説明

用紙加工装置

【課題】 一対の搬送ローラの軸方向全体における挟持力を、簡単な構成で、均一化して、用紙の搬送を正確に且つ安定して行うことができる、用紙加工装置を提供すること。
【解決手段】 装置本体と、用紙を1枚ずつ搬送する搬送手段2と、搬送手段2で構成された搬送経路の途中に設けられ、用紙に加工を施す、加工手段と、を備えた、用紙加工装置において、搬送手段2が、用紙を上下から挟持して搬送する一対の搬送ローラ21、22で構成されており、上側搬送ローラ22の回転軸221の軸受224、225が下側搬送ローラ21に向けて移動可能に設けられているとともに、上側搬送ローラ22の軸方向中央部を下側搬送ローラ21に向けて押す押圧ローラ23が設けられていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙を搬送しながら用紙に加工を施す用紙加工装置に関するものであり、特に、用紙を搬送する搬送手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、図4に示すように、用紙を、多数個の搬送手段2によって搬送方向(矢印X方向)に搬送しながら、用紙に、加工手段41〜45によって加工を施す、用紙加工装置1が、開示されている。搬送手段2は、用紙を上下から挟持して搬送する一対の搬送ローラ21、22で構成されている。一対の搬送ローラ21、22においては、通常、上側搬送ローラ22の回転軸の両端の軸受をばねによって下方に付勢することにより、上側搬送ローラ22を下側搬送ローラ21に向けて押し付けて、両ローラ21、22間で用紙を挟持できるようになっている。
【0003】
特許文献2には、熱転写プリンタにおいてプラテンローラの表面接触応力を均一化する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−232700号公報
【特許文献2】特開2003−276257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の一対の搬送ローラ21、22においては、上側搬送ローラ22の回転軸の両端の軸受がばねによって下方に付勢されているので、下側搬送ローラ21と上側搬送ローラ22との間に生じる挟持力が、上側搬送ローラ22の軸方向両側部においては強くなり、軸方向中央部においては弱くなり、したがって、軸方向全体においては不均一となっていた。そのため、用紙が正確に搬送されない事態が生じる恐れがあった。特に、用紙が搬送方向に裁断加工されて複数の用紙片となった後に搬送される場合には、軸方向両側部に位置する用紙片が早く搬送され、軸方向中央部に位置する用紙片が遅く搬送され、したがって、各用紙片の搬送距離に差が生じたり、一部の用紙片が斜行したりして、その後の加工が不正確に行われてしまう恐れがあった。
【0005】
一方、特許文献2の技術は、プラテンローラ自体の構造を改良するものであるため、構造が複雑で高価である。
【0006】
本発明は、一対の搬送ローラの軸方向全体における挟持力を、簡単な構成で、均一化して、用紙の搬送を正確に且つ安定して行うことができる、用紙加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、用紙を搬送しながら用紙に加工を施す用紙加工装置であって、装置本体と、用紙を1枚ずつ搬送する搬送手段と、搬送手段で構成された搬送経路の途中に設けられ、用紙に加工を施す、加工手段と、を備えた、用紙加工装置において、搬送手段が、用紙を上下から挟持して搬送する一対の搬送ローラで構成されており、上記一対の搬送ローラの、一方の搬送ローラの回転軸の軸受が他方の搬送ローラに向けて移動可能に設けられているとともに、上記一方の搬送ローラの軸方向中央部を上記他方の搬送ローラに向けて押す押圧ローラが設けられていることを特徴としている。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、押圧ローラが、支持軸に対して回転するよう設けられており、支持軸が、押圧ローラを上記一方の搬送ローラに向けて付勢するよう、湾曲状に設けられているものである。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、上記一方の搬送ローラの表面が柔軟性を有しており、押圧ローラの軸方向長さが、上記一方の搬送ローラの軸方向長さの10%以上50%以下に設定されているものである。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、押圧ローラの軸方向両端部が、面取り加工されているものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明においては、一方の搬送ローラの回転軸の軸受が他方の搬送ローラに向けて移動可能であるので、押圧ローラによって上記一方の搬送ローラの軸方向中央部を押すと、上記一方の搬送ローラから上記他方の搬送ローラに向かう圧力は、上記一方の搬送ローラの軸方向全体に渡って略均一に分布することとなる。したがって、請求項1記載の発明によれば、両ローラ間の挟持力を、軸方向全体において略均一にできる。それ故、用紙を、両ローラ間において、軸方向全体に渡って均一に挟持できる。したがって、用紙を正確に搬送でき、搬送後の用紙の加工を正確に行うことができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、支持軸を湾曲状に設けるだけで、押圧ローラを上記一方の搬送ローラに向けて付勢できるので、簡単な構成で、本発明を実現できる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、上記一方の搬送ローラの表面が柔軟性を有する場合でも、両ローラ間の挟持力を、軸方向全体において略均一にできる。すなわち、上記一方の搬送ローラの表面が柔軟性を有する場合には、上記一方の搬送ローラの軸方向全体を押圧ローラで押すと、上記一方の搬送ローラから上記他方の搬送ローラに向かう圧力は、上記一方の搬送ローラの軸方向全体において均一には分布しないこととなる。しかるに、請求項3記載の発明によれば、押圧ローラの軸方向長さを上記一方の搬送ローラの軸方向長さの所定範囲内に設定しているので、上記一方の搬送ローラの表面が柔軟性を有する場合でも、上記分布を略均一なものにできる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、上記一方の搬送ローラの柔軟性を有する表面が押圧ローラによって傷付けられるのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の用紙加工装置1の搬送手段2を搬送方向下流側から(図4の逆X方向に)見た正面図である。この搬送手段2は、一対の搬送ローラ21、22と、押圧ローラ23とで、構成されている。下側搬送ローラ21には上側搬送ローラ22が当接しており、上側搬送ローラ22には押圧ローラ23が当接している。
【0016】
下側搬送ローラ21は、金属製円筒体の表面に硬質ゴムを被覆させて構成されている。下側搬送ローラ21は、回転軸211と共に回転するようになっている。回転軸211の両端は、軸受214、215にベアリングを介して支持されている。軸受214、215は、装置本体10の側壁101に固定されている。これにより、下側搬送ローラ21は、装置本体10に対して固定された位置で、回転するようになっている。
【0017】
上側搬送ローラ22は、金属製円筒体の表面にスポンジを被覆させ更に薄いゴムを被覆させて構成されている。したがって、上側搬送ローラ22の表面は柔軟性を有している。上側搬送ローラ22は、回転軸221と共に回転するようになっている。回転軸221の両端は、軸受224、225にベアリングを介して支持されている。軸受224、225は、装置本体10の側壁101に、上下動可能に、設けられている。
【0018】
押圧ローラ23は、その軸方向(矢印Y方向)長さが上側搬送ローラ22の軸方向長さの10%以上50%以下に設定されている。すなわち、押圧ローラ23の軸方向長さは、上側搬送ローラ22よりも短い。また、押圧ローラ23の軸方向両端部203は、面取り加工されている。そして、押圧ローラ23は、支持軸231にベアリングを介して支持されている。すなわち、押圧ローラ23は支持軸231に対して回転し、支持軸231自体は回転しない。支持軸231は、弾性を有しており、上に凸の湾曲状となるよう、装置本体10の側壁101に支持されている。すなわち、支持軸231の両端の軸受232、233は、支持軸231の軸方向中間点よりも下方に位置している。そして、押圧ローラ23は、上側搬送ローラ22に当接した状態で、支持軸231の軸方向中央部に位置している。したがって、押圧ローラ23は、支持軸231の弾性力によって、下方に付勢され、上側搬送ローラ22の軸方向中央部を下方に押している。
【0019】
上記構成の搬送手段2においては、駆動ギヤ25が駆動手段(図示せず)によって駆動されると、下側搬送ローラ21が回転し、それに従動して上側搬送ローラ22が回転し、更にそれに従動して押圧ローラ23が回転する。そして、用紙は、下側搬送ローラ21と上側搬送ローラ22との間に挟持された状態で、両搬送ローラ21、22の回転に伴って搬送される。
【0020】
このとき、上記構成の搬送手段2においては、上側搬送ローラ22が下側搬送ローラ21に向けて移動可能であり、上側搬送ローラ22の軸方向中央部が押圧ローラ23によって下側搬送ローラ21に向けて押されているので、上側搬送ローラ22から下側搬送ローラ21に向かう圧力は、上側搬送ローラ22の軸方向全体に渡って略均一に分布することとなる。したがって、上記構成の搬送手段2によれば、両搬送ローラ21、22間の挟持力を、軸方向全体において略均一にできる。これにより、用紙は、両搬送ローラ21、22間において、軸方向全体に渡って均一に挟持される。
【0021】
したがって、上記構成の搬送手段2を備えた用紙加工装置1においては、用紙が正確に搬送される。例えば、用紙が搬送方向に裁断加工されて複数の用紙片となった後に上記構成の搬送手段2によって搬送される場合には、軸方向両側部に位置する用紙片も、軸方向中央部に位置する用紙片も、共に同等な挟持力によって挟持された状態で搬送される。それ故、各用紙片の搬送距離に差が生じることはなく、また、一部の用紙片が斜行することもない。したがって、上記構成の搬送手段2による搬送後の用紙の加工は、正確に行われる。
【0022】
しかも、上記構成の搬送手段2は、押圧ローラ23を設けるだけで実現できるので、構成が簡単である。
【0023】
また、上記構成の搬送手段2によれば、支持軸231を湾曲状に設けるだけで、押圧ローラ23を上側搬送ローラ22に向けて付勢できるので、簡単な構成で、上記構成の搬送手段2を実現できる。
【0024】
更に、上記構成の搬送手段2によれば、上側搬送ローラ22の表面が柔軟性を有しているが、両搬送ローラ21、22間の挟持力を、軸方向全体において略均一にできる。すなわち、上側搬送ローラ22の表面が柔軟性を有する場合には、上側搬送ローラ22の軸方向全体を押圧ローラ23で押すと、上側搬送ローラ22から下側搬送ローラ21に向かう圧力は、上側搬送ローラ22の軸方向全体において均一には分布しないこととなる。しかるに、上記構成の搬送手段2によれば、押圧ローラ23の軸方向長さを上側搬送ローラ22の軸方向長さの所定範囲内に設定しているので、上側搬送ローラ22の表面が柔軟性を有する場合でも、上記分布を略均一なものにできる。
【0025】
しかも、上記構成の搬送手段2によれば、押圧ローラ23の軸方向両端部230が面取り加工されているので、上側搬送ローラ22の柔軟性を有する表面が押圧ローラ23によって傷付けられるのを防止できる。
【0026】
なお、次のような変形構造を採用してもよい。
(1)押圧ローラ23の支持軸231を水平に設け、支持軸231の、押圧ローラ23の両側近傍の部分を、別部材によって、上側搬送ローラ22に向けて付勢する。これにより、上側搬送ローラ22の軸方向中央部を押圧ローラ23によって下方に押すことができる。
【0027】
(2)上記構成の搬送手段2においては、下側搬送ローラ21を固定し、上側搬送ローラ22を上下動可能とし、上側搬送ローラ22を押圧ローラ23で下方に付勢するようにしているが、これらの関係を逆にする。すなわち、上側搬送ローラ22を固定し、下側搬送ローラ21を上下動可能とし、下側搬送ローラ21を下側から押圧ローラ23で上方に付勢するようにする。
【実施例1】
【0028】
図2は、上記構成の搬送手段2における両搬送ローラ21、22間の挟持力の軸方向(矢印Y方向)における分布を示す。なお、両搬送ローラ21、22の軸方向長さは、400mmであり、押圧ローラ23の軸方向長さは、50mmである。
【比較例1】
【0029】
図3は、上記構成の搬送手段2から押圧ローラ23を除外した構成の搬送手段における両搬送ローラ21、22間の挟持力の軸方向(矢印Y方向)における分布を示す。
【0030】
図2と図3とを対比すると明らかであるように、比較例1では、両搬送ローラ21、22間の挟持力が軸方向両側部に偏って存在していたが、実施例1では、両搬送ローラ21、22間の挟持力が略均等に分布している。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、用紙の搬送を正確に行うことができる用紙加工装置を実現できるので、産業上の利用価値が大である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の用紙加工装置の搬送手段を搬送方向下流側から見た正面図である。
【図2】本発明の実施例1の搬送手段における両搬送ローラ間の挟持力の軸方向における分布を示す図である。
【図3】比較例1の搬送手段における両搬送ローラ間の挟持力の軸方向における分布を示す図である。
【図4】用紙加工装置の基本的構成を示す概略側面断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 用紙加工装置 2 搬送手段 21 下側搬送ローラ 22 上側搬送ローラ 221 回転軸 224、225 軸受 23 押圧ローラ 231 支持軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を搬送しながら用紙に加工を施す用紙加工装置であって、
装置本体と、
用紙を1枚ずつ搬送する搬送手段と、
搬送手段で構成された搬送経路の途中に設けられ、用紙に加工を施す、加工手段と、を備えた、用紙加工装置において、
搬送手段が、用紙を上下から挟持して搬送する一対の搬送ローラで構成されており、
上記一対の搬送ローラの、一方の搬送ローラの回転軸の軸受が他方の搬送ローラに向けて移動可能に設けられているとともに、上記一方の搬送ローラの軸方向中央部を上記他方の搬送ローラに向けて押す押圧ローラが設けられていることを特徴とする用紙加工装置。
【請求項2】
押圧ローラが、支持軸に対して回転するよう設けられており、
支持軸が、押圧ローラを上記一方の搬送ローラに向けて付勢するよう、湾曲状に設けられている、請求項1記載の用紙加工装置。
【請求項3】
上記一方の搬送ローラの表面が柔軟性を有しており、
押圧ローラの軸方向長さが、上記一方の搬送ローラの軸方向長さの10%以上50%以下に設定されている、請求項1記載の用紙加工装置。
【請求項4】
押圧ローラの軸方向両端部が、面取り加工されている、請求項3記載の用紙加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−39222(P2007−39222A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−226792(P2005−226792)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(390002129)デュプロ精工株式会社 (351)
【Fターム(参考)】