説明

画像処理装置、イメージングシステム、並びに画像内のオブジェクトを拡大縮小するコンピュータプログラム及び方法

本発明は、画像内のオブジェクトを拡大縮小する画像処理装置に関し、この画像処理装置は、マーカの実寸法と、該マーカの、画像内におけるピクセル単位での寸法との関係から導出する校正係数に基づいて前記オブジェクトを拡大縮小するように構成した校正器を備えるもので、この校正器をさらに、前記画像内で識別される複数の異なる向きのマーカを用いて得られる複数の校正係数を生成するように構成する。画像1は、空間的に異なる向きを向い解剖学的構造2に対して配置が異なる、複数のオブジェクト3,8,9を含んでいる。オブジェクト3は、このオブジェクト3の長さをピクセル単位で測定すると共に、オブジェクト3の実長を、空間的にオブジェクト3と同様の配置をとるマーカAから求めた校正係数を用いて計算するように構成した測定ツールにリンクされる。画像1はさらに、オブジェクト8,9の実長を、これらオブジェクトのピクセル単位での長さ、および、マーカBを用いて求めた校正係数に基づいて計算するように構成した測定ツールにリンクされるオブジェクト8,9も含んでいる。異なるマーカに対応するオブジェクトは校正グループを形成するようにグループ化して、校正係数の更新によって、同じ校正グループ内の全てのオブジェクトの実寸法が自動的に更新されるようにするのが好適である。ユーザの利便性のために、各校正グループの識別は変えるのが好適である。本発明はさらに、イメージングシステム、画像内のオブジェクトの拡大縮小を可能にするコンピュータプログラムおよび方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像内のオブジェクトを拡大縮小する画像処理装置に関し、該画像処理装置は、マーカの実寸法と、前記画像内におけるマーカのピクセル単位での寸法との関係から導出される校正係数に基づいて、前記オブジェクトを拡大縮小することができる校正器を備えている。
【0002】
本発明はさらに、イメージングシステムに関する。
【0003】
本発明はさらに、画像内のオブジェクトを拡大縮小し得る方法に関する。
【0004】
本発明はさらに、コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0005】
冒頭にて述べたような画像処理装置の例は、米国特許第6405071号から既知である。この既知の画像処理装置は、歯の根幹にそろえたマーカの投影を含むX線画像から、歯の根幹の長さを測定するように構成されている。マーカは既知の長さを有しており、校正目的に用いられる。従って、特にピクセル単位のマーカの長さとマーカの実長との比率のような関係により、画像の校正係数が求まる。歯の根幹の測定長は、そのピクセル単位での長さと校正係数とに応じて拡大縮小される。
【0006】
一般的な方法では、画像の校正係数を決定するのに、単独のマーカを用いている。ユーザは校正係数を求めるために、例えば適切に構成したグラフィックユーザインタフェースを用いて、長さを測定する二点を指定して手作業でマーカを線引きし、そのマーカの長さをピクセル単位で求める適切な計算ルーチンを実行する。その校正マーカの長さが求まると、ユーザは手動でマーカの実寸法を入力して、画像処理装置の適切な校正器に、校正係数を計算させる。
【0007】
既知の画像処理装置の欠点は、それぞれのオブジェクトが同じ画像内で互いに向きが異なっている場合に、各オブジェクトの個々の校正係数を計算するのに、データを別々に収集する必要がある、ということにある。
【特許文献1】米国特許第6405071号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、異なる向きのオブジェクトを同一のデータセットに基づいて拡大縮小することができる画像処理装置を提供することにある。
【0009】
このため、本発明による画像処理装置では、前記校正器をさらに、画像内で識別される複数の異なる向きのマーカを用いて得られる複数の校正係数を生成するように構成する。
【0010】
本発明の技術手法は、画像内の異なる向きのオブジェクトに対する複数の校正係数を用立てることによって、これらのオブジェクトを同時に校正し得るという見識に基づいて成したものであり、これら複数の校正係数を、画像に割り当てるのではなく、対応するマーカと同じ空間的方位を有しているオブジェクトにリンクさせる。このようにすれば、必要な複数の校正係数をカバーするための多数の画像データを収集する必要がないため、データの収集処理及び事後処理が改善する。マーカとしては、実寸法が予め分かっている人工のオブジェクトか、または、画像の一部、特に、寸法が既知の部位を含む医用画像の一部を用い得ることに留意すべきである。
【0011】
本発明による画像処理装置の実施態様では、該画像処理装置がさらに、各々が個別のマーカにリンクされる少なくとも1つのオブジェクトを含む複数のグループを形成するように構成したリンカーも備えるようにする。
【0012】
校正目的のために複数のオブジェクトを相互に関連付けるのが、特に有利であることがわかる。この手法は、例えばユーザとのやり取りにより、ある所定のグループの校正係数を更新する場合に、画像内の全てのオブジェクトの実寸法が自動的に更新されるという利点を有する。このことは、ユーザの利便性および本発明による画像処理装置の信頼性も向上させる。異なる向きのオブジェクトを、適切な数の校正グループに分けて、例えば、同様の向きのオブジェクトは同様の向きのマーカにリンクさせて、同じ校正係数を共有させるのが有利であると考えられる。オブジェクトをリンクさせるマーカの選択は、手動で行うことができる。この場合、ユーザは、グループ内のオブジェクトを選択し、適切な図形対話式のツールを用いて、それらのオブジェクトを適切なマーカにリンクさせる。マーカの選択は、例えば、画像内の構造に関する先験的情報を用いて、自動的に行いえるようにするのが好適である。例えば、解剖学的構造に対しては、本来既知のパターン認識エンジンを用いるか、或いは、適切な画像セグメント化ステップによって得られるような、他の画像から得られる情報を用いることもできる。
【0013】
本発明による画像処理装置の別の実施態様では、画像処理装置がさらに、前記各グループを単独で表示するように構成したビジュアライザも備えるようにする。
【0014】
ビジュアライザは、異なるグループを構成するオブジェクトおよびマーカには異なる色を割り当てることによって、異なるグループを表示するのが好適である。別の方法では、異なるグループに対して、適切な英数字情報と言った異なる標識を用いることができる。さらに別の方法では、異なるグループのオブジェクトおよびマーカに対して、線引き、陰影付け、オーバーレイと言った異なる属性を用いることができる。この技術手法により画像を成すオブジェクトの向きがより見易くなるため、ユーザが異なる校正グループのオブジェクトに校正係数を誤って割り当てることがほとんど無くなる。
【0015】
本発明による画像処理装置のさらに別の実施態様では、前記校正器を、前記画像にマーカのグラフィック・テンプレートをオーバーレイするように構成し、グラフィック・テンプレートが、マーカの寸法をピクセル単位で測定するための測定ツールにリンクされるようにする。
【0016】
この技術的な機能は、校正目的のために画像内で用い得る、関連する測定に用立てるグラフィック・オブジェクトを、ユーザが操作できるようにするのが有利であるという見識に基づいている。本発明の表現の中で、「マーカ」という表現は、校正目的に適するグラフィック・オブジェクトのどれにでも当てはまるものと理解されたい。例えばマーカとしては、2つの目印、2つの目印を結ぶ線、或る直径または半径を有する円、もしくは、他の多数のピクセルから成る任意の適切な1次元または多次元のオブジェクトで構成することができる。さらにマーカは、例えば画像内に見える生体組織、すなわちオブジェクトの、ある特定部位の上に位置付けられる適切な形状を成すように配置する、適切な画像セグメント化ステップによって得ることもできる。
【0017】
このような機能では、マーカの寸法をピクセル単位で測定できる関連ツールにリンクされるマーカのグラフィック・テンプレートで画像をオーバーレイするように、校正器を構成する。従って、ユーザが手動でマーカを線引きする必要がないため、校正ステップの精度および信頼性が向上する。ピクセル単位での寸法を計算できる適当なグラフィック・ルーティンは、本来技術的に既知である。本発明による画像処理装置を、例えばインプラントの施術のような、ある特定の種類の画像に用いる場合には、ユーザが、用いるマーカの実長を確認するかまたはマーカをそれ相応に変更しさえすればよいように、グラフィック・テンプレートは、マーカの実長で構成するのが好適である。校正ステップが完了すると、ユーザの実質的なやり取りなしで、オブジェクトの実寸法が高精度に求まることになる。グラフィック・テンプレートは、適切なマーカを提供するだけでなく、マーカの寸法を自動的にピクセル単位で計算し得るようにするのが好適であることがわかる。複数の適切な測定ツールは本来技術的に既知であり、それらの例は、関連する測定機能を有する任意の適切な形状をとして含んでいる。
【0018】
本発明による画像処理装置の他の実施態様では、測定ツールを、幾何学的関係のアプリケーション・フレームワークのマクロ内に規定する。
【0019】
この技術手法の利点は、図形関連のアプリケーション・マクロ(the graphic relational application macro)をそのような方法で複数のオブジェクトに相互に関連付けることができるので、1つのオブジェクトを再配置した場合に、そのオブジェクトに関係する他のオブジェクトがそれに応じて再配置されることにある。これにより、全自動化された画像処理装置を提供できるだけでなく、信頼性の高い描画、測定および校正手段を提供することができる。
【0020】
幾何学的関係のアプリケーション・フレームワークのマクロを用いた画像処理の例は、本願人に譲渡されている国際公開第WO/0063844号から既知である。この幾何学的関係のアプリケーション・フレームワークのマクロは、画像内に規定する様々な幾何学的テンプレートの詳細な説明を与えるように、特に画像の形状内にある前記テンプレートを構造的に相互に関連付けるように構成し、従って、テンプレートに所定の幾何学的な一貫性が維持されるように、様々な幾何学的テンプレートを構造的に取り扱う。この幾何学的アプリケーション・フレームワークのマクロはさらに、解剖学的構造に適切な目印を与えた場合に、その解剖学的構造の幾何学的特性を解析及び/又は測定することができる。例えば円、線、球体等のような予め規定できる幾何学的テンプレート間の幾何学的関係としては、幅広い種類のものが可能であり、その関係は、幾何学的アプリケーション・フレームワークのマクロ内に規定する。この幾何学的テンプレートは、目印または幾何学的テンプレートに関連付けた一組の目印を用いて、幾何学的アプリケーション・フレームワークのマクロによって操作することができる。図2は、複数の幾何学的テンプレート間の幾何学的関係を規定するように構成した幾何学的アプリケーション・フレームワークのマクロによって操作することができる、既知の幾何学的テンプレートの例を示している。
【0021】
本発明によるイメージングシステムは、ディスプレイおよび先に述べたような画像処理装置を備えている。本発明によるイメージングシステムは、その画像処理装置に接続し得るデータ収集ユニットをさらに備えているのが有利である。このようにすれば、操作の簡単なデータ収集および処理システムを提供でき、ユーザは、高い信頼性を持つ必要な画像処理ステップを実行することができるようになる。
【0022】
本発明による画像処理方法は、
‐ 画像内の複数の異なる向きのマーカを識別するステップと、
‐ マーカの実寸法とマーカのピクセル単位での寸法との関係に基づいて、各マーカに対する校正係数を計算するステップと、
‐ 校正係数を複数生成するステップと、
を含んでいる。
【0023】
本発明の画像処理方法によれば、異なるオブジェクトに割り当てられる複数の校正係数を用いて複数のオブジェクトを拡大縮小するのに、単一の画像を用いることができる。例えば、空間内に異なる向きのオブジェクトを含み得るような画像は、各オブジェクトの拡大縮小を行うのに、別個の校正係数を必要とする。さらに/または、ズーム・インまたはズーム・アウトするペースト・エリアを含み得るような画像は、倍率の差異によって異なる校正係数を必要とする。画像全体に対してではなく画像内の別個のオブジェクトに対して割り当てられる複数の校正係数を求めることによって、異なる校正係数を必要とするオブジェクトを拡大縮小するための手順を簡素化できる。本発明による画像処理方法の他の有利な実施態様は、請求項9〜12に記載してある。
【0024】
本発明によるコンピュータプログラムは、先に述べたような方法のステップをプロセッサに実行させるように構成する。このコンピュータプログラムは、画像データをロードして測定プロトコルを実行するように構成した、適切なサブルーチンを含んでいる。場合によっては、ユーザとのやり取りによるか、または自動的に、適切な複数のマーカを画像内で識別して、コンピュータプログラムが、各マーカの寸法をピクセル単位で求める測定プロトコルを開始させるようにする。この測定プロトコルは、マーカを収納するツールキットのマクロを開始させるように構成する。このマーカは、適切な画像マッチング技法を用いて、画像上に位置付けられるのが好適である。例えばユーザが、円または線のような標準的な幾何学形状によって描写すべきマーカを選択する場合には、マッチング・サブルーチンは、マーカを適切なサイズにし、かつ移動させることによって、画像の一部とマーカとを自動的に整合させる。求めた校正係数は、その校正係数を求めたマーカに関連付けて格納する。校正ルーチンはさらに、このようにして求めた校正係数を、それらがリンクするオブジェクトに適用する。ユーザがマーカの実寸法を変更すると、校正係数および拡大縮小結果が、自動的に更新される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明のこれらのおよび他の態様を、図面を参照してより詳細に説明する。
【0026】
図1は、異なる向きのオブジェクトを含む画像の実施例を示す概略図である。この例では、解剖学的構造2の空間的な相互関係に関する情報を含んでいる診断用画像1を選択する。医学分野とは関係のない他の画像も同様に、本発明で検討することができる。この図に概略的に示すように、画像1は、複数のオブジェクト3,8,9を含んでおり、これらオブジェクトは空間的に異なる方位に向いており、解剖学的構造2に対する配置が異なっている。この例では、オブジェクト3を、測定ツール(図示せず)にリンクされるグラフィック・ライン・オブジェクト3bとして規定する。測定ツールは、オブジェクト3の寸法をピクセル単位で測定し、かつ空間的にオブジェクト3と同様の配列をとっているマーカAから求まる校正係数を用いて、オブジェクト3の実寸法を計算するように構成する。マーカAは、例えば側径器または寸法が既知のねじ等の計測器具のような、画像内の適切なオブジェクトを用いて規定するのが好適である。画像1は、2つの目印8bと8cとを結ぶグラフィック・ディスタンス・オブジェクトとして規定されるオブジェクト8も含んでいる。オブジェクト8も、このオブジェクト8のピクセル単位での長さ、および、マーカBを用いて求めた校正係数に基づいてオブジェクト8の真の長さを計算するように構成した測定ツール(図示せず)にリンクされる。オブジェクト8の対応する実長は、ウィンドウ8a内に与えるのが好適である。オブジェクト9は、2つの目印9bと9cとを結ぶグラフィック・ライン・オブジェクト9dとして規定され、このオブジェクトも、マーカBを用いて求まる校正係数に基づいてその実長を求めるように構成した測定ツールにリンクされる。オブジェクト9の対応する実長は、ウィンドウ9a内に与えるのが好適である。画像内の全てのオブジェクトおよびマーカは、適切なコンピュータプログラムとして実現される単独の測定ツールにリンクさせるのが好適であることに留意すべきである。オブジェクト3の実長は、適切なグラフィックウィンドウ3aに反映させるのが好適である。オブジェクト3,8,9は、これらのオブジェクト3、または8,9と同様な態様で空間的にそれぞれ配列されている、異なる個別のマーカA、Bにリンクされることがわかる。ここで言う空間的な配列とは、回転させることができるようなある面に対する配列を指すことを理解されたい。従って、マーカBは、このマーカBと同じ面に対応するオブジェクト8,9に対して回転する。これらのマーカの実長は、それぞれグラフィックウィンドウA1、B1に反映させるのが好適である。これらの寸法は、適切に構成したインタフェースを用いて読み出され、校正ルーチンに利用される。さらに、これらのグラフィックウィンドウを対話式にして、任意マーカの実長を変更し得るようにするのが好適である。校正係数を画像全体に対してではなく、画像内のオブジェクトに関連付けることによって、空間的に異なる向きのオブジェクトの校正が単独の画像を用いて可能となるため、それにより、画像収集および事後処理の作業の流れが向上する。マーカとともに画像内に示した全てのオブジェクトは、手動または全自動化態様で描写することができることに留意されたい。後者の場合は、画像処理システムのユーザの利便性がさらに向上する。異なるマーカに対応するオブジェクトは1つの校正グループを形成するようにグループ化して、校正係数を更新すると、同じ校正グループ内の全てのオブジェクトの実寸法が、自動的に更新されるようにするのが好適である。ユーザの利便性のために、各校正グループの識別を異ならせるのが好適である。この実施例では、異なる線種で示すことで、異なるグループからのオブジェクトおよびマーカを区別している。他の方法では、色分けまたは適切なラベリングを用いることができる。
【0027】
図2は、幾何学的テンプレート4,5a,5bおよび6に対して幾何学的関係を規定するように構成した、既知の2次元の幾何学的関係のアプリケーション・フレームワークのマクロ(two-dimensional geometric relational application framework macro)1’の実施例を示す概略図である。この既知のグラフィック・アプリケーション・フレームワークのマクロはさらに、一度任意の幾何学的テンプレートの位置を変更しても、規定の幾何学的関係を維持するように構成されている。それぞれの幾何学的テンプレートは、それぞれ関連する目印7a,7e,7fを用いて規定される。この幾何学的なアプリケーション・フレームワークのマクロは、3次元の幾何学的テンプレート(図示せず)を操作するように構成することもできる。
【0028】
図3は、幾何学的関係のアプリケーション・フレームワークのマクロを用いて、画像内のマーカを規定する画像の実施例を示す概略図である。この実施例における画像20は、倍率係数の異なる領域20a、20bを含み、各領域は、校正目的のための少なくとも1つの校正マーカ29、37を含んでいる。この実施例では特に、X線画像に基づいた脚長差の測定に関するアプリケーション20a、および、同一人物の大腿骨を示す画像20bを示している。画像20内の幾何学的なオブジェクトに関連付けるためのその他の適切な実施方法も可能であり、その方法は幾何学的関係のアプリケーション・フレームワークのマクロを含むが、それに限るものではない。その他の適切な画像診断法から得られる他の適切な画像を同様に用いて、本発明を実施することもできる。幾何学的関係のアプリケーションのマクロによって相互に関係付けられるオブジェクトは、対応する大腿骨頭部の寸法および位置を表す2つの円22a、22b、および骨盤の底部を示す線26を含んでいる。双方の円の中心21c、21c’から、この基線までの距離28b、28cも、幾何学的関係のアプリケーション・フレームワークのマクロ構造の一部分であり、これらの距離は、適切なマーカ(図示せず)から得られる同一の校正係数(図示せず)を用いて、自動的に計算される。従って、脚長差を示す距離24a、24bの差も、高い精度で自動的に得ることができる。
【0029】
1つの要素(円22aまたは線26)を変更する場合には、その変更を反映するために、他の全ての要素を自動的に更新させる。また、マーカ29の実長を変更する場合にも、脚長の測定値を直ちに更新する。本発明のこの実施例の技術手法によれば、オブジェクト23a,23b,25a,25bを、それぞれのグラフィック・オブジェクト22a,22b,26に関連付ける。これらのグラフィック・オブジェクトは、画像データのエッジまたは他の特徴に沿って自動的に位置付けるように配置する。幾何学的関係のアプリケーションのマクロにより相互に関係付けたグラフィック・オブジェクト22a,22b,26と、グラフィック・オブジェクト23a,23b,25a,25bとの間に、明確に規定される関係により、円22a、22bを、閉じた輪郭23a、23bの経路に最適に適合するように位置付けると共に、直線26を、開いた輪郭25a、25bの双方に接するように位置付ける。このようにして、グラフィック・テンプレートを合わせて、円22a、22bまたは直線26の適合を、測定した距離28a,28b,28cに自動的に反映させる。この幾何学的オブジェクト間に存在する制約および関係は、これらのオブジェクトの適合を制限するように取り決め、次いで、多次元のグラフィック・オブジェクトの適合制限へと自動的に移行するのが好適である。このような制約は、解剖学的整合性の知識に基づくものとするのが好適である。
【0030】
画像20bにおいて、相互関係にあるオブジェクトは、大腿骨をモデル化した線32、34および測定ツール35を含んでいる。この実施例は、人間の大腿部の直径を自動的に測定する方法を示している。実線32、34は、幾何学的関係のアプリケーションのマクロ内のグラフィックテンプレートを示しており、線32は、大腿骨の中心線をモデル化しており、第2の垂線34は、直径測定の方向35をモデル化している。この垂線34は、全て幾何学的関係のアプリケーションのマクロ内で規定されている2つのグラフィック・テンプレート、すなわち、距離測定に関連する2つの点オブジェクト33a、33bを含むように配置する。この例では、開いた輪郭31を、点31a、31bに関連付けている。これらの輪郭は、適切な画像セグメント化技法を用いて、大腿骨の縁部に沿うように自動的に位置付ける。線34、線32および輪郭31の間に明確に規定される関係によって、2つの点オブジェクト33a、33bの位置を、垂線34と各グラフィック・オブジェクト31との交点に、自動的に適合させる。画像20bは、校正目的に用いるマーカ37も含んでいる。対応する校正係数またはマーカの実長はウィンドウ37aにてユーザに知らせる。例えば、マーカの実長を変更することのためにマーカの校正係数が変わる場合には、実距離36の読取値が自動的に更新される。また、実距離36の読取値は、線31、32および34のいずれかの位置が変わる場合にも自動的に更新され、新たな点33aと33bとの間の軌道35の長さがピクセル単位で別に読み取られる。従って、ユーザが垂線34を選択し、その垂線34を大腿骨の軸に沿って動かすと、直径の測定値35は、垂線34の新たな位置における大腿骨の直径に応じて適応するようになる。このような技術的手法によれば、多用途でかつ簡単な画像処理手段を提供でき、幾何学的関係のアプリケーションのマクロにおいてグラフィック・オブジェクトを関連付けることにより、任意のオブジェクトを再配置しても、関心のあるオブジェクトの新の寸法35が自動的に更新されるようになる。
【0031】
この例では、画像のどの領域がどのマーカを用いているかが、ユーザは明らかであるが、各マーカにリンクされるオブジェクトをグループに結集させるのが好適である。各グループは、適切なグラフィック手段を用いて、別個に視覚化するのが好適である。この幾何学的関係のアプリケーション・フレームワークのマクロの動作を、2つの異なる拡大係数を有する部分を含んでいる画像の特定の例を用いて示しているが、図2を参照して述べたように、各サブ領域20a、20bの中に、空間的に方位の異なるオブジェクトに対するさらなるグループを規定することができる。
【0032】
図4は、本発明による画像処理装置の実施例の概略図である。画像処理装置40は、画像データを任意の適切な形式で受信するための入力部42を備えている。例えば、画像処理装置40は、画像データの収集に従事することができる。この場合、画像データはアナログ形式で得て、事後処理用に、適切なA/D変換器を用いてデジタル形式に変換することができる。この画像データは、例えば、デジタル形式で直接収集するか、または他のコンピュータ/医療器具によって収集した後にコンピュータネットワークを介すことによって、デジタル形式で得ることもできる。本画像処理装置の要部は、一般的なマイクロプロセッサまたは信号プロセッサのようなプロセッサ44と、バックグラウンド記憶装置48(典型的にはハードディスクに基づく)と、作業メモリ46(典型的にはRAMに基づく)とによって形成される。バックグラウンド記憶装置48は、処理中でない画像データ(またはその一部)の格納、並びに、グラフィック・テンプレートおよび適切な形状モデルの操作を(プロセッサによって実行されていない場合に)格納するのに用いることができる。メインメモリ46は、一般に、処理中の画像データ(またはその一部)と、それらの画像データ部分を処理するのに用いられる、幾何学的テンプレートおよびモデルの命令を保持する。本発明による装置40は、画像内の複数のマーカに基づくそれぞれの校正係数を生成すべく構成した校正器45を備えている。リンカー47は、それぞれの寸法をピクセル単位で求める適切な計算ルーチンに、マーカとオブジェクトを関連付けるのに用いる。リンカー47は、画像内の複数のオブジェクトに対する校正グループを形成するのに用いることもできる。さらに、リンカー47は、種々のグループを異なる方法で視覚化すべく構成したビジュアライザ47aと通信するように構成するのが好適である。例えば、1つのグループを成すオブジェクト群に線属性を割り当てて、オブジェクトおよびマーカを描写する線に異なる線属性を用いることができる。あるいは、適切な色分けをすることもできる。さらに他には、各グループに適切な英数字の標識を与えて、それらを区別することもできる。校正器45、リンカー47、およびビジュアライザ47aは、メモリ48に格納するのが好適なコンピュータ・プログラム43によって操作可能とするのが好適である。出力手段49は、校正結果を出力するのに用いる。例えば、プロセッサ44に、例えば記憶装置48から読み込まれるセグメント化プログラムがロードされている場合には、出力は、対応するピクセル単位での寸法の計算結果が与えられた識別可能なマーカを有するセグメント化された構成となり、これは例えば適切な表示手段(図示せず)上に、視覚的に示される。この出力は、マーカを適切な校正ルーチンに関連付けた結果を含むようにするのが好適である。例えば、マーカの初期設定の実長を、校正目的に用いることができる。この場合に、校正係数を承認するか否かまたはマーカの実長を変更するか否かはユーザが指示する。あるいはユーザは、適切な入力手段を用いてマーカの実寸法を入力することができる。例えば、予め格納したマーカの実寸法の値を入力するのに、ファイルリーダを用いることができる。さらに、マーカの実寸法の値を入力するのに、グラフィックインタフェースまたはテキストエディタのような、適切なユーザインタフェースを用いることもできる。
【0033】
図5は、本発明によるイメージングシステムの実施例の概略図である。本発明によるイメージングシステム50は、ピクセル単位での寸法の測定に関連付けるマーカを用いて、画像データ59内のオブジェクトを校正するように構成した画像処理装置40、および、ピクセル単位でのマーカの寸法とマーカの実寸法とから校正係数を計算する校正ルーチンを備えている。画像処理装置40の出力は、校正係数が割り当てられたオブジェクトを含む画像を含むのが好適である。画像処理装置40の出力は、ビューアー51の入力部55に利用できるようにする。入力部55は、ユーザインタフェース54を制御するようにしたプログラム56を用いて、適切なインタフェースを操作するように構成した適切なプロセッサを備えるようにして、マーカ53a’に関連付けられる適切なオブジェクト53aと、他のマーカ53b’に関連付けられる他のオブジェクト53bとを含む画像53が視覚化されるようにするのが好適である。ユーザの利便性のため、ビューアー51には高解像度ディスプレイ52を用い、例えばマウス、キーボードまたは他の任意の適切なユーザ入力装置のような適切なユーザインタフェース57によって、ユーザインタフェース54を制御できるのが好適である。画像解析システム50はさらに、データ収集ユニット61を備えるのが好適である。この例ではX線装置を示しているが、CT、磁気共鳴装置、または超音波装置のような他のデータ収集形態のものも同様に用いることができる。X線装置は、装置61のデータ収集部Vに位置付ける例えば患者と言ったオブジェクトから、画像データを収集するように構成する。この目的のために、X線ビーム(図示せず)を、X線源63から放射させる。透過した放射(図示せず)は適切な検出器65に収められる。傾いたイメージングをし得るようにするために、X線源63およびX線検出器65は、回転し得るように台67に接続したガントレー64に取り付ける。X線検出器65の出力部における信号Sは、画像データ59の代表値である。
【0034】
図6は、本発明による画像処理方法のワークフローの実施例を示す概略図である。本発明による画像処理方法のステップ74では、画像データ72aを、適切な複数のマーカを用いて修正する。ステップ74の前に、適切な画像データ72aを適切な画像処理手段にロードする、予備のステップ72を実行することができる。マーカは、手動でまたは完全に自動化した方法で線引きすることができる。後者の場合には、ピクセル単位でマーカの寸法を測定する適切なツールにリンクされる複数の適切なマーカを含むグラフィック・テンプレート74aを、画像にオーバーレイするのが好適である。このグラフィック・テンプレートは、適切なデータベース75からロードするのが好適である。さらに、グラフィック・テンプレート74aは、例えば、画像内に存在する特徴部に基づく、適切な校正形状を生成することによって、画像データ72aに基づいてオンラインで計算することもできる。この操作は、既知の画像セグメンテーション技法を用いて、首尾良く実行することができる。校正形状は、解剖学的部位、または、例えば専門の校正マーカのような他のオブジェクトに基づくものとすることができる。ステップ76では、識別した全マーカの寸法をピクセル単位で計算する。これらの値を、特にピクセル単位でのマーカの寸法とマーカの実寸法との比率の関係に従って校正ステップを実行するように構成した、適切な校正器へ転送する。各マーカの実寸法の初期設定値を、自動的に校正器に与えるように構成することもできる。この場合、各校正係数は、ステップ78にて求める。さらに、マーカの実寸法の値を入力するようにユーザに指示することもでき、ユーザがそれに応じて応答した後に、校正係数を計算する。各識別マーカに対する校正係数が確立したら、それを各マーカに関連付けられたオブジェクトに自動的に適用して、オブジェクトの拡大縮小を想定する。この操作を、ステップ79に概略的に示す。ここで、少なくとも1つの目印81とマーカ80aとに関連付けられる長さが、ピクセル単位で割り当てられる、第1のオブジェクト80を選択する。ここでは例えば、オブジェクト80として大腿骨頭を選択する。この場合のピクセル単位の寸法83は、大腿骨頭部の画像に整合させた円81の直径から計算する。ピクセル単位での複数の寸法を、1つのオブジェクトに割り当てることもでき、これを83および84によって図解する。例えば、骨は、大腿骨頭部の直径および大腿骨自体の厚さによって特徴づけることができる。マーカ80aの実寸法を確定させると、オブジェクト80に対する対応する校正係数が求まり、次に、その校正係数を値83および84に適用して、オブジェクト80の各部分の実寸法を求める。この例では、画像内に規定した2つの目印82、82bに基づいて、ピクセル単位での寸法84の校正を行う場合を示している。複数のオブジェクト(図示せず)を、同一のマーカから得られる単一の校正係数に関連付けることもできる。この場合、これらの全オブジェクトは、自動的に拡大縮小されることになる。拡大縮小する、1つまたは複数のオブジェクトのピクセル単位での対応する寸法が確定されたら、これらにステップ78で得られた校正係数を適用する。このシーケエンスは、全自動態様で実行するのが好適である。この場合、ステップ86にて、校正結果を容認するようにユーザに指示する。オブジェクト80とは空間的に異なる方位または異なる倍率係数を有するような異なるオブジェクト85aに対しては、異なるマーカ85を割り当てる。オブジェクト85aは、適切な目印85bに基づく幾何学的な関係のアプリケーション・フレームワークのマクロ内に規定するのが好適である。マーカ85は、画像内におけるこのマーカの寸法を、ピクセル単位で計算し、かつこの値を校正手段に転送するように構成した測定ツールにリンクさせる。前記構成手段は、マーカに対するそれぞれの校正係数を、マーカのピクセル単位での寸法と実長とに基づいて計算して格納するように構成する。この校正係数は、オブジェクト85aにリンクされる。ユーザが、いずれかのマーカの実寸法か、ピクセル単位でのそれらの長さか、または、いずれかのマーカにリンクしているいずれかのオブジェクトの、ピクセル単位での長さの変更を望む場合に、ユーザはステップ87の校正ルーチンに戻ることになる。先に述べたように、本発明による方法によれば、ユーザは、複数の校正係数によって特徴づけられる複数のオブジェクトに対し、簡易で信頼性のある校正ステップを実行することができるため、画像処理および画像解析の精度が全体として向上することになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】異なる向きのオブジェクトを含む画像の実施態様を示す概略図である。
【図2】幾何学的関係のアプリケーション・フレームワークのマクロ(最新技術)の実施態様を示す概略図である。
【図3】画像内にマーカを規定するのに幾何学的関係のアプリケーション・フレームワークのマクロを用いる、画像の実施態様を示す概略図である。
【図4】本発明による画像処理装置の実施態様を示す概略図である。
【図5】本発明によるイメージングシステムの実施態様を示す概略図である。
【図6】本発明による方法のワークフローの実施態様を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像内のオブジェクトを拡大縮小するように構成した画像処理装置であって、マーカの実寸法と、該マーカの前記画像内におけるピクセル単位での寸法との関係から導出される校正係数に基づいて、前記オブジェクトを拡大縮小するように構成した校正器を備えている画像処理装置において、
前記校正器をさらに、前記画像内で識別される異なる向きの複数のマーカを用いて得られる複数の校正係数を生成するように構成したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
当該装置がさらに、マーカにリンクされる少なくとも1つのオブジェクトを含む複数のグループを形成するように構成したリンカーも備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理装置において、
当該装置がさらに、前記各グループを個別に表示するように構成したビジュアライザも備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記校正器をさらに、前記画像に前記マーカのグラフィック・テンプレートをオーバーレイするように構成し、前記グラフィック・テンプレートが、マーカの寸法をピクセル単位で測定する測定ツールにリンクされるようにしたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像処理装置において、
前記測定ツールを、幾何学的関係のアプリケーション・フレームワークのマクロ内に規定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の画像処理装置およびディスプレイを備えているイメージングシステム。
【請求項7】
前記画像処理装置にリンクされるデータ収集システムをさらに備えている、請求項6に記載のイメージングシステム。
【請求項8】
画像内のオブジェクトを拡大縮小し得る方法であって、当該方法が、
‐ 画像内の、複数の異なる向きのマーカを識別するステップと、
‐ マーカの実寸法とマーカのピクセル単位での寸法との関係に基づいて、各マーカに対する校正係数を計算するステップと、
‐ 校正係数を複数生成するステップと、
を含む、画像内のオブジェクト拡大縮小方法。
【請求項9】
前記方法がさらに、
‐ 各々が対応するマーカに関連する少なくとも1つのオブジェクトを含むような、複数の校正グループを作成するステップと、
‐ 個別の校正係数を用いて、それぞれのオブジェクトを拡大縮小するステップと、
を含む、請求項8に記載の画像内のオブジェクト拡大縮小方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法において、
複数のマーカを識別するのに、測定ツールにリンクされるグラフィック・テンプレートを用いることを特徴とする、画像内のオブジェクト拡大縮小方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、
前記測定ツールを、幾何学的関係のアプリケーション・フレームワークのマクロ内で規定することを特徴とする、画像内のオブジェクト拡大縮小方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
前記幾何学的関係のアプリケーション・フレームワークのマクロを用いて、複数のオブジェクトを各校正グループに対するマーカに関連付けることを特徴とする、画像内のオブジェクト拡大縮小方法。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか一項に記載の方法のステップを、プロセッサに実行させるコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−501179(P2008−501179A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514280(P2007−514280)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【国際出願番号】PCT/IB2005/051705
【国際公開番号】WO2005/116924
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】