説明

画像処理システム、画像処理装置、画像形成装置およびプログラム

【課題】 利用者が所望の画像形成装置から画像処理装置上の印刷ジョブを呼び出し該画像形成装置に印刷実行させることができる画像処理システムを提供すること。
【解決手段】 本画像処理システム100は、印刷実行命令に応答して、該印刷実行命令にかかる印刷ジョブの中間データを生成する仮想プリンタドライバ手段122と、中間データに含まれる出力先候補を決定するための情報に応じて、1以上の画像形成装置の中から前記印刷ジョブに対する1以上の出力先候補を決定する出力先決定手段128と、1以上の出力先候補である画像形成装置各々に対し、印刷ジョブの印刷待ち状態を通知する状態通知手段132と、1以上の出力先候補いずれかから受信した前記印刷ジョブにかかる印刷処理開始の要求に応答して、印刷処理開始の要求元である出力先候補の画像形成装置へ中間データを振り分ける振り分け手段126とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成処理に関し、より詳細には、利用者が所望の画像形成装置から外部の画像処理装置上の印刷ジョブを呼び出し該画像形成装置に印刷実行させることができる画像処理システム、画像処理装置、画像形成装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特定の画像形成装置に対して印刷を実行させるのではなく、利用者が複数あるうちの空いている画像形成装置の操作パネル上で指示をして所望の印刷物を取得する、いわゆるロケーション・フリー印刷への注目が高まっている。上記ロケーション・フリー印刷を実現するために、印刷データを蓄積する外部サーバを設けて、画像形成装置から外部サーバへアクセスし、所望の印刷データを取得できるように構成する手法が知られている。
【0003】
また、ユーザやドキュメントの種類などに応じて利用可能な画像形成装置を制限したいという要望がある。上記利用可能な画像形成装置を制限する技術に関して、特開2010−157208公報(特許文献1)は、ユーザ、端末やドキュメントの内容に応じて印刷データの出力先を振り分けることを目的としたシステムを開示する。上記特許文献1に開示されるシステムでは、印刷時において印刷データおよびユーザ側の固有情報(IPアドレス、端末名、ユーザ名などを)を抽出し、それらの固有情報と出力先候補とを対応付ける対応付け情報を管理し、上記固有情報と対応付け情報から印刷データの適切な出力先を決定し、出力させる構成を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術のロケーション・フリー印刷のシステムでは、上述したように、印刷データを保持する外部サーバを別途構築する必要があり、サーバ管理コストを増大させてしまう点で充分なものではなかった。また、ユーザやドキュメントの種類などに応じて利用可能な画像形成装置を制限したいという要望に対しては、上記従来のロケーション・フリー印刷システムでは、その要望に応えることは困難であった。上記外部サーバで利用可能な画像形成装置の制限を行うためには、利用可能な画像形成装置を判断するための情報を外部サーバ側へ送信したり、上記外部サーバ側で利用可能な画像形成装置を判断したりするためのメカニズムを構築する必要がある。したがって、開発コストが増大する。
【0005】
また、上述した特許文献1に開示される従来技術によれば、印刷データや固有情報に応じて出力先を制限することができる。しかしながら、特許文献1の従来技術は、利用者が所望の画像形成装置を操作し、外部の端末など画像処理装置上の印刷ジョブを呼び出して該画像形成装置に印刷実行させる、ロケーション・フリー印刷を実現するものではなかった。
【0006】
本発明は、上記従来技術における不充分な点に鑑みてなされたものであり、本発明は、利用者が、印刷ジョブの内容により制限される画像形成装置の複数候補の中から、所望の画像形成装置を使用して、画像処理装置上の印刷ジョブを呼び出して該画像形成装置に印刷出力させることが可能な画像処理システム、画像処理装置、画像形成装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、下記特徴を有する画像形成システムを提供する。本画像形成システムは、印刷実行命令に応答して、該印刷実行命令にかかる印刷ジョブの中間データを生成する仮想プリンタドライバ手段を備える。本画像形成システムは、中間データに含まれる出力先候補を決定するための情報に応じて、1以上の画像形成装置の中から印刷ジョブに対する1以上の出力先候補を決定する出力先決定手段と、1以上の出力先候補である画像形成装置各々に対し、印刷ジョブの印刷待ち状態を通知する状態通知手段とを備える。本画像形成システムは、さらに、1以上の出力先候補いずれかから受信した印刷ジョブにかかる印刷処理開始の要求に応答して、印刷処理開始の要求元である出力先候補の画像形成装置へ中間データを振り分ける振り分け手段とを備える。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、利用者が画像処理装置上で印刷指示を行うだけで、印刷ジョブの内容に応じて制限された出力先候補の画像形成装置が決定され、該出力先候補の画像形成装置からの印刷実行開始が可能な状態となる。そして、利用者は、印刷実行の準備が完了した後は、印刷ジョブの内容に応じて選ばれた複数の出力先候補の中から、所望の出力先を選んで、その画像形成装置から印刷開始の指示を行い、所望の印刷物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態によるプリント・システムの概略図。
【図2】第1の実施形態のプリント・システムにおいて実現される振り分け印刷機能に関連する機能ブロック図。
【図3】第1の実施形態における対応付け情報格納部が格納する対応付け情報のデータ構造を示す図。
【図4】第1の実施形態による画像形成装置の操作パネル上に表示される、印刷待ち状態にある印刷ジョブの印刷処理開始の指示を受け付ける印刷待ち画面を例示する図。
【図5】第1の実施形態による端末装置における仮想プリンタドライバが実行する処理を示すフローチャート。
【図6】第1の実施形態による端末装置における発送処理部が実行する処理を示すフローチャート。
【図7】第1の実施形態において画像形成装置が実行する処理を示すフローチャート(1/2)。
【図8】第1の実施形態において画像形成装置が実行する処理を示すフローチャート(2/2)。
【図9】第1の実施形態による印刷振り分け処理における各機能部の連携を説明するシーケンス図。
【図10】第1の実施形態の(A)端末装置および(B)画像形成装置のハードウェア構成を示す図。
【図11】第2の実施形態による端末装置における仮想プリンタドライバが実行する処理を示すフローチャート。
【図12】第2の実施形態による端末装置における発送処理部が実行する処理を示すフローチャート。
【図13】第2の実施形態において画像形成装置が実行する処理を示すフローチャート。
【図14】第2の実施形態による印刷振り分け処理における各機能部の連携を説明するシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明の実施形態は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。なお、以下に説明する実施形態では、画像処理システムの一例に、画像処理装置としてパーソナル・コンピュータと、画像形成装置としてレーザプリンタおよび複合機とを備えるプリント・システムを用いて説明する。
【0011】
図1は、第1の実施形態のプリント・システムを示す概略図である。図1に示すプリント・システム100は、それぞれネットワーク102に接続される、パーソナル・コンピュータ110a,110bと、複合機150aと、レーザプリンタ150b,150cとを含む。上記装置110a,110b,150a,150b,150cは、ネットワーク102を介して相互接続される。ネットワーク102は、特に限定されるものではないが、イーサネット(登録商標)やTCP/IP(Transmission Control Protocol / Internet Protocol)などのトランザクション・プロトコルによるLAN(Local Area Network)、VPN(Virtual Private Network)や専用線を使用して接続されるWAN(Wide Area Network)などとして構成することができる。また、ネットワーク102は、好適には、WSD(Web Services on Devices)といった、機器とコンピュータとの接続を支援するプロトコルに対応したものとすることができる。
【0012】
パーソナル・コンピュータ110a,110bは、それぞれ、印刷ジョブの内容に応じて出力可能とする装置を制限しつつ、該装置からの印刷ジョブの呼び出しに応答して印刷データを発送する、振り分け印刷機能を備える装置である。パーソナル・コンピュータ110a,110bは、以下、端末装置110と参照される。端末装置110は、図1には、パーソナル・コンピュータを例示するが、特にこれに限定されるものではない。端末装置110としては、ワークステーションやサーバなどの他の情報処理装置、スマートフォンやPDA(Personal Digital Assistance)などの携帯情報端末としてもよい。また、端末装置110の数は、図1には、ネットワーク102上に2つ備える場合を例示するが、特に限定されるものではなく、1または複数とすることができる。
【0013】
複合機150aおよびレーザプリンタ150b,150cは、該装置のオペレータからの指示に応答して、上記端末装置110で準備され待ち状態とされている印刷ジョブを呼び出し、印刷出力する、ロケーション・フリー印刷に対応した装置である。複合機150aおよびレーザプリンタ150b,150cは、以下、総称して画像形成装置150と参照される。画像形成装置150は、図1には、複合機およびレーザプリンタを例示するが、特にこれに限定されるものではない。画像形成装置150は、インクジェット・プリンタなどの他のプリンタ装置や、プリント機能を備えるファクシミリ装置など種々の画像機器として構成されてもよい。また、画像形成装置150の数は、図1には、ネットワーク102上に3つ備える場合を例示するが、特に限定されるものではなく、1または複数とすることができる。
【0014】
図1に示す例では、画像形成装置150a〜150cは、それぞれ異なるロケーション190a〜190cに配置されている。本実施形態によるプリント・システム100では、利用者は、種々のロケーション190a〜190cに配置された画像形成装置のうち、印刷ジョブの内容に応じて出力可能とされるものの中から、都合のよいものを用いて操作して、所望の印刷物を出力させることができる。以下、図2〜図9を参照しながら、本実施形態のプリント・システム100による振り分け印刷機能について説明する。
【0015】
図2は、第1の実施形態のプリント・システムにおいて実現される、振り分け印刷機能に関連する機能ブロックを示す図である。図2に示す機能ブロックは、端末装置110上に実現される機能ブロックと、画像形成装置150上に実現される機能ブロックとを含み構成される。
【0016】
端末装置110は、アプリケーション112と、プリント振り分け部120と、プリントキュー144とを含み構成される。アプリケーション112は、文書作成、表計算、プレゼンテーション、ドロー、ペイント、フォトレタッチなどの種々のアプリケーションであり、印刷実行が可能な如何なるアプリケーションを用いることができる。プリントキュー144は、当該端末装置110に予め出力先候補として登録された1以上の画像形成装置150に対応して備えられる。図2に示す例では、端末装置110は、画像形成装置150a〜150cに対応して、プリントキュー144a〜144cを備える。
【0017】
プリント振り分け部120は、アプリケーション112からの印刷ジョブを処理し、該印刷ジョブの内容に応じて制限される、出力可能な装置からの印刷処理開始要求を待ち受ける。以下、出力可能とされる装置を出力先候補の装置(または画像形成装置)という。そして、プリント振り分け部120は、上記出力先候補の装置からの印刷処理開始要求を受けると、要求元装置に対し、印刷データを発送して印刷出力させる。
【0018】
上記プリント振り分け部120は、より詳細には、仮想プリンタドライバ122と、中間データ格納部124と、振り分け部126と、出力先決定部128と、対応付け情報格納部130と、状態通知部132と、印刷要求受信部134とを含む。また、振り分け部126、出力先決定部128、対応付け情報格納部130、状態通知部132および印刷要求受信部134は、発送処理部142を構成する。発送処理部142は、印刷ジョブ毎のインスタンスとして起動されて、印刷ジョブ毎に、後述する出力先候補の決定、印刷待ち状態通知、印刷処理開始要求元の画像形成装置への中間データの振り分け処理を行う。
【0019】
アプリケーション112において、利用者が、仮想プリンタドライバ122を指定して適宜印刷設定を行った上、ドキュメントなどの印刷実行の指示を行うと、アプリケーション112から仮想プリンタドライバ122に対し印刷実行命令がなされる。仮想プリンタドライバ122は、アプリケーション112から、印刷実行命令とともに上記ドキュメントに従い生成されたジョブデータを受け取り、中間データを生成し、中間データ格納部124に一旦保存する。仮想プリンタドライバ122は、中間データの保存が完了すると、振り分け部126に対し、印刷要求を行い、以降の処理を引き継ぐ。
【0020】
仮想プリンタドライバ122は、より具体的には、上記ジョブデータからページ単位の中間画像データを生成し、中間画像136として中間データ格納部124に保存する。中間画像136のデータ形式としては、特に限定されるものではないが、EMF(Enhanced Meta File)、ビットマップ、PDF(Portable Document Format)、XPS(EXL Paper Specification)などを挙げることができる。特定の実施形態であるWindows(登録商標)環境であれば、中間画像136は、スプーラが生成するEMFファイルを、プリントプロセッサがページ単位などの所定のユニット単位毎に分割して中間データ格納部124にコピーすることにより生成することができる。
【0021】
仮想プリンタドライバ122は、また、ファイル名、頁数、印刷設定などを印刷情報138として中間データ格納部124に保存する。上記印刷設定としては、部数、集約条件、両面または片面の指定、ソート指定、カラーモード指定、縮小拡大率などDEVMODE構造体で管理されるような種々の印刷設定項目を挙げることができる。仮想プリンタドライバ122は、さらに、端末装置110を使用しているユーザを識別するユーザ固有情報(ユーザ名など)、端末装置110を識別する端末固有情報(ホスト名、IPアドレス、MACアドレス、UUID、シリアル番号など)などをシステム情報140として中間データ格納部124に保存する。
【0022】
振り分け部126は、出力先決定部128、状態通知部132および印刷要求受信部134と連携することにより、印刷ジョブの内容に応じて制限された出力先候補の装置からの印刷処理開始要求を待ち受けて、該要求に応答して印刷データを発送する。振り分け部126は、上記仮想プリンタドライバ122からの印刷要求に応答して、出力先決定部128に対し出力先候補の提供を要求し、出力先候補が含まれる出力先候補リストを取得する。
【0023】
出力先決定部128は、中間データ格納部124に格納される中間データ136,138,140と、対応付け情報格納部130に格納される対応付け情報と照合して、出力先候補を決定し、振り分け部126へ出力先候補リストを提供する。対応付け情報は、上記印刷ジョブの内容から出力先候補を決定するために予め登録されたものであり、図3に例示されるようなデータ構造を有する。
【0024】
図3は、第1の実施形態における対応付け情報格納部が格納する、対応付け情報のデータ構造を例示する図である。図3に示す対応付け情報は、[Mode]で示されるモード・セクションを含み、このモード・セクションには、出力先候補を決定するための情報としていずれの項目を使用するかの指定が含まれている。図3の例示では、モード・セクションには、「UserName=1」が記述されており、該記述は、出力先決定部128が、[UserName]で示されるユーザ名セクションを参照して、システム情報内のユーザ名を用い、出力先候補を決定することを表している。ユーザ名セクション内にシステム情報のユーザ名と一致するものがあれば、該ユーザ名に対応付けられているプリンタが出力先候補として決定される。例えば、図3に示す例では、システム情報内のユーザ名が「Taro」であれば、「PrinterA」、「PrinterB」、「PrinterC」が出力先候補として決定される。
【0025】
図3の例示とは異なるが、モード・セクションに「HostName=1」が記述される場合は、出力先決定部128は、[HostName]で示されるホスト名セクションを参照して、端末装置110のホスト名を用いて出力先候補を決定する。モード・セクションに「IPAddress=1」が記述される場合は、出力先決定部128は、[IPAddress]で示されるIPアドレス・セクションを参照して、端末装置110のIPアドレスを用いて出力先候補を決定する。
【0026】
また、出力先決定部128は、モード・セクションに「Keyword=1」が記述される場合、[Keyword]で示されるキーワード・セクションを参照して、記述されたキーワードを用いて出力先候補を決定することができる。このとき、出力先決定部128は、中間データ格納部124内の中間画像136を解析し、キーワード・セクション内に記述されたキーワードと一致するもの抽出された場合は、該キーワードに対応付けられているプリンタを出力先候補として決定する。モード・セクションに「ColorMode=1」が記述される場合は、出力先決定部128は、[ColorMode]で示されるカラーモード・セクションを参照して、印刷情報138のカラーモード指定を用いて出力先候補を決定することができる。モード・セクションに「Copies=1」が記述される場合は、出力先決定部128は、[Copies]で示されるコピー・セクションを参照して、印刷情報138の部数指定を用いて出力先候補を決定することができる。
【0027】
なお、図3では、端末固有情報として、ホスト名およびIPアドレスを例に説明したが、端末装置110のUUID、シリアル番号など他の端末識別情報、MACアドレスなど他のアドレス体系のアドレス情報を用いてもよい。また、印刷情報として、コピーモード指定および部数指定を例に説明したが、集約条件、ソート指定など他の印刷設定項目を用いてもよい。また、図3では、キーワードを用いているが、他の実施形態では、中間画像を解析して抽出できる如何なる情報でもよい。
【0028】
ここで、再び図2を参照すると、振り分け部126は、状態通知部132に対し、取得した出力先候補リストとともに状態通知を依頼して、各出力先候補の画像形成装置への状態通知を行わせる。状態通知部132は、振り分け部126からの状態通知の依頼を受けて、渡された出力先候補リスト中の出力先候補の画像形成装置150すべてに対し、状態通知を行う。
【0029】
通知される印刷ジョブの状態としては、「印刷待ち状態」および「印刷完了状態」がある。「印刷待ち状態」とは、当該印刷ジョブについて中間データの準備が完了し、任意の出力先候補の画像形成装置から印刷処理を実行させられるようになった状態をいう。一方、「印刷完了状態」とは、出力先候補いずれかの画像形成装置で印刷処理が実行されて、印刷ジョブが完了した状態をいう。なお、状態通知部132は、状態通知を行うため、予め登録された画像形成装置150のIPアドレスなどの通信情報を保持しているものとする。
【0030】
印刷要求受信部134は、印刷待ち状態を通知した出力先候補の画像形成装置150からの印刷処理開始の要求を待ち受ける。印刷要求受信部134は、印刷処理開始の要求を受信すると、振り分け部126に対し、要求元の出力先候補の画像形成装置(出力先画像形成装置)を通知する。振り分け部126は、印刷要求受信部134により、出力先候補いずれかの画像形成装置から印刷処理開始の要求を受け取ると、要求元の画像形成装置(以下、出力先画像形成装置という。)に対応するプリントキュー144に、中間データを印刷データとして送信し、振り分け処理を完了させる。
【0031】
一方、画像形成装置150は、状態受信部152と、印刷指示受付部154と、印刷要求送信部156とを含み構成される。状態受信部152は、端末装置110の状態通知部132から状態通知を受け取り、通知された状態に応じて、印刷指示受付部154に対し依頼を行う。状態受信部152は、「印刷待ち状態」が通知された場合は、印刷指示受付部154に対し、該印刷待ち状態にある印刷ジョブの印刷処理の開始を指示するための画面表示を行わせる。一方、「印刷完了状態」が通知された場合は、状態受信部152は、印刷指示受付部154に対し、既に表示済みの印刷完了した印刷ジョブを画面表示から削除させる。
【0032】
図4は、第1の実施形態による画像形成装置150の操作パネル上に表示される、印刷待ち状態にある印刷ジョブの印刷処理開始の指示を受け付ける印刷待ち画面を例示する。印刷待ち受け画面200は、状態受信部152が「印刷待ち状態」の状態通知を受信したことに応答して、画像形成装置150の操作パネル上にポップアップされる。あるいは、画像形成装置150から呼び出せる印刷ジョブの一覧表示画面から、特定の印刷ジョブが選択されたことに応答して、画像形成装置150の操作パネル上に表示される。
【0033】
印刷待ち受け画面200は、当該画像形成装置150を出力先候補とする印刷待ち状態の印刷ジョブがある旨を表すメッセージ表示202と、印刷ジョブの内容を表している内容表示204と、印刷ボタン208と、閉じるボタン210とを含む。
【0034】
図4に示す印刷待ち受け画面200において、印刷ボタン208がタッチされると、状態受信部152は、印刷処理開始要求の送信を行うよう印刷要求送信部156に依頼する。印刷要求送信部156は、端末装置110に対し、当該画像形成装置150を識別する識別情報(IPアドレスなど)とともに、印刷処理開始の要求を送信する。印刷処理開始の要求が送信されると、当該画像形成装置150は、プリントキュー144を経由して送信される印刷データを受信して、電子写真方式等のプリント方式で画像形成処理を実行する。
【0035】
以下、図5〜図8に示すフローチャートを参照しながら、第1の実施形態による印刷振り分け処理の流れを説明する。図5は、第1の実施形態による端末装置における、仮想プリンタドライバが実行する処理を示すフローチャートである。図5に示す処理は、利用者が、アプリケーション112で仮想プリンタドライバ122を指定して印刷指示を行ったことに応答して、ステップS100から開始される。ステップS101では、仮想プリンタドライバ122は、アプリケーション112で行われた印刷実行の指示に応答して、該プリケーション122から印刷実行命令およびジョブデータを受け取る。
【0036】
ステップS102では、仮想プリンタドライバ122は、受け取ったジョブデータからページ単位で1以上の中間画像を生成し、中間データ格納部124に保存する。ステップS103では、仮想プリンタドライバ122は、ジョブデータに含まれる文書名や部数指定など印刷情報を抽出し、中間データ格納部124に保存する。ステップS104では、仮想プリンタドライバ122は、ジョブデータからユーザ固有情報および端末固有情報などのシステム情報を抽出し、中間データ格納部124に保存する。なお、印刷ジョブは、例えば、ジョブIDにより識別され、中間データは、ジョブIDに紐付けられる。ステップS105では、仮想プリンタドライバ122は、発送処理部142の振り分け部126に対し、ジョブIDを付して印刷要求を行い、ステップS106で、本印刷実行命令に応答した仮想プリンタドライバ側の処理を終了させる。
【0037】
図6は、第1の実施形態による端末装置における、発送処理部が実行する処理を示すフローチャートである。図6に示す発送処理部142による処理は、印刷ジョブ毎に実行される。図6に示す処理は、図5に示すステップS105で、仮想プリンタドライバ122から印刷要求が行われたことに応答して、ステップS200から開始される。ステップS201では、振り分け部126は、仮想プリンタドライバ122から印刷要求を受け取る。
【0038】
ステップS202では、振り分け部126は、出力先決定部128に対し、ジョブIDを渡して出力先候補リストを要求する。ステップS203では、出力先決定部128は、中間データ格納部124に格納され、渡されたジョブIDに紐付けられる中間データと、対応付け情報格納部130に格納される対応付け情報とを照合して、出力先候補リストを生成し、振り分け部126に返却する。
【0039】
ステップS204では、振り分け部126は、状態通知部132に対し、出力先候補リストを渡して該出力先候補リストに含まれる候補すべてへ印刷待ち状態通知を行うよう要求する。ステップS205では、状態通知部132は、出力先候補の画像形成装置すべてに対し、当該端末装置110と通信するための端末識別情報(IPアドレスなど)とともに、印刷待ち状態通知を行う。ここでは、図4に示すように印刷ジョブ内容の識別を容易なものとする表示を行うために、端末名、IPアドレス、ドキュメント名などを付して印刷待ち状態通知を行ってもよい。
【0040】
ステップS206では、印刷要求受信部134は、出力先候補の画像形成装置からの印刷処理開始の要求の待ち受けを開始する。ステップS207では、印刷要求受信部134は、いずれかの出力先候補の画像形成装置から印刷処理開始の要求を受け取ったか否かを判定し、該要求を受け取るまでの間(NOの間)、ステップS207をループさせる。ステップS207で、いずれかの出力先候補から印刷処理開始の要求を受け取ったと判定された場合(YES)は、ステップS208へ処理が進められる。
【0041】
ステップS208では、印刷要求受信部134は、振り分け部126に対し、要求元の出力先候補の画像形成装置(出力先画像形成装置)からの印刷処理開始の要求を受領した旨を、出力先画像形成装置の識別情報(IPアドレスなど)とともに通知する。ステップS209では、振り分け部126は、中間データ格納部124から中間データを読み出し、印刷要求受信部134から通知された出力先画像形成装置に対応したプリントキュー144に対し発送を行う。ステップS210では、振り分け部126は、中間データの発送処理が完了したか否かを判定し、完了するまでの間(NOの間)、ステップS210をループさせる。
【0042】
ステップS210で、発送処理が完了したと判定された場合(YES)は、ステップS211へ処理が進められる。ステップS211では、振り分け部126は、状態通知部132に対し、出力先候補リストに含まれる候補すべてへ印刷完了状態通知を行うよう要求する。ステップS212では、状態通知部132は、出力先候補の画像形成装置すべてに対し、端末識別情報とともに、印刷完了状態通知を行い、ステップS213で本処理を終了させる。
【0043】
図7および図8は、第1の実施形態において画像形成装置が実行する処理を示すフローチャートである。図7に示す処理は、画像形成装置150が起動されたことに応答して、ステップS300から開始される。ステップS301では、状態受信部152は、振り分け部126から印刷待ち状態通知を受信したか否かを判定し、印刷待ち状態通知を受信するまでの間(NOの間)、ステップS301をループさせる。
【0044】
ステップS301で、印刷待ち状態通知を受信したと判定された場合(YES)は、ステップS302へ処理が進められる。ステップS302では、状態受信部152は、印刷指示受付部154に対し、端末装置110からの印刷待ち状態通知にかかる表示処理を要求する。ステップS303では、印刷指示受付部154は、図4に示すように、操作パネル上に印刷待ち状態の印刷ジョブが有る旨を示す印刷待ち受け画面を表示させて、当該画像形成装置150のオペレータに対し印刷処理開始の指示を促す。そして、ステップS304から図8に示す処理へ進められる。
【0045】
図7を参照して説明した処理により、利用者は、端末装置110でアプリケーション112から印刷実行の指示を行い、出力先候補のうちいずれか所望の画像形成装置の前に移動し、そのオペレータとして印刷待ち状態の印刷ジョブに対する印刷処理開始の指示を行うことができる。
【0046】
図8に示す処理は、図7に示すステップS304から進められ、ステップS400から開始する。ステップS401では、状態受信部152は、印刷完了状態通知を受信したか否かを判定する。ステップS401で、まだ印刷完了状態通知を受信していないと判定された場合(NO)は、ステップS402へ処理が進められる。ステップS402では、印刷指示受付部154は、オペレータから印刷開始の指示が有ったか否かを判定し、まだ印刷開始の指示が行われていない場合(NO)には、ステップS401へ処理をループさせる。
【0047】
一方、ステップS402で、図4に示す印刷待ち受け画面において印刷ボタン208がタッチされるなどにより、オペレータからの印刷開始の指示が有ったと判定された場合(YES)は、ステップS403へ処理が進められる。ステップS403では、印刷指示受付部154は、印刷開始の指示に応答して、印刷要求送信部156に対し、印刷処理開始要求の送信を依頼する。ステップS404では、印刷要求送信部156は、端末装置110に対し、当該画像形成装置の識別情報(IPアドレスなど)とともに、印刷処理開始要求を送信する。
【0048】
ステップS405では、状態受信部152は、印刷完了状態通知を受信したか否かを判定する。ステップS405では、印刷完了状態通知を受信するまでの間(NOの間)、ステップS405内で処理をループさせる。一方、ステップS401またはステップS405で、印刷完了状態通知が受信されたと判定された場合(YES)は、ステップS406へ処理が分岐される。ステップS406では、状態受信部152は、印刷指示受付部154に対し、受信した端末装置からの印刷待ち状態通知に対応する表示の削除処理を要求する。ステップS407では、印刷指示受付部154は、操作パネル上に表示されている該通知に対応する印刷待ち状態の印刷ジョブがある旨の表示の削除処理を行い、ステップS408で本処理を終了させる。
【0049】
以下、図9に示すシーケンス図を参照しながら、第1の実施形態による印刷振り分け処理における各機能部の連携について説明する。図9に示す処理は、ステップS501から開始し、ステップS501で、アプリケーション112は、仮想プリンタドライバ122に印刷実行を指令する。ステップS502で、仮想プリンタドライバ122は、印刷実行指令に応答して、中間データを生成し、中間データ格納部124に保存する。ステップ503で、仮想プリンタドライバ122は、振り分け部126に印刷要求を行う。
【0050】
ステップS504で、振り分け部126は、上記印刷要求に応答して、出力先決定部128に出力先候補の提供を要求する。ステップS505で、出力先決定部128は、中間データおよび対応付け情報を照合して、出力先候補リストを生成し、ステップS506で、振り分け部126に出力先候補リストを返す。ステップS507で、振り分け部126は、状態通知部132に印刷待ち状態通知の依頼を行い、ステップS508で、状態通知部132は、出力先候補すべての状態受信部152に印刷待ち状態通知を行う。
【0051】
画像形成装置150側では、ステップS509で、状態受信部152は、印刷待ち状態通知に応答して、印刷指示受付部154に印刷待ち状態の表示を依頼する。ステップS510では、印刷指示受付部154は、印刷待ち状態の印刷ジョブをオペレータに提示して印刷開始指示を促すため印刷待ち状態表示を行う。ステップS511で、オペレータによる印刷開始の指示を受け付けると、ステップS512で、印刷指示受付部154は、印刷要求送信部156に印刷処理開始要求の送信を依頼する。ステップS513で、印刷要求送信部156は、端末装置110の印刷要求受信部134に印刷処理開始要求を送信する。
【0052】
印刷処理開始要求が行われると、端末装置110側では、ステップS514で、印刷要求受信部134は、その要求元の出力先画像形成装置を振り分け部126に通知する。ステップS515で、振り分け部126は、中間データを読み出し、ステップS516で、出力先画像形成装置に対応するプリントキュー144に印刷データとして中間データを送信する。これにより、プリントキュー144を経て、出力先画像形成装置に適合した印刷データ形式の印刷データが画像形成装置150へ送信され、印刷出力されることになる。ステップS517で、振り分け部126は、中間データの発送が成功裡に完了したことに対応して、状態通知部132に印刷完了状態通知を依頼する。ステップS518で、状態通知部132は、出力先候補すべての状態受信部152に印刷完了状態通知を行う。
【0053】
画像形成装置150側では、ステップS519で、状態受信部152は、印刷完了状態通知に応答して、印刷指示受付部154に印刷待ち状態表示の削除を依頼する。ステップS520で、印刷指示受付部154は、印刷待ち状態表示を削除し、図4に示すような印刷待ち受け画面の表示を解除する。
【0054】
図7〜図9を参照して説明した処理によって、利用者が印刷処理開始要求を行った画像形成装置、および印刷処理開始要求が行われずに印刷完了状態通知を受け取った画像形成装置の両方で、当該印刷ジョブにかかる処理が終了される。
【0055】
以下、図10を参照して、端末装置110および画像形成装置150のハードウェア構成について説明する。図10は、第1の実施形態の(A)端末装置110および(B)画像形成装置150のハードウェア構成を示す図である。図10(A)に示す端末装置110は、シングルコアまたはマルチコアのCPU(中央演算処理装置)を含む制御部12と、RAM(Random Access Memory)などの主記憶部14と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの補助記憶部16と、外部記憶装置I/F部18と、NIC(Network interface Card)などのネットワークI/F部20とを含む。端末装置110は、さらに、入力部22と、ディスプレイ部24とを含むことができる。入力部22は、マウスおよびキーボードを含み構成される。
【0056】
上記端末装置110は、図10(A)に示した制御部12による制御の下、補助記憶部16に格納される制御プログラムを読み込み、主記憶部14が提供する作業空間に展開する。これにより、端末装置110は、Windows(登録商標)XP、Vista(登録商標)、7(登録商標)、UNIX(登録商標)、LINUX(登録商標)などの適切なオペレーティング・システムの制御の下、上述した各機能手段および各処理を実現する。
【0057】
図10(B)に示す画像形成装置150も同様に、CPUを含む制御部32と、RAMなどの主記憶部34とを含む。画像形成装置150は、さらに、HDDなどの補助記憶部36と、外部記憶装置I/F部38と、NICなどのネットワークI/F部40と、印刷部42と、操作パネル部44とを含む。
【0058】
補助記憶部36は、画像データ、文書データ、プログラム、フォントデータやフォームデータなどを蓄積し、また、画像形成装置150を制御するための制御プログラムや各種システム情報や各種設定情報を格納する。外部記憶装置I/F部38は、USBフラッシュメモリ、スマートメディア(登録商標)、コンパクトフラッシュ(登録商標)などの外部記憶メディアと接続するためインタフェース部である。
【0059】
ネットワークI/F部40は、当該画像形成装置150をインターネットやLANなどのネットワーク102に接続するインタフェース機器である。ネットワークI/F部40は、ネットワーク102を介して、端末装置110から状態通知および印刷ジョブにかかる中間データを受信し、また印刷処理開始の要求を送信する。印刷部42は、電子写真方式等の既存の印刷技術によるプロッタ・エンジンを含み、受信した印刷データに従って、印刷ジョブにかかる印刷出力を行う。操作パネル部44は、液晶表示デバイスやハードキー、タッチパネルなどの表示装置および入力装置を含む。操作パネル部44は、画像形成装置150の操作者からの各種指示の入力を受付け、印刷待ち状態の印刷ジョブに対する印刷開始の指示を受け付けるためのユーザ・インタフェースを提供する。
【0060】
画像形成装置150も同様に、図10(B)に示した制御部32による制御の下、補助記憶部36に格納される制御プログラムを読み込み、主記憶部34が提供する作業空間に展開する。これにより、上記画像形成装置150は、WINDOWS(登録商標)、UNIX(登録商標)、LINUX(登録商標)などの適切なオペレーティング・システムの下、各種プロセスを起動し、上述した各機能手段および各処理を実現する。
【0061】
上述までの実施形態によれば、利用者が端末装置110上のアプリケーション112から印刷指示を行うだけで、印刷ジョブの内容に応じて適切な出力先候補の画像形成装置が決定され、該画像形成装置からの印刷実行開始が可能な状態となる。そして、該画像形成装置からの印刷実行の準備が完了した後、利用者は、印刷ジョブの内容に応じて選ばれた複数の出力先候補の中から、所望の出力先を選んで、画像形成装置の操作パネルから印刷ジョブの印刷開始の指示を行うことができる。これにより、利用者は、端末装置上で準備される印刷ジョブを呼び出し、ロケーションにかかわらず、所望の印刷物を得ることができる。
【0062】
また上記構成では、印刷ジョブを一元管理し、出力先の画像形成装置を制限する機能が実装された外部サーバを別途設ける必要もないため、ロケーション・フリー印刷を可能とするためのサーバ管理コストおよび開発コストを低減させることができる。
【0063】
以下、第2の実施形態によるプリント・システムについて説明する。以下に説明する第2の実施形態においては、プリント・システムは、印刷実行の指示を行った正当な利用者だけが、制限された出力先候補の画像形成装置から印刷出力を開始させることができるように構成されている。なお、第2の実施形態によるプリント・システムの概略構成、機能ブロックについては、概ね第1の実施形態のものと同様であるため、以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。以下、図11〜図13に示すフローチャートを参照しながら、第2の実施形態による印刷振り分け処理の流れを説明する。
【0064】
図11は、第2の実施形態による端末装置における仮想プリンタドライバが実行する処理を示すフローチャートである。図11に示す処理は、利用者が、アプリケーション112で仮想プリンタドライバ122を指定して印刷指示を行ったことに応答して、ステップS600から開始される。アプリケーション112において、利用者が、仮想プリンタドライバ122を指定して適宜印刷設定を行った上、ドキュメントなどの印刷実行の指示を行うと、アプリケーション112から仮想プリンタドライバ122に対し印刷実行命令がなされる。
【0065】
このとき、第2の実施形態では、ユーザ情報、ユーザID、パスワード、トークンIDなどユーザ認証で照合するための認証情報が印刷実行命令に付与される。認証情報の入力方法としては、特に限定されるものではないが、印刷指示時に、利用者に対しキーボードからの入力を求めたり、カードリーダを用いてIDカードから取得したりする方法がある。ステップS601では、仮想プリンタドライバ122は、アプリケーション112で行われた印刷実行の指示に応答して、該プリケーション122から印刷実行命令、ジョブデータおよび認証情報を受け取る。
【0066】
ステップS602では、仮想プリンタドライバ122は、中間画像を生成し、中間データ格納部124に保存する。ステップS603は、仮想プリンタドライバ122は、印刷情報を抽出し、中間データ格納部124に保存する。ステップS604では、仮想プリンタドライバ122は、ジョブデータからシステム情報を抽出し、中間データ格納部124に保存する。ここでは、上記アプリケーション112から受け取った認証情報もシステム情報として保存される。ステップS605では、仮想プリンタドライバ122は、発送処理部142の振り分け部126に対し、印刷要求を行い、ステップS606で、印刷実行命令に応答した仮想プリンタドライバ側の処理を終了させる。
【0067】
図12は、第2の実施形態による端末装置における発送処理部が実行する処理を示すフローチャートである。図12に示す処理は、図11に示すステップS605に対応して、ステップS700から開始される。図12に示す処理は、印刷ジョブ毎に行われる。振り分け部126は、ステップS701で印刷要求を受け取り、ステップS702で、出力先決定部128に出力先候補リストを要求する。ステップS703で、出力先決定部128は、出力先候補リストを生成し、振り分け部126に返却する。ステップS704では、振り分け部126は、中間データ格納部124のシステム情報140内から認証情報を取得する。ステップS705では、振り分け部126は、状態通知部132に対し、出力先候補リストおよび認証情報を渡して該出力先候補リストに含まれる候補すべてへ印刷待ち状態通知を行うよう要求する。ステップS706では、状態通知部132は、出力先候補の画像形成装置すべてに対し、端末識別情報および認証情報とともに、印刷待ち状態通知を行う。ステップS707〜ステップS714までの処理は、図6に示したステップS206〜213と同様であるため、説明は割愛する。
【0068】
図13は、第2の実施形態において画像形成装置が実行する処理を示すフローチャートである。なお、第1の実施形態における図7に示す処理は、同様であるため、説明は割愛する。図7と同様の処理によって、利用者は、出力先候補のうちいずれか所望の画像形成装置の前に移動し、そのオペレータとして印刷待ち状態の印刷ジョブに対する印刷処理開始の指示を行うことができるようになる。
【0069】
図13に示す処理は、図7に示すステップS304から進められ、ステップS800から開始する。ステップS801では、状態受信部152は、印刷完了状態通知を受信したか否かを判定する。ステップS801で、まだ印刷完了状態通知を受信していないと判定された場合(NO)は、ステップS802へ処理が進められる。ステップS802では、印刷指示受付部154は、オペレータから印刷開始の指示が有ったか否かを判定し、まだ印刷開始の指示が行われていない場合(NO)には、ステップS801へ処理をループさせる。一方、ステップS802で、オペレータからの印刷開始の指示が有ったと判定された場合(YES)は、ステップS803へ処理が進められる。
【0070】
ステップS803では、印刷指示受付部154は、端末装置110から送信された第1の認証情報と、利用者から画像形成装置150側で入力された第2の認証情報とを比較して、認証情報が一致するか否かを判定する。第2の認証情報の入力方法としては、特に限定されるものではないが、上記印刷指示に先立って、または印刷指示の後に、利用者に印刷指示時のキーボードからの入力を求めたり、カードリーダを用いてIDカードから取得したりする方法がある。ステップS803で、認証情報が一致しないと判定された場合(NO)は、ステップS801へループさせて、再度の認証情報の入力および印刷指示の入力を促す。一方、ステップS803で、認証情報が一致すると判定された場合(YES)は、ステップS804へ処理を進める。ステップS804以降の処理は、図8に示したステップS403〜ステップS408までの処理と同様であるため、説明は割愛する。
【0071】
以下、図14に示すシーケンス図を参照しながら、第2の実施形態による印刷振り分け処理における各機能部の連携について説明する。図14に示す処理は、ステップS901から開始し、アプリケーション112は、仮想プリンタドライバ122に印刷実行を指令する。ここで、印刷実行指令には、認証情報が付加されている。ステップS902で、仮想プリンタドライバ122は、印刷実行指令に応答して、中間データを生成し、中間データ格納部124に保存する。上記認証情報も中間データとして保存される。ステップS903で、仮想プリンタドライバ122は、振り分け部126に印刷要求を行う。
【0072】
ステップS904で、振り分け部126は、出力先決定部128に出力先候補の提供を要求する。ステップS905で、出力先決定部128は、中間データおよび対応付け情報を照合して、出力先候補リストを生成し、ステップS906で、振り分け部126に出力先候補リストを返す。ステップS907では、振り分け部126は、中間データ格納部124の認証情報を参照する。ステップS908で、振り分け部126は、状態通知部132に、認証情報を渡して印刷待ち状態通知の依頼を行い、ステップS909で、状態通知部132は、出力先候補すべての状態受信部152に対し、認証情報を含めて印刷待ち状態通知を行う。
【0073】
画像形成装置150側では、ステップS910で、状態受信部152は、印刷指示受付部154に印刷待ち状態の表示を依頼する。ステップS911では、印刷指示受付部154は、印刷待ち状態表示を行う。ステップS912で、オペレータによる認証情報の人力および印刷開始の指示を受け付けると、ステップS913で、印刷指示受付部154は、ユーザ認証を行う。ここでは、ユーザ認証が成功裡に終了するものとして説明を続ける。ステップS914で、印刷指示受付部154は、印刷要求送信部156に印刷処理開始要求の送信を依頼する。ステップS915で、印刷要求送信部156は、端末装置110の印刷要求受信部134に印刷処理開始要求を送信する。
【0074】
端末装置110側では、ステップS916で、印刷要求受信部134は、印刷処理開始要求に応答して、その要求元の出力先画像形成装置を振り分け部126に通知する。ステップS917で、振り分け部126は、中間データを読み出し、ステップS918で、出力先画像形成装置に対応するプリントキュー144に印刷データとして中間データを送信する。これにより、印刷データは、プリントキュー144を経て、画像形成装置150へ送信される。ステップS919で、振り分け部126は、中間データの発送が成功裡に完了したことに対応して、状態通知部132に印刷完了状態通知を依頼する。ステップS920で、状態通知部132は、出力先候補すべての状態受信部152に印刷完了状態通知を行う。
【0075】
画像形成装置150側では、ステップS921で、状態受信部152は、印刷完了状態通知に応答して、印刷指示受付部154に印刷待ち状態表示の削除を依頼する。ステップS922で、印刷指示受付部154は、印刷待ち状態表示を削除し、印刷待ち受け画面の表示を解除する。
【0076】
図7、図11〜図14を参照して説明した処理によって、第2の実施形態においても、利用者が印刷処理開始要求を行った画像形成装置、および印刷処理開始要求が行われずに印刷完了状態通知を受け取った画像形成装置の両方が、当該印刷ジョブにかかる処理を終了させる。
【0077】
上述した第2の実施形態では、印刷指示を行った利用者以外の者は、出力先候補となる画像形成装置であっても、当該印刷ジョブの印刷出力を開始することができない。このため、機密情報などを含むドキュメントを印刷する場合に好適に情報漏洩を防止することができる。また、印刷ジョブの準備が完了した後は、正当な権限を有する利用者であれば、印刷ジョブの内容に応じて選ばれた複数の出力先候補のなかから、所望の出力先を選んで画像形成装置の操作パネルから印刷ジョブの印刷開始の指示を行うことができる。
【0078】
なお、上述した第2の実施形態では、端末装置110から出力先候補の画像形成装置150すべてへ認証情報が送信され、画像形成装置150側で、端末装置110側の第1の認証情報と、画像形成装置150に入力された第2の認証情報とを照合して、ユーザ認証を行っている。しかしながら、他の実施形態では、画像形成装置150から端末装置110へ第2の認証情報が送信され、端末装置110側で、画像形成装置150から受信した第2の認証情報と、端末装置110側の第1の認証情報とを照合して、ユーザ認証を行ってもよい。
【0079】
以上説明したように、上述までの実施形態によれば、利用者が、印刷ジョブの内容により制限される画像形成装置の複数候補の中から、所望の画像形成装置を使用して、画像処理装置上の印刷ジョブを呼び出して該画像形成装置に印刷出力させることが可能な画像処理システム、画像処理装置、画像形成装置およびプログラムを提供することができる。
【0080】
なお、上述した実施形態では、仮想プリンタドライバ122、中間データ格納部124および発送処理部142のすべてが端末装置110上に構成されるものとして説明した。しかしながら、上記機能部の配置構成は特に限定されるものではない。他の実施形態では、図2においてネットワーク境界104で示すように、アプリケーション112、仮想プリンタドライバ122および中間データ格納部124が構成されるクライアント端末と、発送処理部142が構成されるサーバ装置とで分離して構成してもよい。そして、端末固有情報およびユーザ固有情報を用いて出力先候補を決定する場合は、これらの固有情報は、上記アプリケーション側が動作するクライアント端末でのものとすることができる。
【0081】
さらに他の実施形態では、端末装置110に代えて、アプリケーション112、仮想プリンタドライバ122、中間データ格納部124および発送処理部142が適宜構成されるターミナルサーバ装置を構成することもできる。この場合、エンドユーザは、シンクライアント端末からリモートデスクトップ・サービスまたはターミナルサービスを利用してターミナルサーバ装置にアクセスする。端末固有情報およびユーザ固有情報を用いて出力先候補を決定する場合は、これらの固有情報は、上記シンクライアント端末のものとすることができる。
【0082】
なお、上記機能部は、アセンブラ、C、C++、C#、Java(登録商標)、などのレガシープログラミング言語やオブジェクト指向プログラミング言語などで記述されたコンピュータ実行可能なプログラムにより実現でき、ROM、EEPROM、EPROM、フラッシュメモリ、フレキシブルディスク、CD−ROM、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、ブルーレイディスク、SDカード、MOなど装置可読な記録媒体に格納して、あるいは電気通信回線を通じて頒布することができる。
【0083】
これまで本発明の実施形態について説明してきたが、本発明の実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0084】
12,32…制御部、14,34…主記憶部、16,36…補助記憶部、18,38…外部記憶装置I/F部、20,40…ネットワークI/F部、22…入力部、24…ディスプレイ部、42…印刷部、44…操作パネル部、100…プリント・システム、102…ネットワーク、104…ネットワーク境界、110…端末装置、112…アプリケーション、120…プリント振り分け部、122…仮想プリンタドライバ、124…中間データ格納部、126…振り分け部、128…出力先決定部、130…対応付け情報格納部、132…状態通知部、134…印刷要求受信部、136…中間画像、138…印刷情報、140…システム情報、142…発送処理部、144…プリントキュー、150…画像形成装置、152…状態受信部、154…印刷指示受付部、156…印刷要求送信部、190…ロケーション、200…印刷待ち受け画面、202…メッセージ表示、204…内容表示、208…印刷ボタン、210…閉じるボタン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0085】
【特許文献1】特開2010−157208号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して1以上の画像形成装置に接続される、画像処理システムであって、
印刷実行命令に応答して、該印刷実行命令にかかる印刷ジョブの中間データを生成する仮想プリンタドライバ手段と、
前記中間データに含まれる出力先候補を決定するための情報に応じて、前記1以上の画像形成装置の中から前記印刷ジョブに対する1以上の出力先候補を決定する、出力先決定手段と、
前記1以上の出力先候補である画像形成装置各々に対し、前記印刷ジョブの印刷待ち状態を通知する状態通知手段と、
前記1以上の出力先候補いずれかから受信した前記印刷ジョブにかかる印刷処理開始の要求に応答して、前記印刷処理開始の要求元である出力先候補の画像形成装置へ前記中間データを振り分ける振り分け手段と
を含む、画像処理システム。
【請求項2】
前記画像処理システムは、前記1以上の画像形成装置を含み、前記1以上の画像形成装置各々は、
前記印刷ジョブにかかる印刷待ち状態の通知を受信する受信手段と、
印刷待ち状態にある前記印刷ジョブに対する印刷開始の指示を受け付ける受付手段と、
前記印刷開始の指示に応答して、前記印刷ジョブにかかる印刷処理開始の要求を送信する送信手段と
を含む、請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項3】
ユーザ認証が成功した場合にのみ前記振り分け手段が前記中間データを発送するように、前記印刷ジョブに付加された第1の認証情報と、前記画像形成装置に入力された第2の認証情報とを照合して、ユーザ認証を行う認証手段をさらに備える、請求項1または2に記載の画像処理システム。
【請求項4】
前記状態通知手段は、前記振り分け手段が前記中間データを発送する処理を完了させた後、前記1以上の出力先候補である画像形成装置各々に対し、前記印刷ジョブの印刷完了を通知することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像処理システム。
【請求項5】
印刷ジョブに対する1以上の出力先候補の決定、該印刷ジョブの印刷待ち状態通知、該印刷ジョブにかかる印刷処理開始の要求に応答した要求元画像形成装置への中間データの振り分けは、印刷ジョブ毎に行われることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像処理システム。
【請求項6】
前記出力先候補を決定するための情報は、前記印刷実行命令の要求元の端末固有情報、前記印刷実行命令の要求元のユーザ固有情報、前記印刷ジョブの印刷設定、および前記印刷ジョブの画像から解析により抽出されるデータ情報の少なくとも1つの情報を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像処理システム。
【請求項7】
ネットワークを介して1以上の画像形成装置に接続される画像処理装置であって、
印刷ジョブにかかる中間データに含まれる出力先候補を決定するための情報に応じて、前記1以上の画像形成装置の中から前記印刷ジョブに対する1以上の出力先候補を決定する出力先決定手段と、
前記1以上の出力先候補である画像形成装置各々に対し、前記印刷ジョブの印刷待ち状態を通知する状態通知手段と、
前記1以上の出力先候補いずれかから受信した前記印刷ジョブにかかる印刷処理開始の要求に応答して、前記印刷処理開始の要求元である出力先候補の画像形成装置へ前記中間データを振り分ける振り分け手段と
を含む、画像処理装置。
【請求項8】
ユーザ認証が成功した場合にのみ前記振り分け手段が前記中間データを発送するように、前記印刷ジョブに付加された第1の認証情報と、前記画像形成装置に入力された第2の認証情報とを照合して、ユーザ認証を行う認証手段をさらに備える、請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の画像処理装置とネットワークを介して接続される画像形成装置であって、
印刷ジョブにかかる印刷待ち状態の通知を受信する受信手段と、
印刷待ち状態にある印刷ジョブに対する印刷開始の指示を受け付ける受付手段と、
印刷開始の指示に応答して、印刷ジョブにかかる印刷処理開始の要求を送信する送信手段と、
前記画像処理装置から受信した印刷ジョブの中間データを印刷出力する印刷手段と
を含む、画像形成装置。
【請求項10】
ネットワークを介して1以上の画像形成装置と接続可能な画像処理装置としてコンピュータを機能させる、コンピュータ実行可能なプログラムであって、前記プログラムは、前記コンピュータを、
印刷ジョブにかかる中間データに含まれる出力先候補を決定するための情報に応じて、前記1以上の画像形成装置の中から前記印刷ジョブに対する1以上の出力先候補を決定する出力先決定手段、
前記1以上の出力先候補である画像形成装置各々に対し、前記印刷ジョブの印刷待ち状態を通知する状態通知手段、および
前記1以上の出力先候補いずれかから受信した前記印刷ジョブにかかる印刷処理開始の要求に応答して、前記印刷処理開始の要求元である出力先候補の画像形成装置へ前記中間データを振り分ける振り分け手段
として機能させる、プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−58010(P2013−58010A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194971(P2011−194971)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】