説明

画像処理装置、及び画像処理装置の制御方法

【課題】 複数の異なる画像サイズ間でも同一のフィルム風粒状感効果を小データ量かつ周期パターンをなるべく発生させずに実現する。
【解決手段】 入力された画像データの画像にフィルム粒状効果を付加する画像処理装置であって、複数の画素値からなる粒状データからランダムに読み出した画素値を用いて、前記粒状データより大きい所定サイズの基本粒状画像を生成する生成手段と、前記生成手段によって生成された基本粒状画像を前記入力された画像データと同サイズにリサイズするリサイズ手段と、前記リサイズ手段によってリサイズされた前記基本粒状画像を前記入力された画像データに合成する合成手段と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタル画像データに銀塩写真におけるフィルム粒状のような効果を付加する画像処理装置及び画像処理装置の制御方法に関するものでる。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラの写真の表現方法の一つとしてフィルムの粒状感の効果を出すため、フィルム粒状としてのノイズを合成するための方法が提案されている。特許文献1では、粒状パターンを、カラーフィルムからスキャンして取得、もしくは疑似色素雲濃度パターンをシミュレーションで取得する。これを所望の画像サイズに応じてランダムな位置または所定間隔にて複数配置する。また特許文献2では、予め濃度とサイズの異なる粒状パターンを用意しておき、入力信号に応じて粒状パターンを選択して合成しモニターに投影している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特登録3910267
【特許文献2】USP5374954
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように粒状パターンを予め持ち、画像サイズに応じて複数配置しておく方法だと、ノイズパターンが持っている粒状パターンの大きさで張り付けられているのが視認できてしまい、不自然で見た目に違和感のある画像となってしまう。また、デジタルカメラの出力サイズにおいて、異なる画素数を有する出力サイズの画像で粒状の大きさを各々最適なサイズにしないと、同じ画像でも観賞サイズによって粒状感が異なって見えるという問題がある。また、特許文献2のように、予め濃度とサイズの異なる粒状パターンを用意しておき、入力信号に応じて粒状パターンを選択して合成させる方法だと、かなりの種類の粒状パターンを用意しておかなければならない。さもないと、複数回撮影した際に同じ粒状パターンの頻度が多いなど、固定パターンノイズのようになり特に動画撮影などのシーンで違和感のあるものとなってしまう。また、デジタルカメラ本体内に保持できるメモリ容量の制約もあるため、所望の画像サイズ一面相当のフィルム粒状データを保持しておくのは難しい。
【0005】
従って本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は複数の異なる画像サイズ間でも同一のフィルム粒状感を小データ容量かつ周期パターンをなるべく発生させない画像処理装置及び画像処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係わる画像処理装置は、請求項1に記載の通り、入力された画像データの画像にフィルム粒状効果を付加する画像処理装置であって、複数の画素値からなる粒状データからランダムに読み出した画素値を用いて、前記粒状データより大きい所定サイズの基本粒状画像を生成する生成手段と、前記生成手段によって生成された基本粒状画像を前記入力された画像データと同サイズにリサイズするリサイズ手段と、前記リサイズ手段によってリサイズされた前記基本粒状画像を前記入力された画像データに合成する合成手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係わる画像処理装置の制御方法は、請求項10に記載の通り、入力された画像データの画像にフィルム粒状効果を付加する画像処理装置の制御方法であって、複数の画素値からなる粒状データから画素値をランダムに読み出す読み出しステップと、前記読み出しステップで読みだされた画素値を用いて前記粒状データより大きい所定サイズの基本粒状画像を生成する生成ステップと、前記生成ステップで生成された基本粒状画像を、前記入力された画像データと同サイズにリサイズするリサイズステップと、前記リサイズステップでリサイズされた前記基本粒状画像を前記入力された画像データに合成する合成ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の異なる画像サイズでも、同じ画角では同一のフィルム粒状感が得られる。またフィルム風粒状データを小データ容量に抑えることができる。さらに、得られるフィルム粒状効果は、周期パターンの発生が抑えられたランダム性の高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に対応する画像処理装置の一例を示すブロック図
【図2】第1の実施形態に対応する画像処理装置の撮影処理のフローチャート図
【図3】第1の実施形態に対応するフィルム風粒状合成処理のフローチャート図
【図4】第1の実施形態に対応する粒状データ画像の作成方法
【図5】第1の実施形態に対応する基本粒状画像作成処理のフローチャート図
【図6】第2の実施形態に対応するフィルム風粒状画像の作成方法
【図7】第2の実施形態に対応する基本粒状画像作成処理のフローチャート図
【図8】第3の実施形態に対応するフィルム風粒状画像の作成方法
【図9】第3の実施形態に対応する基本粒状画像作成処理のフローチャート図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
[第1の実施形態]
本実施形態では、本発明を適用できる画像処理装置をデジタルカメラ等の撮影系を有する画像処理装置とするが、画像処理装置としてはこれに限らない。すなわち、入力された画像データに対して画像処理を施すパーソナルコンピュータ(PC)や、画像処理の施された画像を印刷するプリンタなどにも適用できる。すなわち、入力された画像データに対して画像処理を施すものであれば、その装置の他の形態は問わない。また画像処理の対象となる画像データは、現像処理前のいわゆるRAW画像データや、現像処理後のたとえばJPEG形式の画像などの何れかに限定されるものではない。
【0011】
各実施形態に用いられる画像処理装置としてのデジタルカメラのブロック図を図1(a)に示す。
制御部120は、その他の各処理部に指示を与え、処理を実行させる。また、制御部120は、ユーザーからの指示等の外部からの指示を受けるインターフェース部(I/F部)140からの信号により動作し、各処理部に指示を与える。
【0012】
被写体からの光束は結像光学系(レンズ)10を経て、被写体像を光電変換する撮像素子20上に結像する。撮像素子20は、例えば、一般的な原色カラーフィルタを備える単板カラー撮像素子とする。原色カラーフィルタは、各々650nm、550nm、450nm近傍に透過主波長帯を持つ3種類の色フィルタからなり、各々R(赤)、G(緑)、B(青)の各バンドに対応する色プレーンを撮影する。単板カラー撮像素子では、この色フィルタを画素毎に空間的に配列し、各画素では各々単一の色プレーンにおける強度を得ることしかできない。このため撮像素子からは色モザイク画像が出力される。A/D変換部30では撮像素子からアナログ電圧として出力される色モザイク画像を、以降の画像処理に適するデジタルデータへと変換する。ホワイトバランス処理部40では、公知のホワイトバランス処理によって画像中の白を白くする処理がなされる。具体的には白くあるべき領域のR,G,Bが等色になるようなゲインがR,G,B各々にかけられる。色分離部50では色モザイク画像を補間することによって、全ての画素においてR、G、Bの色情報が揃ったカラー画像を生成する。生成されたカラー画像は、マトリクス変換部60でR、G、Bの画像データからY,U,Vの画像データに変換され、ガンマ変換部70を経て階調補正が行われ、基本的なカラー画像が生成される。その後色調整部80で画像の見栄えを改善するための処理がカラー画像に対し行われる。色調整部80における処理には例えば、ノイズ低減、彩度強調、色相補正、エッジ強調といった画像補正がある。色調整部80から出力された画像はフィルム風粒状合成部90において本実施形態における特徴的な処理であるフィルム風粒状合成処理がかけられる。その後、圧縮部100でJPEG等の形式に圧縮し、記録部110にてフラッシュメモリ等の記録媒体に記録される。
【0013】
図1(b)にフィルム風粒状合成部90とメモリ130の詳細を示したブロック図を示す。フィルム風粒状効果を付加した画像は、原画像と同サイズのフィルム風粒状データを作成し、それを原画像と合成することで作成する。予めメモリ130には、最小粒状単位を1画素とした粒状データ131が記憶されている。具体的には、ガウス分布に従った乱数が画素値として1画素ごとに記録されている。ここで、乱数はガウス分布に従ったものに限らず、一様乱数や指数乱数など多くの乱数の種類が考えられ、乱数の種類は限定されない。また、粒状データ131は画像データ、もしくはデータ列など、データの形態としてはさまざまな形態が考えられ、それらの形態のいずれにも限定されない。基本粒状画像作成部91において、粒状データ131をランダムに読み出し、一時的にある所定のサイズXまで順次貼り付けながら展開する。ここで粒状データ131をランダムに読み出すことにより、特許文献1のような周期パターンノイズが発生するのを軽減する効果がある。本実施形態におけるある所定のサイズXとは、本実施形態のデジタルカメラで画像の出力サイズとして設定されているサイズのL、M、Sの3サイズ(画素数の大小関係はL>M>S)のうち、中間のMサイズであるとする。しかし、所定のサイズXのサイズの大きさはこれに限らない。読み出し方法については後述する。こうして作成されたサイズXの画像を基本粒状画像と称する。その後、リサイズ部92において基本粒状画像を使用する原画像と等しいサイズにリサイズを行う。ここで、原画像が基本粒状画像よりも小さいサイズの場合、すなわちリサイズが縮小処理である場合、リサイズ時に発生する干渉縞(モアレ)の発生を抑えるため、フィルタ処理部93においてローパスフィルタ処理を行う。またフィルタ処理部93では同時に、原画像と基本粒状画像のサイズの大小にかかわらず、基本粒状画像の粒状の見た目を良くするためのローパス処理を行う。こうしてリサイズ部92から出力されたフィルム風粒状画像と原画像を画像合成部94において合成し、フィルム風粒状効果を付加した合成画像を生成する。
【0014】
次に、本実施形態の特徴であるフィルム風粒状感の合成処理を含んだ一般的な撮影から記録までの処理のフローチャートを図2に示す。
図2(a)は、撮像素子で撮像された画像にそのままフィルム粒状合成処理をかけて、所定の圧縮方式で記録するフローを示している。各フローは制御部120あるいは制御部120の指示によって各処理部によって実行される。
【0015】
S201では撮像素子20から得られた信号がA/D変換部30にてデジタル信号の画像データに変換される撮像処理が行われる。S202ではホワイトバランス処理部40、色分離部50、マトリクス変換部60、ガンマ変換部70による前述した現像処理、及び色調整部80による画像補正を含めた基本画像処理が行われる。S203では、色調整部80から出力された画像に対して、フィルム風の粒状感の画像効果を与えるフィルム風粒状合成処理が行われる。フィルム風粒状合成処理については後に詳述する。S204では、フィルム風粒状合成部90から出力された画像データが圧縮部100で所定の圧縮方式で圧縮され、S205で記録部110にて、記録媒体に記録される。また、本実施形態では、撮像素子から得られた画像にそのままフィルム粒状合成処理をかけて記録しているが、これに限らず撮像素子から得られた画像を現像処理を行わず一旦メモリや記録媒体に記録しておいた、いわゆるRAWデータにかけることもできる。その場合、メモリや記録媒体からRAW画像データを取得し、以降は図2(a)のS202からの処理に乗せることで実現できる。
【0016】
図2(b)はメモリや記録媒体にJPEG形式で記録された画像に対して、フィルム風粒状合成処理をかける場合の処理のフローチャートを示したものである。この場合、まずS206にてメモリや記録媒体などから画像データを取得し、S207で取得した画像データを不図示の復号部で復号処理を行う。復号部から出力された画像データに対して、図2(a)のS203以降の処理フローと同様の処理が行われる。
【0017】
次に、S203のフィルム風粒状合成処理の詳細を図3のフローチャート、図4を用いて説明する。各フローは制御部120あるいは制御部120の指示によって各処理部によって実行される。
S301では、基本粒状画像作成部91がフィルム風粒状のパターン画像の元になる基本粒状画像の作成処理を行う。
S302では、リサイズ部92が作成された基本粒状画像を原画像のサイズにリサイズするリサイズ処理を行う。
S303では、フィルタ処理部93がリサイズ処理がなされたフィルム風粒状画像に前述したように所定の係数でローパス処理を施す。
S304では、画像合成部94がフィルタ処理部93から出力されたフィルム風粒状画像と原画像を合成し、合成画像を生成する。これでフィルム風粒状合成処理が終了する。
【0018】
ここで、図4の処理の概要図、図5のフローチャートを参照して、本実施形態における粒状データ131を用いた基本粒状画像作成処理について詳細を説明する。
本実施形態では、粒状データ131に対して、処理時刻やカメラの姿勢情報や位置情報などのカメラ内で取得できる動的な値を利用してランダムにアクセスする。具体的には、動的な値をアドレスとして、粒状データ131の動的な値によって指示されるアドレスの画素値を取得し、取得した画素値を順次サイズXの基本粒状画像の画素値として並べて、基本粒状画像を作成する。
【0019】
S501では、処理時刻から粒状データの1画素分の読み出し開始アドレスを決定し、そのアドレスを開始位置とする画素値を1画素単位で取得する。
S502では、取得した画素値を、メモリ130上のサイズXである基本粒状画像のための一時的な領域へ隙間なく貼り付ける。この際、並べる方向は縦方向でもよく、横方向でもよい。
S503では、基本粒状画像のための全領域に画素値を貼り付けたかどうか判断する。全領域に貼り終えていなければ、S501に戻り、新しい処理時刻から、新しい読み出し開始アドレスを決定する。これを繰り返し、S503で全領域に貼り付けたと判断したら基本粒状画像作成処理を終える。
【0020】
ちなみに、本実施形態では基本粒状画像を作成するための粒状データを1種類だけ記憶しているが、これに限定されない。たとえば、画素値の平均値が異なる粒状データを複数持ち、読み出すデータの割合を変えてこれら複数の粒状データから作成することで様々な濃さのフィルム風粒状パターンを作成することも可能となる。また、粗さが異なる粒状データを複数持ち、読み出すデータの割合を変えてこれら複数の粒状データから作成することで、様々な粗さのフィルム風粒状パターンを作成することも可能となる。このように、記憶する粒状データの数は特に限定されない。
【0021】
以上のように、本実施形態では、予め記憶しておいた粒状データに基づいて、基本となる粒状画像を作成し、それを原画像のサイズに合わせてリサイズして原画像と合成するフィルム風粒状画像を生成する。これによって周期パターンノイズの発生が軽減されたフィルム風粒状効果を付加した合成画像が生成される。また、一時的にサイズXの基本粒状画像を経由して原画像と等しいサイズにリサイズを行うことにより、異なるサイズの画像を同じ画角で鑑賞した場合においても、同様の粒状感(粒状の大きさ・粗さ)を得ることできる。さらに、粒状データは特許文献1及び特許文献2の処理で用いるようなテンプレートデータよりも遥かに小さいサイズで済むため、メモリ容量の節約も同時に実現することができる。
【0022】
[第2の実施形態]
本実施形態では、基本粒状画像の作成処理が第1の実施形態と異なる。その他の部分は第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0023】
以下、図6の処理の概要図、図7のフローチャート図を参照して、本実施形態における、粒状データ131を用いた基本粒状画像作成処理について詳細を説明する。
本実施形態でも、粒状データ131に対して、カメラ内で取得できる動的な値を利用してランダムにアクセスする。しかし、本実施形態では、動的な値を粒状データ131の読み出し開始アドレスとして用いて、粒状データ131のデータをその開始アドレスから順に読みだすことで、基本粒状画像に貼りつける画素データを取得していく。
【0024】
S701では、処理時刻から粒状データの読み出し開始アドレスを決定し、そのアドレスを開始位置として複数画素分の画素値を所定データ幅単位としてデータ列を読み出す。本実施形態では、読み出し開始アドレス(開始点)から最終のアドレスと最初のアドレスを連続しているものとみなして読み出し開始アドレスの1つ前を読み出し終了アドレス(終了点)として、粒状データ131全体を1列のデータ列として読み出している。ここで、データ列を読み出す際、周期パターンをなるべく発生させないために、読み出し開始アドレスからアドレスが大きくなるように読み出すか小さくなるように読み出すかを交互にするなどしてもよい。
S702では、取得した画素値を、メモリ130上のサイズXである基本粒状画像のための一時的な領域へ隙間なく貼り付ける。この際、並べる方向は縦方向でもよく、横方向でもよい。
S703では、基本粒状画像の全領域に画素値を貼り付けたかどうか判断する。全領域に貼り終えていなければ、S701に戻り、新しい処理時刻から、新しい読み出し開始アドレスを決定する。これを繰り返し、S703で全領域に貼り付けたと判断したら基本粒状画像作成処理を終える。
【0025】
粒状データ131は、回転・反転してから読み出してもよく、本発明は読み出し方法を特に限定するものではない。また、回転・反転しながら貼り付けてもよく、本発明は貼り付け方法を特に限定するものではない。次に、またランダムに指定した位置を開始点、開始点の1画素前の位置を終了点とするフィルム風粒状データを読み出し、基本粒状画像のための一時的な領域に隙間なく貼り付ける。このようにランダムに読み出し開始点を変えながら順々に読み出し、サイズXの基本粒状画像を得る。
【0026】
以上のように、本実施形態では、予め記憶しておいた粒状データに基づいて、基本となる粒状画像を作成し、それを原画像のサイズに合わせてリサイズして原画像と合成するフィルム風粒状画像を生成する。これによって周期パターンノイズの発生が軽減されたフィルム風粒状効果を付加した合成画像が生成される。また、一時的にサイズXの基本粒状画像を経由して原画像と等しいサイズにリサイズを行うことにより、異なるサイズの画像を同じ画角で鑑賞した場合においても、同様の粒状感(粒状の大きさ・粗さ)を得ることできる。さらに、粒状データは特許文献1及び特許文献2の処理で用いるようなテンプレートデータよりも遥かに小さいサイズで済むため、メモリ容量の節約も同時に実現することができる。本実施形態では、ランダム値を取得する回数が1画素ごとに画素値を取得する第1の実施形態と比べて少なくなるので、より長い周期で更新(サンプリング)されるカメラ内で取得できる動的な値をも利用することができる。
【0027】
[第3の実施形態]
本実施形態では、基本粒状画像の作成処理が第1の実施形態と異なる。その他の部分は第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0028】
以下、図8の処理の概要図、図9のフローチャート図を参照して、本実施形態における、粒状データ131を用いた基本粒状画像作成処理について詳細を説明する。
本実施形態でも、粒状データ131に対して、カメラ内で取得できる動的な値を利用してランダムにアクセスする。しかし、本実施形態では、粒状データ131を2次元平面画像の画像データとして扱い、面内から矩形単位で画像データを抜き出す。すなわち、動的な値を粒状データ131の読み出し開始アドレスとして用いて、粒状データ131からそのアドレスを左上端としてサイズXよりサイズの小さいサイズYの画像データを抜き出す。
【0029】
S901では、処理時間から粒状データの読み出し開始アドレスを決定し、そのアドレスを左上端として粒状データ131よりも小さなサイズYの画像を抜き出す。この際、読み出し開始アドレスは、粒状データからサイズYを抜き出すことができる範囲内において決定される。また、本実施形態では、サイズYの縦、横の画素数は、サイズXの縦、横の画素数の約数にそれぞれなっているため、サイズYの画像データはサイズXの領域に隙間なく貼り付けることができるようになっている。これに限らず、サイズYをサイズXより小さい任意のサイズとし、サイズXからはみ出す領域があっても気にせずに貼り付けていく方法も当然考えられる。
S902では、取得したサイズYの画像データを、メモリ130上のサイズXである基本粒状画像のための一時的な領域へ隙間なく貼り付ける。この際、並べる方向は縦方向でもよく、横方向でもよい。また、周期パターンをなるべく発生させないために、サイズYの画像を回転・反転させながら並べてもよい。
S903では、基本粒状画像の全領域に画素値を貼り付けたかどうか判断する。全領域に貼り終えていなければ、S901に戻り、新しい処理時刻から、新しい読み出し開始アドレスを決定する。これを繰り返し、S903で全領域に貼り付けたと判断したら基本粒状画像作成処理を終える。
【0030】
以上のように、本実施形態では、予め記憶しておいた粒状データに基づいて、基本となる粒状画像を作成し、それを原画像のサイズに合わせてリサイズして原画像と合成するフィルム風粒状画像を生成する。これによって周期パターンノイズの発生が軽減されたフィルム風粒状効果を付加した合成画像が生成される。また、一時的にサイズXの基本粒状画像を経由して原画像と等しいサイズにリサイズを行うことにより、異なるサイズの画像を同じ画角で鑑賞した場合においても、同様の粒状感(粒状の大きさ・粗さ)を得ることできる。さらに、粒状データは特許文献1及び特許文献2の処理で用いるようなテンプレートデータよりも遥かに小さいサイズで済むため、メモリ容量の節約も同時に実現することができる。また本実施形態では、粒状データ131からサイズYを抜き出すことができる範囲内に読み出し開始アドレスが限定されるため、よりランダム値としてばらつきが少ないカメラ内で取得できる動的な値をも利用することができる。また、上記各実施形態は、前述の通りPC、プリンタ、スキャナ等の画像処理装置においても適用できる。この場合、PC等はフィルム風粒状合成部90、メモリ130などを備え、入力された画像データに対して前述した処理を行う。もちろん、RAW画像データを現像処理するブロックを備えて、RAW画像データに対しても処理が行えるような実施形態も考えられる。
【0031】
[他の実施形態]
また、本発明の実施形態の目的は、次のような方法によっても達成される。すなわち、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体(または記録媒体)を、前記ソフトウェアを実行可能なシステムあるいは装置に供給する。そして、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行する。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、本発明には次のような場合も含まれる。すなわち、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される。
【0032】
さらに、次のような場合も本発明に含まれる。すなわち、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される。
本発明を上記記憶媒体に適用する場合、その記憶媒体には、先に説明した手順に対応するプログラムコードが格納されることになる。
【0033】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0034】
10 結像光学系(レンズ)
20 撮像素子
30 A/D変換部
40 ホワイトバランス部
50 色分離部
60 マトリクス変換部
70 ガンマ変換部
80 色調整部
90 フィルム風粒状合成部
91 基本粒状画像作成部
92 リサイズ部
93 フィルタ処理部
94 画像合成部
100 圧縮部
110 記録部
120 制御部
130 メモリ
131 粒状データ
140 I/F部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された画像データの画像にフィルム風粒状効果を付加する画像処理装置であって、
複数の画素値からなる粒状データからランダムに読み出した画素値を用いて、前記粒状データより大きい所定のサイズの基本粒状画像を生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された基本粒状画像を前記入力された画像データと同サイズにリサイズするリサイズ手段と、
前記リサイズ手段によってリサイズされた前記基本粒状画像を前記入力された画像データに合成する合成手段と、を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記生成手段は、前記粒状データから1画素単位でランダムに読み出すことを繰り返して前記基本粒状画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記生成手段は、前記粒状データから所定のデータ幅単位でランダムに、読み出し開始位置を変えて読み出すことを繰り返して前記基本粒状画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記生成手段は、前記粒状データを2次元平面画像の画像データとして扱い、面内から矩形単位でランダムに読み出し位置を変えて読み出すことを繰り返して前記基本粒状画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記生成手段は、さらに読み出しごとに前記粒状データを回転もしくは反転してから読み出すことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記粒状データは、最小粒状単位を1画素とすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記粒状データの画素値は、画素ごとに乱数によって決定されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記基本粒状画像をリサイズする際に、所定の係数でフィルタ処理するフィルタ処理手段を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記生成手段は、カメラ内で取得できる動的な値を利用して前記粒状データからランダムに画素値を読み出すことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【請求項10】
入力された画像データの画像にフィルム風粒状効果を付加する画像処理装置の制御方法であって、
複数の画素値からなる粒状データから画素値をランダムに読み出す読み出しステップと、
前記読み出しステップで読みだされた画素値を用いて前記粒状データより大きい所定のサイズの基本粒状画像を生成する生成ステップと、
前記生成ステップで生成された基本粒状画像を、前記入力された画像データと同サイズにリサイズするリサイズステップと、
前記リサイズステップでリサイズされた前記基本粒状画像を前記入力された画像データに合成する合成ステップと、を有することを特徴とする画像処理装置の制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の画像処理装置の制御方法を実行可能なプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムを記憶した記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−43268(P2012−43268A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185092(P2010−185092)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】