説明

画像処理装置、画像処理プログラムおよび画像処理方法

【課題】カラー画像データを、元のカラー画像の色を区別可能なモノクロ画像データに変換する画像処理装置、画像処理プログラム、および画像処理方法を提供すること。
【解決手段】画像処理装置100のプリンタードライバー40は、カラー画像の色に対応するハッチ模様を単色の濃度により表すハッチパターンを決定するパターン種類決定部41と、ハッチ模様の背景領域に適用する背景濃度を決定するパターン濃度決定部42と、背景領域に背景濃度を有するハッチパターンが適用されたモノクロ画像データを生成するモノクロ画像データ生成部43と、を有する。パターン濃度決定部42は、カラー画像の色に応じてハッチパターンの背景濃度を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー画像データをモノクロ画像データに変換する画像処理装置、画像処理プログラムおよび画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カラー画像データをモノクロ画像データに変換するため、下記の式(1)に従ってカラー画像データのRGB値からグレー値を算出し、グレー値で表されるモノクロ画像データを得る手法が広く用いられている。グレー値には、元のカラー画像の明度情報が反映されるため、この手法によれば、元のカラー画像の明度が反映されたモノクロ画像の画像データを得ることができる。なお、式(1)の「R」,「G」,「B」は、それぞれ、カラー画像データのレッドの階調値、グリーンの階調値、ブルーの階調値であり、「Gray」はグレー値、すなわち黒単色の濃度である。
Gray=0.3R+0.59G+0.11B …(1)
【0003】
また、式(1)に従うグレー変換によってカラー画像データをモノクロ画像データに変換した場合、例えば、(R,G,B)=(255,0,0)、(0,128,0)などの複数のRGB値は同等のグレー値に変換される。このように、変換前のカラー画像においては異なっていた2つの色が、モノクロ画像においては同じグレー値で表現されることとなり、変換後のモノクロ画像から変換前の元のカラー画像の色を区別できなくなることがあった。
【0004】
そこで、特許文献1には、カラー画像をシアン、マゼンタ、イエローの各色画像に変換し、各色画像に対して異なるパターンを生成させるディザマトリクスを適用することによって各色のドットパターンを生成し、各色のドットパターンを合成することによりモノクロ画像データを得る手法が提案されている。特許文献1に記載の手法によれば、シアン、マゼンタ、イエローの各色についての互いに異なるパターンを重畳したモノクロ画像が得られるので、例えば、(R,G,B)=(255,0,0)、(0,128,0)など、グレー値に変換した場合には同等の値となる色であっても、元のカラー画像における色の違いが、異なるパターンの模様となってモノクロ画像に反映される。したがって、変換前のカラー画像に、グレー変換した場合には区別がつかなくなる色が用いられていたとしても、元のカラー画像における色の違いを区別可能なモノクロ画像の画像データに変換できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−23895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の手法では、モノクロ画像データの画像は、シアン、マゼンタ、イエローの各色のドットパターンを重畳したものになるので、各色画像のドットパターンの模様よりさらに細かく、かつ、膨大な数の種類の模様がモノクロ画像に表れることになる。このため、特許文献1に記載の手法により生成されたモノクロ画像では、ユーザーにとってはパターンの模様を区別し難く、元のカラー画像における色の違いが分かり難いという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]カラー画像を表すカラー画像データをモノクロ画像データに変換する画像処理装置であって、前記カラー画像の色に対応する模様を単色の濃度により表す単色パターンを決定するパターン決定部と、前記単色パターンの画像領域のうち前記模様の背景となる領域の背景濃度を決定するパターン濃度決定部と、前記カラー画像に対応する画像領域に、前記背景濃度を有する前記単色パターンが適用されたモノクロ画像の前記モノクロ画像データを生成するモノクロ画像データ生成部と、を備え、前記パターン濃度決定部は、前記カラー画像の色に応じて前記背景濃度を変化させることを特徴とする画像処理装置。
【0009】
この構成によれば、カラー画像の色は、単色パターンの模様に加えて、さらに模様の背景となる領域における背景濃度の変化としてモノクロ画像に反映される。したがって、ユーザーが視認した場合に、単色パターンの模様およびその背景の濃度変化から、元のカラー画像における色の違いを容易に区別可能なモノクロ画像の画像データを得ることができる。
【0010】
[適用例2]上記画像処理装置において、前記パターン濃度決定部は、前記カラー画像の明度に応じて前記背景濃度を変化させることを特徴とする画像処理装置。
【0011】
この構成によれば、カラー画像の明度に応じて、モノクロ画像データの背景濃度が変化するので、ユーザーが視認した場合に、元のカラー画像において明度が異なる色間の区別が可能なモノクロ画像の画像データを得ることができる。
【0012】
[適用例3]上記画像処理装置において、前記パターン濃度決定部は、前記モノクロ画像の明度が前記カラー画像の明度に等しくなるように前記背景濃度を決定することを特徴とする画像処理装置。
【0013】
この構成によれば、カラー画像の明度がモノクロ画像に保存されるので、明度の再現性に優れたモノクロ画像データを得ることができる。
【0014】
[適用例4]上記画像処理装置において、前記パターン濃度決定部は、前記カラー画像について前記単色パターンが適用される画像領域の平均明度が、前記単色パターンの平均明度に等しくなるように前記単色パターンの前記背景濃度を決定することを特徴とする画像処理装置。
【0015】
この構成によれば、単色パターンが適用される画像領域ごとにカラー画像の明度がモノクロ画像に保存されるので、明度の再現性により優れたモノクロ画像データを得ることができる。
【0016】
[適用例5]上記画像処理装置において、前記パターン決定部は、前記カラー画像データのカラー画像の色相に対応する模様を単色の濃度により表す前記単色パターンを決定することを特徴とする画像処理装置。
【0017】
この構成によれば、カラー画像の色相をモノクロ画像データに反映させることができる。
【0018】
[適用例6]上記画像処理装置において、前記単色パターンは、単色の線により模様を表すハッチパターンであり、前記パターン決定部は、前記カラー画像の色の明度が低いほど線密度が高い模様の前記ハッチパターンを、前記カラー画像に適用するパターンとして決定することを特徴とする画像処理装置。
【0019】
この構成によれば、カラー画像の明度が低いほどハッチングの線密度が高くなるため、モノクロ画像を視認したユーザーに対して、カラー画像により近い印象を与えることが可能なモノクロ画像の画像データを得ることができる。
【0020】
[適用例7]上記画像処理装置において、
前記パターン濃度決定部は、色相環を区画した複数の色領域において互いに隣接する第1の色と第2の色のうち、前記第1の色に対応させる前記単色パターンの模様の濃度を前記背景濃度より大きくし、前記第2の色に対応させる前記単色パターンの模様の濃度を前記背景濃度より小さくすることを特徴とする画像処理装置。
【0021】
この構成によれば、色相環を区画した複数の色領域において互いに隣接するカラー画像の第1の色と第2の色とについて、一方は背景濃度より大きい濃度、他方は背景濃度より小さい濃度によってモノクロ画像の模様が表される。したがって、元のカラー画像の色相環を区画した複数の色領域のうち隣りあう色領域に含まれ、カラー画像においては区別がつき難い第1の色と第2の色とについても、色の違いをより区別しやすいモノクロ画像の画像データを得ることができる。
【0022】
[適用例8]上記画像処理装置において、前記パターン決定部が、第3の色と補色の関係になる第4の色に対応させる前記単色パターンは、前記第3の色に対応させる前記単色パターンの模様を回転させた模様を表すことを特徴とする画像処理装置。
【0023】
この構成によれば、第3の色と補色の関係となる第4の色に対応する単色パターンの模様は、第3の色に対応する単色パターンの模様を回転させたものとなる。これにより、元のカラー画像において第3の色と第4の色とが補色の関係であることをモノクロ画像から認識できる。
【0024】
[適用例9]上記画像処理装置において、前記パターン決定部は、前記カラー画像の彩度に応じて、前記単色パターンの模様を変化させることを特徴とする画像処理装置。
【0025】
この構成によれば、モノクロ画像に表れる単色パターンの模様が、カラー画像の彩度に応じて変化するので、元のカラー画像における彩度の違いを区別可能なモノクロ画像の画像データを得ることができる。
【0026】
[適用例10]上記画像処理装置において、前記カラー画像の種類を判定する画像種類判定部を備え、前記モノクロ画像データ生成部は、前記画像種類判定部の判定結果に対応して、単色の濃度により表されるモノクロ画像に変換することを特徴とする画像処理装置。
【0027】
この構成によれば、互いに同じ色のオブジェクト画像同士が重なる場合であっても、オブジェクト画像の属性の種類が異なるオブジェクト画像同士は、互いに埋もれあうことなく、元のカラー画像を容易に区別可能なモノクロ画像の画像データを得ることができる。
【0028】
[適用例11]上記画像処理装置において、前記カラー画像が、前記単色パターンを適用しないよう予め定められた禁止画像を含むか否かを判定する禁止画像判定部を備え、前記モノクロ画像データ生成部は、前記カラー画像に含まれる前記禁止画像に対して、前記単色パターンを適用することなく、単色の濃度により表されるモノクロ画像に変換することを特徴とする画像処理装置。
【0029】
この構成によれば、予め定められた画像については、単色パターンの模様が付加されないモノクロ画像の画像データが生成される。したがって、例えば、企業のロゴなど、忠実に表現する必要があり、模様を付加すると不都合が生じる画像については、模様を付加することなく、元のカラー画像を忠実に表したモノクロ画像データを得ることができる。
【0030】
[適用例12]上記画像処理装置において、前記カラー画像の色と、前記背景濃度とを予め対応付けた対応情報を備え、前記パターン濃度決定部は、前記対応情報を参照して前記カラー画像の色に応じた前記背景濃度を決定することを特徴とする画像処理装置。
【0031】
この構成によれば、単色パターンの背景濃度は対応情報に従って決定されるので、簡易な処理によって、カラー画像データから、元のカラー画像における色の違いを表現したモノクロ画像データを得ることができる。
【0032】
[適用例13]上記画像処理装置において、前記パターン決定部は、縦線の模様を表す前記単色パターン、横線の模様を表す前記単色パターン、格子線の模様を表す前記単色パターン、斜め線の模様を表す前記単色パターン、斜め格子線の模様を表す前記単色パターンのうちいずれか2以上を含む複数の前記単色パターンのうちから、前記カラー画像の色に応じて前記カラー画像に対応させる前記単色パターンを選択することを特徴とする画像処理装置。
【0033】
この構成によれば、カラー画像の色を、縦線、横線、格子線、斜め線、斜め格子線のうちいずれか2以上により表現したモノクロ画像データを得ることができる。
【0034】
[適用例14]カラー画像を表すカラー画像データをモノクロ画像データに変換するための画像処理プログラムであって、コンピューターを、前記カラー画像の色に対応する模様を単色の濃度により表す単色パターンを決定するパターン決定部と、前記単色パターンの画像領域のうち前記模様の背景となる領域の背景濃度を決定するパターン濃度決定部と、前記カラー画像に対応する画像領域に、前記背景濃度を有する前記単色パターンが適用されたモノクロ画像の前記モノクロ画像データを生成するモノクロ画像データ生成部、として機能させ、前記パターン濃度決定部は、前記カラー画像の色に応じて前記背景濃度を変化させることを特徴とする画像処理プログラム。
【0035】
この画像処理プログラムによれば、カラー画像データから、ユーザーが視認した場合に元のカラー画像における色の違いを区別し易いモノクロ画像の画像データを得ることができる。
【0036】
[適用例15]カラー画像を表すカラー画像データをモノクロ画像データに変換する画像処理方法であって、前記カラー画像の色に対応する模様を単色の濃度により表す単色パターンを決定するステップと、前記単色パターンの画像領域のうち前記模様の背景となる領域の背景濃度を決定するステップと、前記カラー画像に対応する画像領域に、前記背景濃度を有する前記単色パターンが適用されたモノクロ画像の前記モノクロ画像データを生成するステップと、を含み、前記カラー画像の色に応じて前記背景濃度を変化させることを特徴とする画像処理方法。
【0037】
このようにすれば、カラー画像の色は、単色パターンの模様に加えて、さらに背景濃度の変化としてモノクロ画像に反映されるので、ユーザーが視認した場合に元のカラー画像における色の違いを区別し易いモノクロ画像の画像データを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1の実施形態に係る印刷システムの概略構成を示した図である。
【図2】画像処理装置のソフトウェア構成を示した図である。
【図3】パターン選択テーブルの一例を示した図である。
【図4】ハッチパターンの割り当てを説明する説明図である。
【図5】色相環上の色相とハッチパターンとの対応例を示した図である。
【図6】画像処理装置が行う処理の流れを示したフローチャートである。
【図7】注目画素に対するハッチパターンの割り当てを説明する説明図である。
【図8】第2実施形態における画像処理装置の構成を示した図である。
【図9】第3実施形態における画像処理装置の構成を示した図である。
【図10】変形例1の説明図である。
【図11】変形例4の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、第1の実施形態では、画像処理装置の一例としてのホストコンピューターを含む印刷システムについて説明する。
【0040】
図1は、第1の実施形態に係る印刷システムの概略構成を示した図である。図1に示すように、印刷システム1は、ホストコンピューター10と、プリンター20と、を備え、ホストコンピューター10とプリンター20とは相互にデータ通信可能に接続されている。
【0041】
プリンター20は、用紙などの媒体に印刷する印刷エンジン21と、印刷エンジン21の動作などを制御するコントローラー22と、を備えている。プリンター20は、コントローラー22の制御により、ホストコンピューター10から印刷ジョブを受信する処理、印刷ジョブに従う印刷を印刷エンジン21に実行させる処理などを行う。
【0042】
ホストコンピューター10は、例えば、プリンタードライバーがインストールされた汎用のパーソナルコンピューターであり、プリンター20に対して印刷ジョブを送信するプリンター20のホスト装置である。このホストコンピューター10は、CPU11と、ROM12と、RAM13と、ハードディスクドライブ14と、読取装置15と、通信I/F16と、を備えている。ホストコンピューター10のこれらの構成は、バス17に接続されており、バス17を介してデータ通信可能になっている。
【0043】
CPU11は、ホストコンピューター10の各構成を制御する制御装置である。ROM12はホストコンピューター10を制御するための所定のプログラムなどが記録された不揮発性のメモリー、RAM13はワーキングメモリーなどとして用いられる汎用のメモリーである。
【0044】
ハードディスクドライブ14には、プリンター20のドライバープログラムDP、後述するパターン選択テーブル(対応情報)PTおよびパターン画像データベースPDBが予め格納されている。なお、ドライバープログラムDPは、ドライバープログラムDPを記録した記録媒体Mによってホストコンピューター10に供給され、ハードディスクドライブ14には、読取装置15が記録媒体Mから読み出したプログラムが格納される。なお、記録媒体Mの例としては、CD−ROM、DVD−ROMなどの光ディスクの他、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、USBメモリー、メモリーカードなどを挙げることができる。記録媒体Mには、さらにパターン選択テーブルPTおよびパターン画像データベースPDBが記録されており、ドライバープログラムDPとともにパターン選択テーブルPTおよびパターン画像データベースPDBがハードディスクドライブ14に格納される。もっとも、ドライバープログラムDP、パターン選択テーブルPTおよびパターン画像データベースPDBがホストコンピューター10に供給される形態としてはこれに限られることなく、例えば、電気通信回線や光通信回線を介して所定のサーバーから供給されるようにしてもよい。
【0045】
通信I/F16は、ケーブルまたは無線通信によってプリンター20と接続するインターフェイス部分である。プリンター20とホストコンピューター10との通信は、通信I/F16を介して行われる。
【0046】
また、ホストコンピューター10のCPU11が、ハードディスクドライブ14に格納されたドライバープログラムDPを読み出して実行することによりプリンタードライバーがインストールされて、ホストコンピューター10は画像処理装置100として機能する。以下、画像処理装置100について説明する。
【0047】
図2は、画像処理装置100のソフトウェア構成を示した図である。図2に示すように、画像処理装置100は、アプリケーション30と、プリンタードライバー40と、を有している。
【0048】
アプリケーション30は、文書作成ソフトウェアやウェブブラウザーなど、プリンター20に対する印刷要求元となるソフトウェアである。アプリケーション30は、印刷要求および印刷の対象とするカラー画像データを生成してプリンタードライバー40に受け渡す。
【0049】
プリンタードライバー40は、プリンター20による印刷を制御するためのソフトウェアであり、アプリケーション30から受け取った印刷要求およびカラー画像データから、プリンター20が処理可能なデータ形式の印刷データを生成し、通信I/F16を介してプリンター20に印刷データを送信する。これにより、プリンタードライバー40は、プリンター20に印刷を実行させる。
【0050】
また、本実施形態のプリンタードライバー40は、カラー画像データを、ハッチ模様付きのモノクロ画像データに変換することにより、元のカラー画像における色の違いをハッチングの模様によって区別可能とするモノクロ画像をプリンター20に印刷させる機能を有している。このハッチ模様付きモノクロ印刷の機能を実現するため、プリンタードライバー40は、パターン種類決定部(パターン決定部)41と、パターン濃度決定部42と、モノクロ画像データ生成部43と、を有している。なお、プリンタードライバー40のこれらの構成は、CPU11がドライバープログラムDPを実行することによって機能している。
【0051】
パターン種類決定部41は、カラー画像データのカラー画像の色、特に色相に応じて、カラー画像データの画像領域に対して適用するハッチパターンを決定する処理を行う。なお、本実施形態では、縦線、横線、格子線、斜め線、斜め格子線などのハッチ模様を単色の濃度で表した複数種類のハッチパターン(単色パターン)が用いられる。パターン種類決定部41は、複数種類のハッチパターンから、カラー画像に適用するハッチ模様のハッチパターンを選択する。
【0052】
パターン濃度決定部42は、カラー画像データのカラー画像の色、特に明度に応じて、ハッチパターンの濃度を決定する処理を行う。なお、本実施形態のハッチパターンは、ハッチ模様の背景となる背景領域と、背景に対しての前景となる、ハッチ模様自体の前景領域とを含んでいる。パターン濃度決定部42は、背景領域における単色の濃度(以下、「背景濃度」という)、および前景領域における単色の濃度(以下、「前景濃度」という)を決定する。
【0053】
モノクロ画像データ生成部43は、パターン種類決定部41によって決定されたハッチ模様を有するとともに、パターン濃度決定部42によって決定された背景濃度および前景濃度を有するハッチパターンを、カラー画像の画像領域に適用する処理を行う。これにより、モノクロ画像データ生成部43は、ハッチ模様付きのモノクロ画像データを生成する。
【0054】
ここで、上述したパターン種類決定部41およびパターン濃度決定部42による処理は、パターン選択テーブルPTおよびパターン画像データベースPDBの内容に従って行われる。次に、カラー画像データをハッチ模様付きのモノクロ画像データに変換する手法を説明するため、パターン選択テーブルPTおよびパターン画像データベースPDBについて説明する。なお、以下の説明においては、カラー画像データは、カラー画像の各画素について、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各色を8ビットの階調値「0〜255」で表すRGB値を有するものとする。モノクロ画像データは、モノクロ画像の各画素について、K(ブラック)の色を8ビットの階調値「0〜255」で表したK値、すなわちK単色の濃度を有するものとする。さらに、カラー画像データのRGB値に関して、(R,G,B)=(255,255,255)が白、(R,G,B)=(0,0,0)が黒に対応し、K値に関して、K=255が黒、K=0が白に対応するものとする。
【0055】
図3は、パターン選択テーブルPTの一例を示した図である。図3に示すように、パターン選択テーブルPTは、カラー値であるRGB値に対して、パターン種類、背景濃度および前景濃度が予め対応付けられている。
【0056】
パターン選択テーブルPTのパターン種類の欄には、上述したように、縦線、横線、格子線、斜め線、斜め格子線などの複数種類のハッチパターンのうちから、カラー値に対応させるハッチパターンの種類が指定されている。背景濃度の欄には、カラー値に対応させる背景濃度の値が指定されている。前景濃度の欄には、カラー値に対応させる前景濃度の値が指定されている。
【0057】
このパターン選択テーブルPTにより、カラー画像のRGB値に対応するハッチ模様のハッチパターンと、背景濃度および前景濃度が定まる。具体的には、カラー画像データをモノクロ画像データに変換する際、パターン種類決定部41は、パターン選択テーブルPTを参照して、カラー画像データの画像領域に対して、パターン選択テーブルPTのパターン種類の欄に指定されたハッチ模様のハッチパターンを選択する。パターン濃度決定部42は、パターン選択テーブルPTを参照して、ハッチパターンの背景濃度を、パターン選択テーブルPTの背景濃度の欄によって指定された濃度に決定するとともに、ハッチパターンの前景濃度を、パターン選択テーブルPTの前景濃度の欄に指定された前景濃度に決定する。
【0058】
パターン画像データベースPDBには、縦線、横線、格子線、斜め線、斜め格子線などのパターン種類ごとに、該当するハッチパターンの画像データが予め格納されている。ハッチパターンは、例えば、32×32画素などの所定サイズの画像であり、少なくとも、ハッチパターンの画像領域における背景の領域と前景の領域とを示す情報が含まれている。したがって、後述するように、パターン濃度決定部42は、パターン画像データベースPDBを参照することにより、画像領域に対してハッチパターンを適用した場合に、その画像領域において注目する画素が、背景領域と前景領域とのいずれに該当するかの判断が可能になっている。
【0059】
次に、パターン選択テーブルPTおよびパターン画像データベースPDBを用いた処理の概要について説明する。ここでは、画像全域に(R,G,B)=(0,0,239)のカラー値を有するカラー画像CPを例にして説明する。
【0060】
図4(a)に示すように、ハッチパターンは、カラー画像CPの画像領域を、ハッチパターンと同じサイズで区画した単位領域UAごとに割り当てられる。単位領域UAに割り当てるハッチパターンの種類は、パターン選択テーブルPTに従って決められる。図3に示したパターン選択テーブルPTによれば、カラー画像のRGB値、すなわち(R,G,B)=(0,0,239)のカラー値に対応するパターン種類は「斜め格子線」であるため、カラー画像CPに対して「斜め格子線」のハッチパターンPが適用される。したがって、図4(b)に示すように、カラー画像CPを変換したモノクロ画像MPには、パターン画像データベースPDBに登録された斜め格子線のハッチパターンが単位領域UAごとに適用される。
【0061】
また、図3に示したパターン選択テーブルPTによれば、(R,G,B)=(0,0,239)に対応する背景濃度はK=19、前景濃度はK=51に決定されるので、モノクロ画像MPの背景領域BAの濃度はK=19、前景領域FAの濃度はK=51となる。
【0062】
こうして、パターン選択テーブルPTおよびパターン画像データベースPDBにより定まるハッチパターンPが単位領域UAごとに適用される。なお、図4では、1つの単位領域UAに対してのみハッチパターンPが適用されているが、実際には、各単位領域UAに対してハッチパターンPが適用される。
【0063】
以上のようにして用いられるパターン選択テーブルPTは、次の(1)〜(5)の要件を満たすように予め設定されている。
(1):色相に応じたハッチ模様の割り当てに関する要件
(2):明度に応じた背景濃度の変化に関する要件
(3):明度に応じたハッチ模様の線密度に関する要件
(4):補色の関係となる色間におけるハッチ模様の割り当てに関する要件
(5):隣りあう色領域となる色間におけるハッチ模様の割り当てに関する要件
【0064】
(1):色相に応じたハッチ模様の割り当てに関する要件
色の色相環を色相について区画した色領域ごとに、予め決められたハッチ模様のハッチパターンが割り当てられている。図5に、色相環上における色相とハッチパターンとの対応例を示す。図5の例では、色相環上における色相は色領域A1〜A12に区画され、色領域A1〜A12に対応してハッチパターンP1〜P12が割り当てられている。なお、色領域A1,A12はレッド系の色に対応しており、色領域A1は0°以上30°未満、色領域A12は330°以上360°未満の色相角に対応している。色領域A2,A3はイエロー系の色に対応しており、色領域A2は30°以上60°未満、色領域A3は60°以上90°未満の色相角に対応している。色領域A4,A5はグリーン系の色に対応しており、色領域A4は90°以上120°未満、色領域A5は120°以上150°未満の色相角に対応している。色領域A6,A7はシアン系の色に対応しており、色領域A6は150°以上180°未満、色領域A7は180°以上200°未満の色相角に対応している。色領域A8,A9はブルー系の色に対応しており、色領域A8は200°以上240°未満、色領域A9は240°以上280°未満の色相角に対応している。色領域A10,A11はマゼンタ系の色に対応しており、色領域A10は280°以上300°未満、色領域A11は300°以上330°未満の色相角に対応している。
【0065】
(2):明度に応じた背景濃度の変化に関する要件
カラー値と背景濃度との対応に関して、カラー値の明度に応じて背景濃度が変化するよう設定されている。これにより、例えば、カラー画像に含まれる2つの色間について、他の要件によって決まるハッチパターンPのハッチ模様が同じであっても、元のカラー画像における色の違いは背景濃度の変化としてモノクロ画像に反映される。なお、要件(2)の設定には、明度が反映されたグレー値や、L*a*b*表色系における明度などを用いることができ、これらの値が変わると背景濃度が変化するようカラー値と背景濃度とが設定されている。
【0066】
さらに、ハッチパターンPを適用する前の単位領域UAにおけるカラー画像のRGB値の平均明度と、ハッチパターンPを適用した後の単位領域UAにおけるハッチパターンPの背景濃度および前景濃度の平均明度とが等しくなるよう設定されている。すなわち、所定サイズのハッチパターンPについて、カラー画像のRGB値をパターン面積について平均したときの明度と、モノクロ画像のK値をパターン面積について平均したときの明度とが等しくなっている。なお、明度が等しくなるとは、明度が実質的に等しくなることを意味しており、明度が同一となることに限られるものではなく、人が視認した場合に等しく感じられる程度にわずかに明度が異なる場合を含むものである。これにより、カラー画像データをモノクロ画像データに変換する際、ハッチパターンPが適用される単位領域UAごとに明度が保存されることになる。例えば、カラー画像の明度が空間的に変化している場合、カラー画像の明度変化に追随して、単位領域UAごとにモノクロ画像の明度も変化することになるので、カラー画像の空間的な明度変化がモノクロ画像に反映される。
【0067】
(3):明度に応じたハッチ模様の線密度に関する要件
色相環上の色の明度と、ハッチパターンPのハッチ模様の線密度に関して、明度が低い色ほど線密度が高くなるように設定されている。例えば、図5のイエローの色領域A3とブルーの色領域A9に示すように、イエローの色領域A3については「縦線」のハッチ模様が割り当てられ、ブルーの色領域A9については縦線に加えて横線を含む「格子線」のハッチ模様が割り当てられている。すなわち、イエローより明度が低いブルーに、より線密度が高いハッチ模様のハッチパターンPが割り当てられている。これにより、元のカラー画像における明度の違いは、ハッチパターンPにおけるハッチ模様の線密度の違いとなってモノクロ画像に反映される。
【0068】
(4):補色の関係となる色間におけるハッチ模様の割り当てに関する要件
補色の関係となる2つの色間では、同じハッチ模様を回転させた関係、すなわちハッチ模様の角度のみが異なるハッチパターンPとなるよう設定されている。図5に示したように、例えば、120°〜150°の色相角に対応するハッチパターンP5のハッチ模様は、右上から左下に引いた斜線である。一方、これと補色となる300°〜330°の色相角に対応するハッチパターンP11のハッチ模様は、左上から右下に引いた斜線である。このように、互いに補色となる色間では、ハッチ模様を互いに回転させたハッチパターンPの関係となるので、元のカラー画像において補色の関係となる2つの色について、互いに補色の関係にあることがモノクロ画像に反映されることになる。なお、本実施形態では、図5に示すように、全色領域A1〜A12に対してはこの要件4を適用しておらず、補色の関係となる色領域A4と色領域A10、さらに色領域A5と色領域A11との間にのみ適用するようにしているが、全ての色領域Aに適用しても差し支えない。
【0069】
(5):隣りあう色領域となる色間におけるハッチ模様の割り当てに関する要件
互いに隣接しあう2つの色領域Aについて、一方の色領域Aに対応するハッチパターンPは前景濃度が背景濃度より小さく、他方の色領域Aに対応するハッチパターンPでは前景濃度が背景濃度より大きくなるように設定されている。図5において、例えば、0°〜30°の色相となる色領域A1に対応するハッチパターンP1は、パターン種類が「格子線」であり、前景濃度は背景濃度より大きく、ハッチ模様を構成する線の濃度は背景に比べて黒により近い。一方、色領域A1と同系統の色(レッド)に対応し、色領域A1に隣りあう色領域A12の色相330°〜360°に対応するハッチパターンP12は、パターン種類が「格子線」であり、前景濃度は背景濃度より小さく、ハッチングを構成する線の濃度は背景に比べて白により近い。このように、隣りあう色領域Aとなる色間において、前景濃度が背景濃度に対して反対の大きさとなる関係とすることにより、隣りあう色領域Aとなる2つの色の違いがモノクロ画像に反映される。
【0070】
次に、以上に説明した画像処理装置100が行う処理について図6のフローチャートに従って詳細に説明する。
【0071】
例えば、プリンタードライバー40が、アプリケーション30からカラー画像データのモノクロ印刷の印刷指示を受け取ると、図6の処理が開始される。処理を開始すると、パターン種類決定部41は、カラー画像データの画像領域に対して注目画素を設定し(ステップS10)、カラー画像データから注目画素のRGB値を取得する(ステップS11)。パターン種類決定部41は、パターン選択テーブルPTを参照して、取得したRGB値に対応するパターン種類を決定する(ステップS12)。
【0072】
次に、パターン濃度決定部42は、注目画素の座標が、ハッチパターンPの背景領域に対応するか否かを判断する(ステップS13)。図4にて述べたように、ハッチパターンPは、カラー画像の画像領域のうち、所定サイズの単位領域UAに対して割り当てられるので、ここでは、注目画素が、単位領域UAごとに割り当てられるハッチパターンPにおいて背景に該当する位置にあるのか、前景に該当する位置にあるのかを判定する。具体的には、図7に示すように、注目画素の座標を(a,b)、ハッチパターンPの大きさをN×N画素とすると、ハッチパターンPにおける注目画素の相対座標(x、y)は、次式(2)、(3)により求められる。なお、下記の式において、「mod」は除算した余りを返す演算子である。パターン濃度決定部42は、パターン画像データベースPDBに登録されたハッチパターンPの画像データを参照して、相対座標(x、y)がハッチパターンPにおける背景と前景のいずれに該当するかを判断する。
x=a mod N …(2)
y=b mod N …(3)
【0073】
注目画素が背景に対応する場合(ステップS13:Yes)、パターン濃度決定部42は、パターン選択テーブルPTを参照して、注目画素のRGB値に対応する背景濃度のK値を取得する(ステップS14)。一方、注目画素が前景領域に対応する場合(ステップS13:No)、パターン濃度決定部42は、パターン選択テーブルPTを参照して、注目画素のRGB値に対応する前景濃度のK値を取得する(ステップS15)。図7の例では、注目画素(a,b)に対応する相対座標(x、y)は、ハッチパターンPの背景領域BAに対応しているので、注目画素に対して背景濃度が取得されることになる。
【0074】
ステップS14またはステップS15において背景濃度または前景濃度のK値を取得すると、モノクロ画像データ生成部43は、モノクロ画像の画像領域のうち注目画素に対応する画素に、取得した濃度のK値を適用する(ステップS16)。これにより、モノクロ画像における注目画素に対応する画素は、ステップS12にて決定した種類のハッチパターンPに対応する濃度のK値を有することとなる。
【0075】
次に、モノクロ画像データ生成部43は、カラー画像の全画素についてステップS10〜S16の処理を行ったか否かを判断する(ステップS17)。全画素について処理を終えていない場合(ステップS17:No)、ステップS10に戻って、例えば、注目画素をラスター方向にスキャンすることにより新たな注目画素を設定し、新たな注目画素に対してステップS11以降の処理を行う。全画素について処理を終えると(ステップS17:Yes)、モノクロ画像の全画素について、ステップS12にて決定された種類のハッチパターンPに対応する濃度のK値を有した状態となり、モノクロ画像データ生成部43は、このモノクロ画像のモノクロ画像データを生成する(ステップS18)。生成されたモノクロ画像データは、プリンタードライバー40によってプリンター20に出力される(ステップS19)。これにより、アプリケーション30から受け渡されたカラー画像データのモノクロ印刷として、カラー画像の色に応じたハッチ模様付きのモノクロ画像が印刷される。
【0076】
以下、第1の実施形態の効果を記載する。
【0077】
(1)本実施形態の画像処理装置100によれば、パターン選択テーブルPTの要件(1)により、カラー画像データから、カラー画像の色相に応じたハッチ模様のハッチングが施されたモノクロ画像データが生成される。したがって、ハッチパターンPの模様から、元のカラー画像の色を区別可能なモノクロ画像の画像データを得ることができ、このモノクロ画像を印刷できる。
【0078】
(2)パターン選択テーブルPTの要件(2)により、他の要件によって適用されるハッチパターンPのパターン種類が同じであっても、元のカラー画像における色の違いが背景濃度の違いとしてモノクロ画像に反映される。したがって、ハッチ模様の背景濃度から、元のカラー画像における色を区別可能なモノクロ画像の画像データを得ることができる。
【0079】
さらに、ハッチパターンPが適用される単位領域UAごとにカラー画像の明度がモノクロ画像に保存される。例えば、カラー画像の明度が空間的に変化する場合、カラー画像の明度変化に追随して、単位領域UAごとにモノクロ画像の明度も変化することになるため、カラー画像の明度再現性に優れたモノクロ画像を得ることができる。
【0080】
(3)パターン選択テーブルPTの要件(3)により、元のカラー画像における明度の違いが、ハッチ模様の線密度の違いとなってモノクロ画像に反映され、明度が低く、暗い色ほど線密度が高いハッチ模様が付与される。このモノクロ画像によれば、モノクロ画像を視認したユーザーに対して、カラー画像により近い印象を与えることができる。
【0081】
(4)パターン選択テーブルPTの要件(4)により、補色の関係となる2つの色間では、ハッチ模様は互いに回転させた関係となる。これにより、モノクロ画像を視認したユーザーは、元のカラー画像における2つの色が補色の関係であることをモノクロ画像から認識できるようになる。
【0082】
(5)パターン選択テーブルPTの要件(5)により、隣りあう色領域Aとなる色間で、前景濃度が背景濃度に対して反対の値となる関係としたので、隣り合う色領域Aとなる色間で、色の違いがモノクロ画像に反映される。したがって、色領域Aが隣り合い、カラー画像において区別がつき難くなり易い2つの色についても、モノクロ画像においては色の違いを区別し易い。
【0083】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、カラー画像データのカラー画像を、ハッチ模様付きのモノクロ画像の画像データに変換する形態について説明したが、第2実施形態では、カラー画像データに含まれる1または複数のオブジェクト画像(カラー画像)のそれぞれについて、文字や記号データ等を示すテキスト属性、ベクトルデータ等を示す図形属性、ビットマップデータ等を示すグラフィック属性などのオブジェクト画像の種類を判定し、オブジェクト画像の属性の種類に応じてハッチ模様を付与する。なお、以下では、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付与し、詳細な説明を省略することとする。
【0084】
図8に、第2実施形態における画像処理装置200の構成を示す。図8に示すように、画像処理装置200のプリンタードライバー40は、画像種類判定部44と、パターン種類決定部41と、パターン濃度決定部42と、モノクロ画像データ生成部43と、を有している。
【0085】
画像種類判定部44は、カラー画像データに含まれるオブジェクト画像の種類を判定する。例えば、オブジェクト画像の種類がテキスト属性またはグラフィック属性であるかの判定を行う。なお、この判定は、例えば、カラー画像データに含まれる、オブジェクト画像の属性情報を参照することにより行われる。
【0086】
例えば、カラー画像データに含まれるオブジェクト画像のうち、テキスト属性やグラフィック属性以外のオブジェクト画像、すなわち、図形属性のオブジェクト画像に対しては、パターン種類決定部41およびパターン濃度決定部42が、ハッチ模様を付与することにより、ハッチ模様付きのモノクロのオブジェクト画像に変換される。
【0087】
一方、テキスト属性やグラフィック属性のオブジェクト画像に対しては、モノクロ画像データ生成部43は、グレー変換によりモノクロのオブジェクト画像に変換する。
【0088】
モノクロ画像データ生成部43は、テキスト属性やグラフィック属性についてはグレー変換したオブジェクト画像、テキスト属性やグラフィック属性以外のオブジェクト画像についてはハッチ模様付きのオブジェクト画像を含むモノクロ画像データを生成する。
【0089】
第2の実施形態によれば、カラー画像データに含まれるオブジェクト画像のうち、図形属性のオブジェクト画像についてはハッチ模様付きのモノクロ画像に変換されるので、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、カラー画像データに含まれるオブジェクト画像の種類に対応して、カラー画像データがハッチ模様付きのモノクロのオブジェクト画像に変換されるので、互いに同じ色のオブジェクト画像同士が重なる場合であっても、オブジェクト画像の属性の種類が異なるオブジェクト画像同士は、互いに埋もれあうことなく、元のカラー画像を容易に区別可能なモノクロ画像の画像データを得ることができる。
【0090】
(第3実施形態)
第3実施形態では、カラー画像データのカラー画像に、ハッチ模様の付与が予め禁止された禁止画像が含まれているかについて判定を行い、禁止画像の領域についてはハッチ模様を付与することなく、グレー変換によりモノクロ画像に変換する。なお、禁止画像の例としては、企業の社名ロゴのマークなどの特定の標章やハッチ模様などの特定の模様が付与された画像などが挙げられる。
【0091】
図9に、第3実施形態における画像処理装置300の構成を示す。図9に示すように、画像処理装置300のプリンタードライバー40は、禁止画像判定部45と、パターン種類決定部41と、パターン濃度決定部42と、モノクロ画像データ生成部43と、を有している。
【0092】
禁止画像判定部45は、カラー画像データのカラー画像に、禁止画像が含まれるかの判定を行う。この判定は、例えば、禁止画像のテンプレートを禁止画像データPRDとしてハードディスクドライブ14に予め登録しておき、登録されたテンプレートとカラー画像とのテンプレートマッチングによって行われる。
【0093】
そして、カラー画像データのカラー画像のうち、禁止画像ではない画像領域に対しては、パターン種類決定部41およびパターン濃度決定部42により、第1実施形態と同様に、ハッチ模様が付与されたモノクロ画像に変換される。
【0094】
一方、禁止画像の画像領域に対しては、モノクロ画像データ生成部43が、グレー変換によってモノクロ画像に変換する。さらに、モノクロ画像データ生成部43は、禁止画像の画像領域のモノクロ画像と、禁止画像ではない画像領域に対してハッチ模様が付与されたモノクロ画像とを合成したモノクロ画像データを生成する。
【0095】
第3の実施形態によれば、カラー画像のうち禁止画像の領域についてはハッチ模様が付与されることなく、グレー変換によってモノクロ画像に変換される。したがって、ハッチ模様の付与によって、企業の社名を表すロゴなどの標章やハッチ模様などの特定の模様が付与された画像などの表現を損ねてしまう不都合がなくなり、ユーザーにとっての利便性が向上する。
【0096】
もっとも、禁止画像に対してハッチ模様を付与しない処理方法としては、例えば、カラー画像データに複数のオブジェクト画像が含まれる場合、禁止画像を含むオブジェクト画像については、禁止画像の領域だけではなくオブジェクト画像の全域についてハッチ模様を付与しないようにしてもよい。
【0097】
以上、本発明に係る第1ないし第3の実施形態について説明したが、本発明はこれらの形態に限られることなく、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。以下、変形例について説明する。
【0098】
(変形例1)上記第1ないし第3の実施形態では、カラー画像に適用するハッチパターンPの種類を決定する際に、カラー画像の色相および明度を相関させて用いるようにしたが、ハッチパターンPの種類を決定する方法としてはこれに限られない。色相に応じてハッチパターンPの種類を決定してもよいし、明度に応じてハッチパターンPの種類を決定してもよい。
【0099】
また、彩度に応じてハッチパターンPの種類を決定するようにしてもよい。この場合、例えば、図10に示すように、カラー画像の彩度の高低に応じて、ハッチ模様の線密度を変えることが望ましい。すなわち、高彩度には、黒の線密度が低いハッチパターンPh、中程度の彩度には、黒の線密度が中程度のハッチパターンPm、低彩度には、黒の線密度が高いハッチパターンPlを割り当てる。もっとも、ハッチパターンPの前景濃度が、背景濃度より低い場合には、彩度が高いほど線密度が高くすることが望ましい。このようにすれば、カラー画像の彩度がモノクロ画像に反映されるので、元のカラー画像における彩度の違いを区別可能なモノクロ画像を印刷できる。
【0100】
(変形例2)上記実施形態では、カラー画像データを、ハッチングが付与されたモノクロ画像データに変換する処理をパターン選択テーブルPTに従って行うことによって要件(1)〜(5)を満たすようにしたが、テーブルを用いることなく演算するようにしてもよい。すなわち、カラー画像データのRGB値に対応する明度、色相などを演算によって算出し、演算結果を用いて要件(1)〜(5)を満たすハッチングを施すようにしてもよい。もっとも、明度、色相などを演算で求める場合に比べると、パターン選択テーブルPTを用いた場合の方が処理を高速化できる。
【0101】
(変形例3)上記実施形態では、カラー画像データとして、RGB各色について8ビットの階調値を有するデータ、モノクロ画像データとして、K単色について8ビットの階調値を有するデータを例にして説明したが、画像データが規定する色、階調数などについてこれに限られない。また、上記実施形態では、マトリクス状に配列された多数の画素の各画素についてRGB値を有するビットマップ形式のカラー画像データについて説明したが、カラー画像データとしてはこれに限られない。例えば、プリンタードライバー40は、ベクター形式など、ビットマップ以外の画像形式のカラー画像データを受け取り、プリンタードライバー40の内部処理でビットマップに展開してから、上記実施形態と同様の処理を行うようにしてもよい。また、モノクロ画像データについても、K単色の画像データに限られることなく、K以外の単色の画像を表すものであってもよい。
【0102】
(変形例4)上記実施形態では、ホストコンピューター10側の処理によって、カラー画像データを、ハッチングが付与されたモノクロ画像データに変換するようにしたが、プリンターの内部処理によってモノクロ画像データに変換するようにしてもよい。図11に示すように、プリンターのコントローラー22が、パターン種類決定部41、パターン濃度決定部42、モノクロ画像データ生成部43および印刷処理部23を有する画像処理装置として機能する。ホストコンピューターから送信されるカラー画像データに対して、パターン種類決定部41、パターン濃度決定部42およびモノクロ画像データ生成部43が第1の実施形態と同様の処理を行う。印刷処理部23が、ハッチ模様付きのモノクロ画像データに対してハーフトーン処理などを施して、印刷エンジン21に印刷させることにより、元のカラー画像における色の違いを区別可能なモノクロ画像が印刷される。
【0103】
また、ホストコンピューターとプリンターとが協働してハッチ模様付きのモノクロ画像データに変換するようにしてもよい。図11に示すシステムにおいて、ホストコンピューターのプリンタードライバー40は、パターン選択テーブルPTを参照して、パターン種類、背景濃度、前景濃度などのパラメーターを指定した指定情報を付加したカラー画像データをプリンターに送信する。プリンターのパターン種類決定部41は、カラー画像データに付加された指定情報に従ってパターン種類を決定し、パターン濃度決定部42は指定情報に従って背景濃度および前景濃度を決定するようにしてもよい。
【0104】
(変形例5)上記第1ないし第3の実施形態では、カラー画像に適用する単色パターンとしてハッチ模様を用いるようにしたが、単色パターンはこれに限られない。単色パターンは、所定の規則性を有する模様であればハッチ模様以外の模様であってもよい。
【符号の説明】
【0105】
1…印刷システム、10…ホストコンピューター、20…プリンター、21…印刷エンジン、22…コントローラー、23…印刷処理部、30…アプリケーション、40…プリンタードライバー、41…パターン決定部としてのパターン種類決定部、42…パターン濃度決定部、43…モノクロ画像データ生成部、44…画像種類判定部、45…禁止画像判定部、100…画像処理装置、P…単色パターンとしてのハッチパターン、PT…対応情報としてのパターン選択テーブル、PDB…パターン画像データベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラー画像を表すカラー画像データをモノクロ画像データに変換する画像処理装置であって、
前記カラー画像の色に対応する模様を単色の濃度により表す単色パターンを決定するパターン決定部と、
前記単色パターンの画像領域のうち前記模様の背景となる領域の背景濃度を決定するパターン濃度決定部と、
前記カラー画像に対応する画像領域に、前記背景濃度を有する前記単色パターンが適用されたモノクロ画像の前記モノクロ画像データを生成するモノクロ画像データ生成部と、を備え、
前記パターン濃度決定部は、前記カラー画像の色に応じて前記背景濃度を変化させることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記パターン濃度決定部は、前記カラー画像の明度に応じて前記背景濃度を変化させることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像処理装置において、
前記パターン濃度決定部は、
前記モノクロ画像の明度が前記カラー画像の明度に等しくなるように前記背景濃度を決定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記パターン濃度決定部は、
前記カラー画像について前記単色パターンが適用される画像領域の平均明度が、前記単色パターンの平均明度に等しくなるように前記単色パターンの前記背景濃度を決定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記パターン決定部は、前記カラー画像データのカラー画像の色相に対応する模様を単色の濃度により表す前記単色パターンを決定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記単色パターンは、単色の線により模様を表すハッチパターンであり、
前記パターン決定部は、前記カラー画像の色の明度が低いほど線密度が高い模様の前記ハッチパターンを、前記カラー画像に適用するパターンとして決定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記パターン濃度決定部は、色相環を区画した複数の色領域において互いに隣接する第1の色と第2の色のうち、前記第1の色に対応させる前記単色パターンの模様の濃度を前記背景濃度より大きくし、前記第2の色に対応させる前記単色パターンの模様の濃度を前記背景濃度より小さくすることを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記パターン決定部が、第3の色と補色の関係になる第4の色に対応させる前記単色パターンは、前記第3の色に対応させる前記単色パターンの模様を回転させた模様を表すことを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記パターン決定部は、前記カラー画像の彩度に応じて、前記単色パターンの模様を変化させることを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記カラー画像の種類を判定する画像種類判定部を備え、
前記モノクロ画像データ生成部は、前記画像種類判定部の判定結果に対応して単色の濃度により表されるモノクロ画像に変換することを特徴とする画像処理装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記カラー画像が、前記単色パターンを適用しないよう予め定められた禁止画像を含むか否かを判定する禁止画像判定部を備え、
前記モノクロ画像データ生成部は、前記カラー画像に含まれる前記禁止画像に対して、前記単色パターンを適用することなく、単色の濃度により表されるモノクロ画像に変換することを特徴とする画像処理装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記カラー画像の色と、前記背景濃度とを予め対応付けた対応情報を備え、
前記パターン濃度決定部は、前記対応情報を参照して前記カラー画像の色に応じた前記背景濃度を決定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記パターン決定部は、縦線の模様を表す前記単色パターン、横線の模様を表す前記単色パターン、格子線の模様を表す前記単色パターン、斜め線の模様を表す前記単色パターン、斜め格子線の模様を表す前記単色パターンのうちいずれか2以上を含む複数の前記単色パターンのうちから、前記カラー画像の色に応じて前記カラー画像に対応させる前記単色パターンを選択することを特徴とする画像処理装置。
【請求項14】
カラー画像を表すカラー画像データをモノクロ画像データに変換するための画像処理プログラムであって、
コンピューターを、
前記カラー画像の色に対応する模様を単色の濃度により表す単色パターンを決定するパターン決定部と、
前記単色パターンの画像領域のうち前記模様の背景となる領域の背景濃度を決定するパターン濃度決定部と、
前記カラー画像に対応する画像領域に、前記背景濃度を有する前記単色パターンが適用されたモノクロ画像の前記モノクロ画像データを生成するモノクロ画像データ生成部、として機能させ、
前記パターン濃度決定部は、前記カラー画像の色に応じて前記背景濃度を変化させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項15】
カラー画像を表すカラー画像データをモノクロ画像データに変換する画像処理方法であって、
前記カラー画像の色に対応する模様を単色の濃度により表す単色パターンを決定するステップと、
前記単色パターンの画像領域のうち前記模様の背景となる領域の背景濃度を決定するステップと、
前記カラー画像に対応する画像領域に、前記背景濃度を有する前記単色パターンが適用されたモノクロ画像の前記モノクロ画像データを生成するステップと、を含み、
前記カラー画像の色に応じて前記背景濃度を変化させることを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−42380(P2013−42380A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178274(P2011−178274)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】