説明

画像処理装置、画像処理方法、及び磁気共鳴イメージング装置

【課題】画質を向上することができる画像処理装置、画像処理方法、及び磁気共鳴イメージング装置を提供すること。
【解決手段】実施形態に係る画像処理装置は、低域通過フィルタ適用部と、帯域通過フィルタ適用部と、高域通過フィルタ適用部と、エッジマスク生成部と、合成部とを備える。低域通過フィルタ適用部は、オリジナル画像に対応するデータに対して低域通過フィルタを適用する。帯域通過フィルタ適用部は、同データに対して帯域通過フィルタを適用する。高域通過フィルタ適用部は、同データに対して高域通過フィルタを適用する。エッジマスク生成部は、帯域通過フィルタが適用されたデータに基づいてエッジマスクを生成する。合成部は、高域通過フィルタが適用されたデータを用いてマスク処理を行い、マスク処理が行われたデータと低域通過フィルタが適用されたデータとを用いて合成処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、画像処理装置、画像処理方法、及び磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージングの画像処理分野においては、ギブス(Gibbs)のリンギングアーチファクト(ringing artifacts)が知られている。リンギングアーチファクトは、データのトランケーション(truncation)に起因して発生するので、トランケーションアーチファクトなどとも呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5001429号明細書
【特許文献2】米国特許第5285157号明細書
【特許文献3】米国特許第5345173号明細書
【特許文献4】米国特許第5602934号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、画質を向上することができる画像処理装置、画像処理方法、及び磁気共鳴イメージング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る画像処理装置は、低域通過フィルタ適用部と、帯域通過フィルタ適用部と、高域通過フィルタ適用部と、エッジマスク生成部と、合成部とを備える。前記低域通過フィルタ適用部は、磁気共鳴イメージングによって取得されたデータであってオリジナル画像に対応するk空間又は画像空間のデータに対して、低域通過フィルタを適用する。前記帯域通過フィルタ適用部は、前記データに対して、帯域通過フィルタを適用する。前記高域通過フィルタ適用部は、前記データに対して、高域通過フィルタを適用する。前記エッジマスク生成部は、前記帯域通過フィルタが適用されたデータに基づいて、前記オリジナル画像内の対象物のエッジが抽出されたエッジマスクを生成する。前記合成部は、前記高域通過フィルタが適用されたデータを用いて前記エッジマスクによるマスク処理を行い、前記マスク処理が行われたデータと前記低域通過フィルタが適用されたデータとを用いて合成処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、実施形態に係るMRI(Magnetic Resonance Imaging)システムのハイレベルブロック図である。実施形態に係るMRIシステムは、MRIデータを取得し、取得したMRIデータに対してフィルタ処理を行うことで、再構成画像内のエッジ及び細部を強調するとともに、ギブスのリンギングアーチファクトを低減する。
【図2】図2は、実施形態に係るフィルタ処理の概略図である。
【図3】図3は、実施形態に好適なコンピュータプログラムコード構造の概略図である。実施形態においては、少なくとも1つのデータプロセッサが、記憶部に記憶された、少なくとも1つのデータアレイを処理する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態に係る画像処理装置、画像処理方法、及び磁気共鳴イメージング装置(以下、適宜「MRIシステム」)を説明する。
【0008】
図1は、実施形態に係るMRIシステムのハイレベルブロック図である。図1に示すMRIシステムは、架台10(概略断面で示す)と、互いに接続されて機能する様々な関連システム構成要素20とを含む。少なくとも架台10は、通常、シールドルームに配置される。図1に示す1つのMRIシステム形状は、静磁場B0磁石12と、Gx、Gy、及びGz傾斜磁場コイルセット14と、RFコイルアセンブリ16との略同軸円筒状配置を含む。この円筒状の要素アレイの水平軸線に沿って、被検体テーブル11によって支持された被検体9の頭部を実質的に取り囲むように示されたイメージングボリューム18がある。
【0009】
MRIシステム制御部22は、表示部24、キーボード/マウス26、及びプリンタ28に接続される入力/出力ポートを備える。言うまでもなく、表示部24は、制御入力もまた備えるような多様性のあるタッチスクリーンであってもよい。
【0010】
MRIシステム制御部22は、MRIシーケンス制御部30とインタフェース接続する。MRIシーケンス制御部30は、G、G、及びG傾斜磁場コイルドライバ32、並びに、RF送信部34、及び送信/受信スイッチ36(同じRFコイルが、送信及び受信の両方に使用されている場合)を制御する。当業者には自明であるが、1つ以上の好適な電極8を被検体の身体に貼付することで、心電図(ECG(electrocardiogram))信号及び抹消脈波同期信号の一方又は両方を、MRIシーケンス制御部30に出力することができる。MRIシーケンス制御部30はまた、特定のデータ取得シーケンスパラメータを定義する操作者入力及びシステム入力の一方又は両方を使ってMR画像を生成するために、MRIデータ取得シーケンスを実行するための好適なプログラムコード構造38へのアクセスを有する。
【0011】
MRIシステムのシステム構成要素20は、表示部24へ送るための処理済画像データを作成できるように、データ処理部42に入力を供給するRF受信部40を含む。MRIデータ処理部42はまた、(例えば、実施形態及び画像再構成プログラムコード構造44に従ったプロセスから得られたMR画像データ及び中間結果データの一方又は両方を格納するために)画像再構成プログラムコード構造44及びMR画像記憶部46にアクセスできるように構成されている。
【0012】
また、図1に、MRIシステムプログラム/データ格納部50の一般化された図を示す。このMRIシステムプログラム/データ格納部50では、格納されたプログラムコード構造は(例えば、再構成された画像のエッジ及び他の細部を強調すると同時に、リンギングアーチファクト及び他のアーチファクトの一方又は両方を削減するために、k空間で取得したMRIデータをフィルタ処理するために)、MRIシステムの幾多のデータ処理構成要素にアクセスできるコンピュータ可読格納媒体に格納される。当業者には自明であるが、MRIシステムプログラム/データ格納部50を、正常運転時にそのように格納されたプログラムコード構造を差し迫って必要とするシステム20の処理コンピュータのうちのさまざまなコンピュータに分割し、かつ少なくとも一部を直結してもよい(すなわち、MRIシステム制御部22に普通に格納したり、直結したりする代わりに)。
【0013】
実際、当業者には自明であるが、図1は、本明細書で後述する実施形態を実行できるように若干の変更を加えた一般的なMRIシステムを非常に高度に簡素化した図である。システム構成要素は、様々な論理的集合の「ボックス」に分割でき、通常、多数のデジタル信号プロセッサ(DSP(Digital Signal Processors))、マイクロプロセッサ、特殊用途向け処理回路(例えば、高速A/D変換、高速フーリエ変換、アレイ処理用など)を含む。これら処理装置のそれぞれは、通常、各クロックサイクル(又は所定数のクロックサイクル)が発生すると、物理データ処理回路が、ある物理的状態から別の物理的状態へ進むクロック動作型の「ステートマシン」である。
【0014】
動作中に、処理回路(例えば、CPU(Central Processing Unit)、レジスタ、バッファ、計算ユニット、など)の物理的状態が、あるクロックサイクルから別のクロックサイクルへ漸進的に変化するだけでなく、連結されているデータ格納媒体(例えば、磁気記憶媒体のビット格納部)の物理的状態も、そのようなシステムの動作中に、ある状態から別の状態へ変わる。例えば、MRイメージング再構成プロセスの終了時、物理的格納媒体のコンピュータ可読アクセス可能データ値格納場所(例えば、ピクセル値の複数桁2進数表現)のアレイは、いくつかの事前の状態(例えば、全部一律の「ゼロ」値、又は全部「1」値)から新しい状態に変わる。その新しい状態では、そのようなアレイ(例えば、ピクセル値)の物理的場所の物理的状態は、最小値と最大値との間で変動し、現実世界の物理的事象及び状況(例えば、撮像ボリューム空間内の被検体の組織)を表現する。当業者には自明であるが、格納されたデータ値のそのようなアレイは、物理的構造を表し且つ構成もする。つまり、命令レジスタの中に順次読み込まれてシステム構成要素20の1つ以上のCPUによって実行されたとき、動作状態の特定シーケンスが発生して、MRIシステム内で移行されるコンピュータ制御プログラムコードの特定構造が構成されるように、上記アレイは構成される。
【0015】
下記の実施形態に係るMRIシステムは、MRIデータの取得及び処理の一方又は両方と、MR画像の生成及び表示との一方又は両方を行う改良された方法を提供する。
【0016】
図2は、実施形態に係るフィルタ処理の概略図である。以下の実施形態に係るMRIシステムは、k空間(実空間における画像データのフーリエ変換の空間)領域において、MRIデータアレイ(array)に対してフィルタを適用し、低域通過フィルタ(以下、適宜「ローパスフィルタ」)処理済みのデータアレイ、帯域通過フィルタ(以下、適宜「バンドパスフィルタ」)処理済みのデータアレイ、及び高域通過フィルタ(以下、適宜「ハイパスフィルタ」)処理済みのデータアレイを生成する。また、MRIシステムは、バンドパスフィルタ処理済みのk空間データアレイをフーリエ変換し、画像領域においてその絶対値をとり、閾値処理及びフェザリング処理を行う。また、MRIシステムは、閾値処理及びフェザリング処理が施されたデータアレイから、ファジー(fuzzy)な連続値を有する(「グレースケール(gray-scale)」)、エッジマスク(edge mask)データアレイを生成する。一方、MRIシステムは、ハイパスフィルタ処理済みのk空間データアレイをフーリエ変換し、画像領域において必要に応じて閾値処理を行い、鮮鋭化マスクデータアレイを生成する。そして、MRIシステムは、エッジマスクデータアレイを鮮鋭化マスクデータアレイに乗算し、その乗算した結果を、ローパスフィルタ処理済みのk空間データアレイをフーリエ変換してその絶対値をとったデータアレイに加算する。こうして、実施形態に係るMRIシステムは、潜在的な解剖学的組織をより良好に表すために、ギブスのリンギングアーチファクト及びノイズアーチファクトが削減された、フィルタ処理済画像を生成する。
【0017】
このように、実施形態に係るMRIシステムは、例えば、ローパスフィルタ適用部と、バンドパスフィルタ適用部と、ハイパスフィルタ適用部と、エッジマスク生成部と、合成部とを備える。ローパスフィルタ適用部は、磁気共鳴イメージングによって取得されたデータであってオリジナル画像に対応するk空間又は画像空間のデータに対して、ローパスフィルタを適用する。バンドパスフィルタ適用部は、同データに対して、バンドパスフィルタを適用する。ハイパスフィルタ適用部は、同データに対して、ハイパスフィルタを適用する。エッジマスク生成部は、バンドパスフィルタが適用されたデータに基づいて、オリジナル画像内の対象物のエッジが抽出されたエッジマスクを生成する。合成部は、ハイパスフィルタが適用されたデータを用いてエッジマスクによるマスク処理を行い、マスク処理が行われたデータとローパスフィルタが適用されたデータとを用いて合成処理を行う。
【0018】
また、以下の実施形態において、エッジマスク生成部は、バンドパスフィルタが適用されたk空間のデータをフーリエ変換し、フーリエ変換後の画像空間のデータに対して閾値処理及びフェザリング処理を行うことで、エッジマスクを生成する。また、合成部は、ハイパスフィルタが適用されたk空間のデータをフーリエ変換し、フーリエ変換後の画像空間のデータに対して閾値処理を行った後に、エッジマスクによるマスク処理を行う。
【0019】
また、以下の実施形態において、ローパスフィルタ適用部及びバンドパスフィルタ適用部は、磁気共鳴イメージングによって取得されたデータのサイズに適合するように調整された、ローパスフィルタ及びバンドパスフィルタを用いる。一方、ハイパスフィルタ適用部は、磁気共鳴イメージングによって取得されたデータより大きい、k空間のデータアレイコンテナのサイズに適合するように調整された、ハイパスフィルタを用いる。
【0020】
また、以下の実施形態に係るMRIシステムは、逆フーリエ変換部を更に備えてもよい。逆フーリエ変換部は、複数の要素コイルによってk空間のデータが収集され、要素コイル毎のk空間のデータがそれぞれフーリエ変換されて要素コイル毎の画像空間のデータが生成され、生成された要素コイル毎の画像空間のデータが合成されることでオリジナル画像が生成された場合に、このオリジナル画像のデータを逆フーリエ変換してk空間のデータを生成する。このとき、ローパスフィルタ適用部、バンドパスフィルタ適用部、及びハイパスフィルタ適用部は、逆フーリエ変換部によって生成されたk空間のデータに対して、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ、及びハイパルフィルタそれぞれを適用する。なお、これらの各部は、例えば、MRIデータ処理部42に備えられ、MRIデータ処理部42において実行される。また、これらの各部は、例えば、MRIシステムとは別の画像処理装置に備えられ、画像処理装置において実行されてもよい。この場合、必要なデータはMRIシステムにおいて取得され、操作者によって、若しくはネットワーク経由などで、画像処理装置に入力されればよい。
【0021】
k空間データのトランケーションは、ギブスのリンギングアーチファクト(以下、リンギングアーチファクト)を引き起こす。リンギングアーチファクトは、特に、取得された画像データのマトリックスが小さい場合に、MRイメージングの実行において克服すべき最古、且つ、最も困難な課題の1つであった。
【0022】
MRイメージングにおいては、傾斜磁場の下、空間的に測定された値が周波数の測定値に変換される。リンギングアーチファクトは、取得したMRIデータに、画像化対象の解剖学的部分から示される高空間周波数情報の全てが含まれていない場合に、MR画像内に発生する。サンプリング窓の幅は、画像に畳み込まれるシンク関数の形状を決定する。このシンク関数の畳み込みは、ギブスのリンギングアーチファクトの近似強度の不連続性、又は画像特性の高コントラストエッジをもたらす。リンギングアーチファクトは、エンコーディングステップ数が小さい場合(例えば、≦196)、取得時間や動的なコントラスト、又はMRI取得シーケンス上の制約の影響を受け、特に、位相エンコーディング(PE(Phase Encoding))方向及びスライスエンコーディング(SE(Slice Encoding))方向の一方又は両方に沿って現れ、不快である。リンギングアーチファクトは、リードアウト(RO(Read Out))方向に沿って、一般的に長い取得ウインドウ(例えば、256ポイント以上)によれば、より目立たなくなり、又は、実質的に取得時間に悪影響を及ぼすことがなく問題ではなくなる。
【0023】
アーチファクトは、同じ分解能のファントム及び被検体における画像の直接比較から、MRI製品において長年活発に適用されてきたリンギングアーチファクト低減アルゴリズムによって処理されてきたことが、観察され、報告されている。しかし、そのような従前の試みには、結果として生じる画像品質と実施効率(例えば、処理時間、複雑さなど)との両方又は一方に関して、改善の余地が残っている。
【0024】
一般的に用いられるk空間のローパスフィルタリング及び画像空間の加重平均は、微細な画像細部を不鮮明にし、全体的なエッジ鮮明度を落とす。一方、例えば、はるかに精巧なGegenbauer再構成を用いる、「TV(Total Variation)」拘束データ外挿法及び他の外挿法(CT(Computed Tomography))で普及している異方性拡散に類似するシグマ(Sigma)フィルタリング)は、複雑であり、多くの場合反復的であり、遅くなる傾向があり、区分的に一定な特性を有する漫画のような成果物を生む傾向がある。MRIでは、通常、軟組織のコントラストに微細な階調性が期待されるため、このような成果物は、MRIとしては自然に見えない。
【0025】
以下の実施形態においては、リンギングアーチファクト及びノイズアーチファクトを同時に低減するとともにエッジを強調することを目的とした、単純、迅速、且つかなり容易な方法を提示する。この方法において、k空間の生(raw)データ(以下、適宜「未処理データ」)には、ローパス(以下、適宜「LP(low-pass)」)の窓関数(windowing function)、バンドパス(以下、適宜「BP(band-pass)」)の窓関数、及びハイパス(以下、適宜「HP(high-pass)」)の窓関数が別々に掛けられる。なお、k空間の未処理データには、2次元逆フーリエ変換によって画像領域から生成されるk空間データが含まれる。次に、窓関数を掛けることによって得られた成果物は、図2に示すように、2次元フーリエ変換され、画像領域において結合される。
【0026】
k空間で用いられる窓関数は、最適化されることが望ましい。具体的には、窓関数は、比較的低分解能でエッジを選択的に収集し、閾値処理及びフェザリングの後に、拡散性のある拡散エッジマスクを作成可能にするように、中域〜中高域の空間周波数の範囲で慎重に制御されることが望ましい。ここでの目的は、HPラプラシアン鮮鋭化マスクの有効なエッジ強調範囲とエッジマスクとの間で、適正かつ正確な合致を達成することである。遅い画像領域畳み込み動作と、キャニーエッジ検出器で一般に使用されるエッジ細線化などの多くの他の遅い動作は、(a)等価のk空間動作に置き換えられるか、(b)回避される。なぜなら、目的はピクセルエッジの細さではなく、むしろこのエッジ周りのファジー領域であるからである。鮮鋭化マスクは、(ピクセル毎に鮮鋭化マスク内で掛けられる)BPフィルタから導出されたエッジマスクを介して、LP平滑画像へ逆加算される。
【0027】
図2に、適切に合致されたローパス、バンドパス、及びハイパスのk空間窓関数を有する実施形態によるアルゴリズムを示す。エッジ部位抽出のためにバンドパス周波数領域フィルタを使用することは、本実施形態による方法の重要な新機能であると考えられる。本実施形態は、低分解能、中分解能、及び高分解能のMR画像からリンギングアーチファクト及びノイズを除去すると同時にエッジ描写を強調して、微細部の視覚的顕著性を改善する際に有効であると分かった。全体的な処理済み画像品質は、文献に見られる多くのより複雑な方法、及びいくつかの市販のフィルタパッケージから得られる画質より優れていると同時に、実施形態による比較的単純なアルゴリズムの方がかなり高速に動作する。
【0028】
図2に示すように、画像空間領域の「入力画像」Ioは、対応する入力画像k空間データアレイKoを生成するために、2次元逆フーリエ変換されるとよい。あるいは、言うまでもなく、入力画像データアレイKoは、MRIシステムの好適な記憶部(例えば、図1のMRIデータ処理部42にアクセスできるMR画像記憶部46)に格納されたk空間の未処理のN×M画像データアレイKrawをもたらすために、図1のシステムによって実行された通常のMRIデータ取得シーケンスを介して直接取得されたものと同じであってもよい。いずれにせよ、不必要な複雑化を避けるために、部分フーリエ(又は「ハーフフーリエ」、「AFI」、その他)再構成、及びパラレルイメージング再構成(例えば、SENSE、GRAPPA、SPEEDER、その他)などの全未処理データ範囲を回復するのに必要なあらゆる基本的なデータ処理手順の全てが、すでに実行され、それらの成果物が、すでにN×M「未処理データ」アレイに含まれていることも前提とする。
【0029】
どちらのルートによっても、k空間入力画像複素データアレイKoは、より大きな(P×Q、但し、P>N及びQ>M)k空間データアレイ内に取得したk空間(N×M)未処理データレイKrawを含むことができる。このk空間データアレイでは、N×M未処理データ範囲外の全ての要素の値は、ゼロであり、(当業者には明らかなように)ゼロフィルと呼ばれるMRIの常識である。取得した未処理のk空間データを「200%」以上までゼロフィルすることが一般的であり、それは、P≧2N及びQ≧2Mを意味する。例えば、小さいN×M取得アレイサイズを有する低分解能画像は、ゼロフィル処理又は他の補間処理を介してより大きい表示アレイサイズP×Qで表示されることが多い。そのような場合、MRIシステムに格納されるような入力画像アレイサイズは、すでにP×Qである。
【0030】
より大きいP×Q入力画像アレイIo、又はより大きいP×Qのk空間入力データアレイKoをN×M未処理データアレイKrawから得るのに使用される全ての前処理ステップが、未処理k空間データの直接ゼロフィルの場合のように線形であるならば、P×Qサイズのk空間入力データアレイKoの中央のN×M部位だけは、ゼロ以外である。これはまた、最新のMRIスキャナで使用されることが多い複数コイル要素からの信号が、k空間で直接結合され、それによって、未処理のk空間データサイズが変化しないようになるケースでもある。
【0031】
一般的に、複数の要素信号は、非線形であるプロセス(例えば、一般的な平方和(SOS(Sum Of Squares))の組合せ)において、個別に2次元フーリエ変換された後、画像空間内で結合される。未処理の信号が複数コイル要素からのものでないときでも、単純な絶対値動作(又は値のクリップ化を含む画像アレイのレベル化又は閾値化のプロセス)はまた非線形である。そのような非線形の状況では、k空間への2次元逆フーリエ変換の後、元のN×M未処理データ部位の外側の入力k空間データアレイKoに小さい「漏出」、すなわち、(個々の)未処理のN×Mのk空間データ部位の外側に位置する小さいがゼロ以外の複素数が存在する可能性がある。
【0032】
いずれにしても、それは、k空間ウィンドウイング(窓関数によるピクセル毎の乗算)処理が、このLPフィルタ及びBPフィルタの実施形態に従って適用される、実際に取得した(N×M)未処理のk空間データアレイKrawの範囲に対してである。その上、本実施形態では、HPフィルタが、k空間内の全P×Q入力データアレイKoに適用されるが、それは、元の未処理データN×M範囲外において従前の非線形処理ステップで生成される、有用な高空間周波数構成要素が存在する可能性があるからである。一般に、取得したk空間未処理データレイKrawにおいて、Nは、MRIデータ取得シーケンスの間にフェーズエンコード(PE(phase encoded))方向で得られたフェーズエンコード増分の有効数に等しい。一方、Mは、MRIデータ取得スキャンシーケンスの間にリードアウト(RO(readout))方向で得られた周波数符号化サンプルの有効数に等しい。それは、図2に示すように、先ずローパスで、次にバンドパスでフィルタ処理される未処理のk空間領域(すなわち、空間周波数領域)の、このN×Mアレイである。ハイパスフィルタは、全k空間アレイKoにわたり適用される。
【0033】
より詳細に説明するように、ローパス、バンドパス、及びハイパスのフィルターウインドウは全て、(言及したように、部分フーリエ及びパラレルイメージングの処理ステップが、すでに行われた後、回復されたデータ範囲を含む)N×Mデータ値の生の取得した画像データアレイ、又は、HPフィルタについては、より大きい入力データアレイKoに(厳密であることが常に望ましいが、厳密ではないにしても)実質的に適合するように所定の大きさに調整される。図2に(事実上3次元形状として)概略的に図示したように、フィルタ窓関数は、フィルタ処理されるべき生のk空間領域又は入力データアレイの範囲一面に適合する。フィルタ処理されるデータアレイには、「正方形」のアレイ(すなわち、N=M、又はP=Q)があり、次に、フィルタカーネルは、基本的に正方形又は円形の横断面(図2のフィルタ窓関数軸線に沿って切った場合)に適合するようにする。他方、N≠M、又はP≠Qの場合、次に、ローパスフィルタは、基本的に長方形の横断面を呈する一方、バンドパス及びハイパスのフィルタは、基本的に楕円形の横断面を呈する。
【0034】
特に注目すべきは、実施形態ではk空間のバンドパスフィルタカーネルが、全方向でエッジを効率的に抽出するのに対して、先行技術のキャニー型エッジ抽出フィルタリングプロセスでは、一般に画像領域内で2つの直交する双方向性フィルタリングカーネルを使用して、その後、該成果物を画像領域内で結合させることである。
【0035】
図2に示すように、入力された生の画像データアレイKoは、それぞれローパスフィルタリングウィンドウ(WLP)、バンドパスフィルタリングウィンドウ(WBP)、及びハイパスフィルタリングウィドウ(WHP)を用いてハイパス、バンドパス、及びローパスのフィルタ処理が行われる。それぞれ、ピクセル毎に、生の画像データKo内のN×M又はP×Qアレイの対応する要素は、ローパス、バンドパス、及びハイパスでフィルタ処理されたP×Qのk空間データアレイKLP、KBP、及びKHPを生成するために、フィルタ処理済窓関数(すなわち、図2に示した3次元形状の「高さ」)の対応する適切な重み係数で乗算される。これらのフィルタ処理済データアレイそれぞれは、次に、フーリエ変換されたLP及びHPのフィルタ処理済成果物の絶対値(magnitudes)と、フーリエ変換されたHPのフィルタ処理済成果物の実部とが取得された後、これらのフィルタ処理済データアレイをそれぞれ対応するP×Qデジタル画像領域アレイILP、IBP、及びIHPに反映させるように、別々に2次元フーリエ変換(2D FT)にかけられる。図2に示すように、ローパス画像領域アレイILPは、元の未処理画像IO(それが実際に生成された場合)又はその有効な対応物(画像領域において画像アレイIOの代わりに取得した未処理の画像データKOが使用された場合)の平滑バージョンを表す。バンドパスフィルタ処理された画像領域アレイIBPは、抽出されたエッジを表す一方、ハイパスフィルタ処理された画像領域アレイIHPは、鮮鋭化マスクを表す。この鮮鋭化マスクは、未処理エッジ境界でアンダーシュート及びオーバーシュートを生じさせることによって画像の知覚鮮鋭度を増大させ、その結果、エッジの知覚コントラストを増大させる働きをする。
【0036】
当業者には自明なように、フーリエ周波数領域(すなわち、k空間)の単純明快な乗算は、実際の空間画像領域における畳み込みに相当する。しかし、またよく知られてもいるように、畳み込みプロセスは、複雑であり、かつ実行に時間がかかる。さらにまた、画像領域において、k空間の実施形態に使用されるk空間窓関数に相当する好適な画像領域のフィルタリング畳み込みカーネルを得ることは、難しい場合がある。適切な画像領域畳み込みカーネルの導出は、ラプラシアン型鮮鋭化マスクがより一般に定義されて使用されているので、ハイパスフィルタリングプロセスにとってはより実行可能といえる。しかし、(処理速度の削減などの余分な方策が必要となるため、明らかに好ましい実施形態ではないと考えられるにもかかわらず)画像領域でフィルタリング機能の全てを実行することは、少なくとも理論的には可能である。
【0037】
図2に示すように、抽出されたエッジを表す画像領域アレイIBPは、連続値の(「グレースケール」)P×QエッジマスクアレイIEMを生成するために、閾値化及びフェザリングのプロセスにかけられる。P×Q鮮鋭化マスク(最適成果を得ようと望むなら、望ましくはソフト閾値化後の)は、次に、図2の202に示したように、ピクセル毎に、P×Qエッジマスクアレイで乗算される。その乗算結果は、次に、最終のP×Q画像領域アレイIFを得るために、ピクセル毎に、図2の204に示したP×Qローパス平滑化画像アレイILPに加算される。
【0038】
図3は、図2に示す実施形態に適用されるコンピュータプログラムコード構造を示す。このコンピュータプログラムコード構造は、少なくとも1つの好適に構成されたデータ処理部(例えば、図1に示すMRIデータ処理部42)において用いられる。また、このコンピュータプログラムコード構造は、図1に示すMRIシステム内の適切な記憶部(例えば、データ処理部42と通信を行うMR画像記憶部46)に格納された入力画像アレイIo及び入力データアレイKoの両方又は一方を用いる。
【0039】
S300において、データ処理部は、ギブスのリンギングアーチファクト/ノイズアーチファクトのフィルタモジュールを開始する。S302において、データ処理部は、データ処理用に、未処理データ(raw data)であるk空間データアレイKoの生成及び受付の両方又は一方を行う(例えば、適切なオペレータインタフェースを介して)。ステップS304において、点線で示されるように、入力データアレイKoが、(例えば、MRIシステムデータ取得処理のワークフロー設計に起因して)取得データからデータ処理用に提供されていない場合、フィルタリングプロセスへの入力として適切なP×Qのk空間データアレイKoを生成するために、画像領域内の既存の未処理画像アレイIoが、2次元逆フーリエ変換(及び任意にゼロフィル)されてもよい。
【0040】
なお、フィルタ処理の対象となる入力データアレイKoは、MRIシステムによって収集されたk空間データ自体である場合と、画像データから逆フーリエ変換されて生成されたk空間データである場合とがある。後者の場合について説明すると、MRIシステムは、複数の要素コイルを有するアレイコイルを備え、アレイコイルによってデータを収集することがある。この場合、複数の要素コイルによってk空間のデータが収集され、要素コイル毎のk空間のデータがそれぞれフーリエ変換されて要素コイル毎の画像空間のデータが生成され、生成された要素コイル毎の画像空間のデータが合成されることで、オリジナル画像が生成される。このような場合、MRIシステムは、オリジナル画像(合成画像)を逆フーリエ変換することで、フィルタ処理の対象となる入力データアレイKoを生成してデータ処理時間を短縮しても良いし、或いは要素コイル毎の画像データをそれぞれ逆フーリエ変換することで、フィルタ処理の対象となる入力データアレイKoを生成して、要素コイル毎の各画像データの影響を反映しても良い。また前者のMRIシステムによって収集されたk空間データ自体をフィルタ処理の対象とする場合においても、各要素コイルのk空間データを合成した合成データに対してフィルタ処理を施しても良く、各要素コイルのそれぞれのk空間データにフィルタ処理しても良い。
【0041】
S306において、データ処理部は、ローパスフィルタ処理済みのP×Qのk空間アレイKLPを生成するために、P×Qのk空間データアレイKoに対して、ローパスフィルタウィンドウイング(windowing)を適用する(窓関数WLPを掛ける)。窓関数WLPは、P×Qの入力k空間データ全範囲にわたって定義されるが、窓関数WLPのゼロ以外の範囲は、厳密に、又は実質的に、N×Mの有効ウィンドウイングサブアレイに合致するのが望ましい。同様に、S308において、データ処理部は、バンドパスフィルタ処理済みのP×Qのk空間アレイKBPを生成するために、P×Qのk空間データアレイKoに対して、バンドパスフィルタウィンドウイングを適用する(窓関数WBPを掛ける)。窓関数WBPのゼロ以外の範囲は、厳密に、又は実質的に、N×Mの有効ウィンドウイングサブアレイに合致する。また、S310において、データ処理部は、ハイパスフィルタ処理済みのP×Qのk空間アレイKHPを生成するために、P×Qのk空間データアレイKoに対して、厳密に、又は実質的に合致するハイパスフィルタウィンドウイングを適用する(窓関数WHPを掛ける)。もちろん、かかるフィルタ処理の順序は、必要に応じて、任意に変更できる。
【0042】
S312において、データ処理部は、フィルタ処理済のk空間アレイに、好適な2次元フーリエ変換を適用する。また、続いて、データ処理部は、画像領域において、フィルタ処理済の画像領域P×QアレイILP及びIBPを生成するために、フィルタ処理済のk空間アレイの絶対値(magnitudes)をとる。また、データ処理部は、フィルタ処理済の画像領域P×QアレイIHPを生成するために、複素数であるフーリエ変換の成果物から実部をとる。したがって、結果として生じる画像領域アレイILP及びIBPは、いずれも正に画定される(全てのアレイ要素値は、ゼロ以上である)。これに対して、結果として生じる画像領域アレイIHP、ソフト閾値処理前のHP鮮鋭化マスクは、ゼロである平均値付近の正及び負の両方の値を当然含む。
【0043】
次に、S314において、データ処理部は、エッジマスクの「パス範囲」を好適なレベルまで増加させるために、バンドパスフィルタ処理済の画像領域アレイIBPに対して適応的なハード閾値処理を行い、P×Q閾値エッジマスクアレイIBPTHを生成する。このとき、データ処理部は、閾値として、未処理エッジマスクIBPのピーク値及び平均値に応じて自動的に計算された数値を用いる。ここで、ハード閾値処理は、閾値を基準に値を全て落とす処理をいい、例えば、閾値以上の値は「閾値」に値を変更する、閾値以下の値は「ゼロ」に値を変更する、といった処理をいう。例えば、ステップS314において、データ処理部は、閾値以上の値であれば「閾値」に値を変更する処理を行う。なお、ソフト閾値処理は、ハード閾値処理以外の閾値処理をいう。
【0044】
S316において、データ処理部は、対応するP×Qの複素データアレイKBPTHを生成するために、閾値エッジマスクアレイIBPTHに対して、k空間への2次元逆フーリエ変換を適用する。S318において、データ処理部は、P×Qのローパスフィルタ処理済k空間エッジマスク複素データアレイKEMを生成するために、このKBPTHに対して、ピクセル毎に、P×Qガウスローパスフィルター窓関数WGaussianを乗算する。S320においては、データ処理部は、k空間アレイKEMに対して2次元フーリエ変換を適用して画像空間に戻し、その絶対値をとることで、P×Qのフェザリングファジー画像領域エッジマスクアレイIEMを取得する。
【0045】
S322において、データ処理部は、ソフト閾値化画像領域アレイIHPSTを得るために、必要に応じて、P×Qのハイパスフィルタ処理済画像アレイIHPに対するシンプルなソフト閾値処理を採用することができる。非線形のソフト閾値処理は、値をゼロの方へ減少させることで、非常に小さい閾値TST未満の原点周辺のデータにしか、影響を及ぼさない。したがって、ソフト閾値処理によれば、鮮鋭化マスクで起こり得るランダムノイズ及びギブスリンギングを低減することができる。
【0046】
S324において、データ処理部は、P×Qのバンドパスフィルタリングで生成されたエッジマスクアレイIEMに対して、P×Qのソフト閾値処理ハイパスフィルタリングで生成された鮮鋭化マスクアレイIHPSTを乗算し、次に、この成果物を、P×Qのローパスフィルタリングで生成された平滑画像領域アレイILPに加算することによって、最終的な画像IFを組み立てる。全ての計算は、ピクセル毎に画像領域内で行われる。ステップ326において、このモジュールのフィルタリングプロセスが完了した後、コーリング(calling)プログラムへのプロセッサ制御のリターン(return)が行われる。
【0047】
明白なように、実施形態を2次元アレイに関して説明してきたが、3次元画像も同じように(例えば、3次元ボリュームの隣接するスライスを連続的にフィルタ処理することによって)フィルタ処理することができる。
【0048】
以下では、基本的な1次元(1D)型と、適用可能な場合の実用的な2次元(2D)型とを含む、現在好ましい、いくつかのk空間の窓関数カーネルを説明する。
【0049】
[Ia. ローパス(LP)窓関数:基本的な1D公式化]
N=k空間取得データサイズ(2Dでは、N及びM)
n=k空間ピクセルインデックス(1からNまで)(2Dでは、n及びn
r、w、a、p:好ましい(上位)値及び第2の好ましい値が、マークされている通りに与えられるパラメータ
【0050】
【数1】

【0051】
【数2】

【0052】
【数3】

【0053】
[Ib. ローパス窓関数:基本的な「1Dx1D」型2D公式化]
ウィンドウは、取得されたN×Mの未処理データのサイズ範囲にわたって画定される。N=Mの場合、ゼロに設定された範囲及び外側の全ての値と、1Dの場合に与えられたものと同じ設定のパラメータ値とに応じて、正方形又は長方形になることができる。
【数4】

【0054】
【数5】

【0055】
【数6】

【0056】
【数7】

【0057】
[II. バンドパス(BP)窓関数]
「ガンマ変量」関数をBP窓関数として用いる。
【数8】

【0058】
但し、α=6及びβ=3、及び|k|は、|k|=25.6K/Cに正規化される。但し、Kは原点からの「k空間距離」であり、Cは未処理データアレイサイズに基づく特定方向に沿った「有効カットオフ範囲」である。ウィンドウは、取得されたN×Mの未処理データのサイズ範囲にわたり画定されるだけで、N=M(又はε=1)の場合、ゼロに設定された範囲及び外側の全ての値に応じて、円形又は楕円形になることができる。
【0059】
一実施形態では、W(nx,ny)=t6exp[−t/3]
但し、t=25.6Kn/C
n=√(XO2+YO2
C=(Nx/2)Kn/(XO2+ε2O2
ε=(N/M)
O=nx−(N/2)−1
O=ny−(M/2)−1
註:BP窓関数は、Kn=0において0/0特異性を有する。但し、特異性を明確に0に設定する必要がある。また、BP窓関数のピーク値は、WBP=1/|max(WBP)|のようなものに正規化されるべきである。
【0060】
[III. ハイパス(HP)窓関数]
k空間HP窓関数は、線形空間不変量(LSI(Linear Spatially Invariant))平滑化フィルタのために定義された「強度」に対応するLSIラプラシアン鮮鋭化画像領域畳み込みカーネルの2次元逆フーリエ変換のマグニチュードとして作成されるものである。ここに、1.5、2.0、2.5、及び3.0の「LSI強度」に対するいくつかの正規化された鮮鋭化カーネルがあり、初期設定値は、望ましくは2.5に設定されている。強度数がより高い程、ウィンドウイングを適用した後、鮮鋭化がより鋭くなる。
【数9】

【数10】

【数11】

【数12】

【0061】
画像領域ラプラシアン鮮鋭化畳み込みカーネルが選択されると、対応するk空間HP窓関数が、以下のように作成される。
【数13】

【0062】
該数式は、全入力k空間データKo範囲にわたって定義される。但し、KernelLaplacianは、上述のように、P×Qのk空間コンテナサイズにゼロフィルされた(すなわち、中心の3x3域を除く至る所に0)対応する3x3ラプラシアン画像領域鮮鋭化畳み込みカーネルである。
【0063】
[IV. HP鮮鋭化マスクソフト閾値化公式化]
正規化された入力画像のハイパスフィルタリングから得られる入力HP鮮鋭化マスクがIHP、及び出力ソフト閾値鮮鋭化マスクがIHPSTであるとき、最適成果を望む場合は、ソフト閾値化を実行できる。
|IHP|がt未満の場合、
【数14】

実施形態においてt=0.02及びp=1の場合、該数式は、鮮鋭化強度を徐々に閾値tより下に下げる。
【0064】
[V. エッジマスク閾値化公式化]
BP導出エッジマスクの自動適応ハード閾値化は、以下のように実行できる。
【数15】

但し、hは好適な実施形態において0.36に予め設定された定数である。一方、mean(IBP)/h項は、自動閾値を表わす。h値を変えることで、エッジマスクの作用範囲の制御を行う。該制御は、LSI HPフィルタ強度と共に、入力画像エッジ周りの鮮鋭化の全体的な範囲及び空間範囲を制御する。この制御の後に、より低い値をゼロに切り下げるステップ及び正規化ステップが続く。
BPTH=IBPTH−min(IBPTH
BPTH=IBPTH/max(|IBPTH|)
【0065】
[VI. エッジマスクフェザリングk空間ローパス公式化]
閾値エッジマスクフェザリング(IBPTHからIEMまで)のフェザリング(エッジソフトニング、又はエッジぼかし)は、ローパスガウスウインドウを用いてk空間で実行される。
【数16】

但し、好適な実施形態では、σ=σ*(min(N,M)/128)及びσ=0.16である。2次元フーリエ変換後に生成されたエッジマスクIEM|FT−1[WGaussian*FT(IBPTH)]|は、再びIEM=IEM/max(|IEM|)として正規化される。
【0066】
実施形態において、3つの主要な構成要素がある。(1)画像のぼかし(平滑化)のバージョンであるILP。これは、リンギングアーチファクト及びノイズアーチファクトの基本的な低減を実現する。(2)鮮鋭化マスクIHPST。これは、エッジ鮮鋭度及び微細細部顕著性を強化する。(3)ファジー(フェザリング済みの)な連続値の(「グレースケール」)エッジマスクIEM。これは、最終成果物を生成するために、鮮鋭化マスクIHPSTが全面的に又は部分的に適用される、又は適用されないエッジの周りで、ILPの一部を選択する。
【0067】
k空間ローパスフィルタリングのために、好適な窓関数を使用することは、最適であるといえる。なぜなら、該機能は、同量のリンギングアーチファクト低減に対して、別の窓関数より多くの画像細部(より少ない全体的なぼかし)を保持しやすいからである。
【0068】
画像領域における画像鮮鋭化方法は、画像領域ラプラシアンカーネル畳み込みを同等のk空間ウィンドウイングプロセスに置き換えることによって、画像領域において等価なラプラシアン鮮鋭化カーネルを用いた畳み込みにほぼ単純化できるが、処理速度は非常に長くなる。
【0069】
不正確な閾値を用いた場合、エッジ又は細部が保持されない(例えば、閾値が低過ぎるとき)、あるいは、若干のリンギングアーチファクト及びノイズが成果物から除去されない(例えば、閾値が高過ぎるとき)場合がある。好適なエッジマスク閾値を手動で設定、微調整することはできるが、自動化したエッジマスク閾値導出アルゴリズムは、殆どの場合、手動設定値に十分近い閾値を導出することによってかなりうまく作用し、特に、低分解能及び中分解能のT1強調及びT2強調された軸方向頭部及びサジタル頸椎の画像を含む主要なリンギングアーチファクト低減目標に対して正確に機能する。
【0070】
明らかなように、実施形態による画像処理/フィルタリング方法は、ローパス(LP)空間周波数フィルタでギブスのリンギングアーチファクト及び若干のノイズを削減する一方で、閾値を用いたエッジマスクを用いることによりイメージングの細部及びエッジの画定を保持し強調する。実施形態では、エッジマスクが「透明である」領域にわたり選択的に適用されるハイパス(HP)フィルタにより細部及びエッジの強調が作り出される。成功への1つの重要な局面は、LP、HP、及びエッジ抽出BPのフィルタ窓関数の特徴を慎重に合致させることに依存し、それによって、それらの機能は、互いに連続的に作用する(すなわち、有効なサイズ及び強度で互いを補完する)。
【0071】
実施形態は、取得した生のk空間データアレイサイズの正しい仕様に依存する。例えば、PEマトリックスサイズ(例えば、N)が、未処理データのN×Mアレイに不正確に指定された場合、結果として生じる画像品質は悪化する。
【0072】
要約すると、最適化されたパラメータを有する高速ローパスk空間フィルタリング(ウィンドウイング)方法が、データ打ち切りからギブスのリンギングアーチファクトを削減し、画像内の全体的なノイズを削減するのにまず用いられた。単純かつ高速の全方向性k空間バンドパスエッジ検出フィルタ(ウィンドウ)は、閾値化及びフェザリング後、画像領域でエッジマスクを生成するのに使用される。元の画像内のエッジは、エッジマスク全域からローパスフィルタ処理済画像へ選択的に逆貼り付けされる。
【0073】
成果物は、上述したプロセスで自然に生成された外挿k空間データを含む、拡張されたk空間範囲コンテナに2次元フーリエ変換してもよい。該成果物は、次に、1D又は2Dの線形遷移関数(単数又は複数)を用いて大部分保持されている元の取得k空間未処理データの外側k空間部分に混合される。次に、該成果物は、例えば、アマルツルら(Amartur et al.)、1991年及び1991年、及びコンスタブルら(Constable et al.)、1991年、によって記述された方法に類似の別のフィルタ処理済画像成果物を生成するために、画像領域へ2次元逆フーリエ変換されて戻される。その結果、該成果物は、全体的な鮮鋭度の、より全体的でない主観的印象を生じるが、視聴者にはより自然に見える可能性がある。
【0074】
ローパス、ハイパス、及びエッジ検出k空間の窓関数のパラメータは、ギブスのリンギングが主な課題ではない、純粋な(高分解能の)画像ノイズ除去、及びMRI検査部位以外の一般的な画像の両方又は一方などの広範囲にわたる目的に適合するように個別に調節が可能である。
【0075】
あるいは、フーリエ空間2次元ローパスフィルタリングは、画像領域平滑化(加重平均)畳み込みに置き換えできる。しかし、k空間ウィンドウイング方法の方が、コンピュータ的により効率的であり、更に、全てのMRI未処理データがk空間で取得されるので、MRデータフローの性質により良好に適合しやすい。また、フーリエ空間2次元ハイパスフィルタリングは、画像領域ラプラシアン畳み込み又はアンシャープマスキング式鮮鋭化畳み込み及び計算に置き換えできる。しかし、繰り返すが、k空間ウィンドウイング方法の方が高速であり、作業の流れがMRデータフローの性質により良好に適合することが多い。
【0076】
また、フーリエ空間2次元エッジ抽出フィルタリングは、エッジの細線化及び連結化の通常の最終ステップなしで、キャニー型画像領域エッジ抽出に置き換えできる。しかし、もう一度繰り返すが、k空間ウィンドウイング方法の方が高速で、コンピュータ的により効率的であり、MRデータフローの性質により良好に適合する。たとえその性能が入力画像のノイズにより簡単に影響を受ける傾向があるとしてもである。非常に低いS(Signal)/N(Noise)比を有する画像に対しては、キャニー型エッジ抽出がまだ好ましいといえる。キャニー型エッジ抽出はまた、2つのk空間ウィンドウイングステップ、また、成果物の画像領域組合せとしても実行されるものである。
【0077】
あるいは、マスク生成の最終ステップとしてエッジマスクをフェザリングするためのフーリエ空間2次元ローパスフィルタリングは、画像領域平滑化に置き換えできるが、空間−空間ウィンドウイング方法の方が高速かつコンピュータ的に効率的である。
【0078】
実施形態には、従前のローパスフィルタリング方法におけるエッジ及び細部がぼやける問題のいくつかを克服するために、エッジ及び細部の強調とともにギブスのリンギングアーチファクト低減及びノイズ低減が連続的に組み込まれている。シグマフィルタリング及び異方性拡散方法とは異なり、実施形態は、非エッジ部位に微細なグラデーションを保持する美しい自然な画像を作成する。言い換えると、実施形態では、MR画像は「区分一定的に」又は「CTのように」見えるのではなく、そのMR検査部位の実際の様子のように見える。真のエッジ及び低コントラスト微細細部の顕著性が改善されることにより、ギブスのリンギングアーチファクトが大部分除去され、画像ノイズの全体的なレベルが低減され、医師が病変、梗塞、及び異常をより良好に映像化できる。
【0079】
実施形態は、ギブスのリンギングアーチファクト及びノイズアーチファクトの低減のための、最適又は最適に近い、2次元フーリエ空間ローパス窓関数の定義と、低分解能及び中分解能のMRI画像の目標形式への細部強調及びエッジ鮮鋭化のための、最適又は最適に近い、固定されたフーリエ空間2次元ハイパスフィルタリング窓関数の定義とを提案する。
【0080】
本明細書に記載の方法及びシステムは、記載した実施形態よりも特定の画像処理目的に良好に適合する、例えば様々な「趣」の様々な生成画像を創出する任意のローパス、バンドパス(一方向性、双方向性、多方向性、及び全方向性)、及びハイパスの窓関数を備えた、様々な別の形式での具体化が可能である。
【0081】
基本的なプロセスはまた、次の組合せステップを含んでもよい。組合せステップにおいては、入力k空間データKoの改良版として、入力k空間データKoの一部が、最終画像IFを逆フーリエ変換したデータ(完全に又は部分的に由来するデータ)に置き換えられる。また、選択的に置き換えるか、部分的に置き換えるか、二者択一的に選択することができる。なお、最終画像IFは、数学的に、(IEM)*Isharpen+(1−IEM)*ILP、又は、(IEM)*Isharpen+(1−IEM)*ILPと略同様の組み合わせ手法により表現される。最終画像IFは、入力画像IOの鮮鋭化版Isharpenと、連続値のグレースケールエッジマスク画像IEMと、ローパスフィルタ処理済画像ILPとの組み合わせである。改良されたk空間データは、オリジナルに取得されたN×Mサイズのk空間データ範囲の外側に、強化された高空間周波数の構成要素を含むことができる。これは、上述したフィルタリングプロセスの間に自然に外挿される。
【0082】
以上述べた少なくとも一つの実施形態の画像処理装置、画像処理方法、及び磁気共鳴イメージング装置によれば、画質を向上することができる。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0084】
8 電極
9 被検体
10 架台
11 被検体テーブル
12 静磁場B0磁石
14 Gx、Gy、Gz傾斜磁場コイルセット
16 RFコイルアセンブリ
18 イメージングボリューム
20 システム構成要素
22 MRIシステム制御部
24 表示部
26 キーボード/マウス
28 プリンタ
30 MRIシーケンス制御部
32 Gx、Gy、Gz傾斜磁場コイルドライバ
34 RF送信部
36 送信/受信スイッチ
38 MRIデータ取得プログラムコード構造
40 RF受信部
42 MRIデータ処理部(マイクロプロセッサ、I/O、記憶部)
44 画像再構成プログラムコード構造
46 MR画像記憶部
50 プログラム/データ格納部(リンギングアーチファクト及びノイズアーチファクトの両方又は一方を削減すると同時に、再構成した画像のエッジ及び他の細部の強調を行うために、k空間で取得したMRIデータをフィルタ処理するためのプログラムコード構造が格納される)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴イメージングによって取得されたデータであってオリジナル画像に対応するk空間又は画像空間のデータに対して、低域通過フィルタを適用する低域通過フィルタ適用部と、
前記データに対して、帯域通過フィルタを適用する帯域通過フィルタ適用部と、
前記データに対して、高域通過フィルタを適用する高域通過フィルタ適用部と、
前記帯域通過フィルタが適用されたデータに基づいて、前記オリジナル画像内の対象物のエッジが抽出されたエッジマスクを生成するエッジマスク生成部と、
前記高域通過フィルタが適用されたデータを用いて前記エッジマスクによるマスク処理を行い、前記マスク処理が行われたデータと前記低域通過フィルタが適用されたデータとを用いて合成処理を行う合成部と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記エッジマスク生成部は、前記帯域通過フィルタが適用されたk空間のデータをフーリエ変換し、フーリエ変換後の画像空間のデータに対して閾値処理及びフェザリング処理を行うことで、前記エッジマスクを生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記合成部は、前記高域通過フィルタが適用されたk空間のデータをフーリエ変換し、フーリエ変換後の画像空間のデータに対して閾値処理を行った後に、前記エッジマスクによるマスク処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記低域通過フィルタ適用部及び前記帯域通過フィルタ適用部は、磁気共鳴イメージングによって取得されたデータのサイズに適合するように調整された、前記低域通過フィルタ及び前記帯域通過フィルタを用い、
前記高域通過フィルタ適用部は、前記磁気共鳴イメージングによって取得されたデータより大きい、k空間のデータアレイコンテナのサイズに適合するように調整された、前記高域通過フィルタを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の画像処理装置。
【請求項5】
複数の要素コイルによってk空間のデータが収集され、要素コイル毎のk空間のデータがそれぞれフーリエ変換されて要素コイル毎の画像空間のデータが生成され、生成された要素コイル毎の画像空間のデータが合成されることで、前記オリジナル画像が生成された場合に、該オリジナル画像のデータを逆フーリエ変換してk空間のデータを生成する逆フーリエ変換部を更に備え、
前記低域通過フィルタ適用部、前記帯域通過フィルタ適用部、及び前記高域通過フィルタ適用部は、前記逆フーリエ変換部によって生成されたk空間のデータに対して、低域通過フィルタ、帯域通過フィルタ、及び高域通過フィルタそれぞれを適用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の画像処理装置。
【請求項6】
磁気共鳴イメージングによって取得された生データであってオリジナル画像に対応するk空間の生データに対して、低域通過フィルタを適用する低域通過フィルタ適用部と、
前記生データに対して、帯域通過フィルタを適用する帯域通過フィルタ適用部と、
前記生データに対して、高域通過フィルタを適用する高域通過フィルタ適用部と、
前記帯域通過フィルタが適用されたデータに基づいて、前記オリジナル画像内の対象物のエッジが抽出されたエッジマスクを生成するエッジマスク生成部と、
前記高域通過フィルタが適用されたデータを用いて前記エッジマスクによるマスク処理を行い、前記マスク処理が行われたデータと前記低域通過フィルタが適用されたデータとを用いて合成処理を行う合成部と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
画像処理装置によって実行される画像処理方法であって、
磁気共鳴イメージングによって取得されたデータであってオリジナル画像に対応するk空間又は画像空間のデータに対して、低域通過フィルタを適用する低域通過フィルタ適用工程と、
前記データに対して、帯域通過フィルタを適用する帯域通過フィルタ適用工程と、
前記データに対して、高域通過フィルタを適用する高域通過フィルタ適用工程と、
前記帯域通過フィルタが適用されたデータに基づいて、前記オリジナル画像内の対象物のエッジが抽出されたエッジマスクを生成するエッジマスク生成工程と、
前記高域通過フィルタが適用されたデータを用いて前記エッジマスクによるマスク処理を行い、前記マスク処理が行われたデータと前記低域通過フィルタが適用されたデータとを用いて合成処理を行う合成工程と
を含んだことを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
磁気共鳴イメージングによって取得されたデータであってオリジナル画像に対応するk空間又は画像空間のデータに対して、低域通過フィルタを適用する低域通過フィルタ適用部と、
前記データに対して、帯域通過フィルタを適用する帯域通過フィルタ適用部と、
前記データに対して、高域通過フィルタを適用する高域通過フィルタ適用部と、
前記帯域通過フィルタが適用されたデータに基づいて、前記オリジナル画像内の対象物のエッジが抽出されたエッジマスクを生成するエッジマスク生成部と、
前記高域通過フィルタが適用されたデータを用いて前記エッジマスクによるマスク処理を行い、前記マスク処理が行われたデータと前記低域通過フィルタが適用されたデータとを用いて合成処理を行う合成部と
を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−228507(P2012−228507A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−74390(P2012−74390)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】