説明

生物育成システムおよび方法

【課題】情報処理装置からの排熱を有効利用して植物や微生物を育成する。
【解決手段】処理動作により発生した熱を主に一定の方向へ排熱する複数の情報処理装置10を、それぞれの排熱方向50が、育成生物が入れられる育成ケース20を向くように、育成ケース20の周りに配置して、処理動作に応じで発生した熱を育成生物へ供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物や微生物などの生物の育成技術に関し、特にサーバーやPCなどの情報処理装置からの排熱を利用する生物育成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
情報化社会の発展に伴い、サーバーやPCなどの情報処理装置が集中する部屋、典型的にはサーバールームの温度が上昇することが知られている。このような温度の上昇はサーバーから生産される熱が外部に均一に拡散しないことにより生じるものである(例えば、非特許文献1など参照)。
一方で、生育のためには高い温度を必要とする、あるいは、促進栽培のために温度が常温よりも高いことが好まれる、植物や微生物が存在する。たとえば、もやしの生育温度は36−37℃である(例えば、非特許文献2など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】http://www.impressrd.jp/idc/story/2009/06/08/853?page=0%2C2、「NTTファシリティーズ エネルギーシステム総合診断サービス」、インプレスホームページ(2010年3月11日検索)
【非特許文献2】http://www.maff.go.jp/tohoku/stinfo/zirei/21se/06/21ya0701_01.html、「〜温泉を利用し豆もやし栽培〜」、東北農政局ホームページ(2010年3月11日検索)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した非特許文献1の技術のように、サーバールームにおけるサーバーの配置は、通常であれば排熱効率が最もよい配列になるようにされており、サーバールームの排熱を逃がす工夫は行われているものの、意図的に熱を活用しようとする試みはなされていなかった。
一方、非特許文献2の技術のように、生育のために高い温度を必要とする等の植物や微生物は、温室や恒温槽(インキュベータ)などで人工的に生育されたが、別個に熱源あるいは電源を必要とするため経済的でなかった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、情報処理装置からの排熱を有効利用して植物や微生物を育成できる生物育成技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明にかかる生物育成システムは、屋内で生物を育成する生物育成システムであって、処理動作により発生した熱を主に一定の方向へ排熱する複数の情報処理装置と、育成生物が入れられる育成ケースとを備え、各情報処理装置は、それぞれの排熱方向が育成ケースを向くように育成ケースの周りに配置されている。
【0007】
また、本発明にかかる生物育成方法は、屋内で生物を育成する生物育成方法であって、処理動作により発生した熱を主に一定の方向へ排熱する複数の情報処理装置を、それぞれの排熱方向が育成生物が入れられる育成ケースを向くように、育成ケースの周りに配置して、処理動作に応じで発生した熱を育成生物へ供給する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、別個に熱源あるいは電源を必要とすることなく、情報処理装置10からの排熱を有効利用して植物や微生物を育成できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態にかかる生物育成システムの構成を示す平面図である。
【図2】本実施の形態にかかる生物育成システムの構成を示す側面図である。
【図3】情報処理装置の排熱部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
[生物育成システム]
まず、図1および図2を参照して、本実施の形態にかかる生物育成システムについて説明する。図1は、本実施の形態にかかる生物育成システムの構成を示す平面図である。図2は、本実施の形態にかかる生物育成システムの構成を示す側面図である。
この生物育成システム1は、サーバールームに配置されるサーバーやPCなどの情報処理装置10からの排熱50を利用して、植物や微生物などの生物を屋内で育成する生物育成システムである。
【0011】
本実施の形態は、処理動作により発生した熱を主に一定の方向へ排熱する複数の情報処理装置10と、育成生物が入れられる育成ケース20とを備え、各情報処理装置10を、それぞれの排熱方向50が育成ケース20を向くように育成ケース20の周りに配置したものである。
【0012】
各情報処理装置10は、平面視において、閉じた略多角形状40をなすように配置されている。一例として、図1では平面視四角形の周部に各情報処理装置10が配置されている。この際、各情報処理装置10が有する排熱の排熱方向50を、多角形状40の閉じている内側を向くようにし、この閉じた多角形状40の中に育成ケース20を配置する。育成ケース20については、植物の苗を育成するためケース・ポット・トレイや、微生物を育成するためのシャーレ・ビーカー・トレイなど、一般的に広く用いられている育成ケースを用いればよい。
これにより、処理動作に応じて発生した熱が、各情報処理装置10から育成ケース20の方向へ供給され、この熱により育成ケース20内に入れられた育成生物の周囲温度が適温に保持される。
【0013】
図3は、情報処理装置の排熱部を示す説明図である。サーバーやPCなどの一般的な情報処理装置10では、ケース11の側面や背面などの面12に排熱穴13が設けられており、ケース11の内側に取り付けられたクーラーファン14が回転して、ケース11内部で発生した熱が、ケース11の外側に排熱される。この際、排熱方向50は、クーラーファン14の送風方向、すなわち面12の鉛直方向となる。
【0014】
情報処理装置10の電源部近辺は、非特許文献1に示されるように30℃〜40℃になるので、このような部分を内側にした閉じた多角形状40を形成すれば、閉じた多角形状40の中は30℃〜40℃の均一な温度の空間が得られる。この位置で生物の育成を行えばよい。特に、光合成を行わせる必要がないもやしや微生物を育成すればサーバー室内をそのまま利用できるので効果的である。
【0015】
ただし、閉じた多角形状40の空間で熱が飽和すると、その熱によりあたたまった空気の密度が小さくなって上昇するから、これを排熱するための適切な大きさの径の排気ダクト30を利用して室外と接続すればよい。具体的には、各情報処理装置10の送風速度の和に相当する風量が排出できる管であればよく、ファン等の駆動力は特に必要ない。
このような温度にした環境では、非特許文献2に示したようにもやしの最適生育温度に近いため有効な植物の育成ができる。なお、周囲が透明であり太陽の光を遮断しないのであれば、該当の温度で成長する緑色植物を栽培することもできる。温度が30℃から35℃の範囲となるように情報処理装置10を配置すれば、酵母菌などの微生物を有効に繁殖させることもできる。
【0016】
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、処理動作により発生した熱を主に一定の方向へ排熱する複数の情報処理装置10を、それぞれの排熱方向50が、育成生物が入れられる育成ケース20を向くように、育成ケース20の周りに配置して、処理動作に応じで発生した熱を育成生物へ供給するようにしたので、別個に熱源あるいは電源を必要とすることなく、極めて経済的に、情報処理装置10からの排熱を有効利用して植物や微生物を育成できる。
【0017】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0018】
1…生物育成システム、10…情報処理装置、11…ケース、12…面、13…排熱穴、14…クーラーファン、20…育成ケース、30…排気ダクト、40…多角形状、50…排熱方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内で生物を育成する生物育成システムであって、
処理動作により発生した熱を主に一定の方向へ排熱する複数の情報処理装置と、
前記育成生物が入れられる育成ケースとを備え、
前記各情報処理装置は、それぞれの排熱方向が前記育成ケースを向くように前記育成ケースの周りに配置されている
ことを特徴とする生物育成システム。
【請求項2】
屋内で生物を育成する生物育成方法であって、
処理動作により発生した熱を主に一定の方向へ排熱する複数の情報処理装置を、それぞれの排熱方向が前記育成生物が入れられる育成ケースを向くように、前記育成ケースの周りに配置して、処理動作に応じで発生した熱を前記育成生物へ供給することを特徴とする生物育成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−239716(P2011−239716A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114001(P2010−114001)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】