説明

男性用軽失禁パッド

【課題】着用者の動きによって失禁パッドがずれたり外れたりし難く、良好な装着感を得ることができる男性用軽失禁パッドを提供する。
【解決手段】本発明の男性用軽失禁パッド1aは、複数のシート18,20が吸収体22を挟持した状態で積層された吸収性本体14を備え、この吸収性本体14は、内面32側に向けて谷折り状に折り曲げられた谷折り部36が形成されるとともに、谷折り部36の少なくとも一方の端部に、谷折り部36の谷折り状態を維持する止め部38を有し、吸収性本体14の展開使用時には、内面32側に凹状の空間33が形成されるように構成されてなり、且つ、その内面32に、谷折り部36の横断方向に沿って配置された、吸収性本体14を男性器に係留する係留バンド40を更に有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、男性用軽失禁パッドに関する。更に詳しくは、着用者の動きによって失禁パッドがずれたり外れたりし難く、良好な装着感を得ることが可能な男性用軽失禁パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乳幼児用、或いは高齢者・障害者等の成人用の尿パッドとして、トップシートと、バックシートと、両シートの間の一部に介装された吸収体とを備えた尿パッドが知られている。
【0003】
この尿パッドは、トップシートの表面を着用者の肌に接するように宛がって使用することにより、着用者の排泄した尿はトップシートを透過して、吸収体によって吸収・保持されるとともに、防漏性に優れたバックシートによって、尿が外部に漏洩してしまうことが防止されている。
【0004】
軽度の失禁トラブルを抱える方々は女性のほうが多いものの、男性では、前立腺肥大をきっかけに、切迫性尿失禁や溢流性尿失禁などになることがある。また、身体機能が低下してトイレに間に合わない機能性尿失禁や、病気などで寝たきりになった場合の尿の処理など尿の吸収製品はさまざまなケースに対応して吸収性物品が使われている。例えば、男性用に特化した尿パッドとして、男性器を被包して用いるタイプが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような男性用尿パッドは、例えば、矩形の形状の尿パッドを、粘着テープ等を利用して三角形に成型して男性器を被包した状態で用いるため、使い捨ておむつや、単に衣類やおむつ上に載置して用いる尿パッドと比較して、尿と着用者の肌との接触面積を少なくすることができる。
【0005】
また、男性用尿パッドとしては、例えば、表面シートと裏面シートとの間に配設された吸収体を有し、吸収体の外側(外縁)に、長手方向(左右方向)に沿ってフラップ部が形成され、そのフラップ部の長手方向の略中央部に切り込み部(スリット)が形成されたもの(例えば、特許文献2参照)や、予め袋状に成型されたもの(例えば、特許文献3参照)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−280727号公報
【特許文献2】特開2001−129012号公報
【特許文献3】特開平9−299392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した各特許文献に記載された失禁パッド(尿パッドともいう)は、着用者の男性器に被せるように配置しているだけであるため、着用者の動きによって失禁パッドが容易にずれたり外れたりしてしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであって、着用者の動きによって失禁パッドが容易にずれたり外れたりし難く、良好な装着感を得ることが可能な男性用軽失禁パッドを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記のような従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、男性用軽失禁パッドを構成する吸収性本体に、吸収性本体を男性器に係留する係留バンドを設けて、男性器の動きに対して吸収性本体が追従するように構成することによって、上記課題が解決されることに想到し、本発明を完成させた。具体的には、本発明により、以下の男性用軽失禁パッドが提供される。
【0010】
[1] 複数のシートが吸収体を挟持した状態で積層された吸収性本体を備え、その内面側を着用者の男性器に宛がって使用する男性用軽失禁パッドであって、前記吸収性本体は、前記内面側に向けて谷折り状に折り曲げられた谷折り部が形成されるとともに、前記谷折り部の少なくとも一方の端部に、前記谷折り部の谷折り状態を維持する止め部を有し、前記吸収性本体の展開使用時には、前記内面側に凹状の空間が形成されるように構成されてなり、且つ、前記吸収性本体は、前記内面の前記止め部を有する端部側又はその反対側の端部側に、前記谷折り部の横断方向に沿って配置された、前記吸収性本体を男性器に係留する係留バンドを更に有する男性用軽失禁パッド。
【0011】
[2] 前記係留バンドの両端部が、前記吸収性本体の前記内面における前記横断方向の両側縁部に固定されている前記[1]に記載の男性用軽失禁パッド。
【0012】
[3] 前記吸収性本体は、前記吸収性本体の外周部分にて前記複数のシート同士が積層されたシート積層部と、前記複数のシートによって前記吸収体を挟持して積層された吸収体積層部とから構成されてなり、前記シート積層部と前記吸収体積層部との間に切り込み部が形成され、前記切り込み部によって一部が遊離したシート積層部によって、前記係留バンドが形成されている前記[1]に記載の男性用軽失禁パッド。
【0013】
[4] 前記係留バンドに伸縮性が付与されてなる前記[1]〜[3]のいずれかに記載の男性用軽失禁パッド。
【0014】
[5] 前記係留バンドにクッション性が付与されてなる前記[1]〜[4]のいずれかに記載の男性用軽失禁パッド。
【発明の効果】
【0015】
本発明の男性用軽失禁パッドは、着用者の動きによって失禁パッドがずれたり外れたりし難く、良好な装着感を得ることができ、日常生活を営む男性が、軽度の失禁対策用の軽失禁パッドとして好適に用いることができる。また、男性下着の小便汚れ防止用ライナーとして用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の男性用軽失禁パッドの一の実施形態を模式的に示す斜視図であり、男性用軽失禁パッドの内面側を示す図である。
【図2】図1に示す男性用軽失禁パッドを着用した状態を示す平面図である。
【図3】本発明の男性用軽失禁パッドの他の実施形態を模式的に示す斜視図であり、男性用軽失禁パッドの内面側を示す図である。
【図4】図3に示す男性用軽失禁パッドを着用した状態を示す平面図である。
【図5】本発明の男性用軽失禁パッドの更に他の実施形態を模式的に示す斜視図であり、男性用軽失禁パッドの内面側を示す図である。
【図6A】本発明の男性用軽失禁パッドの更に他の実施形態を模式的に示す斜視図であり、男性用軽失禁パッドの内面側を示す図である。
【図6B】本発明の男性用軽失禁パッドの更に他の実施形態を模式的に示す斜視図であり、男性用軽失禁パッドの内面側を示す図である。
【図7】本発明の男性用軽失禁パッドの更に他の実施形態を模式的に示す斜視図であり、男性用軽失禁パッドの内面側を示す図である。
【図8】本発明の男性用軽失禁パッドの更に他の実施形態を模式的に示す斜視図であり、男性用軽失禁パッドの内面側を示す図である。
【図9】本発明の男性用軽失禁パッドの更に他の実施形態を模式的に示す斜視図であり、男性用軽失禁パッドの内面側を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の男性用軽失禁パッドを実施するための形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える男性用軽失禁パッドを広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
〔1〕男性用軽失禁パッド:
本発明の男性用軽失禁パッドは、図1に示すように、複数のシート18,20が吸収体22を挟持した状態で積層された吸収性本体14を備え、その内面32側を着用者の男性器に宛がって使用する男性用軽失禁パッド1aであって、吸収性本体14は、内面32側に向けて谷折り状に折り曲げられた谷折り部36が形成されるとともに、谷折り部36の少なくとも一方の端部36aに、谷折り部36の谷折り状態を維持する止め部38を有し、吸収性本体14の展開使用時には、内面32側に凹状の空間33が形成されるように構成されてなり、且つ、吸収性本体14は、内面32の止め部38を有する端部側又はその反対側の端部側に、谷折り部36の横断方向Xに沿って配置された、吸収性本体14を男性器に係留する係留バンド40を更に有している。
【0019】
本発明の男性用軽失禁パッドは、軽度の失禁対策用の軽失禁パッドとして好適に用いることができ、特に、日常生活を営む男性の失禁対用の軽失禁パッドとしてより好適に用いることができる。また、男性下着の小便汚れ防止用ライナーとして用いることができる。
【0020】
図1に示す男性用軽失禁パッド1aを装着する際には、例えば、男性用軽失禁パッド1aを構成する吸収性本体14の谷折り部36を広げるように展開させて、吸収性本体14の内面32側に凹状の空間33を形成し、図2に示すように、この内面32(図1参照)側を着用者52の男性器54に宛がって使用する。この際、例えば、係留バンド40を男性器54に係留させて、係留バンド40を介して吸収性本体14と男性器54とを連結する。図2においては、係留バンド40によって形成されるループ状の環に睾丸54aを通し、睾丸54aの裏側に係留バンド40をまわすことによって男性用軽失禁パッド1aを男性器54に係留している。これにより、着用者の動きによって男性用軽失禁パッド1aがずれたり外れたりし難く、良好な装着感(フィット感)を得ることができる。また、男性用軽失禁パッド1aからの尿漏れも有効に防止することができる。更に、男性用軽失禁パッド1aの下端部が丸まったり、めくれたりしないように係留バンド40によって張りを与えることができるので、男性用軽失禁パッド1aの装着位置がずれて、男性用軽失禁パッド1aの端部と睾丸54aとが擦れるなどのトラブルを有効に防止することができる。
【0021】
ここで、図1は、本発明の男性用軽失禁パッドの一の実施形態を模式的に示す斜視図であり、男性用軽失禁パッドの内面側を示す図である。また、図2は、図1に示す男性用軽失禁パッドを着用した状態を示す平面図である。
【0022】
なお、本発明における「係留」とは、二つの物体が、自由度(ゆとり)のない状態又は所定の自由度(ゆとり)をもって連結された状態のことをいい、本発明の男性用軽失禁パッドは、男性用軽失禁パッド(吸収性本体)と男性器(睾丸や陰茎)とを、係留バンドを介して、空間的に余裕のある状態(ゆとりある状態)を含めて連結することができる。なお、本発明の男性用軽失禁パッドは、係留バンドを介してゆとりある状態で係留するものであることが好ましい。このようにすることによって、陰茎の長さ、体積などの形状変化や、睾丸の形状変化に対して、過度な拘束力をもたないので、着用者に不快感を与えることがない。
【0023】
また、図1及び図2においては、吸収性本体14の内面32の止め部38を有する端部側に係留バンド40が配置され、この係留バンド40を睾丸54aの裏側に通すことによって吸収性本体14と男性器54とを係留して使用する場合の例を示しているが、例えば、本発明の男性用軽失禁パッドは、図3に示すように、吸収性本体14の内面32の止め部38を有する端部側とは反対側の端部に、係留バンド40が配置された男性用軽失禁パッド1bであってもよい。
【0024】
即ち、図1に示す男性用軽失禁パッド1aにおいては、着用者の身体下方側(即ち、股下側)の位置に係留バンド40が配置されたものであるが、図3に示す男性用軽失禁パッド1bにおいては、着用者の身体上方側の位置に係留バンド40が配置されている。
【0025】
このように、身体上方側の位置に係留バンド40が配置されている場合には、係留バンド40を睾丸の裏側に通すのではなく、図4に示すように、この係留バンド40によって着用者52の陰茎54bに係留させて、吸収性本体14と男性器54とを係留させる。より具体的には、係留バンド40によって形成されるループ状の環に陰茎54bを通し、陰茎54bに係留バンド40をまわすことによって係留することができる。
【0026】
このような場合には、係留バンドが陰茎のガイドの役割をして、陰茎を男性用軽失禁パッドの内側に当接するように誘導しつづけるために、尿漏れを有効に防止することができる。また、男性用軽失禁パッドの上端部がめくれて丸まったり、陰茎に擦れるなどのトラブルを防止する。
【0027】
なお、係留バンド40を陰茎54bに係留させる場合には、単に係留バンドによって形成されるループ状の環に陰茎54bを通すだけでなく、例えば、係留バンドを陰茎に引っ掛けて係留させたり、また、係留バンドを陰茎に巻き付けて係留させたりすることもできる。
【0028】
ここで、図3は、本発明の男性用軽失禁パッドの他の実施形態を模式的に示す斜視図であり、男性用軽失禁パッドの内面側を示す図である。また、図4は、図3に示す男性用軽失禁パッドを着用した状態を示す平面図である。なお、各図においては、図1Aに示す男性用軽失禁パッド1aの各要素と同様に構成されているものについては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0029】
このように、本発明の男性用軽失禁パッドは、吸収性本体の内面の上方側又は下方側の位置に、谷折り部を横断するように配置された係留バンドを有しているため、この係留バンドによって、男性用軽失禁パッドと、男性器、例えば、睾丸や陰茎とを係留することができ、着用者の動きによって男性器が移動した場合に、吸収性本体が追従するように移動させることができ、男性用軽失禁パッドのずれや外れを有効に防止することができる。これにより、着用者は良好な装着感を得ることができるとともに、軽失禁パッドからの尿漏れを有効に防止することができる。
【0030】
以下、本発明の男性用軽失禁パッドを構成する各構成要素について、更に詳細に説明する。
【0031】
〔1−1〕吸収性本体:
本発明の男性用軽失禁パッドは、着用者の排泄した尿を吸収し保持する機能を担う部材として、吸収性本体を備えている。この吸収性本体は、複数のシートが吸収体を挟持した状態で積層されたものであり、例えば、図1に示すように、吸収体22と、吸収体22の内面を被覆するように配置された内面シート18と、吸収体22の外面を被覆するように配置された外面シート20とを構成要素として有し、吸収体22が内面シート18と外面シート20との間に挟持された状態で固定され、パッド状に一体化された部材を挙げることができる。
【0032】
なお、上記した「吸収体の内面」とは、男性用軽失禁パッドを着用した際に、着用者の肌側に位置する面をいい、一方、上記した「吸収体の外面」とは、男性用軽失禁パッドを着用した際に、着用者の着衣側に位置する面をいう。
【0033】
〔1−1a〕内面シート:
内面シートは、着用者の肌側に位置する面に配置されるシートである。このため、内面シートは、その少なくとも一部が液透過性シートによって構成されていることが好ましい。このように構成することによって、尿が液透過性シートを透過して速やかに吸収体に到達し、吸収保持することが可能となる。なお、少なくとも一部が液透過性シートにより構成されている限り、必ずしも内面シート全体が液透過性シートによって構成されている必要はない。液透過性シートは、液透過性を有するシートであれば、シートの材質については特に制限はないが、例えば、織布、不織布、多孔性フィルム等を挙げることができる。
【0034】
なお、内面シートの更に好適な例としては、液透過性の不織布を挙げることができる。このような液透過性の不織布を用いることによって、好肌触りが良好で、吸液後の表面のさらっと感を向上させることができる。
【0035】
〔1−1b〕外面シート:
外面シートは、着用者の着衣側に位置する面に配置されるシートである。外面シートは吸収体に吸収された尿を、吸収性本体の外部に漏らさないように、尿を透過しない液不透過性シートや、尿を透過しにくいが、加圧を掛けることによって透過可能な液低透過性シートによって構成されていることが好ましい。
【0036】
上記した液不透過性シートとしては、一般的な吸収性製品に使用されている、ポリエチレンフィルムを好適例として挙げることができる。このようなポリエチレンフィルムには、透湿性ポリエチレンフィルムと非透湿性ポリエチレンフィルムとがあり、いずれのフィルムも外面シートとして用いることができるが、透湿性ポリエチレンフィルムをより好適に用いることができる。このような透湿性ポリエチレンフィルムを外面シートとして使用することにより、着用中にムレが少なくなり、軽失禁パッドを着用した際の快適性を向上させることができる。
【0037】
また、上記した液低透過性シートとしては、耐水圧の高い不織布を好適例として挙げることができる。耐水圧の高い不織布としては、例えば、SMS(スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド)、SMMS(スパンボンド/メルトブロー/メルトブロー/メルトブロー/スパンボンド)等の不織布が好ましい。
【0038】
これらの不織布は、疎水性合成繊維を集積して、ボンディングしたものであるため、尿をはじくことはあるが、加圧を加えると尿が通過してしまうことがある。但し、本発明の男性用軽失禁パッドを、日常生活を営む男性が、軽度の失禁対策用の軽失禁パッドとして利用する場合には、失禁時における尿の量が少ないため、このような液低透過性シートであっても、外面シートとして十分使用することが可能である。これにより、上述したポリエチレンフィルムを用いた場合よりも更に通気性を向上させることができ、軽失禁パッドを着用した際の快適性を更に向上させることができる。
【0039】
なお、耐水圧とは、シートを構成する生地にしみこもうとする水分に掛かる力を抑える性能(防水性)を数値で表したものであり、例えば、JIS L 1092 耐水度試験A法に準拠した方法によって測定することができる。本発明の男性用軽失禁パッドにおいては、上記耐水圧の高い不織布として、耐水圧が40mmAq.以上の不織布を挙げることができ、耐水圧が100mmAq.以上の不織布を好適に用いることができる。
【0040】
更に、外面シートとして、上記ポリエチレンフィルムと上記耐水圧の高い不織布とを積層したシートを用いてもよい。このように構成することによって、男性用軽失禁パッドの交換時や着用中、外面シートと着用者の下着とが擦れたり、外面シートを触ったりするときに音が生じ難く、着用者が周囲の目や耳を気にすることなく、安心して着用することができる。
【0041】
〔1−1c〕吸収体:
吸収体は、一般的な吸収性製品に使用されている吸収体を用いることができる。例えば、吸収体を構成する吸収材としては、木材パルプを綿状に粉砕したフラッフパルプと高吸水性樹脂(以下、「SAP」ということがある)を好適例として挙げることができる。
【0042】
なお、必要に応じて、上記吸収材をラップするために、吸水紙や親水化処理した不織布を更に有していてもよい。即ち、上記吸水紙や親水化処理した不織布によってフラッフパルプとSAPとを含む吸収材を包んでなる吸収体であってもよい。
【0043】
また、本発明の男性用軽失禁パッドにおいては、軽失禁用途として、極めて微量の吸水量に対応するためのものであれば、吸収体は多くの吸収量を必要としないため、また、失禁パッドの薄型へのニーズに応えるために、吸収体と、この吸収体を挟持する一方のシートとを一体的に構成してもよい。例えば、上記したSMS不織布やSMMS不織布にSAPを直接固定し、更にこの表面に上記吸水紙やラップ用不織布を被せることによって、吸収体と裏面シートとを一体化し、両者の機能を有する一枚の吸水シートとして使用してもよい。また、親水性不織布にSAPだけを挟持したSAPシートを用いることもできる。
【0044】
〔1−2〕谷折り部、及び谷折り状態を維持する止め部:
本発明の男性用軽失禁パッドを構成する吸収性本体は、吸収性本体の内面側に向けて谷折り状に折り曲げられた谷折り部が形成されている。そして、この谷折り部の少なくとも一方の端部に、谷折り部の谷折り状態を維持する止め部を有しており、吸収性本体の展開使用時には、吸収性本体の内面側に凹状の空間が形成されるように構成されている。
【0045】
上記谷折り部は、吸収性本体を着用者に宛がった場合に、着用者の上下方向に沿って折れ目が配置されるように形成されている。なお、本明細書においては、吸収性本体を着用者に宛がった場合に、着用者の上下方向となる方向を、吸収性本体の縦方向ということがある。
【0046】
このような谷折り部は、吸収性本体の縦方向を縦貫して形成されていてもいいし、縦方向に縦貫せずに、谷折り状態を維持する止め部周辺のみに形成されていてもよい。即ち、谷折り部は、吸収性本体の縦方向における端部のうち、少なくとも一方の端部に形成されていればよい。
【0047】
また、谷折り状態を維持する止め部は、谷折り部の一端にのみ配置されていることが好ましいが、谷折り部の両端に配置されていてもよい。
【0048】
このような、谷折り部と止め部とを有することによって、吸収性本体にタック(即ち、襞状の折り目)が形成されるため、吸収性本体の展開使用時には、吸収性本体の内面側に凹状の空間が形成される。なお、上記した「展開使用」とは、谷折り部によって折り曲げられた吸収性本体を広げて(展開させて)、谷折り部の折り曲げ状態の一部を開放し、吸収性本体の内面側を着用者に宛がって使用することが可能な状態にすることをいう。即ち、谷折り状態が維持されない部分は、展開時に谷折り状態が解除されながら広がるが、谷折り状態が維持された止め部付近は、展開時に谷折り状態が解除されないので、展開できない。このため、その展開面積に差異が生じ、吸収性本体(即ち、男性用軽失禁パッド)の内面側に凹状の空間が形成される。
【0049】
吸収性本体(即ち、男性用軽失禁パッド)がこのような形状になると、男性器に宛がった際に収まりが非常に良好になる。特に、上記止め部側が、着用者の睾丸側に位置するようにして軽失禁パッドを宛がうことによって、睾丸側から着用者の前方(前半身)に掛けて軽失禁パッドが広がるように男性器を覆うことができるため、着用に際する違和感を大幅に軽減することができる。
【0050】
なお、本発明の男性用軽失禁パッドでは、谷折り部は一本と限定されず、複数あってもよい。例えば、図8においては、男性用軽失禁パッド1fの幅方向中央を挟んで両側に一本ずつ、二箇所で谷折り部36を形成した場合の例を示し、また、図9においては、男性用軽失禁パッド1gの幅方向に、三箇所で谷折り部36を形成した場合の例を示している。このような男性用軽失禁パッドにおいては、谷折り状態を維持する止め部は、それぞれの谷折り部の少なくとも一方の端部に形成されることとなる。ここで、図8及び図9は、本発明の男性用軽失禁パッドの更に他の実施形態を模式的に示す斜視図であり、男性用軽失禁パッドの内面側を示す図である。
【0051】
上述したように、吸収性本体に複数の谷折り部を形成することによって、吸収性本体の形状(表面形状)が多面形状になるために、男性用軽失禁パッドのフィット感を向上させることができる。
【0052】
また、谷折り部の谷折り状態を維持するための止め部は、例えば、吸収性本体の内側面同士を固定して、谷折り状態の一部を維持することが可能なものであれば、その固定方法等については制限はない。なお、固定方法としては、熱エンボス加工、ヒートシール、ホットメルト、粘着テープによる接着等を挙げることができる。
【0053】
〔1−3〕係留バンド:
本発明の男性用軽失禁パッドは、吸収性本体の内面の止め部を有する端部側又はその反対側の端部側に、谷折り部の横断方向に沿って配置された、吸収性本体を男性器に係留する係留バンドを有している。
【0054】
この係留バンドの幅(吸収性本体の縦方向における長さ)は、吸収性本体の縦方向の長さよりも狭いものとする。これにより、係留バンドによって、吸収性本体の内面側が覆われてしまうことがないため、吸収性本体の吸収性に障害を与えることがなく、着用者の排泄した尿を良好に吸収することができる。
【0055】
係留バンドは、吸収性本体を、陰茎や睾丸と緩やかに係留するためのものであり、例えば、図2及び図4に示すように、係留バンド40によって形成されるループ状の環に、陰茎又は睾丸が自由度をもって収まるように使用し、吸収性本体14を男性器54に係留することができる。
【0056】
例えば、図2に示すような状態で使用する場合には、係留バンドの両端部は、吸収性本体の内面下端における、両側縁部に配置されることとなり、図4に示すような状態で使用する場合には、係留バンドの両端部は、吸収性本体の内面上端における、両側縁部に配置されることとなる。いずれの場合であっても、陰茎又は睾丸に対して緩やかに吸収性本体を係留することができ、着用者の動きによって男性用軽失禁パッドがずれたり外れたりし難く、良好な装着感を得ることができる。
【0057】
また、本発明の男性用軽失禁パッドにおいては、図示は省略するが、一つの吸収性本体に対して、二つの係留バンドを有するものであってもよい。即ち、吸収性本体の内面の上端と下端とに、それぞれ一つずつ係留バンドが配置され、上端側の係留バンドを陰茎に係留させ、下端側の係留バンドを睾丸に係留させてもよい。このように構成することによって、男性用軽失禁パッドのずれや外れをより良好に防止することができる。
【0058】
また、本発明の男性用軽失禁パッドにおいては、これまでに説明したような、吸収性本体とは別に形成された係留バンドを吸収性本体に配設するのではなく、吸収性本体の周縁部において、複数のシート同士が積層した状態のフラップ部分に切れ目を入れ、一部が遊離し、且つ両端が吸収性本体と連続した状態の上記フラップ部分によって、係留バンドが形成されていてもよい。なお、上述した「遊離」とは、切れ目を入れたフラップ部分の両端が、シートの本体と連続した状態で切り離されている状態のことをいう。
【0059】
即ち、図5に示すように、吸収性本体14が、吸収性本体14の外周部分にて複数のシート18,20同士が積層されたシート積層部14aと、複数のシート18,20によって吸収体22を挟持して積層された吸収体積層部14bとから構成されてなり、このシート積層部14aと吸収体積層部14bとの間に切り込み部62が形成され、上記切り込み部62によって一部が遊離したシート積層部14a’によって、係留バンド42が形成されていてもよい。
【0060】
図5においては、吸収性本体14の内面32の止め部38を有する端部側とは反対側の端部(着用者の身体上方側の位置)に、上記切り込み部62が形成され、遊離したシート積層部14a’によって係留バンド42が形成された男性用軽失禁パッド1cを示している。
【0061】
このように、シート積層部の遊離部分によって係留バンドを形成することにより、男性用軽失禁パッドの製造工程を簡略化し、簡便且つ安価に本発明の男性用軽失禁パッドを製造することができる。このような係留バンドの使用方法については、別体の係留バンドを吸収性本体に配設した場合のものと同様である。
【0062】
なお、切り込み部62は、シート積層部14aと吸収体積層部14bとの境界部分よりも若干シート積層部14a側寄りに形成されていることが好ましい。このように構成することによって、シート積層部14aと吸収体積層部14bとの間に切り込み部62を形成した場合に、吸収体22の周囲にシート積層部14aによるフラップ部分が残り、切り込み部62からの吸収体22のもれやはみ出しを有効に防止することができる。
【0063】
ここで、図5は、本発明の男性用軽失禁パッドの更に他の実施形態を模式的に示す斜視図であり、男性用軽失禁パッドの内面側を示す図である。なお、図5においては、吸収性本体14の着用者の身体上方側の位置に切り込み部62が形成された場合の例を示しているが、着用者の身体下方側の位置に切り込み部が形成されていてもよい。
【0064】
切り込み部の形状は、陰茎や睾丸の挿入しやすさ、抜け難さ、与える圧迫感などを勘案して任意の形状を選択することができるが、「V」の字状や「U」の字状等を好適例として挙げることができる。また、直線状の一本のスリット状、十字のスリット状、丸穴等の任意形状であってもよい。
【0065】
また、このような切り込み部によって形成された係留バンドは、吸収性本体の内面側に折り返してもよいし、更に、内面側に折り返した後、少なくともいずれか一方の端部を吸収性本体に固定してもよい。例えば、図6Aにおいては、切り込み部62によって形成された係留バンド42を、吸収性本体14の内面32側に折り返した場合の例を示し、図6Bにおいては、切り込み部62によって形成された係留バンド42を、吸収性本体14の内面32側に折り返し、更に係留バンド42の両端を吸収性本体14に固定した場合の例を示している。図6Bに示すような男性用軽失禁パッド1dは、係留バンド42の付根部分が安定し、係留バンド42によって吸収性本体14を安定して係留することができる。ここで、図6A及び図6Bは、本発明の男性用軽失禁パッドの更に他の実施形態を模式的に示す斜視図であり、男性用軽失禁パッドの内面側を示す図である。
【0066】
また、本発明の男性用軽失禁パッドに用いられる係留バンドは、男性器と軽失禁パッドの位置関係がずれるように変化した場合でも、男性器の動きに合わせて追従できるような伸縮性が付与されてなるものであることが好ましい。また、係留バンドが撚れてひも状になって男性器に食い込むのを防止するために、適度なクッション性が付されていることが好ましい。クッション性とともに、適度な剛性が付与されていると、撚れと、食い込みとの双方を有効に防止することができる。
【0067】
また、係留バンドは、任意の単独の素材によって構成されたものであってもよいが、例えば、係留バンドに機能を持たせる芯材と、その芯材の表面に配設された表面材とによって構成されたものであることが好ましい。
【0068】
例えば、素材を単独で使用する場合には、不織布を好適に用いることができる。伸縮性に富む不織布としては、例えば、ウレタン系の樹脂をメルトブロー製法でシート状にした伸縮不織布を好適例として挙げることができる。
【0069】
なお、上述したように、係留バンドに伸縮性を付与する場合には、伸縮弾性体を伸張状態で不織布に配置して、この不織布によって伸縮弾性体を挟持して形成された係留バンドを好適に用いることができる。このように構成された係留バンドは、係留バンドを任意の寸法にまで収縮させることが可能になるため、軽失禁パッドの内面をショートカットして連結することが容易であるとともに、伸縮弾性体によってギャザーリングされた不織布の山部がクッション性をもつために、陰茎、睾丸などの性器周りに触れても皮膚刺激を与えることがない。
【0070】
上記した伸縮弾性体としては、天然ゴム、合成ゴム等からなる糸ゴム、平ゴム、弾性ネット状シート、伸縮性の発泡ポリウレタン、エラストマーなどを用いることができる。
【0071】
また、上述したように、係留バンドにクッション性を付与する場合には、係留バンドを発泡樹脂によって形成することが好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等に発泡剤を加えてシート状に押出し成型した発泡樹脂シート、発泡ポリウレタン等を用いて係留バンドを形成することができる。また、嵩高の不織布を用いて係留バンドを形成してもよい。このように構成された係留バンドは、クッション性を有するため、係留バンドが男性器周辺に接触しても痛みを与えることなく、更に、剛性をも付与される場合には、係留バンドがひも状になって男性器に食い込む事態を防止することが可能となる。
【0072】
なお、上記した発泡フォームには、伸縮性は特に必要としない。また、上記発泡ポリウレタンには、伸縮性の高いグレードのものと、伸縮性の低いグレードのものとがあるため、用途別に適宜選択して用いることができる。
【0073】
図5に示したように、男性用軽失禁パッド1dに切り込み部62を形成して係留バンド42を形成する場合に、例えば、図7に示すように、切り込み部62を形成する領域に、上記の伸縮弾性体やクッション性付与材を配置し(図7においては、クッション性付与材64を配置した場合の例を示している)、シート積層部14aとともにクッション性付与材64に切り込み部62を形成してもよい。例えば、クッション性付与材64としては、上記発泡ポリウレタン等を好適例として挙げることができる。このように、切り込み部62の両側に伸縮性やクッション性を与えたい場合は、伸縮弾性体やクッション性付与材の配置範囲の中で前記切り込み部62を形成すればよい。また、伸縮弾性体やクッション性付与材の配置範囲と吸収体の間に切り込み部62を形成することで、係留バンド側にのみ伸縮性やクッション性を付与することができる。
【0074】
このように構成することによって、男性用軽失禁パッド1eの係留バンド42側にも吸収性本体14側にも伸縮性やクッション性を付与する素材(クッション性付与材64)が配置されることとなり、男性用軽失禁パッド1eをより快適に装着することが可能となる。ここで、図7は、本発明の男性用軽失禁パッドの更に他の実施形態を模式的に示す斜視図であり、男性用軽失禁パッドの内面側を示す図である。
【0075】
〔2〕男性用軽失禁パッドの製造方法:
次に、本発明の男性用軽失禁パッドの製造方法について、図1Aに示す男性用軽失禁パッドを製造する場合の例について説明する。
【0076】
まず、複数のシートが吸収体を挟持した状態で積層されたシート状の吸収性本体を作製する。具体的には、透湿性のポリエチレンフィルムと不織布を貼り合せた外面シート20のポリエチレンフィルム面上に、ティシュに挟まれた所定形状の吸収体22を配置する。不織布としては、ポリプロピレン製のスパンボンド不織布などを用いることができる。更にその上面にポリエチレンとポリエステルの芯鞘繊維からなるエアスルー不織布からなる内面シート18を配置する。次いで、吸収体22の周縁部を内面シート18と外面シート20とで挟み込むように封着することによって、シート状の吸収性本体14を得る。
【0077】
次に、係留バンドを形成するための帯状の係留バンド用部材を作製する。この係留バンド用部材は、本発明の男性用軽失禁パッドの実施形態にて説明した、任意の単独の素材によって作製してもよいし、係留バンドに機能を持たせる芯材と、その芯材の表面に配設された表面材とを用いて作製してもよい。次に、作製した係留バンド用部材のそれぞれの端部を、吸収性本体14の両側縁に接続して、吸収性本体14に係留バンド40を固定する。
【0078】
次に、吸収性本体14を、内面側(即ち、内面シート18が配置された面側)に向けて谷折りに折り曲げて谷折り部36を形成し、吸収性本体14の谷折り部36によって重なり合う部位の一部を熱エンボス加工などの接着手段で固定して止め部38を形成する。このようにして、図1に示すような男性用軽失禁パッド1aを製造することができる。なお、係留バンドは、上述したように別体で作製した係留バンド用部材を用いて形成するのではなく、吸収性本体の周縁のフラップ部分に切れ目を入れて形成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の男性用軽失禁パッドは、失禁対策用の男性用の失禁パッドとして利用することが可能である。特に、日常生活を営む男性が軽度の失禁対策として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g:男性用軽失禁パッド、14:吸収性本体、14a:シート積層部、14a’:遊離したシート積層部、14b:吸収体積層部、18:シート(内面シート)、20:シート(外面シート)、22:吸収体、32:内面、33凹状の空間、36:谷折り部、38:止め部、40,42:係留バンド、52:着用者、54:男性器、54a:睾丸、54b:陰茎、62:切り込み部、64:クッション性付与材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシートが吸収体を挟持した状態で積層された吸収性本体を備え、その内面側を着用者の男性器に宛がって使用する男性用軽失禁パッドであって、
前記吸収性本体は、前記内面側に向けて谷折り状に折り曲げられた谷折り部が形成されるとともに、前記谷折り部の少なくとも一方の端部に、前記谷折り部の谷折り状態を維持する止め部を有し、前記吸収性本体の展開使用時には、前記内面側に凹状の空間が形成されるように構成されてなり、且つ、
前記吸収性本体は、前記内面の前記止め部を有する端部側又はその反対側の端部側に、前記谷折り部の横断方向に沿って配置された、前記吸収性本体を男性器に係留する係留バンドを更に有する男性用軽失禁パッド。
【請求項2】
前記係留バンドの両端部が、前記吸収性本体の前記内面における前記横断方向の両側縁部に固定されている請求項1に記載の男性用軽失禁パッド。
【請求項3】
前記吸収性本体は、前記吸収性本体の外周部分にて前記複数のシート同士が積層されたシート積層部と、前記複数のシートによって前記吸収体を挟持して積層された吸収体積層部とから構成されてなり、
前記シート積層部と前記吸収体積層部との間に切り込み部が形成され、前記切り込み部によって一部が遊離したシート積層部によって、前記係留バンドが形成されている請求項1に記載の男性用軽失禁パッド。
【請求項4】
前記係留バンドに伸縮性が付与されてなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の男性用軽失禁パッド。
【請求項5】
前記係留バンドにクッション性が付与されてなる請求項1〜4のいずれか一項に記載の男性用軽失禁パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−220836(P2010−220836A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71844(P2009−71844)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】