説明

画像処理方法、画像処理装置、及び、プログラム、プログラム記憶媒体

【課題】 線画部分と黒塊部分の混在した2値画像に対し、線画部分は細線化して線芯(ラインアート)ベクトル処理し、黒塊部分は、輪郭(アウトライン)ベクトル処理をする、部分ラインアート処理(ラインアート処理と輪郭ベクトル処理の混在)を可能とする方法及び装置、プログラムを提案する。
【解決手段】 処理対象とする画像を獲得する工程と、対象画像を線画として処理する細線の幅を得る工程と、前記細線の幅に基づき、輪郭(アウトライン)ベクトル処理対象部分と線芯(ラインアート)ベクトル処理対象部分とを抽出する工程と、前記輪郭(アウトライン)ベクトル処理対象部分に対して輪郭(アウトライン)ベクトル処理を加える工程と、前記線芯(ラインアート)ベクトル処理対象部分に対して線芯(ラインアート)ベクトル処理を加える線工程とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、図面や文書画像内などの線図形の処理に向く、ラスタ走査順に記憶された2値画像から図形のベクトル情報を生成する方法とその装置、とりわけ、線画部分と黒塊部分の混在した2値画像に対し、線画部分は細線化して線芯(ラインアート)ベクトル処理し、黒塊部分は、輪郭(アウトライン)ベクトル処理をする方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ペーパーレス化への要求が高まり、既存の画像データを電子化して再利用することが頻繁に行われるようになってきた。従来、画像データの再利用は、画像データを2値化処理した後にベクトル化技術を用いてベクトルデータに変換し、このベクトルデータをCADソフト等で使用するという形で行われてきている。
【0003】
先述のように、ペーパーレス化への要求が高まりのもと、ビジネス文書においても、既存の画像データを電子化して再利用することが望まれている。原図のもつ各部分の部分的な太さの差や面積等をも、所望とされる変倍率を反映した形で(即ち、原図中での太い部分は変倍後の図中でも相対的に太く、原画中での細い部分では変倍後の図中でも相対的に細く)変倍するような再利用の形態に対しては、オリジナル文書中の2値図形の輪郭(アウトライン)ベクトルを抽出して、2次元形状を任意の拡大縮小率で変倍することで、その実現が可能である。
【0004】
ところで、ビジネス文書で既存の画像データを再利用する場合においても、これまでのCAD/CAMシステム等での各種手書き図面の自動入力方法のように、面積をもった図形全体というよりも、ある図形の輪郭を構成する線を、太さや、面積といった概念に意味をもたせずに、単なる線(直線、[開]曲線、[閉]曲線等)、あるいは、その線の集まりとして扱いたい場合も少なくない。また、もともと太さを意識せずに、細線のみで描かれている線画の再利用の要望も強い。すなわち、線の集まりの中から一部の線のみを削除したり、別な線を付与したり、あるいは、これら各線の一部の線のみに部分的な曲率、長さ、太さや線種(実線、破線、一点鎖線等)に変更を加える等の編集操作がその代表的な活用法である。このような、ニーズに答えるものとしては、線芯(ラインアート)ベクトル処理と称される、線画のベクトル処理があげられる。
【0005】
さて、2値画像の輪郭(アウトライン)ベクトル処理に関しては、出願人は既に特許第3026592号(以下特許文献1と称す)を提案している。この特許文献1において、『注目画素と、その近傍画素の状態により、予め定められた位置を輪郭線を構成する点とし、近傍画素の状態により該輪郭線を構成する点の接続方向を決定する工程と、前記輪郭線を構成する点と、該輪郭線を構成する他の点との接続状態を判断する工程と、前記注目画素の位置をラスタ走査順に画像データ上を更新し、注目画素毎に近傍画素の状態に基づいて前記工程を実行し、輪郭点を抽出する。
【0006】
以上の構成において、画像データにおける注目画素と、その近傍画素の状態を保持し、この注目画素をラスタ走査順に取り出し、その注目画素とその近傍画素の状態に基づいて、水平方向及び垂直方向の画素間ベクトルを検出する。これら画素間ベクトル同士の接続状態を判別して、この判別された画素間ベクトルの接続状態をもとに、画像データの輪郭を抽出するように動作する。』という手法を提案している。該手法は、画像の中の全ての輪郭線を1回のラスタ走査順だけで抽出でき、かつ、全画像データを記憶するための画像メモリを必要としないため、メモリの容量を少なくできる効果を有している。また、入力画像の画素の中心位置ではなく、画素の縁単位に輪郭を抽出することによって、1画素巾の細線に対しても有為な幅を有する輪郭線抽出法である。更に、原画中の画素の4方向に連結した連結画素領域の輪郭線を抽出するのみならず、8方向に連結した画素領域も抽出可能であることが紹介されている。
【0007】
また、出願人は特開平05−108823(以下特許文献2と称す)において、特許文献1に開示されるベクトル抽出ルールのモジュール化により効率的な輪郭点抽出が可能であることを開示している。
【0008】
さらに、出願人は既に特登録3026592号公報(以下特許文献3と称す)を提案している。この特許文献3において、2値画像の輪郭情報を用いて高画質な変倍画像を得る画像処理装置を紹介している。該提案は、2値画像からアウトラインベクトルを抽出し、該抽出したアウトラインベクトル表現の状態で所望の倍率(任意)で滑らかに変倍つれたアウトラインベクトルを作成し、該滑らかに変倍されたアウトラインベクトルから2値画像を再生成することによって、所望の倍率(任意)で変倍された高画質のデジタル2値画像を得るようにするものである。ここで、2値画像からアウトラインベクトルを抽出する方法としては、一例として、前記、特許文献1(特許第3026592号)や特許文献2(特開平05−108823)で開示される方法が用いられる。
【0009】
一方、線芯(ラインアート)ベクトル処理(以降、『線画のベクトル処理』とも、また、『ラインアートベクトル処理』とも称する)には、従来、細線化処理と呼ばれる画像処理が良く利用されている。細線化処理とは、スキャナ等で読み込んで得られるイメージデータを2値化した後、その線幅が1になるように細めていく処理である。そして、得られた線幅1の2値画像をそれらの端点や交点間をつなぐ独立した線や閉曲線毎に線芯ベクトル化する。
【0010】
しかしながら、処理対象とする2値画像の中には線画部分と黒塊部分の混在したものも多々あり、線画部分は、細線化して線芯(ラインアート)ベクトル処理し、黒塊部分は、輪郭(アウトライン)ベクトル処理した方が好ましい場合がある。これまで、線画部分と黒塊部分の混在した2値画像に対して、線画部分は細線化して線芯ベクトル処理し、黒塊部分は、輪郭(アウトライン)ベクトル処理をするといったことには、十分な対応がとられていないのが実情であった。
【特許文献1】特登録3026592号公報
【特許文献2】特開平05−108823公報
【特許文献3】特登録3049672号号公報
【特許文献4】特開2005-346137号公報
【非特許文献1】酒井幸市著“ディジタル画像処理の基礎と応用”第2版, P.51-P.54,ISBN4-7898-3707-6,CQ出版社,2004年2月1日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願では、上記従来例における問題点に鑑み、線画部分と黒塊部分の混在した2値画像に対し、線画部分は細線化して線芯ベクトル処理し、黒塊部分は、輪郭(アウトライン)ベクトル処理をする、部分ラインアート処理(ラインアート処理と輪郭ベクトル処理の混在)を可能とする方法及び装置、プログラムを提案することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
処理対象とする画像を獲得する画像獲得工程と、前記処理対象画像を線画として処理する細線の幅を得る細線化対象線幅獲得工程と、前記対象画像を線画として処理する細線の幅に基づき、輪郭(アウトライン)ベクトル処理対象部分と線芯(ラインアート)ベクトル処理対象部分とを抽出する処理対象域抽出工程と、前記輪郭(アウトライン)ベクトル処理対象部分に対して輪郭(アウトライン)ベクトル処理を加える輪郭(アウトライン)ベクトル処理工程と、前記線芯(ラインアート)ベクトル処理対象部分に対して線芯(ラインアート)ベクトル処理を加える線芯(ラインアート)ベクトル処理工程とを具備する。
【発明の効果】
【0013】
画像の一部に黒塊部分を含む線画でも、黒塊部分以外を線芯(ラインアート)ベクトル処理し、その他の部分は輪郭(アウトライン)ベクトル処理(あるいはベクトル処理しないことも可)することにより、従来のように、一律な方法によってベクトル化されてしまうのではなく、適応的なベクトル化が可能となる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<実施形態1>
本実施形態の画像処理装置の構成例について、図2のブロック図を参照して説明する。同図において、7は装置全体を制御するCentral Processing Unit(CPU)である。6は変更を必要としないプログラムやパラメータを格納するRead Only Memory(ROM)である。5は外部装置などから供給されるプログラムやデータを一時記憶するRandom Access Memory(RAM)である。1は、文書等を光電走査して電子的な画像データを得るためのスキャナであり、3はこのスキャナ1と画像処理装置を接続する画像入出力インターフェースである。2は、前記スキャナ1で読み取られた画像データ等を保持する画像メモリである。12は固定して設置されたハードディスクやメモリカード、あるいは着脱可能なフレキシブルディスク(FD)やCompact Disk(CD)等の光ディスク、磁気や光カード、ICカード、メモリカードなどを含む外部記憶装置である。また、13はこれら外部記憶装置12とコンピュータ装置との入出力(I/O(Input/Output))インターフェースである。15はユーザの操作を受け、データを入力するマウス等のポインティングデバイス10やキーボード9などの入力デバイスとのインターフェイスである。14は画像処理装置の保持するデータや供給されたデータを表示するためのディスプレイモニタ8とのインターフェイスである。4はインターネットなどのネットワーク回線に接続するためのネットワークインタフェイスである。11は1〜15の各ユニットを通信可能に接続するシステムバスである。
【0015】
以下、CPU7上で実行されるプログラムにより本願発明を実現する処理手順を、図1のフローチャートを用いて説明する。
【0016】
図1は、本願による発明を実施する装置における動作全体の流れを示すフローチャートである。同図において、処理を開始すると、ステップS110では、処理対象となる画像領域を含む画像データを入力する。画像入力に関しては、スキャナ1にて読み取られた画像データを画像入出力I/O3を介して画像メモリ2に入力する。また、通信I/F4を介して、装置外部より前記処理対象となる画像領域を含む画像を入力してもよく、あるいは、H/D装置12に予め記憶される画像データをI/O13を介して読み込むものであってもよい。得られた入力画像は、画像メモリ3上に保持される。
【0017】
次に、ステップS120では、ROM6上の図示しない領域に予め記憶される閾値を用いて、ステップS110で入力した画像データを2値化することにより、細線化対象とする2値画像を得る。尚、ステップS110で入力した画像が既に2値画像である場合には,ステップS120では、事実上このステップS110で入力した2値画像そのものを持って、細線化対象とする2値画像とする。尚、2値化に用いる閾値は、まず、前記ステップS110で得られた画像データを映像I/Oを介してディスプレイモニタ8上に表示した上で、これを視認しながらI/O15を介してキーボード9やマウス9等を用いて操作者より指示入力されるように構成してもよい。
【0018】
次に、ステップS130では、ROM6上の図示しない領域に予め記憶される細線化対象とする図形の最大線幅wを入力する。この細線化対象とする図形の最大線幅wkの情報に関しては、まず、前記ステップS120で得られた2値画像データを映像I/Oを介してディスプレイモニタ8上に表示した上で、これを視認しながらI/O15を介してキーボード9やマウス9等を用いて操作者より指示入力されるように構成してもよい。
【0019】
次に、ステップS140では、ステップS120で得られた2値画像を公知の収縮法に従い収縮処理する。即ち、注目画素位置の画素を中心画素とし、その周囲の8画素とからなる3×3のウィンドウで対象2値画像域をラスター走査する。同3×3の9画素からなるウィンドウ内で、周囲の8画素の中で1画素でも白画素なら注目画素も白画素とし(削除し)、周囲の8画素全てが黒画素の場合には注目画素の値は変化させない。2値画像のベクトル処理対象範囲内をラスター走査での次の画素位置に注目画素位置を移し、ベクトル処理対象領域内すべての画素に対して同処理を繰り返す。そして、前記、ステップS130で得られた細線化対象とする図形の最大線幅wの情報から、(w/2)の小数部を切り上げた回数kだけ、前記ラスター走査による一連の収縮処理を繰り返す。一回のラスター走査において黒領域の白領域の境界画素がそれぞれ1画素ずつ削除され、基本的に、黒領域は縦方向と横方向にそれぞれ2×k画素ずつ細められ、もともと、2×k画素以下の太さの黒領域は消滅することになる。ステップS140を終えるとステップS150に進む。
【0020】
図3(a)に、ステップS120で得られた2値画像の一例を示した。ステップS130にて、細線化対象とする図形の最大線幅wが3である場合に、kは2となりステップS140における収縮処理は、2回のラスター走査により繰り返される。図3(b)は、ステップS140における収縮処理の1回目のラスター走査が終了した時点の処理結果画像を表しており、図3(c)は、図3(b)を入力として2回目のラスター走査による収縮処理を終了した時点の処理結果画像を示している。k=2の場合は、この図3(c)がステップS140の出力結果となる。
【0021】
尚、収縮処理に関しては、例えば、酒井幸市著“ディジタル画像処理の基礎と応用”第2版,ISBN4-7898-3707-6,CQ出版社,2004年2月1日発行,P.50-P.51等に述べられている。
【0022】
次に、ステップS150では、ステップS140で得られた収縮処理済の2値画像を公知の膨張法に従い膨張処理する。即ち、注目画素位置の画素を中心画素とし、その周囲の8画素とからなる3×3のウィンドウで対象2値画像域をラスター走査する。同3×3の9画素からなるウィンドウ内で、周囲の8画素の中で1画素でも黒画素なら注目画素も黒画素とし(膨張させ)、周囲の8画素全てが白画素の場合には注目画素の値は変化させない。2値画像のベクトル処理対象範囲内をラスター走査での次の画素位置に注目画素位置を移し、ベクトル処理対象領域内全ての画素に対して同処理を繰り返す。そして、前記、ステップS140で、ラスター走査による一連の収縮処理を繰り返した回数kと同数回、ラスター走査による一連の収縮処理を繰り返す。一回のラスター走査による膨張処理において黒領域の白領域の境界画素がそれぞれ1画素ずつ膨張され、基本的に、黒領域は縦方向と横方向にそれぞれ2×k画素ずつ太められ、ステップS140の収縮処理にて消滅していなかった部分に関しては、ステップS140で削られた分が再度付与されることになる。ステップS150を終えるとステップS160に進む。
【0023】
ステップS140における収縮処理が、2回のラスター走査により繰り返された場合には、ステップS150における膨張処理も、2回のラスター走査により繰り返される。図3(d)は、ステップS150における膨張処理の1回目のラスター走査が終了した時点の処理結果画像を表しており、図3(e)は、図3(d)を入力として2回目のラスター走査による膨張処理を終了した時点の処理結果画像を示している。k=2の場合は、この図3(e)がステップS150の出力結果となる。
【0024】
尚、膨張処理に関しては、例えば、酒井幸市著“ディジタル画像処理の基礎と応用”第2版,ISBN4-7898-3707-6,CQ出版社,2004年2月1日発行,P.50-P.51等に述べられている。
【0025】
ステップS160では、ステップS120で得られた2値画像とステップS140、ステップS150により得られた収縮・膨張処理結果画像とから、輪郭(アウトライン)ベクトル処理の対象とすべき成分画像を抽出する。即ち、ステップS150での結果として得られた2値画像とステップS120で得られていた2値画像とを重ね合わせたときに対応する位置にある画素毎に論理積をとって得られる画像をもって、輪郭(アウトライン)ベクトル処理の対象とすべき成分画像とする。先の図3の例では、ステップS120で得られた2値画像である図3(a)と、ステップS150の出力結果である図3(e)との画素ごとの論理積をとって得られる画像である図3(f)を生成し、この図3(f)をもって輪郭(アウトライン)ベクトル処理の対象とすべき成分画像とする。
【0026】
ステップS170では、ステップS120で得られた2値画像とステップS160で得られた輪郭(アウトライン)ベクトル処理の対象とすべき成分画像とから、線芯(ラインアート)ベクトル処理の対象とすべき成分画像を抽出する。即ち、ステップS160での結果として得られた2値画像とステップS120で得られていた2値画像とを重ね合わせたときに対応する位置にある画素毎に排他的論理和をとって得られる画像をもって、線芯(ラインアート)ベクトル処理の対象とすべき成分画像とする。先の図3の例では、ステップS120で得られた2値画像である図3(a)と、ステップS160の出力結果である図3(f)との画素ごとの排他的論理和をとって得られる画像である図3(g)を生成し、この図3(f)をもって輪郭(アウトライン)ベクトル処理の対象とすべき成分画像とする。
【0027】
次に、ステップS180では、ステップS160で得られた輪郭(アウトライン)ベクトル処理の対象とすべき成分画像に対して、輪郭(アウトライン)ベクトル処理を行う。輪郭(アウトライン)ベクトル処理に関しては、例えば、特許文献3(特許第3049672号)によるベクトル化を行う。即ち、2値画像からアウトラインベクトルを抽出し、該抽出したアウトラインベクトル表現の状態で所望の倍率(任意)で滑らかに変倍されたアウトラインベクトルを作成する。ここで、2値画像からアウトラインベクトルを抽出する方法としては、一例として、特許文献1(特許第3026592号)や特許文献2(特開平05−108823)で開示される方法が用いられる。
【0028】
ステップS190では、ステップS170で得られた線芯(ラインアート)ベクトル処理の対象とすべき成分画像に対して、細線化処理を施す。細線化処理とは、スキャナ等で読み込んで得られるイメージデータを2値化した後、その線幅が1になるように細めていく処理である。
【0029】
細線化処理には、公知のHilditch法による細線化手法を用いる。即ち、注目画素位置の画素を中心画素とし、その周囲の8画素とからなる3×3のウィンドウ内を予め用意されたマスクパターンとの比較することにより細線化による削除対象画素であるかを判定し、削除対象画素の場合には、注目画素位置(x,y)の画素を削除する。即ち、黒画素から白画素に置き換える。一方、削除対象画素ではない場合には、細線化処理範囲内におけるラスター走査での次の画素位置に注目画素位置を移し、細線化対象領域内すべての画素に対して同処理を繰り返す。そして、一回のラスター走査において削除される画素が全く発生しなくなるまで、前記ラスター走査による一連の処理を繰り返す。一回のラスター走査において削除される画素が全く発生しなくなった時点で細線化の処理を完了するいうものである。Hilditch法に関しては、例えば、酒井幸市著“ディジタル画像処理の基礎と応用”第2版,ISBN4-7898-3707-6,CQ出版社,2004年2月1日発行,P.51-P.54等に述べられている。
【0030】
ステップS200では、ステップS190で細線化済の2値画像を入力し、ラインアートベクトル化を行う。即ち、細線化された2値画像を構成する端点や交点間をつなぐ独立した線や閉曲線毎にベクトル化する。即ち、細線化された2値画像を構成する端点や交点間をつなぐ、独立した線や閉曲線のそれぞれから得られる線成分に対応する、線芯化された端点間毎線芯(周回)化済ベクトルを平滑化(関数近似)処理する際に、端点部分に相当するベクトルが、他のベクトルと統合されて端点位置が不明にならぬように、端点部分に相当する部分を明示する始端点・終端点情報を生成する。そして、端点部分に相当する部分が端点として保存される(ベジェ曲線のアンカーポイントとなる)ように補助ベクトルを挿入する。得られた端点間毎補助ベクトル入り(周回)ベクトルに対して、例えば、特開2005-346137に開示される方法で2次や3次のベジェ曲線近似をして、端点や交点間をつなぐ、独立した線や閉曲線部分を残すことで、得られた線幅1の2値画像をそれらの端点や交点間をつなぐ独立した線や閉曲線毎に線芯ベクトル化する。
【0031】
ステップS210では、ステップS180で得られた、輪郭(アウトライン)ベクトル処理の対象とすべき成分画像に対しての輪郭(アウトライン)ベクトルとステップS200にて得られた、線芯(ラインアート)ベクトル処理の対象とすべき成分画像に対しての線芯(ラインアート)ベクトルを統合して、ステップS120で得られたベクトル処理対象である2値画像のベクトルデータとする。
【0032】
ステップS220では、ステップS210で統合して得られたベクトルデータを出力して、一連の処理を終える。
【0033】
<実施形態2>
上記の実施形態1においては、ステップS160において、輪郭(アウトライン)ベクトル処理の対象とすべき成分画像を抽出した後、直ちにステップS170で線芯(ラインアート)ベクトル処理の対象とすべき成分画像を抽出しているが、本発明はこれに限らない。即ち、ステップS160の直後には、実施形態1におけるステップS180の輪郭(アウトライン)ベクトル処理の対象とすべき成分画像に対して、輪郭(アウトライン)ベクトル処理を行い、その後に、実施形態1におけるステップS170の線芯(ラインアート)ベクトル処理の対象とすべき成分画像の抽出を行い、しかる後に、実施形態1におけるステップS190の細線化処理を施し、ステップS200の線芯(ラインアート)ベクトル処理の対象とすべき成分画像に対しての線芯(ラインアート)ベクトル処理を行うように構成しても良い。
【0034】
<実施形態3>
上記の実施形態1および2においては、まず、ステップS160で、ステップS120で得られた2値画像とステップS140、ステップS150により得られた収縮・膨張処理結果画像とから、輪郭(アウトライン)ベクトル処理の対象とすべき成分画像を抽出した。即ち、ステップS150での結果として得られた2値画像とステップS120で得られていた2値画像とを重ね合わせたときに対応する位置にある画素毎に論理積をとって得られる画像をもって、輪郭(アウトライン)ベクトル処理の対象とすべき成分画像とした。そして、その後、ステップS170で、ステップS120で得られた2値画像とステップS160で得られた輪郭(アウトライン)ベクトル処理の対象とすべき成分画像とから、線芯(ラインアート)ベクトル処理の対象とすべき成分画像を抽出するように構成した。即ち、ステップS160での結果として得られた2値画像とステップS120で得られていた2値画像とを重ね合わせたときに対応する位置にある画素毎に排他的論理和をとって得られる画像をもって、線芯(ラインアート)ベクトル処理の対象とすべき成分画像としていた。
【0035】
しかし、本願は、この構成に限らない。即ち、先に、実施形態1におけるステップS170の線芯(ラインアート)ベクトル処理の対象とすべき成分画像を抽出するように構成してもよい。即ち、ステップS150での結果として得られた2値画像とステップS120で得られていた2値画像とを重ね合わせたときに対応する位置にある画素毎に排他的論理和をとって得られる画像をもって、線芯(ラインアート)ベクトル処理の対象とすべき成分画像とし、後に、このステップS170で得られる2値画像に、ステップS120で得られていた2値画像とを重ね合わせたときに対応する位置にある画素毎に排他的論理和をとって得られる画像をもって、輪郭(アウトライン)ベクトル処理の対象とすべき成分画像としてもよい。
【0036】
先の図3の例では、ステップS120で得られた2値画像である図3(a)と、ステップS150の出力結果である図3(e)との画素ごとの排他的論理和をとって得られる画像である図3(g)を生成し、この図3(g)をもって線芯(ラインアート)ベクトル処理の対象とすべき成分画像とする。また、図3(g)と図3(a)との画素ごとの排他的論理和をとって得られる画像である図3(f)を生成し、この図3(f)をもって線芯(ラインアート)ベクトル処理の対象とすべき成分画像としてもよい。
【0037】
<実施形態4>
本発明の目的は前述した実施例の機能を実現するソフトウエアのプログラムコードを記録した記録媒体を、装置に供給し、その装置を構成するCPU(またはMPU)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することとなり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0038】
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVDなどを用いることができる。
【0039】
また、CPUが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施例の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、CPU上で稼動しているOperating System(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施例の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0040】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、画像処理装置に挿入された機能拡張ボードや画像処理装置に接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書きこまれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本願発明を実現する一連の処理手順を表すフローチャート
【図2】本願発明を実施する装置構成例のブロック図
【図3】本願発明を実施した際に得られる一連の処理段階の画像の例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベクトル化処理対象画像を獲得する画像獲得工程と、前記ベクトル化処理対象画像を線芯(ラインアート)ベクトル化する線の幅情報を得る線幅情報獲得工程と、前記線幅情報獲得工程より得られた線幅情報に基づき、前記ベクトル化対象画像から線芯(ラインアート)ベクトル処理対象成分を抽出する線芯(ラインアート)ベクトル処理成分抽出工程と、2値画像を細線化する細線化工程と、前記線芯(ラインアート)ベクトル処理成分抽出工程にて抽出されたベクトル化対象画像から線芯(ラインアート)ベクトル処理対象成分から前記細線化処理工程にて得られた細線化済画像を前記線芯(ラインアート)ベクトル化する線芯(ラインアート)ベクトル処理工程とを有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記請求項1に記載の画像処理方法において、加えて、2値画像を輪郭(アウトライン)ベクトル化する輪郭(アウトライン)ベクトル処理工程を有し、前記ベクトル化対象画像から線芯(ラインアート)ベクトル処理成分抽出工程にて抽出された線芯(ラインアート)ベクトル処理対象成分以外の成分を、前記輪郭(アウトライン)ベクトル処理工程にて輪郭(アウトライン)ベクトル化することを特徴とする画像処理方法。
【請求項3】
前記請求項1もしくは2に記載の画像処理方法において、前記線芯(ラインアート)ベクトル処理成分抽出工程は、前記線幅情報獲得工程より得られた線幅情報に基づき、2値画像の収縮処理と膨張処理を用いて線芯(ラインアート)ベクトル処理対象成分を抽出するものであることを特徴とする画像処理方法。
【請求項4】
ベクトル化処理対象画像を獲得する画像獲得手段と、前記ベクトル化処理対象画像を線芯(ラインアート)ベクトル化する線の幅情報を得る線幅情報獲得手段と、前記線幅情報獲得手段より得られた線幅情報に基づき、前記ベクトル化対象画像から線芯(ラインアート)ベクトル処理対象成分を抽出する線芯(ラインアート)ベクトル処理成分抽出手段と、2値画像を細線化する細線化手段と、前記線芯(ラインアート)ベクトル処理成分抽出手段にて抽出されたベクトル化対象画像から線芯(ラインアート)ベクトル処理対象成分から前記細線化処理手段にて得られた細線化済画像を前記線芯(ラインアート)ベクトル化する線芯(ラインアート)ベクトル処理手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
前記請求項4に記載の画像処理装置において、加えて、2値画像を輪郭(アウトライン)ベクトル化する輪郭(アウトライン)ベクトル処理手段を有し、前記ベクトル化対象画像から線芯(ラインアート)ベクトル処理成分抽出手段にて抽出された線芯(ラインアート)ベクトル処理対象成分以外の成分を、前記輪郭(アウトライン)ベクトル処理手段にて輪郭(アウトライン)ベクトル化することを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
前記請求項4もしくは5に記載の画像処理装置において、前記線芯(ラインアート)ベクトル処理成分抽出手段は、前記線幅情報獲得手段より得られた線幅情報に基づき、2値画像の収縮処理と膨張処理を用いて線芯(ラインアート)ベクトル処理対象成分を抽出するものであることを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
コンピュータ装置が実行可能なプログラムであって、前記プログラムを実行するコンピュータ装置を、前記請求項4〜6のいずれかに記載の画像処理装置として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
前記請求項7に記載のプログラムを記憶したプログラム記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−225653(P2008−225653A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60340(P2007−60340)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】