説明

画像の描画装置、方法、及びプログラム

【課題】
本願発明は、あらかじめ定められたパターンを用いて、軌跡に沿ってパターンを配置するパターンブラシの描画方法に関する。パターンブラシで描いた画像の端点や屈曲点が、ユーザの意図しない形状となる場合がある。
【解決手段】
表示装置上のキャンバスに描画を行う描画装置であって、あらかじめ定められたパターンと相似なパターンを、与えられた軌跡に沿って連続的に配置することにより画像を描画する描画部と、入力情報及び/又は前記画像から軌跡を抽出し、前記軌跡を前記描画部に与える軌跡抽出部と、前記軌跡の特異点と該特異点の形状を特定する軌跡解析部と、前記特異点と前記形状に基づき、前記軌跡に補助軌跡を連結する補助軌跡連結部と、前記補助軌跡を前記描画部に与える描画補正部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌跡に沿って描かれた画像を描画する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像作成編集ソフトウエアを用いた装置においては、直線又は曲線を描画する機能が用意されている。描画を行う装置の構成としては、図1に示されるように、コンピュータ100、画像の作成編集を行うキャンバス102が表示されたディスプレイ101、入力インターフェースであるキーボード105、マウス106、タブレット107とペン108等が含まれる。
【0003】
描画された情報は、通常ラスターデータ又はベクターデータとして、コンピュータ100に保持される。ラスターデータとは点(ピクセル又は画素)の集合によって構成されている画像データである。ベクターデータとは、線の起点・終点の座標(位置)、その曲がり方、太さ、色、それらの線に囲まれた面の色、それらの変化のしかたなどを、数値で表したデータである。
【0004】
そして、ラスターデータとベクターデータは、それぞれの特徴を持っている。その特徴によって、両者の使い分けがなされている。イラスト作成や画像作成編集に用いられるソフトウエアの中には、ラスターデータとベクターデータの双方を扱うことができるものがある。複数の画像を各レイヤー(図示せず)に保持し、各レイヤーに1枚の画像を持つ。レイヤー毎にラスターデータ用のレイヤーとベクターデータ用のレイヤーを指定できるものが存在する。また、描画の際には、ベクターデータとして描画を行い、描画が完了した任意の時点で、自動的にベクターデータからラスターデータに変換する処理を行うことも可能である。あるいは、ユーザの指示に応じて、ラスターデータとベクターデータとの間の変換を行うことも可能である。
【0005】
軌跡に沿って描画を行う描画機能の一つとして、パターンブラシがある。
【0006】
図2はパターンブラシの描画方法を示している。図2(a)に示すように、ペンツールのペン先としてパターン201を用いる。タブレット等を用いて図2(b)に示される軌跡202を描く。この結果、軌跡202に沿って、パターン201が連続的に描画され、図2(c)に示す画像203がキャンバス102上に形成される。図2(c)には、画像203に加えて、軌跡202が描かれているが、印刷等で画像を出力する際には、軌跡202は印刷されない。ディスプレイのキャンバス102上には、編集を容易にするために軌跡202を表示させてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来のパターンブラシの描画手法を用いると、軌跡202に沿ってパターン201が描画されるため、図2(c)に示すように画像の端部211、212、213は、丸みを持つ。また、軌跡の屈曲した部分の内側の画像部分221は、軌跡202と略同様の鋭角部221が形成される。
【0008】
しかしながら、ユーザは、図2に示す画像以外の画像パターンを描きたいと希望する場合がある。例えば、線を描く場合に、線の端部や屈曲部に特徴のある線を描きたい場合がある。
【0009】
図3は、ユーザの要求する画像パターンの一例を示している。すなわち、図3(a)に示すように、画像の端部311、312、313、314、315に尖った角を描きたい場合がある。また、図3(b)に示すように、画像の屈曲した部分の内側をインク溜まり321のように表現したい場合がある。また、図3(c)に示すように、図3(a)と図3(b)に示される表現の両方を欲する場合がある。
【0010】
このように、描画された画像の端部や屈曲部がユーザのニーズに合致しない形状になってしまう現象は、例示した円形のパターン以外の四角や三角等の角を持つパターンを用いたとしても発生し得る。
【0011】
このため、図2に示す従来のパターンブラシを用いた描画方法では、図3に示すようなユーザのニーズを満たす多彩な表現を実現することができない。このため、ユーザは、図3のような画像を描くために、手作業によって画像の修正を行わなければならない場合が発生し得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、上述の従来技術の課題を解決することを目的とする。
【0013】
本願発明は、あらかじめ定められたパターンと相似なパターンを、与えられた軌跡に沿って連続的に配置することにより、コンピュータが表示装置上のキャンバスに画像を描画する描画方法であって、入力情報及び/又は前記画像から軌跡を抽出し、メモリに格納するステップと、あらかじめ定められたパターンと相似なパターンを、前記メモリに格納された前記軌跡に沿って連続的に配置する第1の描画ステップと、前記軌跡の特異点と該特異点の形状を特定する軌跡解析ステップと、前記特異点と前記形状に基づき、前記メモリに格納された前記軌跡に補助軌跡を連結する補助軌跡連結ステップと、あらかじめ定められたパターンと相似なパターンを、前記補助軌跡に沿って連続的に配置する第2の描画ステップと、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本願発明は、表示装置上のキャンバスに描画を行う描画装置であって、あらかじめ定められたパターンと相似なパターンを、与えられた軌跡に沿って連続的に配置することにより画像を描画する描画部と、入力情報及び/又は前記画像から軌跡を抽出し、前記軌跡を前記描画部に与える軌跡抽出部と、前記軌跡の特異点と該特異点の形状を特定する軌跡解析部と、前記特異点と前記形状に基づき、前記軌跡に補助軌跡を連結する補助軌跡連結部と、前記補助軌跡を前記描画部に与える描画補正部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本願発明により、ユーザは、多彩な画像パターンを描くことが可能となる。加えて、目的の画像を形成するための時間と労力を節約することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一般的な画像編集装置の図である。
【図2】従来技術の図である。
【図3】ユーザにより要求される描画パターンの例を示す図である。
【図4】本願発明の画像編集装置を示す図である。
【図5】本願発明の機能ブロック図を示す図である。
【図6】本願発明の実施例の処理を示したフローチャートである。
【図7】第1の実施例を示す図である。
【図8】第2の実施例を示す図である。
【図9】第3の実施例を示す図である。
【図10】第4の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願明細書に記載される実施例は、発明の内容の理解を容易にするためのものであり、特許請求の範囲に係る発明を限定するためのものではない。また、以下の説明においては、主にベクターデータの処理を用いて、本願発明の処理を説明するが、本願発明はベクターデータの処理に限られるわけではなく、ラスターデータの処理等の他の形式の画像データ処理にも当然に利用することができる点に留意する必要がある。
【0018】
また、本願明細書で用いる「軌跡」は、マウス、タブレット等のユーザが操作するユーザインターフェースによって画面上のポインタが移動する際のストローク(軌跡)に限られず、スキャナ等から読み取られた画像、写真等から抽出される直線や曲線を含むものである。加えて、本願発明の対象は、二次元的な画像に限られず、三次元的なモデリングをも対象とすることに留意すべきである。
【0019】
加えて、本願発明で用いられるパターンブラシに適用されるパターンは、あらゆる二次元的又は三次元的なパターンを含む。
【0020】
図4に、本願発明の画像編集装置400の構成を示す。本願発明の画像編集装置400は、CPU(401)からバス407を介して各種の装置と接続されている。メモリ402は、静的なメモリと動的なメモリとを含み、画像、軌跡、プログラム等の情報が保存される。入力装置は、ポインタの移動、ポインタの軌跡の入力、テキストの入力、コマンドの指示等を行うものであり、例えば、マウス、タブレット、タッチスクリーン、キーボード、スキャナ等が接続される。表示装置404は、画像やユーザインターフェースの表示等が行える。タブレットやタッチスクリーンは、表示装置404と組み合わせて動作する場合がある。加えて、画像等を印刷するプリンタ405が接続されている。以上の装置構成は例示であり、その他の装置が組み合わされてもよい。
【0021】
図5に、本願発明の機能ブロック図を示す。タブレット等の入力インターフェースからの入力501は、入力部503によって受け取られる。入力部では、種々の描画コマンドをコマンド解析部505に送る。また、コマンドは、デフォルト値としてプリセット情報記憶部507に記憶されていてもよい。また、コマンド解析部505で解析されたコマンドをプリセット値としてプリセット記憶部507に格納し、後の利用に供してもよい。コマンドの例としては、描画ツールの種類(例えば、パターンブラシ、鉛筆、筆、エアブラシ、水彩ツール、消しゴム等)の選択指示、色の指示等、種々のものがあるが、本願発明に関連するものを列挙すれば以下の通りである。
【0022】
すなわち、パターンブラシの選択指示、パターンの選択指示、描画の際に角をとがらせる効果の指示、インク溜まりの効果の指示、効果の度合いの指示等が挙げられる。なお、上記のコマンドは、例示に過ぎず、本願発明を限定するものではない。
【0023】
コマンド解析部505の出力は、描画補正部515に送られ、軌跡が描画される際に、コマンドに基づき描画の補正情報を描画部に与える。
【0024】
また、入力部503は、タブレット、タッチスクリーン等の操作によるポインタの位置情報等を軌跡抽出部509に送る。軌跡抽出部509において、ポインタの軌跡を入力軌跡として抽出するとともに、筆圧、軌跡の速度・加速度、ペンの傾き、ペンアップ、ペンダウン等の付随的情報を抽出する。
【0025】
軌跡抽出部509は、入力部503からの情報に加えて、描画部において既に描画された情報が、画像情報521として入力される。例えば、消しゴムツールを使用して、既に描かれた線の一部が消された場合には、一つの連続した軌跡を二つの軌跡に分離する操作を行う。このような操作の場合には、既に描画された情報が利用される。
【0026】
描画部517では、軌跡抽出部509からの軌跡情報と、描画補正部515からの補正情報を用いて、キャンバス上にユーザの意図した描画を行う。出力部519は、描画部517からの情報を用いて、ディスプレイ等の出力装置に画像523を出力する。
【0027】
加えて、軌跡抽出部509からの情報は軌跡解析部511に送られる。軌跡解析部511で、軌跡の端点や屈曲点などの特異点と特異点の形状が特定される。
【0028】
軌跡解析部511からの出力は、補助軌跡連結部513に送られる。ここで、特異点と特異点の形状に基づき、補助軌跡が生成される。そして、その補助軌跡が、入力軌跡に連結される。
【0029】
補助軌跡連結部の出力は、描画補正部515に送られ、補助軌跡に沿って、選択されたパターンの相似形のパターンが配置される。この描画補正部515の情報が描画部517に送られ、描画が行われる。出力部519は、描画部517からの情報を用いて、ディスプレイ等の出力装置に画像523を出力する。
【実施例】
【0030】
図6は、本願発明の実施例の処理を示したフローチャート600である。
【0031】
ステップ610において、タブレット等からのポインタの軌跡又は、既に描画された画像から軌跡を抽出する。この軌跡は、例えばオペレータがタブレット上でペンを動かすことによりディスプレイ上を移動するポインタの軌跡に対応する。この軌跡を、以下の説明では入力軌跡と呼ぶこととする。
【0032】
ステップ620において、あらかじめユーザが指定したパターンの相似形のパターンが、入力軌跡に沿って連続的に配置される。なお、タブレット上のペンの筆圧等に応じて、配置される相似形のパターンの大きさ等を変化させてもよい。この操作によって、キャンバス上に画像が形成される。
【0033】
ステップ630において、入力軌跡の特異点と特異点の形状が認識される。ここで、特異点とは、たとえば軌跡の端部の点、軌跡が折れ曲がった点(屈曲点)等が挙げられる。本願発明では、後述するように、特異点の近辺において、角をとがらせる効果や、インク溜まりの効果を有する描画を行う。なお、本願発明は、特徴点としてこれらの例に限定されるものではない。
【0034】
ステップ640において、画像に変形を加えるために、特異点と特異点の形状等に基づいて、補助軌跡を形成し、この補助軌跡を入力軌跡に連結させる。
【0035】
ステップ650において、あらかじめユーザが指定したパターンの相似形のパターンが補助軌跡に沿って連続的に配置される。この操作によって、ステップ620においてキャンバス上に形成された画像に修正が加えられる。なお、詳細な処理は、各実施例において詳述する。
【0036】
[実施例1]
図7は、軌跡の端部において、角をとがらせる処理を模式的に示した図である。図7(a)は、パターンブラシに用いる半径rの円形のパターン701を示している。なお、本願発明は、このパターンに限定されるものではない。
【0037】
図7(b)は、入力軌跡703に沿ってパターン701を連続的に配置した結果、描かれた画像を示している。画像の端部705は、パターン701を用いたために丸みを帯びた形状になっている。
【0038】
本実施例では、ユーザは、図7(e)に示すように、角713および角715を持つ、尖った画像を描きたいと欲していると仮定し、これを実現する処理について以下説明する。
【0039】
図7(b)に示されるように、特異点である軌跡の端部707を特定する。特異点としての入力軌跡の端部707は、例えば、入力軌跡を順次トレースすることにより特定できる。
【0040】
図7(c)に示されるように、次に、補助軌跡705および補助軌跡706を生成し、軌跡の端部707である特異点に連結する。補助軌跡705および補助軌跡706の長さLは、パターン701の半径rから次のように計算できる。
=r/Sin45°
また、補助軌跡705と入力軌跡703とのなす角度α及び補助軌跡706と入力軌跡703とのなす角度αは、以下の値になる。
α=135°
α=135°
また、補助軌跡705と補助軌跡706とのなす角度αは、以下の値になる。
α=90°
図7(d)に示すように、特異点707から終端713まで、半径rから半径略零になるように半径を滑らかに変化させながら、パターン701の相似形を、補助軌跡705に沿って連続的に配置して行く。パターン709、709a、709b、709c、709dは、配置される相似形のパターンの一部を示している。また、補助軌跡706に対しても同様の処理を行う。
【0041】
図7(e)は、以上の処理を終了した結果得られた画像711を示している。ユーザが意図した角713及び角715を持つ画像が形成される。
【0042】
なお、上述の各種パラメータL、α、α、α、パターン701の相似形の大きさの変化率は、ユーザの指示により、任意に変更してもよい。また、これらのパラメータをタブレットやタッチスクリーンの筆圧、軌跡の速度・加速度、ペンの傾き等により、動的に変更させてもよい。このように、パラメータを必要に応じて変更することにより、図7(e)の角713および角715の周辺部の形状を様々な形状に変更することができる。
【0043】
また、パターン701は、円形に限られるものではなく、楕円、矩形等、任意の形状を設定してもよい。パターンを変更することにより、より多彩な描画が可能となる。
【0044】
加えて、上述の実施例において、補助軌跡として直線を用いたが、曲線を用いてもよい。また、補助軌跡は、二本に限られず、一本あるいは、三本以上であってもよい。
【0045】
なお、以下の実施例においても、パターンの形状を円形として、各種パラメータの値を例示するが、本願発明は、その例示した形状や値に限定されるものではなく、上述のように、必要に応じて変更することができることは言うまでもない。加えて、補助軌跡が直線に限定されないことも同様である。
【0046】
[実施例2]
図8は、半径rのパターン801を用いて、入力軌跡803に沿って配置した場合、パターンが点802において屈曲している場合に、画像の端部805が丸みを帯びた形状となっている。
【0047】
本実施例では、ユーザは、図8(e)に示すように、角813を持つ、尖った画像を描きたいと欲していると仮定し、これを実現する処理について以下説明する。
【0048】
図8(b)に示されるように、特異点である軌跡の屈曲点802を特定する。特異点としての入力軌跡の屈曲点802は、例えば、入力軌跡の傾きを順次トレースすることによって、傾きの不連続点、又は傾きの変化量が大きい入力軌跡部分の略中央位置を検出することにより特定できる。
【0049】
図8(c)に示されるように、次に、補助軌跡805を生成し、軌跡の屈曲点802である特異点に連結する。補助軌跡805の長さLは、パターン701の半径r及び特異点の内角βから次のように計算できる。
=r/Sin(β/2)
また、補助軌跡805と入力軌跡803とのなす角度β及びβは、以下の値になる。
β=180°−β/2
β=180°−β/2
図8(d)に示すように、特異点802から終端813まで、半径rから半径略零になるように半径を滑らかに変化させながら、パターン801の相似形を、補助軌跡805に沿って連続的に配置して行く。パターン809、809a、809b、809c、809d、809eは、配置される相似形のパターンの一部を示している。
【0050】
図8(e)は、以上の処理を終了した結果得られた画像811を示している。ユーザが意図した角813を持つ画像が形成される。
【0051】
なお、上記の処理を実行する内角βの範囲をあらかじめ定めておいてもよい。すなわち下限値又は上限値の定数A又はBを定め、下記の式を満たす場合に、上記の処理を行わせてもよい。あるいは、ユーザが定数A又はBを適宜指定してもよい。
A<β<B
ここで留意すべき点は、βがゼロに近づけば、Lが大きな値になりすぎることがある(β=0であればLは無限大)。また、βが180°に近づけば、処理すべき特異点の数が多くなりすぎることがある。ユーザにこれらの制限値を指定できるようにさせた場合には、このような極端な値が選択できないようにしてもよい。この制限に代えて、あるいはこの制限と共に、Lの下限値又は上限値を設定してもよい。なお、Lの下限値又は上限値は、具体的なピクセル数を指定してもよい。あるいはパターン801の大きさ(半径r)、キャンバスの解像度や大きさ(キャンバスの縦、横、又は対角線等のピクセル数)等の値を考慮してこれらの値との相対的な値を採用してもよい。
【0052】
また、上述のようなパラメータの制限の設定は、その他の実施例における各種パラメータの制限の設定についても同様に適宜行うことができる。
【0053】
[実施例3]
図9は、図8と同様の条件において、図9(b)に示す画像の屈曲した部分の内側904を、図9(e)に示すインク溜まり913のように描画する実施例を示している。
【0054】
入力軌跡903上で、特異点902からLだけ離れた点907及び特異点902からLだけ離れた点909を結ぶ線を補助軌跡905とする。補助軌跡905に沿って、点907から点909に、半径rのパターン901を連続的に配置し、屈曲した部分の内側904を塗り残し無く埋める処理を施す。補助軌跡905が直線でL=Lの場合、塗り残しが無いようにするためのLの最大値は、以下の式で与えられる。
=L=r(1+1/Sin(β/2))/Cos(β/2)
その他、補助軌跡905の位置及び形状は、屈曲した部分の内側904に塗り残しがないようにL及びLを決定し、曲線としてもよい。あるいは、パターンの相似形の大きさを変更してもよい。
【0055】
[実施例4]
図10(a)は、図9のパターン901を軌跡1020に沿って、連続的に配置して描かれた画像1030が描かれている。そして、この画像1030に対して、消しゴムツール1010を用いて画像1030の一部が消去されようとしている。
【0056】
図10(b)は、消しゴムツール1010によって、画像1030が、画像1031と画像1032とに分離された様子を示している。消しゴムツールによって、軌跡1020も、1021と1022とに分離されていることが示されている。この場合、分離された二つの画像の端部は、パターン901を用いているため、丸みを帯びたものとなる。
【0057】
図10(c)は、図7で既に説明した処理により、補助軌跡1041、1042、1051、1052が連結された様子を示している。図7と同様の処理を施し、これらの補助軌跡に沿って、描画を行う。
【0058】
図10(d)は、補助軌跡の描画が終了した後の状態を示している。消しゴムツールにより分離された二つの軌跡に、尖った角1061、1062、1071、1072が形成されている。
【0059】
以上、各実施例を説明したが、補助軌跡は、ユーザが編集できないようにしてもよい。入力軌跡が移動した場合には、その移動に伴って、連結された補助軌跡を移動させてもよい。加えて、入力軌跡が編集された場合には、その編集に応じて、補助軌跡を生成し直してもよい。また、画像の編集作業に伴って、特異点であったものが特異点でなくなった場合には、存在していた補助軌跡を消去し、補助軌跡に付随する画像を消去してもよい。
【0060】
また、既に描画されている部分で、変更の必要ない部分は、再度描画を行わない構成としてもよい。また、補助軌跡に沿って、相似形のパターンを、その大きさを連続的に変更させつつ配置する際に、相似形の大きさを制御する情報として、軌跡の情報に付随してメモリに格納される筆圧情報を用いて相似形の大きさを制御してもよい。
【0061】
なお、本願の特許請求の範囲に定義された発明の各ステップは、発明の動作に矛盾が生じない限り、その記載の順序とは異なる順序で実行されてもよく、または複数のステップが同時に実行されてもよい。これらについても、当然のごとく、当該特許請求の範囲の技術的範囲に包含される。
【0062】
また、本願明細書に記載された各実施例の構成は、排他的なものではなく、矛盾が生じない限り、各実施例の構成を自由に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0063】
100 コンピュータ
101 ディスプレイ
105 キーボード
106 マウス
107 タブレット
108 ペン
401 CPU
402 メモリ
403 入力装置
404 表示装置
405 プリンタ
407 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
あらかじめ定められたパターンと相似なパターンを、与えられた軌跡に沿って連続的に配置することにより、コンピュータが表示装置上のキャンバスに画像を描画する描画方法であって、
入力情報及び/又は前記画像から軌跡を抽出し、メモリに格納するステップと、
あらかじめ定められたパターンと相似なパターンを、前記メモリに格納された前記軌跡に沿って連続的に配置する第1の描画ステップと、
前記軌跡の特異点と該特異点の形状を特定する軌跡解析ステップと、
前記特異点と前記形状に基づき、前記メモリに格納された前記軌跡に補助軌跡を連結する補助軌跡連結ステップと、
あらかじめ定められたパターンと相似なパターンを、前記補助軌跡に沿って連続的に配置する第2の描画ステップと、
を有する描画方法。
【請求項2】
前記特異点が、前記軌跡の端点である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記特異点が、前記軌跡の屈曲点である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記補助軌跡が、前記軌跡上の第1の点と第2の点とを結ぶ線である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記第2の描画ステップにおいて、前記補助軌跡に沿って連続的に配置される前記相似なパターンの大きさを、前記補助軌跡の上の配置位置に応じて変化させる、請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記特異点が消失した場合、前記補助軌跡を消去することにより、前記補助軌跡により描画された画像を消去する、請求項1ないし5のうちいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちいずれか1項記載の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項8】
表示装置上のキャンバスに描画を行う描画装置であって、
あらかじめ定められたパターンと相似なパターンを、与えられた軌跡に沿って連続的に配置することにより画像を描画する描画部と、
入力情報及び/又は前記画像から軌跡を抽出し、前記軌跡を前記描画部に与える軌跡抽出部と、
前記軌跡の特異点と該特異点の形状を特定する軌跡解析部と、
前記特異点と前記形状に基づき、前記軌跡に補助軌跡を連結する補助軌跡連結部と、
前記補助軌跡を前記描画部に与える描画補正部と、
を有する描画装置。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−89081(P2012−89081A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237630(P2010−237630)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(596021562)株式会社セルシス (22)
【Fターム(参考)】