説明

産業車両の配管構造

【課題】 製造コストを低減でき、しかも汎用性を向上できる配管構造を提供する。
【解決手段】 フォークリフトにおいて、作業装置により各種作業を行わせる油圧シリンダとその駆動制御を行なう油圧制御バルブとの間に配置される配管構造であって、油圧シリンダに接続される第1の油圧ホース3と、油圧制御バルブに接続される第2の油圧ホース4と、各油圧ホース3、4に連結される連結部51を両端に有するとともに、各連結部51の間に設けられた本体部50を有し、連結部51を介して第1の油圧ホース3先端のジョイント部30に取り付けられたニップル5と、ニップル5と第2の油圧ホース4の間に配置され、ニップル5の連結部51が挿通し得る貫通孔20aを有するとともに、貫通孔20aの周囲においてニップル5の本体部50が嵌入しかつ回転不能に係合し得る係合凹部20bが形成された隆起部20を有する板状のブラケット部材2とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフト等の産業車両の配管構造に関し、とくに、製造コストを低減させるための構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばフォークリフト等の産業車両は、フォーク爪等の油圧式作業装置(油圧アタッチメント)を駆動するための油圧配管構造を有している。従来の配管構造は、一般に、油圧アタッチメントを駆動する油圧シリンダに接続される第1の高圧油圧ホースと、油圧シリンダの駆動制御を行なう油圧制御バルブに接続される第2の高圧油圧ホースと、第1、第2の高圧油圧ホースが連結される複数の管継手(例えばニップル)を有するスタッド(マストコネクタ)とを備えている(特公平2−40599号公報の第1ないし第3図参照)。
【0003】
スタッドには、各管継手の一端が溶接により固着されるとともに、スタッドの内部には、第1、第2の高圧油圧ホースが各管継手を介して連通可能な油路が形成されており、スタッドは、第1、第2の高圧油圧ホースを中継するためのブロック状の溶接構造体である。また、スタッドは、産業車両の例えばアウターマストに取り付けられている。
【0004】
従来の配管構造では、上述のように、スタッドが溶接を用いて製作される溶接構造体であるため、スタッドの製作に時間がかかり、その結果、製造コストが高くなって、量産には不向きであった。また、溶接不良によるオイル漏れの恐れもあった。さらに、高圧油圧ホースの取り回し(つまり配管パターン)が変更された場合に、従来の配管構造では、スタッドを変更しなければならず、汎用性が低かった。別の言い方をすれば、一つのスタッドは専用品であって、当該スタッドに対応した配管パターン以外に用いることはできなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、製造コストを低減でき、さらに汎用性を向上できる産業車両用配管構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る産業車両用配管構造は、産業車両において作業装置により各種作業を行わせるための油圧シリンダとその駆動制御を行なう油圧制御バルブとの間に配置される配管構造である。当該配管構造は、油圧シリンダに接続される第1の油圧ホースと、油圧制御バルブに接続される第2の油圧ホースと、第1、第2の油圧ホースに連結される連結部を両端に有するとともに、各連結部の間に設けられた本体部を有し、一方の連結部を介して第1の油圧ホースの先端のジョイント部に取り付けられた継手部材と、継手部材と第2の油圧ホースの間に配置され、継手部材の他方の連結部が挿通し得る貫通孔を有するとともに、貫通孔の周囲において継手部材の本体部が嵌入しかつ回転不能に係合し得る係合凹部が形成された隆起部を有する板状のブラケット部材とを備えている。
【0007】
請求項1の発明においては、継手部材を介して第1、第2の油圧ホースが連結されるが、第1の油圧ホースの先端のジョイント部に取り付けられた継手部材と第2の油圧ホースとの間には、板状のブラケット部材が設けられている。すなわち、この場合には、第1、第2の油圧ホースの間には、ブロック状の溶接構造体である従来のスタッドの代わりに、板状のブラケット部材が設けられている。
【0008】
ブラケット部材が板状の部材であることにより、継手部材の本体部が嵌入する係合凹部は、プレス加工により容易に成形可能であり、これにより、製造コストを低減できる。また、プレス加工は量産も容易なため、製造コストをさらに低減することが可能である。さらに、油圧ホースの取り回しが変更された場合、従来構造では、スタッドを変更しなければならなかったが、請求項1の発明によれば、継手部材を変更する(例えばニップルをエルボに変える)だけで済み、ブラケット部材としてはただ1種類のもので対応できる。すなわち、油圧ホースの取り回しの変更に対して単一種類のブラケット部材を共通化して用いることが可能である。これにより、汎用性の高い配管構造を実現できる。
【0009】
また、当該配管構造においては、一般に、油圧制御バルブに接続された第2の油圧ホースには常時テンション(張力)が作用しているが、請求項1の発明によれば、このようなテンションの作用下では、第1の油圧ホース先端のジョイント部に連結された継手部材の本体部が第2の油圧ホースの側に引っ張られて、本体部がブラケット部材の係合凹部に嵌入するとともに、係合凹部に回転不能に係合する。これにより、継手部材の本体部の回り止めが行なわれて、継手部材がブラケット部材に強固に結合されることになる。
【0010】
請求項2の発明では、請求項1において、連結部が雄ネジ部であり、第1、第2の油圧ホースの先端のジョイント部が、連結部の雄ネジ部が螺合し得る雌ネジ部を有している。
【0011】
請求項3の発明では、請求項1において、本体部が六角形状の外周面を有しており、係合凹部が外周面に沿う六角形状の内周面を有している。
【0012】
請求項4の発明では、請求項1において、ブラケット部材が略L字状に折り曲げられた部材である。
【0013】
請求項5の発明では、請求項1において、当該産業車両がフォークリフトである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明に係る産業車両用配管構造によれば、第1、第2の油圧ホースを連結する継手部材と第2の油圧ホースの間に板状のブラケット部材を設け、板状のブラケット部材に、継手部材の連結部が挿通し得る貫通孔を形成するとともに、貫通孔の周囲において継手部材の本体部が嵌入しかつ回転不能に係合し得る係合凹部を設けるようにしたので、板状のブラケット部材にプレス加工を施すことで係合凹部を容易に成形可能であり、これにより、製造コストを低減できる。また、油圧ホースの取り回しが変更された場合でも、継手部材を変更するだけで済み、汎用性の高い配管構造を実現できる。さらに、第2の油圧ホースにテンションが作用したとき、本体部がブラケット部材の係合凹部に嵌入して係合凹部に回転不能に係合することにより、継手部材の本体部の回り止めを行なえ、継手部材をブラケット部材に強固に結合できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例による配管構造が採用されたフォークリフトのアウターマスト部分の前面概略図である。
【図2】配管構造(図1)の分解組立図である。
【図3】図2のIII-III線断面図である。
【図3A】図3のIIIA矢視図である。
【図4】図2の配管構造の組立図であって、配管構造(図1)の一部断面拡大図に相当している。
【図5】本発明の他の実施例による配管構造の分解組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1は、フォークリフトのアウターマスト部分を示している。アウターマスト100は、車両の前部に設けられており、上下方向に延びる左右一対の部材から構成されている。各アウターマスト100は、下部に配置されたマストサポート部101によって支承されている。一方のアウターマスト100には、本発明の一実施例による配管構造体1が設けられている。
【0017】
配管構造体1は、図2に示すように、L字状に折り曲げられた薄板状のブラケット部材2と、その下方および上方にそれぞれ延びる第1、第2の高圧油圧ホース3、4と、第1の油圧ホース3の先端に取り付けられ、第1、第2の高圧油圧ホース3、4を連結する管継手としてのニップル5とから構成されている。
【0018】
第1の高圧油圧ホース3の後端は、フォーク爪等の油圧式作業装置(油圧アタッチメント)を駆動するための油圧シリンダ(ATTシリンダ(図示せず))に接続されている。第2の高圧油圧ホース4の後端は、油圧シリンダの駆動制御を行なう油圧制御バルブ(C/V(図示せず))に接続されている。
【0019】
第1の高圧油圧ホース3の先端には、ジョイント部30が取り付けられており、ジョイント部30は、雌ネジ部が形成された取付孔30aを有している。同様に、第2の高圧油圧ホース4の先端には、ジョイント部40が取り付けられており、ジョイント部40は、雌ネジ部(図示せず)が形成された取付孔(図示せず)を有している。
【0020】
ニップル5は、六角形状の外周面を有する本体部50と、第1、第2の高圧油圧ホース3、4の各ジョイント部30、40の雌ネジ部に螺合し得る雄ネジ部が形成されかつ本体部50の上下に延びる連結部51とから構成されている。
【0021】
ブラケット部材2は、矩形状の薄板プレートの一部にプレス加工を施して隆起部20を形成するとともに、これをL字状に折り曲げることにより作製されている。また、折曲げ部の角部にプレス加工を施すことにより、補強リブ21が形成されている(図3参照)。隆起部20には、貫通孔20aが形成されている。貫通孔20aは、ニップル5の連結部51が挿通し得る大きさに形成されている。隆起部20の裏面側には、図3に示すように、凹部20bが形成されている。凹部20bは、図3Aに示すように、六角形状の内周面を有しており、この内周面は、ニップル5の本体部50の外周面が係合し得る大きさに形成されている。また、ブラケット部材2には、当該ブラケット部材2をアウターマスト100に取り付けるための取付ボルト(図示せず)が挿入される取付孔22が貫通形成されている。この取付孔22を用いて、配管構造体1をアウターマスト上の任意の位置に固定できる。
【0022】
配管構造体1を組み立てる際には、まず、第1の高圧油圧ホース3の後端を油圧シリンダに接続するとともに、第2の高圧油圧ホース4の後端を油圧制御バルブに接続する。そして、図2および図4に示すように、第1の高圧油圧ホース3先端のジョイント部30の取付孔30aにニップル5下端の連結部51をねじ込んで固定する。
【0023】
次に、ニップル5を第1の高圧油圧ホース3とともにブラケット部材2の下方に移動させ、ニップル5の本体部50を隆起部20の凹部20b内に嵌入させるとともに、ニップル5上端の連結部51を隆起部20の貫通孔20aに挿入する。その一方、ブラケット部材2の隆起部20の上方に第2の高圧油圧ホース4を移動させておき、第2の高圧油圧ホース4先端のジョイント部40の取付孔にニップル5上端の連結部51をねじ込んで固定する。このようにして、配管構造体1が組み立てられる。
【0024】
この状態から、第2の高圧油圧ホース4にテンション(張力)が作用して、第2の高圧油圧ホース4に対して上方への引張力が作用したとき、第1の油圧ホース3先端のジョイント部30に連結されたニップル5の本体部50が第2の油圧ホース4の側に引っ張られて、本体部50がブラケット部材2の凹部20bに嵌入するとともに、凹部20bに回転不能に係合する。これにより、ニップル5の本体部50の回り止めが行なわれて、ニップル5がブラケット部材2に強固に結合されることになる。
【0025】
この場合には、ブラケット部材2が板状の部材であることにより、ニップル5の本体部50が嵌入する凹部20bは、プレス加工により容易に成形可能であり、これにより、製造コストを低減できる。また、プレス加工は量産も容易なため、製造コストをさらに低減することが可能である。さらに、油圧ホースの取り回しが変更された場合でも、継手部材を変更するだけで済む。これについては、図5を用いて説明する。
【0026】
図5は、本発明の他の実施例による配管構造を示しており、同図において、図2と同一符号は同一または相当部分を示している。前記実施例では、第1、第2の高圧油圧ホース3、4が上下方向に一直線上に配設された例を示したが、この例では、第1、第2の高圧油圧ホース3、4がいずれも上方に延びている。
【0027】
ここでは、継手部材として、前記実施例のニップル5の代わりにエルボ6が用いられている。エルボ6は、六角形状の外周面を有する本体部60と、本体部60の上方に直線状に延びる連結部61と、本体部60の下方に直線状に延びかつ側方に屈曲しつつ延びるL字状の連結部62とから構成されている。連結部61は、第2の高圧油圧ホース4のジョイント部40に連結され、連結部62は、第1の高圧油圧ホース3’のジョイント部30に連結される。第1の高圧油圧ホース3’は、側方に延びかつ上方に屈曲しつつ延びている。
【0028】
このように、本発明による配管構造においては、油圧ホースの取り回しを変更する場合には、継手部材を変更するだけでよい。これにより、ブラケット部材としてはただ1種類のもので対応できる。すなわち、油圧ホースの取り回しの変更に対して単一種類のブラケット部材を共通化して用いることが可能である。これにより、汎用性の高い配管構造を実現できる。
【0029】
<他の適用例>
前記各実施例では、本発明による配管構造がフォークリフトに適用された例を示したが、本発明はその他の産業車両にも同様に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上のように、本発明は、フォークリフト等の産業車両に有用であり、とくに配管構造の製造コストの低減を要求されるものに適している。
【符号の説明】
【0031】
1: 配管構造

2: ブラケット部材
20: 隆起部
20a: 貫通孔
20b: 凹部

3、3’: 第1の高圧油圧ホース
30: ジョイント部

4: 第2の高圧油圧ホース
40: ジョイント部

5: ニップル(継手部材)
50: 本体部
51: 連結部

6: エルボ(継手部材)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特公平2−40599号公報(第1ないし第3図参照)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業車両において、作業装置により各種作業を行わせるための油圧シリンダとその駆動制御を行なう油圧制御バルブとの間に配置される配管構造であって、
前記油圧シリンダに接続される第1の油圧ホースと、
前記油圧制御バルブに接続される第2の油圧ホースと、
前記第1、第2の油圧ホースに連結される連結部を両端に有するとともに、前記各連結部の間に設けられた本体部を有し、一方の前記連結部を介して前記第1の油圧ホースの先端のジョイント部に取り付けられた継手部材と、
前記継手部材と前記第2の油圧ホースの間に配置され、前記継手部材の他方の前記連結部が挿通し得る貫通孔を有するとともに、前記貫通孔の周囲において前記継手部材の前記本体部が嵌入しかつ回転不能に係合し得る係合凹部が形成された隆起部を有する板状のブラケット部材と、
を備えた産業車両の配管構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記連結部が雄ネジ部であり、前記第1、第2の油圧ホースの先端の前記ジョイント部が、前記連結部の前記雄ネジ部が螺合し得る雌ネジ部を有している、
ことを特徴とする産業車両の配管構造。
【請求項3】
請求項1において、
前記本体部が六角形状の外周面を有しており、前記係合凹部が前記外周面に沿う六角形状の内周面を有している、
ことを特徴とする産業車両の配管構造。
【請求項4】
請求項1において、
前記ブラケット部材が略L字状に折り曲げられた部材である、
ことを特徴とする産業車両の配管構造。
【請求項5】
請求項1において、
前記産業車両がフォークリフトである、
ことを特徴とする産業車両の配管構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図5】
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