説明

生物脱硫システム

【課題】バイオガス精製効率を上昇させることができる生物脱硫システムを提供すること。
【解決手段】メタン発酵槽1で発生したメタンガスと、硫黄化合物とを含むバイオガスを導入して充填材に担持された硫黄酸化細菌により生物脱硫してバイオガスの精製を行う生物脱硫槽2と、前記生物脱硫槽内で生成する生物脱硫生成物を洗浄除去する洗浄液を貯蔵する循環タンク3と、前記循環タンク内の洗浄液を前記生物脱硫槽内の上部に供給する循環ポンプ300と、該循環ポンプにより送液された洗浄液を充填材の上部から散水する洗浄液散布部に送液する送液管202とを有する生物脱硫システムにおいて、前記メタン発酵槽で生成される消化液の少なくとも一部を供給してアンモニアを除去するアンモニア除去手段を有し、前記循環タンクに、前記アンモニア除去手段により生成したアンモニアガスを供給することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物脱硫システムに関し、詳しくはバイオガス中のメタンガス濃度を上昇できる生物脱硫システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1、2、3には、メタン発酵槽から送られるバイオガスを精製するために、生物脱硫槽を設け、その生物脱硫槽内に、硫黄酸化細菌を坦持する充填材を設け、この充填材にバイオガスを通すことにより、硫黄酸化細菌群と接触させ、バイオガス中に含まれる硫黄化合物を酸化して硫酸とすることによりバイオガスを精製する生物脱硫方式が提案されている。この方式では、洗浄液を充填材の上方から散布して硫黄酸化細菌によって生成される硫酸を洗い流して捕捉して除去するようにしている。通常、この洗浄液は、生物脱硫槽の下部から排出され、再度循環使用している。
【0003】
この生物脱硫方式では、硫黄酸化細菌群が好気性細菌であるため、生物脱硫槽へ流入するバイオガスには予め空気を注入して細菌が必要とする酸素を供給するようにしている。上記特許文献1、2、3の方式では、生物脱硫槽の下方より空気を供給している。
【0004】
一方、メタン発酵槽から送られるバイオガスをいかに効率よく精製して、メタン濃度を高くすることが、取得エネルギーを高カロリー化する上で求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−143779号公報
【特許文献2】特開2006−143780号公報
【特許文献3】特開2006−143781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
生物脱硫法を用いたバイオガス精製過程をみると、最初に硫化水素(HS)の液側吸収が起こり、次いで硫黄酸化細菌によって酸化されるという段階で進行する。液側吸収はpH7.5程度で硫化水素イオン(HS)として吸収されるが、硫化水素の物理吸収とその後の生物酸化という過程の場合は3〜6程度の低pH領域でも脱硫は進む。
【0007】
しかしながら、初期の洗浄液のpHを7程度にして洗浄を行っても、洗浄液を循環していくと、洗浄液中の硫酸濃度が上昇するので、洗浄液のpHが低下する。洗浄液のpHが、酸性(pH4以下)になると、硫酸までの酸化が困難になり、2HS+O→2S↓+2HO、あるいは、2HS+SO→2HO+3S↓の反応が優先して起こり、硫黄で酸化が停止してしまう。析出した硫黄は充填材に付着したり、充填塔の底部に蓄積し、充填塔を目詰まりさせ、バイオガスの流通や洗浄液の流通を阻害する。
【0008】
従って、硫化水素脱硫の場合、脱硫槽閉塞等の問題を起こさずに脱硫を行うためには、洗浄液のアルカリ度を十分に確保して、pHを維持することが重要となる。
【0009】
そこで、本発明者は、洗浄液のアルカリ度を十分に確保するために、メタン発酵槽内の消化液の少なくとも一部を洗浄液として用いることを検討した。
【0010】
しかし、消化液だけを洗浄液として用いても十分なアルカリ度の確保が困難であった。また、消化液には固形分が多量に含まれるため、脱硫槽内での目詰まりの問題がある。しかし、アルカリ度を維持するために水酸化ナトリウムのようなアルカリ剤を添加するシステムではコスト増となり、実用的なシステムとならない欠点がある。
【0011】
本発明は、上記課題を解決すべく更に鋭意検討した結果、生物脱硫槽から排出されるバイオガスを冷却して生じる凝縮水と、メタン発酵槽で生成される消化液から分離したアンモニアガスとを、共に洗浄液に供給することで、洗浄液のpHの低下を防ぎ、バイオガス精製効率を上昇させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、バイオガス精製効率を上昇させることができる生物脱硫システムを提供することを課題とする。
【0013】
また本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
【0015】
(請求項1)
メタン発酵槽で発生したメタンガスと、硫黄化合物とを含むバイオガスを導入して充填材に担持された硫黄酸化細菌により生物脱硫してバイオガスの精製を行う生物脱硫槽と、
前記生物脱硫槽内で生成する生物脱硫生成物を洗浄除去する洗浄液を貯蔵する循環タンクと、
前記循環タンク内の洗浄液を前記生物脱硫槽内の上部に供給する循環ポンプと、
該循環ポンプにより送液された洗浄液を充填材の上部から散水する洗浄液散布部に送液する送液管と
を有する生物脱硫システムにおいて、
前記メタン発酵槽で生成される消化液の少なくとも一部を供給してアンモニアを除去するアンモニア除去手段を有し、
前記循環タンクに、前記アンモニア除去手段により生成したアンモニアガスを供給することを特徴とする生物脱硫システム。
【0016】
(請求項2)
前記生物脱硫槽から排出されるバイオガスを冷却して凝縮水を生成する冷却手段を有し、
前記循環タンクに、前記凝縮水を供給することを特徴とする請求項1記載の生物脱硫システム。
【0017】
(請求項3)
前記メタン発酵槽で生成される消化液の少なくとも一部を、前記循環タンクに供給する消化液供給手段を有することを特徴とする請求項1又は2記載の生物脱硫システム。
【0018】
(請求項4)
前記循環タンクに、生物処理後の処理水を供給する処理水供給手段を有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の生物脱硫システム。
【0019】
(請求項5)
前記循環タンク内の洗浄液を前記生物脱硫槽に導入する前に、該洗浄液を酸化雰囲気とする気液接触する手段を有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の生物脱硫システム。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、メタン発酵槽で生成される消化液から分離したアンモニアガスを洗浄液に供給することで、洗浄液のpHの低下を防ぎ、バイオガス精製効率を上昇させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る生物脱硫システムの一例を説明する概略図
【図2】本発明に係る生物脱硫システムの他の例を説明する概略図
【図3】本発明の他の態様の一例を説明する概略図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る生物脱硫システムの一例を説明する概略図である。
【0024】
図1において、1はバイオマス(有機性廃棄物)をメタン発酵するメタン発酵槽であり、バイオマスとしては、例えば畜産廃棄物(例えば家畜の糞尿や、屠体、その加工品など)や緑農廃棄物、廃水処理汚泥などを挙げることができる。
【0025】
メタン発酵槽1にバイオマスが投入され、嫌気的条件の下でメタン発酵が行われる。メタン発酵により発生したメタン、CO(二酸化炭素)、硫化水素などの硫黄含有化合物を含むバイオガスは、バイオガス導入管101を通って生物脱硫槽2へ送られ、生物脱硫処理される。
【0026】
生物脱硫槽2は内部に硫黄酸化細菌を担持した充填材200を充填している。充填材200としては、例えば磁製又は樹脂製の通常の気液接触用充填材のほか、多孔質軟質樹脂;活性炭、木炭、ゼオライト、セラミックスなどの多孔体粒子などを用いることができる。硫黄酸化細菌を担持する上では活性炭や木炭などの炭素系の素材も好ましいが、向流で気液接触する場合、通常の気液接触用の樹脂充填材も好ましく使用できる。
【0027】
生物脱硫槽2の上部には洗浄液散布部201(例えばスプレーノズルなど)が設けられ、洗浄液散布部201は洗浄液供給配管202に接続されている。洗浄液は洗浄液を貯留する循環タンク3から循環ポンプ300により洗浄液供給管202を介して洗浄液散布部201から散布される。
【0028】
生物脱硫槽2内で硫黄酸化細菌の作用によって硫化水素が酸化され、亜硫酸や硫酸あるいはそれらの塩が生成するが、それらの硫酸等は散布された洗浄液によって洗浄される。洗浄液は硫酸等を吸収して、pHが低下した状態で、生物脱硫槽2の下方から返送管203を介して排出され、循環タンク3に返送される。
【0029】
本発明においては、メタン発酵槽1で生成される消化液の少なくとも一部からアンモニアを除去するアンモニア除去手段6を有する。
【0030】
アンモニア除去手段6において回収されたアンモニアガスは、アンモニアガス導入管601、及び散気管308を介して循環タンク3に供給され、洗浄液(循環液)中に溶解する。その結果、循環液のアルカリ度を維持できる。
【0031】
前記アンモニア除去手段6としては、例えばアンモニア放散塔が挙げられる。
【0032】
本発明において、循環液は、バイオガス冷却後の凝縮水、メタン発酵槽1で生成される消化液の少なくとも一部、活性汚泥処理水、その他の工業用水や水道水などから選ばれる1種または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0033】
循環液として凝縮水を使用する場合について説明する。凝縮水を生成するには、本発明では、生物脱硫槽2において生物脱硫処理されたバイオガスをバイオガス導入管204を介して移送される過程で冷却するための冷却手段4を設けることができる。
【0034】
冷却手段4はバイオガスを冷却して凝縮水を生成する。冷却脱水されたバイオガスは、バイオガス導入管401を介してガスホルダに貯蔵してもよいし、また乾燥手段5に導入して更に乾燥してもよい。
【0035】
凝縮水は、冷却手段4から送液管402を経て、循環タンク3に供給され、洗浄液に混合される。凝縮水の組成は、精製されたバイオガス成分のうち、水に溶解する成分が含まれる。
【0036】
循環タンク3に凝縮水が過剰供給された場合は、オーバーフロー式洗浄液流出管307や、ドレン配管304により洗浄液を槽外に排出してもよい。
【0037】
バイオガスの冷却により生じた凝縮水は、アンモニアを含んでいるため、別途添加されるアンモニアの効果に加えて、さらにアルカリ度を上昇させる効果があり、洗浄液として好適である。
【0038】
バイオガスの冷却により生成した凝縮水及び消化液からの蒸発により生成したアンモニアガスは、それぞれ固形分を全く、あるいはほとんど含んでいない。そのため、これらを洗浄液に供給した場合、固形分による目詰まり等の問題を起こさずに、洗浄液の液量、及びアルカリ度を維持することができる。
【0039】
次に、本発明では、上記循環液として消化液を用いる場合、メタン発酵で生成する消化液の少なくとも一部は、発酵槽から、送液管102を経て、循環タンク3に供給される。消化液供給手段はこの送液管102や図示しない送液ポンプなどを含む。送液管102の途中に消化液中から固形分を除去する手段を設けることは好ましいことである。
【0040】
循環タンク3に消化液が過剰供給された場合は、オーバーフロー式洗浄液流出管307や、ドレン配管304により洗浄液を槽外に排出してもよい。
【0041】
次に活性汚泥処理水を循環液として用いる場合、図示しない活性汚泥処理設備で生成する処理水を図示しない供給管を介して、循環系の何れかの部位、好ましくは循環タンクに供給される。この態様は、メタン発酵槽と活性汚泥処理設備(下水処理設備など)が近接している場合に好適である。
【0042】
本発明において、凝縮水、消化液、活性汚泥処理水、アンモニアガス、及びその他の水の循環液への供給位置は、必ずしも循環タンク3において行う必要はなく、例えば、洗浄液供給配管202、返送管203、または、送液管102の途中の何れか1以上の位置において供給してもよい。
【0043】
306は循環タンク3に設けられたpH検出手段である。水素イオン濃度の検出は、ガラス電極式のpHメータを用いる方法が好ましく、これは、オンライン計として常時監視する形でも、ある時間毎に携帯式の計器で監視してもよい。
【0044】
前記循環タンク3内の洗浄液のpHは5以上、好ましくは6以上、さらに好ましくは7以上に維持するようにすることが好ましく、アンモニアガスの供給により、また必要により、消化液を消化液供給手段により供給して、循環タンク3内の洗浄液と交換するようにする。
【0045】
このようなpHの洗浄液が生物脱硫槽に供給されると、バイオガスに含まれる二酸化炭素や、生成した硫酸等を効率的に吸収することができる。
【0046】
本発明では、循環タンク3内の洗浄液を生物脱硫槽2に導入する前に、洗浄液を空気により酸化する手段が設置されてもよい。ここで、空気による酸化は、酸化雰囲気が形成できればよく、酸化雰囲気とは、水素/水に関する酸化還元反応における平衡電位曲線よりも、弱酸性からアルカリ性のpH領域において0.2V以上1.2V以下貴である酸化還元領域にあることを指す。以下、空気により酸化する手段を酸化雰囲気形成手段という場合もある。
【0047】
前記酸化雰囲気形成は、(1)循環タンク内に散気管を設け、該散気管に送風機から空気管を介して空気を供給可能に構成(曝気手段の態様)されてもよいし、(2)液面を撹乱する攪拌手段を設けて循環タンク内の液と空気を気液接触させる構成であってもよいし、(3)送液管の途中に、空気と洗浄液と接触させて該洗浄液に空気を混入させて該洗浄液を酸化雰囲気にする構成であってもよいし、あるいは(4)棚段式の気液接触塔を有し、大気に開放した棚段上段から下段に向けて洗浄液を流下させて気液接触させる構成(気液接触塔を用いる態様)であってもよい。
【0048】
図示の例は、上記(1)の曝気手段の態様である。即ち、送風機301と、該循環タンク3に設けた散気管302と、送風機301と散気管302を連結する空気管303からなる態様である。なお送風機は比較的低圧のファンや高圧空気を送れるコンプレッサーなどを含む。
【0049】
循環タンク3内には空気と洗浄液との接触効率を上げるために樹脂ボールやラシヒリングなどの充填材を充填してもよい。
【0050】
循環タンク3内で酸化雰囲気になった洗浄液は、循環ポンプ300により充填材200の上部に位置する洗浄液散布部201から散布され、脱硫生成物の洗浄を行い、生物脱硫槽2の底部から排出管203を介して排出され、循環タンク3へ返送される。
【0051】
本態様のように、循環タンク3内において、曝気手段で洗浄液を曝気すると、洗浄液中の溶存酸素濃度が上昇する。酸素濃度は飽和濃度近くなり、酸素濃度が約8〜10ppm程度になる。従って供給する空気の量は飽和になる程度の量である。この飽和酸素濃度を有する酸化雰囲気になった洗浄液を散布すると、硫黄化合物を酸化するに必要な酸素が供給されるので、脱硫工程前のバイオガスへの空気供給量は低減できる。
【0052】
空気供給を停止してもpHが5以上に保持されれば硫化水素をアルカリ吸収によって除去していくことができる。
【0053】
本発明では、循環タンクに、DOメータ、pH計、ORP計等のpH検出手段306を設け、酸素濃度を測定したり、pHとORPとを常時もしくは随時監視し、調整することは好ましい。
【0054】
また循環タンク3内で曝気すると、洗浄液中の二酸化炭素が大気中に放散されるので、洗浄液のpHは上昇し、洗浄液のアルカリ度が上昇し、生物脱硫槽から散布されると硫化水素の酸化を促進する作用が上昇する効果がある。
【0055】
さらに洗浄液中の二酸化炭素が大気中に放散されると、洗浄液中の二酸化炭素濃度が減少するので、二酸化炭素吸収能力が上昇しているため、バイオガスと接触した際に、バイオガス中の二酸化炭素が減少し、精製バイオガス中のメタン濃度が相対的に上昇する効果がある。
【0056】
図2は、本発明にかかる生物脱硫システムの別の一例を説明する概略図である。
【0057】
図2は、洗浄液を酸化雰囲気にするために、気液接触塔を用いる態様を示している。
【0058】
凝縮水、アンモニアガス、及び消化液は、循環タンク3へ供給され、循環ポンプ300、洗浄液送液管305を経由して気液接触塔7へ送られる。気液接触塔7の内部は、充填材、複数の棚段、ぬれ壁等の気液接触手段を選択することができるが、図2では充填材700を充填している。
【0059】
充填材700としては、例えば磁製又は樹脂製の通常の気液接触用充填材のほか、多孔質軟質樹脂;活性炭、木炭、ゼオライト、セラミックスなどの多孔体粒子などを用いることができる。
【0060】
気液接触塔7の上部には洗浄液含有液を散布する洗浄液散布部701(例えばスプレーノズルなど)が設けられ、洗浄液送液管305に接続されている。
【0061】
気液接触塔7の下部には空気管702が設けられ、送風機703が接続されている態様である。送風機は比較的低圧のブロアや高圧空気を送れるコンプレッサーなどを含む。
【0062】
気液接触塔7で二酸化炭素が放散され、酸化雰囲気となった洗浄液は気液接触塔下部から送液ポンプ204、洗浄液供給配管202、洗浄液散布部201を通して生物脱硫槽2へ導入される。
【0063】
また本発明では、棚段式の気液接触塔を用い、大気に開放した棚段上段から下段に向けて洗浄液を流下させて気液接触させる構成を採用することも好ましいことである。
【0064】
棚段式の気液接触塔を用いると、洗浄液を空気中に置かれた棚段塔上段に導き、そこから流下する間に、十分な気液接触が行われるため、動力節減という観点から特に好ましい。また棚段を用いることによって空気側を循環させる必要がなく、棚段塔高さ分の液揚程分の動力で済むことになる。
【0065】
棚段はポリエチレン、ポリプロピレン、硬質塩化ビニル樹脂などの材質を用いることができる。
【0066】
図2の態様において、気液接触塔7によって気液接触により、酸化雰囲気にされた洗浄液は、洗浄液中に含まれていた二酸化炭素が除かれ、アルカリ度が上がり、飽和濃度に近い約8〜10ppm程度の酸素が溶解している。
【0067】
この酸素濃度を含有して酸化雰囲気になった洗浄液を生物脱硫槽の上部から散布すると、硫黄化合物を酸化するに必要な酸素が供給されるので、脱硫工程前のバイオガスへの空気供給量を低減できる。
【0068】
また洗浄液中の二酸化炭素が大気中に放散されるので、洗浄液含有液のpHは上昇し、洗浄液含有液のアルカリ度が上昇し、生物脱硫槽から散布されると硫化水素の酸化を促進する作用が上昇する効果がある。
【0069】
さらに洗浄液中の二酸化炭素が大気中に放散されると、洗浄液中の二酸化炭素濃度が減少するので、二酸化炭素吸収能力が上昇しているため、生物脱硫槽内でバイオガスと接触した際に、バイオガス中の二酸化炭素が減少し、精製バイオガス中のメタン濃度が相対的に上昇する効果がある。
【0070】
図2に示す態様において、図1と同様に、酸化雰囲気化された洗浄液の適切な管理のためのDOメータ、pH計、ORP計等のpH検出手段306を設けることも好ましい。前述したように、pH計はオンライン計として常時監視する必要はない。
【0071】
また過剰に供給された洗浄液は、オーバーフロー式洗浄液流出管307によって排出される。
【0072】
次に、図3に基づき、本発明の他の態様を説明する。
【0073】
この態様は、洗浄液の循環経路内に、石灰岩を充填した石灰岩充填塔8を設置することによって構成される。
【0074】
充填塔8の下方に亜硫酸又は亜硫酸塩を酸化するための空気供給手段を備えている。具体的には、ファン301によって空気管を介して空気が充填塔下方に供給可能なように構成されている。
【0075】
充填塔8の上方から敷き詰められた石灰岩に対して循環液が散布される。循環液中の亜硫酸又は亜硫酸塩は、下方から送られる空気によって酸化され、硫酸または硫酸塩を生成する。
【0076】
その硫酸または硫酸塩は、石灰岩と反応して、硫酸カルシウム(石膏)を生成する。
【0077】
硫酸カルシウムを含有する循環液は、充填塔8から排出され、循環タンク3に送られる。循環タンク3には送液管を介して凝縮水、アンモニアガス、消化液も供給される。
【0078】
循環タンク3で硫酸カルシウムを沈降分離する。上澄み水は循環ポンプ300により生物脱硫槽2の洗浄液散布部201に送液される。
【0079】
図3に示す態様において、図1と同様に、酸化雰囲気化された洗浄液の適切な管理のためのDOメータ、pH計、ORP計等のpH検出手段306を設けることも好ましい。前述したように、pH計はオンライン計として常時監視する必要はない。
【0080】
また過剰に供給された洗浄液は、オーバーフロー式洗浄液流出管307によって排出される。
【実施例】
【0081】
以下、本発明の実施例に基づき本発明の効果を例証する。
【0082】
(実施例1)
図1に示す構成の高温(55℃)メタン発酵を行うバイオガスプラント(搾乳中糞尿処理4t/日)において、洗浄液(ライン運転開始時はバイオガスドレイン(凝縮水)を使用)にスクリーン処理した消化液を循環タンクに供給して、pH5以上を維持するようにした。処理するバイオガス濃度はメタン50〜52%、HS 1500〜1700ppmである。脱硫塔処件は、L(L/時)/G(m/時)=1〜10で検討した(40℃)。
【0083】
(比較例1)
洗浄液のpHが5を下回る状態である以外は実施例1と同様にして生物脱硫を行った。
【0084】
実施例1及び比較例1における洗浄液のpH、L/G値、酸化還元電位、脱硫率、メタン濃度増加率(二酸化炭素の吸収率)を表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
(実施例2)
図2に示す構成の高温(55℃)メタン発酵を行うバイオガスプラント(処理量4t/日)において、消化液(発酵槽出口のpHは8.7)を生物脱硫槽における洗浄液として用い、以下の実験を行った。
【0087】
生物脱硫槽入口のガス組成が、メタン濃度50〜52%、硫化水素1500〜1700ppmであるバイオガスを、L/G=2〜3、約40℃で生物脱硫槽において脱硫処理をした。
【0088】
洗浄液のpHを5以上に維持しながら生物脱硫を行った。
【0089】
(比較例2)
洗浄液のpHが5を下回る状態である以外は実施例2と同様にして生物脱硫を行った。
【0090】
実施例2及び比較例2における洗浄液のpHと酸化還元電位、脱硫率、メタン濃度増加率(二酸化炭素の吸収率)を表2に示す。
【0091】
【表2】

【符号の説明】
【0092】
1:メタン発酵槽
101:バイオガス導入管
102:送液管
2:生物脱硫槽
200:充填材
201:洗浄液散布部
202:洗浄液供給配管
203:返送管
204:送液ポンプ
3:循環タンク
300:循環ポンプ
301:送風機
302:散気管
303:空気管
304:ドレン配管
305:消化液送液管
306:pH検出手段
307:オーバーフロー式洗浄液流出管
4:冷却手段
5:乾燥手段
6:アンモニア除去手段
7:気液接触塔
8:充填塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタン発酵槽で発生したメタンガスと、硫黄化合物とを含むバイオガスを導入して充填材に担持された硫黄酸化細菌により生物脱硫してバイオガスの精製を行う生物脱硫槽と、
前記生物脱硫槽内で生成する生物脱硫生成物を洗浄除去する洗浄液を貯蔵する循環タンクと、
前記循環タンク内の洗浄液を前記生物脱硫槽内の上部に供給する循環ポンプと、
該循環ポンプにより送液された洗浄液を充填材の上部から散水する洗浄液散布部に送液する送液管と
を有する生物脱硫システムにおいて、
前記メタン発酵槽で生成される消化液の少なくとも一部を供給してアンモニアを除去するアンモニア除去手段を有し、
前記循環タンクに、前記アンモニア除去手段により生成したアンモニアガスを供給することを特徴とする生物脱硫システム。
【請求項2】
前記生物脱硫槽から排出されるバイオガスを冷却して凝縮水を生成する冷却手段を有し、
前記循環タンクに、前記凝縮水を供給することを特徴とする請求項1記載の生物脱硫システム。
【請求項3】
前記メタン発酵槽で生成される消化液の少なくとも一部を、前記循環タンクに供給する消化液供給手段を有することを特徴とする請求項1又は2記載の生物脱硫システム。
【請求項4】
前記循環タンクに、生物処理後の処理水を供給する処理水供給手段を有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の生物脱硫システム。
【請求項5】
前記循環タンク内の洗浄液を前記生物脱硫槽に導入する前に、該洗浄液を酸化雰囲気とする気液接触する手段を有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の生物脱硫システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−46802(P2011−46802A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195373(P2009−195373)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(504300088)国立大学法人帯広畜産大学 (96)
【Fターム(参考)】