説明

画像処理装置、画像処理方法、そのコンピュータ・プログラムおよびプログラムを記録した記録媒体

【課題】高速に検査対象を含んだ検査領域を求めることが可能な画像処理装置を提供すること。
【解決手段】検査対象判定部33は、間引き量に応じて画像データに測定点を設定し、それぞれの測定点のRGBの輝度値に応じて検査対象の候補点であるか否かを判定する。検査ライン設定部34は、検査対象判定部33によって候補点と判定された測定点が存在するラインを検査ラインに設定する。検査領域拡大部35は、検査ライン設定部34によって設定された検査ラインに応じて検査領域を拡大する。そして、検査領域判別部36は、検査領域拡大部35によって拡大された検査領域が検査対象を含む検査領域であるか否かを特徴量に応じて判別する。したがって、高速に検査対象を含んだ検査領域を求めることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出などに利用される画像処理技術に関し、特に、高速に検査対象を含む領域を決定する画像処理装置、画像処理方法、そのコンピュータ・プログラムおよびプログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の実装、検査など、様々な分野で画像処理技術が利用されている。たとえば、カメラやビデオで撮像した映像をデータ化し、その画像データから所望のパターン画像を探し出し、位置決めなどの用途に利用されている。
【0003】
このような技術の1つに、パターンマッチングを用いた方法がある。通常、画像データの対象処理領域を全て走査して、パターンマッチングが行なわれることが多い。パターンマッチング処理、たとえば正規化相関処理においては、1回あたりのマッチング処理における計算量が多いため、マッチング回数が増えると処理時間も増える傾向にある。CCD(Charge Coupled Device)カメラが高画素化している現在、処理時間の増加がさらに深刻な問題となる。
【0004】
特許文献1は、パターンマッチング処理において処理対象外の領域を適切に設定することを目的とする。パターンマッチングにおける処理領域設定方法は、パターン領域を移動させる段階でパターン領域が対象領域とマスク領域にまたがるとき、パターン領域とマスク領域との重なりの程度に基づいて処理条件を設定する。移動したパターン領域がマスク領域と重なりを有する位置にあるとき、その位置における重なりの面積比を計算して、この値が所定の比よりも大きいとき処理の対象外とする。あるいはパターン領域が対象領域からいくらはみ出たかを座標で表し、所定の値までを処理対象とする。このようにして決定された処理対象となる領域をテンプレート領域として、フラグを設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−109002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1は、画像データから必要な領域のみを抽出してマッチング処理を行なうことによりマッチングの回数を減らして、計算量を減らすものである。しかしながら、パターン領域がマスク領域とスキャン領域との2箇所にまたがったときの判定をマッチング毎に処理しているため、計算量が多くなる。
【0007】
また、画像内で検査対象の位置や姿勢がばらついた場合、マスク領域にパターン領域が設定量以上重なってしまい、上述の判定方法ではマッチングしない領域と判定されてしまうことがあり、検査対象を正確に抽出することができないといった問題点があった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、高速に検査対象を含んだ検査領域を求めることが可能な画像処理装置、画像処理方法、そのコンピュータ・プログラムおよびプログラムを記録した記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある局面に従えば、画像データから検査対象を含んだ検査領域を検出する画像処理装置であって、間引き量に応じて画像データに測定点を設定し、それぞれの測定点のRGB値に応じて検査対象の候補点であるか否かを判定する検査対象判定手段と、検査対象判定手段によって候補点と判定された測定点が存在するラインを検査ラインに設定する検査ライン設定手段と、検査ライン設定手段によって設定された検査ラインに応じて検査領域を拡大する検査領域拡大手段と、検査領域拡大手段によって拡大された検査領域が検査対象を含む検査領域であるか否かを判別する検査領域判別手段とを含む。
【0010】
好ましくは、検査対象判定手段は、測定点のRGBの輝度値に応じて検査対象の候補点であるか否かを判定する。
【0011】
好ましくは、検査対象判定手段は、測定点の色相値に応じて検査対象の候補点であるか否かを判定する。
【0012】
好ましくは、検査ライン設定手段は、検査対象外の測定点から検査対象の候補点に変化するときの当該検査対象外の測定点を立ち上がり点とし、検査対象の候補点から検査対象外の測定点に変化するときの当該検査対象外の点を立ち下がり点とし、立ち上がり点から立ち下がり点までを検査ラインとする。
【0013】
さらに好ましくは、検査ライン設定手段は、対象の検査ラインの範囲内において、1ピッチ上の検査ラインの始点または終点が存在する場合には、1ピッチ上の検査ラインと同じ属性を対象の検査ラインに与え、1ピッチ上の検査ラインの始点または終点が存在しない場合には、1ピッチ上の検査ラインと異なる属性を対象の検査ラインに与えて異なる検査対象とする。
【0014】
好ましくは、検査領域拡大手段は、対象の検査ラインが最上行のラインであれば、対象の検査ラインの範囲を検査領域の横方向とし、対象の検査ラインの検査領域を1画素上から、1ピッチ−2画素分だけ上に拡大し、対象の検査ラインが最上行のラインでなければ、対象の検査ラインの範囲と1ピッチ上の検査ラインの範囲とを比較し、広い範囲の分だけ検査領域を横方向に拡大し、対象の検査ラインの検査領域を1画素上から、1ピッチ−2画素分だけ上に拡大し、対象の検査ラインが最下行のラインであれば、対象の検査ラインの範囲を検査領域の横方向とし、対象の検査ラインの検査領域を1画素下から、1ピッチ−2画素分だけ下に拡大し、拡大された検査領域をすべて含む最小矩形領域を最終的な検査領域とする。
【0015】
好ましくは、間引き量は、横方向と縦方向とで別々の値が設定される。
好ましくは、検査領域判別手段は、検査対象の面積値を特徴量として、検査領域拡大手段によって拡大された検査領域が検査対象を含む検査領域であるか否かを判別する。
【0016】
好ましくは、検査領域判別手段は、検査対象の縦横比を特徴量として、検査領域拡大手段によって拡大された検査領域が検査対象を含む検査領域であるか否かを判別する。
【0017】
好ましくは、検査領域判別手段は、検査対象の対角線長さを特徴量として、検査領域拡大手段によって拡大された検査領域が検査対象を含む検査領域であるか否かを判別する。
【0018】
好ましくは、検査対象内に複数の色が存在する場合には、所定の色に応じて検査領域を求めた後、検査領域拡大手段は、検査対象の大きさまたは形状に応じて、検査領域をさらに拡大する。
【0019】
本発明の別の局面に従えば、画像データから検査対象を含んだ検査領域をコンピュータに検出させる画像処理方法であって、コンピュータに、間引き量に応じて画像データに測定点を設定させ、それぞれの測定点のRGB値に応じて検査対象の候補点であるか否かを判定させるステップと、候補点と判定された測定点が存在するラインを検査ラインに設定させるステップと、設定された検査ラインに応じて検査領域を拡大させるステップと、拡大された検査領域が検査対象を含む検査領域であるか否かを判別させるステップとを含む。
【0020】
本発明のさらに別の局面に従えば、画像データから検査対象を含んだ検査領域をコンピュータに検出させるためのコンピュータ・プログラムであって、コンピュータに、間引き量に応じて画像データに測定点を設定させ、それぞれの測定点のRGB値に応じて検査対象の候補点であるか否かを判定させるステップと、候補点と判定された測定点が存在するラインを検査ラインに設定させるステップと、設定された検査ラインに応じて検査領域を拡大させるステップと、拡大された検査領域が検査対象を含む検査領域であるか否かを判別させるステップとを含む。
【0021】
本発明のさらに別の局面に従えば、画像データから検査対象を含んだ検査領域をコンピュータに検出させるためのコンピュータ・プログラムを記録した記録媒体であって、コンピュータに、間引き量に応じて画像データに測定点を設定させ、それぞれの測定点のRGB値に応じて検査対象の候補点であるか否かを判定させるステップと、候補点と判定された測定点が存在するラインを検査ラインに設定させるステップと、設定された検査ラインに応じて検査領域を拡大させるステップと、拡大された検査領域が検査対象を含む検査領域であるか否かを判別させるステップとを含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明のある局面によれば、検査対象判定手段が、間引き量に応じて画像データに測定点を設定し、それぞれの測定点のRGB値に応じて検査対象の候補点であるか否かを判定するので、高速に検査領域を求めることが可能となる。
【0023】
また、検査対象判定手段が、測定点のRGBの輝度値に応じて検査対象の候補点であるか否かを判定するので、明るさの変化に応じて検査領域を判定することが可能となる。
【0024】
また、検査対象判定手段が、測定点の色相値に応じて検査対象の候補点であるか否かを判定するので、明るさの変化に応じて検査領域を判定することが可能となる。
【0025】
また、検査ライン設定手段が、検査対象外の測定点から検査対象の候補点に変化するときの当該検査対象外の測定点を立ち上がり点とし、検査対象の候補点から検査対象外の測定点に変化するときの当該検査対象外の点を立ち下がり点とし、立ち上がり点から立ち下がり点までを検査ラインとするので、検査領域の検出を容易に行なうことが可能となる。
【0026】
また、検査ライン設定手段が、対象の検査ラインの範囲内において、1ピッチ上の検査ラインの始点または終点が存在する場合には、1ピッチ上の検査ラインと同じ属性を対象の検査ラインに与え、1ピッチ上の検査ラインの始点または終点が存在しない場合には、1ピッチ上の検査ラインと異なる属性を対象の検査ラインに与えて異なる検査対象とするので、画像データに複数の検査対象が含まれる場合でも、それぞれの検査対象を含んだ検査領域を検出することが可能となる。
【0027】
また、検査領域拡大手段が、拡大された検査領域をすべて含む最小矩形領域を最終的な検査領域とするので、検査領域を正確に特定することが可能となる。
【0028】
また、間引き量が、横方向と縦方向とで別々の値が設定されるので、様々な形状の検査対象を容易に検出することが可能となる。
【0029】
また、検査領域判別手段が、検査対象の面積値を特徴量として、検査領域拡大手段によって拡大された検査領域が検査対象を含む検査領域であるか否かを判別するので、検査対象を含んだ検査領域であるか否かを容易に判別することが可能となる。
【0030】
また、検査領域判別手段が、検査対象の縦横比を特徴量として、検査領域拡大手段によって拡大された検査領域が検査対象を含む検査領域であるか否かを判別するので、検査対象を含んだ検査領域であるか否かを容易に判別することが可能となる。
【0031】
また、検査領域判別手段が、検査対象の対角線長さを特徴量として、検査領域拡大手段によって拡大された検査領域が検査対象を含む検査領域であるか否かを判別するので、検査対象を含んだ検査領域であるか否かを容易に判別することが可能となる。
【0032】
また、検査対象内に複数の色が存在する場合には、所定の色に応じて検査領域を求めた後、検査領域拡大手段が、検査対象の大きさまたは形状に応じて、検査領域をさらに拡大するので、検査対象内に複数の色が存在する場合でも、検査対象を含んだ検査領域を容易に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態における画像処理装置を用いた検査システムの構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における画像処理装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態における画像処理装置1を機能的構成によって示したブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態における画像処理装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【図5】検査対象およびピッチ量Lx,Lyを説明するための図である。
【図6】検査ライン設定部34によって設定された検査ラインを説明するための図である。
【図7】属性を設定した検査ラインを示す図である。
【図8】検査領域が設定された画像データの一例を示す図である。
【図9】検査対象42に複数の色が存在する場合の検査領域を求める方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本発明の実施の形態における画像処理装置を用いた検査システムの構成例を示す図である。この検査システムは、画像処理装置1と、カメラ2と、カメラ2に固定された光学系3と、被検査対象である製品4が搭載される搭載ステージ5とを含む。
【0035】
搭載ステージ5の上に搭載された製品4の真上に、光学系3が製品4の方向を向くようにカメラ2が固定されている。光学系3には、図示しないレンズおよび照明装置が装備されている。
【0036】
画像処理装置1はカメラ2に接続されており、カメラ2によって撮像された画像を取り込み、その画像データを処理する。
【0037】
図2は、本発明の実施の形態における画像処理装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。この画像処理装置1は、一般的なコンピュータによって実現され、コンピュータ本体11と、ディスプレイ装置12と、FD(Flexible Disk)14が装着されるFDドライブ13と、キーボード15と、マウス16と、CD−ROM(Compact Disc-Read Only Memory)18が装着されるCD−ROM装置17と、ネットワーク通信装置19とを含む。
【0038】
画像処理プログラムは、FD14またはCD―ROM18等の記録媒体によって供給される。画像処理プログラムはコンピュータ本体11によって実行され、画像処理が行なわれる。また、画像処理プログラムは他のコンピュータより通信回線を経由し、コンピュータ本体11に供給されてもよい。
【0039】
なお、記録媒体はFD14、CD−ROM18に限定されるものではなく、磁気テープ、MO(Magnetic Optical disk)、MD(Mini Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、IC(Integrated Circuit)カードなどであってもよい。
【0040】
また、コンピュータ本体11は、CPU20、ROM(Read Only Memory)21、RAM(Random Access Memory)22およびハードディスク23を含む。CPU20は、ディスプレイ装置12、FDドライブ13、キーボード15、マウス16、CD−ROM装置17、ネットワーク通信装置19、ROM21、RAM22またはハードディスク23との間でデータを入出力しながら処理を行なう。FD14またはCD−ROM18に記録された画像処理プログラムは、CPU20によりFDドライブ13またはCD−ROM装置17を介してハードディスク23に格納される。CPU20は、ハードディスク23から適宜画像処理プログラムをRAM22にロードして実行することによって画像処理を行なう。
【0041】
図3は、本発明の実施の形態における画像処理装置1を機能的構成によって示したブロック図である。この画像処理装置1は、閾値設定部31と、サーチ間隔設定部32と、検査対象判定部33と、検査ライン設定部34と、検査領域拡大部35と、検査領域判別部36とを含む。
【0042】
閾値設定部31は、検査対象の一部であるか否かを判定する際に用いられるRGBの輝度値の範囲、および検査対象であるか否かを判定する際に用いられる特徴量の範囲を閾値として設定する。なお、本実施の形態においては、特徴量として検査対象の面積値を用いるものとする。
【0043】
サーチ間隔設定部32は、画像データをサーチするときの間引き量を設定する。この間引き量は、検査対象の大きさまたは形状に応じて設定され、必ず検査対象の一部に測定点が当たるように設定される。ここで、測定点とは、画像データの中で検査対象の一部であるか否かが判定される画素のことであり、X軸方向およびY軸方向に、間引き量ごとに設定される。
【0044】
検査対象判定部33は、画像データに測定点を設定し、それぞれの測定点が検査対象の候補点であるか否かを判定する。検査ライン設定部34は、検査対象判定部33によって検査対象の候補点であると判定された点に基づいて検査ラインを設定する。
【0045】
検査領域拡大部35は、検査ライン設定部34によって設定された検査ラインを含むように検査領域を拡大する。検査領域判別部36は、検査領域拡大部35によって拡大された検査領域の面積値が、閾値設定部31によって設定された面積値の範囲内であるか否かによって、その検査領域が検査範囲であるか否かを判定する。
【0046】
図4は、本発明の実施の形態における画像処理装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。まず、閾値設定部31は、判定用閾値(RGBの輝度値の範囲)、および面積値(特徴量)の範囲を閾値として設定する(S1)。そして、サーチ間隔設定部32は、画像データをサーチするときの間引き量(ピッチ量)Lx,Lyを設定する(S2)。
【0047】
図5は、検査対象およびピッチ量Lx,Lyを説明するための図である。図5(a)は、画像データ41内に存在する検査対象42を示している。検査対象42の大きさ、形状などは予め判っているものとする。
【0048】
図5(b)は、サーチ間隔設定部32によって設定されるピッチ量Lx,Lyを示している。図5(b)に示すように、測定点43が黒点で表されており、X軸方向にLxの間隔で、Y軸方向にLyの間隔で設定される。このピッチ量Lx,Lyは、検査対象42の大きさまたは形状に応じて設定され、検査対象の一部に必ず測定点43が当たるように設定される。
【0049】
次に、検査対象判定部33は、測定点43のそれぞれのRGBの輝度値が閾値の範囲内であるか否かによって、測定点43のそれぞれが検査対象42の候補点であるか否かを判定する(S3)。
【0050】
測定点43のRGBの輝度値が閾値の範囲内であれば(S3,Yes)、その測定点43を検査対象42の候補点とする(S4)。また、測定点43のRGBの輝度値が閾値の範囲内になければ(S3,No)、その測定点43を対象候補外とする(S5)。
【0051】
次に、検査ライン設定部34は、検査対象判定部33によって検査対象42の候補点と判定された点に基づき、1行毎の立ち上がり点から立ち下がり点までを検査ラインとし、その両端の点のX座標とその範囲Ziとを記憶する(S6)。このとき、検査ラインに対してナンバリングを行なう。
【0052】
図6は、検査ライン設定部34によって設定された検査ラインを説明するための図である。図6において、点44aが立ち上がり点であり、検査対象外の点から候補点に変化するときの、当該検査対象外の点を立ち上がり点44aとする。また、点44bが立ち下がり点であり、候補点から検査対象外の点に変化するときの、当該検査対象外の点を立ち下がり点44bとする。したがって、点44aから点44bまでの斜線を施したライン45が検査ラインとなる。
【0053】
次に、検査ライン設定部34は、ナンバリングされた検査ラインの全てに対して、その検査ラインの範囲Zi内において、1ピッチだけ上の検査ラインの始点または終点が存在するか否かによって同じ属性を割り当てるか否かを判定する(S7)。
【0054】
検査ラインの範囲Zi内において、1ピッチだけ上の検査ラインの始点または終点が存在する場合には(S7,Yes)、その検査ラインに対して1ピッチ上の検査ラインと同じ属性(前属性)L1を割り当てる(S8)。また、1ピッチだけ上の検査ラインの始点および終点のいずれも存在しない場合には(S7,No)、新規属性L2を割り当てる(S9)。なお、同じ属性L1を有する検査ラインは同じ検査対象42に含まれるものとし、新規属性L2を有する検査ラインは異なる検査対象42に含まれるものと判定する。
【0055】
図7は、属性を設定した検査ラインを示す図である。図7に示すように、ステップS7〜S9の処理によって、左側の2つの検査ラインが同じ検査対象の検査ラインであると判定されて属性L1が付され、右側の1つの検査ラインが異なる検査対象の検査ラインであると判定されて属性L2が付されている。
【0056】
次に、検査領域拡大部35は、検査ライン設定部34によって同じ属性がラベリングされた検査ライン群の中で、現在の検査ラインが最も上の行であるか否かを判定する(S10)。現在の検査ラインが最上行であれば(S10,Yes)、現在の検査ラインの範囲Ziを検査範囲の横方向とし、現在の検査ラインの1画素上から(1ピッチ−2画素)分だけ検査領域を上に広げる(S11)。
【0057】
また、現在の検査ラインが最上行でなければ(S10,No)、現在の検査ラインの両端のX座標と、1ピッチ上の検査ラインの両端のX座標とを比較し、2つの検査ラインの広い方の範囲Zj分だけ検査領域を横に広げ、現在の検査ラインの1画素上から(1ピッチ−2画素)分だけ検査領域を上に広げる(S12)。
【0058】
そして、検査領域拡大部35は、現在の検査ラインが最も下の行であるか否かを判定する(S13)。現在の検査ラインが最下行でなければ(S13,No)、ステップS8に戻って以降の処理を繰り返す。
【0059】
また、現在の検査ラインが最下行であれば(S13,Yes)、現在の検査ラインの範囲Ziを検査範囲の横方向とし、現在の検査ラインの1画素下から(1ピッチ−2画素)分だけ検査領域を下に広げる(S14)。
【0060】
次に、属性を有する検査ライン全てについて検査範囲を設定したか否かを判定する(S15)。検査範囲を設定していない検査ラインがあれば(S15,No)、ステップS7に戻って以降の処理を繰り返す。また、検査ライン全てについて検査範囲を設定していれば(S15,Yes)、同じ属性を有する検査領域全てを含む最小矩形領域を最終的な検査領域とする(S16)。この処理は、属性毎に行なわれる。
【0061】
図8は、検査領域が設定された画像データの一例を示す図である。領域A1は、同じ属性L1が付された最上行の検査ラインに設定された検査領域を示している。領域A2は、同じ属性L1が付された下の検査ラインに設定された検査領域を示している。また、この検査ラインは最下行の検査ラインでもあるため、その下に検査領域Bが設定される。
【0062】
領域C1は、検査領域A1,A2およびBを含む最小矩形領域を示しており、この領域C1が最終的な検査領域とされる。なお、異なる属性L2を有する検査ラインには異なる検査領域C2が設定される。
【0063】
次に、検査領域判別部36は、属性毎の検査領域の面積値(特徴量)が設定範囲内にあるか否かを判定する(S17)。検査領域の面積値が閾値設定部31によって設定された閾値の範囲内でなければ(S17,No)、その検査領域を検査範囲外の領域とする(S19)。
【0064】
また、検査領域の面積値が閾値の範囲内であれば(S17,Yes)、その検査領域を検査範囲とする(S18)。そして、判定していない検査領域があれば(S20,No)、ステップS17に戻って以降の処理を繰り返す。また、すべての検査領域の判定が終了していれば(S20,Yes)、処理を終了する。
【0065】
以上の処理によって、画像データ41において検査対象42の位置や姿勢がばらついたとしても、検査領域(検査範囲)C1を高速に自動で決定することができる。
【0066】
以上の説明においては、RGBの輝度値を判定基準としたが、色相値を判定基準として用いるようにすれば、画像データ41の明るさの変化に影響を受けずに検査範囲を決定できるようになる。この場合、RGB値から色相値を求めるための計算が必要になるが、予めRGB値に対応する色相値を求めてLUT(ルックアップテーブル)に格納しておくことで、計算を行なわずに高速に色相値を求めることができる。
【0067】
また、間引き量Lx,Lyは、検査対象42の大きさや形状に応じて、同じ値を用いたり、異なる値を用いたりすることができる。
【0068】
また、検査対象42と色は似ているが、大きさや形状が異なるものが画像データ41内に存在する場合であっても、検査対象42であるか否かを判定できるように検査対象42の面積値を用いて判定するようにしたが、検査対象の画像の縦横比や対角線長さ、またはこれらの組み合わせを用いるようにしてもよい。
【0069】
また、検査対象42の中に複数の色が存在する場合も考えられる。図9は、検査対象42に複数の色が存在する場合の検査領域を求める方法を説明するための図である。図9(a)に示すように、検査対象42に2色の画像が存在する場合を考える。
【0070】
まず、画像データ41内において色の頻度が少ない、または他に存在しない色を1つ選択する。図9(a)においては、黒で示す画像の色が選択されたとする。そして、選択された色をRGBの特徴量として検査領域をサーチすると、図9(b)に示すような検査領域Ciが求められる。そして、図9(c)に示すように、検査対象42の大きさや形状に応じて、検査領域Ciをさらに広げるようにすればよい。
【0071】
以上説明したように、本実施の形態における画像処理装置によれば、画像データをサーチするときの間引き量Lx,Lyを設定し、画像データ41の一部の測定点43のみのデータを用いて検査領域Ciを求めるようにしたので、高速に検査領域Ciを求めることが可能となった。
【0072】
また、測定点43の間引き量を、検査対象42の大きさや形状に応じて横方向と縦方向とで別々の値(Lx,Ly)を設定できるようにしたので、画像データ41内における検査対象42の位置や姿勢がばらついていたとしても、検査対象42を容易に検出することが可能となった。
【0073】
また、検査対象42と色が似ている他の領域が存在した場合でも、検査領域の特徴量と検査対象42の特徴量とを比較することによって、検査対象42のみを含む検査範囲を特定することが可能となった。
【0074】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0075】
1 画像処理装置、2 カメラ、3 光学系、4 製品、5 搭載ステージ、11 コンピュータ本体、12 ディスプレイ装置、13 FDドライブ、14 FD、15 キーボード、16 マウス、17 CD−ROM装置、18 CD−ROM、19 ネットワーク通信装置、20 CPU、21 ROM、22 RAM、23 ハードディスク、31 閾値設定部、32 サーチ間隔設定部、33 検査対象判定部、34 検査ライン設定部、35 検査領域拡大部、36 検査領域判別部、41 画像データ、42 検査対象、43 測定点、44a 立ち上がり点、44b 立ち下がり点、45 検査ライン、C1,C2 検査範囲。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データから検査対象を含んだ検査領域を検出する画像処理装置であって、
間引き量に応じて前記画像データに測定点を設定し、それぞれの測定点のRGB値に応じて前記検査対象の候補点であるか否かを判定する検査対象判定手段と、
前記検査対象判定手段によって候補点と判定された測定点が存在するラインを検査ラインに設定する検査ライン設定手段と、
前記検査ライン設定手段によって設定された検査ラインに応じて検査領域を拡大する検査領域拡大手段と、
前記検査領域拡大手段によって拡大された検査領域が前記検査対象を含む検査領域であるか否かを判別する検査領域判別手段とを含む、画像処理装置。
【請求項2】
前記検査対象判定手段は、前記測定点のRGBの輝度値に応じて前記検査対象の候補点であるか否かを判定する、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記検査対象判定手段は、前記測定点の色相値に応じて前記検査対象の候補点であるか否かを判定する、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記検査ライン設定手段は、検査対象外の測定点から検査対象の候補点に変化するときの当該検査対象外の測定点を立ち上がり点とし、検査対象の候補点から検査対象外の測定点に変化するときの当該検査対象外の点を立ち下がり点とし、立ち上がり点から立ち下がり点までを検査ラインとする、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記検査ライン設定手段は、対象の検査ラインの範囲内において、1ピッチ上の検査ラインの始点または終点が存在する場合には、1ピッチ上の検査ラインと同じ属性を対象の検査ラインに与え、
1ピッチ上の検査ラインの始点または終点が存在しない場合には、1ピッチ上の検査ラインと異なる属性を対象の検査ラインに与えて異なる検査対象とする、請求項4記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記検査領域拡大手段は、対象の検査ラインが最上行のラインであれば、対象の検査ラインの範囲を検査領域の横方向とし、対象の検査ラインの検査領域を1画素上から、1ピッチ−2画素分だけ上に拡大し、
対象の検査ラインが最上行のラインでなければ、対象の検査ラインの範囲と1ピッチ上の検査ラインの範囲とを比較し、広い範囲の分だけ検査領域を横方向に拡大し、対象の検査ラインの検査領域を1画素上から、1ピッチ−2画素分だけ上に拡大し、
対象の検査ラインが最下行のラインであれば、対象の検査ラインの範囲を検査領域の横方向とし、対象の検査ラインの検査領域を1画素下から、1ピッチ−2画素分だけ下に拡大し、
拡大された検査領域をすべて含む最小矩形領域を最終的な検査領域とする、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記間引き量は、横方向と縦方向とで別々の値が設定される、請求項1〜6のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記検査領域判別手段は、前記検査対象の面積値を特徴量として、前記検査領域拡大手段によって拡大された検査領域が前記検査対象を含む検査領域であるか否かを判別する、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記検査領域判別手段は、前記検査対象の縦横比を特徴量として、前記検査領域拡大手段によって拡大された検査領域が前記検査対象を含む検査領域であるか否かを判別する、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記検査領域判別手段は、前記検査対象の対角線長さを特徴量として、前記検査領域拡大手段によって拡大された検査領域が前記検査対象を含む検査領域であるか否かを判別する、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記検査対象内に複数の色が存在する場合には、所定の色に応じて検査領域を求めた後、前記検査領域拡大手段は、前記検査対象の大きさまたは形状に応じて、検査領域をさらに拡大する、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項12】
画像データから検査対象を含んだ検査領域をコンピュータに検出させる画像処理方法であって、
前記コンピュータに、間引き量に応じて前記画像データに測定点を設定させ、それぞれの測定点のRGB値に応じて前記検査対象の候補点であるか否かを判定させるステップと、
前記候補点と判定された測定点が存在するラインを検査ラインに設定させるステップと、
前記設定された検査ラインに応じて検査領域を拡大させるステップと、
前記拡大された検査領域が前記検査対象を含む検査領域であるか否かを判別させるステップとを含む、画像処理方法。
【請求項13】
画像データから検査対象を含んだ検査領域をコンピュータに検出させるためのコンピュータ・プログラムであって、
前記コンピュータに、間引き量に応じて前記画像データに測定点を設定させ、それぞれの測定点のRGB値に応じて前記検査対象の候補点であるか否かを判定させるステップと、
前記候補点と判定された測定点が存在するラインを検査ラインに設定させるステップと、
前記設定された検査ラインに応じて検査領域を拡大させるステップと、
前記拡大された検査領域が前記検査対象を含む検査領域であるか否かを判別させるステップとを含む、コンピュータ・プログラム。
【請求項14】
画像データから検査対象を含んだ検査領域をコンピュータに検出させるためのコンピュータ・プログラムを記録した記録媒体であって、
前記コンピュータに、間引き量に応じて前記画像データに測定点を設定させ、それぞれの測定点のRGB値に応じて前記検査対象の候補点であるか否かを判定させるステップと、
前記候補点と判定された測定点が存在するラインを検査ラインに設定させるステップと、
前記設定された検査ラインに応じて検査領域を拡大させるステップと、
前記拡大された検査領域が前記検査対象を含む検査領域であるか否かを判別させるステップとを含む、記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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