説明

用紙搬送装置

【課題】用紙搬送経路切替部の切替の際の衝撃音を解消しつつ、用紙の高速かつ円滑な搬送性を向上させる。
【解決手段】搬送経路切替部220と、第一の用紙搬送ガイド部231及び第二の用紙搬送ガイド部233の少なくともいずれか一方との間に備えられ、衝突を緩衝する緩衝部材241,243と、緩衝部材の表面に備えられ、用紙の接触により変形可能な変形可能部材251,253と、を備え、緩衝部材241,243及び変形可能部材251,253は、用紙搬送ガイド部231,233の用紙搬送方向と直行する方向の両端部に備えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙搬送路の切替を行う用紙搬送経路切替部を備えた用紙搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置の搬送経路切替部においては、分岐部材としてのフリッパがある。フリッパは、用紙搬送制御に基づいて、2つ以上の用紙搬送経路の分岐の切替を行うように構成されている。この場合、フリッパは、上述した用紙搬送経路を切替える毎に、搬送経路において用紙搬送をガイドする用紙搬送ガイド部に衝突する場合があった。この結果、その衝突の際に大きな衝撃音を発することもある。
【先行技術文献】
【0003】
【特許文献】
【特許文献】 特開平11−193159号公報
上記した課題を解決するために、図6には、用紙Sが搬送ローラ対49から搬送され、搬送路が切替される場合、切替ガイド41と対向してそれぞれ設けられ、切替ガイド41が搬送方向を切り替えるために回動した際に切替ガイド41により切り替えられた用紙Sの搬送をガイドする搬送ガイド部43と、切替ガイド41と搬送ガイド部43との間に設けた緩衝部材45と、緩衝部材の表面に変形可能部材47とを備える用紙搬送方向切替機構40が示される。この緩衝部材45と変形可能部材47によって、切替ガイド41の切替による衝撃音を緩衝する効果を奏するのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の高速化における枚葉紙搬送においては、緩衝部材45及び変形可能部材47を備えた構成に例示されるような衝撃音の抑制をするだけではなく、さらなる高速化かつ、円滑な搬送が要求されている。
しかしながら、上述した特許文献のように、緩衝部材45を設け、さらにその上に緩衝部材を覆うように形成された変形可能部材47を搬送ガイド部材43に沿うように備えた場合、搬送ガイド部材43上における変形可能部材47の占める面積が多くなる。
【0005】
この結果、高速化における枚葉紙搬送においては、用紙Sが変形可能部材47と擦れる頻度が多くなり、変形可能部材47に傷ができてしまう。さらに、用紙Sがこの傷に衝突して、搬送不良が起こる場合がある。
【0006】
また、変形可能部材47が用紙と接触した場合にあっては、用紙接触が高速に行われることにより、用紙と変形可能部材47との間で静電気が発生してしまい、双方が帯電する虞がある。この結果、変形可能部材47が帯電した場合には、用紙Sは帯電した変形可能部材47に吸い寄せられ、変形可能部材47上で滞留し、後続する用紙が、この滞留した用紙Sと衝突することにより、搬送不良が起こる場合がある。また、用紙Sが帯電した場合には、変形可能部材47よりも用紙搬送方向下流側に搬送されることにより、帯電した用紙によるセンサの誤検知の虞がある。さらには、帯電した用紙の排出の際には、静電気の影響で排紙揃えが悪くなり、結果として、印刷装置全体として搬送不良を招く虞がある。
【0007】
さらに、前述した用紙と変形可能部材が擦れることによる傷と帯電が併発した場合であっては、さらなる用紙搬送不良も発生する虞があり、用紙を高速かつ円滑に搬送することができない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、用紙搬送経路切替部の切替の際の衝撃音を解消しつつ、用紙の高速かつ円滑な搬送性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)
用紙が搬送される第一の用紙搬送経路と第二の用紙搬送経路とを備え、
前記第一の用紙搬送経路と前記第二の用紙搬送経路に切替を行う用紙搬送経路切替部と、
前記用紙搬送経路切替部の切替方向に対向してそれぞれ備えられ、前記用紙搬送切替部により切り替えられた用紙の搬送をガイドし、前記第一の用紙搬送経路及び前記第二の用紙搬送経路に備えられる第一の用紙搬送ガイド部及び第二の用紙搬送ガイド部と、
を備えた用紙搬送装置において、
さらに、前記搬送経路切替部と、前記第一の用紙搬送ガイド部及び前記第二の用紙搬送ガイド部の少なくともいずれか一方との間に備えられ、衝突を緩衝する緩衝部材と、
前記緩衝部材の表面に備えられ、用紙の接触により変形可能な変形可能部材と、
を備え、
前記緩衝部材及び前記変形可能部材は、前記用紙搬送ガイド部の用紙搬送方向と直行する方向の両端部に備えられること
を特徴とする用紙搬送装置。
(2)
前記用紙搬送経路切替部は、付勢部材により付勢可能に構成され、
前記付勢部材による付勢が解除された場合の前記第一の用紙搬送ガイド部上の第一の緩衝部材と、
前記付勢部材により付勢されている場合の前記第二の用紙搬送ガイド部の第二の緩衝部材と、
を備えた用紙搬送装置において、
前記第一の緩衝部材は、前記第二の緩衝部材よりも緩衝可能に構成されること
と特徴とする(1)に記載の用紙搬送装置。
(3)
前記第一の緩衝部材は、前記第二の緩衝部材よりも厚さが大きく形成されること
と特徴とする(2)に記載の用紙搬送装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第一の特徴によれば、用紙と変形可能部材の接触する面積を比較的小さくすることにより、用紙搬送経路切替部の切替の際の衝撃音を解消しつつ、用紙の高速かつ円滑な搬送性を向上させることができる。
【0011】
本発明の第二の特徴によれば、付勢部材による付勢を解除した場合にあっては、緩衝部材及び変形可能部材に衝突する力が大きいため、より衝撃音の発生を抑制することができる。
【0012】
本発明の第三の特徴によれば、第一の緩衝部材の厚みを第二の緩衝部材の厚みよりも大きく形成することによって、より衝撃音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態が適用される印刷装置100の全体構成図である。
【図2】本実施形態における用紙搬送装置200を示す図である。
【図3】本実施形態における用紙搬送装置200の付勢部材30の構成及び作用を示す図である。
【図4】本実施形態における用紙搬送装置200の斜視図である。
【図5】本実施形態における用紙搬送装置200の用紙側から見た正面図である。
【図6】従来技術を示す図である。
【発明を実施するための形態】

【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(印刷装置の全体構成)
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る印刷装置100の概要を示す図である。本実施形態では、印刷装置100は、多数のノズルが形成されたインクヘッドを複数備え、それぞれのインクヘッドから黒又はカラーインクを吐出してライン単位で印刷を行い、搬送ベルト上の記録用紙上に複数の画像を互いに重なり合うように形成する画像形成装置としてのインクジェット方式のライン型カラープリンタを例に説明する。
【0015】
図1に示すように印刷装置100は、環状の搬送経路上を搬送される用紙表面に画像を形成する装置であり、搬送経路は、記録媒体を供給する給紙系搬送経路FRと、この給紙系搬送経路FRからヘッドユニット110を経て排紙経路DRへ至る通常経路CRと、通常経路CRに分岐接続された反転経路SRとから概略構成されている。
【0016】
給紙系搬送経路FRにおいて、印刷用紙の供給を行う給紙機構としては、筐体側面の外部に配設されたサイド給紙台120と、筐体内部に設けられた複数の給紙トレイ(130a、130b、130c、130d)とが備えられている。また、印刷済の印刷用紙を排出する排紙機構として排紙口140を備えている。
【0017】
サイド給紙台120、給紙トレイ130のいずれかの給紙機構から給紙された印刷用紙は、ローラ等の駆動機構によって筐体内の給紙系搬送経路FRに沿って搬送され、印刷用紙の先頭部分の基準位置であるレジスト部Rに導かれる。レジスト部Rのさらに用紙搬送方向下流側には、複数の印字ヘッドを備えたヘッドユニット110が設けられている。印刷用紙は、ヘッドユニット110の対向面に設けられた搬送ベルト160によって印刷条件により定められる速度で搬送されながら、各印字ヘッドから吐出されたインクによりライン単位で画像形成される。
【0018】
印刷済の印刷用紙は、さらに、ローラ等の駆動機構によって通常経路CR上を搬送される。印刷用紙の片側の面のみに印刷を行う片面印刷の場合は、そのまま排紙経路DRを経て、排紙口140に導かれて排紙され、排紙口140の受台として設けられた排紙台150に印刷面を下にして積載されていく。排紙台150は、筐体から突出したトレイ形状をしており、ある程度の厚みを有している。排紙台150は、印刷装置本体に対して傾斜しており、傾斜の下位置に形成された壁により、排紙口140から排紙された印刷用紙が自然に整えられて重なっていくようになっている。
【0019】
一方、印刷用紙の両面に印刷を行う両面印刷の場合は、表面(最初に印刷される面を「表面」、次に印刷される面を「裏面」とする)印刷終了時には排紙経路DR側に導かれずに、さらに筐体内を搬送され、反転経路SRに送出される。このため、印刷装置100は、裏面印刷用に搬送経路を切り替えるための切替機構170が設けられており、切替機構170によって排出経路へ送出されなかった印刷用紙は、反転経路SRに引き込まれる。この切替機構170については、後述する。
【0020】
この反転経路SRでは、通常経路CRから用紙が受け渡され、用紙を往復させることにより用紙の表裏を反転させる、いわゆるスイッチバックを行う。そして、ローラ等の駆動機構によって、切替機構172を経由して通常経路CRに戻され、レジスト部Rを経て再給紙されて、表面と同様の手順によって裏面の印刷が行われる。その後、裏面の印刷が行われ、両面に画像が形成された印刷用紙は、排紙経路DRを通じて排紙口140に導かれて排紙され、排紙口140の受台として設けられた排紙台150に積載されていく。
【0021】
印刷装置100では、給紙された印刷用紙の先頭部分の基準位置となるレジスト部Rには、両面印刷時に片面印刷済の印刷用紙も再給紙されてくる。このため、レジスト部Rの直前部分には、新規に給紙される印刷用紙の搬送経路と、裏面印刷の用紙が循環して搬送されてくる再給紙経路とが合流する合流地点が形成される。レジスト部Rは、給紙系搬送経路FRと通常経路CRとの合流点近傍において、用紙の送り出しを行う。
【0022】
なお、本実施形態では、上記合流地点を基準に、給紙機構側の経路を給紙系搬送経路FRとし、それ以外の経路を搬送経路とする。この搬送経路は環状をなし、上述したように通常経路CRと反転経路SRとが含まれる。
【0023】
本実施形態においては、近年の高速搬送の要求に応じたものであり、ある印刷用紙を給紙した後、その印刷用紙に印刷が施され排紙されるのを待って次の印刷用紙を給紙するのではなく、用紙搬送のスケジューリングにより、先行する印刷用紙が排紙される前に、後続の印刷用紙を給紙して、所定の間隔で連続的に印刷することができるようになっている。したがって、両面印刷時の通常のスケジューリングでは、表面の用紙を給紙する際に、反転経路SRから戻ってきた用紙が挿入される位置を確保するように、予めスペースを確保しておく。これにより、本装置では、表面の印刷と裏面の印刷とを並行させることができ、片面印刷時に対して2倍の生産性を確保することができる。
【0024】
搬送ベルト160は、ヘッドユニット110に対向する面の前端及び後端に配設された駆動ローラ161及び従動ローラ162に掛け渡されており、図1中時計回り方向に回転移動する。また、搬送ベルト160の上面には、そのベルト移動方向に沿って、4色のインクヘッドが並べて配置され、複数の画像を互いに重なり合うようにしてカラー画像を形成するヘッドユニット110が対向配置されている。
【0025】
さらに、図1に示すように、印刷装置100には、演算処理部330が備えられている。この演算処理部330は、CPUやDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、メモリ、及びその他の電子回路等のハードウェア、あるいはその機能を持ったプログラム等のソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成された演算モジュールであり、プログラムを適宜読み込んで実行することにより種々の機能モジュールを仮想的に構築し、構築された各機能モジュールによって、画像データに関する処理や、各部の動作制御、ユーザー操作に対する種々の処理を行う。また、この演算処理部330には、操作パネル340が接続されており、この操作パネル340を通じて、ユーザーによる指示や設定操作を受け付けることができる。
【0026】
次に、図2を参照して、用紙搬送装置200の説明をする。図2は、図1の切替機構170としての分岐部材付近を拡大した断面図である。用紙搬送装置200は、用紙を搬送する用紙搬送ローラ対210により、用紙が搬送されてくると、用紙切替部材としての分岐部材220によって、排紙経路DR方向に導く経路で、図2(a)矢印方向に示される第一の用紙搬送経路と、用紙の裏面に印刷するための反転経路方向で、図2(b)矢印方向に示される第二の用紙搬送経路とに分岐するように切り替える。また、第一の用紙搬送経路及び第二の用紙搬送経路には、分岐部材220とそれぞれ切替方向に対向して備えられ、用紙の搬送をガイドする第一の用紙搬送ガイド部材231及び第二の用紙搬送ガイド部材233が備えられる。
【0027】
図2(a)に示されるように、用紙を排紙経路DRに搬送する場合、すなわち第一の用紙搬送経路に搬送する場合には、分岐部材220は、後述する付勢部材としてのソレノイドにより、ソレノイドの付勢が解除された状態、すなわち、ソレノイドがOFFの状態には、鉛直方向下方に可動するように構成されている。
【0028】
また、図2(b)に示されるように、用紙を裏面に印刷する場合、すなわち第二の用紙搬送経路に搬送する場合には、分岐部材220は、ソレノイドがON状態となり、鉛直方向上方に付勢された状態となるように構成されている。
【0029】
本実施形態において、図2(a)及び(b)に示されるように、用紙搬送装置200は、第一の用紙搬送ガイド部材231及び第二の用紙搬送ガイド部材233の表面上に、可撓性部材で構成された緩衝部材としての第一の緩衝パット241及び第二の緩衝パット243とを備え、さらに、第一の緩衝パット241及び第二の緩衝パット243上に、用紙を円滑に搬送するために変形を可能とした変形可能部材としての第一の変形可能部材としての樹脂シート部材251及び第二の変形可能部材としての樹脂シート部材253をさらに備えている。分岐部材220が、高速搬送による動作によって、頻繁に切替が行われるため、用紙搬送ガイド部材231,233に分岐部材220が当たると、衝撃音が出る虞がある。本実施形態においては、緩衝パット241,243を用紙搬送ガイド部材231,233と分岐部材220の間に備えることにより、衝撃音を抑制することができる。さらに、樹脂シート部材251,253は、緩衝パッド241,243上に備えられることにより、高速搬送を円滑にすることができる。
【0030】
なお、本実施形態における緩衝パット241,243は、反発弾性が比較的小さい衝撃吸収部材を使用するとよい。具体的には、ポリエチレンフォームであることが望ましい。この材料により構成されることで、より衝撃音を減少させることができる。
【0031】
本実施形態において、特に、ソレノイドが解除された場合の付勢力は、第二の用紙搬送経路における用紙搬送ガイド部材233において、緩衝パット243及び樹脂シート部材253に比較的強い力で衝突する場合がある。本実施形態においては、第二の用紙搬送経路の用紙搬送ガイド部材233に備えられる緩衝パッド243の衝撃を吸収する衝撃吸収力を第一の用紙搬送経路の用紙搬送ガイド部材231に備えられる緩衝パット241の衝撃吸収力よりも高くなるように構成することが望ましい。具体的には、より緩衝可能に構成することが望ましく、より好ましくは、緩衝パッド241,243を同一部材で形成した場合にあっては、第二の用紙搬送経路の用紙搬送ガイド部材233に備えられる緩衝パッド243の厚みを第一の用紙搬送経路の搬送ガイド部材231に備えられる緩衝パッド241の厚みよりも大きく形成することが望ましい。
【0032】
また、表面積を考慮すると、第二の用紙搬送経路の用紙搬送ガイド部材233に備えられる緩衝パッド243の表面積を第一の用紙搬送経路の搬送ガイド部材231に備えられる緩衝パッド241の表面積よりも大きく形成してもよい。
【0033】
次に、図3を参照して、分岐部材220に接続され、この分岐部材の切替を行う駆動手段としてのソレノイド機構30の動作及び作用を説明する。ソレノイド機構30は、ヨーク32に接続されるプランジャ34を介し、さらに連結部材36の一端を介して、分岐部材220の軸38に接続されている。また、連結部材36の他端は、弾性機構31により固定端に対して付勢された状態である。また、ソレノイド機構30のヨーク32は、図示しない制御機構に接続され、用紙搬送切替制御によって、付勢された状態であるON状態及び付勢が解除された状態であるOFF状態が制御される。ソレノイド機構30がON状態の場合、分岐部材23は、第二の用紙搬送経路に用紙が搬送されるように、矢印方向に回動される。さらに、ソレノイド機構30がOFF状態の場合、分岐部材23は、第一の用紙搬送経路に用紙が搬送されるように、付勢が解除される。本実施形態における印刷装置100においては、用紙が高速に搬送されるため、搬送されてくる用紙とこの用紙に後続して搬送される用紙との間隔が狭くなる。図3に示されたようなソレノイド機構30を分岐部材220に用いることによって、搬送されてくる用紙の切替の応答性を高めることができる。
【0034】
図4及び図5を参照して、本実施形態における用紙搬送装置200の分岐部材220付近の斜視図及び用紙搬送装置200の用紙側から見た正面図を説明する。なお、図4においては、第一の用紙搬送経路の緩衝パッド241及び樹脂シート部材251を代表して説明し、図示しない第二の用紙搬送経路も同様とする。
図4及び図5(a)に示されるように、緩衝パッド241及び樹脂シート部材251は、それぞれ用紙搬送方向と直交する方向であって用紙搬送ガイド部材231の両端部に備えられている。
【0035】
ここで、用紙搬送方向と直交する方向であって用紙搬送ガイド部材231の両端部とは、用紙搬送ガイド部材231における用紙搬送方向に直交する方向であって、印刷可能な用紙の最大用紙幅の中心よりも、外側に向けられた端部のことである。本実施形態において、A4サイズ用紙幅297mmが考慮された場合、規定幅は、約300mm程度が設定される。本実施形態においては、規定幅の中心から規定幅の範囲よりも外側であって、用紙搬送ガイド部材231の両端部に、緩衝パッド241及び樹脂シート部材251を配置することにより、搬送されてくる用紙と樹脂シート部材251の接触を抑制することができる。さらに、用紙と樹脂シート部材251との接触を抑制することにより、摩擦による傷の発生及び静電気の発生を抑えることができる。本実施形態においては、用紙搬送装置200において高速に搬送された場合にあっても、衝撃音を減少させることができ、かつ円滑な搬送性を実現することができる。
【0036】
なお、本実施形態においては、規定幅に基づいて説明したが、これに限られず、用紙と樹脂シート部材251の接触範囲を比較的小さく設定する形態てあればよい。例えば、緩衝パッド241を覆うように配置される樹脂シート部材251が、少なくとも、用紙搬送方向に直交する方向の両端部のみに備えられていればよい。
【0037】
また、用紙幅は、搬送されてくる用紙によって異なる場合がある。本実施形態においては、給紙台120、給紙トレイ130で検知した用紙サイズの検知結果に基づいて、少なくとも樹脂シート部材251,253の位置が、好ましくは緩衝パッド241,243及び樹脂シート部材251,253の位置が、用紙搬送方向に直交する方向に可動に構成されるように制御する制御部を備えていてもよい。
【0038】
また、図5(b)に示されるように、本実施形態においては、用紙搬送ガイド部材231,233に対して、より搬送方向上流側に緩衝パッド241,243及び樹脂シート部材251,253を配置した。換言すると、緩衝パッド241,243及び樹脂シート部材251,253は、用紙搬送ローラ対210により近い箇所に配置されている。
【0039】
本実施形態と比較して、緩衝パッド241,243及び樹脂シート部材251,253が搬送方向下流側に配置された場合にあっては、緩衝パッド241,243及び樹脂シート部材251,253と、分岐部材220及び搬送ガイド部材231,233との空間距離が小さくなる。近年の印刷装置の小型化の傾向を鑑みると、緩衝パッド241,243の用紙搬送ガイド部材231,233上に占める範囲が大きくなり、用紙搬送経路の自由度が制約されると共に、搬送が制約され、搬送不良を起こしやすくなる虞がある。したがって、本実施形態においては、搬送ローラ対210の用紙搬送方向下流側により近い範囲であって、用紙搬送の自由度が比較的高い用紙搬送ガイド部材231,233の用紙搬送方向上流側に配置することによって、用紙搬送経路に制約されずに、緩衝パッド241,243及び樹脂シート部材251,253を配置することができる。これによって、より高速かつ円滑な搬送性を向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態においては、印刷装置100の排紙方向と裏面印刷方向への分岐部材220で説明したが、これに限られることなく、分岐部材220が存在可能な箇所であって、搬送ガイド部材と衝突可能性のある箇所に設けられればよい。例えば、図1に示される反転装置SR部の切替機構172としての分岐部材に本実施形態の用紙搬送装置が用いられる場合がある。本実施形態において、反転搬送をする際は、分岐部材の動作が、用紙の搬入搬出によって逐次行われることになり、特に高速搬送においては、分岐部材の動作が比較的多くなることとなる。したがって、本実施形態においては、高速搬送による逐次の分岐が行われる動作においても、本実施形態の用紙搬送装置を配置することにより、衝撃音を抑制し、搬送をスムーズにできる効果を奏する。
【0041】
さらに、図1に図示しないが、ヘッドユニット110にて片面が印刷された用紙が、搬送ベルト160と水平にそのままストレートで排紙が行われる場合がある。その際、片面印刷で排紙するか、搬送経路を循環させて両面搬送を行うか、の一方に搬送方向が切り替えられる場合ある。本実施形態においても、用紙搬送装置を配置することにより、同様の効果を得ることができる。
【0042】
以上、実施形態を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明は本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載及び特許請求の範囲の記載と均等の範囲により決定されるものである。
【符号の説明】
【0043】
100 印刷装置
110 ヘッドユニット
120 サイド給紙台
130 給紙トレイ
140 排紙口
150 排紙台
160 搬送ベルト
161 駆動ローラ
162 従動ローラ
170 切替機構
172 切替機構
330 演算処理部
340 操作パネル
200 用紙搬送装置
210 用紙搬送ローラ対
220 分岐部材
231 第一の用紙搬送ガイド部材
233 第二の用紙搬送ガイド部材
241 第一の緩衝パット
243 第二の緩衝パット
251,253 樹脂シート部材
30 ソレノイド機構
31 弾性部材
32 ヨーク
34 プランジャ
36 連結部材
38 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙が搬送される第一の用紙搬送経路と第二の用紙搬送経路とを備え、
前記第一の用紙搬送経路と前記第二の用紙搬送経路に切替を行う用紙搬送経路切替部と、
前記用紙搬送経路切替部の切替方向に対向してそれぞれ備えられ、前記用紙搬送切替部により切り替えられた用紙の搬送をガイドし、前記第一の用紙搬送経路及び前記第二の用紙搬送経路に備えられる第一の用紙搬送ガイド部及び第二の用紙搬送ガイド部と、
を備えた用紙搬送装置において、
さらに、前記搬送経路切替部と、前記第一の用紙搬送ガイド部及び前記第二の用紙搬送ガイド部の少なくともいずれか一方との間に備えられ、衝突を緩衝する緩衝部材と、
前記緩衝部材の表面に備えられ、用紙の接触により変形可能な変形可能部材と、
を備え、
前記緩衝部材及び前記変形可能部材は、前記用紙搬送ガイド部の用紙搬送方向と直行する方向の両端部に備えられること
を特徴とする用紙搬送装置。
【請求項2】
前記用紙搬送経路切替部は、付勢部材により付勢可能に構成され、
前記付勢部材による付勢が解除された場合の前記第一の用紙搬送ガイド部上の第一の緩衝部材と、
前記付勢部材により付勢されている場合の前記第二の用紙搬送ガイド部の第二の緩衝部材と、
を備えた用紙搬送装置において、
前記第一の緩衝部材は、前記第二の緩衝部材よりも緩衝可能に構成されること
と特徴とする請求項1に記載の用紙搬送装置。
【請求項3】
前記第一の緩衝部材は、前記第二の緩衝部材よりも厚さが大きく形成されること
と特徴とする請求項2に記載の用紙搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−195332(P2011−195332A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88140(P2010−88140)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】