説明

用紙反転装置及びこの用紙反転装置を備えた画像形成装置

【課題】 用紙のUターン搬送装置において、レジストローラに早く確実に用紙先端を押込み、ジャムや斜行を防止する。
【解決手段】 積載された用紙から1枚のみを分離して下流行程に搬送する給紙手段と、給紙手段から搬送された用紙を下流に案内する案内手段と、案内手段の途中に配置され、待機位置である第1の位置と、用紙搬送時に用紙を下流に方向転換させながら用紙の腰により押されて搬送経路を広げる方向に移動した第2の位置との間を揺動可能に支持され、第2の位置にあるとき広がった搬送経路の上流側で用紙を下流側に押し込むように作用する用紙押し込み形状を有する用紙方向転換手段と、用紙方向転換手段で方向転換された用紙の斜行を補正する斜行補正手段とを備える。また、本発明の画像形成装置はこのような用紙反転装置を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積載した用紙を1枚給紙して下流行程に向けて方向転換させる用紙反転装置及びそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の用紙反転装置は、積載された用紙束から1枚のみを分離して下流行程に搬送する際に、いわゆる中間ローラ等のローラ対に用紙を狭持して搬送力を与え、用紙反転経路を形成する用紙ガイドに沿って搬送させるものがある。(例えば、特許文献1参照。)。以下、図4、図5、図6により従来の用紙反転装置について説明する。
【0003】
図4に、従来の用紙搬送装置(用紙反転装置)が装着されたレーザプリンタの内部構成を示す概略構成図を示す。この図に示すレーザプリンタ210は、上側構造部210aと下側構造部210bとで構成されている。上側構造部210aは、下側構造部210bに対してヒンジ211により開閉自在に取り付けられている。
【0004】
上側構造部210aには画像形成部が納められており、そのほぼ中央部にベルト状感光体212が設置されている。感光体212の周りには、図中矢印で示す感光体212の駆動方向順に帯電器213、現像器214、転写器215、クリーニング器216等が配置されている。そして、これら部材の上方には光書き込み装置217が配置されている。また、上側構造部210a内には定着機224、用紙排出部236等が設けられている。
【0005】
下側構造部210bは、上記した画像形成部へ用紙を供給する用紙搬送装置(用紙反転装置)となっている。用紙搬送装置は、給紙機構219、中間ローラ221、レジストローラ222等により構成されている。中間ローラ221の用紙搬送方向手前(上流)側近傍には、搬送される用紙を検知する中間センサ231が、また、レジストローラ222の手前にはレジストセンサ235が設けられている。そして、この用紙搬送装置(用紙反転装置)には用紙カセット218が装着されている。
【0006】
レーザプリンタ210の動作を概略的に説明すると、感光体212は矢印の方向すなわち図中反時計回りに駆動され、帯電器213によりその表面を一様に帯電される。そして、印字情報に基づく光書き込み装置217からのレーザ光Lを照射され静電潜像が形成される。この潜像は、現像器214を通過する際にトナーにより可視像化される。一方、給紙カセット218に収納された用紙束Pの最上位の用紙が、給紙機構219の給紙コロ220により矢印Aの方向に送り出される。その用紙はガイド板230に案内されて中間ローラ221を介してレジストローラ222へと搬送される。そして、レジストローラ222により、画像形成部で形成された画像の転写タイミングを取られて送り出される。感光体212上のトナー像は、転写器215の作用により用紙上に転写される。トナー像を転写された用紙は、搬送ガイド223に案内されて定着器224へと導かれ、加熱ローラ225と加圧ロ−ラ等226とに挟持されて搬送される際に、加熱及び加圧によりトナー像が用紙上に定着される。定着器224を出た用紙は、排紙ローラ227によって搬送され、切り換え爪228により用紙排出部236へと導かれ、矢印Bの方向に機外へ排出される。なお、トナー像を転写した後の感光体212は、クリーニング器216で残留トナーを除去され、その後、除電器229により除電される。
【0007】
図5に、この用紙搬送装置(用紙反転装置)における、給紙コロ220、中間ローラ221及びレジストローラ222の駆動タイミングと、中間センサ231及びレジストセンサ235による用紙検知タイミングとを関連して示すタイミングチャートを示す。この図に示すように、給紙コロ220が駆動開始(オン)されて用紙が給送されると、中間センサ231が用紙先端を検知(オン)する。この中間センサ231による用紙先端検出と同期して中間ローラ221の駆動を停止(オフ)する。すると、用紙先端は中間ローラ221に突き当たり進行が阻止される。このとき、給紙コロ220はまだ駆動(オン)されているため、給紙コロ220と中間ローラ221の間で用紙に撓み、すなわちループが発生する。用紙の腰によりループを元に戻そうとする力が用紙に働き、用紙先端が中間ローラ221に倣って用紙のスキュー(斜行)が矯正される。中間ローラ221は、中間センサ231の用紙先端検出タイミングにより駆動停止(オフ)された後、所定の時間経過後、駆動再開(オン)される。一方、給紙コロ220は駆動開始後所定の時間が経過すると駆動停止(オフ)される。この後、レジストセンサ235による用紙先端検出タイミングにより、中間ローラ221が駆動停止(オフ)され、レジストローラ222の駆動開始(オン)と共に中間ローラ221が駆動再開(オン)される。これらの制御はレーザプリンタ本体の制御手段により行なうことができる。この従来例においては、中間ローラ221による斜行補正に加えて、レジストローラ222により用紙の斜行補正が再度行なわれることになる。
【0008】
図6は、用紙が中間ローラまで搬送された状態を示す斜視図である。前述したように、用紙P1の先端が駆動停止された中間ローラ221に突き当たると、給紙コロ220の駆動が継続されているので、図に一点鎖線で示すように用紙P1に撓みが発生する。このとき、本実施例の用紙搬送装置においては、図7に示すように、用紙搬送経路をガイドするガイド板230a及び230bの内、カーブの外側のガイド板230aは、その上端部を軸233によりフレーム232に枢着され回動可能に支持されている。従って、先端部が中間ローラ221に突き当たって撓んだ用紙P1に押されて矢印Uの方向に揺動する。ガイド板230が揺動することにより用紙のループを吸収すると共に、ガイド板230の自重が用紙に掛かり、用紙P1の先端を中間ローラ221の方向へ押し込む力として作用する。そのため、中間ローラ221による用紙の斜行補正をより確実にすることができる。
【特許文献1】特許第3372323号公報(第4乃至5頁、図1乃至図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上述した構成の用紙搬送装置(用紙反転装置)による用紙反転は、レジスト動作を行なう中間ローラ211の上流側の搬送路中で、ガイド板230aの回転軸233が中間ローラ221寄り、すなわち下流側に配置され、ループ空間はその軸233の上流側となる。すなわち、ループ空間は給紙手段(給紙コロ220)に相対的に距離が近く、次段の搬送手段(中間ローラ221)までの距離が相対的に遠くなる。このように上流側にループ空間がある(相対的に給紙手段に近い)と、給紙手段(給紙コロ220)の搬送力の大半はループ空間で用紙ループの成長に吸収されてしまう。一方でループ空間では、ガイド板230のループ部に用紙のループが成長して、用紙がガイド板230に押し当てられる抵抗のために搬送抵抗が大きくなり、次段の搬送手段(中間ローラ221)のニップ点へ押し込む力、すなわち搬送力がその分損失して弱くなってしまう。その際、用紙先端はループ下流側では次段の搬送手段までの距離が遠いこともあり比較的自由度が高い上、搬送力が十分に伝わらないため不安定な姿勢となる。このように搬送力が相殺された結果、用紙を次段の搬送手段(中間ローラ221)に押し込む力が弱く、用紙先端挙動が不安定となるため、斜行補正が不十分になったり、次段の搬送手段まで用紙が到達できずにジャムとなったりするという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の問題を解決するために、本発明の用紙反転装置は、積載された用紙から1枚のみを分離して下流行程に搬送する給紙手段と、給紙手段から搬送された用紙を下流に案内する案内手段と、案内手段の途中に配置され、待機位置である第1の位置と、用紙搬送時に用紙を下流に方向転換させながら用紙の腰により押されて搬送経路を広げる方向に移動した第2の位置との間を揺動可能に支持され、第2の位置にあるとき広がった搬送経路の上流側で用紙を下流側に押し込むように作用する用紙押し込み形状を有する用紙方向転換手段と、用紙方向転換手段で方向転換された用紙の斜行を補正する斜行補正手段とを備える。また、本発明の画像形成装置はこのような用紙反転装置を備えている。
【発明の効果】
【0011】
これにより、本発明の用紙反転装置は、用紙方向転換手段が第2の位置にあるとき、ループ空間となる広がった搬送経路が下流側となり、給紙手段の搬送力を有効に用紙先端に伝えることができるため、用紙先端を確実に斜行補正手段に押込み、ジャムを防ぐとともに高精度な斜行補正をすることができる。また、用紙方向転換手段が第2の位置にあるとき、用紙押込み形状が用紙を下流側に押込むため確実に斜行補正することができる。また、用紙先端が斜行補正手段に到達するまでは用紙にループを作らず最短距離で斜行補正手段に到達するため、短時間で斜行補正開始することができる。したがってこの用紙方向転換装置を画像形成装置等に用いた場合、画像形成の生産性(スループット)を高くすることができる。
【0012】
また、本発明の画像形成装置は上述のような用紙反転装置を備えている。これにより、ジャムや斜行がなく高信頼性、高速、高品質な印字結果が得られる画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の用紙反転装置は、積載された用紙から1枚のみを分離して下流行程に搬送する給紙手段と、給紙手段から搬送された用紙を下流に案内する案内手段と、案内手段の途中に配置され、用紙がないときの待機位置である第1の位置と、用紙搬送時に用紙を下流に方向転換させながら用紙の腰により押されて搬送経路を広げる方向に移動した第2の位置との間を揺動可能に支持され、第2の位置にあるとき広がった搬送経路の上流側で用紙を下流側に押し込むように作用する用紙方向転換手段と、用紙方向転換手段で方向転換された用紙の斜行を補正する斜行補正手段とを備える。以下、図面を参照しながら本発明の用紙反転装置を適用した画像形成装置の一例であるインクジェットプリンタを説明する。
【0014】
図1及び図2にインクジェットプリンタ1の断面図を示す。図2は、図1における本実施の形態の用紙反転装置の要部拡大図である。図1において、インクジェットプリンタ1は、本体ケース2、カセット3、レジストローラ対4、印字ヘッド5、プラテン6、排紙ローラ対7、排紙トレイ8、給紙コロ9、内側ガイド10、フラッパガイド11、上ガイド12、分離板13、スイングアーム14等により構成される。
【0015】
本体ケース2は、インクジェットプリンタ1全体を支持している。また、本体ケース2は、給紙手段である給紙コロ9と分離板13の作用により分離された用紙S1を受け取り、案内手段の一部として後述の第1の搬送路の外側の案内をするとともに、用紙方向転換手段であるフラッパガイド11の上流側の搬送路を形成する。カセット3は、本体ケース2に挿脱可能に構成され、用紙束Sを積載する。この用紙束Sの最上面には給紙コロ9が用紙量に追従して常に接触するように構成してある。なお、カセット3からレジストローラ対4に到るまでの搬送路を本実施の形態においては第1の搬送路と呼ぶ。
【0016】
斜行補正手段であるレジストローラ対4は、駆動側のLFローラ4aと、従動側のピンチローラ4bとにより構成されている。LFローラ4aは、図示しないモータ及びギア列により用紙を必要量搬送するために駆動される。ピンチローラ4bは、図示しない付勢手段によりLFローラ4a側に付勢されている。レジストローラ対4のニップに用紙S1を狭持搬送することにより画像形成部である印字ヘッド5方向に用紙S1を搬送することができる。画像形成中のレジストローラ対4は、図示しないモータにより、所定量の間欠搬送が行なわれる。
【0017】
また、レジストローラ対4は、停止した状態でそのニップ(ローラどうしの接触点)に給紙コロ9からの搬送により上流側から搬送された用紙S1の先端を突き当てることで、用紙先端が搬送方向に対して直角でない状態、すなわち斜行を補正することができる。ここで、斜行を補正するとは、用紙S1の搬送方向に対して先端が直角でない場合に、その先端を搬送方向に対してほぼ直角に整列させることを指す。また、用紙S1の斜行補正の後、印字ヘッド5による画像形成の際の間欠駆動で、用紙S1を正確な送り量で搬送する。レジストローラ対4による用紙S1の間欠搬送時の送り量は、画像の品質に大きな影響を与えるため、通常レジストローラ対4は、インクジェットプリンタの搬送手段の中では大きな搬送力を有しており、高精度な駆動制御が行なわれる。
【0018】
印字ヘッド5は、図示しない移動手段であるキャリッジにより用紙の搬送方向と直交する方向、すなわち用紙巾方向に往復移動しながら用紙の印字面に対向する面からインク滴を吐出して画像形成するように構成される。印字ヘッド5はまた、図示しないインク供給手段により、必要な色と量とのインクが適宜供給されるように構成されている。
【0019】
プラテン6は、印字ヘッド5による画像の印字の際、用紙の印字面の平面度、印字ヘッド5とのクリアランス及び平行度を適切に維持するように構成される。このように、印字ヘッド5と用紙との位置関係を維持する必要があるのは、印字ヘッド5から吐出されたインク滴の着弾位置精度を高精度にするためである。
【0020】
排紙ローラ対7は、駆動側の排紙ローラ7aと、従動側の拍車7bとにより構成され、用紙を狭持搬送するように構成されている。排紙ローラ7aは、例えばゴム等の高摩擦部材で形成され、画像形成済の用紙の非印字面に接触して、拍車7bとの作用により後述の排紙トレイ8へと用紙を搬送する。拍車7bは、印字直後の用紙の印字面に直接接触して搬送しなければならないので、極力接触面積を小さくする必要がある。そのため、本実施の形態においては拍車7bはその外周部に針状の突起を多数形成した形状としている。
【0021】
排紙トレイ8は、排紙ローラ対7から排出された印字済の用紙を整列して所定量積載できるように構成されている。
【0022】
給紙手段を構成する給紙コロ9は、図示しないモータ等の駆動源により駆動されて図示の方向Rに回転して、カセット3上に積載された用紙束Sの最上面の用紙S1を搬送方向Fにレジストローラ対4まで(すなわち、第1の搬送路中を)搬送する。給紙コロ9の表面は例えばゴム等の高摩擦部材で構成されている。また、給紙コロ9は、本実施の形態の場合、回転軸14aで回転可能に支持されたスイングアーム14に回転可能に支持されている。このため、カセット9に積載された用紙束Sの残量に応じてスイングアーム14が回転軸14aを中心に回転して、給紙コロ9が常に最上面の用紙S1に追従するように構成されている。
【0023】
給紙手段を構成する分離板13は、給紙コロ9により搬送方向Fに搬送された用紙を1枚のみに分離するように構成される。給紙コロ9による用紙搬送の際に、1枚のみではなく複数枚の用紙が給紙されることがあるからである。分離板13は例えばPETフィルム、ステンレス板等であり、その表面は平滑に構成されることが多いが、表面をサンドブラスト加工等により粗くしてもよい。
【0024】
内側ガイド10は、案内手段の一部として第1の搬送路の内側に配置される。本実施の形態の場合用紙S1は、給紙コロ9と分離板13とにより1枚のみに分離・給紙されて、本体ケース2、内側ガイド10、フラッパガイド11、上ガイド12等の案内手段により案内されてレジストローラ対4に到る。本実施の用紙反転装置は上述の第1の搬送路を形成する各要素により構成されるが、これにより用紙S1は180°近い反転、いわゆるUターン搬送され、レジストローラ対4で斜行補正された後、画像形成部である印字ヘッド5に搬送される。内側ガイド10は、本体ケース2、フラッパガイド11、上ガイド12等と協働することで用紙のUターン搬送路を形成して、用紙搬送の案内している。
【0025】
用紙方向転換手段であるフラッパガイド11は、第1の搬送路の外側で、本体ケース2内に配置された回転軸11aを中心として搖動可能に軸支された用紙案内手段であって、回転軸11aから第1の搬送路の用紙搬送方向Fに対して上流方向に伸設された用紙押し込み部11bと、回転軸11aから第1の搬送路の用紙搬送方向に対して下流側に伸設された用紙ガイド部11d等の形状を有している。例えば、上記用紙押込み部11b形状と上記用紙ガイド部11d形状とを上記回転軸11a付近で合流させて、略「く」の字型とした形状である。用紙ガイド11は、1)用紙S1が第1の搬送路中にないとき又は用紙先端がレジストローラ対4に到達する前の待機位置であって、用紙押し込み部11bが第1の搬送路中に突出しない第1の位置と、2)用紙先端がレジストローラ対4に突き当たった後の用紙S1の腰により押されてループ空間A付近の搬送路を広げる方向に移動した第2の位置、との1)〜2)の間を揺動可能に回転軸11aで支持されている。図中、二点鎖線の位置が第1の位置、実線の位置が第2の位置である。
【0026】
なお、用紙押し込み部11bは、フラッパガイド11が第1の位置にあるときには、本体ケース2の一部内に退避して、第1の搬送路中に突出しない位置にある。また、フラッパガイド11が第2の位置にあるとき、用紙押し込み部11bは本体ケース2の一部から第1の搬送路を塞がない程度に突出してくる。回転軸11aの位置及び用紙押込み部11bの形状は、フラッパガイド11が第1の位置から第2の位置へ回転移動する際に、用紙押込み部11bの用紙S1との当接部の移動軌跡が少なくとも用紙S1を下流方向に押込む方向の移動成分を含むような位置、形状とされている。このような構成とすることで、フラッパガイド11が用紙S1の腰に押されて第1の位置から第2の位置に移動する際、用紙押し込み部11bが第1の搬送路中に突出してきて用紙S1と当接した位置で用紙S1を下流側(すなわちレジストローラ対4方向)に押し込む。
【0027】
ここで、用紙押し込み部11bの用紙S1との当接部は、摺動性の高い特性であることが望ましい。例えば、ポリアセタールやポリフッ化エチレン(商品名テフロン(登録商標))等の高摺動材質が好ましい。または、図3に示すように当接部分をコロ11e等の回転体として、接触時の用紙搬送抵抗を小さくしてもよい。
【0028】
また、用紙ガイド部11dの第1の搬送路と反対側の通紙面11cを第2の搬送路とし、用紙ガイド部11dの先端部付近で第2の搬送路とカセット3からの第1の搬送路とを合流させるように構成すれば、第2の搬送路として、例えば手差し給紙搬送路等を別途設けることも可能である。
【0029】
また、フラッパガイド11の位置を図示しないセンサ等で検出することで用紙のタイミング取りに用いたり、最適な用紙押込みの際の搬送量を適宜制御するために用紙ループ量を検出したりすることに用いてもよい。このようにすることで、通常搬送路中に配置される用紙センサと共用することもできる。
【0030】
案内手段の一部を構成する上ガイド12は、用紙搬送路の上方、Uターン部の外側に配置される。また、上ガイド12は、フラッパガイド11及び内側ガイド10に案内されながら給紙コロ9により搬送された用紙S1を受け取り、レジストローラ対4のニップ付近まで円滑に用紙先端を案内するように構成されている。
【0031】
次に、用紙S1が給紙コロ9により給紙されて搬送経路を搬送される際のフラッパガイド11の作用について説明する。図示の二点鎖線で示すフラッパガイド11が第1の位置にあるときには、フラッパガイド11の用紙押込み部11bは本体ケース2の搬送路に突出しない位置にある。フラッパガイド11はその自重の作用若しくは図示しない付勢手段により第1の位置に向けて付勢されており、用紙S1がない、または用紙先端がフラッパガイド付近を通過するときには、第1の位置から揺動しないように構成されている。用紙先端はフラッパガイド11の用紙ガイド部11d内側の面に案内されて上ガイド12に受け渡される。これにより、用紙先端は用紙ループを作らない最短距離でレジストローラ対4に到達する。そのため、斜行補正前までの動作における生産性が高い。
【0032】
その後給紙コロ9により用紙S1がさらに搬送されて、停止中のレジストローラ対4に用紙先端が突き当たると、第1の搬送路中の用紙S1が撓み、フラッパガイド11の付勢力が用紙S1の腰に負けて用紙ガイド部11dが押されて第2の位置へ移動する。図示の実線で示すフラッパガイド11が第2の位置にあるとき、すなわちフラッパガイド11の用紙ガイド部11dが搬送路から退避すると、第1の搬送路には図示のループ空間Aが形成される。このループ空間Aに用紙S1のたわみによるループが形成されることになる。さらに用紙先端がレジストローラ対4に突き当たってから用紙S1が給紙コロ9により所定量搬送されると、所定の用紙ループがループ空間Aに形成されると同時に、フラッパガイド11の用紙押込み部11aが第1の搬送路中に突出してきて用紙S1と当接し、用紙S1をレジストローラ対4のニップに押込むように作用する。これにより給紙コロ9よりもレジストローラ対4に近い位置で用紙S1を押込む力を発生させ、給紙コロ9と用紙押込み部11aとによって下流側に押込まれた用紙先端はレジストローラ対4のニップ付近で整列するため、用紙先端が斜行していても先端が搬送方向とほぼ直角をなすように補正される。
【0033】
通常、搬送手段である給紙コロ9から下流の搬送手段(この場合にはレジストローラ対4)までは距離が離れている上に、本実施の形態のように搬送路が180°近い反転経路(Uターン)となる場合、給紙コロ9の搬送力がレジストローラ対4のニップ付近で用紙先端付近までは伝わりにくく、斜行補正が不十分になる可能性がある。また、用紙先端の斜行補正のために用紙ループ空間が上流寄りにある場合には、上流側の搬送手段(この場合には給紙コロ9)の搬送力がループ空間付近の搬送路で吸収されてしまい、同様に斜行補正が不十分になる可能性がある。しかし、本実施の形態では、ループ空間Aが下流寄り、すなわち下流側の搬送手段であるレジストローラ対4の近くに配置してあること、フラッパガイド11が第2の位置にあるときには用紙押込み部11bが用紙S1をレジストローラ対4のニップに押込むように第1の搬送路中に突出してくることで給紙コロ9よりもレジストローラ対4に近い位置で用紙S1を押込む力を発生させることができることとで、用紙先端まで搬送力を有効に作用させることができ、レジストローラ対4での高精度な斜行補正が可能となる。
【0034】
さらにそののち、レジストローラ対4を駆動する図示しないモータ等の駆動源が所定のタイミングで起動し、印字ヘッド5へと搬送され画像が形成される。画像形成された用紙S1は、排紙ローラ対7によって排紙トレイ8に排紙され、印字済の用紙S1から順次積載される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態にかかわるインクジェットプリンタの模式的な全体断面図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかわるインクジェットプリンタの要部拡大図である。
【図3】フラップガイド11の用紙押し込み部11bの他の実施の形態である。
【図4】従来の用紙搬送装置を備えたレーザプリンタの概略構成図である。
【図5】従来の用紙搬送装置を備えたレーザプリンタのレジストローラまでの用紙搬送制御を説明するタイミングチャートである。
【図6】従来の用紙搬送装置において用紙が中間ローラ221まで搬送された状態を示す斜視図である。
【図7】従来の用紙搬送装置を備えたレーザプリンタの動揺自在に軸支されたガイド板230aを示す側面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 インクジェットプリンタ
2 本体ケース
3 カセット
4 レジストローラ対
5 印字ヘッド
6 プラテン
7 排紙ローラ対
8 排紙トレイ
9 給紙コロ
10 内側ガイド
11 フラッパガイド
11a フラッパガイド11の回転軸
11b フラッパガイド11の用紙押し込み部
11c 第2の搬送路を構成するフラッパガイド11の外側の通紙面
11d フラッパガイド11の用紙ガイド部
11e 用紙押し込み部11bのコロ
12 上ガイド
13 分離板
14 スイングアーム
14a スイングアーム14の回転軸
A ループ空間
S 用紙束
S1 最上面の用紙
R 給紙コロ9の回転方向
F 最上面の用紙S1の搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載された用紙から1枚のみを分離して下流行程に搬送する給紙手段と、
前記給紙手段から搬送された前記用紙を下流に案内する案内手段と、
前記案内手段の途中に配置され、待機位置である第1の位置と、前記用紙搬送時に前記用紙を下流に方向転換させながら前記用紙の腰により押されて搬送経路を広げる方向に移動した第2の位置との間を揺動可能に支持され、前記第2の位置にあるとき広がった搬送経路の上流側で前記用紙を下流側に押し込むように作用する用紙押し込み形状を有する用紙方向転換手段と、
前記用紙方向転換手段で方向転換された前記用紙の斜行を補正する斜行補正手段と
を備えたことを特徴とする用紙反転装置。
【請求項2】
前記用紙押し込み形状は、前記用紙方向転換手段に回転可能に軸支されたころであることを特徴とする請求項1記載の用紙反転装置。
【請求項3】
請求項1乃至2記載の用紙反転装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−193317(P2006−193317A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−8951(P2005−8951)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】