説明

画像処理方法及び医用画像処理システム

【課題】複数のX線画像を正確に位置合わせして画像劣化の無い一の被写体画像を構成する。
【解決手段】制御装置20では、画像生成装置10から入力された、撮影倍率が異なる各X線画像を撮影倍率が同一となるように拡大補間処理又は縮小補間処理した状態で、各X線画像の重複画像部分が一致するように位置合わせを行う。そして、その重複画像部分の重心位置を求め、拡大補間処理又は縮小補間処理していない元のX線画像において、求めた重心位置に対応する重心位置を求める。次いで、被写体に対応するように元のX線画像において求めた重心位置を一致させて各X線画像を配置し、連結合成することにより、一の被写体画像を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮影により得られたX線画像の画像処理方法及びX線画像をデータ処理する医用画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、サイズが大きい被写体のX線撮影を行う際には、図3に示すように複数枚の蛍光体シートを用いた長尺用のカセッテが用いられている。この長尺用カセッテは、撮影対象とする全ての領域について漏れなく撮影するため、各蛍光体シートの端部を部分的に重ねてその位置を固定した状態で筐体に収めたものである。撮影後、各蛍光体シートに記録されたX線画像を読み取って生成されたデータを処理することにより、蛍光体シートの重複領域に該当する画像部分を重ね合わせて連結し、一の被写体画像を構成することができる(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2002−301055号公報
【特許文献2】特開2002−214747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、各蛍光体シートを重ねているため、各蛍光体シートのX線源までの距離が異なるものとなる。例えば、図3に示すような位置関係で各蛍光体シートL1〜L3が配置されている場合、図4に示すように、X線源側に配置された蛍光体シートL1と、その背面に配置された蛍光体シートL2、L3とでは、X線源からの距離が異なることとなる。そのため、X線源に近い側の蛍光体シートL1によるX線画像(これをX線画像Aとする)と、X線源から遠い蛍光体シートL2、L3によるX線画像(これをX線画像B、Cとする)とでは、X線画像B、Cの方が若干拡大されたものとなる。
【0004】
ここで、X線源から蛍光体シートL1までの距離をH1、蛍光体シートL1と蛍光体シートL2、L3との間の距離をH2とすると、X線画像Aの撮影倍率を基準としたときのX線画像B、Cの撮影倍率の拡大率nは、下記の式により求めることができる。
n=(H1+H2)/H1
【0005】
例えば、H2=2(mm)で、H1=1.5〜2.0(m)の場合、拡大率nは1.0010〜1.0013の範囲となり、X線画像B、CはX線画像Aに比して約0.1〜0.13%拡大されたものとなる。この拡大率nは、X線源からの距離が短いほど大きくなる。
【0006】
すなわち、長尺カセッテを用いて撮影を行った場合、蛍光体シートが重複する部分の画像は完全には一致しないこととなる。そのため、各蛍光体シートL1〜L3から個別に読み取ったX線画像A〜Cを合成する際の位置合わせにおいては、X線画像AをX線画像B、Cに合わせて拡大する、或いはX線画像B、CをX線画像Aに合わせて縮小することが望ましい。
【0007】
しかし、診断精度の観点からすると、このような拡大補間処理又は縮小補間処理を施したX線画像により構成された被写体画像は、画像が劣化してしまうため、好ましくない。
【0008】
本発明の課題は、複数のX線画像を正確に位置合わせして画像劣化の無い一の被写体画像を構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、
端部が部分的に重ね合わされた複数枚の蛍光体シートに亘って、一の被写体のX線画像を記録し、前記複数枚の蛍光体シートのそれぞれから個別に前記X線画像を読み取り、当該読み取られたX線画像を前記被写体に対応させて相互に位置合わせした後、各X線画像を連結する画像処理方法において、
前記読み取られたX線画像の位置合わせに際して当該X線画像に拡大補間処理又は縮小補間処理を施した画像を使用し、前記各X線画像の連結に際しては当該X線画像を使用することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像処理方法において、
前記各X線画像の撮影倍率が同一となるように、当該X線画像に拡大補間処理又は縮小補間処理を施すことを特徴する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の画像処理方法において、
前記X線画像の撮影倍率は、前記複数の蛍光体シートのうち、中央に配置されている蛍光体シートのX線画像の撮影倍率と同一とすることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の画像処理方法において、
前記X線画像の撮影倍率は、前記複数の蛍光体シートのうち、最も被写体に近い位置にある蛍光体シートのX線画像の撮影倍率と同一とすることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4の何れか一項に記載の画像処理方法において、
前記拡大補間処理又は縮小補間処理により撮影倍率が同一とされた各X線画像の重複画像部分が一致するように位置合わせを行い、この位置合わせの結果を元に、前記各X線画像の連結を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、医用画像処理システムにおいて、
端部が部分的に重ね合わされた複数枚の蛍光体シートに亘って、一の被写体のX線画像を記録し、前記複数枚の蛍光体シートのそれぞれから個別に前記X線画像を読み取り、当該読み取られたX線画像を前記被写体に対応させて相互に位置合わせした後、各X線画像を連結処理する際に、
前記読み取られたX線画像の位置合わせに際して当該X線画像に拡大補間処理又は縮小補間処理を施した画像を使用し、前記各X線画像の連結に際しては当該X線画像を使用することを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の医用画像処理システムにおいて、
前記各X線画像の撮影倍率が同一となるように、当該X線画像に拡大補間処理又は縮小補間処理を施すことを特徴する。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の医用画像処理システムにおいて、
前記X線画像の撮影倍率は、前記複数の蛍光体シートのうち、中央に配置されている蛍光体シートのX線画像の撮影倍率と同一とすることを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の医用画像処理システムにおいて、
前記X線画像の撮影倍率は、前記複数の蛍光体シートのうち、最も被写体に近い位置にある蛍光体シートのX線画像の撮影倍率と同一とすることを特徴とする。
【0018】
請求項10に記載の発明は、請求項7〜9の何れか一項に記載の医用画像処理システムにおいて、
前記拡大補間処理又は縮小補間処理により撮影倍率が同一とされた各X線画像の重複画像部分が一致するように位置合わせを行い、この位置合わせの結果を元に、前記各X線画像の連結を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1、2、5、6、7、10に記載の発明によれば、正確に位置合わせを行うことができるとともに、画像劣化の無いX線画像から被写体画像を構成することができ、良好な画質の被写体画像を医師に提供することが可能となる。
【0020】
請求項3、8に記載の発明によれば、中央に配置された蛍光体シートは、その一端又は両端が常に他の蛍光体シートのX線画像と重複しているため、この中央の蛍光体シートのX線画像を基準として撮影倍率を調整することにより、位置合わせを容易にすることができる。
【0021】
請求項4、9に記載の発明によれば、最も被写体に近い蛍光体シートのX線画像は、被写体の実際のサイズ(実サイズ)に近いため、このX線画像を基準として撮影倍率を調整することにより、実サイズに近い撮影倍率で位置合わせを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
まず、構成を説明する。
図1に、医用画像処理システム1のシステム構成を示す。
この医用画像処理システム1は、被写体(患者)の検査撮影を行い、撮影により得られた医用画像に各種画像処理を施した後、モニタ又はフィルムに出力して医師にその医用画像を提供するものである。
【0023】
図1に示すように、医用画像処理システム1は、画像生成装置10、制御装置20、読影端末30、フィルム出力装置40を備えて構成されている。各装置10〜40は通信ネットワークNを介して接続されている。通信ネットワークNは、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)規格が適用されている。
【0024】
以下、各構成装置10〜40について説明する。
画像生成装置10は、被写体のX線画像(医用画像)のデジタルデータを生成するものである。画像生成装置10としては、FPD(Flat Panel Detector)、カセッテ専用の読取装置、フィルムデジタイザ等のデータ生成機能を備えたものだけでなく、撮影機能とデータ生成機能を備えたCR(Computed Radiography)、CT(Computed Tomography)、MRI(Magnetic Resonance Imaging)等の各種モダリティも含まれる。本実施形態では、画像生成装置10として、X線撮影に係るカセッテ専用の読取装置の例を説明する。
【0025】
画像生成装置10は、制御装置20から入力される読取指示情報に従って、カセッテ内に収納される蛍光体シートから被写体のX線画像を読み取る処理を実行し、当該読み取られたX線画像を、読取指示を行った制御装置20に送信する。
【0026】
制御装置20は、図示しないRIS(Radiology Information System;放射線科内の情報を一括管理する情報システム)やHIS(Hospital Information System;病院内の情報を一括管理する情報システム)に接続可能であり、これら情報システムから撮影に関する指示情報である撮影オーダ情報を受信する。撮影オーダ情報とは、医師からの依頼を受け付けて発行されたものであり、撮影対象の患者の患者ID、氏名、性別等の患者情報や、検査を区別するための検査ID、その検査で指定された撮影部位、撮影方法等の検査に関する検査情報等を含むものである。
【0027】
制御装置20は、この撮影オーダ情報に従って、画像生成装置10における読み取り処理に関する指示情報を生成し、画像生成装置10に送信する。そして、画像生成装置10から読み取られた医用画像を取得すると、当該医用画像に対応する撮影オーダ情報をその医用画像のヘッダに書き込む等して、医用画像に付帯させることにより、各医用画像のデータベース及び管理を行う。
【0028】
読影端末30は、医師が医用画像を読影するための表示装置であり、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示手段を備えて、制御装置20により配信された医用画像を表示手段上に表示する。
【0029】
フィルム出力装置40は、制御装置20により配信された医用画像をフィルム上に出力する出力手段である。フィルム出力装置40は、複数のサイズのフィルムに出力可能であり、制御装置20から医用画像とともに受信された出力制御情報に従って、指定されたサイズのフィルムの指定された出力条件で医用画像を出力する。
【0030】
次に、本発明に係る処理動作を行う制御装置20についてさらに説明する。
図2は、制御装置20の内部構成を示す図である。
図2に示すように、制御装置20は、制御部21、操作部22、表示部23、通信部24、プログラムメモリ25、画像メモリ26を備えて構成されている。
【0031】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等から構成され、プログラムメモリ25に記憶される制御プログラムに従って各部による処理の実行を統括的に制御する。
【0032】
操作部22は、キーボードや、表示部23と一体に構成されるタッチパネル、マウス等を備えて構成される操作手段であり、これらの操作に対応する操作信号を生成して制御部21に出力する。
【0033】
表示部23は、LCD等を備えて構成される表示手段であり、制御部21の表示制御に従って各種操作画面や、制御部21による処理結果等を表示する。
【0034】
通信部24は、NIC(Network Interface Card)、モデム等により構成され、画像生成装置10,読影端末30等の通信ネットワークN上の外部装置とデータの送受信を行う。
【0035】
プログラムメモリ25は、各種制御プログラムやそれらプログラムの実行に必要なパラメータ、或いはプログラムの実行により処理されたデータ等を記憶する。
【0036】
画像メモリ26は、大容量メモリから構成され、X線画像、或いは合成画像をデータベース化して記憶する。
【0037】
次に、上記構成の医用画像処理システム1の動作について説明する。
まず、医用画像処理システム1では、RIS、HIS等において発行された撮影オーダ情報が制御装置20において表示され、この表示された撮影オーダ情報に従って技師の撮影操作により対象患者のX線撮影が行われる。本実施形態では、脚部等、サイズが大きい部位について撮影を行うため、検出器である3枚の蛍光体シートを有する長尺カセッテを用いることとする。
【0038】
3枚の蛍光体シートは、図3に示すようなカセッテ筐体5に収められて撮影に用いられる。全ての被写体領域にわたって漏れ無く撮影を行うため、各蛍光体シートL1〜L3は、図3に示すようにその端部が他の蛍光体シートL1〜L3と相互に重なるように配置される。なお、図示しないがカセッテ筐体2は内部に配置された蛍光体シートL1〜L3の位置を固定するためのホルダ等の保持手段が設けられている。
【0039】
図4に、図3に示す蛍光体シートL1〜L3をD1方向から見た図を示す。なお、図4に示すD2方向から見た図が図3に相当する。
図4に示すように、蛍光体シートL1はX線源に対して最も近い位置に配置され、その後方に蛍光体シートL2、L3が配置される。蛍光体シートL2及びL3はX線源までの距離が同一である。蛍光体シートL1と、L2及びL3とではX線源までの距離が異なるため、各蛍光体シートL1〜L3における撮影倍率は異なるものとなる。なお、撮影倍率とは、蛍光体シートに記録された像の大きさと、被写体の実際の大きさの比率をいう。各蛍光体シートL1〜L3はX線が照射される被写体の背面に配置されるため、それらのX線画像の撮影倍率は、少なくとも1以上の値をとることとなる。
【0040】
ここで、X線源から蛍光体シートL1までの距離をH1、蛍光体シートL1と蛍光体シートL2及びL3との間の距離をH2とすると、蛍光体シートL1のX線画像に対する蛍光体シートL2、L3のX線画像の撮影倍率の拡大率nは、下記式(1)により求められる。
n=(H1+H2)/H1・・・(1)
すなわち、蛍光体シートL1に記録されるX線画像と、蛍光体シートL2、L3に記録されるX線画像とは1:nの関係にあり、蛍光体シートL2及びL3に記録されたX線画像は、蛍光体シートL1に記録されたX線画像に対し、n倍だけ拡大された画像となっている。
【0041】
技師は、このような3枚の蛍光体シートを収めたカセッテ上に被写体の撮影部位をセットし、X線撮影装置によりX線撮影を行う。そして、撮影後、カセッテ筐体2から蛍光体シートL1〜L3を取り出して順に画像生成装置10に装填する。
【0042】
画像生成装置10では、蛍光体シートL1〜L3に記録されたX線画像の読取処理が行われ、各蛍光体シートL1〜L3から読み取られたX線画像のデジタルデータが生成される。この3つのX線画像は、画像生成装置10においてその読取条件等の画像生成に関する情報が付帯された後、制御装置20へ送信される。
なお、説明の便宜上、蛍光体シートL1からのX線画像をA、蛍光体シートL2からのX線画像をB、蛍光体シートL3からのX線画像をCとする。
【0043】
制御装置20では、画像生成装置10から送信された各X線画像A〜Cが一旦画像メモリ26に保存された後、それらX線画像A〜Cから一の被写体画像を形成するために各X線画像A〜Cを連結合成する連結処理が行われる。
以下、図5を参照して本発明に係る連結処理について説明する。
【0044】
図5に示す連結処理では、まず各X線画像A〜Cの撮影倍率を同一とするために、制御部21においてX線画像A〜Cから同一倍率の処理画像の作成が行われる(ステップS1)。ここでは、3枚の蛍光体シートL1〜L3のうち、中央に配置された蛍光体シートL1のX線画像Aの撮影倍率を基準として他のX線画像B、Cの撮影倍率を調整する。撮影時には、診察に重要な部分が中央部となるように被写体がセットされることが一般的であるため、中央に配置された蛍光体シートL1からのX線画像Aは、被写体画像を形成するためにその画像全体が使用されることが多い。また、蛍光体シートL1は他の蛍光体シートL2、L3の何れとも重ね合わされている。よって、X線画像Aを基準とすることにより、他のX線画像B、Cとの位置合わせが容易となる。
【0045】
図6(a)に、X線画像Aの撮影倍率に合わせてX線画像Bを倍率1/nで縮小補間処理した様子を示す。この縮小補間処理により生成された処理画像BRは、X線画像Aと同一倍率となっている。なお、X線画像Cについては、X線画像Bと同様の処理がなされるものであるため、図6での図示は省略する(図8及び図9においても同様)。また、ここでは、撮影倍率が最小のX線画像Aに合わせるため、縮小補間処理を施したが、撮影倍率が大きいX線画像に合わせる場合は拡大補間処理を施して処理画像を作成すればよい。
【0046】
次に、X線画像Aと、処理画像BR、CRとの位置合わせが制御部21により行われる。
蛍光体シートL1〜L3は部分的に重ねられていたため、各X線画像A〜Cには重複する画像部分がそれぞれ含まれるはずである。よって、図6(b)に示すように、X線画像Aと処理画像BRにおいて、重複画像部分が一致するように制御部21により位置合わせが行われる(ステップS2)。
【0047】
位置合わせの手法は特に限定せず、例えば特開2000−275761号公報に記載のように、X線画像Aにおいて蛍光体シートL1〜L3の重複領域を検出し、この重複領域に該当する画像部分をテンプレートとして、処理画像BR、CRにおいてテンプレートマッチングを行うことにより重複画像部分を検出し、これを元に位置合わせを行うこととしてもよい。
また、X線画像Aにおいて検出した重複画像部分と、処理画像BR、CRとで画素値の差が最小となる画像部分を検出して位置合わせを行っても良い。
【0048】
さらに、自動で位置合わせ処理を行うのではなく、技師のマニュアル操作により目視で位置合わせが可能な構成としてもよい。この場合、図7に示すような操作画面を表示部23上に表示し、この操作画面上に画像A、BR、CRをそれぞれ表示するとともに、その画像A、BR、CRを重ねて表示した連結画像Fを表示する。そして、連結画像Fを構成する各画像A、BR、CRの位置を操作部22を介して移動可能としておき、操作部22による移動操作に応じて各画像A、BR、CRの位置を移動させて位置合わせを行う。
【0049】
位置合わせが行われると、図6(c)に示すように、各画像A、BR、CRにおいてその重複画像部分の重心が制御部21の演算により求められる(ステップS3)。ここで、X線画像Aの重心をGとし、その位置情報をX、Y座標によりG(XA、YA)で表す。なお、X座標は画像の読取時の主走査方向、Y座標は副走査方向に対応するものである。また、処理画像BR、CRの重心をそれぞれGBR、GCRとし、その位置情報をGBR(XB、YB)、GCR(XC、YC)とする。
【0050】
次いで、図8に示すように、求めた重心GBR、GCRの位置情報を基に、縮小補間処理を施していない元のX線画像B、Cにおいて、その重心GBR、GCRに対応する重心G、Gの位置情報が求められる(ステップS4)。各処理画像BR、CRは、X線画像B、Cを倍率1/nで縮小補間処理したものであるので、G、Gの重心位置は、G(nXB、nYB)、G(nXC、nYC)で表すことができる。
【0051】
各X線画像A〜Cにおける重心G〜Gの位置が求められると、制御部21において、図9(a)に示すように重心GとGの各重心位置が一致するように(X線画像Cの場合はX線画像AとCの重複部分で求められた重心GとG)、各X線画像A〜Cが配置され、位置合わせが行われる(ステップS5)。次いで、図9(b)に示すように、X線画像B、Cにおいて、X線画像Aと重複する画像部分についてトリミングが行われて削除された後、各X線画像A〜Cが連結合成され、一枚の被写体画像が形成される(ステップS6)。
【0052】
以上のようにして作成された被写体画像は、読影端末30に送信される又はフィルム出力装置40に送信され、医師の読影に付される。なお、フィルム出力装置40により被写体画像を出力する際には、被写体画像のサイズが規定のフィルムサイズを超えていると考えられるため、各X線画像A〜C(X線画像B、Cについてはトリミングされた画像)毎に送信することとしてもよい。技師がX線画像A〜Cが出力された各フィルムを接着等することにより被写体画像を再構成することができる。
【0053】
以上のように、本実施形態によれば、撮影倍率が異なる各X線画像を一旦同一の撮影倍率にした状態で位置合わせを行い、その位置合わせの結果を元にX線画像の位置合わせを行う。これにより、画像劣化のない元のX線画像から被写体画像を構成することができ、また被写体画像を構成する各X線画像を正確に位置合わせすることができる。
【0054】
なお、上述した説明では、各蛍光体シートL1〜L3から読み取られたX線画像の位置合わせ及び連結処理を制御装置20において行う構成としたが、医用画像処理システム1の構成装置の何れで行ってもよく、またその処理専用の装置を新たに設けることとしてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、検出器として蛍光体シートを適用した例を説明したが、これに限らず、FPD(Flat Panel Detector)等の他の検出器を用いる場合でも本発明を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】医用画像処理システムのシステム構成を示す図である。
【図2】図1の制御装置の内部構成を示す図である。
【図3】複数の蛍光体シートが収容されたカセッテの内部透視図を示す図である。
【図4】図3のカセッテを異なる方向から見た図である。
【図5】制御装置により実行される画像処理を説明するフローチャートである。
【図6】各蛍光体シートから読み取られたX線画像を連結して一の被写体画像を構成する手順を説明する図である。
【図7】各X線画像の位置合わせ操作を行うための操作画面例を示す図である。
【図8】各蛍光体シートから読み取られたX線画像を連結して一の被写体画像を構成する手順を説明する図である。
【図9】各蛍光体シートから読み取られたX線画像を連結して一の被写体画像を構成する手順を説明する図である。
【符号の説明】
【0057】
1 医用画像処理システム
10 画像生成装置
20 制御装置
21 制御部
22 操作部
23 表示部
25 プログラムメモリ
30 読影端末
40 フィルム出力装置
L1〜L3 蛍光体シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部が部分的に重ね合わされた複数の検出器に亘って、一の被写体のX線画像を記録し、前記複数の検出器のそれぞれから個別に前記X線画像を読み取り、当該読み取られたX線画像を前記被写体に対応させて相互に位置合わせした後、各X線画像を連結する画像処理方法において、
前記読み取られたX線画像の位置合わせに際して当該X線画像の少なくとも1つに拡大補間処理又は縮小補間処理を施した画像を使用し、前記各X線画像の連結に際しては当該X線画像を使用することを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記各X線画像の撮影倍率が同一となるように、当該X線画像に拡大補間処理又は縮小補間処理を施すことを特徴する請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記X線画像の撮影倍率は、前記複数の検出器のうち、中央に配置されている検出器のX線画像の撮影倍率と同一とすることを特徴とする請求項2に記載の画像処理方法。
【請求項4】
前記X線画像の撮影倍率は、前記複数の検出器のうち、最も被写体に近い位置にある検出器のX線画像の撮影倍率と同一とすることを特徴とする請求項2に記載の画像処理方法。
【請求項5】
前記拡大補間処理又は縮小補間処理により撮影倍率が同一とされた各X線画像の重複画像部分が一致するように位置合わせを行い、この位置合わせの結果を元に、前記各X線画像の連結を行うことを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載の画像処理方法。
【請求項6】
端部が部分的に重ね合わされた複数の検出器に亘って、一の被写体のX線画像を記録し、前記複数の検出器のそれぞれから個別に前記X線画像を読み取り、当該読み取られたX線画像を前記被写体に対応させて相互に位置合わせした後、各X線画像を連結処理する際に、
前記読み取られたX線画像の位置合わせに際して当該X線画像の少なくとも1つに拡大補間処理又は縮小補間処理を施した画像を使用し、前記各X線画像の連結に際しては当該X線画像を使用することを特徴とする医用画像処理システム。
【請求項7】
前記各X線画像の撮影倍率が同一となるように、当該X線画像に拡大補間処理又は縮小補間処理を施すことを特徴する請求項6に記載の医用画像処理システム。
【請求項8】
前記X線画像の撮影倍率は、前記複数の検出器のうち、中央に配置されている検出器のX線画像の撮影倍率と同一とすることを特徴とする請求項7に記載の医用画像処理システム。
【請求項9】
前記X線画像の撮影倍率は、前記複数の検出器のうち、最も被写体に近い位置にある検出器のX線画像の撮影倍率と同一とすることを特徴とする請求項7に記載の医用画像処理システム。
【請求項10】
前記拡大補間処理又は縮小補間処理により撮影倍率が同一とされた各X線画像の重複画像部分が一致するように位置合わせを行い、この位置合わせの結果を元に、前記各X線画像の連結を行うことを特徴とする請求項7〜9の何れか一項に記載の医用画像処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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