説明

用紙搬送装置及び画像形成装置

【課題】用紙の種類にかかわらず、用紙の先端を確実に基準部材へと導くことができるとともに、傾き補正に必要とされる十分な推進力をもって用紙の先端を基準部材に突き当てることができる用紙搬送装置を提供する。
【解決手段】本発明の用紙搬送装置は、用紙搬送路上で用紙の先端が突き当てられる基準部材の上流側で用紙搬送路の隙間を広げる開き方向と当該隙間を狭める閉じ方向に動作する用紙搬送案内部材35と、用紙搬送案内部材35を閉じ方向に付勢する引っ張りコイルバネ43と、用紙搬送案内部材35を閉じ位置に固定した状態で用紙搬送案内部材35の開き動作を規制する規制手段(44,45)と、用紙の先端が用紙搬送案内部材35を通過する前は規制手段によって用紙搬送案内部材35の開き動作を規制しておき、用紙の先端が用紙搬送案内部材35を通過した後は規制手段による開き動作の規制を解除するように制御する制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙搬送装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の画像形成装置の中には、用紙搬送路上で用紙の傾き(スキュー)を補正してから、用紙に画像を形成するものがある。用紙の傾きを補正する方式としては、用紙の先端を基準部材に突き当てて用紙をループ状に撓ませる方式(以下、「先端突き当て方式」と記す)が知られている。
【0003】
先端突き当て方式を採用した従来技術としては、基準部材よりも用紙搬送方向の上流側に、用紙搬送路の隙間を用紙のループ形成に備えて予め広く確保した部分(以下、「拡開部」と記す)を設けておき、用紙の先端を基準部材に突き当てた際に、その拡開部で用紙をループ状に撓ませる構成を採用したものがある(例えば、特許文献1〜3を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平5−124753号公報
【特許文献2】特開平6−64792号公報
【特許文献3】特開平7−267427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術においては、用紙が拡開部を経由して基準部材に到達するため、用紙搬送路の隙間が拡開部で広くなっていると、用紙の進行方向が安定せず、用紙の座屈やジャムが発生しやすくなる。特に、腰の弱い用紙(例えば、薄い用紙や湿気を含んだ用紙など)では、その傾向が顕著になる。また、拡開部を設けた構成では、用紙の先端を基準部材に押し付けるための推進力を、用紙のループ形成に伴う反力によって得ている。このため、例えば腰の弱い用紙では、傾き補正に必要な推進力が得られない場合があった。また、特許文献3に記載の技術では、用紙のループを背後から押圧する手段を設けているが、用紙の種類によっては、拡開部が広すぎたり狭すぎたりして、所望の推進力が得られない場合があった。
【0006】
本発明の目的は、用紙の種類にかかわらず、用紙の先端を確実に基準部材へと導くことができるとともに、傾き補正に必要とされる十分な推進力をもって用紙の先端を基準部材に突き当てることができる仕組みを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、用紙搬送路に沿って用紙を搬送する用紙搬送手段と、前記用紙搬送路上で用紙の先端が突き当てられる基準部材と、前記基準部材よりも用紙搬送方向の上流側でかつ前記基準部材への突き当てによって用紙が撓む部分に設けられ、前記用紙搬送路の隙間を広げる開き方向と当該隙間を狭める閉じ方向に動作する用紙搬送案内部材と、前記用紙搬送案内部材を前記閉じ方向に付勢する付勢手段と、前記用紙搬送案内部材を閉じ位置に固定した状態で前記用紙搬送案内部材の開き動作を規制する規制手段と、前記用紙の先端が前記用紙搬送案内部材を通過する前は前記規制手段によって前記用紙搬送案内部材の開き動作を規制しておき、前記用紙の先端が前記用紙搬送案内部材を通過した後は前記規制手段による前記開き動作の規制を解除するように制御する制御手段とを備えることを特徴とする用紙搬送装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の用紙搬送装置において、双方向に回転駆動する駆動源と、前記駆動源が第1の方向に回転駆動した場合に、当該回転駆動力を用紙搬送部材に伝達する第1の動力伝達機構と、前記駆動源が第2の方向に回転駆動した場合に、当該回転駆動力を前記規制手段に伝達する第2の動力伝達機構とを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、用紙搬送路に沿って用紙を搬送する用紙搬送手段と、前記用紙搬送手段によって搬送される用紙に画像を形成するとともに、前記用紙搬送路の途中に設けられた画像記録位置で前記用紙に画像を記録する画像形成手段と、前記画像記録位置よりも用紙搬送方向の上流側に設けられるとともに、前記用紙搬送路上で用紙の先端が突き当てられる基準部材と、前記基準部材よりも用紙搬送方向の上流側でかつ前記基準部材への突き当てによって用紙が撓む部分に設けられ、前記用紙搬送路の隙間を広げる開き方向と当該隙間を狭める閉じ方向に動作する用紙搬送案内部材と、前記用紙搬送案内部材を前記閉じ方向に付勢する付勢手段と、前記用紙搬送案内部材を閉じ位置に固定した状態で前記用紙搬送案内部材の開き動作を規制する規制手段と、前記用紙の先端が前記用紙搬送案内部材を通過する前は前記規制手段によって前記用紙搬送案内部材の開き動作を規制しておき、前記用紙の先端が前記用紙搬送案内部材を通過した後は前記規制手段による前記開き動作の規制を解除するように制御する制御手段とを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1,3に記載の発明によれば、用紙の種類にかかわらず、用紙の先端を確実に基準部材へと導くことができるとともに、傾き補正に必要とされる十分な推進力をもって用紙の先端を基準部材に突き当てることができる。このため、用紙の座屈、ジャム等の発生を防止したうえで、傾き補正の補正能力を高めることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、手差し給紙用の駆動源を共用して規制手段を動作させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の具体的な実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明が適用される画像形成装置の構成例を示す概略図である。図示した画像形成装置は、電子写真方式で用紙に画像を形成する画像形成装置である。この画像形成装置は、画像形成の対象となる用紙を搬送するための用紙搬送装置と、この用紙搬送装置によって搬送される用紙に画像を形成する画像形成手段とを備えるものである。
【0014】
画像形成装置は2つの用紙収容部1,2を備えている。2つの用紙収容部1,2は、上下の位置関係で配置されている。用紙収容部1,2は、それぞれ所定枚数(複数枚)の用紙を積載状態で収容するものである。用紙収容部1に収容される用紙のサイズは、用紙収容2に収容される用紙のサイズよりも小さいものとなっている。
【0015】
上側の用紙収容部1の給紙部分には、給紙用のロールとして、呼び出しロール3と送り出しロール4が配置されている。呼び出しロール3は、用紙収容部1に収容された用紙を、最上位の用紙から順に呼び出すものである。送り出しロール4は、呼び出しロール3によって呼び出された用紙を1枚ずつ分離して送り出すものである。これと同様に、下側の用紙収容部2の給紙部分にも、給紙用のロールとして、呼び出しロール5と送り出しロール6が配置されている。
【0016】
また、画像形成装置本体100内には、用紙搬送装置の主要部な構成要素となる用紙搬送手段が設けられている。用紙搬送手段は、用紙搬送路に沿って用紙を搬送するものである。用紙搬送路は、用紙の進行方向を案内するために設けられる用紙搬送案内部材を用いて形成されるものである。用紙搬送路上には、用紙搬送手段を構成する複数の搬送ロール(搬送部材)7〜19が設けられている。各々の搬送ロール7〜19は、一対のロールの間に用紙を挟み込んで回転することにより、用紙に搬送力を付与して用紙を搬送するものである。このうち、搬送ロール14,15は、反転搬送部101に設けられ、搬送ロール16〜19は、再給紙搬送部102に設けられている。反転搬送部101及び再給紙搬送部102は、両面画像形成用の搬送部として設けられたものである。
【0017】
ここで、用紙搬送路を複数の用紙搬送路R1〜R6に区分して考えると、第1の用紙搬送路R1と第2の用紙搬送路R2は、搬送ロール8と搬送ロール9の間で区分されている。第3の用紙搬送路R3は、搬送ロール11の下流側で第2の用紙搬送路R2から分岐している。第3の用紙搬送路R3と第4の用紙搬送路R4は、搬送ロール14と搬送ロール15の間で区分されている。第5の用紙搬送路R5は、搬送ロール14と搬送ロール15の間で第4の用紙搬送路R4から分岐している。また、第5の用紙搬送路R5は、搬送ロール9の上流側で第2の用紙搬送路R2に合流している。第6の用紙搬送路R6は、搬送ロール13と搬送ロール14の間で第3の用紙搬送路R3から分岐している。また、第6の用紙搬送路R6は、搬送ロール12の上流側で第2の用紙搬送路R2に合流している。
【0018】
第1の用紙搬送路R1は、用紙収容部1,2に収容された用紙を画像形成手段に向けて給紙するための給紙搬送路となり、第2の用紙搬送路R2は、画像形成手段の画像記録位置Pを経由するように用紙を搬送する画像形成搬送路となる。また、第3の用紙搬送路R3は、第2の用紙搬送路R2と第4の用紙搬送路R4とを中継する中継搬送路となり、第4の用紙搬送路R4は、用紙を表裏反転させるための反転搬送路となる。また、第5の用紙搬送路R5は、第4の用紙搬送路R4で反転させた用紙を再び画像形成手段に向けて給紙するための再給紙搬送路となり、第6の用紙搬送路R6は、画像形成済みの用紙を表裏反転して排出するための反転排出搬送路となる。
【0019】
搬送ロール7,8は、第1の用紙搬送路R1上に配置され、搬送ロール9〜12は、第2の用紙搬送路R2上に配置されている。搬送ロール13,14は、第3の用紙搬送路R3上に配置され、搬送ロール15は、第4の用紙搬送路R4上に配置されている。搬送ロール16〜19は、第5の用紙搬送路R5上に配置されている。
【0020】
また、搬送ロール7は、第1の用紙搬送路R1上で搬送ロール8の上流側に配置されている。搬送ロール8は、第1の用紙搬送路R1上で搬送ロール7の下流側に配置されている。これらの搬送ロール7,8は、用紙収容部1から給紙用のロール3,4によって供給された用紙や、用紙収容部2から給紙用のロール5,6によって供給された用紙を、それぞれ第1の用紙搬送路Rに沿って搬送するものである。
【0021】
搬送ロール9は、第2の用紙搬送路R2上で搬送ロール10の上流側に配置されている。搬送ロール9は、搬送ロール8によって第1の用紙搬送路R1から第2の用紙搬送路R2へと搬送された用紙や、搬送ロール19によって第5の用紙搬送路R5から第2の用紙搬送路R2へと搬送された用紙を、搬送ロール10に向けて搬送するものである。搬送ロール9と搬送ロール10は、用紙搬送方向で隣り合う位置関係で配置されている。搬送ロール10は、搬送ロール9によって搬送された用紙を画像記録位置Pに向けて送り込むロールである。レジストロール10は、基準部材として画像記録位置Pの上流側に設けられている。画像記録位置Pは、用紙搬送路の途中に設けられたもので、実際に用紙に画像が記録(本形態例ではトナー画像が転写)される位置をいう。以降の説明では、搬送ロール10をレジストロールと称し、搬送ロール9をプレレジストロールと称する。
【0022】
用紙搬送方向において、プレレジストロール9からレジストロール10に至る用紙搬送路(レジストロール10の上流側)には、傾き補正部20が設けられている。傾き補正部20は、第2の用紙搬送路R2上で先端突き当て方式により用紙の傾きを補正する部分である。傾き補正部20では、プレレジストロール9からレジストロール10に至る搬送区間で、用紙の進行方向がほぼ90°曲がるように、第2の用紙搬送路R2が湾曲した状態に形成されている。
【0023】
傾き補正部20は、レジストロール10を基準部材として、用紙の先端をレジストロール10に突き当てて用紙をループ状に撓ませることにより、用紙の傾き(姿勢)を補正するものである。基準部材は、用紙搬送面内で用紙の先端を用紙搬送方向と直交する向きに揃えるために用いられる部材である。ここでは、一例としてレジストロール10を基準部材としているが、レジストロール10に代えて、例えば図示はしないがレジストロール10の手前に設けられたシャッター部材を基準部材としてもよい。
【0024】
用紙搬送方向において、プレレジストロール9の下流側には第1用紙検知センサS1が設けられ、レジストロール10の上流側には、第2用紙検知センサS2が設けられている。第1用紙検知センサS1及び第2用紙検知センサS2は、それぞれプレレジストロール9からレジストロール10に至る第2の用紙搬送路R2の途中で用紙の通過(先端通過、後端通過)を検知するものである。第1用紙検知センサS1は、プレレジストロール9の近傍に配置され、第2用紙検知センサS2は、レジストロール10の近傍に配置されている。
【0025】
各々の用紙検知センサS1,S2は、例えば発光素子と受光素子を共通のセンサ面に並べて設けた反射型のフォトセンサを用いて構成されるものである。この場合、各々の用紙検知センサS1,S2は、自身のセンサ面と近接して対向する位置(以下、「検知位置」とも記す)に用紙が存在するときはオン状態となり、用紙が存在しないときはオフ状態となる。したがって、各々の用紙検知センサS1,S2は、それぞれに対応する検知位置を用紙の先端が通過した際にはオフ状態からオン状態に切り替わり、その後、検知位置を用紙の後端が通過した際にはオン状態からオフ状態に切り替わる。用紙の先端とは、用紙搬送路上で用紙搬送方向の下流側を向いて配置される用紙端をいい、用紙の後端とは、用紙搬送路上で用紙搬送方向の上流側を向いて配置される用紙端をいう。用紙検知センサS1,S2としては、透過型のフォトセンサを用いてもよいし、他のセンサを用いてもよい。
【0026】
第2の用紙搬送路R2において、レジストロール10の下流側には画像転写部21が設けられている。画像転写部21は、用紙に画像(トナー画像)を転写する部分である。画像転写部21には、中間転写ベルト22を挟み込む状態でベルト支持ロール23と転写ロール24が配置されている。中間転写ベルト22は、図示しない1つ又は複数(一般的には4つ)の感光体ドラムから転写(一次転写)されたトナー画像を保持しつつ回転するものである。ベルト支持ロール23は、図示しない他のロールとともに中間転写ベルト22を支持するものである。転写ロール24は、ベルト支持ロール23との間に用紙を挟み込んだ状態でトナーと逆極性の電荷を用紙に印加することにより、中間転写ベルト22に保持されたトナー画像を用紙に転写するものである。
【0027】
なお、図1においては、電子写真方式の画像形成装置において、中間転写体となる中間転写ベルト22で保持したトナー画像を用紙に転写するマシン構成を例示しているが、中間転写体を用いることなく、感光体ドラムから用紙に直接トナー画像を転写するマシン構成であってもよい。また、電子写真方式以外の方式(例えば、インクジェット方式、熱転写方式など)を採用した画像形成装置であってもよい。
【0028】
バキューム搬送部25は、無端状の搬送ベルト26と、この搬送ベル26を支持する2つのロール27,28とを有するものである。バキューム搬送部25は、搬送ベルト26の上に用紙を載せて用紙の下面(トナー画像が転写される面と反対側の面)をバキューム方式で吸着しつつ、搬送ベルト26の走行にしたがって用紙を搬送するものである。
【0029】
バキューム搬送部25の下流側には定着器29が配置されている。定着器29は、画像転写部で用紙に転写されたトナー画像を加熱加圧方式で用紙の紙面に定着させるもので、ヒータ等によって所定の温度(定着温度)に加熱される加熱ロール30と、この加熱ロール30に所定の圧力で接触する加圧ロール31とを備えている。
【0030】
搬送ロール11は、第2の用紙搬送路R2上で定着器29の下流側に配置されている。搬送ロール11の下流側では、第2の用紙搬送路R2の途中から第3の用紙搬送路R3が斜め下方に分岐しており、この分岐部分に図示しない搬送切り替え部材が設けられている。搬送切り替え部材は、搬送ロール11によって搬送される用紙の進行方向を、搬送ロール12に向かう第1の方向(第2の用紙搬送路R2の沿う方向)と、搬送ロール13に向かう第2の方向(第3の用紙搬送路R3に分岐する方向)のいずれか一方に切り替えるものである。
【0031】
搬送ロール12は、第2の用紙搬送路R2の終端部に配置されている。搬送ロール12は、画像形成済みの用紙を図示しない用紙排出収容部(例えば、排出トレイ)に排出するロール(以下、「排出ロール」とも記す)である。
【0032】
搬送ロール13は、搬送ロール11によって搬送された用紙を、搬送ロール13の下流側に配置された搬送ロール14に向けて搬送するものである。搬送ロール14は、第3の用紙搬送路R3上で搬送ロール13の下流側に配置されている。搬送ロール14は、双方向に回転(正転/逆転)可能に設けられている。
【0033】
搬送ロール15は、用紙搬送方向で搬送ロール14の下流側に配置されている。搬送ロール15は、上記搬送ロール14と同様に、双方向に回転(正転/逆転)可能に設けられている。搬送ロール14及び搬送ロール15は、それぞれ搬送中の用紙をスイッチバック方式で表裏反転するロール(以下、「反転ロール」とも記す)である。
【0034】
搬送ロール16〜19は、用紙搬送方向の上流側から下流側に向かって順に配置されている。すなわち、第5の用紙搬送路R5において、搬送ロール17は搬送ロール16の下流側に配置され、搬送ロール18は搬送ロール17の下流側に配置され、搬送ロール19は搬送ロール18の下流側に配置されている。
【0035】
続いて、本発明の実施形態に係る画像形成装置の動作(画像形成動作)について説明する。まず、画像形成動作を開始するにあたって、ユーザーが指定した用紙収容部又は自動で選択された用紙収容部から、画像形成の対象となる用紙を給紙する。例えば、ユーザー指定の用紙収容部又は自動選択された用紙収容部が、上段の用紙収容部1であるとすると、この用紙収容部1に対応する呼び出しロール3及び送り出しロール4の回転により、用紙収容部1から第1の用紙搬送路R1へと用紙を送り出す。
【0036】
こうして用紙収容部1から給紙された用紙は、搬送ロール8の回転によって用紙搬送方向の下流側へと搬送されてプレレジストロール9に送り込まれる。次に、用紙はプレレジストロール9の回転にしたがってレジストロール10に送り込まれる。このとき、傾き補正部20では、レジストロール10への突き当てによって用紙の傾きが補正される。
【0037】
さらに詳述すると、レジストロール10は、プレレジストロール9による用紙の送り込みに先立って回転停止状態とされる。そのため、プレレジストロール9によって送り込まれた用紙の先端は回転停止状態のレジストロール10に突き当てられる。また、この突き当て状態でプレレジストロール9により用紙を所定量だけ送り込むことにより、傾き補正部20で用紙がループ状に撓んだ状態、すなわち用紙の傾きが補正された状態となり、この状態で用紙が一時停止する。このとき、傾き補正部20では、プレレジストロール9とレジストロール10との間で第2の用紙搬送路R2を形成する用紙搬送案内部材35〜37のうち、湾曲した搬送カーブの外側に配置された用紙搬送案内部材35が、レジストロール10への突き当てによってループ状に撓む用紙に押されて外側に逃げる(変位する)構成となっている。
【0038】
その後、中間転写ベルト22に保持されたトナー画像が画像転写部21の画像記録位置Pに到達するタイミングに合わせて、レジストロール10が回転を開始する。これにより、用紙はレジストロール10の回転にしたがって画像転写部21へと送り込まれる。そして、画像転写部21においては、レジストロール10によって送り込まれた用紙が、ベルト支持ロール23に支持された中間転写ベルト22と転写ロール24との対向部分を通過するように移動する。このとき、転写ロール24がトナーと逆極性の電荷を印加することにより、中間転写ベルト22上のトナー画像が用紙の第1面に転写される。
【0039】
その後、用紙はバキューム搬送部25によって定着器29へと送られる。定着器29に送られた用紙は、加熱ロール30と加圧ロール31の間(接触部分)を通過するように移動するとともに、それらのロール30,31によって加えられる加熱作用と加圧作用によって用紙の第1面にトナー画像が定着される。次いで、定着器29から送り出された用紙は、第2の用紙搬送路R2に沿って搬送ロール11から排出ロール12へと送り込まれた後、排出ロール12によって用紙排出収容部(不図示)に排出される。以上の動作は、用紙の片面に画像を形成する片面画像形成処理で適用されるものである。
【0040】
用紙の両面に画像を形成する両面画像形成処理においては、搬送ロール11によって搬送される用紙が、搬送切り替え部材(不図示)によって第2の用紙搬送路R2から第3の用紙搬送路R3に案内されて搬送ロール13へと送り込まれる。次いで、用紙は搬送ロール13によって反転ロール14に送り込まれ、さらに反転ロール14の正回転によって反転ロール15へと送り込まれる。次に、用紙は反転ロール15の正回転によって第4の用紙搬送路R4に取り込まれる。そして、用紙の後端が第5の用紙搬送路R5への分岐位置を通過すると、反転ロール15は、用紙を挟み込んだままの状態で回転停止した後、逆回転を開始する。これにより、用紙は反転ロール15の逆回転にしたがって第4の用紙搬送路R4から第5の用紙搬送路R5へと送り込まれる。
【0041】
その後、用紙は、第5の用紙搬送路R5に設けられた複数の搬送ロール16〜19の回転にしたがって第5の用紙搬送路R5を上流側から下流側へと搬送される。そして、第5の用紙搬送路R5の最下流部では、第5の用紙搬送路R5の終端部から第2の用紙搬送路R2の始端部に合流するように用紙が搬送ロール19によって搬送される。これにより、用紙は再び第2の用紙搬送路R2上のプレレジストロール9へと送り込まれる。以降は、上記同様の手順で用紙の第2面に画像が形成(転写、定着)される。こうして第2面への画像形成を終えた用紙は、第2の用紙搬送路R2に沿って搬送ロール11から排出ロール12へと送り込まれた後、排出ロール12によって用紙排出収容部(不図示)に排出される。
【0042】
また、第1面又は第2面への画像形成を終えた用紙を表裏反転して排出する場合は、排出ロール11によって搬送される用紙が、搬送切り替え部材(不図示)によって第2の用紙搬送路R2から第3の用紙搬送路R3に案内されて搬送ロール13へと送り込まれる。次いで、用紙は搬送ロール13によって反転ロール14に送り込まれ、さらに反転ロール14の正回転によって用紙搬送方向の下流側に送り込まれる。そして、用紙の後端が第6の用紙搬送路R6への分岐位置を通過すると、反転ロール14は、用紙を挟み込んだままの状態で回転停止した後、逆回転を開始する。これにより、用紙は反転ロール14の逆回転にしたがって第3の用紙搬送路R3から第6の用紙搬送路R6へと送り込まれる。次いで、用紙は、第6の用紙搬送路R6から第2の用紙搬送路R2に合流するように排出ロール12へと送り込まれた後、排出ロール12によって用紙排出収容部(不図示)に排出される。
【0043】
図2及び図4は本発明の実施形態に係る用紙搬送装置の主要部を示す斜視図である。用紙搬送案内部材35は、用紙搬送路の幅方向に架け渡して設けられる長尺状の部材であって、図2に示すように案内部38と、ストッパー部39と、側板部40と、支軸41とを一体に有している。案内部38は、用紙搬送案内部材37との間で第2の用紙搬送路R2を区画形成するもので、用紙の進行方向を案内するために断面略く字形に形成されている。ストッパー部39は、用紙搬送路に沿って搬送される用紙と干渉(衝突)しないように、案内部38の長手方向の一端部又は両端部に設けられている。ストッパー部39は、図示しない固定部に突き当てられることにより、用紙搬送案内部材35の閉じ位置を規定するものである。
【0044】
側板部40は、案内部38の長手方向の両端部に設けられている。支軸41は、例えば圧入、接着等によって側板部40に嵌合固定されている。支軸41は、軸受け部材を用いてブラケット42に回転自在に支持されている。支軸41は、当該支軸41を回転軸として用紙搬送案内部材35を開閉動作させるためのものである。用紙搬送案内部材35の開閉動作は、当該用紙搬送案内部材35とこれに対向する用紙搬送案内部材37との間に形成される用紙搬送路の隙間を広げたり狭めたりする方向で行なわれる。すなわち、支軸41を回転軸として、用紙搬送案内部材35を一方向(以下、「開き方向」と記す)に回転させると、用紙搬送案内部材37との間に形成される用紙搬送路の隙間が相対的に広がり、用紙搬送案内部材35を他方向(以下、「閉じ方向」と記す)に回転させると、用紙搬送案内部材37との間に形成される用紙搬送路の隙間が相対的に狭まる。ここでは、用紙搬送案内部材35を開き方向に回転させる動作を「開き動作」と定義し、用紙搬送案内部材35を閉じ方向に回転させる動作を「閉じ動作」と定義する。この場合、用紙搬送案内部材35を閉じ動作させたときの終端位置は、ストッパー部39で規定される閉じ位置となる。
【0045】
用紙搬送案内部材35の側板部40には、図5にも示すように、付勢部材として、例えば弾性部材の一形態である引っ張りコイルバネ43の一端部が引っ掛けられている。引っ張りコイルバネ43の他端部は、図示しない固定(不動)の装置フレーム部に引っ掛けられている。引っ張りコイルバネ43は、上記支軸41を回転中心として用紙搬送案内部材35を閉じ方向に付勢するものである。このため、ストッパー部39は、引っ張りコイルバネ43の付勢力を受けて図示しない固定部に突き当てられる構成となっている。
【0046】
また、支軸41の外側の端部にはロックレバー44が取り付けられている。ロックレバー44は、例えば圧入、接着等によって支軸41に嵌合固定されている。このため、支軸41を回転軸として用紙搬送案内部材35が開閉動作すると、これに連動してロックレバー44が支軸41と一体に回転動作する。
【0047】
ロックレバー44の近傍にはロックカム45が設けられている。ロックレバー44及びロックカム45は、用紙搬送案内部材35の開き動作を規制する規制手段として設けられたものである。ロックカム45は、支軸46の一端部に圧入、接着等により嵌合固定されている。ロックカム45は、支軸46の中心軸方向から見て略扇形に形成されている。支軸46は、図示しないブラケットに軸受け部材を用いて回転自在に支持されている。支軸46の他端部には歯車47が取り付けられている。また、支軸46の軸上には、センサ検出片48が取り付けられている。歯車47及びセンサ検出片48は、支軸46と一体に回転動作するものである。センサ検出片48は、支軸46の中心軸方向から見て略扇形に形成されている。
【0048】
ホームポジション検知センサS3(図3参照)は、支軸46を中心としたロックカム45の回転方向において、当該ロックカム45の回転基準位置となるホームポジションを検知するためのセンサである。ホームポジション検知センサS3は、例えば発光素子と受光素子を共通の光軸上で対向状態に配置した透過型のフォトセンサを用いて構成されるものである。ホームポジション検知センサS3の光軸は、上述したセンサ検出片48で遮られる構成となっている。実際にセンサ検出片48がホームポジション検知センサS3の光軸を遮ると、ホームポジション検知センサS3のオンオフ状態が変化する。
【0049】
歯車47は、駆動モータ50の出力軸(回転軸)に嵌合固定された駆動歯車51に噛み合っている。駆動モータ50は、双方向に回転(正転/逆転)する機能を有するもので、例えばパルスモータを用いて構成されている。駆動モータ50は、図示しない装置本体フレームにネジ等を用いて固定されるブラケット49に取り付けられている。
【0050】
図6は駆動モータ50を駆動源とした動力伝達機構の構成例を示す模式図である。図示のように、歯車47の内部にはワンウェイクラッチ52が一体に組み込まれ、このワンウェイクラッチ52が支軸46に嵌合固定されている。ワンウェイクラッチ52は、一方向に対してのみ回転駆動力を伝達するものである。このため、ワンウェイクラッチ52は、歯車47が一方向(以下、「動力伝達方向」とも記す)に回転するときは支軸46に回転駆動力を伝達するが、歯車47が他方向(以下、「空転方向」とも記す)に回転するときは空転して回転駆動力の伝達を断つ。
【0051】
駆動歯車51には、歯車47と反対側で中間歯車53が噛み合っている。中間歯車53には歯車54が噛み合っている。歯車54の内部にはワンウェイクラッチ55が一体に組み込まれ、このワンウェイクラッチ55が支軸56に嵌合固定されている。ワンウェイクラッチ55は、上記ワンウェイクラッチ52と同様に、一方向に対してのみ回転駆動力を伝達するものである。このため、ワンウェイクラッチ55は、歯車54が一方向(以下、「動力伝達方向」とも記す)に回転するときは支軸56に回転駆動力を伝達するが、歯車54が他方向(以下、「空転方向」とも記す)に回転するときは空転して回転駆動力の伝達を断つ。支軸56は、軸受け部材を用いて回転自在に支持されている。支軸56の端部には、上記歯車54及びワンウェイクラッチ55と同軸状態で歯車57が嵌合固定されている。歯車57は歯車58に噛み合っている。
【0052】
歯車58は、回転駆動軸59の端部に嵌合固定されている。回転駆動軸59は、軸受け部材によって回転自在に支持されている。回転駆動軸59には、手差し給紙用のドライブロール60が取り付けられている。ドライブロール60は、歯車58及び回転駆動軸59と一体に回転するものである。ドライブロール60には、ピンチロール61が所定の圧力で接触している。ドライブロール60及びピンチロール61は、手差しで給紙された用紙を互いの接触部(ニップ部)に挟み込んで回転することにより、当該用紙をレジストロール10に向けて搬送するものである。
【0053】
ここで、中間歯車53、歯車54、ワンウェイクラッチ55、支軸56、歯車57及び歯車58は、駆動モータ50の回転駆動力を駆動歯車51から受けて、当該回転駆動力をドライブロール60及びピンチロール61に伝達する第1の動力伝達機構を構成するものである。また、支軸46、歯車47、駆動歯車51及びワンウェイクラッチ52は、駆動モータ50の回転駆動力を駆動歯車51から受けて、当該回転駆動力をロックカム45に伝達する第2の動力伝達機構を構成するものである。
【0054】
上記構成からなる動力伝達機構において、駆動モータ50の駆動により駆動歯車51が回転すると、駆動歯車51の回転にしたがって歯車47と中間歯車53が同時に回転する。この場合、歯車47の回転方向がワンウェイクラッチ52の動力伝達方向と同じ方向であれば、歯車47と一緒に支軸46が回転し、歯車47の回転方向がワンウェイクラッチ52の空転方向と同じ方向であれば、歯車47が回転しても支軸46は回転しない。
【0055】
また、中間歯車53が回転すると、当該中間歯車53の回転にしたがって歯車54が回転する。この場合、歯車54の回転方向がワンウェイクラッチ55の動力伝達方向と同じ方向であれば、歯車54と一緒に支軸56が回転し、歯車54の回転方向がワンウェイクラッチ55の空転方向と同じ方向であれば、歯車54が回転しても支軸56は回転しない。
【0056】
ここで、図6のF方向から見て、駆動モータ50の駆動歯車51が反時計回りに回転したときのモータ回転方向を「正回転」と定義し、駆動モータ50の駆動歯車51が時計回りに回転したときのモータ回転方向を「逆回転」と定義する。そうした場合、駆動モータ50の駆動歯車51が正回転すると、その回転駆動力が駆動歯車51を介して歯車47と中間歯車53に同時に伝達される。このうち、歯車47に伝達された回転駆動力は、ワンウェイクラッチ52の空転により支軸46に伝達されない。また、中間歯車53に伝達された回転駆動力は、歯車54及びワンウェイクラッチ55を介して支軸56に伝達され、さらに歯車57及び歯車58を介して回転駆動軸59及びドライブロール60に伝達される。このため、駆動モータ50の駆動歯車51を正回転させた場合は、ロックカム45の回転が停止したままで、回転駆動軸59と一体にドライブロール60が回転するとともに、当該ドライブロール60の回転にしたがってピンチロール61が回転することになる。
【0057】
これに対して、駆動モータ50の駆動歯車51が逆回転すると、その回転駆動力が駆動歯車51を介して歯車47と中間歯車53に伝達される。このうち、中間歯車53に伝達された回転駆動力は、ワンウェイクラッチ55の空転により支軸56に伝達されない。また、歯車47に伝達された回転駆動力は、ワンウェイクラッチ52を介して支軸46及びロックカム45に伝達される。このため、駆動モータ50の駆動歯車51を逆回転させた場合は、ドライブロール60とピンチロール61の回転が停止したままで、支軸46と一体にロックカム45とセンサ検出片48が回転することになる。このことから、上記第1の動力伝達機構は、駆動源となる駆動モータ50が第1の方向に回転駆動した場合に、当該回転駆動力を手差し給紙用の部材(60,61)に選択的に伝達するものとなり、上記第2の動力伝達機構は、駆動モータ50が第2の方向に回転駆動した場合に、当該回転駆動力をロックカム45に選択的に伝達するものとなる。
【0058】
図7は本発明の実施形態に係る画像形成装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。主制御部60は、画像形成装置全体の処理動作を統括的に制御するものである。主制御部60は、大きくは、画像形成制御部61と用紙搬送制御部62とを備えた構成となっている。画像形成制御部61は、主として、画像形成手段による画像の形成動作を制御するものである。用紙搬送制御部62は、主として、用紙搬送装置による用紙の搬送動作を制御するものである。
【0059】
用紙搬送制御部62には、上述した第1用紙検知センサS1と、第2用紙検知センサS2と、ホームポジション検知センサS3と、駆動モータ50の他に、プレレジモータ63と、レジモータ64とが接続されている。
【0060】
用紙搬送制御部62は、駆動モータ50の駆動によって支軸46と一体にロックカム45及びセンサ検出片48を回転させた際に、ホームポジション検知センサS3のオンオフ状態が、例えばオン状態からオフ状態に変化したときの位置を、ロックカム45の回転基準位置として認識(検知)する。
【0061】
プレレジモータ63は、プレレジストロール9を回転させるための駆動源となるものである。レジモータ64は、レジストロール10を回転させるための駆動源となるものである。なお、図7においては、用紙搬送装置の構成要素のうち、特に、プレレジストロール9からレジストロール10に至る第2の用紙搬送路R2上で用紙の搬送を制御するための構成要素を抽出して表示し、それ以外の構成要素の表示は省略している。
【0062】
図8は用紙搬送制御に係る処理手順の一例を示すフローチャートである。ここでは画像形成の対象となる1枚の用紙をプレレジストロール9からレジストロール10を経由して画像記録位置Pに送り込む場合に適用される処理手順について説明する。
【0063】
まず、用紙搬送制御部62は、プレレジストロール9によって搬送される用紙の先端が第1用紙検知センサS1の検知位置を通過する前の段階では、図5(A)のようにストッパー部39で規定される閉じ位置に用紙搬送案内部材35を配置するとともに、図9(A)のようにロックレバー44にロックカム45を接触又は近接させることにより、用紙搬送案内部材35を閉じ位置に固定した状態で用紙搬送案内部材35の開き動作を規制しておく。このようにロックカム45を用いて用紙搬送案内部材35の開き動作を規制した状態を「ロック状態」と記述する。
【0064】
こうしたロック状態のもとで、用紙搬送制御部62は、第2用紙検知センサS2がオンしたかどうかを確認する(ステップST1)。そして、用紙の先端が第2用紙検知センサS2の検知位置を通過して当該第2用紙検知センサS2がオンすると、用紙搬送制御部62は、第2用紙検知センサS2がオンしたタイミングから所定時間T1後に駆動モータ50を駆動して駆動歯車51を逆回転させることにより、ロックカム45によるロック状態(用紙搬送案内部材35の開き動作の規制)を解除する(ステップST2)。
【0065】
駆動モータ50の駆動によってロック状態を解除する場合は、駆動歯車51の逆回転によって図9(B)のように支軸46と一緒にロックカム45を半回転(180°回転)させることにより、ロックレバー44からロックカム45を離間させる。ロック状態を解除するタイミングは、レジストロール10への突き当てによって用紙がループ状に撓み始める前であればよい。このため、第2用紙検知センサS2がオンすると同時にロック状態を解除してもよいし、第2用紙検知センサS2がオンしてから用紙の先端がレジストロール10に突き当たるまでの期間内にロック状態を解除してもよい。
【0066】
次に、用紙搬送制御部62は、第2用紙検知センサS2がオンしてから所定時間T2(ただし、T2>T1)後に、プレレジモータ63の駆動を停止することにより、プレレジストロール9による用紙の送り込みを停止させる(ステップST3)。このとき、傾き補正部20では、用紙の先端がレジストロール10に突き当たった状態で、用紙がループ状に撓んだ状態となる。用紙の撓み量(ループ量)は、用紙の先端がレジストロール10に突き当たってからプレレジストロール9の回転が停止するまでの時間で決まる。このため、用紙搬送制御部62では、用紙の種類に応じて所定時間T2を調整することにより、用紙の種類ごとに用紙の撓み量を個別に制御する。
【0067】
また、用紙がループ状に撓む過程では、図5(B)に示すように、引っ張りコイルバネ43の付勢力に抗して用紙搬送案内部材35が用紙のループに押されて開き方向に回転する。したがって、ループ状に撓んだ用紙には引っ張りコイルバネ43の付勢力が加わり、この付勢力を受けて用紙の先端がレジストロール10の接触部(ニップ部)に押し付けられた状態になる。また、用紙搬送案内部材35と用紙搬送案内部材37間の用紙搬送路には、用紙の撓み量に応じた隙間が形成された状態になる。
【0068】
その後、用紙搬送制御部62は、所定のタイミングでプレレジモータ63とレジモータ64を同時に駆動することにより、プレレジストロール9とレジストロール10を共に回転させて、画像記録位置Pに対する用紙の送り込みを開始する(ステップST4)。
【0069】
レジストロール10によって用紙の送り込みを開始すると、傾き補正部20で用紙のループ(撓み)が徐々に小さくなっていく。このため、用紙搬送案内部材35は、引っ張りコイルバネ43の付勢力にしたがって徐々に閉じ方向に回転し、用紙の撓みが解消された段階では閉じ位置に戻る。
【0070】
次に、用紙搬送制御部62は、第1用紙検知センサS1がオフしたかどうかを確認する(ステップST5)。そして、用紙の後端が第1用紙検知センサS1の検知位置を通過して当該第1用紙検知センサS1がオフすると、用紙搬送制御部62は、その段階で駆動モータ50を再び駆動して駆動歯車51を逆回転させることにより、ロックカム45によるロック状態に戻す(ステップST6)。
【0071】
駆動モータ50の駆動によってロック状態に戻す場合は、図9(B)の状態から図9(A)の状態に遷移するように、駆動歯車51の逆回転によって支軸46と一緒にロックカム45を半回転させる。これにより、ロックカム45がロックレバー44に接触又は近接した状態に戻る。
【0072】
その後、用紙搬送制御部62は、第2用紙検知センサS2がオフしたかどうかを確認する(ステップST7)。そして、用紙の後端が第2用紙検知センサS2の検知位置を通過して当該第2用紙検知センサS2がオフすると、用紙搬送制御部62は、第2用紙検知センサS2がオフしてから所定時間T3(用紙の後端がレジストロール10を通り抜けるまでの所要時間)後に、レジモータ64の駆動を停止してレジストロール10の回転を停止させる(ステップST8)。
【0073】
このような手順で用紙の搬送を制御することにより、用紙の先端が用紙搬送案内部材35を通過する際には、用紙搬送案内部材35の開き動作がロックカム45によって規制されているため、例えば腰の強い用紙(厚紙など)を搬送する場合でも、用紙に押されて用紙搬送案内部材35が開き方向に回転することはない。このため、用紙搬送案内部材35と用紙搬送案内部材37との間で第2の用紙搬送路R2の隙間が狭い状態に維持される。したがって、プレレジストロール9によって搬送される用紙の先端を用紙搬送案内部材35の案内部38に沿って確実にレジストロール10へと導くことができる。
【0074】
一方、用紙の先端がレジストロール10に突き当たった際には、プレレジストロール9による用紙の送り込みにしたがって用紙がループ状に撓み始める。この段階では図9(B)のようにロックカム45によるロック状態が解除されているため、支軸41と一体にロックレバー44が回転し得る状態にある。また、用紙搬送案内部材35は支軸41と一体に回転するため、引っ張りコイルバネ43の付勢力に抗して用紙搬送案内部材35も回転(開き動作)し得る状態にある。
【0075】
このため、図5(B)のように用紙をループ状に撓ませると、用紙のループ部分に押し出されるかたちで用紙搬送案内部材35が開き方向に回転し、これに連動してロックレバー44も図9(B)のように回転する。この場合、用紙の先端は、ループ形成に伴う反力と用紙搬送案内部材35に作用する引っ張りコイルバネ43の付勢力とを同時に受けて、レジストロール10の接触部(ニップ部)に押し付けられることになる。したがって、傾き補正に必要とされる十分な推進力をもって用紙の先端をレジストロール10に突き当てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明が適用される画像形成装置の構成例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係る用紙搬送装置の主要部を示す斜視図(その1)である。
【図3】本発明の実施形態に係る用紙搬送装置の主要部を示す斜視図(その2)である。
【図4】本発明の実施形態に係る用紙搬送装置の主要部を示す斜視図(その3)である。
【図5】傾き補正部の構成及び動作を説明する図である。
【図6】動力伝達機構の構成例を示す模式図である。
【図7】本発明の実施形態に係る画像形成装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図8】用紙搬送制御に係る処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】規制手段の構成及び動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0077】
9…プレレジストロール、10…レジストロール、20…傾き補正部、21…画像転写部、35…用紙搬送案内部材、43…引っ張りコイルバネ、44…ロックレバー、45…ロックカム、47,54,57,58…歯車、50…駆動モータ、51…駆動歯車、52,55…ワンウェイクラッチ、53…中間歯車、60…ドライブロール、61…ピンチロール、62…用紙搬送制御部、63…プレレジモータ、64…レジモータ、P…画像記録位置、S1…第1用紙検知センサ、S2…第2用紙検知センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙搬送路に沿って用紙を搬送する用紙搬送手段と、
前記用紙搬送路上で用紙の先端が突き当てられる基準部材と、
前記基準部材よりも用紙搬送方向の上流側でかつ前記基準部材への突き当てによって用紙が撓む部分に設けられ、前記用紙搬送路の隙間を広げる開き方向と当該隙間を狭める閉じ方向に動作する用紙搬送案内部材と、
前記用紙搬送案内部材を前記閉じ方向に付勢する付勢手段と、
前記用紙搬送案内部材を閉じ位置に固定した状態で前記用紙搬送案内部材の開き動作を規制する規制手段と、
前記用紙の先端が前記用紙搬送案内部材を通過する前は前記規制手段によって前記用紙搬送案内部材の開き動作を規制しておき、前記用紙の先端が前記用紙搬送案内部材を通過した後は前記規制手段による前記開き動作の規制を解除するように制御する制御手段と
を備えることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載の用紙搬送装置において、
双方向に回転駆動する駆動源と、
前記駆動源が第1の方向に回転駆動した場合に、当該回転駆動力を手差し給紙用の部材に選択的に伝達する第1の動力伝達機構と、
前記駆動源が第2の方向に回転駆動した場合に、当該回転駆動力を前記規制手段に選択的に伝達する第2の動力伝達機構と
を備えることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項3】
用紙搬送路に沿って用紙を搬送する用紙搬送手段と、
前記用紙搬送手段によって搬送される用紙に画像を形成するとともに、前記用紙搬送路の途中に設けられた画像記録位置で前記用紙に画像を記録する画像形成手段と、
前記画像記録位置よりも用紙搬送方向の上流側に設けられるとともに、前記用紙搬送路上で用紙の先端が突き当てられる基準部材と、
前記基準部材よりも用紙搬送方向の上流側でかつ前記基準部材への突き当てによって用紙が撓む部分に設けられ、前記用紙搬送路の隙間を広げる開き方向と当該隙間を狭める閉じ方向に動作する用紙搬送案内部材と、
前記用紙搬送案内部材を前記閉じ方向に付勢する付勢手段と、
前記用紙搬送案内部材を閉じ位置に固定した状態で前記用紙搬送案内部材の開き動作を規制する規制手段と、
前記用紙の先端が前記用紙搬送案内部材を通過する前は前記規制手段によって前記用紙搬送案内部材の開き動作を規制しておき、前記用紙の先端が前記用紙搬送案内部材を通過した後は前記規制手段による前記開き動作の規制を解除するように制御する制御手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−161324(P2009−161324A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1771(P2008−1771)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】