説明

男性におけるテストステロン欠損の処置のための方法および物質

【課題】本発明は、雄哺乳動物におけるテストステロンの血清レベルを増加させる方法および組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】雄哺乳動物におけるテストステロンの血清レベルを増加させる方法であり、該方法は、cis−クロミフェンおよびtrans−クロミフェンまたはそのアナログまたはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物、ならびに必要に応じて1つ以上の薬学的に受容可能な希釈剤、アジュバント、キャリアまたは賦形剤を含む化合物の有効量を該哺乳動物に投与する工程を包含し、ここでtrans−クロミフェン対cis−クロミフェンの比率は、1w/wよりも大きい、方法を提供することによって、上記課題は、解決された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許法第119条第(e)項の下、2001年7月9日に出願された米国仮特許出願番号60/304,313号の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、テストステロンレベルを増加させるための組成物および方法に関する。より具体的には、本発明は、trans−クロミフェンを富化したクロミフェンを含有する組成物に関する。本発明はまた、テストステロンレベルを増加させるためのtrans−クロミフェン試薬を富化したクロミフェンを含有する組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
テストステロンは、一次男性アンドロゲンであり、男性の健康全体において重要な役割を果たしている。テストステロンは、特定の生殖組織(精巣、前立腺、精巣上体、精嚢、および陰茎)の発達および維持ならびに男性の二次性徴にとって重要である。テストステロンは、性欲および勃起性機能において重要な役割を果たし、そして精子形成の開始および維持のために必要である。テストステロンはまた、生殖組織に関連しない重要な機能を有する。例えば、テストステロンは、窒素保持率を増加させることで身体組成にポジティブに影響を及ぼし、このことは、除脂肪体重、筋肉サイズおよび筋肉強度を補助する。テストステロンはまた、骨形成を刺激するために骨に作用する。
【0004】
テストステロン分泌物は、一連のホルモンプロセスの最終産物である。視床下部において分泌される性腺刺激ホルモン関連ホルモン(GnRH)は、下垂体前葉製剤によって分泌される黄体化ホルモン(LH)および卵胞刺激ホルモン(FSH)の拍動性分泌を制御する。言い換えれば、LHは、FSHが精子形成の誘導を補助する間、精巣のライディヒ細胞中のテストステロンの生成および分泌を調節する。
【0005】
テストステロンは、ほとんどの場合「総テストステロン」として測定される。この測定は、性ホルモン結合グロブリン(SHBG)(〜44%)に結合し、そのために生物学的に利用可能ではないテストステロンおよび遊離している(〜2%)かまたは他のタンパク質にゆるく結合している(非−SHBG−結合)(〜54%)テストステロンを含む。
【0006】
WHOの研究からの結果は、テストステロンが概日リズムで通常分泌され、朝においてより高いレベルを、そして午後8時〜10時あたりに最低レベルを生じることを示している(図1を参照のこと)。1日を通してのテストステロン分泌のこの変化は、より高齢の男性(平均年齢71歳)においてはあまりはっきりとしなくなる。このリズムの重要性は、現時点では知られていない。
【0007】
若年患者と高齢患者の両方から、24時間にわたって10分ごとに留置カニューレを介してサンプルを得た。Tenover(1987)によると、健康な若年男性(年齢範囲22歳〜35歳、平均27.3歳)における24時間の総血清テストステロンレベルの平均は、4.9±0.3(±SEM)mg/ml(17.0nmol/L)であり、一方、高齢男性(年齢範囲65歳〜84歳、平均70.7歳)は、有意により低い24時間の総血清テストステロンレベルの平均(4.1±0.4mg/ml)を有した。(P<0.5;14.2nmol/L)。
【0008】
単一の無作為サンプルから得られた総血清テストステロンレベルはまた、健康な若年男性におけるレベル(4.8±0.2mg/ml)[16.6nmol/ml]と比較して、高齢男性(4.0±0.2mg/ml[13.9nmol/L])において有意により低かった。
【0009】
テストステロン欠損は、基礎疾患または遺伝性障害から生じ得、そしてまた、加齢の頻繁な合併症でもあり得る。例えば、原発性の精巣不全(primary testicular failure)から生じる原発性性機能低下。この状況において、テストステロンレベルは低く、そして脳下垂体前葉性腺刺激ホルモン(LHおよびFSH)のレベルは上昇する。続発性性機能低下は、下垂体前葉性腺刺激ホルモンの不適切な分泌に起因する。低いテストステロンに加えて、LHおよびFSHレベルが低いかまたは低い〜通常である。いくつかの成人テストステロン欠損の後遺症には広範な種々の症状が含まれ、これらの症状としては、性欲の喪失、勃起機能不全、精子過少症または無精子症、二次性徴の欠如または退行、筋肉量の進行性減少、疲労、うつ気分(depressed mood)および骨粗鬆症の危険性の増加が挙げられる。
【0010】
いくつかの形態のテストステロン療法が今日の米国に存在している。近年、経皮製剤が市場で受けが良い。しかし、陰嚢のテストステロンパッチは、陰嚢皮膚中の5αレダクターゼの高い濃度に起因して、5α−ジヒドロテストステロン(DHT)の超生理学的レベルを生じる。これらの上昇したDHTレベルが任意の長期にわたる健康結果を有するか否かは知られていない。非陰嚢系は、より都合が良いと考えられており、ほとんどの患者が、正常範囲内の平均血清濃度を達成しており、そしてDHTの正常レベルを有する。経口テストステロン療法は、代替治療に必要な用量が肝毒性の有意な危険性に関連するために、勧められない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(要旨)
本発明は、雄哺乳動物のテストステロンレベルを増加させるためおよび低テストステロンレベルの続発症を回復または予防するために有用である組成物に関する。その1つの局面において、本発明は、0%〜29%(重量/重量)の(cis,−Z−,trans−クロミフェン)(本明細書中、これ以降「cis−クロミフェン」)および100%〜71%(w/w)の(trans−,E−,cis−クロミフェン)(本明細書中、これ以降「trans−クロミフェン」)またはこれらの薬学的に受容可能な塩を含有する活性成分を有する組成物に関する。cis−クロミフェンおよびtrans−クロミフェンの両方を含む本発明の好ましい組成物には、trans−クロミフェンとcis−クロミフェンとの比が、1より大きい組成物がある。本発明に従うより好ましい組成物は、trans−クロミフェンまたはその薬学的に受容可能な塩を約100%(w/w)含む。本発明の全ての組成物は、適切な薬学的賦形剤、希釈剤、キャリアなどをさらに含み得る。cis−クロミフェンおよびtrans−クロミフェンのアナログはまた、本発明の全ての局面における使用についても考慮される。
【0012】
本発明はまた、性機能低下の雄性哺乳動物において、血清テストステロンレベルを増加するため(そして、低テストステロンレベルの続発症を緩和または防止するため)の方法に関し、この方法は、有効量の本発明に従う組成物を男性被験体に投与する工程を包含し、その組成物は、0%〜29%重量/重量のシスクロミフェンおよび100%〜71% w/wのトランスクロミフェンを含有する活性成分(任意のそれらの薬学的に受容可能な塩を含む)を有する。好ましい方法の中で、投与組成物が両方の異性体を含有する方法があり、ここで、シスクロミフェンに対するトランスクロミフェンの比率は1より大きい。より好ましい方法は、約100% w/wのトランス−クロミフェンを含有する組成物を男性に投与する工程を包含する。
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
雄哺乳動物におけるテストステロンの血清レベルを増加させる方法であり、該方法は、cis−クロミフェンおよびtrans−クロミフェンまたはそのアナログまたはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物、ならびに必要に応じて1つ以上の薬学的に受容可能な希釈剤、アジュバント、キャリアまたは賦形剤を含む化合物の有効量を該哺乳動物に投与する工程を包含し、ここでtrans−クロミフェン対cis−クロミフェンの比率は、1w/wよりも大きい、
方法。
(項目2)
項目1に記載の方法であって、前記組成物は、有効量のtrans−クロミフェンまたはそのアナログまたはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物ならびに必要に応じて1つ以上の薬学的に受容可能な希釈剤、アジュバント、キャリアまたは賦形剤から本質的になる、
方法。
(項目3)
組成物であって、0%から約29%w/wのcis−クロミフェンおよび約100%〜約71%のtrans−クロミフェンまたはそのアナログまたはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物ならびに必要に応じて1つ以上の薬学的に受容可能な希釈剤、アジュバント、キャリアまたは賦形剤からなる、組成物。
(項目4)
組成物であって、cis−クロミフェンおよびtrans−クロミフェンまたはそのアナログまたはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物ならびに必要に応じて1つ以上の薬学的に受容可能な希釈剤、アジュバント、キャリアまたは賦形剤からなる組成物であって、ここで、trans−クロミフェン対cis−クロミフェンの比率は、1より大きい、組成物。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、健常な男性(若年および老年)における通常の分泌性の総血清テストステロン特性の図解である。
【図2】図2は、クエン酸クロミフェンの化学構造を示す。
【図3】図3は、クロミド(clomid)、エンクロミド(enclomid)およびズクロミド(zuclomid)との、血清テストステロンレベルの時間経過の図示である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(詳細な説明)
本発明は、雄性哺乳動物におけるテストステロンレベルを増加するため、および低テストステロンレベルの続発症を改善または予防するために、有用な方法および組成物を提供するが、上記の方法に限定されない。
【0015】
クロミフェン(図2)は、視床下部における正常なエストロゲンのフィードバック、引き続いて下垂体におけるネガティブフィードバックをブロックするタモキシフェンに関する抗エストロゲンである。このことは、黄体化ホルモン(LH)および卵胞刺激ホルモン(FSH)の増加を導く。男性において、これらの増加したレベルの性腺刺激ホルモンは、睾丸のライディヒ細胞を刺激し、そしてより高いテストステロンレベルを生成することとなる。クエン酸クロミフェンは、以下の構造を有する:
Ernstら、J.Pharmaceut.Sci.65:148(1976)は、2つの幾何異性体の混合物であることを示し、これらは、シス、−Z−、クロミフェン(シス−クロミフェンまたはツークロミフェン)およびトランス、−E−、クロミフェン(トランスクロミフェンまたはエンクロミフェン)としていう。Ernstらによると、トランス−クロミフェンHClは、融点149℃〜150.5℃を有し、一方、シス−クロミフェンHClは、融点156.5℃〜158℃を有する。
【0016】
Ernstらはまた、(トランス異性体)が抗エストロゲン(AE)であることに着目したが、シス異性体はより強力かつよりエストロゲン性の形態であり、そしてまた、抗エストロゲン活性を有することが報告されている。その著者らは、この薬物の排卵活性に対する効果を、両方の形態に起因するとし、この混合物がトランスクロミフェン単独より効果的であることを述べている。トランス異性体は、視床下部のレベルで排卵を補助する。エストロゲン性異性体のシスクロミフェンは、排卵を導く生理学的経路におけるどこかで排卵増強に寄与する。この異性体はまた、異なるインビボ半減期を有することが報告されている。さらに、このシス形態は単回投与後1月以上にわたって、残存性の血液レベルのままであることが報告されている。
【0017】
Vandekerckhoveら(Cochrane Database Syst Rev 2000;(2):CD000151(2000)は、738人の男性を含む10の研究は、抗エストロゲンが内分泌の結果(すなわち、テストステロン)に対して有益な効果を有するようであることを示唆したが、生殖効果を評価するのに十分な証拠がないことを、記述した。それにもかかわらず、クロミフェン投与はテストステロンレベルを増強し、次いで、試験が依然として性腺刺激ホルモン刺激に応答する能力を保持する限り、この薬物がテストステロン欠乏の副作用をポジティブに影響するはずであることが容易に結論付けられ得る。
【0018】
クロミフェンは現在、無排卵性患者において生殖能増強のために、シス異性体およびトランス異性体の両方の混合物として認可されているが、シス異性体が約30%〜約50%として存在する(Merck Manual)。クロミフェンは、一連の内分泌事象を開始することによって排卵を改善し、前排卵性性腺刺激ホルモンの急増、引き続く小胞破裂においてを最高にする。この薬物は、1日当たり100mgまでの用量で5日間投与されることが推奨される。クロミフェンはまた、多くの副作用(不鮮明な視覚、腹部の不快感、女性化乳房、精巣腫瘍、血管運動潮紅(vasomotor flush)、悪心、および頭痛が挙げられる)と関係している。さらに、他の研究は、クロミフェンが遺伝子毒性効果および腫瘍増強効果の両方を有することが示される。これらの観察の正味の結果は、現状の形式でのクロミフェン(30%と50%との間のシス異性体を有する)が、テストステロン欠損の処置のために、男性において慢性的な治療に対しては受容可能ではないことである。
【0019】
クロミフェンはまた、低テストステロンレベルを有する男性において治療的処置のために使用されている。Tenoverら、J.Clin.Endocrinol.Metab.64:1103、(1987)およびTenoverら、J.Clin.Endocrinol.Metab.64:1118(1987)は、クロミフェンを用いた処置後の若年男性および老年男性の両方において、FSH、LHの増加を見出した。彼らはまた、男性において遊離テストステロンおよび総テストステロンが増加し、若年男性が有意な増加を示すことを見出した。
【0020】
クロミフェンを使用して、精液の品質を改善することにより男性における生殖能を改善し得るか否かを決定するための研究をまた行った。Homonnaiら、Fertil.and Steril 50:801(1988)は、精子の濃度および数の増加を確認したが、他者は確認していない。(例えば、Sokelら、Fertil.and Steril 49:865(1988);Checkら、Int.J.Fertil.34:120(1989);Purvisら、Int.J.Androl 21:109(1989);およびBreznik、Arch.Androl.21:109(1993)を参照のこと。)1つのグループは、長期処置で正常な精子の割合の低下を確認した。Shamisら、Arch,Androl 21:109(1991)。WHOの研究は、処置の6ヶ月後、精液の品質も受精能も変化のないことを示した。(Anonymous
Androl.15:299(1992))。メタアナリシスは、質の悪い精子を有し、受精能のない男性において、テストステロンレベルが上昇することを確実とするようである。(Vanderkerckhoveら、2000)。研究より、クロミフェンの長期処置が、健康に劇的に有害な影響を有するようではなかったが、処置が4ヶ月後により質の低下した精液を生じることが、実際に示された。研究は、18ヶ月までの間、そして1日当たり25mgのレベルまたは1日おきに100mgのレベルで、クロミフェンを維持した。
【0021】
1991年において、Guayら(Urology 38:377(1991))は、クロミフェンがヒトにおける性機能障害を処置し得ることを示唆した。これらの仮定は、性機能がテストステロンレベルに従うように見える。このことは、アンドロゲンおよび性機能のポジティブな影響を示す初期の研究(Davidsonら、J.Clin.Endocrinol.Metab.48:955(1979))および強い応答としての睡眠関連勃起に関連する研究(T,Cunninghamら、J.Clin.Endocrinol.Metab.70:792(1990))によって支持された。しかし、1995年に、Guayら(Grayら、J.Clin.Endocrinol.Metab.80:3546(1995))は、彼らがクロミフェンの2ヶ月後に、LH、FSH、およびテストステロンの増加を示すが、勃起障害に対しては何の効果も示さない研究を公開した。若い成人および特定の群の老人についていくらか利点が存在し得るが、これは、テストステロンレベルがただ上昇することが、十分でないようである。テストステロンの睡眠関連勃起に対する効果は、あまりに重篤に取られ得る(Herskowitzら、J.Psychosomat.Res.42:541(1997))。
【0022】
本発明によると、1つの異性体、好ましくはトランス−クロミフェンまたは下記されるような通常生成される混合物とはことなるクロミフェンの異性体の所定のブレンドを含む組成物は、テストステロンレベルを増強するために使用される一方で、薬物の副作用が減少される。従って、本発明は、テストステロンレベルを上昇するための経口療法を提供し、この経口療法は、現存するクロミフェン処方物と関連する副作用を有さないかまたは減少する。
【0023】
本発明の1つの実施形態において、血清テストステロンレベルを上昇させる必要のあるまたはそのことを所望する患者は、1mgと約200mgとの間の用量でトランス−クロミフェンを含有する有効量の組成物の1回以上の用量を投与される(しかし、最適用量の決定は、当業者のレベルに関する)。シス−クロミフェンはまた、シス−クロミフェンに対するトランス−クロミフェンの比が1を超える限り、組成物中に存在し得る。クロミフェンのトランス−異性体およびシス−異性体のアナログ(例えば、Ernstら(上述)によって記載されるアナログ)はまた、本発明の実施において有用である。
【0024】
投薬量は、好ましくは(しかし、必ずではない)、図1に示される通常の分泌全血清テストステロンプロフィールを模倣するかまたはこれに対応する血清テストステロンレベルを生じるように設計された用量レジメンの一部として投与される。例えば、図1に従うと、好ましい組成物の投薬量は、薬学的処方物で投与され得、この薬学的処方物は、午前8時あたりに、ピーク血清テストステロンレベルを生じる。このような薬学的組成物は、例えば、以下に記載されるように調製された徐放性処方物および当該分野で周知の他の徐放性組成物の形態で存在し得る:米国特許第6,221,399号、日本国特許4−312522号、Meshaliら、Int.J.Phar.89:177−181(1993)、Kharenkoら、Intern.Symp.Control Rel.Bioact.Mater.22:232−233(1995)、WO95/35093号、Dangprasitら、Drug.Devel.and Incl.Pharm.21(20):2323−2337(1995);米国特許第6,143,353号、同第6,190,591号、同第6,096,338号、同第6,129,933号、同第6,126,969号、同第6,248,363号。
【0025】
適切な薬学的組成物または単位投薬量形態は、固体の形態(例えば、錠剤または充填カプセル剤)または液体の形態(例えば、溶液、懸濁物、エマルジョン、エリキシルまたは同一物で充填したカプセル剤)で存在し得、全て経口用途向けである。組成物はまた、滅菌注射可能な溶液または非経口的(皮下的を含む)用途のためのエマルジョンの形態で存在し得る。このような薬学的組成物はおよびその単位投薬量形態は、従来の割合で成分を含有し得る。
【0026】
本発明に従う組成物はまた、静脈的経路、皮下的経路、頬的経路、経粘膜的経路、髄腔内的経路、皮内的経路、槽内的経路または他の投与経路によって投与され得る。組成物の投与の後、血清テストステロンレベルは、上記されるように測定され得、そして用量は、血清テストステロンレベルの十分な増加を達成し、上記される正常なテストステロンレベルに関連する所望の生理学的結果を達成するように改変され得る。
【0027】
本明細書中で議論される全ての参考は、その全体を参考として援用される。
【0028】
以下の実施例は、本発明の例示を意味し、そして添付の特許請求の範囲が述べるように、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
(オスヒヒにおけるクロミドの血清テストステロンに対する効果)
成体オスヒヒに、連続した12日間、1.5mg/kgのクロミド、エンクロミド(トランス−クロミド)またはズクロミド(シス−クロミド)を与えた。分析したサンプルは、試験物を与える前の第1の処置日(第0日)、処置の12日後(第12日)および最後の処置の7日後(終期または洗浄)に採取された血清であった。
【0030】
(1.体重及び血清に対する、LH、FSH、PRLおよびテストステロンの効果)
エンクロミドを受容する群において、総血清テストステロンが有意に増加した。表1を参照のこと。基底線期または第0日において、郡の間で相違はなかった。処置7日後(洗浄期)に、3つの群の間でもまた違いはなかった。しかし、エンクロミドは、第6日にクロミドおよびズクロミドに比べてより高いレベルのテストステロン(それぞれ、p=0.03およびp=0.00002)を産生し、そして第12日にズクロミドに比べてより高いレベルのテストステロン(p=0.047)を産生した。ズクロミドは、いずれの程度においても総血清テストステロンをはっきりとは上昇しなかった。エンクロミドを受容した動物に比べて、クロミドを受容した動物は、これらの変動係数によって判断されるように、第6日以後に、より変動性の総テストステロンレベルを示した。本発明者らが、この効果の経時変化(図3)に注目した場合、本発明者らは、エンクロミドのみが、基底線または第0日の値に比べて、第6日および第12日での総血清テストステロンを、有意にそして統計的に上昇したことを決定した。さらに、エンクロミド処置の中止が、第12日と第18日(洗浄)との間の総血清テストステロンレベルにおける有意な減少を生じた。このことは、エンクロミドが、ヒトにおいてエンクロミドについて見られる代謝クリアランスと矛盾しない循環から容易に解明されることを示す。エンクロミドは、クロミドそのものより明確に良好であり、そしてより矛盾がなく、そしてズクロミドは、効果がない。
【0031】
(表1−血清テストステロンレベル(ng/dl))
【0032】
【表1】

血清LHまたは血清FSHの変化はなかった。LHに対する全血清テストステロンの比は、全血清テストステロンと同じパターンに従い、このことは、依存の欠如を示唆する(データは示さず)。12日間の研究の間に、体重の変化もまたなかった。エンクロミド(Enclomid)を受けるグループにおいて、研究の間に、血清プロラクチン(PRL)は減少し、これは、部分的に記載され(Ben−JonathanおよびHnasko,2001)、そして男性の年齢、テストステロンの減少およびプロラクチンの増加(Feldmanら 2002)のような事実に基づいて予測された抗エストロゲンの効果を示唆する。
【0033】
(2.臨床化学パラメーターの効果)
各パラメーターの平均値は、ANOVAまたはKruskal−Wallis試験によって決定されるような、研究の最初、任意の試験パラメーターの3つのグループの間で異なった。各パラメーターで正常値を示す全てのグループは、(1)血清ナトリウム;関連
して見積られたパラメーター、アニオンギャップ(これは、試行の最中に全9匹のヒヒに対して低かった);(2)血清グルコース;および(3)BUN(これらは、エンクロミドで処置されたグループに対して0日目で高かった)。処置の12日目および処置後7日目(洗い流し)に、クロミドグループおよびズクロミド(Zuclomid)グループが、エンクロミドグループよりも低い値を有することを示したアニオンギャップを除いて、いずれかのパラメーターのグループの間で差異はなかった。血清ナトリウムおよびアニオンギャップの値は、ヒヒのこのグループに関連して異例であると考えられる。
【0034】
エンクロミドおよびズクロミドを有する赤血球集団およびズクロミドを有するヘマトクリットに対して実質的な効果があった。全ての化合物は、0日目か終点のいずれかで、平均細胞ヘモグロビン濃度(MCHC)が、低かった。平均細胞ヘモグロビン(MCH)の変化および平均細胞容積(MCV)の増加はなく、MCHCの低下は、予測可能である。テストステロンは、ヘマトクリットを増加することが予測され得るが、ズクロミド処置(これは全血清テストステロンを増加しなかった)のみが、統計的差異を示した。明らかに、ズクロミドを使用する臨床試験において、男性は、赤血球集団の特性についてモニターされるべきであった。エンクロミドは、さほどの効果を有しないことが予測される。
【0035】
12日目のエンクロミド処置は血小板上に対して明白な効果があると考えられるが、この値は、正常な範囲内のままであることが見出される。本明細書で考えられるような1つの事情は、雄ヒヒと雌ヒヒの間での血小板の数における性的二形である(雄について279 対 雌について348)。これは、おそらくホルモンに起因する。エンクロミドのグループは、テストステロンの減少を示すので、血小板の数の低下は、このグループにおけるテストステロンの変化の次であり得る。さらに、エンクロミドでの処置は、このグループの正常な範囲のハイエンドである0日目のレベルからその正常な男性のレベルへと血小板の数を引き上げた。エンクロミドは、必ずしも血小板に対する有害な効果を予測するわけではない。
【0036】
試験される全てのクロミドは、白血球(WBC)集団に対する効果を有し、リンパ球および好酸球の数を増加するエンクロミドの効果は、最も著しい。この効果は、効果がみられるように簡単ではない。血液中の顆粒球のパーセントを低下させるのに、エンクロミドの強い効果があると考えられる。この効果は、値が正常な範囲以下に減少した場合、7日間の洗い流し期間後非常に強い(この時間経過は、WBC集団の変化に影響するのに必要とされる相対的な長時間を反映し得る)。この効果が、テストステロンの変化よりもそれ自身の化合物に起因する傾向があるので、白血球に対するヒヒにおける性的二系は、ほとんど存在しない。しかし、発明者らは、WBC数を使用して、顆粒球の算出数を考察する場合、発明者らは、任意の化合物に起因する顆粒球数における差異を見出さない。同時に、これは、最も興味深いリンパ球病歴である。集団におけるリンパ球の数および%の両方は、エンクロミド処置で増加する。リンパ球%の平均値が正常範囲(WBC数の増加に対する傾向を与える)で維持するが、正味の効果は、エンクロミドでのリンパ球数の増加である。この好酸球結果は、類似している。低いリンパ球を有する男性(例えば、HIVポジティブである男性)を処置するための明らかな意味が存在する。エンクロミドは、この結果に基づいてリンパ球を低下しそうにないので、症例は、AIDSを有する男性の集団におけるその使用のためになされ得る。これらの個体は、しばしば、疾患の消耗効果に起因して、テストステロンを増加する傾向のある試薬で処置される。肝臓および腎臓の低い毒性、ならびにコレステロールおよび脂質に対する有利な効果はまた、それらの疾患によってすでに易感染性であるHIVポジティブの男性の使用について意図された任意の薬剤ついての性質に高く支持される。
【0037】
クロミドまたはズクロミドを有する血清グルコースの増加は、正常範囲内であった。平均血清グルコース値が0日目で高いエンクロミドの場合において、処置で増加しなかった。エンクロミドが、血液グルコースに対する有害な効果を有する証拠はなかった。
【0038】
肝臓機能に対する明らかな有害な効果は、酵素ASTおよびALTによって診断される場合、明白でない。これらの値における傾向は、処置で減少した。血清中の酵素レベルの増加は、肝臓障害を示す。ALT/SGPTは、クロミドグループに対する研究の最後で低い範囲外であるが、処置の期間にわたる差異は、統計的に有意でなかった。エンクロミドおよびズクロミドでの変化は、正常範囲内であった。ASTは、妊娠中に減少される;従って、エストロゲンアゴニストの作用(例えば、限界ASTレベルの低下におけるズクロミド)は、合理化され得る。アルカリホスファターゼ(ALP)はまた、肝臓において見出され、そして様々な疾患状態を増大させる。ALPの低下は、さらなる肝臓障害を主張する。血清アルブミン、また肝臓産物の変化はなかった。伸長された期間にわたって、血清アルブミンの強い抑制は、ヒトにおける血清を含まないステロイドホルモンレベルに寄与し得るが、より重要な機能は、性ホルモン結合グロブリンによって果される。最低値として、化合物はどれ1つ、アッセイされたパラメーターに基づいて、肝臓障害に関連し得ない。
【0039】
骨芽細胞活性および骨の減少は、高血清ALPに付随される。ALPは、ズクロミド処置の後に増加せず、そしてエンクロミド処置の後に値は減少した。この傾向は、ズクロミドと比較してエンクロミドの使用に対してより良性な結果を予測する。
【0040】
BUNおよびBUN/クレアチニンは、クロミドグループおよびエンクロミドグループにおける研究の間に変化されたが、クレアチンの最終的な変化の欠損は、腎臓機能障害を示す。糸球体濾過能力の欠損は、BUNの増加を生じる。減少したBUNは、ヒトにおいて、乏しい栄養(コントロールされた設定にはあり得ない)、または高い流体摂取量(おそらく水腫に付随される)に起因して生じる。また、エンクロミドでの0日目と12日目の間の全血清テストステロンの増加にもかかわらず、血清クリアチニン値の間で差異はなく、この短い時間間隔にわたって筋肉量の増加を示す。
【0041】
血清ナトリウムレベルは、研究の間中、全ての動物についての参照値よりも低かった。血清炭素ジオキシドは、クロミドグループおよびズクロミドグループについて12日目に参照値よりも高かった。血清アニオンギャップは、研究の間中、全ての動物のついて低く、これはナトリウムの結果に匹敵した。エンクロミドは、正常値のほうにこのパラメーターを上昇させた。全ての処置期間の間中、試験動物において検出された電解質の不均衡は、説明しにくいままであるが、BUN結果によって示唆される同じ流体攪乱事象(fluid derangement phenomenon)の一部であり得る。
【0042】
エンクロミドでの処置は、血清コレステロールを減少する傾向であり、そしてズクロミドは、同じパラメーターを増加する傾向にあるが、いずれの変化も、統計的な有意性に達しなかった。これらの変化は、正常範囲内であったが、短い期間にわたる反対の効果を示すような2つのアイソマーに対する傾向は、さらなるモニタリングに値し、そしてアイソマーが、あるいは、エストロゲンアゴニスト活性またはエストロアンタゴニスト活性を有する場合、予測されないわけではない。エンクロミドは、慢性的に使用される場合、血清コレステロールに関してズクロミドより良性であることが予測され得る。
【0043】
前記の結果は、エンクロミドが、全血清テストステロンの増加に対して、クロミドまたはズクロミドよりも効果的であることを示す。ズクロミドは、明確な効果はなく、しかも特に、クロミドのズクロミド成分は、長い半減期の与えられた時間にわたる循環において優性であるので、欠乏は、性機能低下症に対する任意の使用を限定する。
【0044】
ズクロミドおよびしばしばなおクロミドと比較される場合、エンクロミドは、全ての局
面において、相対的に良好であるとみなされる。考慮が、低いコレステロールに対するエンクロミドの傾向として与えられる場合、これは、特にあてはまり、そしてズクロミドと対照的に腎臓酵素は、同じパラメーターを増加する傾向がある。リンパ球のCD4+亜集団が低くないか、または増強されることが示され得る場合、リンパ球数を増加するようなエンクロミドに対する驚くべき傾向は、AIDSを有する男性に有用性であり得る。
【0045】
(実施例2)
(trans−クロミフェンおよび1以上の比率のtrans−クロミフェンとcis−クロミフェンの混合物を用いた、男性におけるテストステロンレベルの増加方法)
trans−クロミフェン投与の前に、血液サンプルを、被験体の男性から採取し、そしてテストステロンレベルを、例えば、Matsumoto,ら Clin.Endocrinol.Metab.56;720(1983)(本明細書中で参考として援用される)に記載される方法論を使用して測定する。性ホルモン結合グロブリン(SHBG)(これは、遊離であり、テストステロンに結合する)はまた、例えば、Tenoverら J.Clin.Endocrinol.Metab.65:1118(1987)(これは、[H]ジヒドロテストステロン分泌分析およびラジオイムノアッセイの両方によるSHBGの測定を記載する)に記載されるように測定される。非SHBG結合テストステロンレベル(生物が利用可能なテストステロン)はまた、例えば、Tenoverら J.Clin.Endocrinol and Metab.65:1118(1987)に従って測定される。本明細書中で参考として援用されるSoderguardら J.Steroid Biochem 16:801(1982)もまた参照のこと。
【0046】
患者に、1日に1.5mg/kgクロミフェンの投薬量を与える。ここで、trans−クロミフェン対cis−クロミフェンの比率は、1より大きい。投薬量および投薬頻度を、患者におけるテストステロンの治療レベルに達成するように調節し得るように、この患者を、テストステロンレベルについてモニターする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の、雄哺乳動物におけるテストステロンの血清レベルを増加させる方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−280623(P2009−280623A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204154(P2009−204154)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【分割の表示】特願2003−511763(P2003−511763)の分割
【原出願日】平成14年7月9日(2002.7.9)
【出願人】(501392534)リプロス セラピューティクス インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】