説明

用紙搬送装置及び画像形成装置

【課題】給紙トレー等の給紙部からレジストローラ対までの間の用紙の搬送時に発する騒音に対して静音化を可能とする用紙搬送装置及びこれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】第1の搬送ガイド板26の用紙Pを搬送方向に案内する案内面26aの全面に亘って弾性を有する吸音材層28が接着等によって取り付けられている。さらに、この吸音材層28上に、所定間隔Dで搬送方向(矢印A方向)に沿って延びる平滑性の良くて吸音材層28より薄くてかつ低摩擦係数を有する低摩擦層であるフィルムシート(例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム)29が両面粘着テープ等で接着固定されている。また、所定間隔Dの部分は、吸音材層28の厚み方向に切除された凹部30が形成され、この凹部30内に吸音材層28が露出されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙部に収容される用紙を1枚ずつ送り出す給紙手段と、前記用紙を一旦停止させて所定のタイミングで搬送するレジストローラ対と、前記給紙手段から給紙された用紙を前記レジストローラ対に搬送する搬送手段と、当該搬送手段から前記レジストローラ対まで前記用紙の表面を案内する第1の搬送ガイド板及び用紙の裏面を案内する第2の搬送ガイド板とを備えた用紙搬送装置及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ装置等の画像形成装置においては、給紙トレーから給紙された用紙を、直接、感光体等の画像形成部に給送すると用紙が傾いたまま送られ、スキュー状態で複写が行われる等の問題を招く。そのため、給紙トレーから送られてきた用紙のスキュー補正をしてから搬送するように、レジストローラ対が設けられている。給紙トレーから送られてきた用紙の先端は、停止しているレジストローラ対に突き当たり、用紙先端が所定時間だけ待機した後に画像形成タイミングに合わせて搬送するようになっている。
このような用紙搬送装置においては、用紙の搬送を起因とした騒音が発生し、問題になっている。特に、高速で用紙を搬送する機械ほど、用紙の搬送を起因とした騒音が大きい。用紙の搬送を起因とした騒音は、主に、用紙と搬送ガイド板が摺接するときの音や用紙がレジストローラ対に突き当たって、たるみを発生させて用紙の先端位置を整える時に発生する音が大きいと考えられる。また、搬送ガイド板に繋ぎ目があり、ガイド板同士に段差がある場合は、用紙の腰により段差部で用紙の後端が跳ねてガイド板に当る衝撃的な音が発生しやすい。
このような騒音の発生に対処するため、特許文献1に記載されているように、用紙がレジストローラ対に当るときに用紙の搬送スピードを遅くする制御を行なうことで、用紙とガイド板との叩き音を低減することが提案されている。
また、特許文献2には、用紙がレジストローラ対に突き当たる際に、レジストローラ対が用紙の進行方向と略同方向に回転させ、用紙がレジストローラ対に衝突する際の用紙の速度を、レジストローラ対の回転速度の用紙と同方向の速度分だけ相対速度を小さくすることによって低減させ、よって、用紙が停止状態にあるレジストローラ対に突き当たる場合に比べ、衝突音を小さくすることが提案されている。
以上の発明は、レジストローラ部に用紙が突き当たる時の音に対して静音化を行なうものである。
【特許文献1】特開平10−254202号公報
【特許文献2】特開2003−206051公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらの特許文献記載のものでは、用紙とレジストローラ対との衝突に対してのみ着目しているが、用紙搬送装置においては、前述のように、レジストローラ対に用紙が突き当たる時の音以外にも搬送ガイド板と用紙との摺接によって発生する騒音に対しては対策が講じられていないため、十分な静音化効果を達成することができないという問題がある。
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、給紙トレー等の給紙部からレジストローラ対までの間の、用紙の搬送時に発する騒音に対して静音化を可能とする用紙搬送装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、給紙部に収容される用紙を1枚ずつ送り出す給紙手段と、前記用紙を一旦停止させて所定のタイミングで搬送するレジストローラ対と、前記給紙手段から給紙された用紙を前記レジストローラ対に搬送する搬送手段と、当該搬送手段から前記レジストローラ対まで前記用紙の裏面を案内する第1の搬送ガイド板及び用紙の表面を案内する第2の搬送ガイド板とを備えた用紙搬送装置において、前記第1及び第2の搬送ガイド板の少なくとも一方の搬送ガイド板の前記用紙を案内する側の内面上に、吸音材層を配設し、当該吸音材層上に所定間隔を置いて前記吸音材層より摩擦抵抗の小さい低摩擦層を形成したことを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1記載の用紙搬送装置において、前記吸音材層は、前記第1及び第2の搬送ガイド板の少なくとも一方の案内面全面に亘って配設されていることを特徴とする。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2記載の用紙搬送装置において、前記低摩擦層の所定間隔を形成する間隔部は、吸音材層内まで切除された凹部であることを特徴とする。
また、請求項4の発明は、請求項3記載の用紙搬送装置において、前記低摩擦層の両端に折曲部が形成されており、当該折曲部は、前記凹部内に固着されていることを特徴とする。
【0005】
また、請求項5の発明は、請求項3又は4記載の用紙搬送装置において、前記凹部は、前記用紙の搬送方向に延びた凹条溝であることを特徴とする。
また、請求項6の発明は、請求項5記載の用紙搬送装置において、前記凹条溝は、前記搬送される用紙の側端内に配設されることを特徴とする。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れか1項記載の用紙搬送装置において、前記第1及び第2の搬送ガイド板の両方の搬送ガイド板の前記用紙を案内する側の内面上に、吸音材層を配設し、当該吸音材層上に所定間隔を置いて前記吸音材層より摩擦抵抗の小さい低摩擦層を形成したことを特徴とする。
また、請求項8の発明は、請求項7記載の用紙搬送装置において、前記第1の搬送ガイド板と第2の搬送ガイド板に形成される低摩擦層と所定間隔を有する間隔部とは、搬送される用紙に対して互い違いに対向して配設されていることを特徴とする。
また、請求項9の発明は、給紙部に収容される用紙を1枚ずつ送り出してレジストローラ対まで当該用紙を搬送する用紙搬送装置と、当該用紙搬送装置のレジストローラ対から所定のタイミングで搬送された用紙に、画像を形成する画像形成手段を備えた画像形成装置において、前記用紙搬送装置は、請求項1乃至8の何れか1項記載の用紙搬送装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第1及び第2の搬送ガイド板の少なくとも一方の搬送ガイド板の前記用紙を案内する側の内面上に、吸音材層を配設し、当該吸音材層上に所定間隔を置いて前記吸音材層より摩擦抵抗の小さい低摩擦層を形成することによって、給紙部からレジストローラ対までの間の、用紙の搬送時に発する騒音に対して静音化を可能とする用紙搬送装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明による一実施形態の画像形成装置であるカラープリンタを概略的に示す縦断側面図である。カラープリンタ1の本体ケース2内には、画像形成手段であるプリンタエンジン3、光ビームを出射する光書込装置4、被転写体である記録媒体Pを収納する給紙部の一つである給紙トレー5、トナー画像が転写された記録媒体Pを定着処理する定着装置6、トナー画像を転写した後に発生した廃トナーを回収する廃トナー回収容器7等が設けられている。
プリンタエンジン3は、トナー画像を形成し、形成したトナー画像を記録媒体Pに転写する部分であり、像担持体である4つの感光体8(8Y、8C、8M、8K)、各感光体8の周囲に配置された帯電装置である帯電ローラ9、現像装置10、クリーニング装置11、一次転写ローラ12、像担持体及び被転写体である中間転写ベルト13、転写装置である二次転写ローラ14、クリーニング装置15等により構成されている。ここで、本明細書及び図面の記載において、Y、C、M、Kの添え字は、各々イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの色を示しており、これらの添え字は必要に応じて割愛する。
感光体8は、ドラム状に形成されて駆動モータ(図示せず)が連結され、駆動モータからの駆動力により矢印方向に中心線回りに回転する。感光体8の外周面には静電潜像が形成される感光層が設けられている。
帯電ローラ9は、感光体8の外周面に当接して配置され、又は、感光体8の外周面と微小な隙間をもって配置されている。この帯電ローラ9に対して電源部(図示せず)から電圧が印加されることにより、帯電ローラ9と感光体8との間でコロナ放電が発生し、感光体8の外周面が一様に帯電される。
【0008】
光書込装置4は、画像データに応じた光ビームを出射し、一様に帯電された感光体8の外周面を露光する。この露光により、感光体8の外周面に画像データに応じた静電潜像が形成される。
現像装置10は、感光体8に対してトナーを供給する。供給されたトナーは感光体8の外周面に形成されている静電潜像に付着し、感光体8の外周面上の静電潜像がトナー画像として顕像化される。
中間転写ベルト13は、樹脂フィルム又はゴムを基体として形成された無端状のベルトであり、駆動ローラ16と入口ローラ17とテンションローラ18との回りに巻回され、駆動モータ(図示せず)に連結された駆動ローラ16が回転駆動されることにより矢印A方向に移送される。入口ローラ17とテンションローラ18とは、中間転写ベルト13が矢印A方向へ回転することにより中間転写ベルト13との摩擦力によって従動回転する。
一次転写ローラ12は中間転写ベルト13の内周面側(ループの内側)に配置されており、これらの一次転写ローラ12に転写用電圧が印加されることによって各感光体8上のトナー画像が中間転写ベルト13上に転写される。各感光体8上に形成されたトナー画像は中間転写ベルト13上に順次転写されて重ね合わされ、中間転写ベルト13上にはカラーのトナー画像が形成される。なお、15は、カラーのトナー画像が記録媒体Pに転写された後の中間転写ベルト13の外周面をクリーニングするクリ−ニング装置である。
【0009】
第1のクリーニング装置11は、トナー画像が中間転写ベルト13に転写された後の感光体8の外周面をクリーニングする。このクリーニングによって、トナー画像が中間転写ベルト13に転写された後に感光体8の外周面上に残留しているトナーや紙粉等が廃トナーとして回収される。
中間転写ベルト13上に形成されたカラーのトナー画像は、中間転写ベルト13と二次転写ローラ14とが当接された転写位置に記録媒体Pが送り込まれたタイミングで二次転写ローラ14に転写用電圧が印加されることにより、記録媒体Pに転写される。記録媒体Pは、給紙カセット5内から後述する用紙搬送装置32に給紙されて搬送ローラ19やレジストローラ20により搬送され、所定のタイミングでプリンタエンジン3の二次転写ローラ14に供給されてトナー画像を転写された後に定着装置6に送り込まれる。トナー画像が転写された記録媒体Pは定着装置6内で熱と圧力とを加えられて定着処理され、この定着処理により溶融したトナー画像が記録媒体Pに定着される。定着処理が終了した記録媒体Pは本体ケース2の上面部に形成されている排紙トレー21上に排紙される。
【0010】
プリンタエンジン3の構成部材である感光体8と、各感光体8の周囲に配置され、ユニット化してケース内に収納された帯電ローラ9と現像装置10とクリーニング装置11とは一体に構成されてプロセスカートリッジ23(23Y、23C、23M、23K)が形成されている。各プロセスカートリッジ23は本体ケース2内に着脱可能に装着されている。感光体8と帯電ローラ9と現像装置10とクリーニング装置11とがプロセスカートリッジ23としてユニット化されることにより、交換やメンテナンスの作業が容易になり、また、各部材間の位置精度を高精度の維持することができ、形成される画像品質の向上を図ることができる。なお、本実施の形態では、感光体8と帯電ローラ9と現像装置10とクリーニング装置11とはユニット化したプロセスカートリッジ23を例に挙げて説明したが、プロセスカートリッジの構成としては様々のものがあり、例えば、帯電ローラ9、現像装置10、クリーニング装置11の少なくとも一つの装置と感光体8とをケース内に収納してユニット化したものが挙げられる。
このような構成において、画像形成動作が開始されると、各感光体8上にトナー画像が形成され、各感光体8上に形成されたトナー画像が中間転写ベルト13上に順次転写されることにより中間転写ベルト13上にカラーのトナー画像が形成される。中間転写ベルト13上に形成されたカラーのトナー画像は二次転写ローラ14の働きによって記録媒体Pに転写され、トナー画像が転写された記録媒体Pは定着装置6で定着処理された後排紙トレー21上に排紙される。
【0011】
本発明においては、用紙搬送装置32に特徴があり、この用紙搬送装置の具体例について、以下、実施例に基づいて説明する。
先ず初めに、従来の用紙搬送装置について図14に基づいて説明する。図14は、従来の用紙搬送装置の概略構成を示す図である。従来の用紙搬送装置においては、給紙トレー5に画像が形成される用紙Pが束となってセットされ、図示しない給紙トレー5の底板上昇機構により、用紙Pの束が持ち上げられる。ピックアップローラ22で用紙Pをピックアップし、フィードローラ24とリバースローラ25が対になったFRR分離部によって、用紙を1枚だけ搬送する。ここでは分かりやすくするために対向する第1の搬送ガイド板26及び第2の搬送ガイド板27間の距離を誇張して大きく描いている。搬送された用紙Pは、その裏面Pbを案内する第1の搬送ガイド板26及び用紙Pの表面Paを案内する第2の搬送ガイド板27にガイドされてレジストローラ対20に向かう。用紙Pはレジストローラ対20に突き当たって、たるみを発生させて紙の先端位置を整えられる。その後、タイミングを見計らってレジストローラ対20の回転が開始され、用紙Pは画像形成装置の画像形成手段等に搬送される。
このようにして、用紙Pがレジストローラ対20に搬送されたとき、レジストローラ対20は、前述のように、画像形成手段に用紙Pを搬送するタイミングを図って搬送するために停止している。そのために、用紙Pは、レジストローラ対20に搬送されたときにレジストローラ対20に突き当たり、衝突音を発生する。また、用紙Pがレジストローラ対20に突き当たってたるみを発生し、このたるみの発生で用紙Pの端部が搬送ガイド板26、27に当って衝突音を発生したりする。
本発明においては、このような衝突音や搬送ガイド板26、27と用紙Pとの摺接音等の騒音を静音化しようとするものである。
【0012】
[実施例1]
図2は、本発明による一実施形態の用紙搬送装置の概略構成を示す図である。同図において、図14と同一構成については、同一符合を付し説明を省略する。
本実施例による用紙搬送装置においては、第1の搬送ガイド板26の用紙Pを搬送方向に案内する案内面26aの全面に亘って弾性を有する吸音材層28が接着等によって取り付けられている。さらに、この吸音材層28上に、図3で示すように、所定間隔Dで搬送方向(矢印A方向)に沿って延びる平滑性の良くて吸音材層28より薄くてかつ低摩擦係数を有する低摩擦層であるフィルムシート(例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム)29が両面粘着テープ等で接着固定されている。また、所定間隔Dの部分は、吸音材層28の厚み方向に切除された凹部30が形成され、この凹部30内に吸音材層28が露出されている。
このように、第1の搬送ガイド板26の内面26aに吸音材層28を形成し、この吸音材層38上に所定間隔Dを持って部分的に低摩擦層であるフィルムシート29を形成しているので、前記、レジストローラ対20や第1搬送ガイド板26で発生する騒音を吸音材層26で吸音して静音化が可能となる。しかも、吸音材層28上に低摩擦層のフィルムシート29が被着されているので、用紙Pの搬送時に、用紙Pを円滑に案内することが可能となり、さらに、用紙Pとフィルムシート29の摺接音の発生も良好に抑制することが可能となる。
【0013】
吸音材層28を構成する吸音材の例としては、ウレタンゴム等の連続発泡体で構成され、発泡体部分に音のエネルギーをとらえ、熱エネルギーに変換することで騒音を減らすものが代表的である。吸音材層28は、発泡体のため表面にザラつきがあり、用紙Pに触れると用紙Pの角や端部に発泡部が引っかかって折れ曲がったり、また、摩擦抵抗が高いので摺接音が発生したり、用紙Pの搬送の妨げになる場合がある。このため、本実施例においては用紙Pの搬送面にフィルムシート29を配置し、吸音材層28は直接用紙Pと摺接しないようにしている。しかし、吸音材層28の表面全体をフィルムシート29で覆ってしまうと吸音効果がなくなるので、フィルムシート29に所定間隔Dで穴を開け、さらに吸音材層28に凹部30を設けている。単に平フィルムシート29に穴を開けるだけでなく、吸音材層28側に凹部30を設けているのは、吸音材の表面積を大きくし、用紙Pによる騒音をより多く吸音するためである。また、フィルムシート29は平滑性が良いため摩擦係数が非常に小さく、用紙Pとの摺接音を低減できる。なお、フィルムシート29としては、PETフィルムに限らず、ポリアミド樹脂フィルム、PTFE(ポリテトラフロロエチレン)フィルム等も使用可能である。
この場合に、フィルムシート29に形成される穴や吸音材層28の凹部は、どのような形状であっても良いが、特に、用紙Pの搬送方向に延びた筋状の穴で、この穴に連通する凹条溝である場合には、用紙Pの搬送時に、用紙Pの先端が引っかかることを適切に防止してスムーズな搬送が可能となるので好適である。
また、本実施例においては、搬送ガイド板26及び27の搬送経路がR形状を持っている場合、用紙Pは搬送方向Aの外側、即ち第1の搬送ガイド板26の案内面26aに沿って搬送される傾向があるので、用紙Pが沿いやすい第1の搬送ガイド板26側に吸音材層28とフィルムシート29のセットを配置して、静音効果を達成しようとしている。
【0014】
図4、図5はレジストローラ対20に用紙Pが突き当てられた時の様子を説明した図である。図4に示すように、給紙トレー5から分離された用紙Pは、搬送経路の外側の第1の搬送ガイド板26の案内面26aにほぼ沿いながらレジストローラ対20に向かう。図5に示すように、レジストローラ対20に突き当てられた用紙Pは、矢印Bで示すたるみ部を形成し、これにより用紙Pの先端位置が整えられる。このたるみ形成は急激に行なわれるので、通常は搬送ガイド板26、27に衝撃的にぶつかり、大きな騒音を発生する。ところが、本実施例では、弾性体である吸音材層28とフィルムシート29の組み合わせを搬送ガイドとしているため、用紙Pのたるみ部ができる時の衝撃力は吸音材層28がクッションになって吸収し、しかも発生した音も吸音材層28が吸音するので非常に静かになる。このようにして、用紙Pが給紙された以降から、レジストローラ対20までの間の用紙Pの音を吸音することができる。また、用紙Pが摺接する部分は、フィルムシート29を使用しているので摺接音はほとんど出ない。さらに、用紙Pの後端跳ねや、用紙Pの先端が搬送ガイド部に突き当たったとしても、表面が平滑で、内部が弾性部材なので衝撃が吸収され、衝撃音が低減する。また衝撃音が発生したとしても吸音材により吸音される。
【0015】
[実施例2]
図6は本発明による他の実施形態の用紙搬送装置の外略構成を示す図である。本実施例においては、前述の実施例1における用紙搬送装置において、第1の搬送ガイド板26の外面26bにゴム材等の制振部材からなる制振部材層31が形成されている。従って、吸音材層28によって衝撃吸収してもなお、衝撃による振動が第1の搬送ガイド板26に伝搬して固体伝搬音として放射する場合は、制振部材層31によって振動を抑えることにより静音化が可能となる。また、制振部材層31の基材に遮音効果の高い材料(密度が高く厚い材料)を使用すれば、搬送ガイド板26、27で発生した騒音を遮音することができる。この様に、用紙Pの搬送音について、吸音、衝撃吸収、遮音、制振(固体伝搬を抑える)作用を与えることによって、より効果的に静音化が可能となる。
この場合に、制振部材層31は、第1搬送ガイド板26の外面26bに限らず、内面26aと吸音材層28との間に介在させても良い。しかしながら、内面26aに制振部材層31を形成する場合には、用紙Pの搬送経路内が狭くなるので、外面26bに形成することが望ましい。
【0016】
[実施例3]
図7、図8は、図3で示す凹部30の配置位置を用紙Pの搬送位置との関係を検討したものである。図7で示す例では、搬送ガイド板26を搬送される用紙Pの両側端P1及びP2が搬送ガイド面の凸部分であるフィルムシート29の中央部分に位置するように、凹部30の位置が設定されている。このように、凹部30が用紙Pの側端P1及びP2内に位置するように設定されていると、用紙Pの側端P1及びP2が凹部内に落ち込んで用紙Pのガイドが不安定になる場合が防止される。これに対して、図8に示すように、用紙Pの側端P1が凹部30内に位置するような位置に凹部30が形成されている場合には、用紙Pの一側端P1が搬送ガイド面の凹部30の端部に接近していて、用紙Pの端部P1が凹部30に引っかかったり先端が折れたりする可能性がある。なお、図8の矢印C方向は横レジスト方向と言われ、一般的に、横レジスト方向は狙いの値から±何mm以内か保証されており、図8の距離±d1、±d2が横レジスト方向の保証範囲より大きければ用紙Pの端部P1、P2が凹部30に引っかかったり先端が折れたりすることはなくなり、不具合が解決される。
【0017】
[実施例4]
図9及び図10は、本発明による他の実施形態の概略構成を示す図である。本実施例においては、フィルムシート29の端部29a、29b、29cを図9、図10に示すように、吸音材層28側に曲げている。これは、図3で示すフィルムシート29の端部にバリや傷があった場合、用紙Pを通紙すると用紙Pの表面とフィルムシート29のバリや傷が摺接して、騒音を発生する場合があり、これを防ぐために、図9及び図10にしめすように、フィルムシート29の両側端及び前後端の先端を折り曲げて折曲部29a、29b、29cを形成し、これらの折曲部29a、29b、29cを吸音材層28に接着、固定している。そのため、フィルムシート29の凹部30での折り曲げ部分では、バリが形成されないため、用紙Pのフィルムシート29のバリとの摺接音の発生を防止することが可能となった。
【0018】
[実施例5]
図11は、本発明による他の実施形態の概略構成を示す図である。本実施例においては、第1の搬送ガイド板26及び第2の搬送ガイド板27の両方に弾性体である吸音材層28A及び28Bとフィルムシート29A及び29Bをセットで配置した。図11では、フィルムシート29A及び29Bは、図示していないが、吸音材層28A及び28Bの用紙Pが通紙される側の表面に取り付けられている。なお、フィルムシート29A及び29Bは、前述の実施例4で示したような折曲部29Aa、29A及び29Ba、29Bbがこれらの端部に形成されている。
搬送ガイド板26及び27の片側のみに前述の実施例1〜4に示す静音化機構を取り付けた場合には、静音化機構の取り付けられていない搬送ガイド板側で次の事が起こる可能性がある。即ち、音の反射、用紙Pと搬送ガイド板26及び27の摺接音の発生、あるいは、衝撃的に用紙Pと搬送ガイド板26及び27とが衝突して衝撃音が発生する等、十分に静音化できない場合がある。
そのような場合に備えて、本実施例においては、搬送ガイド板26及び27の両側に静音化機構を取り付けている。従って、搬送ガイド板26及び27の両側ともに、吸音材層28A及び28Bとフィルムシート29A及び29Bを装着してあるので用紙Pとの摺接音は発生せず、両側に吸音材層28A及び28Bを配置してあるので音の反射が起こらない。レジストローラ対20に用紙Pが突き当たった時の衝撃音も効率よく静音化できる。
【0019】
この場合に、吸音材層28A及び28Bに形成される凹部30A及び30Bは、図12又は図13に示すように、対向する搬送ガイド板26及び27同士で互い違いに配置してある。図12に示す場合は完全に互い違いにしている。この場合、搬送ガイド板26及び27の側端部で凹部30Bが位置してこの凹部30Bから音が漏れやすくなる可能性がある。これに対して、図13で示す場合は、搬送ガイドの端部については、音が漏れにくいように凹部30A及び30Bとも側端より内方に位置するように設定されている。従って、吸音材層28A及び28Bの凹部30A及び30Bを互い違いに形成することで、用紙Pの面は2つの搬送ガイドのどちらかに吸音材が露出している部分に位置するので、用紙Pから放射する音は全て吸音材に吸音されやすくなる。このように、図13に示す場合には、端部に凸となるフィルムシート29A及び29Bが位置するように設定されているので、端部からの騒音の漏れを抑制することが可能となり、より静音化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による一実施形態の画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明による実施例1に示す用紙搬送装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】図2のA−A線上で切断した断面図である。
【図4】本発明による実施例1に示す用紙搬送装置の用紙の搬送状態を示す断面図である。
【図5】本発明による実施例1に示す用紙搬送装置の用紙のたるみ状態を示す断面図である。
【図6】本発明による実施例2に示す用紙搬送装置の概略構成を示す断面図である。
【図7】本発明による実施例3に示す用紙搬送装置の概略構成を示す断面図である。
【図8】本発明による実施例3に示す他の実施形態の用紙搬送装置の概略構成を示す断面図である。
【図9】本発明による実施例4に示す用紙搬送装置の概略構成を示す斜視図である。
【図10】図9のB−B線上で切断した断面図である。
【図11】本発明による実施例5に示す用紙搬送装置の概略構成を示す断面図である。
【図12】図11のC−C線上で切断した断面図である。
【図13】図11のC−C線上で切断した他の実施形態の断面図である。
【図14】従来の用紙搬送装置の概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1…カラープリンタ、3…プリンタエンジン、4…光書込装置、5…給紙トレー、6…定着装置、8…感光体、9…帯電ローラ、10…現像装置、11…クリーニング装置、12…一次転写ローラ、13…中間転写ベルト、14…二次転写ローラ、19…搬送ローラ対、20…レジスタローラ対、22…ピックアップローラ、24…フィードローラ、25…リバースローラ、26…第1のガイド板、27…第2のガイド板、28、28A、28B…吸音材層、29、29A、29B…フィルムシート、30、30A、30B…凹部、31…制振部材層、32…用紙搬送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙部に収容される用紙を1枚ずつ送り出す給紙手段と、前記用紙を一旦停止させて所定のタイミングで搬送するレジストローラ対と、前記給紙手段から給紙された用紙を前記レジストローラ対に搬送する搬送手段と、当該搬送手段から前記レジストローラ対まで前記用紙の裏面を案内する第1の搬送ガイド板及び用紙の表面を案内する第2の搬送ガイド板とを備えた用紙搬送装置において、
前記第1及び第2の搬送ガイド板の少なくとも一方の搬送ガイド板の前記用紙を案内する側の内面上に、吸音材層を配設し、当該吸音材層上に所定間隔を置いて前記吸音材層より摩擦抵抗の小さい低摩擦層を形成したことを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載の用紙搬送装置において、
前記吸音材層は、前記第1及び第2の搬送ガイド板の少なくとも一方の案内面全面に亘って配設されていることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の用紙搬送装置において、
前記低摩擦層の所定間隔を形成する間隔部は、吸音材層内まで切除された凹部であることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項4】
請求項3記載の用紙搬送装置において、
前記低摩擦層の両端に折曲部が形成されており、当該折曲部は、前記凹部内に固着されていることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項5】
請求項3又は4記載の用紙搬送装置において、
前記凹部は、前記用紙の搬送方向に延びた凹条溝であることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項6】
請求項5記載の用紙搬送装置において、
前記凹条溝は、前記搬送される用紙の側端内に配設されることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項記載の用紙搬送装置において、
前記第1及び第2の搬送ガイド板の両方の搬送ガイド板の前記用紙を案内する側の内面上に、吸音材層を配設し、当該吸音材層上に所定間隔を置いて前記吸音材層より摩擦抵抗の小さい低摩擦層を形成したことを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項8】
請求項7記載の用紙搬送装置において、
前記第1の搬送ガイド板と第2の搬送ガイド板に形成される低摩擦層と所定間隔を有する間隔部とは、搬送される用紙に対して互い違いに対向して配設されていることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項9】
給紙部に収容される用紙を1枚ずつ送り出してレジストローラ対まで当該用紙を搬送する用紙搬送装置と、当該用紙搬送装置のレジストローラ対から所定のタイミングで搬送された用紙に、画像を形成する画像形成手段を備えた画像形成装置において、
前記用紙搬送装置は、請求項1乃至8の何れか1項記載の用紙搬送装置であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−40565(P2009−40565A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208510(P2007−208510)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】