説明

生物防御のための免疫療法

ヒト中和抗体(完全抗体または機能的フラグメント)は、炭疽菌、ボツリヌス、痘瘡、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウィルス(VEEV)、西ナイルウィルス(WNV)などの感染性作用物質に対する抗毒素または抗感染症剤として有用である。ファージディスプレイ技術と、ワクチンを接種した人または回復期の人のリンパ細胞から誘導したメッセンジャーRNAとを使用し、本明細書に記載の方法にしたがって、感染性作用物質からの抗原に結合する抗体フラグメント(Fab)のパネルを速やかに決定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、同時継続の米国特許出願番号第10/364,743号(2003年2月11日出願)の部分継続であり、同様に、米国仮出願番号第60/356,086号、同第60/376,408号および同第60/428,807号(それぞれ2002年2月11日、2002年4月29日および2002年11月25日に出願)に優先権を主張する。
【0002】
(発明の背景)
(技術的分野)
本開示は炭疽菌、ボツリヌス、痘瘡、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウィルス(VEEV)、西ナイルウィルス(WNV)などの感染性作用物質に対する抗毒素または抗感染症剤として有用なヒト中和抗体(完全抗体または機能的フラグメント)に関するものである。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の背景)
米国における最近のテロ行為後、我々の炭疽菌感染防止および処置能力に関する懸念が高まった。炭疽菌ワクチンは存在するとはいえ、それは間隔を置いた6回の接種からなり、毎年ブースターを必要とし、ワクチン接種を受けた人々の大部分に不快な副作用を起こす。それはこのワクチン接種の普及を妨げ、依然として一般大衆に接種する際の主な欠点の一つである。現在使用される炭疽菌ワクチンはビオポート社(Bioport)(ランシング、ミシガン州)によって、Bacillus anthoracisの溶解物から保護抗原を精製する工程を含む製法によって作られる。これは今のところスターン(Sterne)生ワクチン菌種であるようにみえる;ただしこのワクチンを生成するために使用できる、LFおよびEFに欠けるその他の菌種並びに収率の高い組換えBacillus subtilisが使用できるかも知れない。このような付加的ワクチンの試験および比較は困難で、市場も小さいため、実際的な試験、認可および生産が妨げられていると推測される。現在のワクチンの副作用、多くの人が抱いている湾岸戦争症候群との関連性、およびテロリストの脅威に直面して大規模ワクチン接種が必要とされる可能性は、現在のワクチンの改良を推めるべきであることを示唆する。合理的ワクチンが存在しない限り、汚染に対する処置がテロ行為に対する主な対応策である。
【0004】
アメリカ合衆国において汚染した手紙から発生した炭疽菌汚染は全て、抗生物質に感受性のある炭疽菌の菌種に関係していたが、痛ましいことに多くの人が診断の遅れから死亡した。このため疾病および死を阻止でき、抗生物質治療および/または適切な免疫の追加時期を効果的にすることができる炭疽菌汚染対策を講ずることが有用である。
【0005】
炭疽菌による主な死亡原因は、この細菌によって生産される2種類の関連毒素に対する体の反応である。これらは両方とも、PA83として細胞受容体に結合し、その後PA63にプロセッシングされるPA63と呼ばれるプロセスドタンパク質を含む。ヒト細胞における炭疽菌毒素に対する受容体であるATR(炭疽菌毒素受容体)が最近確認された。Bradley et al.,Nature,Vol 414,November 8,2001を参照されたい。その後PA63は、EFタンパク質(浮腫因子)またはLFタンパク質(致死因子)のいずれかと結合できるハプタマーを形成する。ハプタマー化PA63および、結合EFおよび/またはLFのエンドソーマル・インターナリゼーションによりEFおよびLF毒素の細胞内への導入が容易になる。エンドソーム小胞の酸性化によりPAハプタマーは孔を形成し、その孔を通ってEFおよび/またはLFが細胞質に侵入し、それらの毒性作用をあらわす。EF、LFまたはPAという3成分のいずれも、それだけでは病気を起こすことはできない。
【0006】
PAの受容体への結合を阻止できる、またはEFおよびLFとPAとの相互作用を遮断できることを示すいくつかの証拠がある。ワクチンそれ自体は、精製されたPA部分だけを用いて防御的抗体を作り出す。Littleら(Infect.Immun.65:5171−5175(1997))はモルモットにPA抗体を受動投与した。それはその後の炭疽菌感染に対する防御を示した−ポリクローナル抗体では70%防御し、そしてあるモノクローナでは死を2日間遅らせた。PAの受容体への結合を阻止するために短鎖抗体フラグメント(scFvs)も使用される。Cirinoら(Infect.Immun.67:2957−2963(1999))はナイーブ・ヒト・ライブラリーからPA83に結合する多数のscFvsを同定した。彼らは細胞をベースとするアッセイにこれらを使用した。このアッセイにおいてPA63の短縮型であるPA32はEGFPと融合し、PA63と同様な仕方で細胞に取り込まれた。EGFPの蛍光を利用して、細胞内取り込みにおけるPA32−EGFPに対するこれらscFvsの効果をモニターすることができた。細胞によるPA32−EGFPの取り込みを阻止できる一つのscFvsが同定された。Mourezら(Nature Biotec.19:958−961(2001))は、炭疽菌毒素に対する多価ペプチドインヒビタを作出した。それはEF/LF部位で、またはその近くでPA63ハプタマーに結合する。彼らは細胞をベースとするアッセイを使用して、このインヒビタがPA/LF毒性から細胞を防御できることを証明した。ラットにPAおよびLFの最小致死量を10回投与した場合、その攻撃の3−4分後に上記インヒビタを投与するとラットは防御されることも彼らは示した。
【0007】
これらのデータは全て、炭疽菌感染の診断が遅れた患者における抗生物質との組み合わせ治療のための治療用ヒト組合わせ抗体が開発できることを示唆するものである。
【0008】
ベネズエラウマ脳脊髄炎ウィルス(VEEV)は、ウマおよびヒトホスト両方に伝染し得る、蚊によって媒介されるアルファウィルスである。ウマおよびロバ集団の感染は高い死亡率に至ることがあり、その一方で自然のヒト感染は発熱、悪寒、倦怠感およびひどい頭痛からなり、1−4%の人では重症脳炎にまで悪化する。しかしVEEVは、その低いヒト感染量、容易な増殖およびエーロゾル化のため、CDCによって“カテゴリーB”の危険な生物作用物質として分類されている。エーロゾル化VEEVは効果的生物兵器として使用できる。その際強い感染力をもつことが知られており、嗅索から容易に中枢神経系に直接近づくことができるタイプのVEEVが使用される。このウィルスの複製がCNSで始まると脳炎が深刻なリスクとなる。残念なことに、VEEV感染症の処置は支持療法に限られる。
【0009】
VEEVに対して使用できる研究段階のワクチンがあるが、それらの使用はリスクのある研究者や戦闘隊員に限られている。弱毒化生ワクチンであるTC−83(FDA Investigational New Drug#142)(Pittman et al.,Vaccine 14,pp337−343(1996))がこれらの両集団に使用されてきた。このワクチンは猛毒のトリニダードロバウィルスを連続継代組織培養することによって確立された。TC−83ウィルスは大部分のヒトおよびウマにおいてVEEVに特異的な中和抗体を誘導する。(Kinney et al.,Virology 170,19−30(1989))。実験動物において、このワクチンは猛毒VEEV菌種の皮下投与または空気感染に対して免疫を生ずることができた(Phillpotts,Vaccine 17,pp2429−2435(1999))。しかし、ワクチンを投与されるヒトの18%までは最初のワクチン接種で防御を得ることができない。さらに、このワクチンは比較的高率の反応原性を有する(25%)。最近の一報告は、TC−83はもはやヒトに使用できないと述べている(Phillpotts,Vaccine 20,p1497−1504(2002))。TC−83に関する懸念が不活性化ワクチン、C−84の開発を促進した。しかしC−84は動物モデルにおいてこのウィルスの猛毒株による空気感染を防御することができなかった(Pittman et al.,Vaccine 14,pp337−343(1996))。その結果、C−84は研究者用の一次イムノゲンとしては使用されず、むしろTC−83に反応しない人のための追加的ワクチンとして、またはブースターとして(この際それはリコール抗原として作用する)有用である。このため、強力な中和抗VEEV抗体のような抗VEEV療法が必要に迫られている。
【0010】
VEEVはエンベロープに包まれたウィルスであり、エンベロープとカプシド構造とは脂質二重層によって分離され、E2糖タンパク質の膜貫通型尾部を介して相互作用すると考えられている。シンドビスウィルスと同様に、VEEVはE1/E2ヘテロダイマーのトリマーとして構成されたビリオンタンパク質スパイクを有する(Paredes,et al.,J.Virology 75,ppp9532−9537(2001);Phinney,et al.,J Virology 74,pp5667−5678(2000))。厳密な中和部位に関係するかも知れないE1(gp50)およびE2(gp56)上のエピトープがモノクローナル抗体を使用して研究された(Mathews and Roehrig,J.Immunology,pp2763−2767(1982))。部位E2はE2スパイクの先端に存在し、中和(N)エピトープであると考えられる。その他のエピトープも中和活性を示し、E2部位と密接な構造的関係を有するらしい。
【0011】
VEEV感染のマウスモデルはヒトに似た病原論的機序を辿ると考えられている。ウィルス攻撃前の中和抗体の受動的移入はこれら正常マウスの死を効果的に予防した(Roehrig and Mathews,Virology(1985)142,pp347−356;Phillpotts,et al.,Vaccine(2002)20,1497−1504などを参照されたい)。非中和抗体もマウスを腹腔内または静脈内ウィルス攻撃から防御することを示した(Hunt and Roehrig,Vaccine(1995)13,pp281−288;Hunt et al.,Virology(1991)185,281−290)。非中和抗体がウィルス攻撃を防御する作用機序は不明であるが、それらがウィルス複製を遅らせ、そうすることによってホスト免疫系の反応時間をウィルス感染に対応させて、ウィルス感染を抑制するという仕方で作用すると推測される(Hunt et al.,Virology(1991)185,281−290)。VEEV空気感染に対するヒトの有効治療は、例えば汚染時またはその直後にウィルスを直接中和するというような、より迅速な動作を必要とする。特に重要な問題は、中和抗体がVEEVの脳への広がりを阻止する能力である。これに関連して、空気感染によるウィルス攻撃後24時間までにマウスに中和抗体を投与すると防御効果が示されたことは重要である(Phillpotts,et al.,Vaccine 20,1497−1504(2002))。
【0012】
これらの研究および同様な研究に記載されたネズミ抗体はヒトにおけるVEEV感染の予防および処置に使用できるかも知れ〜かし齧歯類の抗体はヒトでは高度に免疫原性であり、したがってそれらの臨床的応用は限られる。特に治療において反復投与が必要とされる場合にこれが言える。抗体ヒト化と呼ばれるプロセスを用いて、元の抗原特異性を維持するように努めながら齧歯類抗体の大部分をヒト抗体領域で置換することによって、齧歯類抗体の免疫原性を弱めることができる。しかしこの企ては通常、時間もお金もかかり、ヒト化Abに対する免疫原性反応の可能性は排除されない。VEEV上の完全にヒトの標的中和エピトープである抗体が最も好ましい治療的候補である、なぜならばそれらはウィルス感染を効果的にブロックする最良の機会を提示し、免疫原となるリスクが最も小さいからである。
【0013】
ボツリナム神経毒は知られている限り最も強力な細菌性毒素であり、ヒトにおけるLD50は1ng/kgである。この毒素は細菌Clostridium botulinumによって、そして数種のその他のClostridium菌種によって生産され、毒素のセロタイプが7種類(AからGまで)確認されている。分子レベルでは、この毒素は150kDaタンパク質として産生される。このタンパク質はプロテアーゼに曝されると分解し、結合したままの2本の鎖:約50kDaの軽鎖および100kDaの重鎖を生成する。重鎖は神経細胞への結合をおこすドメインを含み、その一方で軽鎖は神経細胞質に侵入する亜鉛依存性エンドプロテアーゼドメインを含む。内部に入ると、このエンドプロテアーゼは、例えばシナプトブレビン、シンタキシンおよびSNAP−25などのシナプスタンパク質のタンパク質分解的切断によってその毒性作用をあらわす。これらタンパク質の破壊は神経伝達を阻害し、進行性マヒや死をもたらす。
【0014】
ボツリナム神経毒素に対する抗体が防御的であることは受動および能動免疫モデルにおいて示されている。セロタイプAからEまでからなるPBTワクチンが現在、ボツリナム神経毒汚染リスクのある人々に、デパートメント・オブ・ディフェンス(Department of Defense)およびセンター・フォア・ディジーズ・コントロール(Centers for Disease Control)から提供されている。セロタイプFは一般的であるが、セロタイプDおよびGは自然のヒト感染症ではまれに見られるに過ぎず、PBTワクチンはない。セロタイプDおよびGが生物テロ攻撃に使用される可能性は見逃すべきでない。自然感染では次のような幾つかのポリクローナル抗体製剤が免疫治療剤として上首尾に使用されているが、毒素の神経細胞への侵入を最小にするためにはこれらを感染初期に与えなければならない。次のようないくつかのポリクローナル免疫グロブリン製剤が免疫療法剤として使用できる:ウマ三価(A、B、およびE)製剤、免疫グロブリンのFc部分をプロテイナーゼ切断によって除去したウマ六価製剤、およびPBTワクチンを接種したドナーから得られるヒト免疫グロブリン製剤(hBIG)。ウマ製剤は両方とも、処置される人々に過敏反応を起こすという欠点を有する。上記ヒト製剤は耐容性が良く、有効であるが、供給量が足りず、7セロタイプのうち5セロタイプに対して有用であるに過ぎない。自然感染用としても、ボツリヌス神経毒の全てのセロタイプに対する完全ヒト中和抗体の供給を準備することが有用である。2001年の意図的炭疽菌放出後、生物テロに対して我々が無防備であることが知られるようになった結果、このような免疫療法剤の開発がさらに緊急のものとなった。
【0015】
1980年5月の痘瘡根絶宣言(Fernner et al.,1998)および予防接種プログラムの中止以降、予防接種を受けた人々の間では免疫が弱まっており、1980年以降に生まれた人々は予防接種を受けていない。免疫の世界的低下は、生物兵器としてのバリオラウィルス(痘瘡の原因物質である)の意図的放出の脅威を劇的に高めた。このウィルスは生物戦争に特に適するという特徴を有する。このウィルスは呼吸器経路を介してまたは直接接触によって人から人に広がる。このウィルスはエアロゾルの形ではかなり安定であり、その感染量は非常に小さいから、このウィルスのエアロゾル放出は広く伝播する可能性がある(Wherle et al.,1970)。この病気に特異的な処置法はない。大量の感染性ウィルスが紛失する脅威もある。ソビエト連邦公民生物兵器プログラム(Soviet Union’civillian biowepons program)の前副ディレクターであるAlibec(Alibek,1999)は、1980年にソビエト政府は生物兵器プログラムを開始し、爆弾や弾道ミサイルで運搬するための年間何トンものバリオラウィルスを生産する方法を開発したと報告した。1992年のソビエト国民生物戦争プログラムのための経済的援助の減少およびこのプログラムの中止によって、熟練せる科学者、機器、および材料は他の国々に移されたらしい。報告されたアジアにおける流行病は死亡率30%以上であった(Fernner et al.,1998)。今日人々は病気にかかりやすくなっており、移動も多いため、ウィルスは国全体および世界中に非常に速く広まる可能性がある。
【0016】
バリオラウィルスはDNAウィルスであり、それはワクシニア(完全痘疱)、サル痘ウィルス、および血清学的に交差反応するその他数種の動物痘瘡ウィルスを含むポックスウィルス科、およびオルトポックスウィルス属の一メンバーである(Fernner et al.,1998)。バリオラウィルスだけが人から人へ容易に伝播される(Breman anda Henderson,2002)。DNA配列分析の結果、バリオラウィルスとワクシニアウィルスとは密接に関連することが明らかにされた(Massung et al.,1994)。バリオラウィルスの感染量は非常に低く、数ビリオンに過ぎないと考えられている(Wherle et al.,1970)。それは転写し、そのゲノムを複製し、子孫ビリオンを完全に感染細胞の細胞質内に構成する(Moss,1996)。4種類の感染型、すなわち細胞内成熟ウィルス(IMV)、細胞内エンベロープドウィルス(IEV)、細胞関連性エンベロープドウィルス(CEV)、および細胞外エンベロープドウィルス(EEV)が産生する(Moss 1996)。IMVは細胞質に残る主要な型である、EEVは感染粒子の小部分であるが、ウィルスのインビトロおよびインビボにおける長期にわたる伝播および広がりに関して生物学的に重要な型である(Payne,1980;Smith and Vanderplasschen,1998;Law and Smith,2001)。オルトポックスウィルス感染の防御にはEEVに対する免疫反応が必要だが、IMVに対する免疫反応は必要ないことが示されている(Appleyard et al.,1971;Boulter,1969;Boulter and Appleyard,1973;Boulter et al.,1971;Ichihashi et al.,1971;Morgan,1976;Payne,1980;Payne and Kristensson,1985;Turner nd Squires,1971)。EEVの外部エンベロープのための10種類のタンパク質をコードする6遺伝子が報告されている(Payne,1978;Payne,1979)。それらはA33R(gp22−28)(Roper et al.,1996)、A34R(gp22−24)(Duncan and Smith,1992)、A36R(p45−50)(Parkinson and Smith,1994)、A56R(gp86、重度にグリコシル化されたヘマグルチニン)(Payne and Norrby,1976;Shida,1986)、B5R(gp42)(Isaacs et al.,1992;Englestad et al.,1992)、およびF12LまたはF13L(p37)(Hirt et al.,1986;Blasco and Moss,1991)である。A36Rタンパク質はCEVおよびEEV粒子には存在しないことが最近判明した(van Eijl et al.,2000)。IMVのエンベロープタンパク質はA27L(p14)(Rodriguez and Esteban,1985)、D8L(p32)(Maa et al.,1990;Niles and Seto,1988)、A17L(p21)(Rodriguez et al.,1995)、およびL1R(M25、ミリスチル化ビリオンタンパク質)(Franke et al.,1990)である。A27L、A17LおよびL1RはIMVの融合および透過に関連する(Ichihashi and Oie,1996)。
【0017】
ワクシニアウィルスから製造された痘瘡ワクチンは、それまでに製造された最初のワクチンである。現在の貯蔵量は子ウシの皮膚に増殖させた生ワクシニアウィルスからなる。アメリカ合衆国では貯蔵供給量は限られている;6〜7百万人に接種するのに丁度間に合う。その他の国で、突然の流行が起きた際に全国民に行きわたる十分量を有する国はない。痘瘡ワクチン接種はその他のいかなる型のワクチン接種よりひどい副作用も有する。それが、根絶後にワクチン接種を中止した理由の一つである(Ober et al.,2002)。現在、それは疑いのある症例だけに使用し、集団予防接種としては使用しないことが世界保険機構および米国防疫センターによって推められている(Smallwood et al.,2002)。ワクシニアウィルスのワクチン接種は少なくとも5年間は痘瘡を効果的に予防し、より長期間感染を防止または緩和するらしいが、これは人によって著しい差がある。
【0018】
中和抗体が、オルトポックスウィルスに対する免疫において、特に感染症の悪化および伝染の阻止に重要な役割を演ずることは一般的に意見が一致している。感染を阻止しまたはワクシニア免疫による副作用をコントロールするワクシニア免疫グロブリン(VIG)の利点が明らかにされた(Kempe,1960,Kempe et al.,1961,Hobday,1962)。組換えB5Rタンパク質に対するポリクローナル抗血清はEEV感染を阻止した(Galmiche et al.,1999)。B5Rタンパク質を接種したマウスはワクシニアウィルスによる致死的攻撃を防御した。これは中和抗体によって仲介されると考えられる。タンパク質A33Rも能動および受動免疫において防御した(ただしA34RおよびA36Rは防御しない)が、その防御は抗体値とは関連せず、抗A33R抗体はインビトロでEEVを中和しなかった。著者らは、その防御は単純な抗体結合とは異なる作用機序を含むと考えられると述べている(Galmiche et al.,1999、Schmaljohn et al.,1999)。IMVの膜に存在するワクシニアウィルスのトリマー14kDaタンパク質(A27L,p14)に対するマウス中和抗体を予防的並びに治療的に投与すると、マウスにおけるそのウィルスの複製は効果的に抑制された(Ramirez et al.,2002)。L1RおよびA33R遺伝子を有するDNAワクチン接種により、マウスはL1RおよびA33Rに対する中和抗体で致死的ウィルス攻撃から防御された(Hooper et al.,2000)。
【0019】
エマージング・インフェクシャス・ディジーゼズ(Emerging Infectious Diseases)の最近版(Casadeval,2002)に記述されているように、生物学的作用物質に対する即時免疫を提供し得る唯一適用できる対策は抗体による受動免疫である。ワクチンは防御免疫を誘起するために時間がかかり、ホストの免疫反応生成能力に左右される。その一方で受動免疫はホストの免疫状態には無関係に合理的に防御することができる。受動免疫の長所のなかで、低細胞毒性および高度に特異的な活性は、汚染後処置のその他の手段にまさる。
【0020】
十分な血清中和活性を有する免疫ドナーの確定およびこのようなドナーの骨髄からの組合わせ抗体ライブラリーの作成が、ウィルス感染に対する高度に特異的な中和抗体の大きいパネルを分離するための合理的アプローチである(Burton et al.,1991;Barbas et al.,1992;Williamson et al.,1993;Burioni et al.,1994;Maruyama et al.,1999;Maruyama et al.,2002)。中和エピトープを含む組換えエンベロープタンパク質類に関するライブラリーの選択は簡単な仕事である。マウス抗体とは異なり、ヒト抗体は非免疫原性であり、感染しやすい動物でそれらの効果が十分に特徴づけられた際には、それらは安全に患者に投与できる。
【0021】
生物戦争に使用され得る種類の感染性物質を中和する抗体を同定することが好ましい。これらの生物防御抗体が単一の抗体ライブラリーから誘導できることも好ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0022】
(概要)
ファージディスプレイ技術と、ワクチンを接種した人または回復期の人のリンパ細胞から誘導したメッセンジャーRNAとを使用し、本明細書に記載の方法にしたがって、感染性作用物質からの抗原に結合する抗体フラグメント(Fab)のパネルを速やかに決定することができる。これらのFabと抗原との相互作用の強さは表面プラズモン共鳴を使用してそれらの結合運動を試験するというやり方で決定できる。これらのヒトFabは、残りの定常領域ドメインを含む適切な哺乳動物発現ベクターにサブクローニングすることによって完全IgGに容易に変えることができる。その後小さい動物モデルにおけるインビトロおよびインビボウィルスまたは毒素阻害研究においてこれらのパネルからのFabまたは抗体類を試験することにより、臨床前試験および臨床試験に適切につながる中和抗体のサブセットを同定することができる。これらの抗体はその後上記の作用物質のいずれかに感染した、またはさらされた人々の処置の際に免疫療法剤として使用でき、または汚染リスクが予測される人々に予防的に使用できる。
【0023】
一局面において、感染性作用物質による感染を中和または阻止するための抗体類またはその機能的フラグメントが抗体ライブラリーから同定され、単離され、大量に生産されるという上記抗体ライブラリーが記載される。
【0024】
また別の局面において、炭疽菌感染を効果的に処置するヘテロダイマー抗体類が記載される。上記ヘテロダイマー抗体は抗体ライブラリーから選択される。このライブラリーは免疫されたヒト・ソースから作るのが好ましい。上記ヘテロダイマー抗体は炭疽菌感染に関係する分子、例えば炭疽菌保護抗原またはEFまたはLFタンパク質などに結合し、その活性を無力にし、それによって毒素の細胞内侵入に関係するプログラムを妨害することによって毒素活性を抑制する。これらのプログラムは非制限的に下記を含む:受容体へのPA83結合、PA83をプロセッシングしてPA63にする、PA63の相互作用によりプレポア複合体を形成する、EFまたはLFと上記プレポアとの結合、EFまたはLFの膜転座を可能にするプレポアのコンフォーメショナル変化、または上記ポア(孔)を通過するEFまたはLF転座。この干渉は、体内細胞によるこれらタンパク質の取り込みに関連する毒性作用が弱まるかまたは排除されるように起こる。特に有用な実施形態において、ヘテロダイマー抗体は炭疽菌感染症に含まれる1分子に対して最低1×10−8Mの親和性を有する。また別の実施形態においては、これらの抗体を診断用試薬として用いることができる。もう一つの局面において、ボツリナムを中和する抗体または抗体の機能的フラグメントが記載される。
【0025】
また別の局面において、バリオラウィルス(痘瘡)/ワクシニアウィルスを中和する抗体または抗体の機能的フラグメントが記載される。
【0026】
また別の局面において、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウィルス(VEEV)、を中和する抗体また抗体の機能的フラグメントが記載される。
【0027】
もう一つの局面において、西ナイルウィルス(WNV)を中和する抗体また抗体の機能的フラグメントが記載される。
【0028】
また別の局面において、デング熱を中和する抗体また抗体の機能的フラグメントが記載される。
【0029】
また別の局面において、感染性作用物質による感染を防止するために抗体または抗体の機能的フラグメントを予防的に投与する方法が記載される。
【0030】
また別の局面において、感染性作用物質による感染を処置するために抗体また抗体の機能的フラグメントを投与する方法が記載される。
【0031】
また別の局面において、感染性作用物質を化学量以下の量で中和するFab構成成分を有する抗体が記載される。
【0032】
また別の局面において、PA63のマルチマーを含むワクチン並びにそのようなワクチンの使用法が記載される。
【0033】
また別の局面において、感染性作用物質の存在を検出する(直接または感染性作用物質によって放出される毒素の検出による)アッセイにおいて本開示による感染性作用物質に対する結合親和性を有する抗体または抗体フラグメントを使用し、上記感染性作用物質に関連する疾患の存在を診断する。
【0034】
また別の局面において、感染性作用物質の汚染に反応した抗体類の存在を検出するアッセイにおいて、本開示による感染性作用物質に対する抗体に対する結合親和性を有する抗体または抗体フラグメントがコントロール抗体として使用される。このようなアッセイは感染性作用物質汚染を検出し、上記感染性作用物質に関連する疾患を診断するために有用である。
【0035】
また別の局面において、感染性作用物質に関連する疾患を診断するためのキットが記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本開示によるヒト抗体は全抗体でも抗体フラグメントでもよい。これらの抗体はヘテロダイマーまたは一本鎖抗体でもよい。用語“ヘテロダイマー”とは、自然に生成する抗体のように、抗体または抗体フラグメントの軽鎖および重鎖がジスルフィド結合を介して互いに結合していることを意味する。一本鎖抗体はリンカー配列によって結合する抗体軽鎖および重鎖可変部を有する。
【0037】
本発明のヒト抗体は抗体ライブラリーのスクリーニングによって同定される。抗体ライブラリーを作成およびスクリーニングする技術は当業者の範囲内である。Rader and Barbas,Phage Display,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2000)、Lemer et al.の米国特許第6,291,161号および同時係属出願WO03/025202および米国仮特許出願第60/323,400号を参照されたい。これらの開示は参考としてそのまま本明細書に組み込まれる。
【0038】
一般に、本開示によって抗体ライブラリーを作成する最初の工程は、1種類以上の感染性作用物質に対するまたは感染性作用物質から生ずる抗原類に対する抗体を産生している個体から細胞を集めることを含む。通常そのような個体は、感染性作用物質および/または感染性作用物質からの抗原にさらされたことがある。特に有用な実施形態において、個体は、生物戦争に関して戦略上重要な複数の感染性作用物質または感染性作用物質から生ずる抗原類にさらされる。このような物質は、炭疽菌、炭疽菌からの抗原類、ボツリナム、ボツリナムからの抗原類、痘瘡、痘瘡からの抗原類、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウィルス(VEEV)、VEEVからの抗原類、デング熱、デング熱からの抗原類、チフス菌、チフス菌からの抗原類、黄熱、黄熱からの抗原類、肝炎、肝炎からの抗原類、西ナイルウィルス(WNV)、WNVからの抗原類および重症急性呼吸症候群(SARS)を起こすウィルスからなる群から選択される作用物質を含む。図1は本開示の好ましい実施形態による抗体ライブラリーの作成に適切に使用できる人々の汚染履歴をまとめた表である。抗体類を産生するまたは含む組織から得た細胞で感染または免疫した後約7日目の人々から集める。適切な組織としては血液および骨髄が含まれる。
【0039】
細胞を集め、当業者に公知の方法を用いてそれらからRNAを分離し、組合わせ抗体ライブラリーを作成する。組合わせ抗体ライブラリーを作る方法は、抗体類またはそれらの部分、例えば軽鎖および/または重鎖をコードする標的配列を、ある抗体の単離RNAを用いて増幅することを含むのが一般的である。例えば本来多様である抗体mRNAのサンプルで開始し、第一ストランドcDNAを作り、テンプレートを用意する。その後一般的PCRまたはその他の増幅技術を使用してライブラリーを作成する。
【0040】
抗体ライブラリーのスクリーニングは例えば所望のウィルス抗原に対してパンニングするなど、公知の方法を用いて実現できる。Rader and Barbas,Phage Display,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2000)を参照されたい。幾つかの抗原はクローン化されており、組換えによって作られ、免疫原として使用される。中和能力は、ウィルスと細胞受容体との結合をブロックする抗体の能力を測定する細胞アッセイで評価できる。インビトロで中和能力を有する抗体が同定されたならば、動物モデルでそれらのインビボ試験をおこなうことができる。
【0041】
この方法で同定された抗体類は、有益なことに感染性作用物質による感染症を効果的に処置することができる。本発明の抗体類は完全にヒト抗体であるため、それらの耐容性は安全かつ容易である。その上、多数回投与しても抗イディオタイプ反応が急速に起きることはない。完全抗体を使用する場合、比較的高い親和性と比較的大きいサイズ(一本鎖抗体に比較して)が好ましい;というのは、それらは患者の系内に比較的長時間留まるからである。
【0042】
本開示による抗体ライブラリーを作成し、本開示による抗体類を同定して特徴づける特に有用な方法を以下に述べる。
【0043】
(ライブラリー)
種々の感染性作用物質に対して免疫された現役軍人ドナーの2つの骨髄サンプル(951および1037、および1つの血液サンプル(MD3)、図1参照)の各々から、λまたはκ軽鎖およびIgG重鎖フラグメント(Fd)のいずれかを含む3つのFabライブラリーを誘導した。
【0044】
ライブラリーは、炭疽菌、ベネズエラウマ脳脊髄炎およびボツリナム、西ナイルウィルス、ワクシニアウィルス、およびデング熱など種々の感染性作用物質に対して選択およびスクリーニングを受けることができる。
【0045】
(ライブラリーの作成)
総RNAは、トリ−リアジェント(Tri−reagent)BD(Molecular Research Center,Inc.)を使用し、このメーカーの使用説明書にしたがって骨髄および血液サンプルから得られる。メッセンジャーRNAはオリゴテックス(キアゲン社)スピンカラムを用い、メーカーの使用説明書にしたがって得られる。抗体Fabフラグメント(IgG重鎖フラグメント(Fd)に複合体化したκまたはλ軽鎖)を発現するファージライブラリーが、米国特許出願第10/251,085に記載される方法によってプラスミドベクターに構成される(この開示は参考として本明細書にそのまま組み込まれる)。各ドナーごとに2つのFabライブラリーが作成され、1つはκ軽鎖を、1つはλ軽鎖を発現し、全てがガンマ重鎖を利用する。
【0046】
(ライブラリーの選択)
使用した全てのライブラリーから得られるFab担持ファージは選択されたウィルス抗原および毒素に対して1〜4ラウンドの富化によるパンニングを受ける。パンニングは、先ず最初に、数個のイムロン2HBミクロタイターウェル中で溶液A 50μl中、十分量の組換え抗原(通常1−2μg)を4℃で一晩インキュベートすることによって行われる。溶液Aは0.08%煮沸カゼイン溶液(BC)を含む燐酸緩衝食塩液(PBS)、pH7.4、である。BCは0.5%カゼイン、0.01%チメロサル、および0.005%フェノールレッドを含むPBSである。抗原溶液を除去後、ウェルを1%ツイーン20を含むBC 250μlで、37℃で1時間ブロックする。ファージストックを、0.025%ツイーン20を含むBCからなる溶液Dに希釈し、50μlを各ウェルに加え、37℃で2時間インキュベートした。ウェルを、0.05%ツイーン20を含むPBSで10回洗い、その後徐々に酸性を強めた下記のような一連の緩衝液(D’Mello eta al.,J Immunological Meth 247:191−203(2001))でそれぞれ1回2分間ずつ洗った:pH5.0、4.0および3.0のトリス緩衝食塩液(50mMトリス−HCl、150mM NaCl)。最終的溶出は0.1Mグリセリン−HCl緩衝液、pH2.2、1mg/mlウシ血清アルブミン(BSA)で行った。溶出液を2Mトリス塩基で中和し、指数的増殖期のER2738細胞に加える。感染細菌にヘルパーファージ(VCSM13株)を添加することによってファージを作る。感染しやすい細菌にファージストックを感染させ、培養することによって個々のコロニーを生成する。
【0047】
スクリーニングは、ファージ遺伝子IIIの一部との融合タンパク質としてFabを含む上澄液で行われる。スクリーニング後、陽性候補を配列決定し、サブクローニングして、Fab生成前に遺伝子IIIを除去し、試験する。或いはパンニングした各ライブラリーからDNAをサブクローニングして遺伝子III融合領域を除去し、インフルエンザヘマグルチニン・エピトープタグ(HA)(Chen eta al.,Proc Natl Acad Sci USA 90:6508−12(1993))および6ヒスチジンアミノ酸(Hisタグ)からなる組み合わせエピトープタグを導入し、その後の抗−HAおよびNi−NTAによる検出および精製のために使用することができる。
【0048】
(ライブラリーのスクリーニング)
スクリーニングのために、選んだ抗原に反応するFab構成物をELISAアッセイにおいてそれらの結合能力によって確認する。溶液A中、100−250ng/ウェルの組換え抗原をイムロン・ミクロタイター・ディッシュ中で一晩インキュベートし、上記のようにブロックした。スクリーニングは、Q−ピックス機器を使用して1150コロニーを取り上げ、テカン(Tecan)ロボットを使用してELISAを行うことによって高処理量で行われる。個々のコロニーをディープウェル・ミクロタイター・ディッシュに入れ、Hi−Gro高速インキュベータ撹拌器中で一晩増殖させる。部分をとり、15%グリセロールまたは10%DMSOと共にストックとして保存する。ディープウェル・ディッシュの遠心分離後、これらのストックからのFabを含む上澄液を、特異抗原を塗布したウェル中でインキュベートし、別にカゼインまたは卵アルブミンなどのコントロール抗原を塗布したウェル中でインキュベートする。アルカリホスファターゼ標識ヤギ抗ヒトF(ab’)抗体(ピアース社)を使用して抗原に結合したFabを検出する。陽性候補からのミニプレプDNA(キアゲン社)について、96ウェル形式の自動色素ターミネータ・シーケンシング(レトロゲン、サンジエゴ)によって、これらのベクターに対するストックプライマーを用いて軽鎖および重鎖の配列決定を行う。DNAstarソフトウエアを用いて配列を分析し、特異的候補を同定し、分類する。これらのデータから、使用した各組換え抗原に対する特殊な異なる結合物のパネルが確認され、密接に関連する配列群に分類される。
【0049】
(パネルからのFabの生成および精製)
(Fabの精製)
溶解性Fabの発現および精製のために、遺伝子III領域をサブクローニングによって特異的陽性候補から除去する。この時点に、インフルエンザウィルスヘマグルチニン(HA)タグ(Chen eta al.,Proc Natl Acad Sci USA 90:6508−12(1993))および6ヒスチジン残基(Hisタグ)からなる組合わせエピトープタグをコードするオリゴヌクレオチドを挿入し、抗−HAおよび/またはNi−NTAによって検出および精製することもできる。
【0050】
ELISAをベースとするアッセイおよび高処理量形式のインビトロ中和試験のために十分なFabを精製するために、ニッケル−NTAカラムクロマトグラフィー(キアゲン社)を用いる。この場合、Hisタグを含むように(スクリーニング前か後に)サブクローニングしたFabをSB 1リットル中で、OD600が0.8になるまで増殖させ、30℃で1mMイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)で3−4時間誘導し、最適量のFabを生成する。ペリプラズム腔からFabを分離するために、細胞ペレットをコンプリート・ミニ(ロッシュ)・プロテアーゼインヒビタを加えた冷1×PBSに再懸濁し、ソニックス・ビブラ・セルVC750を使用して超音波処理する。細胞くずをペレットにし、上澄液をキアゲンNi−NTAカラムに入れる。これらカラムを16本使用して、最初の試験で候補あたり75μgのFabを得た。単純な96−ウェルフォーマットでFabあたり12本のカラム列を使用することによって、8Fabを生成することができ、最初のPRNTおよびELISAアッセイのために十分な材料が得られた。エピトープ特異性試験はタグをつけないFabも必要とする。これらのFabは上に記載したようにプロテインGまたはプロテインA(ファルマシア)に結合したヤギ抗ヒトF(ab’)(ピアース社)からなるカラムで、96ウェルフォーマットで精製する。多量の任意の所望Fabが高速液体クロマトグラフィー(FPLC)(ファルマシア)によって、抗ヒトF(ab’)カラムでもニッケルカラムでも精製できる。この方法は一般に約150−1000μg/リットルの精製Fabを与える;ただしこれはFabによって異なる。
【0051】
(精製Fabの特徴づけ)
(抗原上での滴定)
精製FabをELISAアッセイで抗原に対して滴定し、配列決定によって確定した関連群内のFabの抗原結合特性を比較する。
【0052】
(エピトープ特異性の測定試験)
エピトープの特異性はELISAサンドイッチアッセイまたは拮抗アッセイによって測定できる。遺伝子IIIに融合したFab(ファージが付加したまたは付加しない融合Fab)またはタグに融合したFabと、遺伝子IIIまたはタグのない精製Fabとが拮抗し、エピトープ特異性を測定することができる。PBS中4μg/mlの抗原50μlをミクロタイターウェル中で、4℃で一晩インキュベートする。PBSで洗浄後、ウェルをPBS中1%ツイーン20を含むBCで、室温で30分間ブロックする。ある精製Fabの希釈液を含むPBS 50μlを加えてウェルをブロックし、37℃で1時間インキュベートする。これに第二のFabを融合物として含む上澄液50μlを加え、インキュベーションを37℃でさらに1時間行う。第二のFabはホースラディッシュペルオキシダーゼ−結合抗M13抗体(ファルマシア)で検出される。燐酸クエン酸緩衝液、pH5.0中、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸)を使用し、シグマ社のHRP基質緩衝液でウェルを展開する。HA/Hisタグを担持するFabをこのアッセイに使用するために、上記の検出に用いる抗M13抗体はPNPPアッセイで検出されるアルカリホスファターゼ標識抗HAまたは標識抗−His抗体のいずれかで置換される。
【0053】
(中和することが確認されたFabからのIgGの生産および精製)
Fabの個々の疾患の中和能力を当業者に公知の方法によって試験する。
【0054】
(Fabから完全IgGへの変換および安定細胞系の生成)
Fabを二段階法で、完全IgG1重鎖を作り出す哺乳動物発現ベクターにサブクローニングする。このベクターは選択マーカーとしてグルタミン合成遺伝子を利用し、無グルタミン培地中でトランスフェクテド細胞を増殖させる(Bebbington et al.,Biotechnology 10:69−75。1992)。一般的方法を用いるエレクトロポレーション法によってベクターをNSOマウス骨髄腫細胞系にトランスフェクトする。安定細胞系を無グルタミン培地において選択し、制限希釈によって分離する。NSOまたはCHO−K1細胞においてこのベクターでプールド・トランスフェクションも行うことができ、安定細胞系を選択する前に少量のIgGを試験することができる。各クローン系から調製されたDNAを制限消化によって分析し、ベクター免疫グロブリンの挿入成功が確認される。各クローン系からの培地のウエスタンブロット分析を使用して完全IgGの生成を評価し、適切な抗体で軽鎖を捕獲し、重鎖を検出することによって定量的ELISAアセンブリーアッセイを行う。
【0055】
IgGを精製するために、IgG候補を発現する一過性感染細胞または安定細胞系をミニパーム生物反応器(ビバサイエンス社)または中空繊維性生物反応器中で増殖させる。上澄液はタンパク質Gまたはタンパク質Aカラムを用いるFPLCによって精製される。疎水性相互作用カラムを用いて追加的精製を行うことができる。
【0056】
(IgGのインビトロおよびインビボ試験)
Fabから誘導されるIgGを、下記のような個々の疾患に特異的なアッセイにおいてインビトロおよびインビボ試験することができる。
【0057】
上記の方法は炭疽菌およびVEEVの場合は上首尾に用いられる。その他のヒトドナーから作成された同一ライブラリーおよび/または複数のライブラリーがデング熱ウィルス、WNV、およびワクシニアウィルスに対してパンニングされる。同じ方法を用いてFabから全IgGに変化させ、IgG精製をおこなうことができる。
【0058】
本発明の抗体または抗体フラグメントはヒトまたはヒト化モノクローナル抗体などその他の抗体(またはそれらの部分)と組み合わせて、またはそれに加えて使用してもよい。これらその他の抗体とは触媒抗体であり、および/またはそれらの抗体を使う疾患に特徴的なその他のマーカー(エピトープ)と反応できるものでもよいし、異なる特異性を有するものでもよい。これらの抗体(またはその部分)は別個に投与される組成物や、2作用物質が一般的化学物質によってまたは分子生物学的方法によって結合している単一組成物などの抗体類(またはそれらの部分)と共に投与できる。さらに、これら抗体の診断的および治療的価値は、これら抗体を検出可能シグナルを(インビトロまたはインビボで)生成する標識または治療的特性を有する標識で標識化することによって増大する。
【0059】
本開示による抗体類および/またはそれらのフラグメントを種々のインビトロおよびインビボイムノアッセイに使用して被験体における感染性作用物質の存在を検出し、または感染性作用物質汚染に反応して人に生ずる抗体類の存在を検出することができる。適切なイムノアッセイとしては例えばラジオイムノアッセイ(固相および液相)、蛍光結合アッセイ、酵素結合イムノソルベントアッセイまたは蛍光共鳴エネルギー転移法(FRET)などがある。
【0060】
一実施形態において、ELISAアッセイを用いて患者の体液の毒素に対するヒト抗体の存在を検出することができる。典型的アッセイ法において、抗原PA83(リスト・ラボラトリーズ(List Laboratpries))のような感染性作用物質と関係する抗原を溶液中に置き、イムロン2HBプレート(VWR)に結合させ、好ましくは約4℃で一晩インキュベートする。その後ウェルを洗い、適切なPBA由来溶液とツイーン20との混合物で約1時間インキュベートすることによってブロックする。ウェルを洗い、患者サンプル(例えば血液、血清、複数の洗浄液)そのものまたは患者サンプルの希釈系列と共に約37℃で約1時間〜約2時間インキュベートする。陽性コントロールとして、また定量のために、幾つかのウェルを本開示にしたがって生成した感染性作用物質に対する抗体と共にインキュベートする。ウェルを洗い、その後二次抗体(アルカリホスファターゼ標識ヤギ抗ヒトF(ab’)でよい)と共に37℃で約1〜2時間インキュベートする。ウェルを再び洗い、市販の手段およびELISAリーダーを使用して検出する。
【0061】
このアッセイの変法は、感染性作用物質と関連する抗原、例えばPA83抗原などをその他の固体支持体、例えば計量棒やビーズなどに結合させる;ヤギ抗ヒトIgGなどその他の二次抗体を用いて同定する;およびターボ(Turbo)TMB−ELISAキット(ピアース社)で検出されるホースラディッシュペルオキシダーゼなどの別の標識を使用して検出するなどである。
【0062】
また別の実施形態において、感染性作用物質と関連する抗原、例えばPA83など、に対する2種類の抗体を使用してサンプル中の抗原を検出し、定量する。第一の抗体は固体基質(ミクロタイター、プレート、ビーズ、または計量棒など)に結合する。例えば本開示によって作成される抗体を溶液中に入れ、ミクロタイターウェル中で、約4℃で一晩インキュベートする。ウェルをその後洗い、適切なPBS由来溶液とツイーン20との混合物と共に1時間インキュベートすることによってブロックする。ウェルを洗い、患者サンプル(血液、血清、複数の洗浄液など)そのもの、または希釈液とした患者サンプルと共に37℃で約1〜約2時間インキュベートする。希釈系列の抗原を使用して作成される標準曲線も含まれる。ウェルをその後洗い、上記抗原上の非拮抗エピトープに結合する第二の抗炭疽菌抗体と共に約37℃で約1〜約2時間インキュベートする。ウェルを洗い、その後市販の手段およびELISAリーダーを使用して検出する。
【0063】
このアッセイの変法は、第一の抗体をその他の固体支持体に結合させる;異なる抗体濃度および結合条件、および商業上のアッセイに使用するための固体/抗体結合の安定化法を利用する;別の溶液類でブロックまたは洗浄する;第二抗体上に異なる標識を用いるか別の検出系を使用する;または非標識第二抗体を用い、その後その第二抗体を検出する第三の標識抗体を使用する;などである。第一または第二抗体だけがヒト抗体で、その他は別の実在物または別の動物ソースからの抗体であるという変法も含まれる。
【0064】
もう一つの実施形態において、イムノアッセイは少なくとも1種類の抗感染性作用物質モノクローナル抗体および少なくとも1種類の標識化被検体(標識化抗体か標識化ペプチドでよい)を使用する。サンドイッチイムノアッセイでは抗感染性作用物質抗体の使用がより好ましく、ポリクローナル抗体の使用が最も好ましい。サンドイッチイムノアッセイは:
a)固相に抗感染性作用物質モノクローナル抗体をコーティングする、
b)試験サンプルを、コーティングされた固相に加え、これら2つをインキュベートする、
c)上記固相を洗う、
d)標識化抗感染性作用物質抗体を加え、それらをインキュベートする、
e)上記固相を洗う、
f)標識活性を検出して感染性作用物質の存在を確認する
諸工程を含む。
【0065】
上記標識化抗体は固相上の抗体または上記感染性作用物質に結合特異性を有する。洗浄溶液は概して緩衝溶液であるが、水でもよく、またはその他の成分を含むことができる。
【0066】
試験サンプルは動物の体から得られる体液または組織であり、血漿がより好ましいが、血清、全血、尿、脳脊髄液、滑液などその他の体液も使用できる。標識は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコース−6−燐酸脱水素酵素、ルシフェラーゼおよびベータ−ガラクトシダーゼなど、当業者に公知の酵素でよい。非酵素標識の例としてはフルオロイソチオシアネート、ローダミンまたはフルオレッセインなどの蛍光標識、ラジオイムノアッセイ用の放射性同位体、および粒子類がある。
【0067】
また別の実施形態において、イムノアッセイは蛍光共鳴エネルギー転移法(FRET)を利用して行われる。この一例として、感染性作用物質の抗原に対する抗体をあるクロモフォアで標識し、同じ抗原のもう一つのエピトープに対する第二抗体を別のクロモフォアで標識する。これらの抗体のいずれかまたは両方が本開示によって生成できる。これらのクロモフォアは、例えば同じ抗原への結合などによって極めて近くにあると、蛍光シグナルを発生するように相互作用する。したがってこれら2種類の抗体を患者サンプルに加えて希釈すると、感染性作用物質の適切な抗原の存在下では検出可能の蛍光シグナルを発生する。
【0068】
感染性作用物質のインビトロ検出のためのその他の方法の非制限的例としては、拮抗阻害アッセイ、単一工程アッセイおよび凝集反応アッセイがある。
【0069】
サンプル中の高レベルの抗体または抗体フラグメントの存在は、被験体における感染性作用物質の存在およびそれによって誘起された疾患の存在と関連する。アッセイが上記感染性作用物質に対する抗体に関するものである場合、感染性作用物質に対する抗体に対する二次抗体または抗体フラグメントの高レベルは被験体における感染性作用物質の存在およびそれによって引き起こされる疾患の存在と関連づけられる。
【0070】
本開示はサンプル中の感染性作用物質または抗体類のアッセイに使用される少なくとも1種類の抗感染性作用物質モノクローナル抗体を含む診断試験キットを含む。診断キットはその他に、緩衝溶液、標識ポリクローナルまたはモノクローナル抗感染性作用物質抗体、抗原またはペプチド、およびキットの使用に必要な任意の付属物を含むことができる。
【0071】
また別の局面において、本開示は炭疽菌ウィルスによる感染症を予防的に処置するためのワクチンを提供する。これらのワクチンは薬物学的に受容可能な担体中のPA63マルチマーを含む。PA63マルチマーは12ユニットまでのPA63を含むことができる。したがって上記マルチマーはダイマー、トリマー、クォドリマー、ペンタマー、ヘキサマー、ヘプタマー、オクタマーなどでよい。特に有用な実施形態において、PA63マルチマーは7ユニットまでのPA63を含み、PA63ヘプタマーがより好ましい。上記ワクチンは、炭疽菌ウィルス汚染に先立って被験体に予防的に投与できる。
【0072】
本発明の抗体または抗体フラグメントは医薬的担体を含む組成物として患者に投与されるのが一般的である。上記医薬的担体はモノクローナル抗体を患者に適切に送達する任意の耐容性、無毒性物質でよい。上記担体としては滅菌水、アルコール、脂肪、ワックス、不活性固体がある。薬物学的に受容可能なアジュバント(緩衝剤、分散剤)も上記医薬組成物に組み入れることができる。組成物は全抗体および抗体フラグメントの両方を含むことができるのは当然である。
【0073】
抗体および/またはフラグメント組成物は種々の方法で患者に投与される。上記医薬組成物は患者に例えば皮下、筋肉内、硬膜外または静脈内投与されるのが好ましい。このため非経口投与するための組成物は、容認される担体、好ましくは水性担体に溶解した抗体、抗体フラグメント、またはそれらのカクテルの溶液を含む。水、緩衝水、0.4%食塩液、0.3%グリセリンなど、種々の水性担体を使用できる。これらの溶液は無菌で、一般的には粒状物質を含まない。これらの組成物は生理的条件を適切にするために必要な、pH調節および緩衝剤、毒性調節剤などのような薬物学的に受容可能な補助物質、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸カルシウムなどを含むことができる。これら処方中の抗体または抗体フラグメントの濃度は例えば約0.5重量%未満から、普通、約1重量%または最低約1重量%から15または20重量%までに広く変動し、選択される特定の投与法に応じて主として体液量、粘度などに基づいて選択される。
【0074】
非経口投与できる組成物の実際的製法および被験体に投与するために必要な調節は、当業者には公知であり、例えばRemington’sPharmaceutical Science、17th Ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa(1985)に、より詳細に記載されている。これは参考として本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0075】
(実施例1−炭疽菌)
炭疽菌に対するワクチンを接種された現役勤務軍人ドナーの血液および骨髄から分離したメッセンジャーRNAからファージライブラリーを作成した。軍医のボランティアから血液サンプルを集めた。彼らは集めるまえにAVA炭疽菌ワクチンのブーストを1週間に1回受けた。さらに商業的ソースから、コーデド骨髄が現役軍人の適合血清および免疫記録と共に提供された。骨髄ドナーの何人か、および血液ドナーの全ては炭疽菌抗原PA83に対するタイターを有した(図2)。PA83(951)に対する最良のタイターを有する骨髄ドナーは血液採取の3週間前に炭疽菌に対する免疫を受けていた。
【0076】
総RNAは、メーカーの使用説明書によって、トリ−リアジェントBD(モレキュラー・リサーチ・センター)を使用して骨髄サンプル951および1037および血液サンプルMD3から得た。メッセンジャーRNAはメーカーの使用説明書により、オリゴテックス(キアゲン)スピンカラムを使用して得た。抗体Fabフラグメント(可変部と結合するκまたはλ軽鎖および重鎖の第一定常部)を表すファージライブラリーが、米国仮特許出願第60/287,355および第60/323,455に記載の特許登録された方法によってプラスミドpAX243hベクターに構成された。上記の開示は参考としてそのまま本明細書に組み込まれる。2つのFabライブラリーが各ドナーについて作成され、一つはκ軽鎖を発現し、一つはλ軽鎖を発現し、全てがガンマ重鎖を利用する。6ライブラリーからのFabを担うファージをPA83に対して4ラウンドの集積(enrichment)によってパンニングした。951ライブラリーも、Millerらが記載した方法でPA83から作られる精製PA63に対して4ラウンドの集積によって別個にパンニングした(Miller et al.,1999)。PA83と共にPA63部位にも結合したファージを除去するために、可溶性PA83を最初にそのファージに20μg/ml濃度で37℃で1時間結合させ、その後その混合物をミクロタイタープレート・ウェルに結合したPA63と共にインキュベートした。
【0077】
組換えPA83抗原をフォート・デトリック(Fort Detrick)のUSAMRIIDから入手し、ELISAアッセイに用い、PA83抗原に対して最も高いタイターを有する炭疽菌接種軍人を確認した。これら軍人の骨髄または血液からRNAを分離し、制限酵素消化/重複オリゴヌクレオチド伸長反応/単一プライマー増幅(RED/NOER/SPA)を行って、このRNAから組み合わせFabライブラリーを得た。図2を参照されたい。
【0078】
最高のタイターを示す3名からのRNAを使用してRED/NOER/SPA増幅法を用いてライブラリーを作成した。2つのライブラリー、951および1037、はポイエティックス社(Poietics)(メンロパーク(Menlo Park)、カリホルニア)から入手した。第三のライブラリー、MD3、はワクチン接種したボランティアの血液からのものであった。ライブラリー結合の効率を以下の表1に示す:
【0079】
【表1】

全てのライブラリーをPA83に対してパンニングし、951ライブラリーをPA63に対してパンニングした。PA83では、抗原はウェルに結合し、提示されたFabフラグメントを担うファージを添加する前にブロックされた。PA63では、ディスプレイファージを先ず最初にPA83と混合してから、ウェルに結合したPA63抗原と反応させ、PA83とPA63に共有される抗原に反応したファージの回収を減らした。Millerら(1999)によって記載された方法によってPA63を生成し、PA83から精製した。2つの上記ライブラリーのパンニングおよびPA63に対する上記パンニングの結果を下表に示す。
【0080】
パンニングは最初にPA83に対して951およびMD3ライブラリーで、PA63に対して951ライブラリーで行われた。最初のXL1−ブルーへのライブラリー変換は別として、ER2738細胞が使用された。両パンニングラウンドに関するインプット、アウトプットおよび幾つかの初期ELISAの結果を下表に示す。
【0081】
【表2】

全てのPA83パンニング−ライブラリーにおいて集積が明らかである。PA63に対してパンニングしたライブラリーはPA83に対する非常に弱い反応性を有する幾つかの候補を示した。これらの候補はPA63に対して試験した際には陽性であった。陽性反応体のVHおよびVKまたはVL領域の配列分析の結果を図3−5に示す。二、三の配列が優勢であるとはいえ、多様性が明らかになる。PA83をあらかじめ吸収してから、PA63に対してパンニングしたFabは、PA83に対してパンニングしたものとは有意に異なる配列群を含むようにみえる。
【0082】
パンニング後、4つのPA83−パンニング−ライブラリー全てで、異なるパンニングラウンドの個々の候補のPA83に対する反応性をELISAによってスクリーニングした。PA63結合Fabフラグメントを同定するために、PA63に対するパンニングを受けた951κおよびλライブラリーファージを先ず最初にPA83結合に関してスクリーニングし、PA83結合物をスクリーニングから排除した。しかしPA83に十分結合する候補は見つからなかった。これはファージを先ず最初に可溶性PA83と共にインキュベートすることによっておこなわれた拮抗が有効であったことを示すものである。両方の抗PA63ライブラリーの第四ラウンドライブラリーにおけるクローンのわずかのパーセントが、基質中における数時間のインキュベーション後、非常に弱いELISA反応性を示した。これらのクローンをPA63に対してスクリーニングすると、遥かに強いシグナルが生成した。PA83に対する弱い反応性はPA83との交差反応性によるものかも知れず、またはPA83プレパレーション中の少量のPA63を反映するものかも知れない。後者は精製または保存中に起きるPA83のフリンプロテアーゼ感受性部位のプロテアーゼ切断(Klimpel etal.,1992)に起因するものらしい。
【0083】
6つの異なるパンニングライブラリーから選択した、強いPA83またはPA63結合活性を有する144の個々の候補について配列決定し、全ての変異体候補のパネルを決定した。これは31の特異的PA83結合物および6個の特異的PA63結合物を含んでいた。25の特異的PA83結合物は全て可変重鎖(VH)座 3−30/3−30.5から誘導された。PA63結合物の重鎖のなかで、2つの関連配列が目立っていた;これらはPA83配列には似ていなかった。1つの突然変異が抗体の親和性を劇的に変え得るから、候補が他の候補に比較して重鎖または軽鎖に一つのアミノ酸差を有するならば、それらは特異的であると考えた。
【0084】
炭疽菌タンパク質PA83およびPA63に対するその他の抗体配列を図6−8Cに示す。図6に示されるヒトκ軽鎖可変配列では、クローニングにおいてS(セリン)およびR(argentine)がXbal(TCTAGA)部位から誘導される。図のアミノ酸ナンバー3はKabatナンバリング系(免疫学的に見たタンパク質の配列、Kabat et al.,1991)におけるヒトκ軽鎖のアミノ酸ナンバー1に対応する。大部分の配列で示される最後の4アミノ酸(RTVA)はヒトκ軽鎖定常領域の最初の4アミノ酸(Kabatナンバリング系では108−111と数えられる)に対応する。示された2配列は定常領域の始まりの部分にまでは伸長しない。可変領域は長さの多様性を含むから、各配列のアミノ酸の実際的数は113(最初の2アミノ酸プラス111)より大きいか小さい可能性がある。図7に示すヒトλ軽鎖可変配列では、最初の2アミノ酸、SおよびR(argentine)はクローニングに用いたXbal(TCTAGA)から誘導される。図のアミノ酸ナンバー3はKabatナンバリング系のヒトλ軽鎖のアミノ酸ナンバー1に対応する。各配列で記載される最後のアミノ酸はKabatナンバリング系ではヒトλ軽鎖定常領域のアミノ酸155に対応する。可変領域は長さの多様性を含むから、各配列のアミノ酸の実際数は157より大きいか小さい可能性がある。図8A−Cに示されるヒトガンマ重鎖可変部配列では、最初の2つのアミノ酸、L(ロイシン)およびE(グルタメート)はクローニングに用いたXhoI(CTCGAG)部位から誘導される。図のアミノ酸ナンバー3はKabatナンバリング系におけるヒトガンマ重鎖のアミノ酸ナンバー1に対応する。各配列で示される最後のアミノ酸はKabatナンバリング系のヒトガンマ重鎖定常領域のアミノ酸118に相当する。可変領域は長さの多様性を含むから、各配列のアミノ酸の実際数は120より大きいかも知れない。
【0085】
軍関係者を免疫するために使用されるAVAワクチンにも少量存在するEFおよびLFに対するパンニングがこれらのライブラリーで行われる。PA63に対する追加的パンニングはその他のライブラリーで行うことができる。異なる抗体類の親和性を評価するためにビアコア(Biacore)アッセイが行われる。同じエピトープ結合特性を共有する抗体類の群を同定するために拮抗実験が行われる。候補について、PAと、受容体、EFまたはLFいずれかとの結合をブロックするそれらの能力を細胞アッセイで測定する。その後最良の候補について、PA、EFおよびLFか、または実際の炭疽菌感染症のいずれかを使用して、動物モデルでインビボ毒性をブロックする能力を試験する。1つ以上のこれらの試験において、候補は任意に完全ヒト抗体に変更される。
【0086】
その他の試験に用いる精製抗体を作るために、このパネルからの候補をサブクローニング工程にかけ、Fabフラグメントの重鎖部分から遺伝子IIIを除去する。その後Fabを、2〜4リットルの培地からヤギ抗ヒトFabカラムを用いる高性能液体クロマトグラフィー(FPLC)によって精製した。精製Fabを使用する中和アッセイは、リットルの方法(Little etal.,1990)にしたがって、マウスマクロファージ細胞系、J774A.1、を使用して行われた。毒性作用に反応した細胞死によって放出される乳酸脱水素酵素(LDH)を測定するための条件を、Cytotox96検出キット(プロメガ社)を用いて決定した。J774A.1細胞を96ウェル皿上で14,000細胞/ウェルで一晩培養した。各点において4−8ウェルを測定した。Fabは50nMで使用した。毒素は次のようにして発生させた:400ng/ml(4.6nM)のPA83を40nM/mlのLFと共に加えた。37℃で4時間インキュベーション後、ウェルを顕微鏡で検査し、その後培地を除去し、遠心分離して未付着の細胞をペレット化した。
【0087】
多数の中和アッセイの結果を図9にまとめる。これらのFabはF9L6R2(本明細書では951L6R2および83L6Rとも言う)、FML5B(本明細書では83L5Bとも言う)、FMK9C(本明細書では83K9Cとも言う)、F9K3C(本明細書では83K3Cとも言う)、F9K2A(本明細書では83K2Aとも言う)、FML8E(本明細書では83L8Eとも言う)、FML8F(本明細書では83L8Fとも言う)、FML3B(本明細書では83L3Bとも言う)、FML2D(本明細書では83L2Dとも言う)、FML7D(本明細書では83L7Dとも言う)、F9K3H(本明細書では83K3Hとも言う)、FML4E(本明細書では83L4Eとも言う)、FML2E(本明細書では83L2Eとも言う)、F9K2H(本明細書では83K2Hとも言う)、F9K7H(本明細書では83K7Hとも言う)、FMK7C(本明細書では83K7Cとも言う)、および951L631D(本明細書では63L1Dとも言う)を含む。図からわかるように、試験した17の抗−PA Fab(サンプルe−u)のうち14は80%以上の有効性で炭疽菌毒素の効果を中和できる。5つのFabはこの濃度でこの時間内に完全に中和する。サンプル(a)および(b)は毒素を添加しない2つのFabである;これらから、この時間内には精製サンプルのエンドトキシンによって細胞死は誘起されないことがわかる。サンプル(c)は毒素単独の効果を示す。サンプル(d)は、細胞を炭疽菌毒素作用から有意には防御しない不適切なFabを含む。
【0088】
選択されたFabを滴定し、インビトロ 50%防御値を決定した(図10)。Fabを逓減希釈し、部分を毒素含有培地に加えた。これらの実験において、PAの最終濃度は400ng/mlで、LFの最終濃度は80ng/mlであった。これらの部分を四重に細胞に加え、37℃で4時間インキュベートした。細胞毒性を目で見て評価し、既述のようにCytotox96アッセイで定量測定した。ここに示す抗−PA83 Fabは全て、このアッセイに使用したPA83濃度と等モル量に近い50%中和値を有する。しかし抗−PA63Fab 951L631Dはこれらより低い、約5−7分の1の50%中和値を有する;言い換えれば、951L631Dの1分子はPA83の多数の分子を中和する。この実験においてPA83はJ774A.1細胞によって切断され、ヘプタマーポアに変えられる。PA83の化学量以下の量を中和する951L631Dの能力の最も妥当な説明は、それがヘプタマーポアのレベルで作用しており、一度に7つまでのPA83分子を効果的に中和する、というものである。
【0089】
951L631DおよびMK7Cのインビボ試験が最近行われた。総容量200μlのPBS中PA83 40μgおよびLF 8μgを投与した2匹のラットは60分および71分で死んだ。同じ量の毒素および310μgの951L631Dを投与した2匹のラットは、25時間は生きており、この時点で殺された。約3−5時間目にこれらのラットは嗜眠および軽い浅速呼吸などの疾患症状を示したが、16時間目には1匹のラットではこれは消失し、他の1匹では嗜眠が残ったが呼吸は正常であった。25時間目までに両ラット共、PBS注射コントロールラットに比較して正常であるように見えた。したがって951L631Dはラットをインビボ 炭疽菌中毒から防ぐことができるようにみえる。1匹のラットでMK7C 300μgを毒素と共に試験した。そのラットは症状を何ら示すことなく生存した。
【0090】
9K2H(本明細書では83K2Hとも言われる)、9L6R2(本明細書では951L6R2および83L6Rとも言われる)、MK7C(本明細書では83K7Cとも言われる)、9K7H(本明細書では83K7Hとも言われる)、ML8E(本明細書では83L8Eとも言われる)、および951L631D(本明細書では63L1Dとも言われる)から生成するFabについて、それらが線状エピトープと反応する能力を試験した。PA83およびPA63を変性(だが非還元)条件下でSDS−PAGEゲル中で処理し、ウエスタンブロット法によってニトロセルロースフィルタに移した。PA63かPA83を含むブロットから切り取ったストリップを同じ濃度でこれら精製抗体の各々にハイブリッド化した。結合抗体をアルカリホスファターゼ結合ヤギ抗ヒトF(ab’)(ピアース社)と反応させた。結果を図11に示す。Fab 63L1DはモノマーPA63またはPA83に結合しなかった。このデータは、Fab 63L1Dは配座エピトープに結合することを示す。使用した抗−PA83Fabの全てはこれらの条件下でPA83によく結合し、線状エピトープか、またはウエスタン移動条件下で変形されるかも知れないエピトープに結合することを示した。83K7Cは前に見られたようにPA83およびPA63に等しくよく結合した。83L8Eおよび83L6Rはウエスタン法においてPA63に若干結合した。これは、使用したFabおよび抗原の量が多かったためか、またはPA63がウエスタン上ではモノマーであるが、図14のELISAでは大部分がヘプタマーであるような条件だったためかも知れない。
【0091】
試験した5つの抗−PA83 Fabの全てはPA83の線状エピトープに結合するように見える(図12)。それに対して抗−PA63抗体は変性PA63には結合せず、PA83へのかすかな非特異的結合と考えられるようなものを示す。9K2Hおよび9K7Hは変性PA63には結合を示さず、MK7CおよびML8Eは強く結合する。9L6R2は弱い結合を示す。
【0092】
これらのFabの幾つかについて、PA83およびPA63への結合能力をELISA法で抗原に対するFab滴定を実施することによって定量的に分析した。PA83およびPA63はリスト・ラボラトリーズから購入し、使用説明書によって水または50%グリセロールにそれぞれ再懸濁した。以下のグラフはPA83またはPA63に対する4Fabフラグメントの滴定を示す。黒い記号はPA83に対する反応性を示し、白い記号はPA63に対する反応性を示す。この結果から、Fab 63L1DはPA63に結合するがPA83には結合しないことがわかる。これは、それがPA83のPA63への変換後に限って使用できるエピトープに結合することを示唆する。Fab 83K7CはELISA法においてPA63にもPA83にも結合し、その一方で、もともとPA83で選択された2つのその他のFabでは、PA63への結合はPA83に比較して有意に低下する。PA63に対してFab 63L1Dが到達した飽和値はFab 83K7Cのそれの約4分の1であったことに注目されたい。これらの考察は、PA63のヘプタマー化によって形成される配座エピトープにFab 63L1Dが結合することを証明する。ELISA法における低い結合はヘプタマー上の結合できる部位の数がより限られているためであった。それは、正しくヘプタマー化され、結合に使用できるPA63が少ないことを反映している。PA83は等しくよく結合するので、使用できるPAの絶対量は、理論上は同等であった。LFはヘプタマーによって形成される配座エピトープに結合することが知られている(Cunningham et al.,2002;Mogridge et al.,2002);7カ所に存在するとはいえ、結合LFの立体障害のためにLFは3カ所だけに結合できる。
【0093】
図13において、Fab FML8Eのhisタグ付き変形体を作り、それをその他の無タグFabと拮抗させてエピトープ特異性を評価した。Fab F9K2H、F9K7HおよびFML8Fは全て、FML8Eとの自己競合と同様に拮抗し、これらのFabが同じエピトープを、またはFML8Eによって見られるものに非常に近いエピトープを識別することを示唆する。F951L6R2は同様にではないが拮抗し、このエピトープが競合を起こすほど十分近くにあるとはいえ、同じではないことを示唆する。FMK7Cは競合に関しては非常に無力であり、多分離れた部位に結合することを示唆する。興味深いことに、PA63に分解すると、上のウエスタンブロット法で示されるように、F9K2HおよびF9K7Hによる結合はなくなり、その一方、ウエスタンにおける結合はFML8EおよびF951L6R2ではまだ明らかで、高濃度では上記のELISA滴定において若干の反応性もみられる。これはF9K2H/F9K7Hと結合するエピトープがFML8E/FML8F、F951L6R2、またはFMK7Cのためのエピトープとは同じでないことを示唆する。上記のFabを1:4に逓減希釈し、200ngのPA83で一晩コーティングしたミクロタイターウェルに37℃で1時間結合させた。その後洗わずにhisタグ付きFML8Eを5μg/ml加え、2時間反応させた。その後プレートを洗い、アルカリホスファターゼ結合抗−Hisと反応させPNPPアッセイを行う。FML8EおよびFML8Fは同様な重鎖を有するが、異なる軽鎖を有することは注目される。F9K2HおよびF9K7Hは互いに関連があり、FML8Eと同じく重鎖ジャームライン座を使用するが、ML8Eとは全く異なるCDR領域を有する。F951L631DおよびFMK7Cは異なる重鎖ジャームライン座からのものである。
【0094】
ELISA法においてその他の抗−PA83 FabがPA63と結合する能力を、1μg/ml濃度で200ng/ウェルのPA63またはPA83に対して評価した。1μg/mlの濃度を使用したのは、図12に決められた濃度であったためである。この濃度では83L8Eおよび83L6Rの結合がなくなるか或いは減少するのが認められた。図14に見られるように、PA63に結合した唯一の抗−PA83 Fabは明らかに83K7Cであった。
【0095】
Fab 63L1DがLFと同様の仕方で結合するように見えるため、PA63との結合に関してFab 63L1DがLFと拮抗するかどうかをELISAにおいて決定する実験を行った。このアッセイのために、PA63をミクロタイターウェル皿に200ng/ウェルで結合させた。ウェルを洗い、ブロックし、LFを既述のように逓減希釈し、37℃で2時間、四重にインキュベートした。Fab 63L1Dおよび83K7Cは最終濃度1μg/mlで使用した。これは各FabについてPA63に対してELISA滴定で測定された50%最大結合濃度より幾らか高い濃度である。Fabをウェルに加え、15分および2時間競合させた。結合Fabをアルカリホスファターゼ標識ヤギ抗ヒトFabおよびPNPPアッセイで検出した。
【0096】
この実験の結果を図15に示す。83K7CはLFの全ての濃度で等しくよく結合することが判明した。これは、83K7CがPA63への結合に関してLFと拮抗しなかったことを示唆する。15分間の63L1D結合は、より高濃度のLFにおいては減少を示し、PA63への結合に関してLFと拮抗することを示唆する。競合を2時間続けた場合は、最高濃度のLFが存在していても、比較的多くの63L1Dが結合できた。このデータはFab 63L1DがLFと拮抗し得ることを示すものである。
【0097】
競合的ELISA検定を行った。その際マウスモノクローナル抗体(14B7)を種々濃度のFab 83K7Cまたは83L8Eと混合し、その後ミクロタイタープレート上に固定したPA83に結合させた。マウスモノクローナル抗体14B7をステファン・レプラ(Stephan Leppla)(Little et al.,1988)から入手した。このモノクローナル抗体はPA83に結合し、PA83のその細胞受容体への結合をブロックすることが証明されている(Little et al.,1996)。結合した14B7はアルカリホスファターゼ結合ヤギ抗マウスIgG Fcを使用して検出された。図16は、83K7Cが結合に関して14B7と競合する(だが83L8Eは競合しない)ことを示す。例えばFab 83K7Cは同様なまたは折り重なったエピトープに結合し、受容体結合をブロックすることによって作用する。
【0098】
ビアコア(バイオセンサー・ツールズ(Biosensor Tools)、ソルトレークシティー、ユタ州)表面プラズモン共鳴(SPR)を用いる動態学的分析を行い、Fab/毒素相互作用に関する動態および結合パラメーターを測定した。会合(k)および解離(k)速度定数をビアコアによって測定した;Kは(k/k)として計算された。括弧内の数字は最後のディジットの標準誤差をあらわす。残差標準偏差は概して各データポイントがモデルからどのくらい乖離しているのかをRUの数値で表している。下の表3に示される結果は、63L1Dおよび83K7Cが固定PA63にナノメータ以下の親和性で結合することを示す。
【0099】
【表3】

Fab 63L1DはPA83に結合しなかったため、数値は測定されなかった。これは、FabがPA63ヘプタマー、またはPA83切断後に露出したエピトープに結合することを示すELISAデータと一致する。興味深いことに、83K7CはPA83に比較してPA63の方によりしっかりと結合した。その主な理由として離れる割合が低いことが挙げられる。
【0100】
この開示は、インビトロで高親和性を有し、強力に中和するヒト抗炭疽菌毒素抗体がAVA免疫ドナーから分離できることを先ず最初に明らかにする。Littleら(1990)は炭疽菌毒素致死因子に対するネズミモノクローナル抗体の1群を同定した。 インビトロ対インビボ防御を評価すると、稀な例を除いてインビトロ防御度がインビボ防御と相互に関係することを示唆する。試験した19の中和抗体のうち15の中和抗体が同定された。そのうち幾つかは低濃度で完全に中和する。そこで、これら抗体の幾つかはインビボで防御することが期待される。データはさらに、AVAワクチンがヒトを炭疽菌汚染から効果的に防御することを示唆する。
【0101】
抗PA83および抗PA63両方の活性を組合わせると、インビボ治療を目的にできる可能性が生まれる。抗PA83は細胞受容体へのPA83分子の結合数を制限する。破壊されず、ヘプタマーポアを形成したPA83分子はその後抗PA63活性によって中和され、炭疽菌感染の致死効果を強力に防御する。2抗体の組み合わせは、感染症の始まりまたはその過程における新しい機能的ポア構造の形成を直ちに防ぐことができる。
【0102】
これら2抗体の使用は、予想される炭疽菌放出にさらされる可能性のあるワクチン接種を受けた、または受けていない人々に追加的受動防御を提供することができる。疾患を防御し得る治療剤があれば、炭疽菌に関する一般大衆の不安の解消に役立つかも知れない。その上、そのような治療薬は炭疽菌の意図的放出を生物テロ行為として成功し難くし、したがってそのような攻撃の可能性を減らすかも知れない。
【0103】
(インビトロ実験)
Cytotox96検出キット(プロメガ社)を使用して、毒素作用に反応した細胞死によって遊離される乳酸脱水素酵素(LDH)を測定するために諸条件を決定した。マウスマクロファージ細胞系J774A.1(Little et a.,1990)を96ウェル皿に14,000細胞/ウェルで一晩培養した。各時点に4−8ウェルを測定した。Fabは図に示すように使用された。毒素を次のように生成した:PA83 400ng/ml(4.6nM)を80ng/mlのLFと共に加えた。37℃で4時間培養後、ウェルを顕微鏡検査し、その後培地を取り、遠心分離して未付着細胞をペレットにした。培地のCytotox96(プロメガ社)アッセイをメーカーの使用説明書によって行った。
【0104】
選択されたFabのインビトロ中和活性を、逓減希釈法を用いて測定した。中和曲線を図10に示す。83K7Cを含む図10に示される抗PA83Fabは全て、このアッセイに使用したPA83の濃度(4.6nM)と等モル量に近い50%中和値を有した。しかし抗PA63Fab 63L1DはPA83で得られる数値の約3.5〜6分の1の50%中和値を有した。この数値はPA83に関して化学量以下であった。これはヘプタマー上に見いだされる配座エピトープへのFab 63L1Dの結合と一致し、したがって1つより多いPA分子を効果的に一度に中和することができる。63L1Dも83K7Cも両方とも比較的高濃度で細胞を細胞死から完全に防御し、再現性のある結果をもたらす。
【0105】
Fab 63L1Dおよび83K7Cの結合をさらに特徴づけるために追加的実験を行い、選択されたFabが、PAが細胞に結合した後でも毒素の効果を中和できるかどうかを調べた。ヘプタマーとLFとの結合前に作用するものは、活性をブロックすることが期待されない。よって、PA83を400ng/ml濃度で細胞に加え、4℃で2時間インキュベートし、その後細胞を洗い、80ng/mlのLFと50nMのFabを加えた。このアッセイの結果を図17に示す。図からわかるように、Fab 63L1Dは細胞死を防いだ。これは、この抗体が、LF結合を阻止できる部位でヘプタマーに結合するという結論と一致する。
【0106】
(薬理学的動物実験)
動物操作は、実験が行われるペリー・サイエンティフィック社のインスティテューショナル・ケア・アンド・ユース委員会によって承認された。フィッシャー344ラットに、ラット250gにつきPA40μgおよびLF8μgをEzzellらの方法(1984)によって注射した;ただし今回は尾静脈を使用した。陽性コントロールには毒素だけを使用した;他の群に対しては記載のように毒素を種々の量のFabと共に使用した。1または2匹のラットで行った最初のトライアルにより、Fab 83K7Cおよび63L1Dが防御効果を有することが判明した後、これら2種類のFabで用量反応試験が行われた。1群あたり4匹のラットを使用した。陰性コントロールには溶媒として使用された、Fab透析からのPBSを注射した。生存しているラットを7日後に殺した。
【0107】
組換え毒素攻撃に対するFab 83K7Cおよび63L1Dのインビボ試験結果を図18に示す。図からわかるように、83K7Cおよび63L1Dは異なる防御パターンを有する。83K7Cは2および6nmol(それぞれ〜100または300μg/ラット、)の両方で完全に防御し、0.6nmolで症状および死をわずかだが統計的に有意に遅らせた(両側スチュデントt−検定において、それぞれp=0.0005およびp=0.038)。63L1Dは6nmolで完全に防御した。2nmolでは、63L1Dは死から防御はしたが、注射後約2時間15分後に動物は炭疽菌中毒の症状を示し始めた。症状は1または2時間はわずかだが残り、結局は治まり、動物は生き延びた。0.6nmol(〜30μg/ラット)では63L1Dは症状および死を実質的に遅らせた。これら2Fabの効果の差は、それらの作用モードに関係している。ELISA法において83K7CはPA83およびPA63に等しくよく結合し、毒素の細胞への結合を阻止するようにはたらく。上述のように、63L1Dは細胞表面に形成されたヘプタマーに結合する。2nmolの63L1Dは炭疽菌毒素の存在のもとで2時間ラットを十分に防御するようにみえるとはいえ、FabはLFより速くその動物からなくなる。そこで、残っているLFが細胞のあらかじめ結合したPAに入るにつれて症状が起きるが、発生する中和されていない毒素の量は肺浮腫や死につながる二次的ショックを起こすには不十分である。Fabのクリアランスはある場合には症状の出現の一因となるので、63L1Dの完全IgG変形体の使用によって、この濃度またはこれより低い濃度で完全に防御できる。0.6nmolでは、症状および死の遅れは83K7Cより63L1Dの方が大きかった。この結果はインビトロ結果に平行する。インビトロ結果では63L1Dが抗PA83抗体フラグメントより強力であり、化学量以下で防御できる。
【0108】
(実施例2−ベネズエラウマ脳脊髄炎ウィルス)
(ヒト抗−VEEV抗体)
実施例1に関して上に述べたドナー血清を、標準ELISAアッセイを使用してTC−83抗体に対して試験した(図19)。ドナー1037、811および951はTC−83に対する顕著な血清反応性を示した。これは、抗−VEEV Fabが、対応するドナー骨髄から作成された抗体ライブラリーから得られる可能性が高いことを示唆した。1037および951の両方のためのIgG−κおよびIgG−λライブラリー(全部で4ライブラリー)が、炭疽菌の例で記したように、前に作られている。これらのファージ−ディスプレー抗体ライブラリーをTC−83抗原上で4ラウンド、パンニングした。この実験結果を以下に示す:

最初のライブラリーの大きさ:
951K 5.7×10
951L 2.6×10
1037K 3.1×10
1037L 4.5×10

ラウンド1パンニング:
インプット アウトプット
951K 5.6×1011 6.0×10
951L 2.6×1011 1.8×10
1037K 4.8×1011 4.0×10
1037L 3.2×1011 1.0×10

ラウンド2パンニング
インプット アウトプット
951K 1.2×1013 1.2×10
951L 3.0×1013 1.0×10
1037K 3.8×1013 4.4×10
1037L 2.2×1013 4.8×10

ラウンド3パンニング
インプット アウトプット
951K 5.0×1013 3.1×10
951L 7.8×1013 4.0×10
1037K 8.0×1013 6.1×10
1037L 8.8×1013 2.1×10

ラウンド4パンニング
インプット アウトプット
951K 1.0×1014 8.0×10
951L 4.4×1013 2.0×10
1037K 1.5×1014 1.0×1010
1037L 3.8×1013 4.0×10
【0109】
4ライブラリー全て(951K、951L、1037Kおよび1037L)のラウンド3および4のパンニングから得たFabクローンのパネルを、高処理量フォーマットのテカン・ロボティック・プラットフォームを使用して、ELISA法による固定TC−83への結合に関してスクリーニングした。図20A−Dに見られるように、TC−83に顕著に結合するFab(アルカリホスファターゼ結合抗−ヒトFabを使用して検出される)が4ライブラリー全てで得られた。Fabクローンを、陽性コントロールHy4−26A(3B4C−4のヒト化変異体)および陰性コントロール抗−テタヌストキソイドFab(これらは図20の各グラフのそれぞれ最後の前のサンプルおよび最後のサンプルである)に比較してスクリーニングした。上記4ライブラリーの各々から最高のELISAシグナルを有する3Fabを選び、その後の分析を行った。各クローンでDNAを作り、配列決定分析にかけた。配列決定結果から、3つの951Kクローンが同定されることがわかった。さらに、12クローンのうち10が同じ可変重鎖領域(VH)を有したが、これらFabの大部分は異なる軽鎖配列を有した。つまり、3つの別個の重鎖(HC)グループに10の特異的クローンがある。
【0110】
4つのヒトFabクローンを選び、その後分析を行った。選択されたFabは同定された明らかに異なる3つのHCクラス全てを示した。
【0111】

クローン VH分類(一般化されたグループ) LC
P3F2 #1 κ
P3F5 #2 κ
P3H6 #3 κ
P3G1 #1 λ

抗ヒトF(ab’)カラムを使用するFPLCによって、Fabの全てを細菌性ペリプラズム標本から精製した。P3H6 Fabは非常に低い収量であったため、その後の分析は行わなかった。
【0112】
図21は、TC−83に対する滴定ELISAアッセイにおける3種類のヒト抗−VEEV Fabの結合活性を示す。精製した抗−VEEV Fabを、競合的ELISA実験においても試験した。競合物としてmHy4Fabを使用した。この実験結果は図22に示され、3種類のVEEV Fabが同じエピトープ(E2)に対して、mHy4 Fabのようには拮抗しないことが判明する。
【0113】
ヒトFabはE2エピトープでは拮抗しないが、それらはVEEV上のその他の中和エピトープに結合するかも知れない。これを試験するために、各精製VEEV Fabの一部をCDCの共同研究者に送り、彼らはこれを使用して細胞をベースとするVEEV中和アッセイを行った。別々の2実験からの結果は、P3F5が陽性コントロール3B4C−4でみられるものと同様な非常によい中和能力を有することを示した。P3G1も顕著な中和を示したが、P3F2 Fabは中和試験において明らかな効果を示さなかった。
【0114】
【表4】

表4はVEEVに対するインビトロ中和アッセイの結果を記す。ベロ細胞のVEEウィルス斑を70%減少させるのに必要なAbまたはFabのタイターが報告されている。ネズミAb 3B4C−4(全IgGとして)を陽性コントロールとして使用した。以前、二価抗体がウィルスをより効果的に中和することが明らかにされたので、抗−Fab交差結合Abを幾つかのウェルに加えた(非最適化濃度)。非結合陰性コントロールFabはいかなる試験濃度でも中和を示さなかった。サンプルP3F5はネズミ3B4C−4のそれに近い活性を示した。
【0115】
これらの予備的結果は、完全なヒト中和抗−VEEV抗体が単離されたことを示すものである。図23Aおよび図23Bはこの開示にしたがって生産された、VEEVを中和する完全ヒトFabの配列を示す。これらの現存のヒト抗−VEEV Fabを上記のように全IgGに変え、精製し、その後に特徴づけることができる。
【0116】
VEEVに対する抗体のエピトープ特異性の試験(Roehrig,et al.Virology(1982)118,pp269−278;Roehrig and Mathews,Virology(1985)142,pp347−356)。
【0117】
TC−83ウィルスタンパク質のいずれが上記のFabによって識別されるのかを調べるためにウエスタンブロット法を行う。線状エピトープよりむしろ配座エピトープが識別されるので、ウエスタンブロットによって反応しないFabでは、ネイティブE1およびE2エンベロープ糖タンパク質をウィルス溶解物から精製し、既述のようにELISAまたは放射標識免疫沈殿アッセイを行う。
【0118】
ウィルスタンパク質上の反応性エピトープの同定は、下の表5に列挙するように、各結合基に対する代表的モノクローナル抗体で競合的ELISA法を用いてマッピングする。全ウィルスを塗布したミクロタイターウェルを最大約80%の結合を与える量の代表的Abと共にインキュベートする。ウェルは漸増量の試験Fabも含む。代表的Abのウィルスへの結合を抗マウスIgG Fc特異的−アルカリホスファターゼ結合物を使用してモニターする。結合の喪失は試験ヒトFabによる拮抗結合として説明され、エピトープの特異性または間隙配置を示唆する。
【0119】
【表5−1】

【0120】
【表5−2】

代表的Ab(John Roerig at CDC,Ft.Collins,コロラド)は50%硫酸アンモニウム沈殿およびタンパク質Gカラム上クロマトグラフィー後の腹水液から得ることができる。或いは抗体類を、無Ig−培地で増殖させたそれらのハイブリドーマ細胞系の条件培地から精製することができる。
【0121】
試験ウィルス菌種の交差反応性(Roehrig et al.,J.Clin.Microbiology(1997) 35,pp1887−1890:Roehrig et al.,Virology(1982)118,pp269−278)
VEEVは6サブタイプからなり、サブタイプ1は5変異体(1AB、1C、1D、1Eおよび1F)を含む。各サブタイプのウィルス菌種を既述のようにELISAまたは間接的蛍光抗体アッセイ(IFA)によって各候補Fabとの反応性について試験する。これらの分析に有用なプロトタイプウィルスを下の表6に列挙する。
【0122】
【表6】

センター・フォア・ディジーズ・コントロール(Centers for Disease Control)、ベクター担持ウィルス疾患部(フォートコリンズ、コロラド)に貯蔵されているストックからのウィルス類をBHK21細胞において増殖させることができる。
【0123】
(全IgGによるインビトロ中和試験の実施)
中和試験はベロ細胞において50−100PFU/試験を用いて行われ、既述のように70%終点を記録する(Roehrig et al.,1982)。
【0124】
(マウスをウィルス攻撃から防御する抗体類の能力の試験)
PBSで希釈した精製IgGの既知量を、例えば齢3週間のNIHスイスマウスのような若いマウスに尾静脈から静脈内接種した。24時間後、マウスに細胞培養培地で希釈したVEEVを腹腔内投与した。コントロールにはPBSの静脈内投与とウィルスかウィルス希釈物投与をおこなった。また別のコントロール群は防御することが以前に証明されたネズミAb 1A4A−1または3B4C−4を受けた。マウスを2週間観察する。接種されたマウスからのヘパリン化血漿試料は、眼球後静脈叢からの出血によって得た。
【0125】
(追加的抗−VEEV Fabの単離)
TC−83抗原に対するヒトFabの広域パネルを作成する。既にTC−83上でパンニングされた、1037および951ライブラリーからの>1000の個々のFabクローンを追加的ELISAスクリーニングにかける。これは、それらのパンニングされたライブラリーからの190Fabクローンのオリジナルスクリーンを補うものである。さらに、TC−83に対するタイターを有することが前に示されたあるドナー(811)のRNAから新しいファージディスプレイ抗体ライブラリーが作成される。新しく作成された811ライブラリーを固定TC−83に対してパンニングする。特異的Fabについて、インビトロ中和、および致死的ウィルス攻撃に対する動物モデルの防御をもたらすそれらの能力を既述のように特徴づける。
【0126】
(実施例3−ボツリナム)
前述のライブラリー作成およびパンニング技術を適用することによって、多くの異なるボツリナム毒素セロタイプに結合する抗体類を単離し、大量に生産する。炭疽菌およびVEEVについて上に記載した中和抗体のように、ボツリナム神経毒素に対するこれらの完全ヒト抗体は免疫予防のためにまたは免疫療法剤として適する。
【0127】
(実施例4−デング熱ウィルス)
ヒト完全中和抗体は理論的なおよび天然の抗毒素または抗感染症剤として特に有用である、というのは、それらがその他の治療的目的に対しても安全で耐容性がよいことが既に証明されているからである。動物にワクチン接種して得られるものであろうと、種々の動物ホストに受動的に投与されるものであろうと、中和抗体はデング熱を防御することが幾つかの例で証明された。しかし、ヒトにおけるデング熱感染はワクチン接種によって増強されることが示唆され、また特殊のデング熱抗原に対する抗体はそれ自体、凝固タンパク質およびインテグリン/付着タンパク質上の一般的エピトープ類との交差反応によって出血を起こすことが報告されている(Falconar,1997)。
【0128】
デング熱ウィルスの種々のセロタイプに感染したか、またはそれをワクチン接種した8名のヒトドナーの血液または骨髄サンプルから16の抗体ライブラリーを作成した。2ライブラリーが各ドナーから作成され、1つはκ軽鎖を使用し、その他はλ軽鎖を使用する。8名のドナーはデング熱の4セロタイプの各々で一回感染した、またはワクチン接種された4名のドナーを含み、デング熱セロタイプで複数回感染した人からの2ライブラリー、および四価デング熱ワクチンを受けた人からの2ライブラリーを含む。16の抗体ライブラリーを使用して、生存細胞、生存ウィルスおよびウィルス溶解物、並びに4デング熱セロタイプからのエンベロープおよびNA1タンパク質を含む組換えデング熱セロタイプに対して選択する。
【0129】
同定されたFab抗体を精製し、特異性、親和性、およびその他のFabおよび抗体類との拮抗を特徴づけるために使用する。
【0130】
中和することが確認された重要なデング熱抗体フラグメントは、コーディング領域を家畜である哺乳動物の発現ベクターにサブクローニングすることによって、全ヒトIgG1に変換される。全IgGコーディング配列を含むプラスミドを哺乳動物細胞にトランスフェクトすると、特徴づけのための、および受動免疫療法に使用するための大量のIgGを生産することができる。
【0131】
(実施例5−西ナイルウィルス)
前述のライブラリー作成およびパンニング技術を適用することによって、多くの異なる西ナイルウィルス菌種に結合する抗体類が単離され、大量に生産される。炭疽菌およびVEEVで上に記載した中和抗体のように、西ナイルウィルスに対するこれらの完全ヒト抗体は免疫防御のためにまたは免疫療法剤として適している。
【0132】
(実施例6−痘瘡/ワクシニアウィルス)
ワクシニアの中和に関係することが知られている、既述の個々の抗原に対する免疫ヒトライブラリーのスクリーニングによって、その抗原に結合する抗体類の同様なパネルが得られ、インビトロおよびインビボでウィルスの侵入および伝播を中和できる抗体類が同定される。さらに本明細書に記載の技術によって、同様な重鎖/軽鎖対の多くの変異体が同定され、これら変異体は試験および開発のために最も好ましい特徴を有する候補を選択できるある範囲の親和性を提供する。選択される抗原類、例えば感染細胞、溶解物、またはビリオンなどの混合物の使用ももう一つのアプローチと考えられる。これによって引き出される高親和性候補は、別のあるアプローチでは必要とされる親和性の成熟を必要とせずに、免疫予防のために単独で使用できる。或いは必要ならば特異的抗原に対する抗体類のカクテルを使用することができる。例えばHooperら(2000)は、ワクシニアの遺伝子L1RおよびA33Rを使用するDNAワクチン接種が、それらを単独で使用するよりも効果が大きく、両方に対して生成した抗体がどちらか1つに対する抗体よりもよい防御を与えることを示唆する。Nowakowskiら(2002)は、ファージディスプレイによって誘導される非重複エピトープに対する3抗体の混合物がポツリナム神経毒を強力に中和することを見いだした。この際、各抗体は単独ではほとんど無効であった。
【0133】
(実施例7−患者体液における、毒素に対するヒト抗体の存在を検出するELISAアッセイ)
このアッセイにおいて、溶液A(PBS+0.08%BC溶液)中、抗原PA83(リスト・ラボラトリーズ)4ng/ml溶液の50μlをイムロン2HBプレート(VWR)に結合させ、4℃で一晩インキュベートさせる。BC溶液は0.5%カゼイン(シグマ社)、0.01%チメロサル(シグマ社)、0.005%フェノールレッド、および0.01N NaOHを含むPBSである。ウェルをその後PBS+0.05%ツイーン20で3回洗い、溶液C(BC溶液+1%ツイーン20)と共に1時間インキュベートすることによってブロックする。ウェルを再びPBS+0.05%ツイーン20で3回洗い、患者サンプル(例えば血液、血清、胸膜洗浄液など)50μl(そのまま、または希釈系列として)と共に37℃で1〜2時間インキュベートする。希釈は溶液D(BC+0.025%ツイーン20)で行われる。陽性コントロールとして、幾つかのウェルを、このアッセイのために決められた濃度にまで溶液Dで希釈した実施例1に記載の抗炭疽菌抗体と共にインキュベートする。ウェルをPBS+0.05%ツイーン20で3回洗い、溶液D中の二次抗体、アルカリホスファターゼ標識ヤギ抗ヒトF(ab’)と共に37℃で1〜2時間インキュベートする。ウェルをPBS+0.05%ツイーン20で3回洗い、それから10mMジエタノールアミン、0.5mM MgCl、pH9.5、中ホスファターゼ基質(シグマ社)を用いて検出した。陽性サンプルはELISAリーダーを使用してA405で検出、定量される。
【0134】
(実施例8−患者体液中のPA83を検出および定量するためのアッセイ)
このアッセイでは炭疽菌PA83に対する2つの抗体を使用する。第一の抗体は固体基質(例えばミクロタイタープレート、ビーズまたはディップスティック)に結合する。例えば、溶液A(PBS+0.08%BC溶液)中実施例1からの抗体4ng/mlの溶液50μlをミクロタイターウェル中で、4℃で一晩インキュベートする。ウェルをPBS+0.05%ツイーン20で3回洗い、溶液Cと共に1時間インキュベートすることによってブロックする。ウェルを再びPBS+0.05%ツイーン20で3回洗い、患者サンプル(例えば血液、血清、胸膜洗浄液)50μl(そのまま、または希釈系列として)と共に37℃で1〜2時間インキュベートする。PA83の希釈系列を使用した標準曲線も含まれる。希釈は溶液D(BC+0.025%ツイーン20)で行われる。ウェルをPBS+0.05%ツイーン20で3回洗い、PA83上の非競合エピトープに結合する第二の抗炭疽菌抗体と共に37℃で1〜2時間インキュベートする。この二次抗体はアルカリホスファターゼで標識されている。ウェルをPBS+0.05%ツイーン20で3回洗い、その後10mMジエタノールアミン、0.5mM MgCl、pH9.5、中ホスファターゼ基質(シグマ社)を使用して検出する。陽性サンプルはELISAリーダーを用いてA405で検出される。
【0135】
下記の参考文献は参考としてそのまま本明細書に援用される:
【0136】
【表7−1】

【0137】
【表7−2】

【0138】
【表7−3】

本明細書に開示された実施形態には種々の変更をおこなうことができることは理解される。例えば本明細書に記載される特異的配列は、抗体または抗体フラグメントの機能に必ずしも悪影響を与えることなく若干変更できることは当業者の当然とするところである。例えば、抗体またはフラグメントの機能を破壊せずに抗体配列の単一または複数のアミノ酸を置換することはよくある。そこで、本明細書に記載される特異的抗体に70%以上の相同性を有する抗体類は本開示の範囲内である。特に有用な実施形態において、本明細書に記載される特異抗体に約80%より大きい相同性を有する抗体類が考慮される。その他の有用な実施形態において、本明細書に記載される特異抗体に約90%より大きい相同性を有する抗体類が考慮される。したがって前述したところは制限するためのものではなく、単に好ましい実施形態の例示であるに過ぎない。当業者はこの開示の範囲および精神を逸脱することなくその他の変更を構想することができる。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】図1は、本開示の好ましい実施形態によるライブラリー作成のための組織ソースとして適切な人々の汚染履歴をまとめた表である。
【図2】図2は、炭疽菌のPA83抗原に対する骨髄および血液ドナーの滴定値を示す。
【図3】図3は、PA63およびPA83に対するVH陽性反応性の配列分析を示す。
【図4】図4は、PA63およびPA83に対するVK陽性反応性の配列分析を示す。
【図5】図5は、PA63およびPA83に対するVL陽性反応性の配列分析を示す。
【図6】図6は、炭疽菌タンパク質PA83およびPA63に対する抗体類の変異ヒトκ軽鎖の配列を示す。
【図7】図7は、炭疽菌タンパク質PA83およびPA63に対する抗体類の変異ヒトλ軽鎖の配列を示す。
【図8A】図8A−8Cは、炭疽菌タンパク質PA83およびPA63に対する抗体類の変異ヒト重鎖のアミノ酸配列を示す。
【図8B】図8A−8Cは、炭疽菌タンパク質PA83およびPA63に対する抗体類の変異ヒト重鎖のアミノ酸配列を示す。
【図8C】図8A−8Cは、炭疽菌タンパク質PA83およびPA63に対する抗体類の変異ヒト重鎖のアミノ酸配列を示す。
【図9】図9は、精製Fabによる炭疽菌毒素活性の中和を示す。
【図10】図10は、7種類の逓減希釈Fabの防御パーセント(毒素だけの場合に比較)を示す。
【図11】図11は、本明細書に記載の方法によって作製されたFabの、PA63および/またはPA83上の線状エピトープと反応する能力を示すウエスタンブロットを示す。試験した5種類の抗PA83Fabの全てはPA83上の線状エピトープに結合するようにみえるが、これに対して抗PA63抗体は変性PA63には結合せず、かすかな、多分PA83への非特異的結合であると思われるものを示す。
【図12】図12はPA83およびPA63上の選択されたFabのELISA滴定を示す。PA63への切断はFML8EおよびF9L6R2の結合を劇的に変えるが、FMK7Cは両方の型に同様によく結合する。F951L631DはPA63だけに結合する。最大結合はFMK7Cのそれの4分の1であり、PA63物質の一部だけがF951L631Dと相互作用し得る型であることを示唆する。
【図13】図13は、Fab FML8Eのhis−タグ付き変種をその他のタグなしFabと比較して用いてエピトープ特異性を試験した結果を示す。
【図14】図14は、200ng/ウェルのPA63およびPA83に対する選択されたFab 1μg/mlのELISA滴定を示す。
【図15】図15は、PA63に対する結合に関して、2種類のFab 63L1Dおよび83K7CとLFとの拮抗を示す。
【図16】図16は、2種類の抗PA83Fab、83K7Cおよび83L8Eの、マウスモノクローナル抗体14B7との拮抗を示す。
【図17】図17は、PAが細胞に結合した後、選択されたFabが毒素の効果を中和できるかどうかを決定するアッセイの結果を示す。
【図18】図18は、組換え毒素攻撃に対抗するFab83K7Cおよび63L1Dのインビボ試験結果を示す。
【図19】図19は、VEEVの固定TC−83抗原に関する血清反応性を示す。
【図20A】図20A−20Dは、VEEVの固定TC−83抗原に結合するFabクローンを、4ライブラリー(951K、951L、1037K、1037L)からスクリーニングした結果を示す。
【図20B】図20A−20Dは、VEEVの固定TC−83抗原に結合するFabクローンを、4ライブラリー(951K、951L、1037K、1037L)からスクリーニングした結果を示す。
【図20C】図20A−20Dは、VEEVの固定TC−83抗原に結合するFabクローンを、4ライブラリー(951K、951L、1037K、1037L)からスクリーニングした結果を示す。
【図20D】図20A−20Dは、VEEVの固定TC−83抗原に結合するFabクローンを、4ライブラリー(951K、951L、1037K、1037L)からスクリーニングした結果を示す。
【図21】図21は、VEEVの固定TC−83抗原上の精製ヒトFabの直接滴定値を示す。
【図22】図22は、VEEVまたはBSAの固定TC−83抗原に対する結合に関してヒトFabsとネズミFab mHy4(3B4C−4)とが拮抗することを示す。
【図23】図23Aおよび23Bは、VEEVを中和する本開示にしたがって作られる完全ヒトFabの配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭疽菌に感染した動物を処置する方法であって、炭疽菌の保護抗原に対する少なくとも1×10−8Mの結合親和性、ならびに該保護抗原と、細胞受容体、浮腫因子および致死因子からなる群の1つ以上のメンバーとの結合をブロックする能力を有する抗体または抗体フラグメントを投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
炭疽菌に感染した動物を処置する方法であって、炭疽菌感染に関係する分子に対する少なくとも1×10−8Mの結合親和性、ならびに炭疽菌感染に関係する該分子と、細胞受容体、PA63、PA63ヘプタマー、PA83、浮腫因子および致死因子からなる群の1つ以上のメンバーとの結合をブロックする能力を有する抗体または抗体フラグメントを投与する工程を包含する、方法。
【請求項3】
炭疽菌に感染した動物を処置する方法であって、EFおよび/またはLFがPA63ヘプタマーに結合することを阻止する能力を有する抗体または抗体フラグメントを投与する工程を包含する、方法。
【請求項4】
前記抗体または抗体フラグメントがPA63のヘプタマー形成を阻止する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体または抗体フラグメントがPA63とEFまたはLFとの結合を阻止する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体または抗体フラグメントがEFおよび/またはLFとPA63ヘプタマーとの結合を阻止する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体または抗体フラグメントが配列番号1〜18からなる群から選択される配列を有する重鎖可変領域を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体または抗体フラグメントが配列番号19〜26からなる群から選択される配列を有する軽鎖κ領域を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体または抗体フラグメントが配列番号27〜38からなる群から選択される配列を有する軽鎖λ領域を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体または抗体フラグメントが配列番号39〜61からなる群から選択される配列を有する軽鎖κ領域を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体または抗体フラグメントが配列番号62〜77からなる群から選択される配列を有する軽鎖λ領域を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体または抗体フラグメントが配列番号78〜112からなる群から選択される配列を有する重鎖可変領域を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
炭疽菌汚染を判断する方法であって、
被験体から体液または組織の試験サンプルを得る工程、および
前記試験サンプル中の、細胞受容体、PA63、PA63ヘプタマー、PA83、浮腫因子および致死因子からなる群の1つ以上の分子の存在を、該分子に結合親和性を有する抗体または抗体フラグメントでアッセイする工程を包含し、
該サンプル中における高レベルの該抗体または抗体フラグメントの存在が炭疽菌関連性疾患の存在と相互に関連する、
方法。
【請求項14】
前記抗体または抗体フラグメントが配列番号1〜18からなる群から選択される配列を有する重鎖可変領域を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体または抗体フラグメントが配列番号19〜26からなる群から選択される配列を有する軽鎖κ領域を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体または抗体フラグメントが配列番号27〜38からなる群から選択される配列を有する軽鎖λ領域を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体または抗体フラグメントが配列番号39〜61からなる群から選択される配列を有する軽鎖κ領域を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体または抗体フラグメントが配列番号62〜77からなる群から選択される配列を有する軽鎖λ領域を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体または抗体フラグメントが配列番号78〜112からなる群から選択される配列を有する重鎖可変領域を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
ベネズエラウマ脳脊髄炎汚染を判断する方法であって、
被験体から体液または組織の試験サンプルを得る工程、および
該試験サンプル中のベネズエラウマ脳脊髄炎による感染に関係する1つ以上の分子の存在を、該分子に結合親和性を有する抗体または抗体フラグメントでアッセイする工程を包含し、
該サンプル中の高レベルの該抗体または抗体フラグメントの存在がベネズエラウマ脳脊髄炎関連性疾患の存在と相互に関連する、
方法。
【請求項21】
前記抗体または抗体フラグメントが配列番号113〜115からなる群から選択される可変軽鎖領域を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体または抗体フラグメントが配列番号116〜118からなる群から選択される可変重鎖領域を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
炭疽菌汚染を判断する方法であって、
被験体から体液または組織の試験サンプルを得る工程、および
該試験サンプル中の細胞受容体、PA63、PA63ヘプタマー、PA83、浮腫因子および致死因子からなる群の1つ以上の分子に対する抗体の存在を、該抗体に結合親和性を有する二次抗体または抗体フラグメントでアッセイする工程を包含し、
該サンプル中の高レベルの該二次抗体または抗体フラグメントの存在が該被験体における炭疽菌の存在と相互に関連する、
方法。
【請求項24】
前記試験サンプル中の抗体または抗体フラグメントのレベルを、配列番号1〜18からなる群から選択される配列を有する重鎖可変領域を含むコントロール抗体または抗体フラグメントと関連づける工程をさらに包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記試験サンプル中の抗体または抗体フラグメントのレベルを、配列番号19〜26からなる群から選択される配列を有する軽鎖κ領域を含むコントロール抗体または抗体フラグメントと関連づける工程をさらに包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記試験サンプル中の抗体または抗体フラグメントのレベルを、配列番号27〜38からなる群から選択される配列を有する軽鎖λ領域を含むコントロール抗体または抗体フラグメントと関連づける工程をさらに包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記試験サンプル中の抗体または抗体フラグメントのレベルを、配列番号39〜61からなる群から選択される配列を有する軽鎖κ領域を含むコントロール抗体または抗体フラグメントと関連づける工程をさらに包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記試験サンプル中の抗体または抗体フラグメントのレベルを、配列番号62〜77からなる群から選択される配列を有する軽鎖λ領域を含むコントロール抗体または抗体フラグメントと関連づける工程をさらに包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
試験サンプル中の抗体または抗体フラグメントのレベルを、配列番号78〜112からなる群から選択される配列を有する重鎖可変領域を含むコントロール抗体または抗体フラグメントと関連づける工程をさらに包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
ベネズエラウマ脳脊髄炎汚染を判断する方法であって、
被験体から体液または組織の試験サンプルを得る工程、および
該試験サンプル中の抗ベネズエラウマ脳脊髄炎ウィルス抗体の存在を、該抗体に結合親和性を有する二次抗体または抗体フラグメントでアッセイする工程を包含し、
高レベルの該二次抗体または抗体フラグメントの存在が該被験体のベネズエラウマ脳脊髄炎の存在と相互に関連する、
方法。
【請求項31】
前記抗体または抗体フラグメントが配列番号113〜115からなる群から選択される可変軽鎖領域を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記抗体または抗体フラグメントが配列番号116〜118からなる群から選択される可変重鎖領域を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
炭疽菌汚染を判断するための診断キットであって、該キットは、細胞受容体、PA63、PA63ヘプタマー、PA83、浮腫因子および致死因子からなる群の、炭疽菌感染に関係する1つ以上の分子と特異的に反応する抗体を含む、キット。
【請求項34】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項33に記載の診断キット。
【請求項35】
前記抗体または抗体フラグメントが配列番号1〜18からなる群から選択される配列を有する重鎖可変領域を含む、請求項33に記載の診断キット。
【請求項36】
前記抗体または抗体フラグメントが配列番号19〜26からなる群から選択される配列を有する軽鎖κ領域を含む、請求項33に記載の診断キット。
【請求項37】
前記抗体または抗体フラグメントが配列番号27〜38からなる群から選択される配列を有する軽鎖λ領域を含む、請求項33に記載の診断キット。
【請求項38】
前記抗体または抗体フラグメントが配列番号39〜61からなる群から選択される配列を有する軽鎖κ領域を含む、請求項33に記載の診断キット。
【請求項39】
前記抗体または抗体フラグメントが配列番号62〜77からなる群から選択される配列を有する軽鎖λ領域を含む、請求項33に記載の診断キット。
【請求項40】
前記抗体または抗体フラグメントが配列番号78〜112からなる群から選択される配列を有する重鎖可変領域を含む、請求項33に記載の診断キット。
【請求項41】
ベネズエラウマ脳脊髄炎による感染に関係する1つ以上の分子と特異的に反応する抗体を含む、ベネズエラウマ脳脊髄炎汚染を検出するための診断キット。
【請求項42】
前記抗体が配列番号113〜115からなる群から選択される可変軽鎖領域を含む、請求項41に記載の診断キット。
【請求項43】
前記抗体が配列番号116〜118からなる群から選択される重鎖可変領域を含む、請求項41に記載のキット。
【請求項44】
薬物学的に受容可能な担体中に、PA63のマルチマーを含む組成物を被験体に投与する工程を包含する、予防的処置法。
【請求項45】
前記PA63のマルチマーが7つまでのPA63ユニットを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記PA63のマルチマーがPA63ヘプタマーを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
薬物学的に受容可能な担体中にPA63のマルチマーを含む、ワクチン。
【請求項48】
前記PA63のマルチマーがPA63ユニットを7つまで含む、請求項47に記載のワクチン。
【請求項49】
前記PA63のマルチマーがPA63のヘプタマーを含む、請求項47に記載のワクチン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図20D】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2006−526639(P2006−526639A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−514972(P2006−514972)
【出願日】平成16年5月26日(2004.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/016557
【国際公開番号】WO2004/110362
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(503102674)アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (51)
【Fターム(参考)】