説明

生物脱臭方法および生物脱臭装置

【課題】煩雑な運転操作や、複雑な設備構造を必要とせずに微生物の活性を適正に維持して、安定した脱臭操作を継続して行うことが可能な、生物脱臭装置の運転方法およびそれに用いることが可能な生物脱臭装置を提供する。
【解決手段】洗浄手段による微生物担体の洗浄と、栄養供給手段による微生物への栄養供給とを行いながら、継続して脱臭処理を行うにあたって、「処理対象ガスから除去される悪臭成分に由来する炭素量」と、「栄養供給手段により微生物に供給される栄養塩に由来する窒素量」の関係を所定の範囲に保持しながら脱臭処理を行う。
微生物担体の含水率を所定の範囲に保持しながら脱臭処理を行う
栄養塩を補給しつつ、栄養塩溶液を繰り返して用いるとともに、栄養塩溶液中の窒素分濃度をモニタリングして窒素分濃度を管理することにより、悪臭成分に由来する炭素量と、微生物に供給される、栄養塩に由来する窒素量の関係を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、担体に微生物を担持させた微生物担体と、除去すべき悪臭成分を含む処理対象ガスとを接触させて脱臭処理を行う生物脱臭装置の運転方法および生物脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、下水処理施設、畜産業、食品加工業などを対象とした脱臭技術として、微生物を利用して脱臭を行う生物脱臭法、および、それを実施するための生物脱臭装置が普及しており、揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)に由来する悪臭の除去にも有効であるとされている。
【0003】
本願出願人は、本願の出願時にはまだ公開されていない特許出願であって、例えば、図6および図7に示すような生物脱臭装置およびそれを用いた生物脱臭方法に関する特許出願を行っている(特願2006−041422)。
【0004】
すなわち、この出願にかかる生物脱臭装置は、図6に示すように、円筒状で、定期的に矢印Yの方向(時計方向)に回転させることが可能で、かつ、回転軸が略垂直になるように配設され、微生物を担持させた担体が充填された領域が周方向に、図7に示すように、4個の担体充填領域10(10a,10b,10c,10d)に均等に分割された脱臭機構部(担体が充填された充填塔)1と、図6に示すように、脱臭機構部1を回転させるための回転駆動手段2と、被処理ガスを、担体充填領域10(10a,10b,10c,10d)のうちの、所定の担体充填領域10(図7では10c)に供給する被処理ガス供給ライン3と、所定の担体充填領域で脱臭処理が行われた被処理ガスを、次の担体充填領域に導く被処理ガス案内ライン4a,4bと、脱臭処理が行われた後の処理ガスを排出する処理ガス排出ライン7と、脱臭機構部1が回転することにより、担体充填領域10(10a,10b,10c,10d)のうち、周方向の所定の位置である洗浄・栄養塩供給領域(洗浄・栄養塩供給ゾーン)D(図7)に移動した担体充填領域10(図7では10d)を洗浄し、栄養補給する洗浄・栄養塩供給手段5と、洗浄・栄養塩供給領域(洗浄・栄養塩供給ゾーン)D(図7)に移動した担体充填領域10(図7では10d)には被処理ガスが供給されず、洗浄液が供給されて担体充填領域10dの洗浄・栄養塩供給が行われるようにする、脱臭処理と洗浄・栄養塩供給処理とを切り換える機能切換機構とを備えている。なお、洗浄・栄養塩供給手段5は、洗浄液(栄養塩溶液)槽11,洗浄液供給ポンプ12、洗浄液供給配管13などから構成されている。
【0005】
そして、このカラム回転型生物脱臭装置において、処理対象ガスは図7に示すように、高濃度被処理ガス処理領域Cの充填層に入り、順次、中濃度被処理ガス処理領域Bの充填層、低濃度被処理領域Aの充填層を通過して脱臭が行われた後、系外に排出される。そして、ガスと接触しない洗浄・栄養塩補給ゾーンDでは、余剰菌体排出のための洗浄と栄養塩の補給が行われる。
【0006】
このカラム回転型生物脱臭装置によれば、処理対象ガスを、複数の担体充填領域10(10a,10b,10c,10d)を所定の順に通過させて、連続的に複数段式の脱臭処理を行いながら、所定時間が経過するごとに、脱臭機構部1を回転させることにより、脱臭処理を行った担体充填領域10(10a,10b,10c,10d)のうちの1つを、洗浄液による洗浄・栄養塩供給が行われるべき洗浄位置に移動させ、洗浄位置に移動した担体充填領域に栄養塩を含有する洗浄液を供給して該担体充填領域を洗浄・栄養塩供給し、洗浄・栄養塩供給工程において洗浄・栄養塩供給が行われた担体充填領域を、洗浄位置以外の、脱臭処理が行われるべき脱臭処理位置に移動させて脱臭処理を再開するようにしているので、処理対象ガスを連続的に脱臭処理しつつ、担体充填領域10(10a,10b,10c,10d)の洗浄・栄養塩供給を行うことが可能になり、安定した脱臭処理を長時間継続して行うことが可能になる。
【0007】
また、本願出願人は、担体充填領域を効率よく洗浄することが可能で、長期間にわたって安定して、効率よく運転を行うことが可能な生物脱臭方法および生物脱臭装置を提案している(特許文献1参照)。
【0008】
すなわち、この生物脱臭方法(生物脱臭装置)は、図8に示すように、微生物を担持させた担体を充填した領域を複数の担体充填領域20a,20b,20c,20dに分割し、バルブ操作により、各担体充填領域20a,20b,20c,20dに、ガス供給配管22,ガス循環配管23,24および処理ガス排気配管25などを介して、所定の経路で処理対象ガスを供給して脱臭操作を行いながら、所定の順序で各担体充填領域20a,20b,20c,20dを洗浄し、各担体充填領域20a,20b,20c,20dを洗浄する洗浄操作時には、洗浄が行われる担体充填領域への処理対象ガスの供給を停止して洗浄水を供給し、該担体充填領域に洗浄水を溜めて担体を洗浄水に所定時間浸漬させた後、洗浄水を抜き出すことにより、該担体充填領域全体の洗浄を行うとともに、処理対象ガスを、洗浄の対象とされていない他の担体充填領域に所定の供給経路で供給して脱臭操作を行うように構成されている。
【0009】
そして、この生物脱臭方法(生物脱臭装置)によれば、
(イ)担体充填領域を洗浄しながら、連続して安定した脱臭操作を行うことが可能になる
(ロ)担体を洗浄水に所定時間浸漬させた後、洗浄水を抜き出すことにより担体充填領域を洗浄するようにしているので、従来の、洗浄水をスプレーする洗浄方法を用いた場合のように洗浄水の通路が形成されてしまうことにより全体としての洗浄が不十分になるというようなことがなく、所定の担体充填領域全体を効率よくしかも確実に洗浄することが可能になる、
という効果を得ることができる。
【0010】
しかしながら、上述のような生物脱臭装置に用いられる微生物を担持させた担体は、運転中における微生物の過度の増殖などにより目詰りが生じやすく、目詰りが生じると圧力損失が大きくなるため、安定して長期間の運転を行うことが困難になる。
また、一方で、微生物への栄養の供給が不十分になると、微生物の活性が不十分になり脱臭効果が損なわれることになる。
【0011】
これらの問題点は、生物脱臭法が本質的に有している問題点であり、こうした問題を改善するためには、装置の挙動を十分に把握し、処理対象ガスが微生物と効率よく接触し、かつ微生物の活性を最大限に維持することのできる環境を、持続的に確保する必要がある。
【0012】
なお、上述の生物脱臭装置および生物脱臭方法は、このような課題を解決する方法を提案するものであるが、さらに効率がよく、安定した脱臭処理を連続して行うことが可能な生物脱臭方法および生物脱臭装置があればより望ましいと考えられているのが実情である。
【特許文献1】特開2003−265920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本願発明は、上記要望に応えようとするものであり、煩雑な運転操作や、複雑な設備を必要とせず、より安定した脱臭処理を連続して行うことが可能な、生物脱臭装置の運転方向および生物脱臭装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本願発明(請求項1)の生物脱臭装置の運転方法は、
担体に微生物を担持させた微生物担体と、除去すべき悪臭成分を含む処理対象ガスとを接触させて脱臭処理を行う脱臭手段と、
微生物担体を洗浄液で洗浄する洗浄手段と、
前記微生物担体と窒素を含む栄養塩溶液を接触させて微生物に栄養を供給する栄養供給手段と
を備えた生物脱臭装置を用い、
洗浄手段による微生物担体の洗浄と、栄養供給手段による微生物への栄養供給とを行いながら、継続して脱臭処理を行う生物脱臭装置の運転方法であって、
処理対象ガスから除去される悪臭成分に由来する炭素量と、栄養供給手段により微生物に供給される栄養塩に由来する窒素量の関係を所定の範囲に保持しながら脱臭処理を行うこと
を特徴としている。
【0015】
また、本願発明(請求項2)の生物脱臭装置の運転方法は、
担体に微生物を担持させた微生物担体と、除去すべき悪臭成分を含む処理対象ガスとを接触させて脱臭処理を行う脱臭手段と、
微生物担体を洗浄液で洗浄する洗浄手段と、
前記微生物担体と窒素を含む栄養塩溶液を接触させて微生物に栄養を供給する栄養供給手段と
を備えた生物脱臭装置を用い、
洗浄手段による微生物担体の洗浄と、栄養供給手段による微生物への栄養供給とを行いながら、継続して脱臭処理を行う生物脱臭装置の運転方法であって、
処理対象ガスから除去される悪臭成分に由来する炭素量と、栄養供給手段により微生物に供給される栄養塩に由来する窒素量の関係を所定の範囲に保持するとともに、
下記の式(1)で表される微生物担体の含水率を所定の範囲に保持しながら脱臭処理を行うことを特徴としている。
微生物担体の含水率(重量%)={(WA−WB)/WA}×100 ……(1)
ただし、
WA:微生物担体の重量であって、担体と、担体に担持された微生物、水分および栄養塩の重量の合計値、
WB:担体のみの乾燥重量
【0016】
また、請求項3の生物脱臭装置の運転方法は、栄養塩を補給しつつ、前記栄養塩溶液を繰り返して用いるとともに、前記栄養塩溶液中の窒素分濃度をモニタリングして、前記栄養塩溶液中の窒素分濃度を管理することにより、悪臭成分に由来する炭素量と、微生物に供給される、栄養塩に由来する窒素量の関係を制御することを特徴としている。
【0017】
また、請求項4の生物脱臭装置の運転方法は、前記処理対象ガスから除去される悪臭成分に由来する炭素量と、微生物に供給される栄養塩に由来する窒素量の関係を、炭素量100gに対して、窒素量1.0〜5.0gの範囲とすることを特徴としている。
【0018】
また、請求項5の生物脱臭装置の運転方法は、前記微生物担体の含水率を50〜70重量%の範囲に保持しながら脱臭処理を行うことを特徴としている。
【0019】
また、請求項6の生物脱臭装置の運転方法は、前記栄養塩を含む栄養塩溶液を、前記洗浄手段の洗浄液としても用い、前記洗浄手段による微生物担体の洗浄と、前記栄養供給手段による微生物への栄養供給とを、同時的に行うことを特徴としている。
【0020】
また、請求項7の生物脱臭装置の運転方法は、前記窒素を含む栄養塩が、(NH4)2SO4,KNO3,NH4Clからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴としている。
【0021】
また、請求項8の生物脱臭装置の運転方法は、
前記生物脱臭装置内より、微生物担体の一部を試料として取り出し、微生物、水分、および栄養塩を担持した湿潤状態のまま重量WAを測定した後、前記微生物担体から微生物、水分、および微生物を除去して前記担体のみの重量WBを測定し、得られた前記WAおよび前記WBの値から、前記式(1)により微生物担体の含水率を求め、この含水率の測定値に基づき、前記微生物担体の含水率が50〜70重量%の範囲に保持されるように、
(a)前記処理対象ガスの供給条件、
(b)前記微生物担体と窒素を含む栄養塩溶液を接触させて微生物に栄養を供給する栄養供給条件、
(c)前記洗浄手段による微生物担体の洗浄条件、および
(d)前記栄養供給手段による微生物への栄養供給条件
からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む運転条件を調整すること
を特徴としている。
【0022】
また、本願発明(請求項9)の生物脱臭装置は、
担体に微生物を担持させた微生物担体と、除去すべき悪臭成分を含む処理対象ガスとを接触させて脱臭処理を行う脱臭手段と、
微生物担体を洗浄液で洗浄する洗浄手段と、
前記微生物担体と窒素を含む栄養塩溶液を接触させて微生物に栄養を供給する栄養供給手段と
前記脱臭手段において除去される悪臭成分量を計測する悪臭成分除去量計測手段と、
前記栄養塩溶液中の窒素分濃度を検出するための窒素分濃度検出手段と
を具備し、
前記悪臭成分量計測手段で計測した悪臭成分量と、前記窒素分濃度検出手段で検出した窒素分濃度から、処理対象ガスから除去される悪臭成分に由来する炭素量と、栄養供給手段からの微生物に供給される栄養塩に由来する窒素量の関係を管理するように構成されていること
を特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
本願発明(請求項1)の生物脱臭装置の運転方法は、微生物担体と処理対象ガスとを接触させて脱臭処理を行う脱臭手段と、微生物担体を洗浄する洗浄手段と、微生物担体に窒素を含む栄養塩溶液を供給する栄養供給手段とを備えた生物脱臭装置を用い、洗浄手段による微生物担体の洗浄と、栄養供給手段による微生物への栄養供給とを行いながら、継続して脱臭処理を行うにあたって、「処理対象ガスから除去される悪臭成分に由来する炭素量」と、「栄養供給手段により微生物に供給される栄養塩に由来する窒素量」の関係を所定の範囲に保持しながら脱臭処理を行うようにしているので、微生物の活性を適正に維持して、微生物の過剰な繁殖による微生物担体の閉塞や、栄養不足による微生物の活性の低下(脱臭性能の低下)を防止して、長期間安定して、効率よく生物脱臭処理を行うことが可能になる。
また、本願発明における悪臭成分とは、必ずしも悪臭のみが問題になるような物質に限らず、揮発性有機化合物(VOC)に由来する種々の物質(特に悪臭成分)なども含む広い概念のものである。
【0024】
なお、本願発明の生物脱臭装置の運転方法においては、微生物担体の洗浄および微生物への栄養供給は、通常、所定の間隔をおいて間欠的に行われるが、その場合、1日〜数日間の間隔をおいて洗浄と栄養供給を行うことが望ましい。
なお、例えば、微生物担体を充填した充填塔を用いる場合に、充填領域を複数の領域に分割し、所定の領域毎に、所定の間隔をおいて処理対象ガスの供給を停止し、該領域の洗浄と栄養供給を行うことにより、脱臭処理を中断することなく、洗浄と栄養供給を行うことが可能になり望ましい。
【0025】
また、請求項2の生物脱臭装置の運転方法は、処理対象ガスから除去される悪臭成分に由来する炭素量と、栄養供給手段により微生物に供給される栄養塩に由来する窒素量の関係を所定の範囲に保持するとともに、微生物担体の含水率を所定の範囲に保持しながら脱臭処理を行うようにしているので、微生物の活性を適正に維持して、微生物の過剰な繁殖による微生物担体の閉塞や、栄養不足による微生物の活性の低下(脱臭性能の低下)を防止するとともに、悪臭成分の除去速度係数の大きい状態を保持することが可能になり、高効率の生物脱臭処理を長期間安定して行うことができる。
なお、請求項2にも明記しているように、本発明では、微生物担体の含水率を、便宜上、式(1)で求められる値としており、本発明における「微生物担体の含水率」は、微生物担体中の水分のみの割合を表すものではなく、担体が保持(担持)する微生物、水分、および栄養塩の合計重量の、担体のみの重量に対する割合である。
微生物担体の含水率(重量%)={(WA−WB)/WA}×100 ……(1)
ただし、
WA:微生物担体の重量であって、担体と、担体に担持された微生物、水分および栄養塩の重量の合計値、
WB:担体のみの乾燥重量
【0026】
また、請求項3の生物脱臭装置の運転方法のように、栄養塩を補給しつつ、栄養塩溶液を繰り返して用いるとともに、栄養塩溶液中の窒素分濃度をモニタリングして、栄養塩溶液中の窒素分濃度を管理することにより、悪臭成分に由来する炭素量と、微生物に供給される、栄養塩に由来する窒素量の関係を制御するようにした場合、より簡便な方法で、微生物の活性を適正に維持して、微生物の過剰な繁殖による微生物担体の閉塞や、栄養不足による脱臭性能の低下を防止して、長期間安定して、効率よく生物脱臭処理を行うことが可能になる。
【0027】
また、請求項4の生物脱臭装置の運転方法のように、処理対象ガスから除去される悪臭成分に由来する炭素量と、微生物に供給される栄養塩に由来する窒素量の関係を、炭素量100gに対して、窒素量1.0〜5.0gの範囲とした場合、「微生物の活性を適正に維持すること」、および、「栄養不足による微生物の活性の低下(脱臭性能の低下)を防止すること」をより確実に行うことが可能になり、本願発明を実効あらしめることができる。
【0028】
、また、請求項5の生物脱臭装置の運転方法のように、微生物担体の含水率を50〜70重量%の範囲に保持しながら脱臭処理を行うことにより、悪臭成分の除去速度係数が最も大きい状態を保持することが可能になり、高効率な脱臭処理を行うことができるようになる。なお、微生物担体に多孔性ポリビニルホルマール(PVF)樹脂製担体を用いた場合に、その含水率を50〜70重量%にすると特に有効である。
【0029】
また、請求項6の生物脱臭装置の運転方法においては、栄養塩を含む栄養塩溶液を、前記洗浄手段の洗浄液としても用い、前記洗浄手段による微生物担体の洗浄と、前記栄養供給手段による微生物への栄養供給とを、同時的に行うことにより、洗浄手段による微生物担体の洗浄と、栄養供給手段による微生物への栄養供給とを、同時に行うことが可能になり、効率よく、安定した運転を継続して行うことが可能になる。
また、洗浄工程で洗浄液(栄養塩溶液)に移行した浮遊粒子状物質(SS)が、栄養塩と共存する活性の高い微生物により分解されるため、洗浄液を、長期間交換せずに利用することが可能になり、水や薬品の使用量を削減することが可能になるとともに、運転管理を容易にすることが可能になり、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0030】
また、請求項7の生物脱臭装置の運転方法のように、窒素を含む栄養塩として、(NH4)2SO4,KNO3,NH4Clからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いるようにした場合、微生物の活性を適正に維持して、充填塔の閉塞を防止し、かつ、栄養不足による脱臭性能の低下を防止することが可能になり、本願発明をより実効あらしめることができる。
【0031】
また、請求項8の生物脱臭装置の運転方法のように、微生物担体の一部を取り出して含水率を求め、この含水率に基づき、 (a)前記処理対象ガスの供給条件、(b)前記微生物担体と窒素を含む栄養塩溶液を接触させて微生物に栄養を供給する栄養供給条件、(c)前記洗浄手段による微生物担体の洗浄条件、および
(d)前記栄養供給手段による微生物への栄養供給条件からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む運転条件を調整することにより、微生物担体の含水率を50〜70重量%の範囲に保持して、効率のよい生物脱臭処理を長期間より安定して行うことができる。
【0032】
また、本願発明(請求項9)の生物脱臭装置は、
微生物担体と、除去すべき悪臭成分を含む処理対象ガスとを接触させて脱臭処理を行う脱臭手段と、微生物担体に窒素を含む栄養塩溶液を供給して微生物に栄養を供給するための栄養供給手段と、微生物担体を洗浄液で洗浄するための洗浄手段と、脱臭手段において除去される悪臭成分量を計測する悪臭成分除去量計測手段と、栄養塩溶液中の窒素分濃度を検出するための窒素分濃度検出手段とを具備していることから、悪臭成分量計測手段で計測した悪臭成分量と、窒素分濃度検出手段で検出した窒素分濃度から、処理対象ガスから除去される悪臭成分に由来する炭素量と、栄養供給手段からの微生物に供給される栄養塩に由来する窒素量の関係を管理することが可能で、本願請求項1〜8の方法を効率よく実施することが可能である。したがって、この生物脱臭装置を用いることにより、微生物の活性を適正に維持して、充填塔の閉塞や、栄養不足による脱臭性能の低下のない、安定した、効率のよい生物脱臭を継続して行うことが可能になる。
なお、本願発明において、脱臭手段で除去される悪臭成分量を計測する悪臭成分除去量計測手段としては、例えば、設備の一部として配設された分析機器はもちろん、検知管式のガス濃度検出手段などの簡易検出手段をも含む広い概念である。
また、本願発明において、栄養塩溶液中の窒素分濃度を検出するための窒素分濃度検出手段とは、設備の一部として配設された分析機器はもちろん、パックテスト(株式会社共立理化学研究所)などの簡易検出手段をも含む広い概念である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に本願発明の実施例を示して、本願発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0034】
図1は本願発明の一実施例にかかる生物脱臭装置であるカラム回転型生物脱臭装置の主要部の構成を模式的に示す斜視図、図2はこの生物脱臭装置における処理ガスの流れなどの動作を模式的に示す平面断面図である。
【0035】
この生物脱臭装置は、図1,図2に示すように、円筒状で、定期的に矢印Yの方向(時計方向)に回転させることが可能で、かつ、回転軸が略垂直になるように配設され、微生物を担持させた担体が充填された領域が周方向に、4個の担体充填領域10(10a,10b,10c,10d)に均等に分割された脱臭機構部1と、脱臭機構部1を回転させるための回転駆動手段2と、被処理ガスを、担体充填領域10(10a,10b,10c,10d)のうちの、所定の担体充填領域10(図1では10c)に供給する被処理ガス供給ライン3と、所定の担体充填領域で脱臭処理が行われた被処理ガスを、次の担体充填領域に導く被処理ガス案内ライン4a,4bと、脱臭処理が行われた後の処理ガスを排出する処理ガス排出ライン7と、脱臭機構部1が回転することにより、担体充填領域10(10a,10b,10c,10d)のうち、周方向の所定の位置である洗浄・栄養塩供給ゾーンD(図2)に移動した担体充填領域10(図2では10d)を洗浄し、栄養補給する洗浄・栄養塩供給手段5と、洗浄・栄養塩供給ゾーンD(図2)に移動した担体充填領域10(図2では10d)には被処理ガスが供給されず、洗浄液が供給されて担体充填領域10dの洗浄・栄養塩供給が行われるようにする、脱臭処理と洗浄・栄養塩供給処理とを切り換える機能切換機構6とを備えている。なお、洗浄・栄養塩供給手段5は、洗浄液(栄養塩溶液)槽11,洗浄液供給ポンプ12、洗浄液供給配管13などから構成されている。
【0036】
この実施例のカラム回転型生物脱臭装置において、処理対象ガスは高濃度処理ゾーンCの充填層に入り、順次、中濃度処理ゾーンBの充填層、低濃度処理ゾーンAの充填層を通過して脱臭が行われた後、系外に排出される。
【0037】
ガスと接触しない洗浄・栄養塩補給ゾーンDでは、余剰菌体排出のための洗浄と栄養塩の補給が行われる。
この実施例では、栄養塩溶液を用いて洗浄が行われることにより、洗浄ゾーンの充填層には水分と栄養塩が供給されるように構成されている。
なお、本願発明においては、洗浄液による微生物担体の洗浄と、栄養塩の供給を別の工程で行うように構成することも可能である。
【0038】
そして、各担体充填領域10は、所定のゾーン(位置)におけるガス処理を一定時間行った後、カラムを回転させることにより、ゾーンの切替が行われる。
具体的には、以下のようにして、各担体充填領域10の洗浄・栄養塩補給と、ゾーンの切換が行われる。
【0039】
すなわち、この実施例のカラム回転型生物脱臭装置においては、毎日1回、各担体充填領域10(10a,10b,10c,10d)(全充填層)を90°、180°、270゜と回転させて、順次、洗浄・栄養塩供給ゾーンDに移動させ、合計4つの担体充填領域10(10a,10b,10c,10d)のそれぞれに栄養塩溶液を供給して、各々5分間、各担体充填領域10(10a,10b,10c,10d)を栄養塩溶液に浸漬させ、その後、さらに180°回転させて、1つの担体充填領域10がガス処理に供されるゾーンが、低濃度処理ゾーンA、中濃度処理ゾーンB、高濃度処理ゾーンCへと、一日ずつ順に切り替わるようにしている。
なお、この実施例のカラム式生物脱臭装置においては、切換のタイミングを除いて、常にガス処理と充填層の洗浄が同時に実行可能で、効率的な操作が行われるように設計されている。
【0040】
なお、この実施例では、微生物を担持させる担体として、多孔性ポリビニルホルマール(PVF)樹脂製の特注品を用いている。なお、1つの担体充填領域(充填層)10の容積は9.7Lで、合計4つのゾーンのそれぞれに、9.7Lの微生物担体を充填した。
【0041】
そして、上述のように構成されたカラム回転型生物脱臭装置を用い、悪臭成分(VOC成分)をトルエンとする処理対象ガスを用いて連続脱臭処理実験を行った。処理ガス量は2〜4m3-1、滞留時間は26〜52sec、ガス中トルエン濃度は約300ppmvとなるように調整した。
ただし、運転条件は、表1に示すように、一定期間毎に条件1〜条件5のように変更した。
また、実験期間中、微生物担体の洗浄は、1日1回の割合で行った。
【0042】
【表1】

【0043】
また、本実験で当初に使用した栄養塩溶液の組成は表2に示す通りである。ただし、実験中、栄養塩溶液には栄養塩を適宜補給しているので、その中の栄養塩に由来する窒素濃度は、図3に示すように変動している。
【0044】
【表2】

【0045】
実験期間中、1日1回の微生物担体の洗浄操作前には、装置のガス流入口、流出口におけるトルエンガス濃度をガスクロマトグラフィー(GC-FID(G2800, Yanako))により測定するとともに、装置のガス流入口、流出口における炭酸ガス濃度を、検知管(北川式ガス検知管、光明理化学工業)により測定した。
【0046】
その後、合計4つの各担体充填領域10(10a,10b,10c,10d)(全充填層)を順次、洗浄・栄養塩供給ゾーンに移動させて、順に栄養塩溶液を供給して、合計4つの各担体充填領域10(10a,10b,10c,10d)(全充填層)を各々5分間、栄養塩溶液に浸漬させた。
【0047】
そして、全充填層の洗浄が終了した後、タンクより採取した栄養塩溶液試料を、孔径0.45μmのシリンジフィルター(DISMIC-25CS,ADVANTEC)に通し、NH4+−N(アンモニア態窒素)濃度を、インドフェノール法にて測定した。
また、NO2-−N(亜硝酸態窒素)、NO3-−N(硝酸態窒素)、PO43-−P(リン酸態リン)およびSO42-−S(硫酸態硫黄)濃度をイオンクロマトグラフィ(CBM-20A、SIMADZU,使用カラム;Shodex 1C-1-524A)にて測定した。
【0048】
別途、洗浄液(栄養塩溶液)槽内のSS(浮遊粒子状物質)濃度をグラスファイバーろ紙(GS-25,ADVANTEC)による重量測定にて定量した。
【0049】
また、洗浄時に充填層に補給された水分量を、洗浄前後のタンク水量変化により計測し、水量変化と栄養塩濃度より、充填層への栄養塩供給量を算出した。
【0050】
そして、上述のようにして得たデータから、栄養塩供給量とトルエン処理量との関係を考察した。
なお、実験開始(装置起動)前には、未使用の栄養塩溶液17Lと、尿処理施設にて採取した活性汚泥3リットルを混合した溶液を、1週間トルエン含有ガスにて曝気し、その後、未使用の栄養塩溶液20Lを新たに加えた栄養塩溶液を用意し、合計4つのゾーンの充填層(全充填層)をこの栄養塩溶液に、それぞれ1日30分ずつ2日間の条件で浸漬した。
【0051】
[実験結果]
図3に上記実験の全工程における、悪臭成分(VOC)除去率と窒素塩溶液(洗浄液)中の窒素(アンモニア態窒素)濃度との関係を示す。
なお、図3において、右縦軸のNH4−N濃度は、窒素塩溶液(洗浄液)中のアンモニア態窒素の濃度を示す。
また、NH4−N補給時期は、下方への矢印を付した時点で、窒素塩溶液(洗浄液)に窒素分を含む塩を添加したことを示す。
図3より、悪臭成分(VOC)除去率と窒素源消費量との間には相関関係があることがわかる。
【0052】
また、図3から、この実施例の条件においては、窒素塩溶液(洗浄液)中のアンモニア態窒素の濃度が約400mg/L程度にまで上昇した場合、除去率もほぼ確実に上昇していることがわかる。
【0053】
なお、この実施例のカラム回転型生物脱臭装置の場合、栄養塩溶液に充填層を浸漬させることにより、微生物担体に水分とともに栄養塩が供給される。そして、水分とともに微生物担体に捕捉された栄養塩の消費は、主にガス処理を行う菌体、つまり微生物担体に付着した菌(微生物)により行われる。
したがって、各ゾーンが順次洗浄(栄養塩供給)に付される直前における微生物担体の栄養塩存在状態としては、
(a)まだ栄養塩が残っている状態、
(b)すでに栄養塩が消費され尽している状態、
の2つの場合が想定される。
ガス処理があまり十分に行われなかった場合、窒素塩はそれほど消費されず、(a)のまだ栄養塩が残っている状態となり、ガス処理が十分に行われて、多量の悪臭成分が除去された場合には、(b)の栄養塩が消費され尽している状態となり、(b)の状態では、その後に脱臭効率が低下することになる。
【0054】
したがって、安定して良好な脱臭を行うためには、各ゾーンが洗浄(栄養塩供給)に付される直前まではある程度の栄養塩が残っている状態に保たれることが望ましい。
ところが、運転時に微生物担体から分析サンプルを採取することが困難であることから、通常は、充填層に残存する窒素量を直接分析・定量することができないが、本発明(本実施例)では、各ゾーンの洗浄工程の前後における洗浄液(栄養塩溶液)中の窒素分の消費量より、1洗浄当りの充填層単位容積当りの窒素消費量および、1日当りの窒素消費量を算出するとともに、トルエン処理量から炭素除去量を算出し、窒素消費量と対比できるようにしている。
【0055】
その結果、窒素消費量と、炭素除去量との関係は、表1の条件1〜5においては、図4に示すように、炭素除去量100gに対する窒素消費量が、
条件1では3.5g、
条件2では1.9g、
条件3では1.4g、
条件4では2.4g、
条件5では2.5g
と、1.4g〜3.5gの範囲となり、全工程を通じての、窒素消費量と炭素除去量との関係は、炭素除去量100gに対して、窒素消費量が約2.5gとなることが確認された。
すなわち、除去した悪臭成分に由来する炭素の除去量100gに対して、窒素塩(ここではアンモニウム塩)に由来する窒素を1.4〜3.5gの範囲で供給することにより、この実施例で実現されるような効率のよい生物脱臭を行うことが可能になることが確認された。
【0056】
なお、上記実施例では、除去した悪臭成分に由来する炭素の除去量100gに対して、窒素塩(ここではアンモニウム塩)に由来する窒素を1.4〜3.5gの範囲で供給したが、その他の単発的な実験や、小規模実験により、除去した悪臭成分に由来する炭素の除去量100gに対して、窒素塩(ここではアンモニウム塩)に由来する窒素を1.0〜5.0gの範囲で供給した場合に、良好な結果が得られることが確認されている。
【0057】
また、栄養塩溶液中の栄養塩に由来する窒素の濃度は、この実施例では、表2に示すように、(NH42SO4の濃度を2000mg/Lとしているので、窒素の濃度は約210mg/Lとなるが、その後の窒素分の消費、栄養塩の追加により、脈動があることは図3に示すとおりである。
【0058】
なお、この実施例では、運転の一部の工程において、栄養塩溶液中の窒素分濃度をモニタリングして、悪臭成分に由来する炭素量と、微生物に供給される、栄養塩に由来する窒素量の関係を制御するようにしたが、その場合、簡便な方法で、微生物の活性を適正に維持して、微生物の過剰な繁殖による微生物担体の閉塞や、栄養不足による脱臭性能の低下を防止して、効率よく安定した生物脱臭処理を行うことが可能になることが確認されている。
【0059】
また、上述のSS(浮遊粒子状物質)濃度の測定結果から、洗浄液(栄養塩溶液)に移行した浮遊粒子状物質(SS)は、栄養塩と共存する活性の高い微生物により分解され、結果的に洗浄液中のSSの濃度は1000ppm以下に保たれることが確認された。また,SSの濃度が低く保たれることから、洗浄液は長期間交換せずに利用することが可能で、水や薬品の使用量を削減するとともに、運転管理を容易にすることが可能になることが確認された。
【0060】
[微生物担体の含水率と悪臭成分の除去速度の関係]
また、微生物担体の含水率と悪臭成分の除去速度の関係を調べるため、次のような実験を行った。
上述のように構成されたカラム回転型生物脱臭装置を用い、トルエンを悪臭成分(VOC成分)とする処理対象ガスを用いて脱臭運転を行い、所定の時点で運転しているカラムから微生物担体を取り出し、その含水率を目標とする条件に調整した後、含水率が目標値に調整された微生物担体を用いてトルエンの除去速度を調べた。
【0061】
具体的な実験方法は以下の通りである。まず、上記カラム回転型生物脱臭装置を用いて、処理ガス量:0.5m3-1、滞留時間:38sec、ガス中トルエン濃度:約200ppmvの条件で脱臭運転を行い、ほぼ定常状態になった状態で、運転しているカラムから微生物担体を取り出し、室温でデシケータなどを用いて乾燥を行い、電子はかりで微生物担体の重量を測定し、目標とする含水率となったところで、微生物担体をアクリル製密閉容器に均等に分散させて静置した後、悪臭成分としてトルエンを含有するガスを封入して、プラスチックシリンジで容器内を撹拌しながら、除去経過時間tにおけるトルエン濃度の減衰を観察し、微生物担体の含水率とトルエン除去速度係数kの関係を求めた。
【0062】
微生物担体の含水率は
{(水分+微生物+栄養塩+担体)の重量−担体の乾燥重量}/{(水分+微生物+栄養塩+担体)の重量}
で表される値である。
なお、含水率の測定は、具体的には、採取した微生物担体試料の湿潤重量を直ちに測定してこの値をWBとし、微生物担体を十分に水洗して担体表面上の微生物層を除去し、担体を乾燥機にて乾燥させたものの乾燥重量を測定してこの値をWBとし、下記の式(1)により求めた。
{(WA−WB)/WA}×100 ……(1)
【0063】
また、下式(2)によりトルエン除去速度係数kを求めた。
k=(1/t)×ln(C0/C) ……(2)
ただし、
0:初期ガス中トルエン濃度(ppmv)
C:除去経過時間t(sec)におけるガス中トルエン濃度(ppmv)
t:処理対象ガス封入後の除去経過時間(sec)
k:トルエン除去速度係数(sec-1
【0064】
上記実験で調べた、微生物担体の含水率とトルエン除去速度係数の関係を図5に示す。
図5に示す結果から、トルエンの除去速度係数は、微生物担体の含水率が略50〜70重量%の範囲においてほぼ最大になることがわかる。
【0065】
なお、微生物担体の含水率を目標とする範囲に維持する方法としては、例えば、微生物担体比表面積、カラム断面積、カラム高さ、空塔線速度、被処理ガスの流入相対湿度、被処理ガスの温度などの条件を勘案して、シミュレーションを行い、それを実験データなどの実測値により修正する方法などが考えられる。このような方法を採用することにより、微生物担体の含水率を効率よく、所定の範囲に維持することが可能になる。ただし、微生物担体の含水率を目標とする範囲に維持する方法に特別の制約はなく、種々の方法で含水率を所定の範囲に保つように構成することが可能である。
【0066】
なお、上記実施例では、4個の担体充填領域を備え、3段の脱臭処理を行うとともに、1個の領域において洗浄・栄養塩供給が行われるようにしたカラム回転方生物脱臭装置を用いる場合を例にとって説明したが、本願発明において、脱臭装置の具体的な構成に制約はなく、通常の充填塔式の脱臭装置、流路切り換え式で多段処理を行うようにした脱臭装置などを用いる場合にも本願発明を適用することが可能である。
【0067】
また、上記実施例では、トルエンを含むガスを処理対象ガスとしているが、本願発明においては、処理対象ガスの種類に特別の制約はなく、種々の悪臭成分を含むガスを処理対象ガスとする場合に本願発明を適用することが可能である。
【0068】
本願発明はさらにその他の点においても上記実施例に限定されるものではなく、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
上述のように、本願発明によれば、煩雑な運転操作や、複雑な設備を必要とせず、微生物の活性を適正に維持して、安定した生物脱臭処理を継続して行うことが可能になる。
したがって、本願発明は、揮発性有機化合物(VOC)に由来する悪臭をはじめとする種々の悪臭成分を除去するための生物脱臭装置の技術分野に広く適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本願発明の一実施例にかかるカラム回転型生物脱臭装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】本願発明の一実施例にかかるカラム回転型生物脱臭装置の構成を模式的に示す平面断面図である。
【図3】本願発明の一実施例にかかるカラム回転型生物脱臭装置を継続的に運転した場合における、悪臭成分(VOC)除去率と窒素塩溶液(洗浄液)中の窒素(アンモニア態窒素)濃度の関係を示す。
【図4】本願発明の一実施例にかかるカラム回転型生物脱臭装置を継続的に運転した場合の、条件1〜条件5における炭素除去量と窒素消費量の関係を示す図である。
【図5】微生物担体の含水率とトルエンの除去速度係数の関係を示す図である。
【図6】本願の出願人の先願にかかる生物脱臭装置の主要部の構成を模式的に示す図である。
【図7】図6の生物脱臭装置の構成を模式的に示す平面断面図である。
【図8】従来の生物脱臭装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 脱臭機構部
2 回転駆動手段
3 処理対象ガス供給ライン
4a,4b 処理対象ガス案内ライン
5 洗浄・栄養塩供給手段
7 処理ガス排出ライン
10(10a,10b,10c,10d) 担体充填領域
11 洗浄液(栄養塩溶液)槽
12 洗浄液(栄養塩溶液)供給ポンプ
13 洗浄液(栄養塩溶液)供給配管
A 低濃度処理ゾーン
B 中濃度処理ゾーン
C 高濃度処理ゾーン
D 洗浄・栄養塩供給ゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体に微生物を担持させた微生物担体と、除去すべき悪臭成分を含む処理対象ガスとを接触させて脱臭処理を行う脱臭手段と、
微生物担体を洗浄液で洗浄する洗浄手段と、
前記微生物担体と窒素を含む栄養塩溶液を接触させて微生物に栄養を供給する栄養供給手段と
を備えた生物脱臭装置を用い、
洗浄手段による微生物担体の洗浄と、栄養供給手段による微生物への栄養供給とを行いながら、継続して脱臭処理を行う生物脱臭装置の運転方法であって、
処理対象ガスから除去される悪臭成分に由来する炭素量と、栄養供給手段により微生物に供給される栄養塩に由来する窒素量の関係を所定の範囲に保持しながら脱臭処理を行うこと
を特徴とする生物脱臭装置の運転方法。
【請求項2】
担体に微生物を担持させた微生物担体と、除去すべき悪臭成分を含む処理対象ガスとを接触させて脱臭処理を行う脱臭手段と、
微生物担体を洗浄液で洗浄する洗浄手段と、
前記微生物担体と窒素を含む栄養塩溶液を接触させて微生物に栄養を供給する栄養供給手段と
を備えた生物脱臭装置を用い、
洗浄手段による微生物担体の洗浄と、栄養供給手段による微生物への栄養供給とを行いながら、継続して脱臭処理を行う生物脱臭装置の運転方法であって、
処理対象ガスから除去される悪臭成分に由来する炭素量と、栄養供給手段により微生物に供給される栄養塩に由来する窒素量の関係を所定の範囲に保持するとともに、
下記の式(1)で表される微生物担体の含水率を所定の範囲に保持しながら脱臭処理を行うことを特徴とする生物脱臭装置の運転方法。
微生物担体の含水率(重量%)={(WA−WB)/WA}×100 ……(1)
ただし、
WA:微生物担体の重量であって、担体と、担体に担持された微生物、水分および栄養塩の重量の合計値、
WB:担体のみの乾燥重量
【請求項3】
栄養塩を補給しつつ、前記栄養塩溶液を繰り返して用いるとともに、前記栄養塩溶液中の窒素分濃度をモニタリングして、前記栄養塩溶液中の窒素分濃度を管理することにより、悪臭成分に由来する炭素量と、微生物に供給される、栄養塩に由来する窒素量の関係を制御することを特徴とする請求項1または2記載の生物脱臭装置の運転方法。
【請求項4】
前記処理対象ガスから除去される悪臭成分に由来する炭素量と、微生物に供給される栄養塩に由来する窒素量の関係を、炭素量100gに対して、窒素量1.0〜5.0gの範囲とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の生物脱臭装置の運転方法。
【請求項5】
前記微生物担体の含水率を50〜70重量%の範囲に保持しながら脱臭処理を行うこと
を特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の生物脱臭装置の運転方法。
【請求項6】
前記栄養塩を含む栄養塩溶液を、前記洗浄手段の洗浄液としても用い、前記洗浄手段による微生物担体の洗浄と、前記栄養供給手段による微生物への栄養供給とを、同時的に行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の生物脱臭装置の運転方法。
【請求項7】
前記窒素を含む栄養塩が、(NH4)2SO4,KNO3,NH4Clからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の生物脱臭装置の運転方法。
【請求項8】
前記生物脱臭装置内より、微生物担体の一部を試料として取り出し、微生物、水分、および栄養塩を担持した湿潤状態のまま重量WAを測定した後、前記微生物担体から微生物、水分、および微生物を除去して前記担体のみの重量WBを測定し、得られた前記WAおよび前記WBの値から、前記式(1)により微生物担体の含水率を求め、この含水率の測定値に基づき、前記微生物担体の含水率が50〜70重量%の範囲に保持されるように、
(a)前記処理対象ガスの供給条件、
(b)前記微生物担体と窒素を含む栄養塩溶液を接触させて微生物に栄養を供給する栄養供給条件、
(c)前記洗浄手段による微生物担体の洗浄条件、および
(d)前記栄養供給手段による微生物への栄養供給条件
からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む運転条件を調整すること
を特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の生物脱臭装置の運転方法。
【請求項9】
担体に微生物を担持させた微生物担体と、除去すべき悪臭成分を含む処理対象ガスとを接触させて脱臭処理を行う脱臭手段と、
微生物担体を洗浄液で洗浄する洗浄手段と、
前記微生物担体と窒素を含む栄養塩溶液を接触させて微生物に栄養を供給する栄養供給手段と
前記脱臭手段において除去される悪臭成分量を計測する悪臭成分除去量計測手段と、
前記栄養塩溶液中の窒素分濃度を検出するための窒素分濃度検出手段と
を具備し、
前記悪臭成分量計測手段で計測した悪臭成分量と、前記窒素分濃度検出手段で検出した窒素分濃度から、処理対象ガスから除去される悪臭成分に由来する炭素量と、栄養供給手段からの微生物に供給される栄養塩に由来する窒素量の関係を管理するように構成されていること
を特徴とする生物脱臭装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−674(P2009−674A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128134(P2008−128134)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【出願人】(390036663)木村化工機株式会社 (27)
【Fターム(参考)】