説明

用紙搬送装置、画像形成装置、用紙搬送装置の制御方法、および用紙搬送装置の制御プログラム

【課題】用紙の搬送をより効率的に行うことができる、用紙搬送装置を提供する。
【解決手段】用紙搬送装置は、用紙Pを搬送する両面搬送ローラー77と、両面搬送ローラー77により搬送されてきた用紙の搬送方向前部分を、一時的に保持する先端保持部材87と、先端保持部材87で用紙Pが保持された状態で、両面搬送ローラー77よりも下流側にある押し出し部材79により、用紙Pの後部分をその搬送方向と交わる向きに移動させる移動部と、移動部で移動が行われた後に、用紙Pの後部分を先頭として用紙を搬送する反転搬送ローラー81とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、用紙搬送装置、画像形成装置、用紙搬送装置の制御方法、および用紙搬送装置の制御プログラムに関し、特に用紙の搬送方向を変えることができる用紙搬送装置、画像形成装置、用紙搬送装置の制御方法、および用紙搬送装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真式の画像形成装置(スキャナ機能、ファクシミリ機能、複写機能、プリンタとしての機能、データ通信機能、及びサーバ機能を備えたMFP(Multi Function Peripheral)、ファクシミリ装置、複写機、プリンタなど)は、画像を形成する対象である用紙(紙、フィルムなどその素材は問わない)を搬送することで、用紙に画像を形成する。画像形成装置に内蔵される用紙搬送装置、または画像形成装置のオプションとしての用紙搬送装置が存在する。
【0003】
用紙搬送装置として、用紙の両面に画像を形成するために用紙を反転させる両面用紙搬送装置がある。これは、定着装置から所定の送り方向で搬送されてきた用紙をスイッチバックさせる(一旦停止させ、逆方向に搬送させる)ことで、用紙の表裏を逆にするものである。
【0004】
用紙の反転動作は、通常はローラー対を用いることにより、用紙の搬送方向を逆転させる事により達成される。しかし、この方式においては、先行する用紙の反転動作が完了しないと、次の用紙を反転経路内に搬送できないので、用紙間を詰めて生産性を向上させる場合にボトルネックとなる。また、スイッチバックを行う際に、反転経路への用紙の送り込みおよび反転動作を行うためのモータの立ち上げおよび立ち下げ時間も生産性を低下させる原因となっていた。
【0005】
このような問題の解決方法として、下記特許文献1では、用紙を同一経路内でエアーによって移動させることで、用紙方向を反転させる技術が提案されている。より詳しくは、搬送されてきた用紙をエアーにて吸着面に吸着し、それをエアーにて開放すると同時に、対峙して配置された吸着搬送装置側で吸着して用紙を搬送するものである。これにより、用紙の先端と後端とが反転する。
【0006】
下記特許文献2では、静電気力を付与することでシート材を吸着させる吸着ベルトを180度ねじる技術が提案されている。吸着ベルトに用紙を吸着しながら搬送することで、用紙反転時間を短縮させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−64808号公報
【特許文献2】特開2006−103855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上記特許文献1に記載の技術によると、先行する用紙をエアーにより移動させる必要があるため、先行する用紙の移動が完了するまで、次の用紙を反転部に搬入できない。すなわちエアーの送り出しと吸引とを利用して、ベルト間で用紙の移動を行う必要があるため、先行する用紙が全て移動した後でないと後続する用紙を反転部に送り込めない。このため、用紙の搬送時間を縮めるのに限界がある。また、紙の種類や搬送速度などの様々な条件下で、安定した用紙搬送が困難であるという問題がある。
【0009】
一方で特許文献2に記載の技術によると、用紙を180度ねじれたベルトに吸着させ、連続的に反転するため、用紙反転経路が長くなるという問題が生じる。
【0010】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、用紙の搬送をより効率的に行うことができる用紙搬送装置、画像形成装置、用紙搬送装置の制御方法、および用紙搬送装置の制御プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、用紙搬送装置は、用紙を搬送する第1の搬送手段と、前記第1の搬送手段により搬送されてきた用紙の搬送方向前部分を、一時的に保持する保持部と、前記保持部で前記用紙が保持された状態で、前記第1の搬送手段よりも下流側にある押し出し部材により、前記用紙の後部分を前記搬送方向と交わる向きに移動させる移動手段と、前記移動手段で移動が行われた後に、前記用紙の後部分を先頭として用紙を搬送する第2の搬送手段とを備える。
【0012】
好ましくは前記保持部は、前記用紙の搬送方向先端部分を保持し、前記移動手段は、前記用紙の後端が前記第1の搬送手段を通過した後に、前記保持部で保持された用紙の先端部分を支点として前記用紙を回動させる。
【0013】
好ましくは前記移動手段は、初期位置にあった前記押し出し部材を移動させることで前記用紙を押し出し、前記第2の搬送手段の下流にある第3の搬送手段で用紙の搬送が可能となった後に前記押し出し部材を初期位置に戻す。
【0014】
好ましくは前記移動手段は、初期位置にあった前記押し出し部材を移動させることで前記用紙を押し出し、前記第1の搬送手段で前記用紙の次に搬送されてきた用紙が前記押し出し部材に接触しないタイミングで、前記押し出し部材を初期位置に戻す。
【0015】
好ましくは前記第2の搬送手段は、搬送ローラーおよび搬送ベルトのいずれかである。
【0016】
好ましくは前記第2の搬送手段は、ベルトと、そのベルトの両端に配置された2つの駆動ローラーからなる。
【0017】
好ましくは前記第2の搬送手段は、前記用紙を吸引する。
【0018】
好ましくは前記第2の搬送手段は、ファンモータを有し、前記ファンモータにより前記用紙を吸引する。
【0019】
好ましくは前記押し出し部材は、棒状または板状の部材である。
【0020】
好ましくは前記押し出し部材は、第1のローラーであり、前記第2の搬送手段は、前記第1のローラーと対向する位置に設けられる第2のローラーを有し、前記第1のローラーが前記第2のローラーに向けて移動し、それらローラーの間で前記用紙を挟むことで前記第2の搬送手段は前記用紙を搬送する。
【0021】
好ましくは前記第2のローラーは駆動ローラーであり、前記第1のローラーは、前記第2のローラーの従動ローラーである。
【0022】
好ましくは前記保持部は、前記用紙が前記第1の搬送手段により搬送されて来るまでは、所定の位置で待機し、前記用紙の先端が前記保持部の位置まで達したときに、前記用紙の移動と共に前記用紙の移動方向に移動する。
【0023】
好ましくは前記保持部は、前記第2の搬送手段により前記用紙の搬送が開始されたとき、前記用紙の移動と共に前記用紙の移動方向に、所定の位置まで移動する。
【0024】
好ましくは前記第1の搬送手段は、搬送ローラーであり、前記第1の搬送手段である搬送ローラーのニップ地点と、前記保持部の保持位置との間の距離Lは、L>L1+r(但し、L1は前記用紙の搬送方向の長さ、rは第1の搬送手段である搬送ローラーの半径)の関係を満たす。
【0025】
好ましくは前記押し出し部材は、ローラーであり、前記押し出し部材であるローラーの中心位置と、前記保持部に保持されたときの前記用紙の後端との間の用紙搬送方向の距離L2は、L2>(t1+t2)×V1(但し、t1は前記押し出し部材が押し付けのために要する時間、t2は前記押し出し部材が戻るために要する時間、V1は前記第1の搬送手段の用紙搬送速度)の関係を満たす。
【0026】
好ましくは前記押し出し部材は、ローラーであり、前記第2の搬送手段は、搬送ローラーであり、前記第2の搬送手段の下流に設けられる第3の搬送手段であるローラーをさらに備え、前記保持部で前記用紙が保持された後に前記用紙を搬送する速度V2は、V2=V1×(L1+β−L3)/L1(但し、V1は前記第1の搬送手段の用紙搬送速度、L1は前記用紙の搬送方向の長さ、βは前記押し出し部材としてのローラーおよび前記第2の搬送手段としての搬送ローラーのニップ部と、前記第3の搬送手段としてのローラーのニップ部との間の距離、L3は前記用紙とそれに後続する用紙との間隔)の関係を満たす。
【0027】
この発明の他の局面に従うと画像形成装置は、上記いずれかに記載の用紙搬送装置と、前記用紙に画像を形成する画像形成部とを備え、前記画像形成部で画像が形成された用紙を、前記用紙搬送装置によって搬送する。
【0028】
この発明のさらに他の局面に従うと用紙搬送装置の制御方法は、第1の搬送手段により用紙を搬送する第1の搬送ステップと、前記第1の搬送ステップにより搬送されてきた用紙の搬送方向前部分を、一時的に保持する保持ステップと、前記保持ステップで前記用紙が保持された状態で、前記第1の搬送手段よりも下流側にある押し出し部材により、前記用紙の後部分を前記搬送方向と交わる向きに移動させる移動ステップと、前記移動ステップで移動が行われた後に、前記用紙の後部分を先頭として用紙を搬送する第2の搬送ステップとを備える。
【0029】
この発明のさらに他の局面に従うと用紙搬送装置の制御プログラムは、第1の搬送手段により用紙を搬送する第1の搬送ステップと、前記第1の搬送ステップにより搬送されてきた用紙の搬送方向前部分を、一時的に保持する保持ステップと、前記保持ステップで前記用紙が保持された状態で、前記第1の搬送手段よりも下流側にある押し出し部材により、前記用紙の後部分を前記搬送方向と交わる向きに移動させる移動ステップと、前記移動ステップで移動が行われた後に、前記用紙の後部分を先頭として用紙を搬送する第2の搬送ステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0030】
これらの発明に従うと、用紙の搬送をより効率的に行うことができる用紙搬送装置、画像形成装置、用紙搬送装置の制御方法、および用紙搬送装置の制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態の1つにおける画像形成装置を示す断面図である。
【図2】画像形成装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】用紙搬送部20および用紙反転部29を駆動させる回路構成を示すブロック図である。
【図4】図1の用紙搬送部20および用紙反転部29の構成を模式的に示す図である。
【図5】図4の先端保持部材87付近の構成を示す拡大図である。
【図6】図5の各部材の位置関係を示す図である。
【図7】先行する用紙P1とそれに続く用紙P2との位置関係を説明するための図である。
【図8】エンジン制御基板30aのCPU101が実行する用紙反転部29での用紙搬送処理を示すフローチャートである。
【図9】第1の変形例における用紙搬送部20および用紙反転部29の構成を模式的に示す図である。
【図10】第2の変形例における画像形成装置の先端保持部材87付近の構成を示す拡大図である。
【図11】第3の変形例における画像形成装置の先端保持部材87付近の構成を示す拡大図である。
【図12】第4の変形例における画像形成装置の先端保持部材87付近の構成を示す拡大図である。
【図13】第4の変形例における画像形成装置のエンジン制御基板30aのCPU101が実行する、用紙反転部29での用紙搬送処理を示すフローチャートである。
【図14】先端保持部材87を反転ポイントで固定させる場合の画像形成装置のエンジン制御基板30aのCPU101が実行する、用紙反転部29での用紙搬送処理を示すフローチャートである。
【図15】図11の構成において先端保持部材87を用紙の移動にあわせて移動させる場合の画像形成装置のエンジン制御基板30aのCPU101が実行する、用紙反転部29での用紙搬送処理を示すフローチャートである
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態の1つにおける画像形成装置について説明する。
【0033】
画像形成装置は、画像データに基づいて、電子写真方式により用紙に画像をプリント可能である。画像形成装置は、いわゆるタンデム方式で、CMYKの4色の画像を併せてカラー画像を形成することができるように構成されている。
【0034】
[実施の形態]
【0035】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおける画像形成装置を示す断面図である。
【0036】
図を参照して画像形成装置1は、給紙カセット3a,3bと、排紙トレイ5とを備える。画像形成装置1の筐体の内部には、用紙搬送部20、プリント部30、及び制御部(図示せず)などが設けられている。制御部は、CPUやメモリなどで構成されており、画像形成装置1の動作を制御する。
【0037】
この画像形成装置1は、2つの給紙カセット3a,3bを有している。それぞれの給紙カセット3a,3bには、例えば、互いに異なるサイズの用紙(B5サイズ、A4サイズ、及びA3サイズなど)が装てんされている。給紙カセット3a,3bは、画像形成装置1の下部に、画像形成装置1の筐体に抜き差し可能に配置されている。各給紙カセット3a,3bに装てんされた用紙は、印字時に、1枚ずつ給紙カセット3a,3bから給紙され、プリント部30に送られる。なお、給紙カセット3a,3bの数は2つに限られず、それより多くても少なくてもよい。
【0038】
排紙トレイ5は、画像形成装置1の上方に配置されている。排紙トレイ5には、プリント部30により画像が形成された用紙が画像形成装置1の筐体の内部から排紙される。
【0039】
用紙搬送部20は、給紙ローラー、搬送ローラー、排紙ローラー(排出ローラー)25、およびそれらを駆動するモータ(図示せず)などで構成されている。給紙ローラー、搬送ローラー、及び排紙ローラーは、それぞれ、例えば対向する2つのローラーで用紙を挟みながらそのローラーを回動させて用紙を搬送する。給紙ローラーは、給紙カセット3a,3bまたは画像形成装置に設けられた図示しない手差し給紙部から用紙を1枚ずつ給紙する。給紙ローラーにより、用紙が画像形成装置1の筐体の内部に給紙される。搬送ローラーは、給紙ローラーにより給紙された用紙をプリント部30に搬送する。また、搬送ローラーは、定着ローラー(定着装置)45を経由した用紙を排紙ローラー25に搬送する。排紙ローラー25は、搬送ローラーにより搬送された用紙を画像形成装置1の筐体の外部に排出する。排出された用紙は、排紙トレイ5上に堆積される。
【0040】
なお、用紙搬送部20には、用紙反転部29が設けられている。用紙反転部29を用いることにより、用紙に両面印刷を行うことができる。この場合、用紙搬送部20の動作により、定着ローラー45の下流側において、定着ローラー45を経由した用紙が搬送方向を切り替えられ、用紙反転部29に向けて送り込まれる。その後、その用紙は、用紙反転部29を経由し、用紙の搬送経路のうちプリント部30よりも上流側の部位に搬送される。これにより、用紙は、その表裏が反転されてプリント部30に搬送される。したがって、用紙の両面に画像を形成することが可能となる。
【0041】
プリント部30は、4組のプリントヘッド31K,31C,31M,31Y(以下、単にプリントヘッド31と称することがある)と、4色のトナーカートリッジ39K,39C,39M,39Yと、中間転写ベルト41と、2次転写ローラー43と、定着装置45と、光走査装置50などで構成されている。
【0042】
中間転写ベルト41は、環状であり、複数のローラー間に架けわたされている。中間転写ベルト41は、用紙搬送部20に連動して回転する。2次転写ローラー43は、中間転写ベルト41のうち一方のローラーに接触している部分に対向するように配置されている。用紙は、中間転写ベルト41と2次転写ローラー43との間で挟まれながら搬送される。
【0043】
各プリントヘッド31は、感光体ドラム(像担持体の一例)33、現像装置35、クリーナ、及び帯電器などを含んでいる。プリントヘッド31K,31C,31M,31Yは、それぞれ、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)のCMYK各色の画像を形成するために設けられている。プリントヘッド31K,31C,31M,31Yは、中間転写ベルト41の直下に、中間転写ベルト41の回転上流側からその順で並ぶように配置されている。各感光体ドラム33の上方には、感光体ドラム33との間で中間転写ベルト41を挟むように、1次転写ローラー37が配置されている。
【0044】
定着装置(定着ローラー)45は、加熱ローラーおよび加圧ローラーを有している。定着装置45は、加熱ローラーと加圧ローラーとでトナー像が形成された用紙を挟みながら搬送し、その用紙に加熱及び加圧を行う。これにより、定着装置45は、用紙に付着したトナーを溶融させて用紙に定着させ、用紙に画像を形成する。定着装置45を経由した用紙は、排紙ローラー25により画像形成装置1の筐体から排出される。
【0045】
光走査装置50は、プリントヘッド31の下方に配置されている。光走査装置50は、ひとまとまりにユニット化されている。光走査装置50は、各プリントヘッド31の感光体ドラム33上にレーザ光を走査する。光走査装置50は、下面側が画像形成装置1のフレーム(支持部材の一例)に支持されている。
【0046】
光走査装置50は、CMYKの各色別の画像データに基づいて、帯電器により一様に帯電した各感光体ドラム33上に潜像を形成する。現像装置35は、各感光体ドラム33に各色別のトナー像を形成する。1次転写ローラー37は、各感光体ドラム33上のトナー像を中間転写ベルト41に転写し、中間転写ベルト41上に、用紙に形成するトナー像の鏡像を形成する(1次転写)。中間転写ベルト41上には、黒色、シアン、マゼンタ、イエローの順に各色のトナー像が形成される。その後、2次転写ローラー43により、中間転写ベルト41に形成されたトナー像が用紙に転写され、用紙上にトナー像が形成される(2次転写)。
【0047】
用紙反転部29の搬送経路は、用紙搬送方向を切り替える反転機構を有する。反転動作前における搬送される用紙の先端が、反転動作により用紙の後端に切り替わるポイントを「反転ポイント」と呼ぶ。図1では画像形成装置1の右下部分に反転ポイントが設けられている。
【0048】
先行する用紙とそれに後続する用紙は、搬送ローラーにより所定の間隔を空けて連続的に搬送される。用紙は、搬送ローラーにて反転ポイントまで搬送される。先行する用紙の後端が反転ポイント前にある最後の搬送ローラーを通過した後に、その搬送ローラーの下流側で第1の位置(初期位置)にある押し出し部材79が移動を行う。押し出し部材79は、先行する用紙の先端を支点として用紙を回動させて、用紙を反転経路側に押し込む。
【0049】
反転経路では、用紙の後端から搬送を行うこととなる。反転経路下流側の反転ローラー(反転搬送ローラー)に先行する用紙が噛み込んだ後、反転ポイント前にある最後の搬送ローラーで搬送中である、後続する用紙の先端が押し出し部材に当接しないタイミングで、押し出し部材は第1の位置(初期位置)に戻される。
【0050】
この実施の形態では、押し出し部材はローラーであるものとするが、棒状の部材や板状の部材などであってもよい。反転経路には、押し出し部材であるローラーと対峙する位置にローラーが設けられる。押し出し部材であるローラーがそれに対峙する位置にあるローラーに当接されると、それらローラーは駆動源により駆動され、用紙を反転搬送する。
【0051】
図2は、画像形成装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0052】
図を参照して制御部200は、CPU221と、ROM223と、RAM225と、HDD227と、インターフェイス部229とを有している。制御部200は、操作部11、プリント部30、およびスキャン部40などと共にシステムバスに接続されている。これにより、制御部200と画像形成装置1の各部とが、信号を送受可能に接続されている。
【0053】
HDD227は、インターフェイス部229を介して外部から送られたジョブ(JOB)のデータや、スキャン部40で読み取った画像データなどを記憶する。また、HDD227は、画像形成装置1の設定情報や、画像形成装置1の種々の動作を行うための制御プログラム(プログラム)227aなどを記憶する。HDD227は、1つのクライアントPC又は複数のクライアントPCなどから送信された複数のジョブを記憶可能である。
【0054】
インターフェイス部229は、例えば、NIC(Network Interface Card)などのハードウェア部と、所定の通信プロトコルで通信を行うソフトウェア部とが組み合わされて構成されている。インターフェイス部229は、画像形成装置1をLANなどの外部ネットワークに接続する。これにより、画像形成装置1は、外部ネットワークに接続されているクライアントPCなどの外部装置と通信可能になる。図において、画像形成装置1は、PC71やPC73などが接続された外部ネットワークに接続されている。画像形成装置1は、PC71,73からジョブを受信可能である。また、画像形成装置1は、スキャン部40で読み取った画像データを、PC71に送信したり、メールサーバなどを介してE−mailにより送信したりすることができる。なお、インターフェイス部229は、無線通信により外部ネットワークに接続可能に構成されていてもよい。また、インターフェイス部229は、例えば、USB(Universal Serial Bus)インターフェイスであってもよい。この場合、インターフェイス部229は、通信ケーブルを介して接続された外部装置と画像形成装置1とを通信可能にする。
【0055】
CPU221は、ROM223、RAM225、またはHDD227などに記憶された制御プログラム227aなどを実行することにより、画像形成装置1の種々の動作を制御する。CPU221は、操作部11から操作信号が送られたり、PC71などから操作コマンドが送信されたりすると、それらに応じて所定の制御プログラム227aを実行する。これにより、ユーザによる操作部11の操作などに応じて、画像形成装置1の所定の動作が行われる。
【0056】
ROM223は、例えばフラッシュROM(Flash Memory)である。ROM223には、画像形成装置1の動作を行うために用いられるデータが記憶されている。ROM223には、HDD227と同様に、種々の制御プログラムや、画像形成装置1の機能設定データなどが記憶されていてもよい。CPU221は、所定の処理を行うことにより、ROM223からのデータの読み込みや、ROM223へのデータの書き込みを行う。なお、ROM223は、書換え不可能なものであってもよい。
【0057】
RAM225は、CPU221のメインメモリである。RAM225は、後述のようにCPU221が制御プログラム227aを実行するときに必要なデータを記憶するのに用いられる。
【0058】
スキャン部40は、スキャナ機能を実行し、原稿から画像データを読み取る。スキャン部40により読み取られた画像データは、CPU221によりアプリケーションデータ形式に変換され、HDD227などに記憶される。CPU221は、HDD227などに記憶された画像データを、PC71,73などに送信可能である。
【0059】
図3は、用紙搬送部20および用紙反転部29を駆動させる回路構成を示すブロック図である。
【0060】
操作部(操作パネル)11内には、ユーザの操作に基づく情報を処理する制御部11aが備えられている。制御部200内にはコントローラー基板200aが設けられ、その中の制御回路200bが各種情報を処理する。
【0061】
プリント部30内には、エンジン制御基板30aが設けられている。エンジン制御基板30aは、RAMなどで構成されるデータ記憶部103と、制御部(CPU)101と、制御部101からの速度信号(クロック)に基づきステッピングモータの駆動を行なうドライバIC105,107,109とを備えている。
【0062】
操作部11で生じた操作情報(データ)は、制御部11aにより制御回路200bに送信される。この情報に基づきCPU101は、各負荷の制御を行なう。より詳しくは、CPU101は、ユーザの設定モードに応じて各ステッピングモータを所定のタイミングと速度で駆動する。またCPU101は、各種センサ117からの信号に従い、モータを動作させる。
【0063】
エンジン制御基板30aには、先端保持部材を駆動するステッピングモータ111と、押し出し部材を駆動するステッピングモータ113と、複数の搬送ローラー(両面搬送ローラーや反転搬送ローラーなど)を含む搬送部材を駆動するステッピングモータ115と、センサSEを含むセンサ117と、ファンモータ119とが接続される。
【0064】
ファンモータ119は、反転搬送ベルトが用いられているときにその内部に存在するファンを駆動するモータであり、CPU101により駆動される。
【0065】
図4は、図1の用紙搬送部20および用紙反転部29の構成を模式的に示す図である。
【0066】
図を参照して、用紙は画像形成装置1の下部にあるピックアップローラー61により1枚ずつ取り出され、機内を搬送される。片面印刷を行なう場合に用紙の搬送を行なうローラーは、上流側から順に、給紙ローラー63、縦搬送ローラー65、縦搬送ローラー67、縦搬送ローラー69、タイミングローラー71、2次転写ローラー43、定着ローラー45、中間ローラー47、および排出ローラー25である。
【0067】
両面印刷を行なう場合には、中間ローラー47の下流に設けられた用紙経路切替ポイントの動作により、片面の印刷が行なわれた用紙は、両面搬送ローラー73、両面搬送ローラー75、および両面搬送ローラー77により先端保持部材87へ向けて送られる。
【0068】
先端保持部材87でその先端が保持された用紙Pに対して、押し出し部材79が移動することでその後端部分を図中の左側に移動させる。移動が完了すると、反転搬送ローラー81、および反転搬送ローラー83を経て用紙はスイッチバック搬送され、タイミングローラー71へ送られる。その後、2次転写ローラー43、定着ローラー45、中間ローラー47、および排出ローラー25により用紙は搬送されることで、裏面の印刷が完了する。
【0069】
押し出し部材79の初期位置は点線の円で示されている。後端が両面搬送ローラー77のニップ部を通過した後の用紙Pは、その先端が先端保持部材87によって保持される。その後、押し出し部材79が実線の円で示される方向に移動することで、用紙Pは先端を軸として回動する。
【0070】
押し出し部材79は、従動ローラーにより構成され、反転搬送ローラーの機能も有している。反転搬送ローラー81は、ステッピングモータ115により駆動される駆動ローラーである。押し出し部材79が用紙Pを介して反転搬送ローラー81に接すると、反転搬送ローラー81の駆動力により、用紙Pは反転搬送ローラー83に噛み込まれるまで上方に移動する。
【0071】
図4における反転搬送ローラー81、および反転搬送ローラー83により、反転経路が構成される。
【0072】
図5は、図4の先端保持部材87付近の構成を示す拡大図である。
【0073】
図に示されるように、両面搬送ローラー77、反転搬送ローラー81、および反転搬送ローラー83は、ステッピングモータ115により駆動される。押し出し部材79の図中左右方向(用紙搬送方向に交わる方向、または用紙搬送方向に直行する方向)の移動は、ステッピングモータ113により行なわれる。図中においては、押し出し部材79の初期位置(最も右の位置)が点線の円で示されており、左へ移動中の位置が実線の円79’で示されている。押し出し部材79は、ステッピングモータ113の正転/反転動作にあわせて往復する。押し出し部材79が図中右の位置にある場合には、用紙は図5の上から下に送られ、押し出し部材79が図中左の位置にある場合には、その用紙は図5の下から上に送られる。
【0074】
先端保持部材87は、ステッピングモータ111により上下方向に駆動される。先端保持部材87は、ステッピングモータ111の正転/反転動作にあわせて往復する。用紙の搬送方向のサイズ(長さ)に応じて、先端保持部材87の位置は制御される。具体的には、用紙が搬送されてきてその先端(図5では下になる端部)が先端保持部材87に当接するときに、その後端(図5では上になる端部)が両面搬送ローラー77のニップ部から離れ、かつ押し出し部材79が右から左に移動したときに用紙が反転搬送ローラー81と押し出し部材79とで構成されるニップ部に挟まれる位置に、先端保持部材87が位置するよう、ステッピングモータ111は駆動される。
【0075】
図6は、図5の各部材の位置関係を示す図である。
【0076】
図中においては、実線の円により押し出し部材79が最も左にあり、反転搬送ローラー81とでニップ部を構成している状態が示されている。
【0077】
用紙Pは、その先端が先端保持部材87で保持される位置(最下位置)にある状態を示している。両面搬送ローラー77により用紙が図の下方向に移動する速度である用紙搬送速度をV1とし、反転経路を運ばれる用紙の移動速度である反転用紙搬送速度をV2とする。用紙の搬送方向の長さ(用紙長)をL1とする。
【0078】
両面搬送ローラー77の半径をr、両面搬送ローラー77の中心(用紙のニップ地点)から先端保持部材87までの距離(反転ポイントまでの距離)をLとする。両面搬送ローラー77の下端部から図6の用紙Pの後端までの搬送方向の距離を、マージンα1とする。反転搬送ローラー81と押し出し部材79とで構成されるニップ部から、反転搬送ローラー83のニップ部までの距離をβとする。
【0079】
また押し出し部材79が右方向に移動し、用紙を押し付けるまでに必要とされる時間(押し付けのために要する時間)をt1、押し出し部材79が初期位置に戻るために要する時間をt2とする。用紙Pとそれに後続する用紙との間隔をL3とする。図6の用紙Pの後端から押し出し部材79の中心部までの搬送方向の距離を、L2とする。
【0080】
この場合、本実施の形態では、
【0081】
L>L1+r ・・・(1)
【0082】
L2>(t1+t2)×V1 ・・・(2)
【0083】
V2=V1×(L1+β−L3)/L1 ・・・(3)
【0084】
の関係が成立する。マージンを式に算入すると、上記式(1)および(2)は、
【0085】
L=L1+r+α1 ・・・(1’)
【0086】
L2=(t1+t2+α2)×V1 ・・・(2’)
【0087】
(但し、α2は時間的なマージン)
【0088】
として表現される。
【0089】
上記式(1)の反転ポイントの位置を示す数値Lは、用紙が先端保持部材87に保持された後、押し出し部材79で用紙Pを左方向に押し出すのに支障のない部材の位置関係を定めるためのものである。
【0090】
上記式(2)の押し出し部材79の位置を示す数値L2は、後続の用紙の搬送に支障のないように、押し出し部材79の位置を定めるためのものである。
【0091】
上記(3)の数値V2は、後続の用紙が先行する用紙に接することがないように、反転された用紙の速度を定めるためのものである。
【0092】
図7は、先行する用紙P1とそれに続く用紙P2との位置関係を説明するための図である。
【0093】
図においては(A)〜(F)の順に時系列で用紙の搬送状況が示されている。搬送される用紙P1の原稿サイズはA4Y(A4サイズの用紙の横送り、すなわち用紙の短辺が搬送方向と平行な状態で搬送されるA4サイズ)であるものとする。
【0094】
(A)は、両面搬送ローラー77の回転によって用紙P1を下方向に搬送している状態を示している。両面搬送ローラー77の直下にあるセンサSEは、(A)の状態では用紙P1の通過を検出して、オンとなっている。押し出し部材79は、用紙P1の通行を妨げないように、初期位置(右端)で待機している。この状態で反転搬送ローラー81および83は回転駆動されていてもよいし、反転経路に用紙P1が送られたとき、または送られる直前に回転駆動を開始してもよい。
【0095】
その後(B)、(C)に示されるように用紙P1は、その先端が先端保持部材87(反転ポイント)によって支持される位置まで下向きに移動する。用紙P1の後端がセンサSEの位置を通過すると、(D)に示されるように押し出し部材79が左に移動し、用紙P1をその先端を中心として反時計回りに回動させる。押し出し部材79は、反転搬送ローラー81との間で用紙を挟む位置まで移動する。押し出し部材79は従動ローラーにより構成され反転搬送ローラーの機能も有しているため、用紙が挟まれると(E)に示されるように、用紙後端側を進行方向として反転搬送動作が行われる。このとき、用紙P1が反転搬送ローラー83のニップ部に挟まれると、押し出し部材79は待避動作(右方向への移動)を開始し、その後初期位置へ戻る。
【0096】
なお、上述の押し出し部材79の左方向への移動が開始された後に、(D)に示されるように後続の用紙P2が両面搬送ローラー77のニップ部に挟まれ、反転ポイントに向けて搬送される。押し出し部材79が初期位置に待避する前に、両面搬送ローラー77によって用紙P2が送り込まれる。そして(E)、(F)で示されるように待避する押し出し部材79に衝突しないタイミングで、用紙P2は反転ポイントに向けて搬送される。
【0097】
また(E)、(F)に示されるように、用紙P1とP2とは、すれ違いながら(向かい合いながら、互いに逆の方向に)移動する。これにより、用紙搬送のスペースを小さくし、用紙搬送の効率・スピードを高めることができる。
【0098】
図8は、エンジン制御基板30aのCPU101が実行する用紙反転部29での用紙搬送処理を示すフローチャートである。
【0099】
図を参照して、ステップS101においてステッピングモータ115を駆動することで、搬送ローラー群(両面搬送ローラー77、反転搬送ローラー81および82を含む、搬送にかかるローラー群)の駆動を開始する。ステップS101においてステッピングモータ111を駆動することで、先端保持部材87を所定の位置に配置する。この配置においては、制御回路200bから送られてきた用紙のサイズや用紙の向きに関する情報をCPU101で処理することで、搬送される用紙を反転させるのに最もふさわしい先端保持部材87の位置が決定される。その位置に先端保持部材87が位置するよう、ステッピングモータ111が制御される。
【0100】
ステップS105において、用紙の後端がセンサSEの位置を通過したかが判定され、通過するまで待機する。通過したのであればステップS107において、ステッピングモータ113を駆動することで、押し出し部材79の初期位置からの移動を開始させる。また、移動タイマーのカウントを開始する。
【0101】
ステップS109において、移動タイマーが所定値になったかが判定される。ここでの所定値とは、押し出し部材79が用紙を反転搬送ローラー81との間で挟むことができるようになるまでに要する値(押し出し部材79の移動に必要な時間)をいう。
【0102】
ステップS109でYESとなると、ステップS111において押し出し部材79の移動を終了させる。また移動タイマーをリセットし、用紙位置タイマーのカウントを開始する。
【0103】
ステップS113において、用紙位置タイマーが所定値になったかが判定される。ここでの所定値とは、押し出し部材79と反転搬送ローラー81とが用紙の端部を反転搬送ローラー83のニップ部まで送るのに要する値(押し出し部材79を待機させるべき時間)をいう。
【0104】
ステップS113でYESとなると、ステップS115において用紙位置タイマーをリセットし、移動タイマーのカウントを開始する。また、ステッピングモータ113を駆動することで、押し出し部材79の初期位置へ向けた移動を開始させる。
【0105】
ステップS117において、移動タイマーが所定値になったかが判定される。ここでの所定値とは、押し出し部材79が初期位置に戻るために要する値(押し出し部材79の移動に必要な時間)をいう。
【0106】
ステップS117でYESとなると、ステップS119において押し出し部材79の移動を終了させる。また移動タイマーをリセットする。
【0107】
ステップS121において次の用紙があるかが判定され、YESであればステップS103からの処理を行なう。NOであれば、図8の処理を終了する。
【0108】
[変形例1]
【0109】
図9は、第1の変形例における用紙搬送部20および用紙反転部29の構成を模式的に示す図である。
【0110】
この変形例においては図4で示した構成と比較して、用紙反転部に両面搬送ローラー73および75が設けられていない。中間ローラー47によって搬送された用紙は、直接に両面搬送ローラー77まで搬送される。
【0111】
一方で反転搬送ローラー83とタイミングローラー71との間に、反転搬送ローラー91,93,95が介在している。
【0112】
このような構成によると、用紙反転部29の縦方向長さを短くすることができ、コンパクトに画像形成装置を構成できるという効果がある。
【0113】
[変形例2]
【0114】
図10は、第2の変形例における画像形成装置の先端保持部材87付近の構成を示す拡大図である。
【0115】
ここでは図7と同様に、先行する用紙P1とそれに続く用紙P2との位置関係が示されており、(A)〜(F)の順に時系列で用紙の搬送状況が示されている。
【0116】
本変形例における画像形成装置が上述の画像形成装置と異なる部分は、反転搬送ローラー81と、左側の反転搬送ローラー83との間に、反転搬送ベルト97が架け渡されている部分である。本変形例においては、押し出し部材79は移動により、用紙を介して反転搬送ベルト97と当接する位置まで移動することとなる。
【0117】
本変形例では、押し出し部材79と反転搬送ベルト97との間で用紙をグリップすることができ、(E)、(F)に示されるように反転搬送ベルト97を用いて用紙を搬送することができるため、用紙の搬送が安定するという効果がある。
【0118】
なお、反転搬送ベルト97のみで用紙を搬送することができ、押し出し部材79との間で用紙をニップする必要がないのであれば、反転搬送ベルト97による用紙の搬送が開始された直後(または、押し出し部材79により用紙を反転搬送ベルト97側に移動させた直後)に、押し出し部材79の初期位置への退避を開始させても良い。
【0119】
[変形例3]
【0120】
図11は、第3の変形例における画像形成装置の先端保持部材87付近の構成を示す拡大図である。
【0121】
ここでは図10と同様に、先行する用紙P1とそれに続く用紙P2との位置関係が示されており、(A)〜(F)の順に時系列で用紙の搬送状況が示されている。
【0122】
本変形例における画像形成装置が図10の画像形成装置と異なる部分は、反転搬送ベルト97に多数の孔が形成されており、その孔から空気を透過させることができるように反転搬送ベルト97が形成されている点である。また、環状に形成されている反転搬送ベルト97の中に、空気を吸引するファン203が設けられている。ファン203は、ファンモータ119により回転し、その回転はCPU101が制御する。
【0123】
さらに本変形例においては、押し出し部材201として棒状、または用紙の搬送方向に対して直交する方向の長さをカバーする板状の部材が用いられている。なお押し出し部材は、図4〜7で示したような従動ローラーであってもよい。
【0124】
この変形例においても、用紙の後端がセンサSEの位置を通過すると、押し出し部材201が図面左に移動し、用紙の後端を反転搬送ベルト97側に送り出す。ファン203の吸引力により用紙は反転搬送ベルト97に引きつけられ、吸着される。その状態で用紙は反転搬送ローラー83まで運ばれ、それ以降の下流での用紙搬送が行われる。
【0125】
[変形例4]
【0126】
図12は、第4の変形例における画像形成装置の先端保持部材87付近の構成を示す拡大図である。
【0127】
ここでは図7と同様に、先行する用紙P1とそれに続く用紙P2との位置関係が示されており、(A)〜(F)の順に時系列で用紙の搬送状況が示されている。
【0128】
本変形例における画像形成装置が図7の画像形成装置と異なる部分は、用紙の搬送にあわせて先端保持部材87を移動させ、先端保持部材87で用紙の先端部分を保持しながら(または先端保持部材87と用紙の先端部分との距離を1cm〜数mm程度の間隔に保ちながら)用紙の反転動作を行う点である。
【0129】
具体的には、先端保持部材87の初期位置は、用紙の反転ポイントと両面搬送ローラー77との中間位置とされる(または両面搬送ローラー77側に最も近くなる位置を初期位置としてもよい)。
【0130】
先端保持部材87は、初期位置と反転ポイントとの間を往復運動する。初期位置と反転ポイントとは、用紙のサイズや方向に関する情報をCPU101が制御回路200bから受け取ることで決定される。
【0131】
(A)に示されるように、センサSEが用紙P1の先端の通過を検出した後、所定の時間の経過を計時することで、CPU101は、先端保持部材87の初期位置に用紙P1の先端部が達したことを判定する。その後(B)に示されるように、反転ポイントの位置まで先端保持部材87は用紙P1の先端部分と共に移動する。(C)で示されるように、反転ポイントは用紙のサイズや方向により変更される。
【0132】
用紙P1の後端がセンサSEの部分を通過した後に、(D)で示されるように押し出し部材79は図面の左方向へ移動し、反転搬送ローラー83による用紙P1の搬送が可能となった後に、(E)で示されるように押し出し部材79は初期位置へ戻る。また、先端保持部材87は、用紙の端部の移動にあわせて初期位置まで移動する。ここで(F)で示されるように次の用紙P2の反転の作業が開始される。
【0133】
図13は、第4の変形例における画像形成装置のエンジン制御基板30aのCPU101が実行する、用紙反転部29での用紙搬送処理を示すフローチャートである。
【0134】
図におけるステップS101、S103、およびS107〜S121での処理は、図8のフローチャートにおける処理と同様であるため、ここでの説明を繰り返さない。図13のフローチャートではステップS105において、用紙の先端部分のセンサSEの通過と、後端部分のセンサSEの通過とが判定される。用紙の後端部分がセンサSEの位置を通過したときに、上述のようにステップS107からの処理が実行される。
【0135】
また、用紙先端部分がセンサSEの位置に達したときに、ステップS151からの処理が実行される。
【0136】
ステップS151においては、先端タイマーのカウントを開始する。ステップS153において先端タイマーが所定値に達したかが判定される。この所定値は、用紙の先端位置が先端保持部材87の初期位置に達するまでの値である。ステップS153でYESとなれば、ステップS155において先端タイマーをリセットし、先端保持部材87を反転ポイントに向けて移動させる。また先端移動タイマーのカウントを開始する。
【0137】
ステップS157において、先端移動タイマーが所定値に達したかが判定される。この所定値は、用紙の先端位置および先端保持部材87が反転ポイントに達するまでの値である。ステップS157でYESとなれば、ステップS159において先端移動タイマーをリセットし、先端保持部材87を初期位置に向けて移動させる。また中間タイマーのカウントを開始する。
【0138】
ステップS161において、中間タイマーが所定値に達したかが判定される。この所定値は、用紙の先端位置および先端保持部材87が初期位置に達するまでの値である。ステップS161でYESとなれば、ステップS163において中間タイマーをリセットし、先端保持部材87を初期位置で停止させる。
【0139】
なお、用紙の先端位置の移動速度と先端保持部材87の移動速度とは同じである。
【0140】
[変形例5]
【0141】
なお、第4の変形例のように先端保持部材87を用紙先端の移動にあわせて移動させず、先端保持部材87を反転ポイントで固定させることとする場合のフローチャートは、以下のようになる。
【0142】
図14は、先端保持部材87を反転ポイントで固定させる場合の画像形成装置のエンジン制御基板30aのCPU101が実行する、用紙反転部29での用紙搬送処理を示すフローチャートである。
【0143】
図におけるステップS101、S103、およびS107〜S121での処理は、図8のフローチャートにおける処理と同様であるため、ここでの説明を繰り返さない。図13のフローチャートではステップS105において、用紙の先端部分のセンサSEの通過と、後端部分のセンサSEの通過とが判定される。用紙の後端部分がセンサSEの位置を通過したときに、上述のようにステップS107からの処理が実行される。
【0144】
また、用紙先端部分がセンサSEの位置に達したときに、ステップS155’からの処理が実行される。
【0145】
ステップS155’において、先端保持部材87を次に運ばれてくる用紙のサイズ、方向に合わせた反転ポイントに向けて移動させる。また先端移動タイマーのカウントを開始する。
【0146】
ステップS157’において、先端移動タイマーが所定値に達したかが判定される。この所定値は、先端保持部材87が反転ポイントに達するまでの値である。ステップS157’でYESとなれば、ステップS159’において先端移動タイマーをリセットし、先端保持部材87を初期位置に向けて移動させる(または先端保持部材87を初期位置に移動させずに、その場で待機させてもよい)。
【0147】
[変形例6]
【0148】
図11の構成においても、用紙の移動と共に先端保持部材87を移動させるようにしてもよい。
【0149】
図15は、図11の構成において先端保持部材87を用紙の移動にあわせて移動させる場合の画像形成装置のエンジン制御基板30aのCPU101が実行する、用紙反転部29での用紙搬送処理を示すフローチャートである。
【0150】
この例では図11のファン203により用紙を吸引することができるため、用紙が反転搬送ローラー83のニップに挟まれるまで、押し出し部材201を待機させる必要がない。このため、本実施の形態においては、図13のフローチャートと比較してステップS111〜S115での用紙位置タイマーに関連する処理を無くしている。
【0151】
具体的には、図15のステップS111においては、押し出し部材201の移動が終了し、移動タイマーがリセットされる。その後すぐにステップS115で押し出し部材201の初期位置へ向けた移動が開始され、移動タイマーのカウントが開始される。
【0152】
これにより、押し出し部材201は、図11の左に移動して用紙を反転搬送ベルト97に吸着させると、即座に右に待避する。このような処理により、用紙同士の搬送間隔をより短くすることができる。
【0153】
[実施の形態における効果]
【0154】
以上のようにして、画像形成装置における両面用紙搬送部において、定着装置から搬送されてきた用紙を移動部材にて移動させた後、逆の送り方向へ搬送させることができる。この逆の方向への搬送においては、用紙は次の用紙とすれちがいながら運ばれるので、用紙間隔を短縮することができる。
【0155】
また、ローラー等の部材で用紙後端を押すことで経路間の移動を行っているため、後続する用紙の搬送動作を止めずに、用紙の反転を行う事ができる。すなわち、先行用紙の後端さえ移動すれば、次の用紙を入れることができるので、用紙間隔をより短縮することができる(反転動作時の用紙間の待ち時間を解消する事で、用紙間隔を短縮することができる)。
【0156】
さらに、用紙を部材により押して移動させるので、用紙移動が安定する(移動を確実に行う事ができる)という効果がある。また、用紙経路を従来の技術と同等にしたまま、高速反転が可能になる。
【0157】
さらに、用紙搬送動作を紙間で止めずに行う事で、モータの立ち上げ/立ち下げ時間の短縮が可能となる。
【0158】
[その他]
【0159】
画像形成装置は、モノクロ/カラーの複写機、プリンタ、ファクシミリ装置やこれらの複合機(MFP)などいずれであってもよい。
【0160】
また、上述の実施の形態における処理を実行するプログラムを提供することもできるし、そのプログラムをCD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスク、ROM、RAM、メモリカードなどの記録媒体に記録してユーザに提供することにしてもよい。また、プログラムはインターネットなどの通信回線を介して、装置にダウンロードするようにしてもよい。
【0161】
なお、上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0162】
1 画像形成装置
20 用紙搬送部
25 排出ローラー
29 用紙反転部
33 感光体ドラム(像担持体の一例)
50 光走査装置
41 中間転写ベルト
43 2次転写ローラー
45 定着ローラー
47 中間ローラー
61 ピックアップローラー
63 給紙ローラー
65,67,69 縦搬送ローラー
71 タイミングローラー
73,75,77 両面搬送ローラー
79 押し出し部材
81,83 反転搬送ローラー
87 先端保持部材
97 反転搬送ベルト
111,113,115 ステッピングモータ
201 棒状または板状の押し出し部材
203 ファン
P 用紙
P1 先行する用紙
P2 用紙P1に後続する用紙
SE センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を搬送する第1の搬送手段と、
前記第1の搬送手段により搬送されてきた用紙の搬送方向前部分を、一時的に保持する保持部と、
前記保持部で前記用紙が保持された状態で、前記第1の搬送手段よりも下流側にある押し出し部材により、前記用紙の後部分を前記搬送方向と交わる向きに移動させる移動手段と、
前記移動手段で移動が行われた後に、前記用紙の後部分を先頭として用紙を搬送する第2の搬送手段とを備えた、用紙搬送装置。
【請求項2】
前記保持部は、前記用紙の搬送方向先端部分を保持し、
前記移動手段は、前記用紙の後端が前記第1の搬送手段を通過した後に、前記保持部で保持された用紙の先端部分を支点として前記用紙を回動させる、請求項1に記載の用紙搬送装置。
【請求項3】
前記移動手段は、初期位置にあった前記押し出し部材を移動させることで前記用紙を押し出し、前記第2の搬送手段の下流にある第3の搬送手段で用紙の搬送が可能となった後に前記押し出し部材を初期位置に戻す、請求項1または2に記載の用紙搬送装置。
【請求項4】
前記移動手段は、初期位置にあった前記押し出し部材を移動させることで前記用紙を押し出し、前記第1の搬送手段で前記用紙の次に搬送されてきた用紙が前記押し出し部材に接触しないタイミングで、前記押し出し部材を初期位置に戻す、請求項1から3のいずれかに記載の用紙搬送装置。
【請求項5】
前記第2の搬送手段は、搬送ローラーおよび搬送ベルトのいずれかである、請求項1から4のいずれかに記載の用紙搬送装置。
【請求項6】
前記第2の搬送手段は、ベルトと、そのベルトの両端に配置された2つの駆動ローラーからなる、請求項1から5のいずれかに記載の用紙搬送装置。
【請求項7】
前記第2の搬送手段は、前記用紙を吸引する、請求項1から6のいずれかに記載の用紙搬送装置。
【請求項8】
前記第2の搬送手段は、ファンモータを有し、前記ファンモータにより前記用紙を吸引する、請求項7に記載の用紙搬送装置。
【請求項9】
前記押し出し部材は、棒状または板状の部材である、請求項1から8のいずれかに記載の用紙搬送装置。
【請求項10】
前記押し出し部材は、第1のローラーであり、
前記第2の搬送手段は、前記第1のローラーと対向する位置に設けられる第2のローラーを有し、
前記第1のローラーが前記第2のローラーに向けて移動し、それらローラーの間で前記用紙を挟むことで前記第2の搬送手段は前記用紙を搬送する、請求項1から9のいずれかに記載の用紙搬送装置。
【請求項11】
前記第2のローラーは駆動ローラーであり、
前記第1のローラーは、前記第2のローラーの従動ローラーである、請求項10に記載の用紙搬送装置。
【請求項12】
前記保持部は、前記用紙が前記第1の搬送手段により搬送されて来るまでは、所定の位置で待機し、前記用紙の先端が前記保持部の位置まで達したときに、前記用紙の移動と共に前記用紙の移動方向に移動する、請求項1から11のいずれかに記載の用紙搬送装置。
【請求項13】
前記保持部は、前記第2の搬送手段により前記用紙の搬送が開始されたとき、前記用紙の移動と共に前記用紙の移動方向に、所定の位置まで移動する、請求項1から12のいずれかに記載の用紙搬送装置。
【請求項14】
前記第1の搬送手段は、搬送ローラーであり、
前記第1の搬送手段である搬送ローラーのニップ地点と、前記保持部の保持位置との間の距離Lは、
L>L1+r
(但し、L1は前記用紙の搬送方向の長さ、rは第1の搬送手段である搬送ローラーの半径)
の関係を満たす、請求項1から13のいずれかに記載の用紙搬送装置。
【請求項15】
前記押し出し部材は、ローラーであり、
前記押し出し部材であるローラーの中心位置と、前記保持部に保持されたときの前記用紙の後端との間の用紙搬送方向の距離L2は、
L2>(t1+t2)×V1
(但し、t1は前記押し出し部材が押し付けのために要する時間、t2は前記押し出し部材が戻るために要する時間、V1は前記第1の搬送手段の用紙搬送速度)
の関係を満たす、請求項1から14のいずれかに記載の用紙搬送装置。
【請求項16】
前記押し出し部材は、ローラーであり、
前記第2の搬送手段は、搬送ローラーであり、
前記第2の搬送手段の下流に設けられる第3の搬送手段であるローラーをさらに備え、
前記保持部で前記用紙が保持された後に前記用紙を搬送する速度V2は、
V2=V1×(L1+β−L3)/L1
(但し、V1は前記第1の搬送手段の用紙搬送速度、L1は前記用紙の搬送方向の長さ、βは前記押し出し部材としてのローラーおよび前記第2の搬送手段としての搬送ローラのニップ部と、前記第3の搬送手段としてのローラーのニップ部との間の距離、L3は前記用紙とそれに後続する用紙との間隔)
の関係を満たす、請求項1から15のいずれかに記載の用紙搬送装置。
【請求項17】
請求項1から16のいずれかに記載の用紙搬送装置と、
前記用紙に画像を形成する画像形成部とを備え、
前記画像形成部で画像が形成された用紙を、前記用紙搬送装置によって搬送する、画像形成装置。
【請求項18】
第1の搬送手段により用紙を搬送する第1の搬送ステップと、
前記第1の搬送ステップにより搬送されてきた用紙の搬送方向前部分を、一時的に保持する保持ステップと、
前記保持ステップで前記用紙が保持された状態で、前記第1の搬送手段よりも下流側にある押し出し部材により、前記用紙の後部分を前記搬送方向と交わる向きに移動させる移動ステップと、
前記移動ステップで移動が行われた後に、前記用紙の後部分を先頭として用紙を搬送する第2の搬送ステップとを備えた、用紙搬送装置の制御方法。
【請求項19】
第1の搬送手段により用紙を搬送する第1の搬送ステップと、
前記第1の搬送ステップにより搬送されてきた用紙の搬送方向前部分を、一時的に保持する保持ステップと、
前記保持ステップで前記用紙が保持された状態で、前記第1の搬送手段よりも下流側にある押し出し部材により、前記用紙の後部分を前記搬送方向と交わる向きに移動させる移動ステップと、
前記移動ステップで移動が行われた後に、前記用紙の後部分を先頭として用紙を搬送する第2の搬送ステップとをコンピュータに実行させる、用紙搬送装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−197132(P2012−197132A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60978(P2011−60978)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】