画像処理装置、画像処理方法、およびコンピュータプログラム
【課題】拡大しまたは解像度を上げた画像の中のオブジェクトのエッジの見栄えを従来よりも良好にする。
【解決手段】画像形成装置1に、原稿画像の中の文字のエッジの位置を示すエッジ領域データ7Eを記憶するデータ格納部104と、原稿画像がα倍に拡大された際のその文字のエッジでありかつ拡大前と同じ幅であるエッジを求めるエッジ領域再計算部105と、求めたエッジに囲まれる領域に対してエッジを除去する処理を行うエッジ領域補正部106と、を設ける。
【解決手段】画像形成装置1に、原稿画像の中の文字のエッジの位置を示すエッジ領域データ7Eを記憶するデータ格納部104と、原稿画像がα倍に拡大された際のその文字のエッジでありかつ拡大前と同じ幅であるエッジを求めるエッジ領域再計算部105と、求めたエッジに囲まれる領域に対してエッジを除去する処理を行うエッジ領域補正部106と、を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の補正を行う装置および方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コピー、PCプリント、スキャン、ファックス、およびファイルサーバなどの様々な機能を備えた画像形成装置が普及している。このような画像形成装置は、「複合機」または「MFP(Multi Function Peripherals)」などと呼ばれる。
【0003】
画像形成装置は、多機能化に伴って、画像を様々な方法で取得し、加工し、出力することができる。
【0004】
例えば、画像形成装置は、用紙をスキャンすることによって画像を取得することができる。または、パーソナルコンピュータなどから画像データを受信することによって画像を取得することができる。
【0005】
また、画像形成装置は、画像の中の文字または絵などのオブジェクトのエッジを強調する加工を施すことができる。または、画像を拡大したり解像度を向上させたりすることができる。特許文献1には、文字のエッジの部分を補正し文字を強調させる方法が、開示されている。特許文献2には、画像の中の各画素が文字の領域および写真の領域のいずれに属するのかを判断する方法が、開示されている。
【0006】
また、画像形成装置は、画像を用紙に印刷することができる。または、画像データとして他の装置へ送信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−114922号公報
【特許文献2】特開2000−261659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、エッジを強調する処理の後に拡大の処理または解像度の向上の処理が行われると、エッジの幅を表す画素の数も多くなる。エッジは、本来、あるオブジェクトと他のオブジェクトとの境界を明確にするためのものである。したがって、エッジの幅をオブジェクトの大きさに応じて変更しても、ほとんど意味がない。むしろ、画像全体の見栄えに鑑みると、エッジの幅は、一定以上の大きさのオブジェクトであれば、オブジェクトの大きさに関わらず一定であることが望ましい。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑み、拡大しまたは解像度を上げた画像の中のオブジェクトのエッジの見栄えを従来よりも良好にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態に係る画像処理装置は、第一の画像の中のオブジェクトを表す第一のオブジェクト画像の第一のエッジを表す第一のエッジ画像の位置を示すエッジ位置データを記憶する記憶手段と、画素の数をα倍(α>1)に増やすことによって前記第一の画像のサイズまたは解像度を変更した画像である第二の画像の中の前記オブジェクトを表す第二のオブジェクト画像のエッジでありかつ前記第一のエッジと同じ幅を有するエッジである第二のエッジを表す第二のエッジ画像を前記エッジ位置データおよび前記特定の倍率に基づいて判別する、判別手段と、前記第二のエッジ画像によって表される周に囲まれる内領域に対してエッジを除去する処理を行うエッジ除去手段と、を有する。
【0011】
好ましくは、前記エッジ除去手段は、前記内領域のうちの、前記第一のエッジ画像を前記α倍に画素の数を増やした画像と重なる共通部分に対して、前記除去する処理を行う。
【0012】
または、前記エッジ除去手段は、前記内領域の各画素の色の属性を、当該画素を中心とする所定の範囲のすべての画素のうちの明度が最も低い画素の色の属性に変更することによって、前記除去する処理を行う。
【0013】
または、前記エッジ除去手段は、前記共通部分の各画素の色の属性を、前記第二のエッジ画像に近い画素ほど前記第二のエッジ画像の色の属性に近くなるように、かつ、遠い画素ほど前記共通部分によって表される周に囲まれる画素の色の属性に近くなるように、補正することによって、前記除去する処理を行う。
【0014】
本発明の他の形態に係る画像処理装置は、画像の中のオブジェクトを表すオブジェクト画像のうちのエッジを表すべきエッジ領域を判別するエッジ領域判別手段と、前記エッジ領域の内側に隣接する所定の幅の周の各画素を明度が高くなるように補正する補正手段と、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、拡大しまたは解像度を上げた画像の中のオブジェクトのエッジの見栄えを従来よりも良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】画像形成装置を有するネットワークシステムの構成の例を示す図である。
【図2】画像形成装置のハードウェア構成の例を示す図である。
【図3】画像処理回路の構成の例を示す図である。
【図4】原稿画像、エッジ、およびエッジ強調画像の例を示す図である。
【図5】拡大画像の例を示す図である。
【図6】エッジおよび膨張領域の位置関係の例を示す図である。
【図7】M×Nフィルタの例を示す図である。
【図8】補正拡大画像の例を示す図である。
【図9】図5のA−A’の各画素の濃度の分布の例を示す図である。
【図10】図8のB−B’の各画素の濃度の分布の例を示す図ある。
【図11】エッジおよびその付近の濃度の補正時の増加率の例を示す図である。
【図12】エッジおよびその付近の濃度の補正時の増加率の変形例を示す図である。
【図13】画像形成装置における全体的な処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は画像形成装置1を有するネットワークシステムの構成の例を示す図、図2は画像形成装置1のハードウェア構成の例を示す図、図3は画像処理回路10jの構成の例を示す図である。
【0018】
画像形成装置1は、一般に複合機またはMFP(Multi Function Peripherals)などと呼ばれる画像処理装置であって、コピー、PCプリント(ネットワークプリンティング)、ファックス、およびスキャナなどの機能を集約した装置である。
【0019】
画像形成装置1は、通信回線3を介してパーソナルコンピュータ2などの他の装置と接続可能である。
【0020】
画像形成装置1は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)10a、RAM(Random Access Memory)10b、ROM(Read Only Memory)10c、不揮発性記憶装置10d、操作パネル10e、NIC(Network Interface Card)10f、印刷装置10g、スキャナ10h、およびモデム10iのほか、画像処理回路10jなどによって構成される。
【0021】
スキャナ10hは、写真、文字、絵、図表などによって構成される原稿の画像を用紙から読み取って画像データを生成する装置である。
【0022】
画像処理回路10jは、スキャナ10hによって読み取られた原稿の画像の画像データまたはパーソナルコンピュータ2などから送信されてきた画像データを用いて画像処理を行う。これについては、後述する。
【0023】
印刷装置10gは、画像処理回路10jによって画像処理が施された画像を用紙に印刷する。
【0024】
操作パネル10eは、タッチパネルおよびキー群などによって構成される。タッチパネルには、ユーザに対するメッセージを与えるための画面、処理の結果を示す画面、またはユーザが画像形成装置1に対して指示を入力するための画面などが表示される。また、タッチパネルは、タッチされた位置を検知し、CPU10aにその位置を通知する。キー群は、テンキー、スタートキー、およびストップキーなどのキーによって構成される。ユーザは、操作パネル10eを操作することによって、画像形成装置1に対してコマンドを与えたりデータを入力したりすることができる。
【0025】
NIC10fは、いわゆるLAN(Local Area Network)回線などを介してTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)によってパーソナルコンピュータ2などの他の装置と通信を行う。
【0026】
モデム10iは、固定電話網を介してG3のプロトコルによって他のファックス端末と通信を行う。
【0027】
不揮発性記憶装置10dは、不揮発性の記録装置である。不揮発性記憶装置10dとして、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、またはフラッシュメモリなどが用いられる。
【0028】
ROM10cまたは不揮発性記憶装置10dには、OS(Operating System)のほかファームウェアおよびアプリケーションなどのプログラムが記憶されている。これらのプログラムは、必要に応じてRAM10bにロードされ、CPU10aによって実行される。
【0029】
画像処理回路10jは、図3に示すように、エッジ領域判別部101、エッジ強調処理部102、画像拡大処理部103、データ格納部104、エッジ領域再計算部105、およびエッジ領域補正部106などによって構成される。
【0030】
エッジ領域判別部101ないしエッジ領域補正部106は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)などの回路によって実現される。または、エッジ領域判別部101ないしエッジ領域補正部106の全部または一部の機能を、この機能に係る処理の手順をプログラムで記述しこのプログラムをCPU10aに実行させることによって、実現してもよい。
【0031】
画像処理回路10jは、このような構成により、文字などの画像のエッジを補正する。以下、図3に示す画像処理回路10jの各部を、用紙に記されている画像(以下、「原稿画像60」と記載する。)を拡大して他の用紙にコピーする場合を例に、説明する。
【0032】
図4は原稿画像60、エッジ60e、およびエッジ強調画像61の例を示す図、図5は拡大画像62の例を示す図、図6はエッジ62e1、62e2、および膨張領域62bの位置関係の例を示す図、図7はM×Nフィルタの例を示す図、図8は補正拡大画像63の例を示す図、図9は図5のA−A’の各画素の濃度の分布の例を示す図、図10は図8のB−B’の各画素の濃度の分布の例を示す図ある。
【0033】
ユーザは、原稿画像60が記されている用紙をスキャナ10hの原稿台にセットし、操作パネル10eに対して所定の操作を行う。この際に、ユーザは、拡大率および読取解像度を指定する。さらに、ユーザは、いわゆる原稿モードとして、写真モードおよび文字モードなどのうちのいずれかを指定することができる。なお、画像形成装置1は、いずれのモードも指定されなかった場合は、デフォルトのモードが原稿モードとして指定されてものとして、コピーの処理を実行する。読取解像度についても、同様である。
【0034】
スキャナ10hは、スタートボタンが押されると、セットされた用紙から原稿画像60を読み取ることによって、画像データ70を生成する。画像データ70は、図3に示す画像処理回路10jの各部による原稿画像60に対する補正の処理に伴って、更新される。
【0035】
エッジ領域判別部101は、所定の読取モード(例えば、写真モード以外の読取モード)が指定された場合に、原稿画像60の中から文字のエッジを判別し、エッジの位置を示すエッジ領域データ7Eを生成する。なお、本実施形態では、「エッジ」とは、あるオブジェクト(例えば、文字)を表す画像の中の、幅が数画素の輪郭を、意味する。
【0036】
例えば、図4(A)に示すように原稿画像60の中に「V」という文字が含まれている場合は、エッジ領域判別部101は、図4(B)に示すようなエッジを判別する。以下、原稿画像60の中のエッジを「エッジ60e」と記載する。
【0037】
または、画像形成装置1は、原稿画像60を、パーソナルコンピュータ2から原稿画像60の画像データを受信することによって入力することもできる。
【0038】
データ格納部104には、原稿画像60のデータとして、画像データ70およびエッジ領域データ7Eのほか、原稿画像60の読取解像度および画素数を示す属性データ7Aが格納される。
【0039】
エッジ強調処理部102は、原稿画像60の中のエッジ60eの部分を、濃度を上げるなどして強調する。これにより、原稿画像60は、図4(C)に示すようなエッジ強調画像61に補正される。
【0040】
画像拡大処理部103は、エッジ強調画像61を、ユーザによって指定された拡大率に拡大する。これにより、エッジ強調画像61が拡大画像62に変わる。
【0041】
つまり、原稿画像60およびエッジ強調画像61がPx×Pyの画素からなり、拡大率がα倍(ただし、α>1)である場合は、エッジ強調画像61は、α・Px×α・Py個の画素からなる拡大画像62に変わる。例えば、α=2、である場合は、エッジ強調画像61は、図5に示すような拡大画像62に変わる。
【0042】
なお、画像拡大処理部103は、公知の方法によってエッジ強調画像61を拡大画像62に拡大する。例えば、画像拡大処理部103は、エッジ強調画像61の中の個々の画素を、α×α個の画素群に膨張させる。さらに、膨張後の隣り合う画素群同士のがたつきを小さくする処理を行ってもよい。
【0043】
図5と図4(C)とを比較して分かるように、拡大画像62のエッジ62e1の幅は、エッジ強調画像61の拡大に伴って膨張する。そこで、エッジ領域再計算部105およびエッジ領域補正部106は、エッジ62e1の幅を細くするための処理を次のように行う。
【0044】
エッジ領域再計算部105は、エッジ領域判別部101による原稿画像60の中のエッジ60eの判別の処理と同じ方法で、拡大画像62の中から文字のエッジ62e2を求める。このように同じ方法を用いると、エッジ62e2の幅は、エッジ60eの幅と同じになる。
【0045】
または、エッジ領域再計算部105は、エッジ62e2を次の方法によって求める。図6に示すように、エッジ62e2を長さ方向に分割する。ただし、分割比は、文字の内側から見て「(α−1):1」とする。「α」は、上述の、原稿画像60からエッジ強調画像61への拡大率である。なお、エッジ領域再計算部105は、拡大画像62におけるエッジ62e2の位置を、エッジ領域データ7Eおよび拡大率αによって特定することができる。例えば、エッジ60eの画素の座標がエッジ領域データ7Eに(Ex,Ey)と示される場合は、この画素に対応する、エッジ62e2における画素の座標は(α・Ex,α・Ey)およびその近辺である。ただし、エッジ強調画像61を拡大画像62に拡大する際にがたつきを小さくするなどの処理を行った場合は、この処理を行ったことをも考慮してエッジ62e2の位置を特定する。
【0046】
そして、エッジ領域再計算部105は、2分割した領域のうち外側の領域を、エッジ62e2とする。
【0047】
エッジ領域補正部106は、エッジ領域再計算部105によって求められたエッジ62e2に基づいて、拡大画像62のエッジ62e1を細くする処理を次のように行う。
【0048】
エッジ領域補正部106は、エッジ62e1とエッジ62e2とを、互いに対応する画素同士を一致させるように重ね合わせる。そして、エッジ62e1の中からエッジ62e2と重ならない部分を選出する。この部分は、エッジ強調画像61を拡大画像62に拡大させたことに伴って膨張したものである。以下、この部分を「膨張領域62b」と記載する。
【0049】
さらに、エッジ領域補正部106は、膨張領域62bの各画素に対してM×Nフィルタを掛ける。M×Nフィルタは、次のように用いられる。
【0050】
エッジ領域補正部106は、M×Nフィルタを掛ける対象の画素を「注目画素」として取り扱う。エッジ領域補正部106は、M×Nフィルタの中心を注目画素に合わせる。すると、注目画素だけでなく注目画素の周囲の(M×N−1)個の画素も、フィルタの中に入る。
【0051】
エッジ領域補正部106は、注目画素および周囲の(M×N−1)個の画素のうちの、明度が最も低い画素を選出する。例えば、図7に示すような5×5フィルタをM×Nフィルタとして用いる場合は、注目画素およびその周囲の24個の画素の中から明度が最も低い画素を選出する。
【0052】
そして、エッジ領域補正部106は、注目画素の各種の値を、選出した画素の各種の値に置き換える。例えば、カラースペースが加法系カラースペースである場合は、注目画素のRGB(Red Green Blue)それぞれの値を、選出した画素のRGBそれぞれの値に置き換える。
【0053】
エッジ領域補正部106は、このように膨張領域62bの各画素を注目画素として処理することによって、エッジ62e1を細くする。これにより、図5に示した拡大画像62は、図8に示すようにエッジが細められる。また、図9および図10を比較して分かるように、エッジ62e1の膨張領域62bの各色の階調は、膨張領域62bよりも内側の画素の色の階調に置換される。
【0054】
以下、エッジ領域補正部106によって図8に示すようにエッジ62e1の補正の処理がなされた拡大画像62を「補正拡大画像63」と記載する。また、上述の処理によって、画像データ70から補正拡大画像63の画像データ73が生成される。
【0055】
または、エッジ領域補正部106は、注目画素および周囲の(M×N−1)個の画素のうちの、濃度が最も高い画素を選出してもよい。
【0056】
画像データ73は、エッジ領域補正部106から種々の出力手段へ送られる。例えば、画像データ73は、印刷装置10gへ送られる。そして、印刷装置10gによって補正拡大画像63が用紙に印刷される。または、画像データ73は、NIC10fによって通信回線3を介してパーソナルコンピュータ2などへ送信される。
【0057】
〔解像度の向上の場合〕
上述の例では、図4(A)に示したような原稿画像60をα倍に拡大する場合を例に説明したが、サイズを上げる代わりに解像度を上げる場合にも、本発明を適用することができる。サイズを変えることなく原稿画像60の解像度をα倍に上げる場合も、原稿画像60の画素数はPx×Pyからα・Px×α・Pyに増えるからである。
【0058】
〔画像データ70およびエッジ領域データ7Eの再利用〕
上述の通り、原稿画像60の画像データ70およびエッジ領域データ7Eは、図3のデータ格納部104に格納されるが、両データの再利用が可能である。この際に、ユーザは、拡大率を指定し直すことができる。
【0059】
例えば、ユーザが拡大率としてβ倍(ただし、β>0かつβ≠α)を指定したとする。すると、図3のエッジ強調処理部102は、エッジ領域データ7Eに基づいて原稿画像60に含まれる文字のエッジを強調する処理を行う。これにより、エッジ強調画像61が得られる。画像拡大処理部103は、拡大率αの代わりに拡大率βを用いてエッジ強調画像61を拡大画像62に拡大する。エッジ領域再計算部105は、拡大率αの代わりに拡大率βを必要に応じて用いてエッジ62e2を求める。そして、エッジ領域補正部106は、エッジ62e2に基づいてエッジ62e1を細くする処理を行う。これにより、補正拡大画像63の画像データ73が得られる。
【0060】
〔既に画像処理が施されている画像のエッジの補正〕
図11はエッジ60e’およびその付近の濃度の補正時の増加率の例を示す図、図12はエッジ60e’およびその付近の濃度の補正時の増加率の変形例を示す図である。
【0061】
画像形成装置1は、原稿画像60の代わりに、既に何らかの画像処理が施されている原稿画像60’を取得することがある。この場合は、次のように原稿画像60’に対して処理を行ってもよい。
【0062】
例えば、既にエッジの強調の処理が施されている画像を原稿画像60’として取得した場合は、画像形成装置1のエッジ領域再計算部105およびエッジ領域補正部106は、図7に示したようなM×Nフィルタによる処理の代わりに、次のような処理を行う。
【0063】
エッジ領域再計算部105は、エッジ領域判別部101によるエッジ60eの判別の処理と同じ方法で、原稿画像60’の中から文字のエッジ60e’を求める。そして、エッジ領域補正部106は、エッジ60e’から文字の中心までの各画素の濃度を、図11に示すような、エッジ60e’からの距離に応じた割合だけ、減少させる。
【0064】
または、エッジの強調の処理が未だ施されている画像を原稿画像60’として取得した場合は、画像形成装置1のエッジ領域再計算部105およびエッジ領域補正部106は、図7に示したようなM×Nフィルタによる処理の代わりに、次のような処理を行う。
【0065】
エッジ領域再計算部105は、エッジ領域判別部101によるエッジ60eの判別の処理と同じ方法で、原稿画像60’の中から文字のエッジ60e’を求める。そして、エッジ領域補正部106は、エッジ60e’の各画素の濃度を、図12に示すような、文字の外からの距離に応じた割合だけ、減少させる。この方法は、縮小の処理が施されている画像を原稿画像60’として取得した場合にも、有効である。
【0066】
図13は画像形成装置1における全体的な処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【0067】
次に、画像形成装置1が画像の中の文字のエッジを補正する際の全体的な処理を、図13のフローチャートを参照しながら説明する。
【0068】
画像形成装置1は、画像の出力の条件として、拡大率または出力の解像度などを受け付ける(図13の#11)。
【0069】
出力の対象の画像のエッジ領域データ7Eなどを有しない場合は(#12でNo)、画像形成装置1は、用紙をスキャンしたりパーソナルコンピュータ2と通信を行ったりして、画像の画像データ70を取得する(#13)。さらに、画像データ70に基づいて画像のエッジの位置を判別し、エッジ領域データ7Eを生成する(#14)。そして、画像データ70およびエッジ領域データ7Eのほか、画像の解像度および画素数などを示す属性データ7Aを保存する(#15)。
【0070】
一方、出力の対象の画像のエッジ領域データ7E、属性データ7A、および画像データ70を既に保存している場合は(#12でYes)、これらのデータを読み出す(#16)。
【0071】
画像形成装置1は、ステップ#13〜#14またはステップ#16で得たデータを用いて、次の処理を行う。
【0072】
画像形成装置1は、画像データ70に基づいて、元の画像を拡大しまたは縮小し、または元の画像の解像度を変更する(#17)。これにより、出力の対象の画像のサイズまたは解像度が調整される。調整後の画像の中から文字のエッジを抽出する(#18)。そして、M×Nフィールドなどを使用することによって、抽出したエッジおよびその付近の画素に対して補正を行う(#19)。これにより、目的の画像が得られる。
【0073】
そして、画像形成装置1は、得られた画像を印刷しまたは画像データとして他の装置へ送信する(#20)。
【0074】
本実施形態によると、拡大しまたは解像度を上げた画像の中のオブジェクトのエッジの見栄えを従来よりも良好にすることができる。2世代目の複写物に限らす、3世代目以降の複写物(つまり、複写を複数回繰り返すことによって得られた複写物)であっても、エッジを好適に補正することができる。
【0075】
本実施形態では、文字のエッジの補正を例に説明したが、本発明は、文字以外のオブジェクト例えばイラストおよび図表などのオブジェクトのエッジの補正のためにも適用可能である。
【0076】
その他、画像形成装置1の全体または各部の構成、処理内容、処理順序、M×Nフィルタの構成などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 画像形成装置(画像処理装置)
104 データ格納部(記憶手段)
105 エッジ領域再計算部(判別手段、エッジ領域判別手段)
106 エッジ領域補正部(エッジ除去手段、補正手段)
60 原稿画像(第一の画像)
60e エッジ(第一のエッジ)
62e2 エッジ(第二のエッジ)
7E エッジ領域データ(エッジ位置データ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の補正を行う装置および方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コピー、PCプリント、スキャン、ファックス、およびファイルサーバなどの様々な機能を備えた画像形成装置が普及している。このような画像形成装置は、「複合機」または「MFP(Multi Function Peripherals)」などと呼ばれる。
【0003】
画像形成装置は、多機能化に伴って、画像を様々な方法で取得し、加工し、出力することができる。
【0004】
例えば、画像形成装置は、用紙をスキャンすることによって画像を取得することができる。または、パーソナルコンピュータなどから画像データを受信することによって画像を取得することができる。
【0005】
また、画像形成装置は、画像の中の文字または絵などのオブジェクトのエッジを強調する加工を施すことができる。または、画像を拡大したり解像度を向上させたりすることができる。特許文献1には、文字のエッジの部分を補正し文字を強調させる方法が、開示されている。特許文献2には、画像の中の各画素が文字の領域および写真の領域のいずれに属するのかを判断する方法が、開示されている。
【0006】
また、画像形成装置は、画像を用紙に印刷することができる。または、画像データとして他の装置へ送信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−114922号公報
【特許文献2】特開2000−261659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、エッジを強調する処理の後に拡大の処理または解像度の向上の処理が行われると、エッジの幅を表す画素の数も多くなる。エッジは、本来、あるオブジェクトと他のオブジェクトとの境界を明確にするためのものである。したがって、エッジの幅をオブジェクトの大きさに応じて変更しても、ほとんど意味がない。むしろ、画像全体の見栄えに鑑みると、エッジの幅は、一定以上の大きさのオブジェクトであれば、オブジェクトの大きさに関わらず一定であることが望ましい。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑み、拡大しまたは解像度を上げた画像の中のオブジェクトのエッジの見栄えを従来よりも良好にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態に係る画像処理装置は、第一の画像の中のオブジェクトを表す第一のオブジェクト画像の第一のエッジを表す第一のエッジ画像の位置を示すエッジ位置データを記憶する記憶手段と、画素の数をα倍(α>1)に増やすことによって前記第一の画像のサイズまたは解像度を変更した画像である第二の画像の中の前記オブジェクトを表す第二のオブジェクト画像のエッジでありかつ前記第一のエッジと同じ幅を有するエッジである第二のエッジを表す第二のエッジ画像を前記エッジ位置データおよび前記特定の倍率に基づいて判別する、判別手段と、前記第二のエッジ画像によって表される周に囲まれる内領域に対してエッジを除去する処理を行うエッジ除去手段と、を有する。
【0011】
好ましくは、前記エッジ除去手段は、前記内領域のうちの、前記第一のエッジ画像を前記α倍に画素の数を増やした画像と重なる共通部分に対して、前記除去する処理を行う。
【0012】
または、前記エッジ除去手段は、前記内領域の各画素の色の属性を、当該画素を中心とする所定の範囲のすべての画素のうちの明度が最も低い画素の色の属性に変更することによって、前記除去する処理を行う。
【0013】
または、前記エッジ除去手段は、前記共通部分の各画素の色の属性を、前記第二のエッジ画像に近い画素ほど前記第二のエッジ画像の色の属性に近くなるように、かつ、遠い画素ほど前記共通部分によって表される周に囲まれる画素の色の属性に近くなるように、補正することによって、前記除去する処理を行う。
【0014】
本発明の他の形態に係る画像処理装置は、画像の中のオブジェクトを表すオブジェクト画像のうちのエッジを表すべきエッジ領域を判別するエッジ領域判別手段と、前記エッジ領域の内側に隣接する所定の幅の周の各画素を明度が高くなるように補正する補正手段と、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、拡大しまたは解像度を上げた画像の中のオブジェクトのエッジの見栄えを従来よりも良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】画像形成装置を有するネットワークシステムの構成の例を示す図である。
【図2】画像形成装置のハードウェア構成の例を示す図である。
【図3】画像処理回路の構成の例を示す図である。
【図4】原稿画像、エッジ、およびエッジ強調画像の例を示す図である。
【図5】拡大画像の例を示す図である。
【図6】エッジおよび膨張領域の位置関係の例を示す図である。
【図7】M×Nフィルタの例を示す図である。
【図8】補正拡大画像の例を示す図である。
【図9】図5のA−A’の各画素の濃度の分布の例を示す図である。
【図10】図8のB−B’の各画素の濃度の分布の例を示す図ある。
【図11】エッジおよびその付近の濃度の補正時の増加率の例を示す図である。
【図12】エッジおよびその付近の濃度の補正時の増加率の変形例を示す図である。
【図13】画像形成装置における全体的な処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は画像形成装置1を有するネットワークシステムの構成の例を示す図、図2は画像形成装置1のハードウェア構成の例を示す図、図3は画像処理回路10jの構成の例を示す図である。
【0018】
画像形成装置1は、一般に複合機またはMFP(Multi Function Peripherals)などと呼ばれる画像処理装置であって、コピー、PCプリント(ネットワークプリンティング)、ファックス、およびスキャナなどの機能を集約した装置である。
【0019】
画像形成装置1は、通信回線3を介してパーソナルコンピュータ2などの他の装置と接続可能である。
【0020】
画像形成装置1は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)10a、RAM(Random Access Memory)10b、ROM(Read Only Memory)10c、不揮発性記憶装置10d、操作パネル10e、NIC(Network Interface Card)10f、印刷装置10g、スキャナ10h、およびモデム10iのほか、画像処理回路10jなどによって構成される。
【0021】
スキャナ10hは、写真、文字、絵、図表などによって構成される原稿の画像を用紙から読み取って画像データを生成する装置である。
【0022】
画像処理回路10jは、スキャナ10hによって読み取られた原稿の画像の画像データまたはパーソナルコンピュータ2などから送信されてきた画像データを用いて画像処理を行う。これについては、後述する。
【0023】
印刷装置10gは、画像処理回路10jによって画像処理が施された画像を用紙に印刷する。
【0024】
操作パネル10eは、タッチパネルおよびキー群などによって構成される。タッチパネルには、ユーザに対するメッセージを与えるための画面、処理の結果を示す画面、またはユーザが画像形成装置1に対して指示を入力するための画面などが表示される。また、タッチパネルは、タッチされた位置を検知し、CPU10aにその位置を通知する。キー群は、テンキー、スタートキー、およびストップキーなどのキーによって構成される。ユーザは、操作パネル10eを操作することによって、画像形成装置1に対してコマンドを与えたりデータを入力したりすることができる。
【0025】
NIC10fは、いわゆるLAN(Local Area Network)回線などを介してTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)によってパーソナルコンピュータ2などの他の装置と通信を行う。
【0026】
モデム10iは、固定電話網を介してG3のプロトコルによって他のファックス端末と通信を行う。
【0027】
不揮発性記憶装置10dは、不揮発性の記録装置である。不揮発性記憶装置10dとして、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、またはフラッシュメモリなどが用いられる。
【0028】
ROM10cまたは不揮発性記憶装置10dには、OS(Operating System)のほかファームウェアおよびアプリケーションなどのプログラムが記憶されている。これらのプログラムは、必要に応じてRAM10bにロードされ、CPU10aによって実行される。
【0029】
画像処理回路10jは、図3に示すように、エッジ領域判別部101、エッジ強調処理部102、画像拡大処理部103、データ格納部104、エッジ領域再計算部105、およびエッジ領域補正部106などによって構成される。
【0030】
エッジ領域判別部101ないしエッジ領域補正部106は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)などの回路によって実現される。または、エッジ領域判別部101ないしエッジ領域補正部106の全部または一部の機能を、この機能に係る処理の手順をプログラムで記述しこのプログラムをCPU10aに実行させることによって、実現してもよい。
【0031】
画像処理回路10jは、このような構成により、文字などの画像のエッジを補正する。以下、図3に示す画像処理回路10jの各部を、用紙に記されている画像(以下、「原稿画像60」と記載する。)を拡大して他の用紙にコピーする場合を例に、説明する。
【0032】
図4は原稿画像60、エッジ60e、およびエッジ強調画像61の例を示す図、図5は拡大画像62の例を示す図、図6はエッジ62e1、62e2、および膨張領域62bの位置関係の例を示す図、図7はM×Nフィルタの例を示す図、図8は補正拡大画像63の例を示す図、図9は図5のA−A’の各画素の濃度の分布の例を示す図、図10は図8のB−B’の各画素の濃度の分布の例を示す図ある。
【0033】
ユーザは、原稿画像60が記されている用紙をスキャナ10hの原稿台にセットし、操作パネル10eに対して所定の操作を行う。この際に、ユーザは、拡大率および読取解像度を指定する。さらに、ユーザは、いわゆる原稿モードとして、写真モードおよび文字モードなどのうちのいずれかを指定することができる。なお、画像形成装置1は、いずれのモードも指定されなかった場合は、デフォルトのモードが原稿モードとして指定されてものとして、コピーの処理を実行する。読取解像度についても、同様である。
【0034】
スキャナ10hは、スタートボタンが押されると、セットされた用紙から原稿画像60を読み取ることによって、画像データ70を生成する。画像データ70は、図3に示す画像処理回路10jの各部による原稿画像60に対する補正の処理に伴って、更新される。
【0035】
エッジ領域判別部101は、所定の読取モード(例えば、写真モード以外の読取モード)が指定された場合に、原稿画像60の中から文字のエッジを判別し、エッジの位置を示すエッジ領域データ7Eを生成する。なお、本実施形態では、「エッジ」とは、あるオブジェクト(例えば、文字)を表す画像の中の、幅が数画素の輪郭を、意味する。
【0036】
例えば、図4(A)に示すように原稿画像60の中に「V」という文字が含まれている場合は、エッジ領域判別部101は、図4(B)に示すようなエッジを判別する。以下、原稿画像60の中のエッジを「エッジ60e」と記載する。
【0037】
または、画像形成装置1は、原稿画像60を、パーソナルコンピュータ2から原稿画像60の画像データを受信することによって入力することもできる。
【0038】
データ格納部104には、原稿画像60のデータとして、画像データ70およびエッジ領域データ7Eのほか、原稿画像60の読取解像度および画素数を示す属性データ7Aが格納される。
【0039】
エッジ強調処理部102は、原稿画像60の中のエッジ60eの部分を、濃度を上げるなどして強調する。これにより、原稿画像60は、図4(C)に示すようなエッジ強調画像61に補正される。
【0040】
画像拡大処理部103は、エッジ強調画像61を、ユーザによって指定された拡大率に拡大する。これにより、エッジ強調画像61が拡大画像62に変わる。
【0041】
つまり、原稿画像60およびエッジ強調画像61がPx×Pyの画素からなり、拡大率がα倍(ただし、α>1)である場合は、エッジ強調画像61は、α・Px×α・Py個の画素からなる拡大画像62に変わる。例えば、α=2、である場合は、エッジ強調画像61は、図5に示すような拡大画像62に変わる。
【0042】
なお、画像拡大処理部103は、公知の方法によってエッジ強調画像61を拡大画像62に拡大する。例えば、画像拡大処理部103は、エッジ強調画像61の中の個々の画素を、α×α個の画素群に膨張させる。さらに、膨張後の隣り合う画素群同士のがたつきを小さくする処理を行ってもよい。
【0043】
図5と図4(C)とを比較して分かるように、拡大画像62のエッジ62e1の幅は、エッジ強調画像61の拡大に伴って膨張する。そこで、エッジ領域再計算部105およびエッジ領域補正部106は、エッジ62e1の幅を細くするための処理を次のように行う。
【0044】
エッジ領域再計算部105は、エッジ領域判別部101による原稿画像60の中のエッジ60eの判別の処理と同じ方法で、拡大画像62の中から文字のエッジ62e2を求める。このように同じ方法を用いると、エッジ62e2の幅は、エッジ60eの幅と同じになる。
【0045】
または、エッジ領域再計算部105は、エッジ62e2を次の方法によって求める。図6に示すように、エッジ62e2を長さ方向に分割する。ただし、分割比は、文字の内側から見て「(α−1):1」とする。「α」は、上述の、原稿画像60からエッジ強調画像61への拡大率である。なお、エッジ領域再計算部105は、拡大画像62におけるエッジ62e2の位置を、エッジ領域データ7Eおよび拡大率αによって特定することができる。例えば、エッジ60eの画素の座標がエッジ領域データ7Eに(Ex,Ey)と示される場合は、この画素に対応する、エッジ62e2における画素の座標は(α・Ex,α・Ey)およびその近辺である。ただし、エッジ強調画像61を拡大画像62に拡大する際にがたつきを小さくするなどの処理を行った場合は、この処理を行ったことをも考慮してエッジ62e2の位置を特定する。
【0046】
そして、エッジ領域再計算部105は、2分割した領域のうち外側の領域を、エッジ62e2とする。
【0047】
エッジ領域補正部106は、エッジ領域再計算部105によって求められたエッジ62e2に基づいて、拡大画像62のエッジ62e1を細くする処理を次のように行う。
【0048】
エッジ領域補正部106は、エッジ62e1とエッジ62e2とを、互いに対応する画素同士を一致させるように重ね合わせる。そして、エッジ62e1の中からエッジ62e2と重ならない部分を選出する。この部分は、エッジ強調画像61を拡大画像62に拡大させたことに伴って膨張したものである。以下、この部分を「膨張領域62b」と記載する。
【0049】
さらに、エッジ領域補正部106は、膨張領域62bの各画素に対してM×Nフィルタを掛ける。M×Nフィルタは、次のように用いられる。
【0050】
エッジ領域補正部106は、M×Nフィルタを掛ける対象の画素を「注目画素」として取り扱う。エッジ領域補正部106は、M×Nフィルタの中心を注目画素に合わせる。すると、注目画素だけでなく注目画素の周囲の(M×N−1)個の画素も、フィルタの中に入る。
【0051】
エッジ領域補正部106は、注目画素および周囲の(M×N−1)個の画素のうちの、明度が最も低い画素を選出する。例えば、図7に示すような5×5フィルタをM×Nフィルタとして用いる場合は、注目画素およびその周囲の24個の画素の中から明度が最も低い画素を選出する。
【0052】
そして、エッジ領域補正部106は、注目画素の各種の値を、選出した画素の各種の値に置き換える。例えば、カラースペースが加法系カラースペースである場合は、注目画素のRGB(Red Green Blue)それぞれの値を、選出した画素のRGBそれぞれの値に置き換える。
【0053】
エッジ領域補正部106は、このように膨張領域62bの各画素を注目画素として処理することによって、エッジ62e1を細くする。これにより、図5に示した拡大画像62は、図8に示すようにエッジが細められる。また、図9および図10を比較して分かるように、エッジ62e1の膨張領域62bの各色の階調は、膨張領域62bよりも内側の画素の色の階調に置換される。
【0054】
以下、エッジ領域補正部106によって図8に示すようにエッジ62e1の補正の処理がなされた拡大画像62を「補正拡大画像63」と記載する。また、上述の処理によって、画像データ70から補正拡大画像63の画像データ73が生成される。
【0055】
または、エッジ領域補正部106は、注目画素および周囲の(M×N−1)個の画素のうちの、濃度が最も高い画素を選出してもよい。
【0056】
画像データ73は、エッジ領域補正部106から種々の出力手段へ送られる。例えば、画像データ73は、印刷装置10gへ送られる。そして、印刷装置10gによって補正拡大画像63が用紙に印刷される。または、画像データ73は、NIC10fによって通信回線3を介してパーソナルコンピュータ2などへ送信される。
【0057】
〔解像度の向上の場合〕
上述の例では、図4(A)に示したような原稿画像60をα倍に拡大する場合を例に説明したが、サイズを上げる代わりに解像度を上げる場合にも、本発明を適用することができる。サイズを変えることなく原稿画像60の解像度をα倍に上げる場合も、原稿画像60の画素数はPx×Pyからα・Px×α・Pyに増えるからである。
【0058】
〔画像データ70およびエッジ領域データ7Eの再利用〕
上述の通り、原稿画像60の画像データ70およびエッジ領域データ7Eは、図3のデータ格納部104に格納されるが、両データの再利用が可能である。この際に、ユーザは、拡大率を指定し直すことができる。
【0059】
例えば、ユーザが拡大率としてβ倍(ただし、β>0かつβ≠α)を指定したとする。すると、図3のエッジ強調処理部102は、エッジ領域データ7Eに基づいて原稿画像60に含まれる文字のエッジを強調する処理を行う。これにより、エッジ強調画像61が得られる。画像拡大処理部103は、拡大率αの代わりに拡大率βを用いてエッジ強調画像61を拡大画像62に拡大する。エッジ領域再計算部105は、拡大率αの代わりに拡大率βを必要に応じて用いてエッジ62e2を求める。そして、エッジ領域補正部106は、エッジ62e2に基づいてエッジ62e1を細くする処理を行う。これにより、補正拡大画像63の画像データ73が得られる。
【0060】
〔既に画像処理が施されている画像のエッジの補正〕
図11はエッジ60e’およびその付近の濃度の補正時の増加率の例を示す図、図12はエッジ60e’およびその付近の濃度の補正時の増加率の変形例を示す図である。
【0061】
画像形成装置1は、原稿画像60の代わりに、既に何らかの画像処理が施されている原稿画像60’を取得することがある。この場合は、次のように原稿画像60’に対して処理を行ってもよい。
【0062】
例えば、既にエッジの強調の処理が施されている画像を原稿画像60’として取得した場合は、画像形成装置1のエッジ領域再計算部105およびエッジ領域補正部106は、図7に示したようなM×Nフィルタによる処理の代わりに、次のような処理を行う。
【0063】
エッジ領域再計算部105は、エッジ領域判別部101によるエッジ60eの判別の処理と同じ方法で、原稿画像60’の中から文字のエッジ60e’を求める。そして、エッジ領域補正部106は、エッジ60e’から文字の中心までの各画素の濃度を、図11に示すような、エッジ60e’からの距離に応じた割合だけ、減少させる。
【0064】
または、エッジの強調の処理が未だ施されている画像を原稿画像60’として取得した場合は、画像形成装置1のエッジ領域再計算部105およびエッジ領域補正部106は、図7に示したようなM×Nフィルタによる処理の代わりに、次のような処理を行う。
【0065】
エッジ領域再計算部105は、エッジ領域判別部101によるエッジ60eの判別の処理と同じ方法で、原稿画像60’の中から文字のエッジ60e’を求める。そして、エッジ領域補正部106は、エッジ60e’の各画素の濃度を、図12に示すような、文字の外からの距離に応じた割合だけ、減少させる。この方法は、縮小の処理が施されている画像を原稿画像60’として取得した場合にも、有効である。
【0066】
図13は画像形成装置1における全体的な処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【0067】
次に、画像形成装置1が画像の中の文字のエッジを補正する際の全体的な処理を、図13のフローチャートを参照しながら説明する。
【0068】
画像形成装置1は、画像の出力の条件として、拡大率または出力の解像度などを受け付ける(図13の#11)。
【0069】
出力の対象の画像のエッジ領域データ7Eなどを有しない場合は(#12でNo)、画像形成装置1は、用紙をスキャンしたりパーソナルコンピュータ2と通信を行ったりして、画像の画像データ70を取得する(#13)。さらに、画像データ70に基づいて画像のエッジの位置を判別し、エッジ領域データ7Eを生成する(#14)。そして、画像データ70およびエッジ領域データ7Eのほか、画像の解像度および画素数などを示す属性データ7Aを保存する(#15)。
【0070】
一方、出力の対象の画像のエッジ領域データ7E、属性データ7A、および画像データ70を既に保存している場合は(#12でYes)、これらのデータを読み出す(#16)。
【0071】
画像形成装置1は、ステップ#13〜#14またはステップ#16で得たデータを用いて、次の処理を行う。
【0072】
画像形成装置1は、画像データ70に基づいて、元の画像を拡大しまたは縮小し、または元の画像の解像度を変更する(#17)。これにより、出力の対象の画像のサイズまたは解像度が調整される。調整後の画像の中から文字のエッジを抽出する(#18)。そして、M×Nフィールドなどを使用することによって、抽出したエッジおよびその付近の画素に対して補正を行う(#19)。これにより、目的の画像が得られる。
【0073】
そして、画像形成装置1は、得られた画像を印刷しまたは画像データとして他の装置へ送信する(#20)。
【0074】
本実施形態によると、拡大しまたは解像度を上げた画像の中のオブジェクトのエッジの見栄えを従来よりも良好にすることができる。2世代目の複写物に限らす、3世代目以降の複写物(つまり、複写を複数回繰り返すことによって得られた複写物)であっても、エッジを好適に補正することができる。
【0075】
本実施形態では、文字のエッジの補正を例に説明したが、本発明は、文字以外のオブジェクト例えばイラストおよび図表などのオブジェクトのエッジの補正のためにも適用可能である。
【0076】
その他、画像形成装置1の全体または各部の構成、処理内容、処理順序、M×Nフィルタの構成などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 画像形成装置(画像処理装置)
104 データ格納部(記憶手段)
105 エッジ領域再計算部(判別手段、エッジ領域判別手段)
106 エッジ領域補正部(エッジ除去手段、補正手段)
60 原稿画像(第一の画像)
60e エッジ(第一のエッジ)
62e2 エッジ(第二のエッジ)
7E エッジ領域データ(エッジ位置データ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の画像の中のオブジェクトを表す第一のオブジェクト画像の第一のエッジを表す第一のエッジ画像の位置を示すエッジ位置データを記憶する記憶手段と、
画素の数をα倍(α>1)に増やすことによって前記第一の画像のサイズまたは解像度を変更した画像である第二の画像の中の前記オブジェクトを表す第二のオブジェクト画像のエッジでありかつ前記第一のエッジと同じ幅を有するエッジである第二のエッジを表す第二のエッジ画像を前記エッジ位置データおよび前記特定の倍率に基づいて判別する、判別手段と、
前記第二のエッジ画像によって表される周に囲まれる内領域に対してエッジを除去する処理を行うエッジ除去手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記エッジ除去手段は、前記内領域のうちの、前記第一のエッジ画像を前記α倍に画素の数を増やした画像と重なる共通部分に対して、前記除去する処理を行う、
請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記エッジ除去手段は、前記内領域の各画素の色の属性を、当該画素を中心とする所定の範囲のすべての画素のうちの明度が最も低い画素の色の属性に変更することによって、前記除去する処理を行う、
請求項1または請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記エッジ除去手段は、前記共通部分の各画素の色の属性を、前記第二のエッジ画像に近い画素ほど前記第二のエッジ画像の色の属性に近くなるように、かつ、遠い画素ほど前記共通部分によって表される周に囲まれる画素の色の属性に近くなるように、補正することによって、前記除去する処理を行う、
請求項2記載の画像処理装置。
【請求項5】
画像の中のオブジェクトを表すオブジェクト画像のうちのエッジを表すべきエッジ領域を判別するエッジ領域判別手段と、
前記エッジ領域の内側に隣接する所定の幅の周の各画素を明度が高くなるように補正する補正手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
第一の画像の中のオブジェクトを表す第一のオブジェクト画像の第一のエッジを表す第一のエッジ画像の位置を示すエッジ位置データを記憶手段に記憶させておき、
画素の数をα倍(α>1)に増やすことによって前記第一の画像のサイズまたは解像度を変更した画像である第二の画像の中の前記オブジェクトを表す第二のオブジェクト画像のエッジでありかつ前記第一のエッジと同じ幅を有するエッジである第二のエッジを表す第二のエッジ画像を前記エッジ位置データおよび前記特定の倍率に基づいて判別し、
前記第二のエッジ画像によって表される周に囲まれる内領域に対してエッジを除去する処理を行う、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
画像の中のオブジェクトを表すオブジェクト画像のうちのエッジを表すべきエッジ領域を判別し、
前記エッジ領域の内側に隣接する所定の幅の周の各画素を明度が高くなるように補正する、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
画像処理を行うコンピュータに、
第一の画像の中のオブジェクトを表す第一のオブジェクト画像の第一のエッジを表す第一のエッジ画像の位置を示すエッジ位置データを記憶手段に記憶させる処理と、
画素の数をα倍(α>1)に増やすことによって前記第一の画像のサイズまたは解像度を変更した画像である第二の画像の中の前記オブジェクトを表す第二のオブジェクト画像のエッジでありかつ前記第一のエッジと同じ幅を有するエッジである第二のエッジを表す第二のエッジ画像を前記エッジ位置データおよび前記特定の倍率に基づいて判別する処理と、
前記第二のエッジ画像によって表される周に囲まれる内領域に対してエッジを除去する処理と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項9】
画像処理を行うコンピュータに、
画像の中のオブジェクトを表すオブジェクト画像のうちのエッジを表すべきエッジ領域を判別する処理と、
前記エッジ領域の内側に隣接する所定の幅の周の各画素を明度が高くなるように補正する処理と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項1】
第一の画像の中のオブジェクトを表す第一のオブジェクト画像の第一のエッジを表す第一のエッジ画像の位置を示すエッジ位置データを記憶する記憶手段と、
画素の数をα倍(α>1)に増やすことによって前記第一の画像のサイズまたは解像度を変更した画像である第二の画像の中の前記オブジェクトを表す第二のオブジェクト画像のエッジでありかつ前記第一のエッジと同じ幅を有するエッジである第二のエッジを表す第二のエッジ画像を前記エッジ位置データおよび前記特定の倍率に基づいて判別する、判別手段と、
前記第二のエッジ画像によって表される周に囲まれる内領域に対してエッジを除去する処理を行うエッジ除去手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記エッジ除去手段は、前記内領域のうちの、前記第一のエッジ画像を前記α倍に画素の数を増やした画像と重なる共通部分に対して、前記除去する処理を行う、
請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記エッジ除去手段は、前記内領域の各画素の色の属性を、当該画素を中心とする所定の範囲のすべての画素のうちの明度が最も低い画素の色の属性に変更することによって、前記除去する処理を行う、
請求項1または請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記エッジ除去手段は、前記共通部分の各画素の色の属性を、前記第二のエッジ画像に近い画素ほど前記第二のエッジ画像の色の属性に近くなるように、かつ、遠い画素ほど前記共通部分によって表される周に囲まれる画素の色の属性に近くなるように、補正することによって、前記除去する処理を行う、
請求項2記載の画像処理装置。
【請求項5】
画像の中のオブジェクトを表すオブジェクト画像のうちのエッジを表すべきエッジ領域を判別するエッジ領域判別手段と、
前記エッジ領域の内側に隣接する所定の幅の周の各画素を明度が高くなるように補正する補正手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
第一の画像の中のオブジェクトを表す第一のオブジェクト画像の第一のエッジを表す第一のエッジ画像の位置を示すエッジ位置データを記憶手段に記憶させておき、
画素の数をα倍(α>1)に増やすことによって前記第一の画像のサイズまたは解像度を変更した画像である第二の画像の中の前記オブジェクトを表す第二のオブジェクト画像のエッジでありかつ前記第一のエッジと同じ幅を有するエッジである第二のエッジを表す第二のエッジ画像を前記エッジ位置データおよび前記特定の倍率に基づいて判別し、
前記第二のエッジ画像によって表される周に囲まれる内領域に対してエッジを除去する処理を行う、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
画像の中のオブジェクトを表すオブジェクト画像のうちのエッジを表すべきエッジ領域を判別し、
前記エッジ領域の内側に隣接する所定の幅の周の各画素を明度が高くなるように補正する、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
画像処理を行うコンピュータに、
第一の画像の中のオブジェクトを表す第一のオブジェクト画像の第一のエッジを表す第一のエッジ画像の位置を示すエッジ位置データを記憶手段に記憶させる処理と、
画素の数をα倍(α>1)に増やすことによって前記第一の画像のサイズまたは解像度を変更した画像である第二の画像の中の前記オブジェクトを表す第二のオブジェクト画像のエッジでありかつ前記第一のエッジと同じ幅を有するエッジである第二のエッジを表す第二のエッジ画像を前記エッジ位置データおよび前記特定の倍率に基づいて判別する処理と、
前記第二のエッジ画像によって表される周に囲まれる内領域に対してエッジを除去する処理と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項9】
画像処理を行うコンピュータに、
画像の中のオブジェクトを表すオブジェクト画像のうちのエッジを表すべきエッジ領域を判別する処理と、
前記エッジ領域の内側に隣接する所定の幅の周の各画素を明度が高くなるように補正する処理と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−198291(P2011−198291A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66869(P2010−66869)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
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