説明

男女共用個室便所

【課題】男女共用個室便所において、男性が使用する場合には不必要な擬音を発生させることなく、女性が使用する場合のみ確実に排泄音を打ち消す擬音を発生させること。
【解決手段】個室便所1は、四方を壁1aで囲まれた個室内に洋式便器2が水周り配管とともに設置されたものであり、洋式便器2の便座3には、使用者が便座3に着座したことを圧力で検出して出力信号電流を発する着座センサ4が取付けられている。また、正面の壁1aには、女性用ドア7及び男性用ドア8の2つのドアが設けられている。これらの女性用ドア7及び男性用ドア8の近傍には、女性用ドア開閉センサ6A及び男性用ドア開閉センサ6Bが設置されている。これらのセンサ6A,6Bによって女性が使用しているか男性が使用しているかが判定され、着座センサ4で着座が確認されるとともに女性が使用している場合にのみ擬音発生装置5が作動するように制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、男女共用の1個の洋式便器を備えた個室便所において、排泄音、排尿音を打ち消すための擬音発生装置を必要な場合のみ効率的に作動させることができる男女共用個室便所に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水洗便所において排泄行為(排尿を含む)を行う場合、便器内に水が溜まっていることから排泄時に音が発生する。使用者が女性の場合には、排泄前からまたは排泄と同時に水洗装置を作動させて便器に水を流して、排泄時に発生する音を打ち消すようにすることが多い。しかし、これでは水を無駄に流すことになって極めて不経済であり、節水の点からも好ましくない。そこで、近年は、水洗時の音と同様の特定の擬音を発生させる擬音発生装置を備えて、使用者が擬音発生装置のスイッチを操作することによって水洗時の音と同様の擬音を発生させるようにするものがある。
【0003】
しかしながら、手動操作式の擬音発生装置においては、使用者が操作しなければならないという煩わしさがあるとともに、使用者が擬音発生装置の存在に気付かずに、便器に水を流して排泄時に発生する音を聞こえなくする場合もあり、擬音発生装置を設置した実効が上がっていない。
そこで、特許文献1の発明においては、便器上における立ち上がった姿勢と座った姿勢とが識別可能となるように使用者の姿勢を検出する姿勢検出器と、この姿勢検出器の出力により、使用者が便器上に座った時に擬音発生部を作動させる制御部とを備え、水槽内の水を便器に流すための電磁弁と、姿勢検出器の出力により、使用者が立ち上がった時に擬音発生部を停止させるとともに、前記電磁弁を一定時間だけ開放させる制御部を備え、手動によっては水槽内の水を便器に流せないようにするためのロック手段を備えた水洗便所用の擬音発生装置を創作している。
【0004】
しかし、この特許文献1の発明においては、使用者が便器上に座ると同時に擬音発生部が作動するため、使用者にとっては擬音が不要な時にも擬音が発生することがあった。そこで、特許文献2の発明においては、必要な時だけに擬音を発生させることができ、必要な場合には擬音発生を延長することができるように、便座に着座した状態を検知する着座センサまたは操作スイッチにより所定時間にわたって流水音等の擬音を発生するようにした擬音発生装置において、操作スイッチによる操作信号を着座センサによる出力信号に優先させて擬音の発生及び停止を制御するものとしている。
【0005】
また、特許文献3に記載の考案においては、実際に擬音発生が必要な排泄時のみに自動的に擬音を発生させることを目的として、排泄音を直接または間接的にマイクで集音し、集音された所定周波数領域の信号レベルと予め設定した排泄状態を示す基準レベルとを比較することによって擬音を発生させるように構成されている。
【特許文献1】特公平07−081294号公報
【特許文献2】特開平05−079084号公報
【特許文献3】実開平06−074676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの発明または考案においては、ホテルの客室等に設置されている男女両方が使用する個室便所に適用した場合においては、男性が使用する場合にも使用時に擬音が発生することになり、通常はそのような擬音を必要としない男性が使用する場合にも作動して、不要な電力を消費するという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、男女両方が共用する個室便所において、男性が使用する場合には不必要な擬音を発生させることなく、女性が使用する場合のみ確実に排泄音を打ち消す擬音を発生させることができる男女共用個室便所を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明にかかる男女共用個室便所は、内部に1個の洋式便器を有し、かつ、男性用ドアと女性用ドアの二つのドアを有した個室便所と、前記洋式便器の便座に着座した状態を検出する着座センサと、前記洋式便器の使用中の音を前記個室便所外から不明にする擬音を発生する擬音発生装置と、前記女性用ドアの開閉を検出するドア開閉センサと、前記男性用ドア及び前記女性用ドアの開閉を拘束するロック機構とを具備し、前記女性用ドアの開閉の検出及び/または前記女性用ドアの施錠の検出によって、前記擬音発生装置を作動させて前記擬音を所定時間発生させるものである。
ここで、上記擬音発生装置とは、前記洋式便器の使用中の音を前記個室便所外から聞いて不明にするための擬音を発生するもので、流水音等の水洗時に発生する音に類似した擬音をスピーカから発生させるものである。また、前記女性用ドアの開閉を検出するドア開閉センサは、結果として、前記女性用ドアの開閉を検出できればよい。勿論、前記男性用ドアの開閉を検出できる能力を有していてもよい。
そして、前記女性用ドアの開閉の検出及び/または前記女性用ドアの施錠の検出とは、1個または2個の検出信号とすることができる。
更に、女性用ドアが開閉されたか否かは、女性用ドアが開放されたとき、閉鎖されたときのいずれかの検出を行うことを意味する。
【0009】
請求項2の発明にかかる男女共用個室便所の前記擬音を停止させる前記所定時間は、前記着座センサにより前記洋式便器の便座に着座した着座検出が解除されるか、前記洋式便器の水洗装置により水が流されるまでの時間とするものである。ここで、前記洋式便器の便座から立ち上がったり、前記洋式便器の水洗装置により水が流されることは、排泄行為の終了を意味し、それを検出するものであり、センサまたはスイッチ操作からそれが検出できればよい。また、洋式便器の水洗装置により水が流されたのを判定するためには、水洗装置の水洗コックまたは水洗ボタン等の動作を検出するか、水洗装置の水流路の一部に水流音を検出するセンサを取付ける等の手段によることができる。
【0010】
請求項3の発明にかかる男女共用個室便所の前記擬音の発生は、前記女性用ドアの開閉の検出及び/または女性用ドアの施錠の検出の直後所定の時限の経過後に開始するもので、前記女性用ドアの開閉及び/または女性用ドアの施錠によって、他の操作を待つことなく、前記擬音を発生させるものである。
【0011】
請求項4の発明にかかる前記擬音の発生は、前記女性用ドアの開閉及び/または女性用ドアの施錠の検出の後、着座センサによる着座検出を行ったときの両者の条件で開始するものであるから、信頼性が高くなり、間違いのない前記擬音の発生動作が可能である。
【0012】
請求項5にかかる男女共用個室便所の前記男性用ドア及び前記女性用ドアの開閉を拘束するロック機構は、一方のドアのロック機構をロックすると連動して他方のドアのロック機構もロックされ、一方のドアのロック機構を解除すると連動して他方のドアのロック機構も解除されるものである。この連動するドアのロック機構は、機械的または電気的な機構とすることができる。即ち、2つのドアのロック機構を連動させる手段としては、電磁ソレノイドを利用した電気的方法でも良いし、リンク機構を用いた機械的な手段でも良い。
【0013】
請求項6にかかる男女共用個室便所は、前記擬音発生装置は前記擬音の音量を始めは小さめにして徐々に或いは段階的に大きくしていくものである。ここで徐々に大きくするというのは、その平均値を意味し、相対的変化として前記擬音の音量出力を始めは小さめにして徐々に或いは段階的に大きくしていくものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1にかかる男女共用個室便所は、男性用ドアと女性用ドアの二つのドアを有した個室便所の内部の洋式便器の便座に着座した状態を検出する着座センサと、前記洋式便器の使用中の音を前記個室便所外から不明にする擬音を発生する擬音発生装置と、前記女性用ドアの開閉を検出するドア開閉センサと、前記男性用ドア及び前記女性用ドアの開閉を拘束するロック機構とを具備し、前記女性用ドアの開閉の検出及び/または前記女性用ドアの施錠の検出によって、前記擬音発生装置を所定時間発生させるものである。
具体的には、女性用ドアが開閉されたか否かを判定するためには、女性用ドアの近傍に開閉を検出するリミットスイッチ等の女性用ドア開閉センサを取付ける等の方法によることができる。これによって、男性用ドアから男性が男女共用個室便所内に入った場合には、洋式便器の便座に着座して着座センサから出力信号が出力されても、女性用ドアが開閉されていないため擬音発生装置は作動せず、不要な擬音が発生することなく余分な電力を消費することがない。一方、女性用ドアから女性が男女共用個室便所内に入った場合には、前記女性用ドアの開閉の検出及び/または前記女性用ドアの施錠の検出によって、前記擬音発生装置を作動させて前記擬音を前記所定時間に亘って発生させることができる。
このようにして、男女両方が共用する個室便所において、男性が使用する場合には不必要な擬音を発生させることなく、女性が使用する場合のみ確実に排泄音を打ち消す擬音を発生させることができる男女共用個室便所となる。
特に、前記女性用ドアの開閉の検出及び着座センサによる着座検出の1つ以上の検出条件によって、前記擬音発生装置を作動させて前記擬音を前記所定時間に亘って発生させるものであるから、個室便所の設置場所に応じた対応が可能である。
【0015】
請求項2の発明にかかる男女共用個室便所の前記擬音を停止させる時間は、前記着座センサにより前記洋式便器の便座に着座した着座検出が解除されるか、前記洋式便器の水洗装置により水が流されるまでの時間とするものである。したがって、請求項1に記載の効果に加えて、便座に着座する前に排泄行為が始まることは考えられないため、少なくとも、前記女性用ドアの開閉及び女性用ドアの施錠の検出、着座センサの出力により洋式便器の便座に着座した状態が検出されると同時に擬音発生装置が作動して擬音を発生させる。そして、前記着座センサにより前記洋式便器の便座の着座検出が解除されるか、前記洋式便器の水洗装置により水が流された後は、水流音が発声するため擬音を発生させる必要がなくなるので、擬音発生装置の作動を停止させる。これによって、必要な時間だけ、効果的に擬音発生装置を作動させることができる。
また、近年、排泄後に局部を温水で洗浄できる局部洗浄装置付きの洋式便器も普及しているが、本発明にかかる男女共用個室便所に用いられる洋式便器は、このような局部洗浄装置付きのものであっても、支障なく各要素を配置することができる。そして、局部洗浄装置が作動している間は、擬音発生装置の作動を停止させたり、継続させたりすることができる。
【0016】
請求項3の発明にかかる男女共用個室便所は、前記女性用ドアの開閉及び/または女性用ドアの施錠の検出によって、前記擬音を発生させるものであるから、請求項1または請求項2に記載の効果に加えて、人が何ら操作することなく前記擬音を発生させることができる。
【0017】
請求項4の発明にかかる男女共用個室便所の前記擬音の発生は、前記女性用ドアの開閉及び/または女性用ドアの施錠の検出の後、着座センサによる着座検出を行ったときの両者の条件で開始するものであるから、請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の効果に加えて、信頼性の高い動作が期待できる。
【0018】
請求項5の発明にかかる男女共用個室便所は、男性用ドア及び女性用ドアにはそれぞれドアが開かないように内側からロックすることができるロック機構が設けられており、一方のドアのロック機構をロックすると連動して他方のドアのロック機構もロックされ、一方のドアのロック機構を解除すると連動して他方のドアのロック機構も解除される。
通常、個室便所のドアには使用中に他人が誤ってドアを開けることがないように、内側からドアをロックすることができるロック機構が設けられている。ここで、本発明にかかる男女共用個室便所には、男性用ドア及び女性用ドアの2つのドアが設けられていることから、使用時には内側から両方のドアをロックしなければならず、また使用後には両方のドアのロックを解除しなければならない。例えば、女性が女性用ドアから入って内側から両方のドアをロックし、使用後にうっかり女性用ドアのロックのみを解除して出たとすると、次に男性が男性用ドアから入ろうとしてもロックされているため開かず、仕方なく女性用ドアから入ることになり、便座に着座すると不必要な擬音が発生することとなる。
そこで、請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の効果に加えて、このような不都合と煩わしさを解消するために、内部から一方のドアのロック機構をロックすると連動して他方のドアのロック機構もロックされ、また、一方のドアのロック機構を解除すると連動して他方のドアのロック機構も解除される構成とし、使用中に他人が誤ってドアを開けることがなくなり、かつ、ドアの施錠・解錠を間違えることがない。
【0019】
請求項6の発明にかかる男女共用個室便所は、擬音発生装置が擬音の音量を始めは小さめにして徐々に或いは段階的に大きくしていくものである。
通常、排泄音は、最初小さくて徐々に大きくなっていくものであるので、請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載の効果に加えて、用を足している人及び用を足していない人は、急激な擬音発生に不快感を持つ場合があるが、所定の小音で擬音の出力を開始するから違和感を感じない使用となる。よって、効果的にかつ効率的に排泄音を打ち消す効果を得ることができる。
このようにして、男女両方が共用する個室便所において、男性が使用する場合には不必要な擬音を発生させることなく、女性が使用する場合のみ確実に、効果的に、かつ、効率的に排泄音を打ち消す擬音を発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態にかかる男女共用個室便所について、図1乃至図4を参照して説明する。図1(a)は本発明の実施の形態にかかる男女共用個室便所の2つのドアを少し開けた状態を示す平面図、(b)は2つのドアを閉めた状態を示す正面図である。図2は本発明の実施の形態にかかる男女共用個室便所に用いられる洋式便器を示す斜視図、図3は本発明の実施の形態にかかる男女共用個室便所の作動回路を示すブロック図、図4は本発明の実施の形態にかかる男女共用個室便所の連動ドアロック機構の作動回路を示すブロック図である。
【0021】
図1(a)に示されるように、本実施の形態にかかる男女共用個室便所は、四方を壁1a等のパーティーションで囲まれた個室内に洋式便器2が図示しない水周り配管とともに設置されている。洋式便器2の便座3には、使用者が便座3に着座したことを圧力で検出して出力信号電流を発する圧電センサ等からなる着座センサ4が取付けられている。また、洋式便器2に密着して条件が満たされた場合にスピーカから擬音を発生する擬音発生装置5が取付けられている。そして、個室便所1の正面の壁1aには、女性用ドア7及び男性用ドア8の2つのドアが開閉自在に取付けられている。
図1(b)に示されるように、これらの女性用ドア7及び男性用ドア8には、それぞれピンク色の女性を表す図形と「LADIES」の文字、及び水色の男性を表す図形と「GENTLEMEN(GENTS)」の文字が描かれている。また、これらの女性用ドア7と男性用ドア8の間には、説明書9が貼り付けられている。
【0022】
この説明書9には、例えば「女性の方は左側のドアから、男性の方は右側のドアからお入り下さい。女性の方のみ音が流れます。」という文章や、「片方のドアをロック・ロック解除するともう一方のドアも自動的にロック・ロック解除されます」といった文章が記載されている。この説明書9は、この個室便所1を使用した人が「何故ドアが2つあるのか?」という疑問を生じた場合に、それを払拭するためのものであり、必ずしも本発明に必須のものではない。
【0023】
そして、図1(a)に示されるように、これらの女性用ドア7及び男性用ドア8の近傍には、女性用ドア開閉センサ6A及び男性用ドア開閉センサ6Bが設置されている。これらの女性用ドア開閉センサ6A及び男性用ドア開閉センサ6Bによって女性が使用しているか男性が使用しているかが判定され、女性が使用している場合にのみ擬音発生装置5が作動するように制御される。
【0024】
なお、本実施の形態にかかる男女共用個室便所は、ホテル等の客室に設置されるものであるが、個室便所1の女性用ドア7及び男性用ドア8が取付けられている正面の壁は、ホテルの客室の壁と一体になっていても良いし、ホテルの客室の壁から部分的に突出していても良いし、個室便所1全体がホテルの客室の壁から突出していても良い。
【0025】
図2において、洋式便器2の便座3の裏側には、着座センサ4が取付けられており、使用者が着座した状態を圧力で検出して出力信号電流を発生する。更に、洋式便器2の側面に密着した制御ユニットケース24内には、スピーカ14を備えた擬音発生装置5が収納されており、所定の条件が満たされた場合にはスピーカ14から排泄音を不明にするための擬音を発生する。
【0026】
また、水洗用タンク(水槽)26から洋式便器2内を洗浄する排水スイッチ15(図3参照)は、水洗用の水を所定量流すものである。なお、便蓋25は洋式便器2の不使用時には便座3の上に被せられるが、この便蓋25が被せられても着座センサ4が使用者の着座状態と誤認することはない。
【0027】
次に、本実施の形態にかかる男女共用個室便所において、女性が使用する場合のみ擬音発生装置5が作動するように制御する場合について、図3を参照して説明する。
図3に示されるように、本実施の形態にかかる制御回路はマイクロコンピュータ10を有しており、このマイクロコンピュータ10はCPU(中央処理装置)、ROM,RAMのメモリ装置、I/Oポートを備えていて、各センサ、例えば、着座センサ4、女性用ドア開閉センサ6A、男性用ドア開閉センサ6B、排水スイッチ15から入力する出力信号を処理して、擬音発生装置5を作動させたり、停止したりしている。擬音発生装置5は、メモリ11、音声合成回路12、増幅回路13、スピーカ14を備えていて、マイクロコンピュータ10とのやり取りによってメモリ11に記憶された流水音等の擬音をスピーカ14から出力する。
【0028】
具体的には、まず、女性用ドア開閉センサ6Aによって女性用ドア7が開閉されたことが検出された場合には、女性用ドア開閉センサ6Aから出力された信号がマイクロコンピュータ10に入力されて記憶される。続いて、着座センサ4から使用者が着座したという信号がマイクロコンピュータ10に入力されると、排水スイッチ15から水洗用の水が流れているという信号が入力していないことを前提として、マイクロコンピュータ10によって擬音発生装置5が作動させられて、スピーカ14から擬音が発せられて排泄音が打ち消される。
【0029】
ここで、擬音発生装置5は、所定の音量または最初は小さめの擬音を発生させて徐々に擬音を大きくしていく機能を有している。これは、通常、人は環境の音に慣れてくるので、最初は小さく、徐々に大きくすることにより、擬音が耳障りの音という感覚をなくし、それに合わせて擬音の音量を制御することによって、より効率的かつ効果的に排泄音を打ち消す効果を得るためである。
【0030】
爾後、擬音発生装置5は、着座センサ4から使用者が着座していないという信号が入力されるか、排水スイッチ15から水洗用の水が流れているという信号が入力されるまで、作動を続ける。排水スイッチ15から水洗用の水が流れているという信号が入力されれば、もう擬音は必要がなくなるのでマイクロコンピュータ10によって擬音発生装置5が停止させられる。
【0031】
なお、一旦、排水スイッチ15から水洗用の水が流れているという信号が入力されても、その後、着座センサ4から使用者が着座しているという信号が入力されており、排水スイッチ15から水洗用の水の流量が所定量以下になったという信号が入力された場合には、再び擬音発生装置5が作動させられる。
【0032】
その後、男性用ドア開閉センサ6Bによって男性用ドア8が開閉されたことが検出された場合には、マイクロコンピュータ10に入力されて記憶された女性用ドア7が開閉されたというデータが消去される。以後、再び女性用ドア開閉センサ6Aによって女性用ドア7が開閉されたことが検出されるまで、これらの制御ユニットは処理を停止する。
【0033】
なお、男性用ドア開閉センサ6Bを設けずに、女性用ドア開閉センサ6Aによって女性用ドア7が開閉された回数をカウントするだけで、これらの制御ユニットを動作させることも基本的には可能であるが、例えば、女性が2人以上いる場合に、最初に1人の女性が個室便所1を使用して女性用ドア7を開けて出てきたのに続いて、別の女性が女性用ドア7を一旦閉めることなく、開け放しのまま個室便所1内に入って女性用ドア7を閉めた場合等は、女性用ドア7が開閉された回数をカウントする方法では判断を誤ることになり、擬音発生装置5が作動しないことになる。
【0034】
したがって、本実施の形態にかかる男女共用個室便所におけるように、男性用ドア8が開閉されたことが検出されるまでは女性が使用しているという判別状態に保っておく方が、より確実に擬音発生装置5を作動させることができる。
また、近年、排泄後に局部を温水で洗浄することができる局部洗浄装置付きの洋式便器が普及している。本実施の形態にかかる男女共用個室便所に用いられる洋式便器2は、このような局部洗浄装置付きのものであっても、各要素を配置することができる。そして、局部洗浄装置が作動している間は擬音発生装置5の作動を停止させる方式としても良い。
【0035】
次に、本実施の形態にかかる男女共用個室便所において、2つの女性用ドア7及び男性用ドア8の一方のみをロックまたはロック解除すると他方のドアも連動してロックまたはロック解除される方法について、図4を参照して説明する。
図4に示されるように、女性用ドア7及び男性用ドア8の内側には、それぞれ回転させてドアをロックするロックキー16A,16Bが設けられている。このうち、女性用ドア7の内側に設けられているロックキー16Aを、図4に示されるように90度回転させてロック状態にすると、ロックキー16Aの近傍に設置されている近接スイッチ17Aがロックキー16Aの鉄製部分の近接に反応して、リレー回路19に信号を送る。
【0036】
すると、リレー回路19はそれに応じて電源27からの電流を男性用ドア8の内側に設置されているソレノイド18Bに供給し、ソレノイド18Bが動作して男性用ドア8の内側に設けられているロックキー16Bを回転させて、男性用ドア8をもロック状態にする。これによって、2つの女性用ドア7及び男性用ドア8の両方が一度にロックされるため、使用中に誤って他人が女性用ドア7及び男性用ドア8を開けるという事態を確実に防止することができる。
【0037】
そして、使用後に女性用ドア7の内側に設けられているロックキー16Aを逆方向に90度回転させてロックを解除すると、ロックキー16Aの近傍に設置されている近接スイッチ17Aがロックキー16Aの鉄製部分が遠ざかるのに反応して、リレー回路19に信号を送る。すると、リレー回路19はそれに応じて電源27からのソレノイド18Bへの電流の供給を停止し、ソレノイド18Bが元の位置に戻ってロックキー16Bを逆方向に回転させて、男性用ドア8をもロック解除する。
【0038】
これによって、女性が使用後に男性用ドア8のロックを解除するのを忘れて、女性用ドア7のロックのみを解除して出てきてしまい、男性用ドア8から入ることができなくなるという不具合が確実に防止される。
男性が男性用ドア8を開閉して入り、ロックキー16Bを90度回転させてロックした場合にも、これと全く同様に、ロックキー16Bの近傍に設置されている近接スイッチ17Bがロックキー16Bの鉄製部分の近接に反応して、リレー回路19に信号を送ってソレノイド18Aを動作させる。これによって、男性用ドア8をロックまたはロック解除すると女性用ドア7も連動してロックまたはロック解除される。
【0039】
この結果、使用中に誤って他人が女性用ドア7及び男性用ドア8を開けるという事態を確実に防止することができ、また男性が使用後に女性用ドア7のロックを解除するのを忘れて、男性用ドア8のロックのみを解除して出てきてしまい、女性用ドア7から入ることができなくなるという不具合が確実に防止される。
このようにして、本実施の形態にかかる男女共用個室便所においては、男性が使用する場合には不必要な擬音を発生させることなく、女性が使用する場合のみ確実に排泄音を打ち消す擬音を発生させることができ、2つのドアのロック機構を操作する煩わしさがない男女共用個室便所となる。
【0040】
次に、本発明の実施の形態にかかる男女共用個室便所について、図5を用いて、その作動回路の制御をマイクロコンピュータで制御する場合について説明する。
図5は本発明の実施の形態にかかる男女共用個室便所の作動回路を示すフローチャートである。
このルーチンは、他の洗浄装置の全体を制御するメインプログラムからコールされる。ステップS1で女性用ドア7が開いたことを女性用ドア開閉センサ6Aで確認し、女性用ドア開閉センサ6Aが動作していないとき、このルーチンを脱する。ステップS1で女性用ドア7が開いたことを女性用ドア開閉センサ6Aで確認すると、次に、ステップS2で女性用ドア7(または男性用ドア8)の施錠が確認されたとき、ステップS3で女性用ドア7及び男性用ドア8のドア錠が施錠される。即ち、女性用ドア7のロックキー16Aをロック状態にすると、ロックキー16Aの近傍に設置されている近接スイッチ17Aがロックキー16Aの状態を検出し、リレー回路19に信号を送り、男性用ドア8のロックキー16Bをロック状態とする。
【0041】
その後、ステップS4で5秒の経過を見て、5秒経過後に擬音発生装置5を動作させて、所定の擬音を発生させる。このときには、3〜8秒程度後までに比較的低い擬音を発生させるか、順次、擬音出力を上げ5〜8秒で安定状態とする。ステップS6で着座センサ4から使用者が着座していないとの信号を受けているとき、ステップS7でその時間の経過が10分すぎたか否かを見る。その間にステップS6で着座センサ4から使用者が着座したとの信号を受けると、ステップS8で擬音発生装置5の出力を更に順次大きくし、所定の擬音を所定のレベルまで上昇させる。ステップS9で排水スイッチ15がオンになるまでステップS6乃至ステップS9の動作を継続する。
【0042】
ステップS9で排水スイッチ15がオンになると、またはステップS7で10分以上、着座センサ4から使用者が着座したとの信号を受けないとき、ステップS10で擬音発生装置5の出力を停止し、ステップS11で、女性用ドア7及び男性用ドア8のドア錠の解錠を待ち、いずれかが解錠されたとき、即ち、女性用ドア7のロックキー16Aをロックを解除にすると、ステップS12でロックキー16Aの近傍に設置されている近接スイッチ17Aがロックキー16Aの解除を検出し、リレー回路19に信号を送り、男性用ドア8のロックキー16Bを解除状態とし、このルーチンを脱する。
【0043】
ところで、図5のフローチャートでは、女性用ドア7のロックキー16Aは、ロック状態を確認してから所定の時間経過後としているが、本発明を実施する場合には、女性用ドア7の開閉、女性用ドア7の施錠、着座センサ4の動作のうちの1つ以上を捕らえて、擬音発生装置5を動作させることができる。特に、女性用ドア7の開閉、女性用ドア7の施錠は一連の行為であり、何れかを選択することによって、女性用ドア7の開閉、女性用ドア7の施錠が推定される。着座センサ4は着座したことを確認することから、使用の直前の情報として信頼性を高めることができる。
【0044】
本実施の形態のステップS1及びステップS2の女性用ドア7の開閉、女性用ドア7の施錠、着座センサ4の動作の後に、擬音発生装置5を動作させることは、服装直し、化粧直しの場合の対応として、ステップS5で擬音発生装置5を動作させ、便器の使用であるないにかかわらず、擬音発生装置5を所定の音声レベル(低レベル)で動作させるものである。着座センサ4の動作が特定の時間、実施の形態では10分間、着座センサ4の動作がない場合は、擬音発生装置5の出力を停止させ、このルーチンを脱する。
【0045】
しかし、本発明を実施する場合には、ステップS7の時限を超音波または赤外線センサで個室便所1内の人の検出を行い、人が存在する限り、ステップS6及びステップS7のルーチンを処理するようにしてもよい。この場合には、ステップS7が時限ではなく人の検出となるので人が存在しなくなった場合には、便器の使用はないとしてこのルーチンを終えることになる。
女性の使用判断の信頼性は、女性用ドア7の開閉、女性用ドア7の施錠、着座センサ4の3種類の動作を確認すれば、それだけ信頼性は高くなる。しかし、女性用ドア7の開閉と女性用ドア7の施錠は、連動しているから、それを単一情報とすることができる。
【0046】
また、上記実施の形態では、女性用ドア7の施錠によって時限を取っているがステップS4及びステップS5の処理を省略することもできる。しかし、擬音発生装置5の出力を徐々に大きくするには、できるだけ早い時期から、その立ち上げを開始することによって違和感のない使用が可能となる。
【0047】
このようにして、本実施の形態にかかる男女共用個室便所においては、内部に1個の洋式便器2を有し、かつ、女性用ドア7と男性用ドア8の二つのドアを有した個室便所1と、洋式便器2の便座3に着座した状態を検出する着座センサ4と、洋式便器2の使用中の音を個室便所外1から不明にする擬音を発生する擬音発生装置5と、女性用ドア7の開閉を検出する近接スイッチ17A、17Bからなるドア開閉センサとを具備し、女性用ドア7の開閉の検出及び/または女性用ドアの施錠の検出によって、擬音発生装置5を所定時間作動させるものである。
なお、上記実施の形態にかかる男女共用個室便所は、主として男女2人以上のカップルや家族連れが使用するホテルの客室に設置する場合を想定しているが、スーパーマーケット、ホームセンター、郊外型書店、レンタルショップ、飲食店等の店舗内に設置しても良いし、スペースがあれば一般の一戸建て住宅や高級マンション等に設置することも可能である。
【0048】
上記実施の形態においては、女性用ドア7及び男性用ドア8を同じ方向で外側に開閉するようにしているが、これに限られるものではなく、適当なドア開閉センサさえ取付けられていれば、内側に開閉するようにしても良いし、観音開きにしても良いし、スライド式のドアにしても良い。
【0049】
また、上記実施の形態においては、女性用ドア7及び男性用ドア8に連動式ロック機構(図4を参照)を設けて、一方のドアがロックまたはロック解除されると他方のドアも連動してロックまたはロック解除される方式としているが、かかる連動式ロック機構は本発明に必須のものではなく、通常のロック機構を設けて、使用者が内部から両方の女性用ドア7及び男性用ドア8を手動でロックし、使用後は両方の女性用ドア7及び男性用ドア8を手動でロック解除して出てくる方式としても良い。
【0050】
更に、上記実施の形態においては、擬音発生装置5をそれぞれ洋式便器2の側面に取付けた例を示しているが、擬音発生装置5の設置場所はこれに限られるものではなく、男女共用個室便所内であれば、任意の場所に取付けることができる。但し、排泄音を打ち消すという目的のためには、洋式便器2の近傍に設置することが好ましい。
【0051】
また、上記実施の形態においては、着座センサ4として便座3に直接取付ける圧電式のセンサを用いた場合についてのみ説明しているが、着座センサとしてはこれに限られるものではなく、例えば、赤外線で使用者の位置を測定して立っているか座っているかを判別する方式のセンサ等、他の方式のセンサを用いることもできる。
本発明を実施するに際しては、男女共用個室便所のその他の部分の構成、形状、数量、材質、大きさ、接続関係等については、上記実施の形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1(a)は本発明の実施の形態にかかる男女共用個室便所の2つのドアを少し開けた状態を示す平面図、(b)は2つのドアを閉めた状態を示す正面図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態にかかる男女共用個室便所に用いられる洋式便器を示す斜視図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態にかかる男女共用個室便所の作動回路を示すブロック図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態にかかる男女共用個室便所の連動ドアロック機構の作動回路を示すブロック図である。
【図5】図5は本発明の実施の形態にかかる男女共用個室便所の作動回路を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
1 個室便所
2 洋式便器
3 便座
4 着座センサ
5 擬音発生装置
6A 女性用ドア開閉センサ
6B 男性用ドア開閉センサ
7 女性用ドア
8 男性用ドア
15 排水スイッチ
17A,17B 近接スイッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に1個の洋式便器を有し、かつ、男性用ドアと女性用ドアの二つのドアを有した個室便所と、前記洋式便器の便座に着座した状態を検出する着座センサと、前記洋式便器の使用中の音を前記個室便所外から不明にする擬音を発生する擬音発生装置と、前記女性用ドアの開閉を検出するドア開閉センサと、前記男性用ドア及び前記女性用ドアの開閉を拘束するロック機構とを具備し、
前記女性用ドアの開閉の検出及び/または前記女性用ドアの施錠の検出によって、前記擬音発生装置を所定時間作動させることを特徴とする男女共用個室便所。
【請求項2】
前記擬音を停止させる時間は、前記着座センサにより前記洋式便器の便座に着座した着座検出が解除されるか、前記洋式便器の水洗装置により水が流されるまでの時間とすることを特徴とする請求項1に記載の男女共用個室便所。
【請求項3】
前記擬音の発生は、前記女性用ドアの開閉及び/または女性用ドアの施錠の検出の直後所定の時限の経過後に開始することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の男女共用個室便所。
【請求項4】
前記擬音の発生は、前記女性用ドアの開閉及び/または女性用ドアの施錠の検出の後、着座センサによる着座検出を行ったときの両者の条件で開始することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の男女共用個室便所。
【請求項5】
前記男性用ドア及び前記女性用ドアの開閉を拘束するロック機構は、一方のドアのロック機構をロックすると連動して他方のドアのロック機構もロックされ、一方のドアのロック機構を解除すると連動して他方のドアのロック機構も解除されることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の男女共用個室便所。
【請求項6】
前記擬音発生装置の出力は、前記擬音の音量を始めは小さく、徐々に或いは段階的に大きくしていくことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載の男女共用個室便所。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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