説明

画像プリントシステム

【課題】効率良く印刷を実施することができる画像プリントシステムを提供する。
【解決手段】画像プリントシステム10は、被転写体12を供給可能な供給機構20と、供給機構20の下流側に並列に設けられ、被転写体12上に画像を転写する複数の転写機構と、を備えている。転写機構は、第1転写機構30A,第2転写機構30Bおよび第3転写機構30Cからなっている。また、供給機構20と各転写機構30A,30B,30Cとの間には、供給機構20の被転写体12を各転写機構30A,30B,30Cのいずれかへ供給する切替機構40が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列に設けられた複数の転写機構を備えた画像プリントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱転写方式を用いて被転写体に画像を形成する転写機構を備えたプリンタが知られている。熱転写方式のプリンタにおいては、供給機構に収容されている被転写体が順次転写機構に供給される。転写機構においては、サーマルヘッドがインクリボンおよび被転写体を介してプラテンロールに圧着され、これによって、インクリボンの転写層が画像に対応したパターンで被転写体上に転写される。
【0003】
近年、印刷に要する時間を短縮するため、並列に設けられた複数のプリンタを備えた画像プリントシステムが提案されている。例えば特許文献2において、鉛直方向に並列に設置された複数のプリンタと、複数のプリンタにそれぞれ対応して設けられ、各プリンタから排出される被転写体を収容する複数の収容手段と、を備えた画像プリントシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−268431号公報
【特許文献2】特開2005−111893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像プリントシステムの各プリンタにおいて実行されるプリントの量は、所定のアルゴリズムに沿って割り当てられる。例えば、画像プリントシステム全体としての処理能力を最大にするためのアルゴリズムや、各プリンタを被転写体のサイズに応じて使い分けるアルゴリズムなど、様々なアルゴリズムが考えられる。この場合、一定時間の間に各プリンタにおいて実行されるプリントの量が必ずしも等しくなっていないことが考えられる。
【0006】
各プリンタはそれぞれ、上述のように、転写機構に送られる前の被転写体が収容される供給機構を有している。ここで、一定時間の間に各プリンタにおいて実行されるプリントの量が異なっている場合、一のプリンタにおいて、その他のプリンタよりも先に供給機構の被転写体がなくなってしまうことが考えられる。この場合、当該一のプリンタは、供給機構に被転写体が補給されるまで使用できなくなってしまい、この結果、画像プリントシステム全体の処理能力が低下してしまう。
【0007】
本発明は、このような課題を効果的に解決し得る画像プリントシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、被転写体を供給可能な供給機構と、前記供給機構の下流側に並列に設けられ、被転写体上に画像を転写する複数の転写機構と、前記供給機構と前記複数の転写機構との間に設けられ、前記供給機構の被転写体をいずれかの転写機構へ供給する切替機構と、を備えたことを特徴とする画像プリントシステムである。
【0009】
本発明による画像プリントシステムにおいて、前記供給機構は、シート状の被転写シートを供給するシート供給部と、前記シート供給部の下流側に設けられ、被転写シートを切断して被転写体を作製する上流側切断部と、を有していてもよい。
【0010】
本発明による画像プリントシステムにおいて、前記供給機構は、複数の被転写体が収容された枚葉供給部を有していてもよい。
【0011】
本発明による画像プリントシステムにおいて、被転写体は、複数のコマ数を含んでいてもよい。この場合、前記転写機構の下流側に、被転写体をコマ毎に切断する下流側切断部が設けられていてもよい。
【0012】
本発明による画像プリントシステムは、前記複数の転写機構の下流側に設けられ、画像が転写された被転写体を収容する収容機構をさらに備えていてもよい。この場合、前記収容機構は、各転写機構に対応して各転写機構の下流側に設けられ、各転写機構によって画像が転写された被転写体をそれぞれ収容する複数の収容手段を有していてもよい。
【0013】
本発明による画像プリントシステムは、前記複数の転写機構の下流側に設けられ、画像が転写された被転写体を収容する収容機構をさらに備えていてもよい。この場合、前記収容機構は、前記複数の転写機構の下流側に移動可能に設けられ、前記複数の転写機構によって画像が転写された被転写体を収容する移動可能な可動収容手段を有していてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、画像プリントシステムは、被転写体を供給可能な供給機構と、供給機構の下流側に並列に設けられ、被転写体上に画像を転写する複数の転写機構と、を備えている。また、供給機構と複数の転写機構との間には、供給機構の被転写体をいずれかの転写機構へ供給する切替機構が設けられている。このため、単一の供給機構によって、各転写機構へ被転写体を供給することができる。これによって、転写機構毎に供給機構が設けられている場合に比べて、効率良く画像プリントシステムを動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】図1Aは、本発明の第1の実施の形態における画像プリントシステムを示す図。
【図1B】図1Bは、切替手段の変形例を示す図。
【図2】図2は、被転写体を示す図。
【図3】図3は、インクリボンを示す図。
【図4】図4は、比較の形態における画像プリントシステムを示す図。
【図5】図5は、本発明の第1の実施の形態の変形例における画像プリントシステムを示す図。
【図6】図6は、本発明の第1の実施の形態のその他の変形例における画像プリントシステムを示す図。
【図7】図7は、本発明の第2の実施の形態における画像プリントシステムを示す図。
【図8】図8は、本発明の第3の実施の形態における画像プリントシステムを示す図。
【図9】図9は、本発明の第3の実施の形態の変形例における画像プリントシステムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の実施の形態
以下、図1A乃至図3を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。まず図1Aを参照して、本実施の形態における画像プリントシステム10全体について説明する。
【0017】
画像プリントシステム
図1Aは、例えばカメラ店などに設置され、利用者が持ち込んできた画像データをLサイズの写真として印刷する画像プリントシステム10を示す図である。この画像プリントシステム10は、被転写体12を供給可能な供給機構20と、供給機構20の下流側に並列に設けられ、被転写体12上に画像を転写する複数の転写機構と、各供給機構20と複数の転写機構との間に設けられ、供給機構20の被転写体12をいずれかの転写機構へ供給する切替機構40と、を備えている。これら転写機構、供給機構20および切替機構40は、制御機構70により制御される。また、複数の切替機構の下流側には、画像が転写された被転写体12を収容する収容機構50が設けられている。なお上記「並列に設けられ」とは、複数の転写機構の各々が同時に同等の転写作業を実施することができることを意味しており、各転写機構は必ずしも互いに平行に配置されていなくてもよい。
【0018】
転写機構は、例えば図1Aに示すように、鉛直方向に並べられた第1転写機構30A,第2転写機構30Bおよび第3転写機構30Cからなっている。このように複数の転写機構30A,30B,30Cを設けることにより、被転写体12上への画像の転写を複数ラインで並列に実施することができ、これによって、所要の枚数の写真を印刷することに要する時間を短縮することができる。
【0019】
図1Aに示す例において、各転写機構30A,30B,30Cに供給される被転写体12は、最終的に提供されるLサイズの写真よりも大きい寸法を有している。すなわち被転写体12は、Lサイズに相当する寸法を1コマとした場合、複数のコマ数を含んでいる。例えば被転写体12は、Lサイズ5枚分に相当する寸法、すなわち5つのコマ数を含んでいる。
【0020】
また画像プリントシステム10は、図1Aに示すように、各転写機構30A,30B,30Cと収容機構50との間にそれぞれ設けられ、被転写体12をコマ毎に切断する下流側切断部60をさらに備えている。この下流側切断部60によって、5つのコマ数を含む被転写体12がコマ毎に切断される。切断されてLサイズとなった被転写体13(写真)は、図1Aに示すように、収容機構50の収容手段51に収容される。収容手段51は、各転写機構30A,30B,30Cに対応するよう各転写機構30A,30B,30Cの下流側にそれぞれ設けられている。各収容手段51に収容された被転写体13は、シューター(図示せず)を介して取出口15に送られる。
【0021】
次に、上述の供給機構20、切替機構40および転写機構30A,30B,30Cについて詳細に説明する。はじめに供給機構20について説明する。
【0022】
(供給機構)
図1Aに示すように、供給機構20は、シート状の被転写シート11を供給するシート供給部21と、シート供給部21の下流側に設けられ、被転写シート11を切断して被転写体12を作製する上流側切断部22と、を有している。シート供給部21は、例えば、軸体(図示せず)に被転写シート11を巻きつけることにより構成されるロール体からなっている。軸体(図示せず)は、軸体を回転駆動する駆動機構(図示せず)に連結されていてもよい。シート状の被転写シート11は、所定時間にわたって各転写機構30A,30B,30Cに被転写体12を供給することができる程度の長さを有している。なお図1Aに示すように、被転写シート11を搬送するためのガイドロール23が適宜設けられていてもよい。
【0023】
(切替機構)
図1Aに示すように、切替機構40は、供給機構20から供給された被転写体12が送り入れられる送入部44と、第1転写機構30Aへ向けて被転写体12を送り出す第1送出部41と、第2転写機構30Bへ向けて被転写体12を送り出す第2送出部42と、第3転写機構30Cへ向けて被転写体12を送り出す第3送出部43と、を有している。また切替機構40には、送入部44に供給された被転写体12を、制御機構70からの制御に応じて送出部41,42,43のいずれかに選択的に送る切替手段45が設けられている。例えば図1Aに示すように、各転写機構30A,30B,30Cが並ぶ方向(図1Aに示す例においては鉛直方向)に沿って移動可能であるとともに、供給機構20から供給された被転写体12を送出部41,42,43のいずれかに向けて案内するガイド部46と、ガイド部46とともに移動可能な搬送ロール47と、を組み合わせることにより、切替手段45が構成される。この場合、切替手段45を送出部41,42,43のいずれかの近傍に移動させることにより、供給機構20から供給された被転写体12が送出部41,42,43のいずれかに案内される。
【0024】
なお、切替手段45の構成が図1Aに示す構成に限られることはなく、例えば図1Bに示される構成を有する切替手段45が用いられてもよい。図1Bは、切替手段45の変形例を示す図であり、図1Bにおける切替手段45以外の各構成要素は、図1Aにおける各構成要素と同一である。図1Bに示す例においては、各送出部41,42,43に対応して設けられ、供給機構20から供給された被転写体12に当接する第1位置と当接しない第2位置との間で回動可能なガイド板48と、各ガイド板48の近傍に設けられた搬送ロール49と、を組み合わせることにより、切替手段45が構成されている。この場合、各ガイド板48の第1位置は、供給機構20から供給された被転写体12に当接して被転写体12を対応する送出部41,42,43に案内するよう設定されている。第1位置と第2位置との間でガイド板48を回動させる手段が特に限られることはなく、例えば、ソレノイドにより生成される磁場を利用した手段が用いられ得る。
【0025】
また、切替手段45の構成が図1Aまたは図1Bに示す構成に限られることはなく、公知のものを適宜利用することができる。また、各送出部41,42,43および送入部44は、必ずしも構造物として現実に構成されている必要はなく、仮想的に設定された領域であってもよい。
【0026】
(被転写体)
次に図2を参照して、被転写体12の層構成について説明する。図2に示すように、被転写体12は、基材層17と、基材層17上に設けられた受像層16と、を含んでいる。このうち受像層16は、後述するインクリボンの転写層から移行してくる昇華染料を受容し、形成された画像を維持するためのものである。
【0027】
受像層16を形成する樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0028】
(転写機構)
次に、被転写体12上に画像を転写する転写機構について説明する。なお各転写機構30A,30B,30Cの構成は略同一であるので、ここでは各転写機構30A,30B,30Cのうち第1転写機構30Aの構成について説明する。
【0029】
図1Aに示すように、第1転写機構30Aは、インクリボン33を送り出す巻出部31と、インクリボン33を巻き取る巻取部32と、巻出部31と巻取部32との間に設けられ、インクリボン33を所定パターンで加熱するサーマルヘッド34と、を有している。またサーマルヘッド34の近傍には、インクリボン33および被転写体12を介してサーマルヘッド34に対向するプラテンローラー35が設けられている。被転写体12は、上述の受像層16がサーマルヘッド34側を向くよう第1転写機構30Aに供給されている。なお図1Aに示すように、被転写体12を搬送するための搬送ロール36,37が適宜設けられていてもよい。
【0030】
(インクリボン)
次に図3を参照して、インクリボン33の層構成について説明する。図3に示すように、インクリボン33は、サーマルヘッド34により加熱されて被転写体12に転写される転写層39と、転写層39を支持する支持層38と、を含んでいる。
【0031】
図3に示すように、転写層39は、イエローの染料からなるY層39a、マゼンダの染料からなるM層39b、およびシアンの染料からなるC層39cを含んでいる。また図3に示すように、転写層39が保護層39dをさらに含んでいてもよい。
【0032】
これらY層39a,M層39b,C層39cおよび保護層39dは、インクリボン33の搬送方向に沿って順に並べられている。このため後述するように、1つのインクリボン33により、被転写体12上にY層39a、M層39b、C層39cおよび保護層39dの各層を順次転写することができる。
【0033】
Y層39a、M層39bおよびC層39cの材料としては、バインダ樹脂に、昇華性染料を溶融あるいは分散させた材料が望ましい。また保護層39dの材料としては、透明で、接着性、耐光性を有する材料が望ましく、例えばアクリル系樹脂材料が用いられる。
【0034】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、はじめに、画像プリントシステム10により被転写体12に画像を転写し、これによって、画像が転写されたLサイズの被転写体13を得る印刷方法について説明する。次に、供給機構20のシート供給部21を交換する手順について説明する。
【0035】
印刷方法
(被転写体の供給方法)
はじめに、供給機構20および切替機構40を用いて各転写機構30A,30B,30Cに被転写体12を供給する方法について説明する。
【0036】
利用者からの印刷指示があると、制御機構70からの制御に基づいて、シート供給部21が、上流側切断部22に向けて被転写シート11を送り出す。上流側切断部22は、所定の間隔で被転写シート11を順次切断する。これによって、複数のコマ数、例えば5つのコマ数に相当する長さを有する被転写体12が作製される。
【0037】
供給機構20から供給された被転写体12は、切替機構40の送入部44に送り入れられる。その後、被転写体12は、制御機構70からの制御に応じて、送出部41,42,43のいずれかに送られる。例えば第2送出部42に送られる。
【0038】
第2送出部42に送られた被転写体12は、図1Aに示すように第2転写機構30Bに送られ、その後、第2転写機構30Bにおいて被転写体12に画像が転写される。転写機構における転写方法については後に詳細に説明する。
【0039】
第2転写機構30Bに被転写体12が供給された後、さらに被転写体12が供給機構20から切替機構40へ送られる。この際、制御機構70は、第2転写機構30B以外の転写機構、例えば第3転写機構30Cに被転写体12を送るよう切替機構40を制御する。これによって、図1Aに示すように被転写体12が第3転写機構30Cに送られ、その後、第3転写機構30Cにおいて被転写体12に画像が転写される。
【0040】
同様にして、その後、被転写体12が第1転写機構30Aに送られ、そして、第1転写機構30Aにおいて被転写体12に画像が転写される。このようにして、各転写機構30A,30B,30Cにおいて同時に転写作業が実施される。このように複数の転写装置を同時に稼働させることにより、画像プリントシステム10の処理能力を向上させることができる。
【0041】
なお、供給機構20および切替機構40を用いて被転写体12を各転写機構30A,30B,30Cに供給することに要する時間は、各転写機構30A,30B,30Cにおいて画像が被転写体12に転写されることに要する時間よりも十分に短くなっている。例えば、供給機構20および切替機構40を用いて被転写体12を各転写機構30A,30B,30Cのいずれかに供給する間隔は約5秒となっており、一方、各転写機構30A,30B,30Cにおいて画像が被転写体12に転写されることに要する時間は約40秒となっている。従って、画像プリントシステム10の処理能力は、供給機構20および切替機構40が被転写体12を供給する速度ではなく、各転写機構30A,30B,30Cが画像を被転写体12に転写する速度によって主に決定される。
【0042】
(転写方法)
次に転写機構を用いて画像を被転写体12に転写する方法について説明する。なお各転写機構30A,30B,30Cにおける転写方法は略同一であるので、ここでは各転写機構30A,30B,30Cのうち第1転写機構30Aを用いて画像を被転写体12に転写する方法について説明する。
【0043】
はじめに、サーマルヘッド34によりインクリボン33を支持層38側から加熱しながら押圧する。これによって、インクリボン33のY層39aを被転写体12の受像層16に当接させる。ここで、サーマルヘッド34の温度は、インクリボン33から被転写体12へのY層39aの転写の態様が昇華転写となるよう制御されている。
【0044】
次に、M層39bを被転写体12の受像層16に転写する。ここで、インクリボン33は、矢印Dで示すように一方向に搬送されており、一方、被転写体12は、搬送ロール36,37の回転方向を周期的に反転させることにより、矢印Dで示すように双方向に搬送される。例えば、被転写体12の受像層16の所定領域上にY層39aが転写されると、搬送ロール36,37の回転方向が反転されて被転写体12が切替機構40側に戻される。その後、搬送ロール36,37の回転方向が再度反転されて、被転写体12の受像層16の所定領域上にM層39bが転写される。同様に、その後、被転写体12の受像層16の所定領域上にC層39cが転写される。このようにして、被転写体12上に、所定のパターンで転写されたY層39a,M層39bおよびC層39cからなる画像が形成される。
【0045】
次に、Y層39a,M層39bおよびC層39cの場合と同様にして、Y層39a,M層39bおよびC層39cからなる画像が形成された領域上に保護層39dを転写する。この際、サーマルヘッド34の温度は、インクリボン33から被転写体12への保護層39dの転写の態様が溶融転写となるよう制御される。このようにして、被転写体12上に、保護層39dによって保護された画像が形成される。
【0046】
なお、上述のようにY層39a,M層39b,C層39cおよび保護層39dを順次形成する工程は、被転写体12のコマ毎に実施されてもよく、若しくは、複数のコマ毎に実施されてもよい。例えば、1回の転写で1コマ分のY層39aが被転写体12に転写されてもよく、若しくは、1回の転写で5コマ分のY層39aが被転写体12に転写されてもよい。
【0047】
(切断および収容方法)
各転写機構30A,30B,30Cによって画像が形成された被転写体12は、それぞれ下流側切断部60に送られる。下流側切断部60において、被転写体12がコマ毎に切断され、これによって、Lサイズの被転写体13が作製される。作製された被転写体13は、収容機構50の収容手段51に収容され、その後、シューターを通って取出口15に送られる。
【0048】
シート供給部の交換手順
次に、シート供給部21の交換手順について説明する。
【0049】
一例として、Lサイズの被転写体13に換算した場合の各転写機構30A,30B,30Cの処理能力が、いずれも平均10枚/分、最大12枚/分となっている場合を考える。処理能力の平均と最大の差は、例えば、各転写機構30A,30B,30Cにおいて発生し得る紙詰まりなどのトラブルを処理するための時間を考慮することによって生じている。なおこれらの転写速度の値は、本実施の形態の作用を具体的に説明するための例示的な値にすぎない。
【0050】
交換当初において、シート供給部21には、例えば、1800枚のLサイズの被転写体13に相当する長さの被転写シート11が収容されているとする。上述のように、この被転写シート11は、上流側切断部22によって切断されて被転写体12となり、得られた被転写体12が切替機構40を介して各転写機構30A,30B,30Cに供給される。
【0051】
各転写機構30A,30B,30Cについて個別に処理能力を見た場合、所定期間内における処理能力が平均値である10枚/分からずれていることが考えらえる。しかしながら、3台の転写機構30A,30B,30Cの合計について処理能力を見た場合、所定期間内における処理能力は平均値の合計である30枚/分にほぼなっていると考えられる。このため、本実施の形態においては、シート供給部21が約60分の間隔で交換される。
【0052】
(比較の形態)
次に、図4を参照して、本実施の形態の効果を比較の形態と比較して説明する。図4に示す比較の形態は、各転写機構に対応して各転写機構の上流側にシート供給部および上流側切断部が設けられている点が異なるのみであり、他の構成は、上述の本実施の形態と略同一である。図4に示す比較の形態において、上述の本実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0053】
比較の形態の画像プリントシステム100においては、図4に示すように、第1転写機構30Aの上流側に、第1転写機構30Aに向けてシート状の被転写シート11を供給する第1シート供給部121Aと、第1シート供給部121Aの被転写シート11を切断して被転写体12を作製する第1上流側切断部122Aと、が設けられている。同様に、第2転写機構30Bの上流側には第2シート供給部121Bおよび第2上流側切断部122Bが設けられており、第3転写機構30Cの上流側には第3シート供給部121Cおよび第3上流側切断部122Cが設けられている。
【0054】
交換当初において、各シート供給部121A,121B,121Cには、例えば、600枚のLサイズの被転写体13に相当する長さの被転写シート11が収容されているとする。この場合の各シート供給部121A,121B,121Cの交換周期について考える。
【0055】
上述のように、各転写機構30A,30B,30Cについて個別に処理能力を見た場合、所定期間内における処理能力が平均値である10枚/分からずれていることが考えらえる。例えば、第2転写機構30Bにおいて紙詰まりなどのトラブルが頻繁に生じ、これによって第2転写機構30Bの処理能力が8枚/分に低下しており、これを補うため、第1転写機構30Aが最大の処理能力である12枚/分で動作されていると仮定する。また、第3転写機構30Cは、トラブルなども含めて10枚/分で動作されていると仮定する。この場合、第1シート供給部121Aは、交換から50分後に紙切れとなる。一方、第2シート供給部121Bは、交換から75分後に紙切れとなり、また第3シート供給部121Cは、交換から60分後に紙切れとなる。
【0056】
比較の形態における交換手順として、第1に、各シート供給部121A,121B,121Cの紙切れの度に各シート供給部121A,121B,121Cが新たなものに交換される場合を考える。この場合、上述のように各シート供給部121A,121B,121Cにおける交換周期は異なっており、このため、各シート供給部121A,121B,121Cがそれぞれ異なるタイミングで交換されることになる。例えば、スタートから50分後に第1シート供給部121Aが交換され、スタートから60分後に第3シート供給部121Cが交換され、スタートから75分後に第2シート供給部121Bが交換される。このように、75分の間に3回もの交換が実施されることになる。このため、交換作業者の労力が非常に大きくなってしまう。
【0057】
第2に、交換作業者の労力を低減するため、各シート供給部121A,121B,121Cが全て紙切れとなってから交換する場合を考える。この場合、スタートから75分後に第2シート供給部121Bが紙切れとなるまでの間に、第1転写機構30Aおよび第3転写機構30Cが動作されていない期間が生じることになる。このため、画像プリントシステム10全体の処理能力が低下してしまう。
【0058】
第3に、交換作業者の労力を低減し、かつ、画像プリントシステム10全体の処理能力が低下するのを防ぐため、各シート供給部121A,121B,121Cのいずれかが紙切れとなったときに、紙切れとなっていないシート供給部の交換も実施する場合を考える。この場合、スタートから50分後に第1シート供給部121Aが紙切れとなったとき、第1シート供給部121Aだけでなく第2シート供給部121Bおよび第3シート供給部121Cも交換される。しかしながら、第2シート供給部121Bおよび第3シート供給部121Cにはまだ被転写シート11が残っており、このため、残っている被転写シート11が無駄になってしまう。
【0059】
これに対して本実施の形態によれば、上述のように、被転写体12を供給可能な供給機構20と、供給機構20と各転写機構30A,30B,30Cの間に設けられ、供給機構20の被転写体12を各転写機構30A,30B,30Cのいずれかに供給する切替機構40と、が設けられている。このため、各転写機構30A,30B,30Cが供給機構20のシート供給部21から供給される被転写体12を共通に使用することができる。これによって、シート供給部21の交換作業者の労力を過大にすることなく、また、無駄な被転写シート11を生じさせることなく、画像プリントシステム10の処理能力を向上させることができる。
【0060】
変形例
なお本実施の形態において、1つの取出口15が設けられている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図5に示すように、各転写機構30A,30B,30Cおよび各収容手段51に対応して複数の取出口15が設けられていてもよい。また、複数の取出口15はそれぞれ、利用者毎に割り当てられていてもよい。これによって、複数の利用者からの印刷指示を同時に処理することが可能となる。
【0061】
その他の変形例
また本実施の形態において、各転写機構30A,30B,30Cに対応して下流側切断部60および収容手段51が個別に設けられている例を示した。すなわち、各転写機構30A,30B,30Cによって画像が転写された被転写体12が、対応する下流側切断部60および収容手段51によってそれぞれ切断および収容される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、各転写機構30A,30B,30Cによって画像が転写された被転写体12が、1組の下流側切断部60および収容手段51によって切断および収容されてもよい。このような形態を可能とするため、例えば図6に示すように、ガイドロール61,62,63などを設けることにより、各転写機構30A,30B,30Cの出口側における搬送経路が1つにまとめられてもよい。この際、収容手段51に収容される被転写体13の積載順が所望の順序となるよう、各転写機構30A,30B,30Cから送られる被転写体12の順序が制御機構70により適宜制御される。
【0062】
第2の実施の形態
次に図7を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図7に示す第2の実施の形態は、複数の転写機構によって画像が転写された被転写体を収容する移動可能な可動収容手段が設けられている点が異なるのみであり、他の構成は、上述の第1の実施の形態と略同一である。図7に示す第2の実施の形態において、上述の第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0063】
(収容機構)
図7に示すように、収容機構50は、複数の転写機構30A,30B,30Cの下流側に移動可能に設けられ、複数の転写機構30A,30B,30Cによって画像が転写された被転写体13を収容する1つの移動可能な可動収容手段54を有している。このように収容手段を可動のものとすることにより、設置される収容手段の数を1個にすることができる。
【0064】
このような可動収容手段54を実現するための具体的な構成は特には限定されず、様々な構成が用いられ得る。例えば図7に示すように、支持体55に沿って上下方向に可動な可動部56に可動収容手段54を取り付けることにより、可動収容手段54が実現されてもよい。
【0065】
また、可動収容手段54によって収容された被転写体13が、可動収容手段54によって取出口15まで搬送されてもよい。これによって、上述のシューター(図示せず)を設けることなく被転写体13を取出口15に送ることができる。
【0066】
その他の変形例
なお上述の第1および第2の実施の形態において、供給機構20の上流側切断部22によって被転写シート11が切断され、これによって、複数のコマ数を含む被転写体12が作製される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、供給機構20の上流側切断部22によって被転写シート11を切断することにより得られる被転写体12が、最終的に利用者に提供されるLサイズの写真と同一の寸法を有していてもよい。
【0067】
第3の実施の形態
次に図8を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。図8に示す第3の実施の形態は、供給機構が、複数の被転写体が収容された枚葉供給部を有する点が異なるのみであり、他の構成は、上述の第1の実施の形態と略同一である。図8に示す第3の実施の形態において、上述の第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0068】
(供給機構)
図8に示すように、供給機構20は、複数のコマ数を含む被転写体12が多数収容された枚葉供給部24と、枚葉供給部24の被転写体12を切替機構40に向けて送る複数のガイドロール25と、を有している。このように本実施の形態においては、切断されることなく各転写機構30A,30B,30Cにそのまま供給され得る被転写体12が枚葉で供給機構20の枚葉供給部24に収容されている。このため、上述の上流側切断部22を設けることなく、被転写体12を切替機構40および各転写機構30A,30B,30Cに供給することができる。
【0069】
本実施の形態においても、上述の実施の形態の場合と同様に、枚葉供給部24を有する供給機構20は、切替機構40を介して各転写機構30A,30B,30Cに被転写体12を供給することができる。このため、各転写機構30A,30B,30Cに対応して各転写機構30A,30B,30Cの上流側に複数の枚葉供給部が設けられている場合に比べて、枚葉供給部の交換の頻度を少なくすることができる。
【0070】
変形例
なお本実施の形態において、複数のコマ数を含む被転写体12が枚葉供給部24に収容される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図9に示すように、最終的に利用者に提供されるLサイズの写真と同一の寸法を有する被転写体13が枚葉供給部24に収容されていてもよい。これによって、上述の下流側切断部60を設けることなく、画像が転写された被転写体13を得ることが可能となる。
【0071】
その他の変形例
また上述の各実施の形態において、画像プリントシステム10に3つの転写機構30A,30B,30Cが設けられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、2つの転写機構が画像プリントシステム10に設けられていてもよく、若しくは、4つ以上の転写機構が画像プリントシステム10に設けられていてもよい。
【0072】
また上述の各実施の形態において、各転写機構30A,30B,30Cと下流側切断部60との組合せにより、Lサイズに相当する寸法を有する、画像が転写された被転写体13が得られる例を示した。しかしながら、得られる被転写体の寸法がLサイズに限られることはなく、様々な寸法の被転写体が作製されてもよい。例えば、第1転写機構30Aを含むラインにおいては2Lサイズの被転写体が得られるよう、第1転写機構30Aおよび対応する下流側切断部60が制御機構70によって制御されてもよい。これによって、利用者の要望に沿った様々なサイズの写真を迅速に提供することができる。
【0073】
また上述の各実施の形態において、昇華型転写方式によって被転写体12に画像が転写される例を示した。しかしながら、各転写機構30A,30B,30Cにおいて用いられる転写方式が昇華型転写方式に限られることはなく、用途に応じてその他の転写方式が用いられてもよい。例えば、各転写機構30A,30B,30Cは、溶融型転写方式によって被転写体12に画像を転写してもよい。
【0074】
また上述の各実施の形態において、各転写機構30A,30B,30Cに被転写体12を供給する供給機構20のシート供給部21または枚葉供給部24が紙切れとなる度にシート供給部21または枚葉供給部24が交換される例を示した。この場合、シート供給部21または枚葉供給部24の交換のタイミングに合わせて、各転写機構30A,30B,30Cのインクリボン33を同時に交換してもよい。これによって、各転写機構30A,30B,30Cのインクリボン33がシート供給部21または枚葉供給部24とは異なるタイミングで交換される場合に比べて、交換作業者の労力を低減することができる。この場合、シート供給部21または枚葉供給部24の被転写体が消費されるのに要する時間よりもインクリボン33が消費されるのに要する時間の方が長くなるよう、インクリボン33の長さが設定されている。
【0075】
また上述の各実施の形態において、収容手段51に収容された被転写体13がシューター(図示せず)を介して取出口15に送られる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、利用者が取出口15を介して直接に収容手段51の被転写体13を取得できるよう、収容手段51の配置が設定されていてもよい。これによって、シューターの設置を省くことができる。
【0076】
また上述の各実施の形態において、各転写機構30A,30B,30Cによって被転写体12の片面に画像が転写される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、被転写体12の両面に画像が転写されるよう各転写機構30A,30B,30Cが構成されていてもよい。この場合、被転写体12の基材層17の両面に受像層が設けられていてもよい。
【0077】
また上述の各実施の形態において、画像プリントシステム10により、利用者が持ち込んできた画像データがLサイズの写真として印刷される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、画像プリントシステムにより、フォトブックなど冊子状の印刷物が作製されてもよい。この場合、収容機構50の下流側に、画像が転写された被転写体13を製本するための製本機構が適宜設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 画像プリントシステム
11 被転写シート
12 被転写体
13 Lサイズの被転写体
15 取出口
16 受像層
17 基材層
20 供給機構
21 シート供給部
22 上流側切断部
23 ガイドロール
24 枚葉供給部
25 ガイドロール
30A,30B,30C 転写機構
31 巻出部
32 巻取部
33 インクリボン
34 サーマルヘッド
35 プラテンローラー
36,37 搬送ロール
38 支持層
39 転写層
40 切替機構
41,42,43 送出部
44 送入部
45 切替手段
46 ガイド部
47 搬送ロール
48 ガイド板
49 搬送ロール
50 収容機構
51 収容手段
54 可動収容手段
55 支持体
56 可動部
60 下流側切断部
61,62,63 ガイドロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被転写体を供給可能な供給機構と、
前記供給機構の下流側に並列に設けられ、被転写体上に画像を転写する複数の転写機構と、
前記供給機構と前記複数の転写機構との間に設けられ、前記供給機構の被転写体をいずれかの転写機構へ供給する切替機構と、を備えたことを特徴とする画像プリントシステム。
【請求項2】
前記供給機構は、シート状の被転写シートを供給するシート供給部と、前記シート供給部の下流側に設けられ、被転写シートを切断して被転写体を作製する上流側切断部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の画像プリントシステム。
【請求項3】
前記供給機構は、複数の被転写体が収容された枚葉供給部を有することを特徴とする請求項1に記載の画像プリントシステム。
【請求項4】
被転写体は、複数のコマ数を含み、
前記転写機構の下流側に、被転写体をコマ毎に切断する下流側切断部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像プリントシステム。
【請求項5】
前記複数の転写機構の下流側に設けられ、画像が転写された被転写体を収容する収容機構をさらに備え、
前記収容機構は、各転写機構に対応して各転写機構の下流側に設けられ、各転写機構によって画像が転写された被転写体をそれぞれ収容する複数の収容手段を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像プリントシステム。
【請求項6】
前記複数の転写機構の下流側に設けられ、画像が転写された被転写体を収容する収容機構をさらに備え、
前記収容機構は、前記複数の転写機構の下流側に移動可能に設けられ、前記複数の転写機構によって画像が転写された被転写体を収容する移動可能な可動収容手段を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像プリントシステム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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