説明

用紙切断装置

【課題】 廉価にして容易にフルカットとパーシャルカットを行うことができると共に、信頼性および耐久性に優れている用紙切断装置を得る。
【解決手段】 カッタ固定刃9と、該カッタ固定刃9と協働して用紙24を切断するカッタ移動刃10と、該カッタ移動刃10を支持する移動刃キャリア13と、該移動刃キャリア13を往復走行するキャリア送りベルト17と、該キャリア送りベルト17と前記移動刃キャリア17と連結するキャリア連結部材18と、キャリア送りベルト17を駆動するキャリア駆動モータ22とを有する用紙切断装置8において、前記移動刃キャリア13に前記キャリア連結部材18が係合するための第1溝部13aと、該第1溝部13aから所定距離隔てた位置に設けた第2溝部13bと、該第1溝部13aと第2溝部13bとを結ぶ第1通過溝部13cと第2通過溝部13dとを設け、前記第2通過溝部13dに前記キャリア連結部材18の第1溝部13aから第2溝部13bへの通過を制限する通過制限部材14を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリンタ、発券機等の装置において、紙およびプラスチックフィルム等のシートに対してフルカットとパーシャルカットを行うための用紙切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のフルカットとパーシャルカットを行う用紙切断装置としては、長手方向に真直状に形成した固定刃の真直刃部に、外周刃先部を有し回転可能に軸支された円盤状のカッタ移動刃を当接させて走行させる切断方式がある。このようなカッタ移動刃走行型の用紙切断装置において、用紙を完全に切り離すフルカットの場合には移動刃を大きなストロークで往復走行させる大幅型用紙切断装置を採用し、用紙を途中まで切り離すパーシャルカットの場合にはカッタ移動刃を小さなストロークで往復走行させる小幅型用紙切断装置を採用することによって行っていた。
【0003】
図22および図23を用いて用紙切断装置の従来例について説明する。図22は、従来例における大幅型用紙切断装置108により、カッタ移動刃110を往復走行させることにより用紙124を完全に切り離すフルカットを行う状態を示す動作説明図である。図23は、従来例における小幅型用紙切断装置208により、カッタ移動刃210を往復走行させることにより用紙224を一部を残して切り離すパーシャルカットを行う状態を示す動作説明図である。
【0004】
図22において、大幅型用紙切断装置108によりカッタ移動刃110を往復走行させることにより用紙124を完全に切り離すフルカットを行う状態について説明する。大幅型用紙切断装置108は、プリンタ本体フレーム102aの取り付け位置P1に取り付けられている。図示せぬプリンタ装置から印字されて排出される用紙124は、図示せぬ制御回路と駆動手段により移動刃キャリア113をホームポジションHPから左方向にストロークS1を走行させると、移動刃キャリア113に取り付けられているカッタ移動刃110は、カッタ固定刃109との協働により用紙124の全幅Wpを剪断する。
【0005】
図23において、小幅型用紙切断装置208によりカッタ移動刃210を往復走行させることにより用紙224を一部残して切り離すパーシャルカットを行う状態を示す状態について説明する。小幅型用紙切断装置208は、プリンタ本体フレーム202aの、前述したフルカットの場合と同じ取り付け位置P1に取り付けられている。図示せぬプリンタ装置から印字されて排出される用紙224は、図示せぬ制御回路と駆動手段によりカッタ移動刃210をホームポジションHPから左方向に前述したストロークS1より短いストロークS2を走行させると、カッタ移動刃210は、カッタ固定刃209との協働により用紙224を、全幅Wpのうちのつながり幅Wrを残して剪断する。これが即ちパーシャルカットである。
【特許文献1】特開平10−006278号公報
【特許文献2】特開平10−264085号公報
【特許文献3】特開2000−153491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、従来におけるパーシャルカット方法は、移動刃キャリアをホームポジションHPから左方向にフルカットの場合のストロークS1より短いストロークS2を有する小幅型用紙切断装置を採用することにより、用紙の全幅Wpのうちのつながり幅Wrを残して剪断するように構成している。このように、プリンタ、発券機等の装置において、フルカットを行う場合とパーシャルカットを行う場合で、採用する用紙切断装置を大幅型用紙切断装置か、あるいは小幅型用紙切断装置かを選択する必要があった。従って、フルカットを選択した場合にはパーシャルカットを行うことができず、パーシャルカットを選択した場合にはフルカットを行うことができないという不便な点があると共に、大幅型用紙切断装置と小幅型用紙切断装置との2種類の用紙切断装置を用意しておく必要があり、これがコスト高の要因となっていた。
【0007】
本発明の目的は、廉価にフルカットとパーシャルカットを行うことができる用紙切断装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明においては、枠体と、該枠体に固定され長手方向に真直状に形成されたカッタ固定刃と、該カッタ固定刃との協働により用紙を切断するためのカッタ移動刃と、前記カッタ移動刃を前記カッタ固定刃の長手方向に沿って往復走行するように駆動する移動刃駆動手段よりなり、前記移動刃駆動手段が前記カッタ移動刃を支持し搬送させるための移動刃キャリアと、該移動刃キャリアを往復走行駆動するためのキャリア送りベルトと、該キャリア送りベルトと前記移動刃キャリアとを連結するキャリア連結部材と、前記キャリア送りベルトを支持し走行駆動するためのプーリと、該プーリを回転駆動するキャリア駆動モータとを有する用紙切断装置において、前記キャリア送りベルトにキャリア連結部材を設け、前記移動刃キャリアに前記キャリア連結部材が係合するための第1溝部と、該第1溝部から所定距離隔てた位置に設けた第2溝部と、該第1溝部と第2溝部とを結ぶ第1通過溝部と第2通過溝部とを設け、前記第2通過溝部に前記キャリア連結部材の第1溝部から第2溝部への通過を制限する通過制限部材を設けたことを特徴とするものである。
【0009】
また、前記枠体には、前記キャリア連結部材が前記第2通過溝部を通過することによって該第2通過溝部から押し出された通過制限部材を、前記移動刃キャリアの復帰行程において復帰させるためのリセット部材が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記キャリア連結部材が前記第2通過溝部を通過することによって該第2通過溝部から押し出された通過制限部材を復帰させるための復帰ばね部材を有することを特徴とするものである
【0011】
また、枠体と、該枠体に固定され長手方向に真直状に形成されたカッタ固定刃と、該カッタ固定刃との協働により用紙を切断するためのカッタ移動刃と、前記カッタ移動刃を前記カッタ固定刃の長手方向に沿って往復走行するように駆動する移動刃駆動手段よりなり、前記移動刃駆動手段が前記カッタ移動刃を支持し搬送させるための移動刃キャリアと、該移動刃キャリアを往復走行駆動するためのキャリア送りベルトと、該キャリア送りベルトと前記移動刃キャリアとを連結するキャリア連結部材と、前記キャリア送りベルトを支持し走行駆動するためのプーリと、該プーリを回転駆動するキャリア駆動モータとを有する用紙切断装置において、前記キャリア駆動モータの回転方向を変えることによりフルカットとパーシャルカットとを切り換えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上説明したように、用紙の幅方向に横断するように設けたカッタ固定刃の一端にあるホームポジションに、カッタ移動刃をカッタ固定刃の真直刃部に圧接させて待機させておき、カッタ固定刃の上に用紙を載せて、キャリア駆動モータで駆動されるキャリア送りベルトによってカッタ移動刃を往復走行させて用紙を切断する用紙切断装置において、キャリア送りベルトにキャリア連結部材を設け、移動刃キャリアにキャリア連結部材が係合するための第1溝部と、該第1溝部から所定距離隔てた位置に設けた第2溝部と、該第1溝部と第2溝部とを結ぶ第1通過溝部と第2通過溝部とを設け、第2通過溝部にキャリア連結部材の第1溝部から第2溝部への通過を制限する通過制限部材を設けたので、キャリア駆動モータの回転方向を変えることにより、廉価にして容易にフルカットとパーシャルカットを行うことができると共に信頼性および耐久性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を一実施例に基づき図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る一実施例の用紙切断装置を採用したプリンタを斜め上方から見た状態を示す斜視図である。図2は、図1に示すプリンタのプリンタ蓋体3を開いた状態を示す斜視図である。図3は、図2を拡大して用紙切断装置の装着状態を示す拡大斜視図である。図4は、図3における用紙切断装置を拡大して示す拡大斜視図である。図5は、図4における矢視Aの状態を示す正面図である。
【0014】
図6は、図4の状態の用紙切断装置に用紙24を装着した状態を示す動作説明図である。図7は、図6の状態から移動刃キャリア13が走行しながら用紙24を切断する状態を示す動作説明図である。図8は、図5における蓋体12を透過した第1実施例の状態を示す正面図である。図9は、フルカットを行うために移動刃キャリア13が往行程の走行を開始した状態を示す説明図である。図10は、移動刃キャリア13がフルカットを行う往行程の走行を終了し復帰行程にはいる前の状態を示す説明図である。
【0015】
図11は、フルカットをの全行程を終了した状態を示すと共に、パーシャルカットを行う前の状態を示す説明図である。図12は、パーシャルカットを行うために移動刃キャリア13が往行程の走行を開始した状態を示す説明図である。図13は、移動刃キャリア13がパーシャルカットを行う往行程の走行を終了し復帰行程にはいる前の状態を示す説明図である。図14は、パーシャルカットの復帰行程の走行を開始した状態を示す説明図である。図15は、パーシャルカットの復帰行程においてキャリア連結部材が第1溝部から第2溝部へ移動するために通過制限部材を押しのけて第2通過溝部を通過する状態を示す説明図である。図16は、パーシャルカットの復帰行程においてキャリア連結部材が第1溝部にはいった状態を示す説明図である。図17は、通過制限部材がリセット部材によって復帰された状態を示す説明図である。図18は、パーシャルカットをの全行程を終了した状態を示す説明図である。
【0016】
図19は、第2実施例におけるパーシャルカットの復帰行程の走行を開始した状態を示す説明図である。図20は、第2実施例におけるパーシャルカットの復帰行程においてキャリア連結部材が第1溝部から第2溝部へ移動するために通過制限部材を押しのけて第2通過溝部を通過する状態を示す説明図である。図21は、第2実施例におけるパーシャルカットの復帰行程においてキャリア連結部材が第1溝部にはいった状態を示す説明図である。
【0017】
図1において、本発明の一実施例の用紙切断装置を採用したプリンタ装置1について説明する。プリンタ装置1は、プリンタ本体2と、プリンタ本体2の上部をとじるように開閉可能に取り付けられプリンタた蓋体3とにより構成されており、プリンタ本体2とプリンタ蓋体3との間にはプリント用紙を排出するための用紙排出口4が形成されている。
【0018】
図2において、図1に示すプリンタ装置1のプリンタ蓋体3を開いた状態について説明する。プリンタ本体2の後端部に開閉可能に取り付けられているプリンタ蓋体3を開いた状態において、プリンタ本体2には、ロール状の用紙24を収容するためのプリンタ用紙収容部5が形成されている。また、用紙排出口4の近傍にはカッタ固定刃9とカッタ移動刃10が取り付けられている。
【0019】
図3において、用紙排出口4の近傍に取り付けられている用紙切断装置8の取り付け状況について説明する。プラテンローラ6の前方に隣接して用紙切断装置8が取り付けられている。用紙切断装置8には、カッタ固定刃9がプラテンローラ6と並行して設けられている。また、用紙排出口4の右外側にはカッタ移動刃10が、カッタ固定刃9に圧接された状態で待機しており、カッタ固定刃9に沿って走行して用紙排出口4を横断可能に設けられている。プリンタ蓋体3には、プリント用紙にプリントするためのプリントヘッド7が取り付けられている。プリントヘッド7は、図示せぬ配線により図示せぬ回路基板に接続されている。
【0020】
図4、および図5において、本発明の一実施例を示す用紙切断装置8の概要について説明する。枠体11にはカッタ固定刃9が取り付けられており、図4に示すように、右端にはカッタ移動刃10がカッタ固定刃9に圧接された状態で待機している。
【0021】
図6および図7において、図4における用紙切断装置に用紙24を装着して、用紙切断装置により用紙24を切断する動作状態について説明する。まず、カッタ固定刃9の上に、図6に示すように用紙24を乗せる。続いて、図示せぬ制御回路によりキャリア駆動モータ22を駆動して、図7に示すようにカッタ移動刃10を矢印cの方向に走行させて用紙24を切断する。用紙24を切断する時には、後述するキャリア駆動モータ22を起動してキャリア送りベルト17によって移動刃キャリア13を矢印cの方向に走行させる。
【0022】
用紙24を完全に切り離すフルカットを行う場合には、カッタ移動刃10を全ストロークを往復走行させる。用紙24の一部を残して切り離すパーシャルカットを行う場合には、カッタ移動刃10を全ストロークの途中まで往復走行させる。
【0023】
図8、図9、図10、および図11を用いて第1実施例における、用紙24を完全に切りはなすフルカット動作について説明する。
【0024】
図8において、図5における枠体11を透過した第1実施例における状態について説明する。枠体11には鋼により真直状に形成したカッタ固定刃9が取り付けられており、カッタ固定刃9に沿って用紙24がセットされている。また、枠体11には第1プーリ15と、第2プーリ16が互いに間隔をおいて回転自在に取り付けられており、第1プーリ15と第2プーリ16との間には無端状に形成された歯付きベルトであるキャリア送りベルト17が緊張懸架されている。キャリア送りベルト17には、後述する移動刃キャリア13と連結するためのキャリ
ア連結部材18が取り付けられている。また、枠体11には、移動刃キャリア13が左右往復走行可能に取り付けられており、移動刃キャリア13には、カッタ固定刃9と協働して用紙24を切断するためのカッタ移動刃10が回転自在に保持されている。なお、図8の状態は移動刃キャリア13に回転自在に取り付けられているカッタ移動刃10の中心はホームポジションHPの位置にある。
【0025】
移動刃キャリア13には、キャリア連結部材18が係合してフルカットを行うための第1溝部13aと、キャリア連結部材18が係合してパーシャルカットを行うための第2溝部13bと、キャリア連結部材18が第1溝部13aと第2溝部13bとの間を移動する際に通過するため第1通過溝部13cと第2通過溝部13dとを設けている。第1溝部13aと第2溝部13bとは距離Dcを隔てて形成されており、第2通過溝部13dには、キャリア連結部材18が第1溝部13aから第2溝部13bへ通過することを制限するための通過制限部材14が、通過制限部材軸13eにより回動可能に軸支されている。
【0026】
また、枠体11には移動刃キャリア13を左右往復走行駆動を行うためのキャリア駆動モータ22が取り付けられている。キャリア駆動モータ22の出力軸には歯車輪列23が連結され、歯車輪列23は第2プーリ16に連結され、キャリア駆動モータ22を起動することによって第2プーリ16を回転させ、キャリア送りベルト17を走行させ、移動刃キャリア13を往復走行させるように構成されている。また、枠体11にはマイクロスイッチであるHP検出手段21が取り付けられ、図示せぬ配線により図示せぬ制御回路に接続されている。HP検出手段21は、移動刃キャリア13がホームポジションHPにあるときには接点が閉じられており、制御回路は、移動刃キャリア13がホームポジションHPの位置にあることを示す信号によりキャリア駆動モータ22を制御するように構成されている。また、枠体11には蓋体12が取り付けられており、上記機構を枠体11との内側に内蔵し保護している。
【0027】
図8、および図9において、フルカットを行うために移動刃キャリア13が往行程の走行を開始した状態を説明する。図8に示す状態からキャリア駆動モータ22を起動して、キャリア送りベルト17を矢印aの方向に走行させると、キャリア送りベルト17に取り付けられているキャリア連結部材18は、第1溝部13aの壁面を押して移動刃キャリア13を矢印cの方向に走行させる。図9に示すように、キャリア連結部材18が移動して第2通過溝部13dの位置まで来ても第2通過溝部13dには通過制限部材14があるので、キャリア連結部材18は第2通過溝部13dにはいることなく第1溝部13aに係合している。
【0028】
図9に示す状態からキャリア駆動モータ22を更に回転させて、キャリア送りベルト17を矢印aの方向に走行させると、図10に示すように、キャリア送りベルト17に取り付けられているキャリア連結部材18は、第1溝部13aの壁面を押して移動刃キャリア13を矢印cの方向に走行させ、移動刃キャリア13に回転自在に取り付けられているカッタ移動刃10の中心は、ホームポジションHPの位置からストロークS1を移動してフルカットポジションFPの位置に到達する。この動作により、カッタ固定刃9に沿ってセットされている用紙24は全幅Wpを切断される。
【0029】
図10に示す状態からキャリア駆動モータ22を更に回転させて、キャリア送りベルト17を矢印aの方向に走行させると、キャリア送りベルト17に取り付けられているキャリア連結部材18は、第1溝部13aの壁面を押して移動刃キャリア13を矢印dの方向に走行させ、移動刃キャリア13に回転自在に取り付けられているカッタ移動刃10の中心はホームポジションHPの位置に復帰する。カッタ移動刃10の中心がホームポジションHPの位置に復帰すると、HP検出手段21は、移動刃キャリア13がホームポジションHPに到達したことを図示せぬ制御回路に通知する。移動刃キャリア13がホームポジションHPに到達したことを受けた図示せぬ制御回路はキャリア駆動モータ22を停止させる。このようにしてフルカット動作は終了し図11に示す状態となる。
【0030】
図11、図12、図13、図14、図15、図16、図17、および図18を用いて第1実施例における用紙24の一部を残して切り離すパーシャルカット動作について説明する。
【0031】
図11、および図12において、パーシャルカットを行うために移動刃キャリア13が往行程の走行を開始する状態を説明する。図11に示す状態からキャリア駆動モータ22を起動して、キャリア送りベルト17をフルカットの場合と反対の矢印bの方向に走行させると、キャリア送りベルト17に取り付けられているキャリア連結部材18は、第1溝部13aの壁面を押して移動刃キャリア13を矢印cの方向に走行させる。図12に示すように、キャリア連結部材18が移動して第1通過溝部13cの位置まで来ると、キャリア連結部材18は第1通過溝部13cを通過して第2溝部13bに係合する。
【0032】
図12に示す状態からキャリア駆動モータ22を更に回転させて、キャリア送りベルト17を矢印bの方向に走行させると、キャリア送りベルト17に取り付けられているキャリア連結部材18は、第2溝部13bの壁面を押して移動刃キャリア13を矢印cの方向に走行させ、移動刃キャリア13に回転自在に取り付けられているカッタ移動刃10の中心は、ホームポジションHPの位置から、ストロークS1より第1溝部13aと第2溝部13bとの距離Dcを差し引いたストロークS2を移動して、図13に示すパーシャルカットポジションPPの位置に到達する。この動作により、カッタ固定刃9に沿ってセットされている用紙24は全幅Wpから切り残し幅Wrを残して切り込み幅Wcを切断される。
【0033】
図13に示す状態からキャリア駆動モータ22を更に回転させて、キャリア送りベルト17を矢印bの方向に走行させると、キャリア送りベルト17に取り付けられているキャリア連結部材18は、第2溝部13bの壁面を押して移動刃キャリア13を矢印dの方向に走行させる。キャリア連結部材18が移動して、図14に示す第2通過溝部13dの位置まで来ると、キャリア連結部材18は第2通過溝部13dにはいりこみ通過制限部材14に当接する。
【0034】
図14に示す状態からキャリア駆動モータ22を更に回転させて、キャリア送りベルト17を矢印bの方向に走行させると、キャリア送りベルト17に取り付けられているキャリア連結部材18は、第2通過溝部13dの中を移動して、図15に示すように、通過制限部材14を第2通過溝部13dから外側に押しのける。通過制限部材14は通過制限部材軸13eを回動中心として矢印eの方向に回動する。
【0035】
図15に示す状態からキャリア駆動モータ22を更に回転させて、キャリア送りベルト17を矢印bの方向に走行させると、キャリア送りベルト17に取り付けられているキャリア連結部材18は、第2通過溝部13dの中を移動して、図16に示すように第1溝部13aにはいりこみ、第1溝部13aの壁面を押して移動刃キャリア13を矢印dの方向に走行させる。
【0036】
図16に示す状態からキャリア駆動モータ22を更に回転させて、キャリア送りベルト17を矢印bの方向に走行させると、キャリア送りベルト17に取り付けられているキャリア連結部材18は、移動刃キャリア13を矢印dの方向に走行させ、移動刃キャリア13に回動自在に取り付けられ、図15および図16に示すように第2通過溝部13dから外側に押し出された状態の通過制限部材14は、枠体11に形成されているリセット部材19に当接して矢印fの方向に回動し、図17に示すように第2通過溝部13dを閉じる位置に復帰する。
【0037】
図17に示す状態からキャリア駆動モータ22を更に回転させて、キャリア送りベルト17を矢印bの方向に走行させると、キャリア送りベルト17に取り付けられているキャリア連結部材18は、移動刃キャリア13を矢印dの方向に走行させ、移動刃キャリア13に回転自在に取り付けられているカッタ移動刃10の中心は、図18に示すようにホームポジションHPの位置に復帰する。カッタ移動刃10の中心がホームポジションHPの位置に復帰すると、HP検出手段21は、移動刃キャリア13がホームポジションHPに到達したことを図示せぬ制御回路に通知する。移動刃キャリア13がホームポジションHPに到達したことを受けた図示せぬ制御回路はキャリア駆動モータ22を停止させる。このようにしてパーシャルカット動作は終了する。
【0038】
上述したように、第1実施例においては、第2通過溝部13dから外側に押し出された通過制限部材14を、ばねの復元力を用いて復帰させるのではなく、枠体11に形成されているリセット部材19に当接させることによって復帰させるので、部品点数が少なくコストが低廉であると共に動作が安定し信頼性が高く耐久性がある。
【0039】
図19、図20、および図21を用いて第2実施例における用紙24の一部を残して切り離すパーシャルカット動作について説明する。
【0040】
図19において、前述した第1実施例の図13に示すように、パーシャルカットの動作と同様にして、移動刃キャリア13が矢印cの方向に走行して、用紙24の全幅Wpから切り残し幅Wrを残して切り込み幅Wcを切断した後、キャリア駆動モータ22が更に回転した図14と同様の状態について説明する。第2実施例は、通過制限部材14がキャリア連結部材18によって第2通過溝部13dから押し出された後にリセット部材19によって第2通過溝部13dを閉じる位置に復帰させるのではなく、ばね力によって復帰させるように復帰ばね20を設けたものである。第1実施例における図13と同様の状態からキャリア駆動モータ22を更に回転させて、キャリア送りベルト17を矢印bの方向に走行させると、キャリア連結部材18は第2通過溝部13dの位置まで移動し、キャリア連結部材18は第2通過溝部13dにはいりこみ通過制限部材14に当接する。
【0041】
図19に示す状態からキャリア駆動モータ22を更に回転させて、キャリア送りベルト17を矢印bの方向に走行させると、キャリア送りベルト17に取り付けられているキャリア連結部材18は、第2通過溝部13dの中を移動して、図20に示すように、通過制限部材14を復帰ばね20の弾性力に抗して第2通過溝部13dから外側に押しのける。通過制限部材14は通過制限部材軸13eを回動中心として矢印eの方向に回動する。
【0042】
図20に示す状態からキャリア駆動モータ22を更に回転させて、キャリア送りベルト17を矢印bの方向に走行させると、キャリア送りベルト17に取り付けられているキャリア連結部材18は、第2通過溝部13dの中を移動して、図21に示すように、第1溝部13aにはいりこみ第1溝部13aの壁面を押して移動刃キャリア13を矢印dの方向に走行させる。キャリア連結部材18が第1溝部13aにはいると、図21に示すように第2通過溝部13dから外側に押し出された状態の通過制限部材14は復帰ばね20の弾性力によって矢印fの方向に回動し、図19、および図21に示すように第2通過溝部13dを閉じる位置に復帰する。
【0043】
上述したように、第2実施例においては、第2通過溝部13dから外側に押し出された通過制限部材14を、他の部材に当接させて復帰させるのではなく、復帰ばね20の弾性力を用いて復帰させるので衝突音を発生させることがない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明はプリンタ、発券機等の装置において、キャリア駆動モータの回転方向を変えることにより、廉価にして容易にフルカットとパーシャルカットを行うことができると共に信頼性および耐久性に優れているので、紙およびプラスチックフィルム等のシートに対してフルカットとパーシャルカットを行うための用紙切断装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る一実施例の用紙切断装置を採用したプリンタを斜め上方から見た状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すプリンタの蓋体3を開いた状態を示す斜視図である。
【図3】図2を拡大して用紙切断装置の装着状態を示す拡大斜視図である。
【図4】図4は、図3における用紙切断装置を拡大して示す拡大斜視図である。
【図5】図4における矢視Aの状態を示す正面図である。
【図6】図4の状態の用紙切断装置に用紙24を装着した状態を示す動作説明図である。
【図7】図6の状態から移動刃キャリア13が走行しながら用紙24を切断する状態を示す動作説明図である。
【図8】図5における蓋体12を透過した第1実施例の状態を示す正面図である。
【図9】フルカットを行うために移動刃キャリア13が往行程の走行を開始した状態を示す説明図である。
【図10】移動刃キャリア13がフルカットを行う往行程の走行を終了し復帰行程にはいる前の状態を示す説明図である。
【図11】フルカットをの全行程を終了した状態を示すと共に、パーシャルカットを行う前の状態を示す説明図である。
【図12】パーシャルカットを行うために移動刃キャリア13が往行程の走行を開始した状態を示す説明図である。
【図13】図13は、移動刃キャリア13がパーシャルカットを行う往行程の走行を終了し復帰行程にはいる前の状態を示す説明図である。
【図14】パーシャルカットの復帰行程の走行を開始した状態を示す説明図である。
【図15】パーシャルカットの復帰行程においてキャリア連結部材が第1溝部から第2溝部へ移動するために通過制限部材を押しのけて第2通過溝部を通過する状態を示す説明図である。
【図16】パーシャルカットの復帰行程においてキャリア連結部材が第1溝部にはいった状態を示す説明図である。
【図17】通過制限部材がリセット部材によって復帰された状態を示す説明図である。
【図18】パーシャルカットをの全行程を終了した状態を示す説明図である。
【図19】第2実施例におけるパーシャルカットの復帰行程の走行を開始した状態を示す説明図である。
【図20】第2実施例におけるパーシャルカットの復帰行程においてキャリア連結部材が第1溝部から第2溝部へ移動するために通過制限部材を押しのけて第2通過溝部を通過する状態を示す説明図である。
【図21】第2実施例におけるパーシャルカットの復帰行程においてキャリア連結部材が第1溝部にはいった状態を示す説明図である。
【図22】従来例における大ストローク用紙切断装置により、カッタ移動刃を往復走行させることにより用紙を完全に切り離すフルカットを行う状態を示す動作説明図である。
【図23】従来例における小ストローク用紙切断装置により、カッタ移動刃を往復走行させることにより用紙を一部を残して切り離すパーシャルカットを行う状態を示す動作説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1 プリンタ装置
2 プリンタ本体
3 プリンタ蓋体
4 用紙排出口
5 プリンタ用紙収容部
6 プラテンローラ
7 プリントヘッド
8 用紙切断装置
9 カッタ固定刃
10 カッタ移動刃
11 枠体
12 蓋体
13 移動刃キャリア
13a 第1溝部
13b 第2溝部
13c 第1通過溝部
13d 第2通過溝部
13e 通過制限部材軸
14 通過制限部材
15 第1プーリ
16 第2プーリ
17 キャリア送りベルト
18 キャリア連結部材
19 リセット部材
20 復帰ばね
21 HP検出手段
22 キャリア駆動モータ
23 歯車輪列
24 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、該枠体に固定され長手方向に真直状に形成されたカッタ固定刃と、該カッタ固定刃との協働により用紙を切断するためのカッタ移動刃と、前記カッタ移動刃を前記カッタ固定刃の長手方向に沿って往復走行するように駆動する移動刃駆動手段よりなり、前記移動刃駆動手段が前記カッタ移動刃を支持し搬送させるための移動刃キャリアと、該移動刃キャリアを往復走行駆動するためのキャリア送りベルトと、該キャリア送りベルトと前記移動刃キャリアとを連結するキャリア連結部材と、前記キャリア送りベルトを支持し走行駆動するためのプーリと、該プーリを回転駆動するキャリア駆動モータとを有する用紙切断装置において、前記キャリア送りベルトにキャリア連結部材を設け、前記移動刃キャリアに前記キャリア連結部材が係合するための第1溝部と、該第1溝部から所定距離隔てた位置に設けた第2溝部と、該第1溝部と第2溝部とを結ぶ第1通過溝部と第2通過溝部とを設け、前記第2通過溝部に前記キャリア連結部材の第1溝部から第2溝部への通過を制限する通過制限部材を設けたことを特徴とする用紙切断装置。
【請求項2】
前記枠体には、前記キャリア連結部材が前記第2通過溝部を通過することによって該第2通過溝部から押し出された通過制限部材を、前記移動刃キャリアの復帰行程において復帰させるためのリセット部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の用紙切断装置。
【請求項3】
前記キャリア連結部材が前記第2通過溝部を通過することによって該第2通過溝部から押し出された通過制限部材を復帰させるための復帰ばね部材を有することを特徴とする請求項1記載の用紙切断装置。
【請求項4】
枠体と、該枠体に固定され長手方向に真直状に形成されたカッタ固定刃と、該カッタ固定刃との協働により用紙を切断するためのカッタ移動刃と、前記カッタ移動刃を前記カッタ固定刃の長手方向に沿って往復走行するように駆動する移動刃駆動手段よりなり、前記移動刃駆動手段が前記カッタ移動刃を支持し搬送させるための移動刃キャリアと、該移動刃キャリアを往復走行駆動するためのキャリア送りベルトと、該キャリア送りベルトと前記移動刃キャリアとを連結するキャリア連結部材と、前記キャリア送りベルトを支持し走行駆動するためのプーリと、該プーリを回転駆動するキャリア駆動モータとを有する用紙切断装置において、前記キャリア駆動モータの回転方向を変えることによりフルカットとパーシャルカットとを切り換えることを特徴とする用紙切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2007−15104(P2007−15104A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−258467(P2006−258467)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【分割の表示】特願2000−318637(P2000−318637)の分割
【原出願日】平成12年10月18日(2000.10.18)
【出願人】(000001960)シチズン時計株式会社 (1,939)
【出願人】(000124362)シチズンセイミツ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】