剤を塗布することにより、水溶性プラスチックフィルム上に粘着層を形成し、その粘着層の上に剥離紙を密着することによりテープ状、又はシート状の粘着性プラスチックフィルムを作製し、使用時に適当な大きさに切断した後、粘着性プラスチックフィルムから剥離紙を取り除いて使用することを特徴とする粘着性プラスチックフィルム。
【請求項8】
請求項4の生物組織薄切片作製法に使用する粘着性プラスチックフィルムであって、
その構成は、非水溶性プラスチックフィルム上に水溶性プラスチックフィルムを密着し、その上に有機溶媒で溶解する粘着剤を塗布することにより、水溶性プラスチックフィルム上に粘着層を形成し、粘着層の上に帯状の薄い非水溶性プラスチックフィルムを所定の間隔で密着して、粘着性を有する領域と粘着性の無い領域を設け、粘着性の無い領域で挟まれる粘着性を有する領域の長さが請求項4に記載した包埋試料の薄切方向の長さとほぼ等しくなるようにした粘着性プラスチックフィルム上に剥離紙を密着し、使用時に適当な大きさに切断し、次いで、切断した粘着性プラスチックフィルムから剥離紙を取り除いて使用することを特徴とする粘着性プラスチックフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−171160(P2007−171160A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196184(P2006−196184)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(500269820)
【Fターム(参考)】