説明

産業用ワイパー

【課題】塵・油分等の拭き取り性を向上した産業用ワイパーを提供する。
【解決手段】
含有されるパルプが、FSC認証されたLBKP(広葉樹クラフトパルプ)を10〜50重量%、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)を50〜90重量%であることを特徴とする産業用ワイパー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種産業における製品、部品等に付着した塵・埃・水分・油分の拭き取り用に用いられる産業用ワイパーに関する。
【背景技術】
【0002】
各種の産業用製品やこれに用いる部品に付着した塵・埃・水分・油分の拭き取り用途に適した産業用ワイパーが知られる。
この産業用ワイパーにおいては、紙粉(リント)の発生が少ないことに加えて、しなやかで吸水量が多く、水分や油分の拭き取り性に優れることが求められる。
また、製品製造時における部品・製品の拭き取り等に用いられる関係上、品質が一定であることも要求される。
【特許文献1】特開2006−97191
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明の主たる課題は、品質が一定であるとともに、しなやかで拭き取り性及び吸水量に優れた産業用ワイパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は、FSC認証されたLBKP(広葉樹クラフトパルプ)を含有することを特徴とする産業用ワイパーである。なかでも好適には、含有されるパルプが、FSC認証されたLBKP(広葉樹クラフトパルプ)を10〜50重量%、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)を50〜90重量%の産業用ワイパーである。
従来の産業用ワイパーでは、一般に繊維長が長く、紙粉の発生を少くできるNBKP100重量%をパルプ原料としていたが、NBKPは、繊維が太いため、しなやかさを十分に発現させることが困難であった。
このため、拭き取り対象物に当接させ、手で押さえて横にスライドさせる一般的な拭き取り操作を行ったときに、皺が発生し、そのような皺の間に入り込んだ塵、液等がワイプの繊維に吸収されず拭き取りが不完全となることがあった。
【0005】
本願発明は、このような問題を改善すべく、FSC認証のLBKP(広葉樹クラフトパルプ)を配合することとした。このFSC(Forest Stewardship Council、森林管理協議会)認証パルプは、管理された森林から伐採された木材を原料とするパルプである。
そして、このFSC認証パルプは、管理によって原料木の品質が一定であるとともに成長が早いために、LBKPであっても繊維長が長く均一であり、しかもしなやかであることが保証されることを本発明者らは知見した。
従って、このFSC認証のLBKPを所定量配合した本願発明は、LBKPとNBKPとを混合したことにより、極めてしなやかで拭き取り性に優れる。
【0006】
他方、本発明は、基材紙が4枚重ねられた4プライ構造であるのがよく、さらにこのときのJIS P 8113に準じて測定した乾燥時の引張強さが、縦方向1500〜6000cN/25mm、横方向500〜2000cN/25mmであるのがよい。
また、吸水量が、400〜1000g/m2であるのが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
以上の本発明によれば、品質が一定であるとともに、しなやかで拭き取り性及び吸水性に優れた産業用ワイパーが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次いで、本発明の実施の形態を以下に詳述する。
本発明における産業用ワイパーは、その積層数(プライ数)は、特に限定されはしないが2〜5プライ、特には3又は4プライであるのがよい。極めて好ましくは、4プライである。5プライを超えると拭き取り操作時にプライ間でズレが生じて皺が発生し、拭き取り性が低下する。
なお、複数枚積層されたプライ構造とするにあたっては、構成する各基材紙をプライエンボス等によって一体化すればよい。
【0009】
他方、本発明の産業用ワイパーは、特徴的にFSC認証のLBKP(広葉樹クラフトパルプ)を10〜50重量%、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)を50〜90重量%含む。
好ましくは、FSC認証のLBKP(広葉樹クラフトパルプ)を10〜30重量%、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)を70〜90重量%含む。
FSC認証のLBKPが10重量%未満であるとしなやかさが十分に発現せず拭き取り性が向上しないことがある。
【0010】
なお、本発明の産業用ワイパーの製造については、NBKP及びLBKPを含む抄造原料を既知の薄葉紙の製造方法にしたがって抄造することができる。
【0011】
NBKP、LBKP以外の構成繊維を含有させるならば、ケナフパルプ、マニラ麻等の非木材パルプ、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、アクリル繊維等の合成繊維が例示できる。
【0012】
また、本発明の産業用ワイパーの坪量(JIS P 8124:1998)は、15〜25g/m2、好ましくは19〜22g/m2であるのがよい。15g/m2未満であると、十分な吸液量を発現させることが困難となる。また、25g/m2を超えると、厚すぎて操作性が悪くなり、特に細かい部品・部分の拭き取りがしにくいものとなる。
【0013】
加えて、この産業用ワイパーは、厚さ(尾崎製作所製ピーコックにより測定)が、300〜550μm、好ましくは420〜480μmであるのがよい。厚さが300μm未満であると薄すぎて、拭き取り時に汚れ・汚液が裏抜けしやすく十分な拭き取り性能を得ることが難しくなり、また、皺も発生しやすくなる。550μmを超えると厚すぎて操作性が悪くなり、特に細かい部品・部分の拭き取りがしにくいものとなる。
【0014】
さらに、本発明の産業用ワイパーは、基材紙が4枚重ねられた4プライ構造であるのが望ましく、この際のJIS P 8113に準じて測定した乾燥時の引張強さが、縦方向1500〜6000cN/25mm、好ましくは3000〜5000cN/25mm、横方向500〜2000cN/25mm、好ましくは1000〜1500cN/25mmであるのがよい。
【0015】
縦方向の引張り強さが1500cN/25mm未満であると拭き取り時に紙に破れが発生しやすく、6000cN/25mmを超えると紙が硬くなり拭き取り時に皺が発生しやすくなる。横方向の引張り強さが500cN/25mm未満であると拭き取り時に紙に破れが発生しやすく、2000cN/25mmを超えると紙が硬くなり拭き取り時に皺が発生しやすくなる。
【0016】
他方、本発明の産業用ワイパーは、その吸水量が、400〜1000g/m2、好ましくは700〜1000g/m2である。
ここで、本発明における吸水量とは、網に10cm四方に裁断した試料を載せ、網ごと水の入った容器に試料を浮かせ、十分に水が浸透した後に引き上げ、30秒間放置した後試料の重量を測定し、その測定された重量から乾燥時の試料の重量を差し引いて算出した計算値をいう。
【実施例】
【0017】
次いで、本発明の実施例、比較例とについて、乾燥引張り強さ(縦、横)、吸水量を測定するとともに、拭き取り性能について試験した。
本願発明の各例にかかる試料は、表1に示される配合割合でパルプを含むものである。また試料は、すべて坪量19.2g/m2の基材紙を4枚重ねとしてプライエンボスにより積層一体化したものとした。
【0018】
各例の測定結果と試験結果は、表1に示す。なお、水の拭き取り性は以下のようにして評価した。
【0019】
[水の拭き取り性能(乾燥時)]
表面平滑な水平台(一般に使われる実験台、天板材質:セグラン、セルロン)上に常温の水をマイクロピペットで250μ≡滴下し、各例に係る試料(寸法:横315mm×縦405mm)を4つ折りにし、500gのおもりを載せた状態で水平台上を約1秒間でスライド移動させて、上記滴下した水を拭き取る操作を行う。評価は、水分の拭き取り良好であるか否かを目視にて確認し、3段階評価(◎よく拭き取れる、○普通に拭き取れる、×十分に拭き取りができたとは言い難い)で評価した。
【0020】
【表1】

【0021】
表1に示されるとおり、本発明の実施例については、比較例よりも、引張強さにおいて優れるにもかかわらず、吸水量が多く、拭き取り性においても優れることが確認できた。
【0022】
以上のとおり、本発明の産業用ワイパーは、しなやかで良好な拭き取り性を示すことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、産業製品や産業製品用の部品に付着した水分、油分、塵等を拭き取るワイパーに利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FSC認証されたLBKP(広葉樹クラフトパルプ)を含有することを特徴とする産業用ワイパー。
【請求項2】
含有されるパルプが、FSC認証されたLBKP(広葉樹クラフトパルプ)を10〜50重量%、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)を50〜90重量%である請求項1記載の産業用ワイパー。
【請求項3】
基材紙が4枚重ねられた4プライ構造であり、かつJIS P 8113に準じて測定した乾燥時の引張強さが、縦方向1500〜6000cN/25mm、横方向500〜2000cN/25mmである請求項1又は2記載の産業用ワイパー。
【請求項4】
吸水量が、400〜1000g/m2である請求項1〜3の何れか1項に記載の産業用ワイパー。

【公開番号】特開2009−243020(P2009−243020A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94215(P2008−94215)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】