説明

画像入力装置およびプログラム

【課題】ファイルのオリジナル性を重視したいときに、不所望に付加情報領域が確保されるのを防止する。
【解決手段】デジタルカメラ等から画像ファイルが入力されると、入力した画像ファイルの画像データの前に所定の大きさの付加情報領域を確保し、新たな画像ファイルとして保存する。これにより付加情報追加の便宜が図られる。ただし、入力された画像ファイルに改竄を禁止する旨の情報が埋め込まれている場合は、付加情報領域を確保する処理を行わず、入力画像ファイルをそのまま保存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ等から画像を入力する装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、映像や音響を含むメディアデータと、メディアデータよりも前に位置するメタデータとを含むメディアファイルを生成するにあたり、メディアデータとメタデータとの間にフリーデータを挿入することが記載されている。ファイル変換の際、変換前のメタデータ部とフリーデータ部とを新しいメタデータで上書きすることで、メディアデータの移動を伴わずにファイル変換が行える。
【0003】
【特許文献1】特開2003−173625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、メディアデータに何ら改変を施さなくても、ファイルにフリーデータを挿入するだけで挿入後のファイルは元のファイルと相違し、ファイルのオリジナル性が重視される場合に問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る画像入力装置は、画像データを含む画像ファイルを外部から入力する入力手段と、入力した画像ファイルの前記画像データの前に所定の大きさの付加情報領域を確保して新たな画像ファイルを生成するファイル改変手段と、入力された画像ファイルの改竄が禁止されている場合は、前記ファイル改変手段による処理を経ることなく当該入力画像ファイルをそのまま保存し、改竄が許可されている場合は、ファイル改変手段によって新たに生成された画像ファイルを保存する制御手段とを具備することを特徴とする。
入力した画像ファイルに既に付加情報領域が存在するときは、その付加情報領域を所定の大きさに拡張するようにしてもよい。
入力された画像ファイルに改竄を禁止する旨の情報が埋め込まれている場合は、ファイル改変手段による処理を経ることなく当該入力画像ファイルをそのまま保存し、改竄を禁止する旨の情報が埋め込まれていない場合は、ファイル改変手段によって新たに生成された画像ファイルを保存するようにしてもよい。
本発明に係る画像入力プログラムは、上述した画像入力装置の制御をコンピュータに実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ファイルのオリジナル性を重視したいときに、不所望に付加情報領域が確保されるのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1〜図8により本発明の一実施の形態を説明する。
図1はコンピュータとデジタルカメラとから成るシステムの構成図である。コンピュータ100は、CPU11、RAM12、ディスクインターフェース13、ディスプレイコントローラ14、CPUバス15、シリアルバス16、シリアルバスコントローラ17などを有する本体部と、シリアルバス16を介して接続されるキーボード21やマウス22等の入力装置と、ディスクインターフェース13を介して接続されるディスク記憶装置(例えば、ハードディスク)31と、表示装置としてのディスプレイ32とから構成される。
【0008】
デジタルカメラ(以下、カメラ)200は、シリアルバス16を介してコンピュータ100に接続される。コンピュータ100のCPU11は、ディスク記憶装置31に保存されているカメラ制御用ソフトウェアに従い、カメラ200を制御する。具体的には、ユーザがキーボード21やマウス22で入力した指示に基づき、カメラ200に撮影指示を送信したり、カメラ200から送られてくる画像ファイルに必要に応じて処理を施し、記憶装置31に記憶したりする。
【0009】
図2はカメラ200の制御系を示すブロック図である。カメラCPU51には、撮像部52、画像記録部53、表示部54、操作部55、姿勢センサ56などが接続される。撮像部52は、撮影レンズ(不図示)の透過光束を受光して光電変換する撮像素子や、撮像素子の光電変換出力に種々の処理を施して画像データを生成する画像処理回路などを含む。生成された画像データは、コンピュータ100で扱うことが可能な画像ファイルとして、画像記録部53を介して記録媒体57に記録される。
【0010】
表示部54は、画像やメニュー画面等が表示可能な液晶モニタ等の表示装置と、その駆動回路から構成される。操作部55は、レリーズボタンを始めとする種々の操作部材およびそれらの操作に連動するスイッチ類を含む。
【0011】
図3はカメラ200にて生成される画像ファイルの構造を示している。画像ファイルは、画像データと改竄検出用データとから構成され、画像データは、画像そのものを構成する画像本体データと、画像に関する付加情報とから成る。
【0012】
付加情報は、所定のフォーマットで記述された文字情報から成り、一般にメタデータと呼ばれるデータがこれに含まれる。画像ファイルにおける付加情報としては、例えば撮影者の名前、撮影場所、著作権情報等が挙げられる。付加情報を記述する領域(以下、付加情報領域)は、ファイルのヘッダ領域であり、その後に画像データのバイナリ領域が位置する。撮影時、カメラCPU51が幾つかの情報を付加情報として付加情報領域に書き込む。このときの付加情報領域の大きさは、書き込まれる情報量に依存する。また、カメラ200から外部装置(例えば、コンピュータ100)に画像ファイルを転送した後、所定のソフトウェアを用いて付加情報領域に付加情報を追加することが可能である。
【0013】
付加情報領域はファイルの先頭にあるため、例えばコンピュータ100にて画像ファイルに付加情報を追加すると、付加情報領域に続く画像データのバイナリ領域を後にシフトする、つまりファイルを書き直す必要がある。このファイルの書き直しは、大きいファイルほど時間がかかり、特に高画質化によって大型化してきている画像ファイルの書き直しは、相当な時間を要する。
【0014】
本実施形態では、画像ファイルに後から付加情報を追記する処理の高速化を図るため、カメラ内の画像記録媒体57から画像ファイルを取り込んだ際に、画像ファイル内に予め決められた大きさの付加情報領域を確保するようにした。
【0015】
図4を用いて具体的に説明すると、画像転送の指示に伴い、コンピュータ100に組み込まれたカメラ制御用ソフトウェアが、まずカメラの記録媒体57から対象画像ファイルの画像データおよび付加情報をRAM12に読み込む。付加情報領域が所定の大きさに満たない場合は、RAM12上の付加情報の後に例えば「0」を羅列して所定の大きさの付加情報領域とする。しかる後、付加情報の後に画像データを配置して画像ファイルを作成し、ディスク記憶装置31に保存する。
【0016】
一般に付加情報は、後からデータを追記したとしても4キロバイトを超えることは少ないと考えられるので、ここでは、元から記述されている(カメラが記述する)データを含めて4キロバイト分の付加情報領域を確保するものとする。カメラが記述する情報量が大きい場合は、それに応じて確保する領域を増やすことが望ましい。また、確保する付加情報領域の大きさをユーザが設定できるようにしてもよい。
【0017】
このように、予め決められた大きさの付加情報領域を画像ファイルに確保しておけば、後から付加情報領域にデータを追記するときは、例えば図5に示すように、「0」の羅列を追記データ(データ2,3)に書き換えるだけで済み、画像データのバイナリ領域を後方にシフトする必要はない。したがって、データ追記処理をごく短時間で行うことができる。
【0018】
次に、画像ファイルの改竄検出について説明する。
画像データを構成する改竄検出用データ(図3)は、画像のオリジナル性を証明するためのデータであり、これは画像データのハッシュ値にデジタル署名を付加したデータとされる。ハッシュ値は、公知のように入力データからハッシュ関数による処理を施して得られる要約値である。ハッシュ関数のアルゴリズムは複数知られているが、カメラ200はそのいずれかを有し、上記画像データを入力データとしてハッシュ値を生成することができる。
【0019】
同一のハッシュ値を持つ2つの異なる入力データを作成することは計算量的に困難であるため、実用上はハッシュ値が同一であれば入力データも同一と考えてよい。一方、入力データの一部でも変更されるとハッシュ値は異なる値となるので、ハッシュ値の比較によって画像データ改竄の有無を検知できる。すなわち、検証したい画像ファイルから得たハッシュ値と、上記付加されたデジタル署名付きのハッシュ値とを比較し、両者が一致すれば改竄なし(オリジナル性あり)、一致しなければ、画像本体データおよび付加情報のいずれか、または双方が改竄されたと判断できる。
【0020】
ここで問題となるのは、上述したように画像ファイルに所定の大きさの付加情報領域を確保する処理は、画像データの改竄に当たるという点である。付加情報領域を確保する処理を行った後の画像データのハッシュ値は、処理前の、つまり改竄検出用データとしてファイルに記録されているハッシュ値とは異なるから、その画像ファイルはオリジナル性を証明できず、例えば証拠写真のようなオリジナル性が要求される用途で用いることはできなくなる。
【0021】
このような不都合を防止するため、本実施形態では、カメラ200に画像ファイルの改竄禁止モードを持たせた。このモードは、「画像真正性検証機能」として提供され、ユーザはカメラ200のメニュー設定においてこの機能を設定/解除できる。図6はその機能設定画面の一例を示し、この機能を有効にするには「画像真正性検証機能」の項目をONとし、無効にするにはOFFとする。この設定は、ユーザが変更しない限りカメラの電源をオフしても保持される。あるいは、カメラの電源ONのたびにONかOFFのいずれかにリセットされるようにしてもよい。
【0022】
図7はカメラ200の撮影時の動作手順を示すフローチャートである。
操作部55を構成するレリーズボタンが操作されると、カメラCPU51によってこのプログラムが起動され、まずステップS1で撮像を行い、画像本体データを得る。
【0023】
ステップS2では、「画像真正性検証機能」のON・OFFを判定し、ONであれば、ステップS3で画像本体データと付加情報とを組み合わせて画像データを作成するが、ここでは画像データの改竄を禁止すべく、付加情報に含まれる「画像真正性検証」の項目をONとする。一方、ステップS2で画像真正性検証機能がOFFと判定された場合は、ステップS4で画像データを作成するが、ここでは画像データの改竄を許可すべく「画像真正性検証」の項目をOFFとする。
【0024】
ステップS5では、ハッシュ関数のアルゴリズムを用い、ステップS3またはS4で作成した画像データのハッシュ値を生成する。ステップS6では、生成したハッシュ値にデジタル署名を付加し、そのデジタル署名付きハッシュ値(上記改竄検出用データに相当)を先の画像データと組み合わせて画像ファイルを作成する。なお、デジタル署名は、ユーザが予め入力した署名情報に基づいて自動的に付加されるようになっている。ステップS7では、作成した画像ファイルを記録媒体57に記録し、処理を終了する。
【0025】
上述したように、カメラ200で生成・記録された画像ファイルをコンピュータ100に転送するには、コンピュータ100に組み込まれたカメラ制御用ソフトウェアを用いる。図8にその制御手順例を示す。
【0026】
図8において、まずステップS51でカメラ200から画像ファイルを読み込み、ステップS52で付加情報を解析する。ステップS53では、付加情報の「画像真正性検証機能」の項目がONか否かを判定し、ONであれば、ステップS55に飛んで当該画像ファイルをそのまま記憶装置31に保存する。すなわち、画像ファイルに改竄禁止を示す情報が埋め込まれている場合は、画像ファイル内に付加情報領域を確保する処理を禁止し、画像ファイルをオリジナルのまま保存する。したがって、後に当該画像ファイルのオリジナル性を証明でき、オリジナル性が要求される用途で用いることができる。
【0027】
一方、「画像真正性検証機能」の項目がOFFであれば、付加情報追加の便宜を図るために、ステップS54で画像ファイル内に予め決められた大きさの付加情報領域を確保する処理を行う。その処理内容は上述したとおりである。次いでステップS55に進み、処理後の画像ファイルを記憶装置31に保存する。
【0028】
ステップS56では、転送すべき画像ファイルがまだあるか否かを判定し、あればステップS51に戻り、なければ処理を終了させる。
【0029】
なおコンピュータ100は、パーソナルコンピュータに限定されず、画像ファイルを入力可能な装置であれば何でもよい。また、カメラ以外の装置から画像ファイルを入力する場合も本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】コンピュータとデジタルカメラとから成るシステムの構成図。
【図2】カメラの制御ブロック図。
【図3】画像ファイルの構成を説明する図。
【図4】画像ファイルに付加情報領域を確保する処理を説明する図。
【図5】確保された付加情報領域に付加情報を追記した状態を示す図。
【図6】画像真正性検証機能の設定画面の一例を示す図。
【図7】デジタルカメラにて実行される撮影時の制御手順を示すフローチャート。
【図8】コンピュータにて実行される画像入力時の制御手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0031】
11 CPU
31 ディスク記憶装置
32 ディスプレイ
51 カメラCPU
52 撮像部
53 画像記録部
57 画像記録媒体
100 コンピュータ
200 デジタルカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを含む画像ファイルを外部から入力する入力手段と、
入力した画像ファイルの前記画像データの前に所定の大きさの付加情報領域を確保して新たな画像ファイルを生成するファイル改変手段と、
前記入力された画像ファイルの改竄が禁止されている場合は、前記ファイル改変手段による処理を経ることなく当該入力画像ファイルをそのまま保存し、前記改竄が許可されている場合は、前記ファイル改変手段によって新たに生成された画像ファイルを保存する制御手段とを具備することを特徴とする画像入力装置。
【請求項2】
前記ファイル改変手段は、前記入力した画像ファイルに既に付加情報領域が存在するときは、その付加情報領域を所定の大きさに拡張することを特徴とする請求項1に記載の画像入力装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記入力された画像ファイルに改竄を禁止する旨の情報が埋め込まれている場合は、前記ファイル改変手段による処理を経ることなく当該入力画像ファイルをそのまま保存し、前記改竄を禁止する旨の情報が埋め込まれていない場合は、前記ファイル改変手段によって新たに生成された画像ファイルを保存することを特徴とする請求項1または2に記載の画像入力装置。
【請求項4】
コンピュータに、
画像データを含む画像ファイルを外部から入力する入力手順と、
入力した画像ファイルの前記画像データの前に所定の大きさの付加情報領域を確保して新たな画像ファイルを生成するファイル改変手順と、
前記入力された画像ファイルの改竄が禁止されている場合は、前記ファイル改変手順を経ることなく当該入力画像ファイルをそのまま保存し、前記改竄が許可されている場合は、前記ファイル改変手順によって新たに生成された画像ファイルを保存する制御手順とを実行させるための画像入力プログラム。
【請求項5】
前記ファイル改変手順では、前記入力した画像ファイルに既に付加情報領域が存在するときは、その付加情報領域を所定の大きさに拡張することを特徴とする請求項4に記載の画像入力プログラム。
【請求項6】
前記制御手順では、前記入力された画像ファイルに改竄を禁止する旨の情報が埋め込まれている場合は、前記ファイル改変手順による処理を経ることなく当該入力画像ファイルをそのまま保存し、前記改竄を禁止する旨の情報が埋め込まれていない場合は、前記ファイル改変手順によって新たに生成された画像ファイルを保存することを特徴とする請求項4または5に記載の画像入力プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−38693(P2009−38693A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202561(P2007−202561)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】