説明

画像処理方法

【課題】 スキャナで読取られた画像から原稿領域を抽出する際に、反射光過多の部分が原稿画像の外側に生じて、原稿が大きく抽出されてしまうことを防止する。
【解決手段】 スキャナで読取られた画像から、原稿領域の片側に生じる反射光過多の明領域を検出し、原稿領域を決定する際に、原稿領域から除く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャナなどの画像読取装置を用いて読取られた画像から原稿領域を抽出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザが写真などの原稿を原稿台に置き、スキャナで読み込んだ原稿台全面の画像に対して、エッジ抽出処理や輝度彩度判定処理を行い、原稿のエッジを抽出して、原稿以外の領域を除去した原稿のみの画像データを作成している。原稿の置かれた位置や、傾きを検出して、原稿の画像を抽出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−170405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スキャナで原稿を読み込む際、原稿のエッジ付近に影によって黒くなったり、反射光が過多になって白くなったりすることがある。通常、スキャナの照射光は原稿に対して斜めから照射するため、原稿のエッジにこうした影や反射光過多の現象が発生してしまう。影に関してはその除去方法が過去提案されているが、反射光過多に関する補正は為されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するために、原稿台に載置した原稿を、走査の上流側または下流側から照明しながらラインセンサを走査することにより読取って得た前記原稿の画像を含む原稿台画像から、前記原稿の画像を抽出する画像処理方法であって、前記原稿台画像のエッジを抽出し、前記エッジから原稿の仮領域を設定する設定工程と、前記仮領域の画像で、前記走査方向の上流側または下流側の照明の側のエッジ部で、前記ラインセンサへの入射光が過多の明るい領域を検出する明領域検出工程と、前記仮領域から前記過多の領域を除くことで前記原稿の領域を決定する決定工程とを有することを特徴とする画像処理方法である。
【発明の効果】
【0006】
原稿台に載置された原稿を読取った際に、斜めからの照明に起因する原稿からの反射光が過多の部分の画像を補正し、原稿により忠実な画像データを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明を適用した画像処理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】スキャナの原稿読取りを示す図である。
【図3】原稿台全面画像に対して、エッジ抽出処理を行った図である。
【図4】原稿の照り返しが発生するメカニズムを示す図である。
【図5】原稿の照り返しの幅を示す図である。
【図6】原稿の影が発生するメカニズムを示す図である。
【図7】原稿の表面反射によるフレアを示す図である。
【図8】原稿が副走査方向に対して垂直に置かれた場合の照射光を示す図である。
【図9】原稿が副走査方向に対して傾いて置かれた場合の照射光を示す図である。
【図10】本発明の処理のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0009】
本実施形態におけるシステムの概略の一例を図1に示す。コンピュータ100には、スキャナ104が接続されている。コンピュータ100は、画像処理ソフトウエア等のアプリケーションソフトウエア101と、OS(Operating System)102、モニタ109を備える。スキャナ104でスキャンした画像データをOS102に転送するスキャナドライバ103をソフトウエアとして持つ。OS102に入力されたスキャン画像データは、アプリケーション101によって画像処理が行われる。コンピュータ100は、これらアプリケーションが動作可能な各種ハードウエアとしてハードディスクドライブHD105、中央演算処理装置CPU106、ランダムアクセスメモリRAM107、リードオンリーメモリROM108等を備える。
【0010】
コンピュータ100では、モニタ109に表示された表示画像に基づき、アプリケーション101で、スキャナ104に撮像命令を行い、スキャナドライバ103を介してスキャナ104の原稿台に載置された原稿を光学的に読み込む。スキャンされた入力画像データは再びスキャナドライバ103を介してアプリケーション101に転送される。
【0011】
最初に、スキャナ104が原稿を読取るメカニズムについて、図2に説明する。図2において、原稿台となるガラス板203の上に原稿202を下向きに置く。その上から圧板シート201をかぶせて原稿202を押さえつける。次に、スキャナ104の内部にあるラインセンサ204と光源からの光を原稿上にライン状に導く導光体205が一体となったセンサーユニット206が図2の左方向(上流側)から右方向(下流側)へ移動する。ここでは、下流側から原稿を照明している構成である。この移動方向を、読取りの副走査方向とする。また、副走査方向に対して本図面の奥へ垂直な方向を主走査方向とする。センサーユニット206は紙面の奥に長く、主走査方向に平行である。
【0012】
次に、導光体205から原稿に約45度の角度で光を照射する(照射光207)。照射光207がガラス板203を通過し、原稿202に反射する。その反射光のうち、原稿202からの垂直成分をラインセンサ204が受光して、その強度を電気信号に変換する。この状態でセンサーユニット206が副走査方向へ一定の速度で移動していき、原稿を読取って逐次画素を形成していく。主走査方向、または副走査方向の読取る範囲は、ユーザが指定した範囲で読み込むことができる。
【0013】
こうしてスキャンして得られた原稿台画像に対して、次に原稿の領域抽出を行う。これは一般的に知られたラプラシアンフィルタやソーベルフィルタなどのエッジ抽出フィルタで原稿のエッジを抽出る。ところが、この時に図2における原稿の上端エッジ208には原稿の影が、下端エッジ209には原稿の照り返しが発生する。影は原稿の上端エッジ208に沿って黒く存在し、照り返しは下端エッジ209に沿って白く存在する。これらがエッジ抽出されると、図3に示す様に、原稿が通常より大きく抽出されてしまう。図3(a)は原稿台全面をスキャンしたときの画像であり、301が影、302が原稿の領域、303が照り返しの領域で、304は圧板シート201の部分である。図3(b)はそれをエッジ抽出処理した画像である。図3(b)では黒い部分305がエッジ領域、白い部分が非エッジ領域となる。原稿台に置かれた原稿を抽出する際、通常は最も外側のエッジを抽出して、その領域を仮の原稿領域(仮領域)と設定する。こうすることで、フチあり写真などの原稿であっても、フチを正確に抽出することができる。
【0014】
次に、実際の原稿よりも原稿または原稿台からの反射光が過多にラインセンサに入射光として入力した明領域である照り返しの発生原因について図4に説明する。照射光207が原稿202に反射して、その反射光の大部分210は図4のような光路を取るが、そのうち垂直に反射した光がラインセンサ204に届く。こうしてラインセンサ204が反射光を受光しながら、センサーユニット206は副走査方向に移動しくが、原稿202から外れた位置(ユニット位置B)まで来た場合、照射光207は原稿202の側面に当たる。そこで反射した光は圧板シート201に反射し、そのうち垂直に反射した光がラインセンサ204に届くことになる。この場合、照射光207の大部分がラインセンサ204に受光されるため、ユニット位置Aに比べてユニット位置Bの方が受光量が多くなる。その結果、原稿のエッジから外れた位置では通常より明るく読取られてしまう。これが照り返しとなる。通常、導光体205から照射される照射光207は、照射方向を中心にバラツキを持っている。図4において、照射光の広がりを点線の矢印として表している。これは、原稿の実際の領域の端部の外側に生じる。なお、上記では、副走査方向の下流側から原稿が照明されるとして説明したが、副走査方向の上流側から照明することもできる。その場合は、原稿の上流側に照り返しの明領域が生じ、下流側に影の領域が生じる。
【0015】
次に、照り返しが発生する幅について説明する。なお、ここでは圧板シート201の色が白などの光を十分反射するものである場合を説明する。圧板シート201が例えば黒く、光が十分反射しない場合は、照り返しはほとんど発生しない。照り返し幅を決定する要因として、主に原稿の厚さ、原稿のエッジ付近の輝度、原稿が矩形の場合はその傾きがある。
【0016】
原稿の厚さと照り返し幅の関係について図5を用いて説明する。照り返しは、導光体205からの照射光207が原稿202の側面に反射し、圧板シート201に反射してラインセンサ204に届く。また、照射光207は任意の広がり角を持っている。図5は、原稿202の側面と圧板シートに反射してラインセンサ204に届く光路を示した図である。図5(a)は、照り返しが発生する中で、センサーユニット206が最も左にある場合を示している。この場合、照射光207の中心(実線の矢印)より上側に広がる照射光(点線の矢印)が原稿202の側面と圧板シート201に反射している。一方、図5(b)は、照り返しが発生する中で、センサーユニット206が最も右にある場合を示している。この場合、照射光207の中心(実線の矢印)より下側に広がる照射光(点線の矢印)が原稿202の側面と圧板シート201に反射している。図5(a)におけるセンサーユニット206の位置から、図5(b)におけるセンサーユニット206の位置までの距離が照り返し幅211となる。図5からわかるように、原稿202の厚さが大きいと、照射光207が原稿の側面に当たるセンサーユニット206の移動量が大きくなる。そのため、照り返し幅211はスキャン画像データにおいて大きく撮像されてしまう。逆に、原稿202の厚さが小さいと照射光207が原稿の側面に当たる間のセンサーユニット206の移動量は小さくなり、その結果照り返し幅211は小さく撮像されることになる。
【0017】
照り返し幅211を求めるためには、上述した原稿202の厚さを算出する必要がある。ここでは、照り返しと反対側に発生する原稿の影を用いて、原稿202の厚さを算出する。図2のように、センサーユニット206が副走査方向(原稿台の左端から右端)に移動する際に、原稿202の下端エッジ209に照り返しが発生するが、原稿202の上端エッジ208には影が発生する。この影の発生するメカニズムについて図6を用いて説明する。
【0018】
図6は、図4とは逆に、原稿の上端エッジ208を拡大した図である。導光体205が図中のユニット位置Cにある場合、原稿202が照射光207を遮って、光が当たらない領域ができて、これが影となる。スキャン画像データにおいては、この影領域212が暗く撮像される。ここで、照射光207の照射角は一般に45度である、この影領域212の幅を測定すれば、図6に示すように原稿202の厚さが算出され影検出ができる。こうしてスキャン画像データから算出された原稿202の厚さを用いることで、原稿202の側面に反射する要因の照り返し幅211を算出することができる。
【0019】
次に、原稿のエッジ付近の輝度と照り返し幅の関係について図7を用いて説明する。照射光207は広がり角を持っているが、照射光207の中心が原稿202の側面に当たる場合でも、照射光207が広がりを持っているため、エッジ付近の原稿表面213に光が当たる。そのうち、フレア214として反射光がラインセンサ204に受光され、結果としてスキャン画像データの照り返し幅が大きくなる。ここで、エッジ付近の原稿表面213の輝度が高いとその反射光は強くなり、輝度が低いとその反射光は弱くなる。すなわち、エッジ付近の原稿表面213の輝度に応じて照り返し幅が変わってくる。この関係は、照射光207がエッジ付近の原稿表面213と原稿202の側面の両方に当たるセンサーユニット位置において、エッジ付近の原稿表面213の輝度とラインセンサ204に受光する反射光の関係を測定して求める。
【0020】
このエッジ付近の原稿表面213の輝度と、前述した原稿202の厚さの2つの要因から、原稿202が副走査方向に対して垂直に置かれた場合の照り返し幅を算出する。その算出方法は、原稿202の厚さ、照射光207の照射角、照射光207の広がり角、ガラス板203の透過率、照り返し領域における圧板シート201の勾配、エッジ付近の原稿表面213の輝度とラインセンサ204に受光する反射光の関係から物理的に求められる。しかし、これをスキャン毎にスキャナドライバ103で算出するのは処理時間がかかってしまう。上記要素のうち、原稿202の厚さとエッジ付近の原稿表面213の輝度以外はスキャナの個体毎に既知であり、予め算出した照り返し幅をテーブル形式で保持しておくことが望ましい。すなわち、原稿202の厚さは、原稿の影領域212から物理的に求められる。エッジ付近の原稿表面213の輝度はスキャン画像データから求められる。この2つの値を予め保持しているテーブルと参照することで、原稿202が副走査方向に対して垂直に置かれた場合の照り返し幅を得ることができる。
【0021】
照り返し幅を決定する3つ目の要因として、原稿が矩形の場合はその傾きがある。これらと照り返し幅の関係について、図8〜10を用いて説明する。図4において、照り返しは照射光207が原稿202の側面に反射することで発生すると上述した。図8〜10は原稿202を真上から見た図である。
【0022】
図8と図9で原稿が矩形の場合を説明する。図8のように、照射光207が当たる原稿202の側面が、センサーユニット206の長軸方向(主走査方向)に対して平行の場合、反射光は図4のような光路となり、照り返しが発生する。ところが、図9のように、原稿202が主走査方向に対して傾いて置かれた場合、原稿202の側面に当たった照射光207は正反射せず、原稿のエッジに沿って散乱してしまう。その結果、図8に比べてセンサーユニット206が受光する光量が少なくなり、照り返しが弱まってしまう。したがって、このように矩形の原稿が傾いて置かれた場合は、主走査方向に平行して置かれた場合に比べて、照り返し幅も小さくなるのである。ここで、原稿が90°傾く(副走査方向と平行になる)と照り返し量は0となる。つまり、原稿の傾き角度が小さければ、照り返し幅は大きく、逆に原稿の傾き角度が大きくなれば、照り返し幅は小さくなる。
【0023】
原稿が円形の場合には、円周の各部分の接線方向の傾きが、矩形原稿の傾きに相当する。この場合、円周の部分毎に傾きの角度が異なるので、円周の部分ごとに異なる補正を行う。
【0024】
以上述べてきた処理をスキャナドライバ103で行う処理フローを図11に示す。初めに、S1001でスキャンされた画像からエッジ抽出処理などで原稿領域を抽出する。S1002で上端エッジの影幅を求め、S1003で原稿の厚さを算出する。次にS1004で照り返し幅を算出する。照り返し幅に照り返し補正係数を乗算することで、S1005で明領域検出の最終的な照り返し幅を決定する。補正係数として、別途求めた原稿の傾きから上記の説明に従って幅を小さくし、原稿のエッジ付近の輝度からさらに、補正の係数を求める。このように幅が算出された照り返し領域を、S1006で、抽出された原稿画像から除去することで、原稿領域を修正し、正確な原稿を得ることができる。補正係数として、別途求めた原稿の傾きから上記の説明に従って幅を小さくし、原稿のエッジ付近の原稿の下地の画素値からさらに、補正の係数を求める。
【0025】
なお、上記では、スキャナ装置104とコンピュータ100を接続したシステムにおいて、コンピュータ100で画像処理を行うことで説明した。この場合、本発明の処理をプログラムとして記録媒体に記録しておき、この記録媒体のプログラムをコンピュータで読取って本発明の処理を実行させることになる。また、スキャナ装置と画像処理装置が一体となったMFP装置のファームウエアで本発明の処理を実行することもできる。
【符号の説明】
【0026】
100 コンピュータ
104 スキャナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿台に載置した原稿を、走査の上流側または下流側から照明しながらラインセンサを走査することにより読取って得た前記原稿の画像を含む原稿台画像から、前記原稿の画像を抽出する画像処理方法であって、
前記原稿台画像のエッジを抽出し、前記エッジから原稿の仮領域を設定する設定工程と、
前記仮領域の画像で、前記走査方向の上流側または下流側の照明の側のエッジの部分で、前記ラインセンサへの入射光が過多の明るい領域を検出する明領域検出工程と、
前記仮領域から前記過多の領域を除くことで前記原稿の領域を決定する決定工程とを有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理方法はさらに、
前記仮領域の前記照明の反対側の端部で、前記ラインセンサへの入射光が少ない影の領域を検出する影検出工程を有し、
前記明領域検出工程において、前記影の領域の前記走査方向の幅から、前記過多の領域の前記走査方向の幅を算出することを特徴とする画像処理方法。
【請求項3】
請求項1に記載の画像処理方法はさらに、
前記仮領域が矩形か円形かを判断する判断工程と、
前記原稿が矩形である場合に、前記過多の領域を有する前記矩形の辺と、前記走査方向との傾きを検出する傾き検出工程を有し、
前記明領域検出工程において、前記傾きが垂直の場合には前記過多の領域の前記走査方向の幅が広く、前記傾きが垂直から離れると該幅を狭く算出することを特徴とする画像処理方法。
【請求項4】
請求項1に記載の画像処理方法はさらに、
前記仮領域が矩形か円形かを判断する判断工程と、
前記原稿が円形である場合に、前記過多の領域の円周の接線方向と、前記走査方向との傾きを算出する傾き算出工程を有し、
前記明領域検出工程において、前記傾きが垂直の場合には前記過多の領域の前記走査方向の幅が広く、前記傾きが垂直から離れると該幅を狭く算出することを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
請求項1に記載の画像処理方法はさらに、
前記仮領域のエッジの付近の画素値から、原稿の下地の画素を求める工程を有し、
前記明領域検出工程において、前記下地の画素の値から前記過多の領域の幅を補正することを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−23679(P2012−23679A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162096(P2010−162096)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】