説明

生産細胞の再クローン化方法

本発明は、バイオ医薬品の製造で使用する哺乳類細胞、好ましくはハムスター細胞又はマウス骨髄腫細胞クローンを選択して再クローン化するための高度に自動化され、かつ高度の処理能力を有する新規な方法に関する。本発明は、対応する細胞の個々の細胞クローンを置いてかつ繁殖させる方法、個々の細胞を置くことによって得、繁殖させた細胞を用いてタンパク質を製造する方法、及び個々の細胞を繁殖させうる組成物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、細胞培養技術の分野に関係し、細胞、好ましくはバイオ医薬品の生産に重要な細胞系を複製/クローン化する方法に関する。本発明は、個々の細胞を置く(depositことによって得、かつ複製した細胞を用いてタンパク質を調製する方法にも関し、個々の細胞の複製を可能にする組成物にも関するものである。
【0002】
〔発明の背景〕
哺乳類細胞内での生物活性タンパク質又は治療用タンパク質、いわゆるバイオ医薬品のバイオテクノロジー生産では、生物活性タンパク質(又はそのサブユニット)をコードするDNAで、対応する哺乳類細胞を安定してトランスフェクトする。トランスフェクションプロセス後、通常、いろいろにトランスフェクトされた数百万個の細胞のプールが得られる。従って、効率的な生産細胞系の調製で重要なステップは、一方では非常に安定して成長し、他方では治療用タンパク質の高特異的生産性(産物形成など)を示す細胞クローンの選択と複製にある。数百万個の異なる産物-発現細胞があるので、非常に力強く成長し、かつ高い産物タイターも与える適切な候補(単一細胞クローン)を選別できるように、高処理能力で、かつ自動化によって多数の細胞を個々に分析できることが重要である。この単一細胞の単離及び継代培養プロセスはクローン化又は再クローン化として知られる。
【0003】
トランスフェクトされた細胞は、蛍光活性化セルソーティング(fluorescence-activated cell sorting)(FACS)によって、例えば治療用タンパク質の発現を例えばマーカータンパク質の発現に連係させることによって選択することができる。この目的のため、例えばAequorea victoria、Renilla reniformis又は他の種の蛍光タンパク質及びその変種、例えば非-生物発光生物体(例えば、Discosoma種、Anemonia種、Clavularia種、Zoanthus種)の赤、黄、紫、緑の蛍光タンパク質又はその変種を治療用タンパク質と一緒に細胞内で共発現させることができる。その蛍光強度から、細胞の特異的生産性及び成長特性についての結論を引き出すことができる。
しかしながら、マウス骨髄腫(NS0)、ハムスター卵巣(CHO)、又はハムスター腎臓細胞(BHK)のような典型的な組換え生産細胞(特にそれら細胞が血清フリー懸濁培養、すなわち、最近の生産関連細胞培養条件下、個々に培養容器内、例えばマイクロタイタープレートのウェル内、血清フリー培養条件下での成長に適応している場合)を置き、かつ効率的にそれらを複製(再クローン化)するという問題がある。数個の細胞、例えば5個未満の細胞を血清フリー条件下で培養容器に置いた場合、これら細胞はまったく複製できず、或いは少なくとも効率的に複製できない。この理由は、細胞と細胞の接触がないこと、低い細胞密度ではより多くの栄養/成長因子が必要であること及び/又は拡散性のシグナル因子及び条件付け(conditioning)因子がないか若しくは非常に低濃度なことだと考えられる。
【0004】
従来技術では、上記組換え生産細胞における血清フリーの単一細胞クローン化の問題は、限界希釈法で細胞クローンを生成することによって回避される。この方法では、培養皿内の血清フリー培地に最少5〜10個の細胞を播いてから、統計用語における遺伝的に同一の細胞から成る培養を得るため、反復希釈クローン化によって継代する(方法=限界希釈)。一方でこの再クローン化法は時間がかかり、他方で、この方法は統計計算に基づいており、個々に置かれた遺伝的に同一の細胞の実際の培養でないので、通常、この方法は遺伝的に異種の混合培養をもたらす。これら異種の混合培養は、一般的に発酵に関して活発さが制限され、かつ異種発現プロファイルを特徴とする。
これとは別に、現在、血清適応性付着細胞を個々に置くことよって、生産関連細胞系の単一細胞クローンを生成できるだけである。Mengら(2000)は、例えば、血清含有培地で個々の付着して成長するCHO細胞を置く方法を述べている。しかしながら、Mengらによって開示された方法は大きな欠点がある。すなわち、細胞の付着のため、骨の折れるその細胞を基質から酵素的に脱着すること(トリプシン処理)は相当な細胞損傷につながり、再クローン化細胞の成長特徴及び生産性が変わる。さらに、対応して得られる個々のクローンは懸濁培養での血清フリー成長に適応させなければならず、これは通常時間がかかる操作であり、細胞の生産性及び産物の質に影響を与える(この主題については、とりわけKaufmannら, 2001; Muellerら, 1999を参照されたい)。
【0005】
付着して成長する細胞の培養において、フィーダー細胞としても知られる栄養細胞を使用することによって、より良い細胞の成長特性に影響を及ぼすことができ、或いはいくつかのタイプの細胞では、最初の細胞培養条件下で細胞を複製することができる。このような細胞の例として、ヒト-マウス又はマウス-マウスハイブリドーマ細胞(Hlinak et al 1988, US 5,008,198)、初生ケラチノサイト(Rheinwald and Green, 1975; WO 9954435)、幹細胞(Williams et al., 1988)、及び種々の腫瘍細胞(Wee Eng Lim et al., 2002; Rexroad et al., 1997; Peng et al., 1996; Grigoriev et al., 1996; Sanchez et al., 1991; Butcher et al., 1988; Long et al., 1986; Shneyour et al., 1984; Pintus et al., 1983; Brodin et al., 1983)が挙げられる。フィーダー細胞は、通常、特殊な前処理の結果としてその成長が化学的又は物理的に静止され、その細胞分裂の能力を失っているが、その他の点では平均して約2〜3週間生命を維持したままの細胞である。従って、フィーダー細胞はまだ成長促進因子を培地中に放出することができるので、非静止細胞の初期成長を促すことができ、或いは種々の初生細胞の場合、この成長を可能にしさえする。この目的では、培養皿にいわゆる単層としてフィーダー細胞を塗布する。次に、付着して成長する被培養細胞をフィーダー細胞の上又は間に塗布し、標準条件下で培養する。フィーダー細胞は、例えば、マイトマイシンCによる照射又は処理によって調製しうる(アジリノ[2',3':3,4]ピロロ[1,2-a]インドール-4,7-ジオン,6-アミノ-8-[[(アミノカルボニル)オキシ]メチルl]-1,1a,2,8,8a,8b-ヘキサヒドロ-8a-メトキシ-5-メチル-,[1aR-(1a.α,8.β,8a.α, 8b.α.)]-(9CI)(Butcher et al, 1988))。フィーダー細胞システムでは、脾臓細胞、線維芽細胞、血液細胞のような初生細胞(Morgan, Darling; Kultur tierischer Zellen [culture of animal cells]. Spektrum Akademischer Verlag 1994, p. 115f)及びマクロファージ(Hlinak et al., 1987)が開示されている。ハイブリドーマ細胞における抗体の産生に関連してフィーダー細胞及びFACS-ベース細胞選択の使用について記載された。例えば、Hlinakら(1987)は、1培養皿当たり2個から開始する付着して成長するハイブリドーマ細胞の再クローン化での33〜57%とい再クローン化効率を開示している。使用したハイブリドーマ細胞は、血清含有培地に適応性の付着して成長する細胞だった。
【0006】
異種の、特にヒトフィーダー細胞を生産細胞生成に使用する場合、例えばウイルス、細菌又はマイコプラズマのような病原によるコンタミネーションのかなりのリスクがある。さらに、開示されている多くの(初生)フィーダー細胞は血清含有培地を必要とし、第1にコンタミネーションのリスクを高め、第2に骨を折って血清フリー成長に適応させた生産細胞を再び適応させなければならないという欠点がある。
異種フィーダー細胞を使用する場合、一般的にフィーダー細胞を逆-選択する必要がある。生産細胞は例えば培地への添加剤(G418のような抗生物質)及び/又は不完全培地(ヒポキサンチン、チミジンの非存在)の使用の結果として一般的に選択圧になりやすい。この選択圧が、例えば組換えタンパク質に対応する遺伝情報を吸収かつ組み込んだ細胞の選択を可能にする。このようにして生産細胞に適応させて生成された培地は、フィーダー細胞の成長に重大な影響を及ぼし、その他の点では非適合性の生産培地と共にフィーダー細胞の非常に迅速な乾燥をもたらす。結果として、もはやフィーダー細胞の機能は保証されない。
【0007】
〔発明の概要〕
本発明の1つの目的は、5個未満の細胞、好ましくは1個の単一細胞から開始して血清フリー条件下かつ懸濁培養で生産関連哺乳類細胞を複製できる効率的な再クローン化法を見出すことだった。特に、この目的は、元来ハムスターから単離したCHO又はBHK細胞及び元来マウスから単離した骨髄腫細胞、例えばNS0細胞の再クローン化に対応する方法を提供することだった。
本発明のさらなる目的は、この対応する再クローン化法、特にハムスター細胞又はマウス骨髄腫細胞を再クローン化する方法の実施を可能にする組成物を提供することだった。
これら目的は、特許請求の範囲で定義した本発明の主題によって達成される。一局面では、本発明は、細胞のクローン化方法であって、5個未満、好ましくは1個又は2個の哺乳類細胞、好ましくはハムスター細胞又はマウス骨髄腫細胞を、フィーダー細胞、好ましくは自家起源のフィーダー細胞の存在下、血清フリー条件下で培養容器に置いて、血清フリー条件下で培養かつ複製することを特徴とする方法に関する。一特定局面では、本発明は、CHO若しくはBHK細胞(ハムスター細胞)又はNS0細胞(マウス骨髄腫細胞)(好ましくは、これら細胞が懸濁培養での血清フリー成長に適応している細胞の場合)の再クローン化に対応する方法に関する。
本発明の別の態様は、置かれて、かつクローン化される哺乳類細胞がハムスター細胞、特にCHO又はBHK細胞である場合にフィーダー細胞としてハムスター細胞を使用することに関する。置かれて、かつクローン化すべき細胞がNS0細胞の場合、好ましくはフィーダー細胞としてマウス骨髄腫細胞を使用する。
【0008】
別の局面では、本発明は、CHO、BHK又はNS0細胞の再クローン化に対応する方法に関し、クローン化される哺乳類細胞がCHO細胞の場合、フィーダー細胞としてCHO細胞を使用し、クローン化される哺乳類細胞がBHK細胞の場合、フィーダー細胞としてBHK細胞を使用し、かつクローン化される哺乳類細胞がNS0細胞の場合、フィーダー細胞としてNS0細胞を使用することを特徴とする。
本発明の方法は、特に個々に置かれた細胞について10%より高い、好ましくは20%より高い良い再クローン化効率を特徴とする。別の態様によれば、本発明の再クローン化法は、30%より高い、好ましくは40%より高い、特に好ましくは50%より高い、さらに好ましくは60%より高い、なおさらに好ましくは70%より高い、なおさらに好ましくは80%より高い再クローン化効率を有する。
この場合、個々に置かれたCHO細胞の再クローン化では10%乃至65%より高い再クローン化効率、個々に置かれたBHK細胞の再クローン化では10%乃至50%より高い再クローン化効率、個々に置かれたNS0細胞の再クローン化では10%乃至45%より高い再クローン化効率が効率的とみなされる。1培養皿当たり1個より多い細胞、例えば2、3又は4個の細胞を置いている場合、問題の細胞の再クローン化効率はCHO、BHK及びNS0細胞の再クローン化について規定した上記値より高い。
別の局面では、本発明は、哺乳類細胞、特にハムスター細胞又はマウス骨髄腫細胞をクローン化に対応する方法であって、クローン化される細胞が1mlの培地当たり100〜200,000個のフィーダー細胞の存在下で複製される方法に関する。
【0009】
本発明は、本発明のクローン化法の1つで成長させた血清フリーの付着しないで成長する哺乳類細胞内で、タンパク質、好ましくは組換えタンパク質を生産する方法にも関し、特に、血清フリー条件下、例えばCHO、BHK又はNS0細胞のような対応してクローン化されたハムスター細胞又はマウス骨髄腫細胞内での組換えタンパク質の生産方法であって、以下の工程を含む:
a)問題の細胞を複製できる血清フリー条件下、対象遺伝子産物を発現する哺乳類細胞を培養する工程;
b)5個未満、好ましくは1又は2個の対応する哺乳類細胞を、血清フリー条件下で1つの細胞培養容器に置く工程;
c)対応して置かれた細胞を、血清フリー条件下、自家フィーダー細胞の存在下で複製する工程;
d)この複製された置かれた細胞を、対象遺伝子が発現される血清フリー条件下で培養する工程;及び
e)膜を含む細胞又は培養上清から、対象遺伝子でコードされている遺伝子産物を回収かつ精製する工程。
【0010】
組換え遺伝子産物の発現は、対象遺伝子産物をコードする核酸による哺乳類細胞のトランスフェクションも必要とする。
例えば、手動又はFACSベースソーティングによって哺乳類細胞を分離して、フィーダー細胞と共に細胞培養容器に置くことができる。好ましくは、非付着性培養フィーダー細胞を使用する。
本発明は、ハムスター細胞、特にCHO又はBHK細胞及びマウス骨髄腫細胞、特にNS0型細胞のフィーダー細胞としての基本的使用にも関する。好ましい態様では、本発明は、血清フリー培養条件に適応させた対応する細胞の使用に関する。
本発明は、血清フリー細胞培地と、分裂可能な5個未満の哺乳類細胞と、この分裂可能な哺乳類細胞について自家性のフィーダー細胞とから成る組成物にも関する。本発明のさらなる局面により、前記分裂可能な哺乳類細胞は、懸濁培養として血清フリー成長に適応している細胞である。特定態様では、本組成物は、前記培地中に分裂可能な哺乳類細胞を1又は2個だけ含有する。分裂可能な哺乳類細胞は、好ましくは、例えばCHO若しくはBHK細胞のようなハムスター細胞、又はマウス骨髄腫細胞、例えばNS0細胞である。
本発明の別の局面では、分裂可能な哺乳類細胞がCHO細胞の場合、組成物はフィーダー細胞としてハムスター細胞、好ましくはCHO細胞を含有する。分裂可能な哺乳類細胞がBHK細胞の場合、組成物はフィーダー細胞としてもハムスター細胞、好ましくはBHK細胞を含有する。分裂可能な哺乳類細胞がマウス骨髄腫細胞、例えばNS0細胞の場合、組成物はフィーダー細胞としてもマウス骨髄腫細胞を含有し、NS0細胞の場合はフィーダー細胞としても好ましくはNS0細胞を含有する。
【0011】
驚くべきことに、懸濁した自家フィーダー細胞を使用することで、血清フリー及び/又はタンパク質フリー培地に単一の哺乳類細胞、好ましくはハムスター細胞又はマウス骨髄腫細胞を置いて培養に成長させることによって、例えば限界希釈法、又は懸濁培養での血清フリー成長にモノクロナール細胞系を適応させることによる再クローン化の上記欠点を克服できることが分かった。
本発明の方法は、血清フリー、タンパク質フリー又は化学的に規定した生産培地中の細胞に、対応する哺乳類細胞を置くことができるようにするので、普通は必要な血清フリー又はタンパク質フリー生産培地への適応化を行う必要がない。このことが生産関連細胞系の確立における開発時間の実質的な短縮(約50%)につながる。さらに、単一細胞を置くこと、安定した均質の細胞クローンをもたらし、このことはバイオ医薬品の生産で非常に重要であり、薬物としてのそれらの使用許可の規定要件について特に重要である。さらに、生産関連CHO、BHK又はNS0細胞の再クローン化用に自家フィーダー細胞を使用すること、例えば、ハムスター細胞、好ましくはCHO若しくはBHK細胞、又はマウス骨髄腫細胞、好ましくはNS0細胞の使用は、ヒト細胞又はあまりよく特徴づけされていない細胞の使用より、ヒト病原についてのコンタミネーションのリスクをかなり低減する。
【0012】
〔図面の説明〕
図1は、フィーダー細胞の生産で用いたエネルギー線量と、自動的に置かれた単一CHO-DG-44細胞の再クローン化におけるクローン化効率との関係を示す。各場合、約2000個の不活性な自家フィーダー細胞上にCHO-DG-44細胞を置く。グラフは、20〜500Gyのエネルギー線量で照射されたフィーダー細胞は未だ十分な因子を培地に放出し、50Gyで置かれた単一クローンの65%より多くをコロニーに成長させることを示している。
図2は、限界希釈(左側の列)又は単一細胞を置くこと(右側の列)によって得られた抗体発現CHO-DG-44培養の生産性を示す。左側の列は、限界希釈によって得られた6つの培養の生産性を示す。右側の列は、自動的に単一細胞を置くことから得られた6つの単一クローンの生産性を示す。生産性を決定するため、細胞クローン/培養毎に3とおりの平行実験を行った。限界希釈によるクローン化と対照的に、単一クローンを自動的に置くことによるクローン化は、生産性の実質的変化が少なかった。平行して培養し、かつ単一クローンから誘導した二次培養はその生産性について限界希釈で得た二次培養に比べて実質的に高い均質性を示す。
図3aは、種々の基準に従って貯蔵し、かつ個々に置かれたCHO-DG-44細胞クローンの産物タイターを示す。下段のグラフでは、“生きている細胞”という選別基準だけを満たす単一細胞を置いた。この基準はフローサイトメーターでのフォワードサイドスキャター記録を用いて定義した。細胞は蛍光では選択されなかった。他方、中段のグラフBと上段のグラフCでは、“生きている細胞”という選別基準にさらに“細胞の蛍光”という選別基準を論理的につなげた。“細胞の蛍光”という選別基準はさらに蛍光強度を用いても定義した。これを行うため、一方でトップ20%の蛍光性細胞クローンと、他方でトップ5%の蛍光性細胞クローンを個々に置いた。棒グラフCにおける右へのシフトは、トップ5%の蛍光性細胞の基準を用いた場合、A及びBで用いた他の選別基準に比べて高発現性の細胞クローンの比率が有意に増加することを示している。
図3bは、図3aに示したデータに基づいている。平均の2倍の生産性を有するプロデューサー(=高プロデューサー)を得る確率(%)を示す。すべての生細胞で得られたデータに正規分布を調和させ、平均タイターを決定した。次に、正規分布の分布関数から、個々に細胞を置くことで得られた細胞クローンが前記タイターの2倍以上であるパーセンテージを計算した。図3bにはこのパーセンテージが示されている。グラフは、“生きている細胞”という基準だけの使用に比べてさらにトップ5%という基準を使用した場合、高プロデューサーの確率が20倍を超えて高くなることを示している。
【0013】
〔発明の詳細な説明及び好ましい態様〕
以下の非限定的な例示態様を用いて本発明をさらに詳細に説明する前に、不定冠詞、例えば“a”又は“an”と、定冠詞、すなわち“the”の使用は、問題の用語の単数と複数の二形式の一方を明白に除外し、特定形成(単数又は複数)に言及していない限り、両形式を包含することに注意すべきである。従って、用語“細胞(a cell)”は、単数の細胞だけを意味すると明白に述べていない限り、自動的に“複数の細胞”を包含する。例えば、“a”又は“one”が(1)で補足されている場合、明白に単数を意味する。
〔定義〕
細胞培養に関する用語“クローン化/再クローン化”、“クローン化/再クローン化する”は、元の細胞から同一細胞の細胞集団を得ることができる技術を意味する。従って、“細胞クローン化”又は“単一細胞クローン化”は、異なる遺伝子型の細胞のある細胞プールから単一細胞を同定かつ単離してから複製して、複数の遺伝子的に同一の細胞から成る細胞集団を形成することができるプロセスを意味する。細胞を個々に、すなわち1つの培養容器につき1個だけの細胞を置いてから増量させて同一細胞の細胞集団を形成する場合、このプロセスは“直接的単一細胞クローン化”である。いくつかの細胞を同時に培養容器に置いて、増量させて細胞集団を形成し、これを反復希釈(限界希釈)によって同一細胞の細胞集団に分裂する場合、これは“間接的クローン化”法と記述される。
単一クローンは、1個の単一細胞に由来する遺伝的に同一の細胞である。従って、以後、同起源の同一細胞から成る細胞集団を“モノクロナール細胞集団”と称する。同起源の細胞の培養中にそのゲノムに自発的変化、例えば、突然変異及び/又はトランスロケーションがあっても、本発明の目的では、この細胞集団の個々の細胞は未だ同一細胞とみなされ、該培養はモノクロナール細胞集団とみなされる。対照的に、安定してトランスフェクトされた細胞(トランスフェクタント)のプールは同じ血統の細胞クローンではない。すなわち、遺伝的に同一の出発細胞が同一の核酸でトランスフェクトされた場合でさえ、それらはモノクロナール細胞集団ではない。
【0014】
用語“サブクローン/二次培養”は、元の細胞又は元の培養から、分裂細胞の単回又は複数回の継代によって生成される異なる世代の細胞を指す。例えば、数世代にわたって同一の細胞又は細胞培養物を培養するときに用語“サブクローン/二次培養”を用いる。
“有効又は効率的な再クローン化”とは、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも30%、なおさらに好ましくは少なくとも40%のクローン化効率を意味する。本発明の特に好ましい態様では、用語効率的な再クローン化は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、最も好ましくは少なくとも70%、なおさらに好ましくは少なくとも80%の効率のクローン化を意味する。
用語“クローン化効率”は、置いた後好ましくは50個を超える細胞の活発な細胞集団を形成できる細胞のパーセンテージとして定義される。例えば、細胞選別操作で50個の細胞を50個の培養容器に分布させ、これら50個の個々に置かれた細胞の25個が成長して培養を形成した場合、このクローン化効率は50%(50から25)である。
本発明の目的での用語“分裂できる/増量可能な”は、細胞/細胞集団の無限に、少なくとも2回より多く、好ましくは4回の継代で分裂する可能性を示す。この可能性は、例えば[137]Csによる照射又はマイトマイシンC処理によって減少させ、或いは全部破壊することができる。
用語“派生物/子孫”は、遺伝的に特定の出発細胞にさかのぼることのできる細胞を指し、例えば継代培養(選択圧がある場合とない場合)によって形成され、及び/又遺伝子操作で生成される。同じ細胞型の細胞の再単離も用語“派生物/子孫”に包含される。従って、例えば、すべてのCHO細胞系は、継代培養、再単離又は遺伝子操作のいずれによって得られたかとは関係なく、Puckら(1958)によってチャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)から単離されたハムスター卵巣細胞の派生物/子孫である。
【0015】
用語“自家フィーダー細胞”は、フィーダー細胞と、このフィーダー細胞の存在下で培養される細胞(被培養細胞)の両者が分類学的に同起源に由来する場合にこれら両細胞を意味する。例えば、被培養細胞がハムスター細胞(キヌゲネズミ亜科(Cricetinae))、好ましくはCricetulus属又はMesocricetus属の細胞、例えばCHO又はBHK細胞の場合、元来この亜科から単離された各フィーダー細胞は、キヌゲネズミ亜科のこれらハムスター細胞に対して自家性である。好ましい態様によれば、用語“自家フィーダー細胞”は、分類学的に同属に由来し、又は元来同属(Cricetulus属又はMesocricetus属の細胞)から単離されたフィーダー細胞と被培養細胞の両者を意味する。例えば、被培養細胞がCricetulus属又はMesocricetus属のハムスター細胞、好ましくはCHO又はBHK細胞の場合、この発明の意味では元来問題の属から単離された各フィーダー細胞が自家フィーダー細胞である。別の好ましい態様によれば、フィーダー細胞と被培養細胞が同一の種、例えばチャイニーズハムスター又はMesocricetus auratus由来の場合に自家フィーダー細胞が存在する。特に好ましい態様では、フィーダー細胞と被培養細胞が両方とも同一の種由来であり、かつ同一の組織向性(tropism)を有する場合(例えば、チャイニーズハムスター−CHO細胞由来の卵巣細胞)に自家フィーダー細胞が存在する。特に好ましい態様によれば、フィーダー細胞と被培養細胞の両者が同一の基本細胞を起源とする場合、例えば、両細胞が元来CHO-DG-44細胞又はこれら細胞の子孫である場合、フィーダー細胞が自家フィーダー細胞である。別の好ましい態様では、フィーダー細胞は被培養細胞と同じ抵抗性(例えば、抗生物質に対して)を与える。このことは、細胞を置くことを選択薬剤、例えば抗生物質の存在下で行う場合に特に有利である。
【0016】
用語“血清フリー”は、動物及び/又はヒト血清の非存在下、好ましくは血清から単離される如何なるタンパク質の非存在下、好ましくは非組換え的に生成されるタンパク質の非存在下で細胞が成長する培地を意味し、またそのような培養条件をも意味する。結果として、用語“血清フリー条件に適応した細胞”は、動物又はヒトの血清若しくは血清タンパク質の非存在下で複製できる当該細胞を意味する。
用語“タンパク質フリー”は、培地が如何なる動物タンパク質をも含有しないことを意味する。ここで、細菌、酵母菌又は真菌から単離されるタンパク質は動物タンパク質とはみなさない。
用語“化学的に規定した”は、血清フリー、好ましくはタンパク質フリーでもあり、かつ化学的に規定した物質から成る細胞培地を示す。従って、化学的に規定した培地は、顕著に純粋な個々の物質の混合物から成る。化学的に規定した培地の一例は、Messrs Invitrogen (Carlsbad, CA, US)製のCD-CHO培地である。
表現“懸濁状態で培養されうる細胞”は、液体培養(“懸濁培養”)での成長に適応し、かつ容器、例えば細胞培養皿又はフラスコの表面に付着するその能力が制限され、或いは失われている細胞を指す。血清フリー成長と懸濁状態での成長の両方に適応している細胞を“血清フリー培地に適応した非付着性細胞”と称する。このような培養からフィーダー細胞を調製した場合、これら細胞を“血清フリー培地に適応した非付着性フィーダー細胞”と定義する。
【0017】
〔発明の説明〕
本発明は、細胞のクローン化方法であって、5個未満、例えば、4、3、2又は1個の哺乳類細胞を、フィーダー細胞、好ましくは自家フィーダー細胞の存在下、培養容器、好ましくは血清フリー条件下の培養容器に置いて、血清フリー条件下で培養かつ複製することを特徴とする方法に関する。好ましい態様では、本発明は、哺乳類細胞のクローン化に対応する方法であって、1つの培養容器につき1又は2個の哺乳類細胞を血清フリー条件下で置いて、かつ血清フリー条件下、自家フィーダー細胞の存在下で培養することを特徴とする方法に関する。好ましい態様は、単一細胞のクローン化方法であって、血清フリー条件下、自家フィーダー細胞の存在下、培養容器に1個の単一哺乳類細胞を置いて、血清フリー条件下で培養かつ複製することを特徴とする方法に関する。別の好ましい態様では、置かれた被培養細胞が懸濁培養で成長する細胞である。
1つの培養容器に1個だけの細胞を置いて、複製して細胞集団を形成する場合、それぞれ個々に成長する細胞集団はモノクロナール細胞集団であり、このプロセスは直接的単一細胞クローン化法である。各培養容器に1個より多くの単一細胞、例えば2、3又は4個の細胞を置いて複製する場合、成長する細胞集団はいわゆる混合クローンである。これらは、直接的単一細胞クローン化又は常法、例えば細胞集団の反復希釈(=限界希釈)によって、いわゆる統計的なモノクロナール細胞集団に変換することができる(例えば、Morgan, Kultur tierischer Zellen [culture of animal cells], pages 113 and 114, Spektrum Akademischer Verlag 1994参照)。
【0018】
本発明で提供する方法を用いて特にマウス亜科、例えばMus属の亜科又はキヌゲネズミ亜科、例えばCricetulus属又はMesocricetus属の哺乳類細胞、並びにこれら哺乳類から単離された細胞系(その派生物/子孫を含む)を複製かつクローン化することができる。特に、本発明のハムスター細胞又はマウス骨髄腫細胞及びそれら由来の安定な細胞系を複製/クローン化する方法が好ましい。従って、本発明はフィーダー細胞、好ましくは自家フィーダー細胞の存在下で細胞をクローン化する方法であって、置かれる被クローン化哺乳類細胞がハムスター細胞又はマウス骨髄腫細胞であることを特徴とする方法に関する。
特に好ましい態様では、Cricetulus属(中国の矮小ハムスター)のハムスター細胞及びこの属から単離した安定な細胞系又はこの単離細胞由来の細胞系、例えば、CHO、CHO-K1、CHO-DUKX、CHO-DUKX B1又はCHO-DG-44細胞及びこれら細胞系の派生物/子孫のハムスター細胞を複製/クローン化する方法である。特に好ましい本発明の方法は、自家フィーダー細胞の存在下でCHO-DG-44、CHO-DUKX、及びCHO-K1、特にCHO-DG-44及びCHO-DUKX細胞を複製かつクローン化する方法である。本発明の方法を用いて、Mesocricetus auratus(シリアハムスター)及びそれから単離された安定な細胞系又はその細胞系由来の細胞系、例えば、BHK21又はBHK TK-細胞及びこれら細胞系の派生物/子孫を本発明で述べる方法で複製かつクローン化することもできる。結果として、本発明は、好ましくはCHO又はBHK細胞、及びその派生物/子孫を複製かつクローン化する方法であって、5個未満、例えば、4、3、2、又は好ましくは1個の細胞を血清フリー条件下、自家フィーダー細胞の存在下、培養容器に置いて、血清フリー条件下で培養かつ複製することを特徴とする方法に関する。
【0019】
さらに、本発明は、特にマウス骨髄腫細胞、好ましくはMus musculus及びそれらから単離され又は派生する安定な細胞系由来のマウス骨髄腫細胞、例えばNS0及びSp2/0細胞及びこれら細胞系の派生物/子孫を複製かつクローン化する方法に関する。また、この方法は、5個未満、例えば、4、3、2、又は好ましくは1個の前記細胞を血清フリー条件下、自家フィーダー細胞の存在下、培養容器に置いて、血清フリー条件下で培養かつ複製することを特徴とする。
本発明で複製及びクローン化しうるハムスター細胞及びマウス細胞のさらなる例を下表1に示す。これら細胞/細胞系の派生物及び子孫に加え、ヒト、マウス、ラット、モンキー、又はマウス以外のげっ歯類及びハムスター由来の細胞系を含む他の哺乳類細胞を本発明の方法で複製又はクローン化することができる。
【0020】
表1:ハムスター及びマウス細胞系

【0021】
本発明により、対応する哺乳類細胞は、好ましくは血清フリー条件下で定着、培養及び置かれる。任意的に、動物タンパク質/ペプチドのない、及び/又は化学的に規定された培地でこれら工程を行う。商業的に入手可能な培地の例として、Ham's F12 (Sigma, Deisenhofen, DE)、RPMI-1640 (Sigma)、Dulbecco's Modified Eagle's Medium (DMEM; Sigma)、Minimal Essential Medium (MEM; Sigma)、Iscove's Modified Dulbecco's Medium (IMDM; Sigma)、CD-CHO (Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)、CHO-S-SFMII (Invitrogen)、血清フリーCHO-培地(Sigma)及びタンパク質フリーCHO-培地(Sigma)が挙げられる。これら各培地は、任意に、種々の化合物、例えば、ホルモン及び/又は他の成長因子(例えば、インシュリン、トランスフェリン、カルシウム、マグネシウム、リン酸塩)、緩衝液(例えば、HEPES)、ヌクレオシド(例えば、アデノシン、チミジン)、グルタミン、グルコース又は他の等価栄養物質、抗生物質及び/又は微量元素で補充することができる。1つ以上の選択可能マーカー遺伝子を発現する遺伝的に修飾した細胞を選択するため、1つ以上の選択薬剤、例えば抗生物質を培地に添加することができる。
【0022】
今までに、付着して成長する細胞の培養に関連して細胞を培養するためにフィーダー細胞を使用することが記載されている(例えば、Wee Eng Lim et al., 2002; Rexroad et al., 1997; Peng et al., 1996; Grigoriev et al., 1996; Sanchez et al., 1991; Butcher et al., 1988; Long et al., 1986; Shneyour et al., 1984; Pintus et al., 1983; Brodin et al., 1983)。ここで、培養容器内又は担体上に細胞の単一細胞(単層)として付着性フィーダー細胞を広げ、この単層上で被培養細胞を成長させる。フィーダー細胞はさらに成長する能力を失っているので(自然に、又は人工的手段で)、フィーダー細胞が過成長することなく被培養細胞を複製することができる。フィーダー細胞と被培養細胞は両方とも付着して成長する細胞である。
対照的に、別の態様では、本発明は、付着性自家フィーダー細胞を用いるか、或いは別の好ましい態様では、懸濁状態でも維持される自家フィーダー細胞を用いて、懸濁状態で成長する細胞を複製することができる。フィーダー細胞と被培養細胞の両者が同じ基本細胞に由来する場合、例えば両細胞が元来懸濁状態での成長に適応させた細胞である場合、懸濁状態で維持される自家フィーダー細胞の使用が特に好ましい。従って、本発明は、上述した哺乳類細胞を複製/クローン化する方法であって、懸濁状態で維持される自家フィーダー細胞の存在下で被培養細胞を置き、培養及び複製することを特徴とする方法にも関する。被培養細胞が懸濁状態での成長に適応した細胞であることを特徴とする対応方法が特に好ましい。この関係では、細胞を置くこと及び置かれた哺乳類細胞の複製を血清フリー及び/又はタンパク質フリー及び/又は化学的に規定した懸濁培養で行うことも好ましい。
【0023】
ここで述べる哺乳類細胞の複製/クローン化で使用すべき自家フィーダー細胞の数は、基本的に、複製かつクローン化される哺乳類細胞の性質によって決まり、各タイプの細胞についての簡単な滴定実験で決定することができる。本発明の哺乳類細胞の複製/クローン化方法は、例えば、培地1ml当たり少なくとも100個を超える自家フィーダー細胞の存在下、好ましくは培地1ml当たり100〜200,000個の自家フィーダー細胞の存在下で実施される。別の好ましい態様では、哺乳類細胞の複製/クローン化は、培地1ml当たり500〜50,000個の自家フィーダー細胞の存在下で実施される。さらに好ましくは、哺乳類細胞の複製/クローン化は、培地1ml当たり500〜10,000個の自家フィーダー細胞の存在下、好ましくは培地1ml当たり2,000〜10,000個の自家フィーダー細胞の存在下で実施される。
用語“自家フィーダー細胞”の定義により、本発明は、哺乳類細胞の複製/クローン化方法であって、複製/クローン化される置かれた哺乳類細胞がCHO又はBHK細胞の場合、フィーダー細胞としてハムスター細胞、好ましくはキヌゲネズミ亜科の細胞、さらに好ましくはCricetulus属又はMesocricetus属の細胞を使用し、複製/クローン化される置かれた哺乳類細胞がNS0細胞の場合、フィーダー細胞としてマウス骨髄腫細胞を使用することを特徴とする方法に関する。また、哺乳類細胞の複製/クローン化方法であって、複製/クローン化される置かれた哺乳類細胞がCHO細胞の場合、フィーダー細胞としてCHO細胞を使用し、複製/クローン化される置かれた哺乳類細胞がBHK細胞の場合、フィーダー細胞としてBHK細胞を使用し、複製/クローン化される置かれた哺乳類細胞がNS0細胞の場合、フィーダー細胞としてNS0細胞を使用することを特徴とする方法が好ましい。
【0024】
置かれた被培養哺乳類細胞を選択薬剤の存在下で培養する場合、抵抗性を与える選択マーカー遺伝子をも有する自家フィーダー細胞を使用すると、選択薬剤の存在下でフィーダー細胞があまりに急速に全滅するのを防止できるので、この使用は適切である。従って、本発明は、細胞、特に上記ハムスター細胞又はマウス骨髄腫細胞のクローン化方法であって、5個未満、例えば、4、3、2、又は1個の前記哺乳類細胞を血清フリー条件下、自家フィーダー細胞の存在下、培養容器に置き、血清フリー条件下で培養かつ複製し、前記自家フィーダー細胞と置かれた哺乳類細胞はそれぞれ少なくとも1つの選択マーカー遺伝子(選択薬剤に抵抗性を与える)を有し、かつ被クローン化哺乳類細胞の少なくとも複製は、フィーダー細胞と被クローン化哺乳類細胞が両方とも抵抗性である前記選択薬剤の存在下、血清フリー条件下で起こることを特徴とする方法にも関する。
【0025】
自家フィーダー細胞は、例えば放射線の放射性源で照射することによって、例えばセシウム同位元素137(137Cs)による照射で生成することができる。ここで述べるような自家フィーダー細胞の存在下で哺乳類細胞を複製/クローン化する方法では1〜1,000Gyのエネルギー線量での照射が有利である。10〜500Gyのエネルギー線量を使用すると特に有利であり、さらに20〜200Gyが有利である。CHO細胞のクローン化に関しては、自家フィーダー細胞、好ましくはCHO細胞の使用が有益であり、かつ1〜500Gyのエネルギー線量で照射後に高レベルのクローン化効率をもたらすことが分かった。20〜100Gy、好ましくは約50Gyのエネルギー線量で照射した自家フィーダー細胞を使用すると特に有利であることが明らかになった。理論的に、実施例で述べる方法と同様に、異なる全線量の放射線でフィーダー細胞を処理し、放射線の線量の関数としてクローン化効率を決定することによって、実験的に各細胞の最適エネルギー線量を決定することができる。137Csによるγ照射及びUV照射による60Co(コバルト同位元素60)処理に加え、例えば、電子照射、放射能照射、中性子照射及びマイクロ波照射も適切である。
【0026】
フィーダー細胞は直接使用してもよく、或いは本発明の哺乳類細胞の複製/クローン化法の1つでは、例えば液体窒素中で凍結保存後に使用することができる。哺乳類細胞を凍結保存する方法は技術的に公知であり、例として、Freshney (editor), Animal Cell culture a practical approach, IRL-Press 1986, pages 73-78(内容は参照によって本明細書に取り込まれる)に記載されている。
本方法は、置かれた哺乳類細胞が元々置かれていた培養容器内で、1×105〜4×106/ml(培地)の密度まで前記置かれた哺乳類細胞を複製するのに好適である。好ましくは、第1継代は2×105〜8×105/ml(培地)の細胞密度、特に2×105〜5×105/ml(培地)の細胞密度で起こる。
ここで述べる本発明の哺乳類細胞の複製/クローン化方法は高レベルの再クローン化効率を特徴とし、本発明は、哺乳類細胞の複製/クローン化方法であって、クローン化効率が少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも30%、なおさらに好ましくは少なくとも40%であることを特徴とする方法に関する。特に好ましい態様では、本発明は、哺乳類細胞の複製/クローン化方法であって、クローン化効率が少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、特に好ましくは少なくとも70%、なおさらに好ましくは少なくとも80%であることを特徴とする方法に関する。
本明細書で述べる実施例では、CHO細胞について65%以上の再クローン化効率が得られた。従って、本発明は、CHO細胞の複製/クローン化方法であって、置かれたCHO細胞を再クローン化するときの再クローン化効率が10%乃至65%より高く、好ましくは20%より高く、最も好ましくは30%より高く、さらに好ましくは40%より高く、なおさらに好ましくは50%より高く、特に60%より高いことを特徴とする方法にも関する。しかし、本発明は、細胞タイプについて規定した再クローン化効率よりいくらか低い方法にも関する。
【0027】
さらに、本発明は、上記方法の1つで複製/クローン化される細胞内で1つ以上の産物(ポリペプチド、タンパク質、核酸など)、好ましくは組換え産物を調製する方法に関する。必要条件は、問題の細胞が、調製される1つ以上の産物をコードする1つ以上の対象遺伝子を含むことである。好ましくは、問題の細胞はCHO、NHK又はNS0細胞及びこれら細胞系の派生物/子孫である。しかし、他のいずれの細胞でもよく、例えば、表1に列挙される細胞の1つでよい。
生成される対象遺伝子は、宿主細胞に天然に存在する遺伝子でよく、或いは宿主細胞に人工的に導入される遺伝子でもよい。定義上、細胞に導入される各配列又は遺伝子は、その導入される配列又は遺伝子が前記細胞の内因性配列又は内因性遺伝子と同一である場合でさえ、この細胞との関係では、“異種配列”又は“異種遺伝子”と呼ばれる。例えば、ハムスター細胞に導入されるハムスターアクチン遺伝子は、定義上異種遺伝子である。この異種遺伝子が対象遺伝子をコードする場合、それを“異種対象遺伝子”とも称する。
【0028】
異種対象遺伝子は、種々の方法、例えばウイルスのトランスフォーメーション、トランスフェクション又はマイクロインジェクションによって、細胞に導入することができる。異種対象遺伝子は、線状DNAとして又は発現ベクターの一部として細胞に導入することができる。1つ以上の異種遺伝子の挿入とその発現のための複数のクローン化部位を与える多くの真核生物発現ベクターが知られている。市販供給業者として、とりわけStratagene, La Jolla, CA, USA; Invitrogen, Carlsbad, CA, USA; Promega, Madison, WI, USA or BD Biosciences Clontech, Palo Alto, CA, USAのような会社が挙げられる。1つ以上の対象遺伝子をコードするDNA又は発現ベクターによる細胞のトランスフェクションは、例えばSambrook et al., 1989 or Ausubel et al., 1994に記載されているような常法で行われる。トランスフェクションの好適な方法として、例えばリポソーム媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム共沈法、エレクトロポレーション、ポリカチオン(例えば、DEAEデキストラン)媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、マイクロインジェクション及びウイルス感染が挙げられる。好ましくは、安定なトランスフェクションが行われ、DNA分子が宿主細胞のゲノム又は染色体/微小染色体に組み込まれるか、或いはDNA分子が宿主細胞内に安定した様式でエピソーム的に含まれる。最適なトランスフェクション頻度と、問題の宿主細胞内で1つ以上の異種対象遺伝子の発現を与えるトランスフェクション法が好ましい。
【0029】
異種対象遺伝子は、通常、対象遺伝子の転写を可能にするプロモーター、及び対象遺伝子の転写と翻訳(発現)を可能にするか又はその効率を高める他の調節要素に機能的に連結される。
用語“プロモーター”は、それに機能的に連結された遺伝子又は配列の転写を可能にし、かつ調節するポリヌクレオチド配列を意味する。プロモーターは、RNAポリメラーゼを結合するための認識配列と、転写の開始部位(転写開始部位)とを含む。特定の細胞型又は宿主細胞内で所望の配列を発現させるためには、適切な機能性プロモーターを選択しなければならない。当業者は種々の起源由来の種々のプロモーターに精通しており、構成性プロモーター、誘発性プロモーター及び抑制性プロモーターが挙げられる。これらプロモーターは、例えばGenbankのようなデータバンクに寄託されており、商業的又は個人的供給元から単独要素として又はポリヌクレオチド配列内にクローン化された要素として入手することができる。誘発性プロモーターでは、プロモーターの活性はシグナルに応じて増減しうる。誘発性プロモーターの一例はテトラサイクリン(tet)プロモーターである。これは、テトラサイクリン調節型トランス活性化因子(tTA)によって誘導されうるテトラサイクリンオペレーター配列(tetO)を含む。テトラサイクリンの存在下でtTAのtetOへの結合が阻害される。他の誘発性プロモーターの例は、jun、fos、メタロチオネイン及び熱ショックプロモーターである(Sambrook et al., 1989; Gossen et al., 1994も参照されたい)。真核生物での高発現に特に好適なプロモーターには、例えば、ハムスターのユビキチン/S27aプロモーター(WO 97/15664)、SV40初期プロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、マウスメタロチオネイン-Iプロモーター、ラウス肉腫ウイルスのLTR領域及びヒトサイトメガロウイルスの初期プロモーターがある。他の異種哺乳類プロモーターの例は、アクチン、免疫グロブリン又は熱ショックプロモーターである。
【0030】
例えば、プロモーターをエンハンサー配列に機能的に連結して転写活性を高めることができる。このため、1つ以上のエンハンサー及び/又はエンハンサー配列の数個のコピー、例えばCMV又はSV40エンハンサーを使用することができる。
用語エンハンサーは、プロモーターの活性にシス配置で作用して、このプロモーターに機能的に連結している遺伝子の転写を刺激するポリヌクレオチドを意味する。プロモーターとは異なり、エンハンサーの効果は位置や向きに無関係なので、イントロン内又はコード領域内でさえ、転写単位の前又は後ろに位置してもよい。
エンハンサーは、転写単位のすぐ近位に位置してもよく、プロモーターからかなり離れていてもよい。プロモーターと物理的及び機能的オーバーラップを有していてもよい。当業者は、種々の起源由来の多くのエンハンサー(及びGenbankのようなデータバンクに寄託されている例えばSV40エンハンサー、CMVエンハンサー、ポリオーマエンハンサー、アデノウイルスエンハンサー)に精通しており、それらは独立した要素として、又はポリヌクレオチド配列内にクローン化された要素として入手可能である(例えば、ATCCに寄託されており或いは商業的及び個人的供給元から)。頻繁に使用されるCMVプロモーターのようないくつかのプロモーター配列はエンハンサー配列をも含む。ヒトCMVエンハンサーは、これまでに同定されている最強のエンハンサーの1つである。誘発性エンハンサーの一例は、メタロチオネインエンハンサーであり、グルココルチコイド又は重金属で刺激されうる。
【0031】
基本的に、調節要素としてプロモーター、エンハンサー、終止シグナル、ポリアデニル化シグナル及び他の発現制御要素が挙げられる。誘発性調節配列及び構成性調節配列は両方とも種々の細胞型について知られている。“転写調節要素”は、一般的に、発現される遺伝子配列の上流のプロモーター、転写開始部位、転写終止部位及びポリアデニル化シグナルを含む。
用語“転写開始部位”は、一次転写物(すなわちmRNA前駆体)に組み込まれる第1核酸に相当する該構築物中の核酸を指す。転写開始部位はプロモーター配列と重なりうる。
用語“転写終止部位”は、通常は対象遺伝子の3'末端又は転写される遺伝子部分の3'末端にあり、かつRNAポリメラーゼによる転写の終了を惹起するヌクレオチド配列を意味する。
“ポリアデニル化シグナル”は、真核生物のmRNAの3'末端の特定部位での切断と、この切断した3'末端での約100〜200アデニンヌクレオチドの配列の転写後組込みを引き起こすシグナル配列である。ポリアデニル化シグナルは、切断部位の約10〜30ヌクレオチド上流の配列AATAAAと、下流に位置する配列を含む。tk polyA、SV40後期及び初期polyA又はBGH polyAのような種々のポリアデニル化要素が知られている(例えばUS 5,122,458に記載されている)。
【0032】
“翻訳調節要素”は、それぞれ発現されるポリペプチドについて翻訳開始部位(AUG)、終止コドン及びpolyAシグナルを含む。最適な発現のため、発現される核酸配列の5'-及び/又は3'-非翻訳領域を除去、添加又は変更して、転写での発現又は発現レベルに影響を及ぼしうる可能性のある如何なる不適切なさらなる翻訳開始コドン又は他の配列をも排除することが望ましいだろう。発現を促するため、開始コドンのすぐ上流にリボソームコンセンサス結合部位を択一的に挿入することができる。分泌ポリペプチドを生じさせるため、対象遺伝子は、通常、合成ポリペプチドをER膜に輸送かつER膜を貫いて輸送するシグナル前駆体ペプチドをコードするシグナル配列を含む。このシグナル配列は、常にではないが多くの場合分泌タンパク質のアミノ末端に位置し、該タンパク質がER膜でろ過された後、シグナルペプチダーゼで切断される。その遺伝子配列は、必ずではないが通常それ自体のシグナル配列を含む。天然のシグナル配列が存在しない場合、既知の様式で異種シグナル配列を導入してよい。当業者はこの種の多くのシグナル配列を知っており、Genbank及びEMBLのような配列データバンクに寄託されている。
対象遺伝子産物として、タンパク質/ポリペプチド、例えば、抗体、酵素、サイトカイン、リンホカイン、接着分子、受容体及びその派生物又はフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。一般的に、アゴニスト又はアンタゴニストとして作用し、及び/又は治療若しくは診断用途のあるすべてのポリペプチドは価値がある。
用語“ポリペプチド”はアミノ酸配列又はタンパク質について用いられ、いずれの長さのアミノ酸のポリマーをも指す。この用語は、グリコシル化、リン酸化、アセチル化又はタンパク質プロセシングのような反応によって、翻訳後修飾されたタンパク質をも包含する。ポリペプチドの構造は、例えば、アミノ酸の置換、欠失又は挿入によって、またその生物活性を保持しながら他のタンパク質との融合によって修飾することができる。
【0033】
タンパク質の例は、インシュリン、インシュリン様成長因子(IGF-I又はIGF-II);ヒト成長ホルモン(hGH)及び他の成長因子、例えばVEGF、EGF、TGF、例えばTGFα及びβ(β1、β2、β3、β4及びβ5を含む);組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA);エリスロプロテイン(EPO);トロンボポエチン(TBO);サイトカイン、例えばIL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL11、IL12、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL18のようなインターロイキン(IL);インターフェロン(IFN)-α、-β、-γ、ω又は-τ、腫瘍壊死因子(TNF)(TNF-α、-β、又は-γのような)、CD40-リガンド、Apo2-リガンド/TRAIL、DR4、DR5、DcR1、DcR2、DcR3、OPG、Fasリガンド;GCSF;GMCSF;MCSF;MCP1及びVEGFである。他の例は、因子VII、因子VIII、因子IX、フォンビルブラント因子のような凝固因子;プロテインCのような抗凝固因子;エンケファリナーゼ(enekephalinase);RANTES(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-α);(ヒト)血清アルブミン、細胞接着分子(例えば、LFA1、Mac1、p150.95、VLA4、ICAM1、ICAM2、ICAM3、VCAM、又はαV/β3インテグリン(α又はβサブユニットを含む));血液型抗原;flk2/3受容体;OB受容体;mlp受容体;CTLA4;Apo2L受容体、例えば、Apo2;トランスフォーミング成長因子(TGF);CDタンパク質、T-細胞受容体;ウイルス抗原、例えばHIVのgp120;腫瘍関連抗原、例えばHER2、HER3又はHER4受容体、リウマチ因子、例えばNGFβ又はPDGF;リラキシン-A又は-B鎖;ゴナドロピン(gonadropin);ゴナドロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;細胞毒性T-リンパ球関連抗原(CTLA)又はニューロトロフィン因子、例えばBDNF、ニューロトロフィン-3、-4、-5又は-6である。
【0034】
他の例は、モノクロナール、ポリクロナール、複特異的及び単鎖抗体、並びにFab、Fab'、F(ab')2、Fc及びFc'フラグメントのようなそのフラグメント、軽(L)及び重(H)免疫グロブリン鎖及びその定常部、可変部又は超可変部並びにFv及びFdフラグメントである(Chamov et al., 1999)。抗体はヒト又は非ヒト起源のものでよい。ヒト化及びキメラ抗体も可能である。
Fabフラグメント(フラグメント抗原結合=Fab)は、両鎖が隣接定常部で一緒に保持されている可変部から成る。Fabフラグメントは、例えばパパインのようなプロテアーゼによる処理、又はDNAクローン化によって通常の抗体から生成されうる。他の抗体フラグメントは、ペプシンによるタンパク質分解消化によって生成されうるF(ab')2である。
遺伝子クローン化によって、重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変部のみから成る短縮抗体フラグメントを調製することもできる。これらはFvフラグメント(可変フラグメント(fragment variable)=可変部のフラグメント)として知られる。これらFvフラグメントでは定常鎖のシステイン基による共有結合がありえないので、何らかの他の方法で安定化されることが多い。この目的では、約10〜30アミノ酸、好ましくは15アミノ酸の短ペプチドフラグメントを用いて可変部の重鎖と軽鎖を一緒に接合する場合が多い。これによってVHとAVがペプチドリンカーで一緒に接合された単一ポリペプチド鎖が生成する。このような抗体フラグメントは単鎖Fvフラグメント(scFv)とも呼ばれる。scFv抗体の例は周知であり、また開示されており、例えば、Hustonら, 1988を参照されたい。
【0035】
これまで、多量体scFv派生物を生産するために種々の戦略が開発されてきた。この意図は、薬物速度論特性が改良され、かつ結合活性が高められた組換え抗体を生産することである。scFvフラグメントの多量体化を達成するため、多量体化ドメインを有する融合タンパク質として生成される。多量体化ドメインは、例えばIgG又はヘリックス構造(“コイルドコイル構造”)CH3領域(ロイシンジッパードメインのような)でよい。他の戦略では、scFvフラグメントのVH部とVL部との相互作用を多量体化に用いる(例えばジアボデイ(diabody)、トリアボデイ(triabody)及びペンタボデイ(pentabody))。
本技術では用語“ジアボデイ”を用いて二価のホモダイマーscFv派生物を表す。scFv分子内のペプチドリンカーを5〜10アミノ酸に短縮すると、VH/VL鎖を重ねることでホモダイマーの形成となる。ジスルフィド結合を挿入することでジアボデイをさらに安定化することができる。ジアボデイの例は文献(例えば、Perisic et al., 1994)で見出される。
本技術では用語“ミニボデイ(minibody)”を用いて二価のホモダイマーscFv派生物を表す。ミニボデイは融合タンパク質であり、二量体化領域として免疫グロブリン、好ましくはIgG、最も好ましくはIgG1のCH3領域を含む。この領域がヒンジ部(これもやはりIgGの)とリンカー部を用いてscFvフラグメントを連結する。このようなミニボデイの例は、Huら(1996)によって開示されている。
本技術では用語トリアボデイを用いて三価のホモトリマーscFv派生物を表す(Kortt et al., 1997)。リンカー配列を使用しないVH-VLの直接融合がトリマーの形成につなる。
二価、三価又は四価構造を有するミニ抗体として技術的に公知のフラグメントもscFvフラグメントの派生物である。多量体化は、二価、三価又は四価コイルドコイル構造によって達成される(Pack et al., 1993及び1995;Lovejoy et al., 1993)。
【0036】
トランスフェクトされた細胞を選択するため、これらをさらに1種以上の選択可能マーカー遺伝子でトランスフェクトすることができる。二機能性(ポジティブ/ネガティブ)マーカーを含む多数の選択可能マーカー遺伝子が文献に記載されている(例えば、WO 92/08796及びWO 94/28143参照)。真核生物細胞で常用される選択可能マーカーの例として、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HYG)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ(TK)、グルタミンシンセターゼ、アスパラギンシンセターゼの遺伝子、並びにネオマイシン(G418)、ピューロマイシン、ヒスチジノールD、ブレオマイシン、フレオマイシン及びゼオシンに対する抵抗性を与える遺伝子が挙げられる。これら遺伝子は、対象遺伝子と一緒に又は別々に細胞に導入することができる。好ましくは、発現ベクターを用いてこれら遺伝子を細胞に導入する。対応して修飾した細胞は、成長中、対応する選択可能マーカー遺伝子を含有かつ発現する細胞を選択的に好む1種以上の選択薬剤の存在下で培養することができる。
例えば細菌β-ガラクトシダーゼ、細胞表面マーカー又は蛍光タンパク質を用いて蛍光活性化セルソーティング(FACS)でトランスフェクトされた細胞を選択することもできる。蛍光タンパク質は、個々の哺乳類細胞のFACSベース単離をも可能にする。対応して検出された細胞は単一細胞又は複数細胞として、例えばレーザー(例えばアルゴンレーザー(488nm))及び例えばオートクローン装置を備えたフローサイトメーター(Coulter EPICS Altra, Beckman-Coulter, Miami, FL, USA)で培養容器に自動的に置くことができる。好ましい態様では、このようにして自家フィーダー細胞を含有する細胞培養皿に1個だけ、又は多くとも2個の細胞を置く。個々の細胞を1個だけ置くことが特に有利である。さらに、磁気ビーズを用いて選別を行うことができる。このためには、例えば、磁気ビーズに結合した抗体を用いて細胞を標識する。これにより、特異的性質で細胞を選別することができる。
ここで述べた方法の1つに従って置かれて、かつ蛍光タンパク質と対象遺伝子を共発現する細胞クローンのFACSベース単離を行うことが特に有利である。好ましくは、蛍光タンパク質と対象遺伝子の発現は、相互に機能的に連係している。このような機能的連係は、例えば、これら2つの遺伝子が一緒に近接して配置されていることから成り、それで例えば宿主細胞の過渡的又は安定的トランスフェクション後、2つの遺伝子の発現率が相互的関係をもつ。このような機能的連係は、例えば、いわゆるIRES要素(internal ribosome entry site)又はRNAスプライシングによっても得られ、2つの遺伝子(対象遺伝子と蛍光タンパク質の遺伝子)がビシストロン(bicistronic)mRNAとして合成される。このようにして蛍光タンパク質と対象遺伝子の発現率の間に直接的関係がある。蛍光タンパク質の高発現を示す対応細胞クローンは、機能的連係の結果として対象遺伝子の高い発現率をも有する。
蛍光タンパク質は、例えば、緑色、青緑色、青色、黄色又は他の色の蛍光タンパク質でよい。1つの特定例は、Aequorea victoria又はRenilla reniformisから得た緑色蛍光タンパク質(GFP)及びそれらから発生した変異体である(例えば、Bennet et al., 1998; Chalfie et al., 1994; WO 01/04306及びこれらが引用している文献を参照されたい)。他の蛍光タンパク質及びそれをコードしている遺伝子は、WO 00/34318、WO 00/34326、WO 00/34526及びWO 01/27150(参照によって本明細書に取り込まれる)に記載されている。これら蛍光タンパク質は、種花虫網(Anthozoa)、例えばAnemonia majano、Clavularia sp.、Zoanthus sp. I、Zoanthus sp. II、Discosoma striata、 Discosoma sp. "赤"、Discosoma sp. "緑"、Discosoma sp. "マゼンタ"、Anemonia sulcataの非生物発光生体の発蛍光団である。使用する蛍光タンパク質は、野生型タンパク質、天然又は遺伝子操作した変異体及び変種、それらのフラグメント派生物又は例えば他のタンパク質又はペプチドと融合した変種から成りうる。使用する突然変異は、例えば励起スペクトル又は発光スペクトル、発色団の形成、タンパク質の吸光係数又は安定性を変えうる。また、コドンの最適化によって哺乳類細胞又は他の種における発現を高めることができる。本発明により、選択可能マーカー、好ましくは例えばジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)のような増幅性選択可能マーカーとの融合でも蛍光タンパク質を使用することができる。
【0037】
細胞集団について、又は予め選別した細胞集団/細胞クローンで選択工程を行うことができる。1つの細胞培養容器につき、1個又は複数個、好ましくは1、2、3又は4個の細胞を置いてよい。好ましくは、血清フリー培地、最も好ましくは化学的に規定した培地に、自家フィーダー細胞の存在下で細胞を置く。自家フィーダー細胞を用いて細胞を置くための本発明の適切な培地及び方法についてはこの出願の他の箇所で詳述した。基本的に、2以上の選別工程を行うことができ、個々の選別工程間で、特定長さの期間にわたって、例えば2週間、適切な培地でプールとして細胞を培養かつ複製する。
再クローン化細胞内で1つ以上の対象遺伝子産物を生じさせるためには、対象遺伝子の発現を可能にする条件下、血清フリー培地内及び懸濁培養で再クローン化細胞を成長させることが好ましい。例えば、対象遺伝子が構成性プロモーターの制御下にある場合、特別な誘発因子を添加する必要はない。対象遺伝子が誘発性プロモーターの制御下にある場合、例えば対応する誘発因子を十分であるが無毒の濃度で細胞培地に添加しなければならない。複数回の継代によって細胞を所望どおりに増やして適切な細胞培養容器に移すことができる。遺伝子細胞は、細胞性産物、膜結合産物又は分泌産物として生成される。
【0038】
細胞培地から分泌遺伝子産物として対象産物を得ることが好ましい。しかし、分泌シグナルなしでタンパク質又はポリペプチドが発現される場合、細胞ライセートから遺伝子産物を単離することもできる。実質的に他の組換えタンパク質及び宿主細胞タンパク質のない純粋な均質産物を得るため、通常の精製手順を実施する。まず最初に、細胞と細胞デブリを培地又はライセートから取り出す。次に、例えば、イミノアフィニティー及びイオン交換カラム上での分取、エタノール沈殿、Sephadex、シリカ又はカチオン交換樹脂(例えばDEAE)上の逆相HPLC又はクロマトグラフィーによって、混入している可溶性のタンパク質、ポリペプチド及び核酸から所望の遺伝子産物を取り除くことができる。組換え宿主細胞によって発現された異種タンパク質の精製に帰着する方法は当業者に周知であり、かつ文献に記載されている(例えば、Harris et al., 1995及びScopes 1988)。
【0039】
従って、別の局面では、本発明は血清フリー条件下、哺乳類細胞内で1種以上の産物を調製する方法であって、(i)哺乳類細胞が、対象タンパク質をコードする対象遺伝子を含み;(ii)哺乳類細胞の複製を許容する血清フリー条件下で哺乳類細胞を成長させ;(iii)血清フリー条件下の細胞培養容器に、各場合5個未満、好ましくは4、3、2又は1個の前記哺乳類細胞を置き;(iv)この適切に置かれた哺乳類細胞を、血清フリー条件下、自家フィーダー細胞の存在下で複製し;(v)この複製した細胞を前記対象遺伝子が発現される血清フリー条件下で培養し;かつ(vi)遺伝子産物を細胞又は培養上清から単離して精製することを特徴とする方法に関する。特に好ましくは、上記ポイント(iii)において1個だけの単一哺乳類細胞を置く。細胞を置くことは手動又は自動(例えばFACSベース細胞選別によって)でよい。別の好ましい態様では、哺乳類細胞は、対象遺伝子を導入したトランスフェクトされた哺乳類細胞である。従って、本発明は、組換え遺伝子産物の調製方法であって、上記方法の工程(i)の前に、少なくとも対象遺伝子をコードする核酸で哺乳類細胞をトランスフェクトすることを特徴とする方法にも関する。対応する哺乳類細胞の安定したトランスフェクションが好ましい。
【0040】
既に述べたように、本発明は、対象タンパク質を発現する単数又は複数の哺乳類細胞、好ましくは5個未満、さらに好ましくは4、3、2又は1個の哺乳類細胞の個々の哺乳類細胞のFACSベース選別及び置くことにも関し、細胞選別及び細胞を置くことは、好ましくは哺乳類細胞内で共発現される蛍光タンパク質の発現率の関数として起こり、前記蛍光タンパク質の発現は、前記対象タンパク質の発現と機能的に連係している。従って、本発明は、血清フリー条件下、哺乳類細胞内で組換えタンパク質を生産する方法であって、i)対象タンパク質をコードする遺伝子で前記哺乳類細胞をトランスフェクトし;ii)蛍光タンパク質をコードする遺伝子で前記哺乳類細胞をトランスフェクトし、前記蛍光タンパク質をコードする遺伝子の発現は、好ましくは前記対象遺伝子の発現に機能的に連係し;iii)前記トランスフェクトされた細胞の複製及び少なくとも前記蛍光タンパク質の発現を許容する血清フリー条件下で、前記トランスフェクトされた哺乳類細胞を成長させ;iv)FACSベース細胞選別後、血清フリー条件下、自家フィーダー細胞と共に細胞培養容器に、各場合5個未満、好ましくは4、3、2又は1個のトランスフェクトされた哺乳類細胞を置き、前記FACSベース細胞選別は、前記蛍光タンパク質の発現率に基づいて行い;v)対応して置かれた細胞を血清フリー条件下、前記自家フィーダー細胞の存在下で複製し;vi)複製された細胞を、少なくとも前記対象遺伝子が発現される血清フリー条件下で成長させ;かつvii)遺伝子産物(前記対象遺伝子の)を細胞又は培養上清から単離して精製することを特徴とする方法にも関する。特に好ましい態様では、上記工程iv)で、1つの培養容器につき1個だけの細胞を置いて複製する。
【0041】
好ましくは、上記工程iv)で、蛍光タンパク質の最も高い発現率を有する20%の細胞に属する細胞だけを選別する。実際には、これは高輝度の20%の蛍光細胞を選別することを意味する(20%の高輝度蛍光細胞)。別の好ましい態様では、細胞混合物の高輝度5%、好ましくは高輝度3%だけ、又は高輝度1%だけの蛍光細胞を選別する。図3a及び3bに示されるように、このことは対象遺伝子の比較的高い発現率を有する細胞クローンの富化につながる。従って、単一細胞をFACSベースで置くことは、対象遺伝子の比較的高い発現率を有する均質な細胞クローンの同定と複製を可能にし、ひいてはさらなる最適化工程(例えば遺伝子増幅)の開始点を形成しうる。
また、再クローン化哺乳類細胞内で1種以上の組換え産物の生産に対応する方法であって、哺乳類細胞がハムスター細胞又はマウス骨髄腫細胞、好ましくはCHO、BHK又はNS0、及びこれら細胞系の派生物/子孫である、方法が好ましい。この方法の別の態様は、フィーダー細胞を血清フリー培地に適応させ、かつフィーダー細胞は非付着性培養細胞であることを特徴とする。また、上記生産方法の関係では、置かれる被複製/クローン化哺乳類細胞がCHO又はBHK細胞の場合、フィーダー細胞としてハムスター細胞を使用し、置かれる被複製/クローン化哺乳類細胞がNS0細胞の場合、フィーダー細胞としてマウス骨髄腫細胞を使用することが好ましい。特に好ましくは、置かれる被複製/クローン化哺乳類細胞がCHO細胞の場合、フィーダー細胞としてCHO細胞を使用し、置かれる被複製/クローン化哺乳類細胞がBHK細胞の場合、フィーダー細胞としてBHK細胞を使用し、置かれる被複製/クローン化哺乳類細胞がNS0細胞の場合、フィーダー細胞としてNS0細胞を使用する方法である。
【0042】
本発明は、まず最初にハムスター細胞及びマウス骨髄腫細胞、好ましくはNS0細胞をフィーダー細胞として提供する。この理由のため、本発明は、フィーダー細胞としてのハムスター細胞又はNS0型のマウス骨髄腫細胞の使用をも提供する。対応するフィーダー細胞の調製方法は実施例で詳述する。対応するハムスターフィーダー細胞又はマウス骨髄腫フィーダー細胞は、当業者に周知の化学的又は物理的方法、例えば、マイトマイシンC(アジリノ[2',3':3,4]ピロロ[1,2-a]インドール-4,7-ジオン,6-アミノ-8-[[(アミノカルボニル)オキシ]メチル]-1,1a,2,8,8a,8b-ヘキサヒドロ-8a-メトキシ-5-メチル, [1aR(1a.α, 8.β, 8a.α, 8b.α)]-(9CI)(Butcher et al, 1988))で処理し、或いは137Csによる照射によって、理論的に調製することができる。従って、好ましい態様では、本発明は、化学的又は物理的に不活性化したフィーダー細胞の使用に関する。この文脈での用語“不活性化”は、細胞がその分裂能力を制限されること、好ましくは細胞が分裂能力を失っているがまだ生きた状態であることを意味する。これは、細胞が一定期間、好ましくは不活性化後少なくとも1〜2週間、例えば成長因子の合成及び分泌のような代謝活性を未だ保持していることを意味する。好ましい態様では、対応するフィーダー細胞は血清フリー条件に適応しているフィーダー細胞である。本発明のなおさらに好ましい態様では、フィーダー細胞はCHO、BHK又はNS0細胞及びこれら細胞系の子孫/派生物である。また、この出願で述べたすべての細胞は、適切に不活性化後フィーダー細胞として使用することができる。
【0043】
さらに、本発明は、血清フリー細胞培地と、分裂可能な5個未満、好ましくは4、3、2又は1個の哺乳類細胞と、前記分裂可能な哺乳類細胞に対して自家性であるフィーダー細胞とから成る組成物に関する。本発明の好ましい態様では、対応する組成物は分裂可能な1又は2個の哺乳類細胞を含む。別の好ましい態様では、対応する組成物は分裂可能な1個のみの哺乳類細胞を含む。
他の好ましい組成物は、分裂可能な哺乳類細胞がCHO若しくはBHK細胞又はその派生物/子孫の場合、フィーダー細胞としてハムスター細胞、好ましくはキヌゲネズミ亜科の細胞、最も好ましくはCricetulus属又はMesocricetus属の細胞を含む。また、別の好ましい組成物は、分裂可能な哺乳類細胞がマウス骨髄腫細胞、好ましくはNS0又はその派生物/子孫の場合、フィーダー細胞としてマウス細胞、好ましくはMurinae亜科、最も好ましくは属Musの細胞を含む。特に好ましい組成物は、分裂可能な哺乳類細胞がCHO細胞の場合、フィーダー細胞としてCHO細胞を含み、分裂可能な哺乳類細胞がBHK細胞の場合、フィーダー細胞としてBHK細胞を含み、分裂可能な哺乳類細胞がNS0細胞の場合、フィーダー細胞としてNS0細胞を含むことを特徴とする。
理論的に、本発明は、5個未満、好ましくは4、3、2又は1個の生産関連ハムスター細胞(例えばCHO又はBHK細胞のような)及び生産関連マウス骨髄腫細胞(例えばNS0細胞のような)を、血清フリー条件下、哺乳類由来のフィーダー細胞の存在下で置いて複製できる組成物にも関する。
【0044】
血清フリー、タンパク質フリー又は化学的に規定した培地として、例えば、商業的に入手可能な培地Ham's F12 (Sigma, Deisenhofen, DE)、RPMI 1640 (Sigma)、Dulbecco's Modified Eagle's medium (DMEM; Sigma)、Minimal Essential medium (MEM; Sigma)、Iscove's Modified Dulbecco's medium (IMDM; Sigma)、CDCHO (Invitrogen, Carlsbad, Ca., USA)、CHO-S-SFMII (Invitrogen)、血清フリーCHO培地(Sigma)及びタンパク質フリーCHO培地(Sigma)が挙げられる。これら培地は、それぞれ所望により種々の成分、例えばホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインシュリン、トランスフェリン、上皮成長因子、インシュリン様成長因子)、塩(例えば塩化ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム)、緩衝液(例えばHEPES)、ヌクレオシド(例えばアデノシン、チミジン)、グルタミン、グルコース又は他の等価栄誉物、抗生物質及び/又は微量元素で補充することができる。複製可能細胞が、1種以上の選択可能マーカーを発現する組換え細胞の場合、抗生物質のような1種以上の適切な選択薬剤を培地に添加してもよい。
【0045】
〔実施例〕
〔略語〕
ATCC 米国菌培養収集所(American Type Culture Collection)
BHK ベビーハムスター腎臓(Baby Hamster Kidney)
60Co コバルト同位元素60
137Cs セシウム同位元素137
CHO チャイニーズハムスター卵巣
CMV サイトメガロウイルス
DE 独国
DEAE ジエチルアミノエチル
DMSO ジメチルスルホキシド
DNA デオキシリボ核酸
FACS 蛍光活性化セルソーター
FITC フルオレッセイン-イソチオシアネート
Gy グレイ(Gray)
HBSS ハンクス液(Hank's balanced salt solution)
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
mRNA メッセンジャーリボ核酸
NS0 マウスハイブリドーマ細胞
polyA ポリアデニル化配列
Sp2/0 マウスハイブリドーマ細胞
SV40 サルウイルス No.40
【0046】
〔方法〕
1.細胞培養
細胞CHO-DG44/dhfr-/-(Urlaub et al., 1983)を湿り大気及び5%のCO2中37℃で培養フラスコ内でヒポキサンチン及びチミジンで補充した血清フリーCHO-S-SFMII培地(Invitrogen GmbH, Karlsruhe, DE)中、懸濁細胞として持続的に培養した。CEDEX Cell Counter(Innovatis, DE)又はトリプタンブルー染色で細胞の数と生存度を測定してから細胞を1〜3×105/mLの濃度で播き、2〜3日毎に継代した。単一細胞クローン化のため、蛍光タンパク質(例えばZoanthus sp.由来のZS-Green)又は蛍光タンパク質とヒト若しくはヒト化モノクロナール抗体を発現する組換えCHO-DG44/dhfr-/-を使用した。これら細胞と同様にクローン化組換え細胞を培養した。使用した培地はやはりCHO-S-SFMII培地(Invitrogen GmbH, Karlsruhe, DE)であるが、ヒポキサンチン及びチミジンなしである。
BHK細胞は、湿り大気中5%のCO2下37℃で培養フラスコ内で血清フリーOpti Pro SFM培地(Invitrogen GmbH, Karlsruhe, DE)中、懸濁培養としてを持続的に培養できる。CEDEX Cell Counter(Innovatis, DE)又はトリプタンブルー染色で細胞の数と生存度を測定でき、次いで細胞を1〜3×105/mLの濃度で播き、2〜3日毎に継代する。BHK細胞と同様にクローン化細胞を培養する。
NS0細胞は、湿り大気中5%のCO2下37℃で培養フラスコ内で血清フリーハイブリドーマ培地(Sigma, Aldrich, St. Louis, USA)中、懸濁培養としてを持続的に培養できる。CEDEX Cell Counter(Innovatis, DE)又はトリプタンブルー染色で細胞の数と生存度を測定でき、次いで細胞を1〜3×105/mLの濃度で播き、2〜3日毎に継代する。NS0細胞と同様にクローン化細胞を培養する。培地としてハイブリドーマ培地、動物成分フリー培地(Sigma, Aldrich, St. Louis, USA)を使用する。
【0047】
2.照射によるフィーダー細胞の調製
血清フリーかつタンパク質フリーで成長する懸濁CHO基本細胞(非トランスフェクト細胞)を10分間180gで遠心分離し、HBSS(ハンクス液)中1×106/mlの細胞濃度に調整した。
次に、4Gy/分のエネルギー線量出力の放射性照射源(Cs137ラジエーター,Gammacell 2000, Messrs Molsgaard Medical A/S, Denmark)で細胞を照射した。5分〜125分の照射時間で20〜500Gyのエネルギー線量が得られた。照射後、この細胞に特異的なCHO-S-SFMII培地に約2000細胞/ウェル(=培養容器)の割合で96-ウェルマイクロタイタープレートに細胞を播き、インキュベートチャンバー雰囲気内約37℃かつ5%のCO2で貯蔵した。この方法をBHK及びNS0細胞について同様に行い、該細胞に特異的な培地でフィーダー細胞を維持又は播種した。
【0048】
3.フィーダー細胞の凍結保存
このようにして製造したフィーダー細胞は-150℃未満で凍結保存することができる。凍結保存はプログラム制御可能フリーザー(Consarctic BV25, Consarctic, Schollkrippen, DE)を用いて問題の細胞培地内で行う。凍結保護剤として10%(v/v)DMSOを培地に添加する。凍結速度1℃/分で0℃〜-20℃に下げ、0.4℃/分で温度をさらに下げる。凍結が完了したら、気相内、液体窒素中でフィーダー細胞を凍結保存する。
4.自動化された、細胞を置くこと(automated cell deposition)
アルゴンレーザー(488nm)を備えたフローサイトメーター(Coulter EPICS Altra (Messrs Beckman-Coulter, Miami, FL, US))でオートクローン装置を用いて細胞を自動的に置くこと(単数又は複数個)を行う。指数的成長期の間、細胞を遠心分離機にかけ、HBSSに取り、細胞濃度を1〜1.5×107/mlにする。次に“ハイパーソートオプション”を用いて散乱光内の細胞の位置に応じて8000〜12000細胞/秒の速度で細胞を選別する。代わりに、蛍光タンパク質を発現する細胞は、細胞内発現した蛍光タンパク質の関係でその蛍光強度によって選別することができる。フィーダー細胞を含有する96-ウェルマイクロタイタープレートに細胞を1個ずつ置く。例えばBHK細胞はOptiPro SFM培地(Invitrogen GmbH, Karlsruhe, DE)に置く。選別されたNS0細胞を例えばハイブリドーマ培地、動物成分フリー培地(Sigma, Aldrich, St. Louis, USA)に置く。
CHO細胞の選別ではCHO-S-SFM-II(Invitrogen GmbH, Karlsruhe, DE)に細胞を置いた。ヒト又はヒト化モノクロナール抗体及びZoanthus sp.由来のZSグリーンを共発現する組換えCHO-DG-44細胞を置いた。細胞選別は、上述したように488nmのアルゴンレーザーで行った。
5.組換え発現遺伝子産物の生産性の決定(mAb-発現CHO-DGH-44を使用した場合)
安定してトランスフェクトされたCHO-DG-44細胞(ヒト又はヒト化モノクロナール抗体を発現する)の上清の抗体タイターは、一方でヤギ抗-ヒトIgG Fcフラグメント(Dianova, Hamburg, DE)を用い、他方でAP-抱合ヤギ抗-ヒトκ軽鎖抗体(Sigma)を用いて標準的方法(Ausubel et al., 1994, updated)に従ってELISAで定量した。精製抗体を標準物質として用いた。式pg/((CtCo)t/ln(CtCo))(式中、Co及びCtは播種時又は収集時の細胞数を表し、tは培養時間を示す)に従って生産性(pg/細胞/日)を計算した。
【0049】
実施例1:CHO-DG-44細胞の再クローン化効率に及ぼすフィーダー細胞生産中のエネルギー線量の影響
再クローン化効率に及ぼすフィーダー細胞生産中のエネルギー線量の影響を調べるため、方法“細胞の培養”で述べたようにCHO-DG-44細胞を成長させた。方法“照射によるフィーダー細胞の調製”で述べたように、20Gy、50Gy、100Gy、200Gy及び500Gyのエネルギー線量で照射してフィーダー細胞を調製した。照射後、約2000細胞/ウェルの細胞数で96-ウェルマイクロタイタープレートにフィーダー細胞を播いた。次に、方法“自動化された、単一細胞を置くこと”で述べたように、蛍光タンパク質を発現する組換えCHO-DG-44細胞により、単一細胞を自動的に置くことを行った。各ウェルのフィーダー細胞上に1個の細胞を置いた。再クローン化効率の目標値は、ポジティブウェル、すなわちクローンが成長して3週間のインキュベーション期間後に細胞集団を形成したウェルの数だった。達成された再クローン化効率は、組換えCHO-DG-44細胞の再クローン化で40〜70%だった(図1参照)。
【0050】
実施例2:抗体発現CHO-DG-44細胞の再クローン化の均質性
細胞クローンの均質性を比較するため、一方では標準的な“限界希釈”法で組換え抗体発現CHO-DG-44細胞を置いてクローン化し、他方では自家フィーダー細胞の存在下、本明細書で述べた単一細胞を置く方法で置いてクローン化した(図2参照)。このため、限界希釈法で、トランスフェクトされた抗体発現CHO-DG-44細胞の6つの細胞プールを培養し、並行して“細胞の培養”で述べたように自動的に単一細胞を置いた後、“自動化された単一細胞を置くこと”で述べたように細胞をクローン化した。このようにして生成されたクローンを“細胞の培養”で述べたように培養し、方法“組換え発現遺伝子産物の生産性の決定”によって3回の継代の過程にわたって産物タイターを決定した。これら3回の継代で得られた平均を用いてグラフにプロットした。
【0051】
実施例3:FACSベース細胞選別による蛍光タンパク質の発現と、単一細胞をFACSベースで置くことを併用することによる高タイター細胞クローンを製造するための高処理能力方法
産物遺伝子(組換え抗体)と蛍光タンパク質(Zoanthus sp.由来のZSグリーン)というビシストロン発現をコードする発現ベクターでCHO DG44細胞をトランスフェクトすることによって、前記抗体と前記蛍光タンパク質を両方とも共発現する細胞プールを得た。上述した方法で、自家性CHO DG44フィーダー細胞の存在下、マイクロタイタープレートにこれら細胞を個々に置いて培養した。次の3つの異なる基準でクローンを置くことを行った。
A.)すべての生きている細胞を置く
B.)20%の最も強い蛍光性細胞を置く
C.)5%の最も強い蛍光性細胞を置く
次に、“細胞の培養”で述べたように、得られたクローンを24-ウェルマクロタイタープレートに移して3回の継代で培養した。各継代の最後に、“組換え発現遺伝子産物の生産性の決定”で述べた方法で上清中の抗体のタイターを決定した。これら3回の継代から得られた平均値を用いてグラフにプロットした。これを行うため、指定タイターカテゴリーにわたって得られたクローン数をプロットし、正規分布に調和させた。
【0052】
〔文献〕
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【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】フィーダー細胞の生産で用いたエネルギー線量と、自動的に置かれた単一CHO-DG-44細胞の再クローン化におけるクローン化効率との関係を示す。
【図2】限界希釈(左側の列)又は単一細胞を置くこと(右側の列)によって得られた抗体発現CHO-DG-44培養の生産性を示す。
【図3a】種々の基準に従って貯蔵し、かつ個々に置かれたCHO-DG-44細胞クローンの産物タイターを示す。
【図3b】図3aに示したデータに基づき、平均の2倍の生産性を有するプロデューサー(=高プロデューサー)を得る確率(%)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞のクローン化方法であって、血清フリー条件下、自家フィーダー細胞の存在下、培養容器に5個未満の哺乳類細胞を置き、血清フリー条件下で培養かつ複製することを特徴とする方法。
【請求項2】
血清フリー条件下、培養容器に1又は2個だけの哺乳類細胞を置き、血清フリー条件下、自家フィーダー細胞の存在下で培養かつ複製することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
血清フリー条件下、自家フィーダー細胞の存在下、培養容器に1個の単一哺乳類細胞を置き、血清フリー条件下で培養かつ複製することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
対応して置かれた哺乳類細胞がハムスター又はマウスの骨髄腫細胞であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
対応して置かれたハムスター細胞がCHO又はBHK細胞であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
対応して置かれたマウス骨髄腫細胞がNS0細胞であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
対応して置かれた哺乳類細胞を血清フリー懸濁培養で複製することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
フィーダー細胞が、血清フリー培地に適応した非付着性培養細胞であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
対応して置かれた哺乳類細胞がCHO又はBHK細胞の場合、フィーダー細胞としてハムスター細胞を使用し、
対応して置かれた哺乳類細胞がNS0細胞の場合、フィーダー細胞としてマウス骨髄腫細胞を使用する
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
対応して置かれた哺乳類細胞がCHO細胞の場合、フィーダー細胞としてCHO細胞を使用し、
対応して置かれた哺乳類細胞がBHK細胞の場合、フィーダー細胞としてBHK細胞を使用し、
対応して置かれた哺乳類細胞がNS0細胞の場合、フィーダー細胞としてNS0細胞を使用する
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
対応して置かれた哺乳類細胞を、培地1ml当たり100〜200,000個のフィーダー細胞の存在下で複製することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
対応して置かれた哺乳類細胞を、培地1ml当たり4×106個の細胞密度まで培養かつ複製することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
対応して置かれたCHO細胞の再クローン化の間、再クローン化効率が10%乃至65%より高く、
対応して置かれたBHK細胞の再クローン化の間、再クローン化効率が10%乃至50%より高く、
対応して置かれたNS0細胞の再クローン化の間、再クローン化効率が10%乃至45%より高い
ことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
血清フリー条件下、哺乳類細胞内でタンパク質を生産する方法であって、
(a)哺乳類細胞が、対象タンパク質をコードする対象遺伝子を含み;
(b)前記哺乳類細胞の複製を許容する血清フリー条件下で該哺乳類細胞を成長させ;
(c)血清フリー条件下、細胞培養容器に、各場合5個未満、好ましくは4、3、2又は1個の前記哺乳類細胞を置き;
(d)適切に置かれた哺乳類細胞を、血清フリー条件下、自家フィーダー細胞の存在下で複製し;
(e)複製した細胞を、前記対象遺伝子が発現する血清フリー条件下で培養し;かつ
(f)膜を含む前記細胞又は培養上清から遺伝子産物を単離して精製する;
ことを特徴とする方法。
【請求項15】
血清フリー条件下、哺乳類細胞内で組換えタンパク質を調製する方法であって、
(a)対象タンパク質をコードする対象遺伝子で哺乳類細胞をトランスフェクトし;
(b)このトランスフェクトされた細胞の複製を許容する血清フリー条件下で前記トランスフェクトされた哺乳類細胞を成長させ;
(c)血清フリー条件下、自家フィーダー細胞のある細胞培養容器に、各場合5個未満、好ましくは4、3、2又は1個の前記トランスフェクトされた哺乳類細胞を置き;
(d)対応して置かれた細胞を、血清フリー条件下、自家フィーダー細胞の存在下で複製し;
(e)この複製された細胞を、前記対象遺伝子が発現する血清フリー条件下で成長させ;かつ
(f)前記細胞又は培養上清から遺伝子産物を単離して精製する;
ことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記ポイント(c)において、1個だけの単一哺乳類細胞を各細胞培養容器に置くことを特徴とする請求項14又は15記載の方法。
【請求項17】
前記置かれた哺乳類細胞がさらに蛍光タンパク質をコードしており、かつ、この置かれた哺乳類細胞を血清フリー条件下、細胞培養容器に、FACSベースセルソーティングで置くことを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記哺乳類細胞がハムスター又はマウスの骨髄腫細胞であることを特徴とする請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ハムスター細胞がCHO又はBHK細胞であることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記マウス骨髄腫細胞がNS0細胞であることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記フィーダー細胞が、血清フリー培地に適応した非付着性培養細胞であることを特徴とする請求項14〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記哺乳類細胞がCHO又はBHK細胞の場合、フィーダー細胞としてハムスター細胞を使用し、前記哺乳類細胞がNS0細胞の場合、フィーダー細胞としてマウス骨髄腫細胞を使用することを特徴とする請求項14〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記哺乳類細胞がCHO細胞の場合、フィーダー細胞としてCHO細胞を使用し、
前記哺乳類細胞がBHK細胞の場合、フィーダー細胞としてBHK細胞を使用し、
前記哺乳類細胞がNS0細胞の場合、フィーダー細胞としてNS0細胞を使用する
ことを特徴とする請求項14〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
ソートして置かれた哺乳類細胞を、培地1ml当たり100〜200,000個のフィーダー細胞の存在下で複製することを特徴とする請求項14〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
ソートして置かれた哺乳類細胞を、培地1ml当たり4×106個の細胞密度まで培養することを特徴とする請求項14〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
フィーダー細胞としてのハムスター細胞の使用。
【請求項27】
前記ハムスター細胞を物理的又は化学的に不活性化することを特徴とする請求項26記載の使用。
【請求項28】
前記ハムスター細胞が血清フリー条件に適応していることを特徴とする請求項26又は27記載の使用。
【請求項29】
前記ハムスター細胞がCHO若しくはBHK細胞又はこれら細胞系の子孫/派生物であることを特徴とする請求項24〜28のいずれか1項に記載の使用。
【請求項30】
フィーダー細胞としてのNS0細胞の使用。
【請求項31】
前記NS0細胞を物理的又は化学的に不活性化することを特徴とする請求項30記載の使用。
【請求項32】
前記NS0細胞が血清フリー条件に適応していることを特徴とする請求項31記載の使用。
【請求項33】
血清フリー細胞培地と、5個未満の分裂可能な哺乳類細胞と、この分裂可能な哺乳類細胞に対して自家性であるフィーダー細胞とから成る組成物。
【請求項34】
該組成物が、前記培地中に1又は2個だけの分裂可能な哺乳類細胞を含有する、請求項33記載の組成物。
【請求項35】
前記分裂可能な哺乳類細胞がCHO又はBHK細胞の場合、該組成物はフィーダー細胞としてハムスター細胞を含有し、前記分裂可能な哺乳類細胞がNS0細胞の場合、該組成物はフィーダー細胞としてマウス骨髄腫細胞を含有することを特徴とする請求項33又は34記載の組成物。
【請求項36】
前記分裂可能な哺乳類細胞がCHO細胞の場合、該組成物はフィーダー細胞としてCHO細胞を含有し、前記分裂可能な哺乳類細胞がBHK細胞の場合、該組成物はフィーダー細胞としてBHK細胞を含有し、前記分裂可能な哺乳類細胞がNS0細胞の場合、該組成物はフィーダー細胞としてNS0細胞を含有することを特徴とする請求項33又は34記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2007−502608(P2007−502608A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523593(P2006−523593)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009204
【国際公開番号】WO2005/019442
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(503137975)ベーリンガー インゲルハイム ファルマ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (129)
【Fターム(参考)】