画像処理装置、画像処理方法及びプログラム
【課題】視聴者が表示装置に対して接触や衝突することを回避し、不測の事態の発生を防止する。
【解決手段】接触や衝突の虞検出部11は、画像を表示する表示装置に対して接触又は衝突の虞のある視聴者を検出する。警告表示重畳部12は、接触や衝突の虞検出部11により表示装置に対して接触又は衝突の虞のある視聴者が検出された場合、表示装置に表示される画像に警告表示を重畳させる。
【解決手段】接触や衝突の虞検出部11は、画像を表示する表示装置に対して接触又は衝突の虞のある視聴者を検出する。警告表示重畳部12は、接触や衝突の虞検出部11により表示装置に対して接触又は衝突の虞のある視聴者が検出された場合、表示装置に表示される画像に警告表示を重畳させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に対して視聴者が接触や衝突することを防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、屋外及び屋内を問わず、大型の映像表示装置を使用して様々な情報を提供する装置が広く使われている。例えば、駅前や商業地には、多種の広告を提供する屋外設置型の映像表示装置が多く存在する。また、駅や空港の建物内には、出発時刻及び到着時刻や運行状況を始めとする様々な情報や、広告を表示する映像表示装置が使われている。
【0003】
映像表示装置を構成する表示素子の大型化や高精度化が進んでいることから、今後、このような様々な情報を提供する装置の大型化が進むと見込まれている。また、表示素子の大型化や高精度化により、現実と見紛う映像を表示することが可能となる。現実と見紛う映像は視聴者に対する訴求效果が大きいため、今後、電子広告を始めとした情報提供装置に、大型である上に高精細な映像を表示可能な映像表示装置が広く使用されると予想される。
【0004】
しかし、このような映像表示装置が提供する表示映像に現実感があるため、視聴者が映像であると認知せず、実体が存在すると誤認する虞がある。そして、視聴者が映像であると認知せず、実体が存在すると誤認していると、思わぬ事態が発生する虞がある。従って、大型で且つ高精細な映像を表示する映像表示装置、又は、そのような映像表示装置を使用した情報提供装置には、視聴者の接触や衝突を回避する手法が使用されている。
【0005】
視聴者の接触や衝突を回避するための手法として、パイロン、柵又は綱等で、表示面を物理的に隔離する手法がある。本手法によれば、パイロン、柵又は綱の存在により、視聴者は表示面に接触や衝突するまで接近せず、視聴者の接触や衝突の回避が可能である。しかしながら、本手法では、表示面を物理的に隔離するためのパイロン、柵又は柵の存在が、視聴者に対する訴求效果を殺いでしまうという課題がある。
【0006】
また、別の手法として、接触や衝突の虞がある場合に、視聴者に対して音や光で警告を発して、視聴者の接触や衝突を回避する手法がある。本手法によれば、接触や衝突の虞があると判断すると、スピーカから警告音を発する、又は、警告灯を点滅或いは回転することで注意を促し、視聴者の接触や衝突を回避する。しかしながら、本手法には、接触や衝突の虞がない視聴者にも警告が達する上、視聴者の感興を殺いでしまうという課題がある。スピーカからの警告音や警告灯の警告光は、接触や衝突の虞がある視聴者のみならず、接触や衝突の虞がない視聴者にも到達する。従って、接触や衝突の虞がある視聴者、及び、接触や衝突の虞がない視聴者ともに、スピーカからの警告音又は警告灯の警告光により、感興を殺がれてしまう。さらに、感興を殺がれるのみならず、当該映像表示装置が表示している情報、例えば当該映像表示装置が電子広告装置である場合、対象の商品に対して、よくない印象を視聴者が持つ虞も否定できない。
【0007】
特許文献1には、視聴者と表示面との距離を測定し、その距離が適切でない場合、表示面に警告を表示する技術が開示されている。また、特許文献2には、接触や衝突の虞がある視聴者の携帯端末に警報を送信し、警告音を発する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3−200995号公報
【特許文献2】特開2006−331154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示される技術は、警告を発する条件が視聴者と表示面との距離のみであるため、接触や衝突の虞はないが、表示面までの距離が適切でない視聴者にも警告を発してしまうという課題がある。接触や衝突の虞はないが、表示面までの距離が適切でない視聴者の例として、表示面の前で停止している視聴者や、表示面と並行に移動している視聴者等が挙げられる。
【0010】
また、特許文献2に開示される技術は、警報を受信可能な携帯端末を所持していないと警告を受けることができないという課題がある。駅等の公共の場では、不特定多数の人間が出入りしているので、全ての視聴者が警報を受信可能な携帯端末を所持しているとは限らない。従って、本従来技術による接触や衝突回避は限定的となる。
【0011】
そこで、本発明の目的は、視聴者が表示装置に対して接触や衝突することを回避し、不測の事態の発生を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の画像処理装置は、画像を表示する表示装置に対して接触又は衝突の虞のある視聴者を検出する検出手段と、前記検出手段により前記表示装置に対して接触又は衝突の虞のある前記視聴者が検出された場合、前記表示装置に表示される画像に警告表示を重畳させる重畳手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、視聴者が表示装置に対して接触や衝突することを回避することができ、不測の事態の発生を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る映像表示装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態において使用する座標系を示す図である。
【図3】第1の実施形態における接触や衝突の虞検出部の構成を示す図である。
【図4】視聴者情報収集部によって生成される視聴者情報について説明するための図である。
【図5】接触や衝突の虞推測部が接触や衝突の虞を推測する処理を示すフローチャートである。
【図6】第1の実施形態における警告表示重畳部の処理を示すフローチャートである。
【図7】警告表示領域の例を示す図である。
【図8】警告表示を重畳した映像を表示面に表示した例を示す図である。
【図9】第2の実施形態における接触や衝突の虞検出部の構成を示す図である。
【図10】第2の実施形態における接触や衝突の虞推測部が接触や衝突の虞を推測する処理を示すフローチャートである。
【図11】第4の実施形態における警告表示重畳部の処理を示すフロsーチャートである。
【図12】第5の実施形態における警告表示重畳部の処理を示すフローチャートである。
【図13】第6の実施形態における警告表示重畳部の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した好適な実施形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0016】
先ず、本発明の実施形態を説明するにあたり、使用する座標系について説明する。図2は、本実施形態において使用する座標系を示す図である。本実施形態において使用する座標系は右手系である。即ち、表示面31に向かって左側の下端が水平面と交わる点を原点にとる。そして、x軸は原点において表示面31に対して垂直に定める。x軸の方向は表示面31から離れる方向とする。そして、右手系座標系になるようにy軸及びz軸を定める。なお、表示面31の形状は平面に限定するものではなく、表示面31は曲面であってもよい。表示面31が曲面であっても座標系は同様である。
【0017】
また、本発明の実施形態を説明するにあたり、視聴者を、接触や衝突の虞の有無で明確に区別する必要がある場合、接触や衝突の虞がある視聴者を視聴者35とし、接触や衝突の虞がない視聴者を視聴者36とする。図2において、接触や衝突の虞がある視聴者35は、表示面31に向かって移動していて、接触や衝突の虞がある。一方、接触や衝突の虞がない視聴者36は、表示面31に対して平行に移動していて、接触や衝突の虞はない。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る映像表示装置の構成を示す図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る映像表示装置は、接触や衝突の虞検出部11と警告表示重畳部12とを備える。接触や衝突の虞検出部11は、予め定められた期間Pt0内に表示面31と接触や衝突すると予測される視聴者を検出する。そして、接触や衝突の虞検出部11は、検出した視聴者毎の情報を収集して虞あり対象者情報101を生成し、警告表示重畳部12に対して出力する。警告表示重畳部12は、虞あり対象者情報101に基づいて、接触や衝突の虞がある視聴者が映像表示装置の存在を認知するに足る信号、即ち警告表示を映像信号に重畳させる。なお、本実施形態に係る映像表示装置は、画像処理装置の適用例となる構成である。
【0019】
ここで、接触や衝突の虞検出部11について詳細に説明する。図3は、接触や衝突の虞検出部11の構成を示す図である。図3に示すように、接触や衝突の虞検出部11は、視聴者情報収集部21及び接触や衝突の虞推測部22を備える。
【0020】
図4は、視聴者情報収集部21によって生成される視聴者情報(図3の111)について説明するための図である。図4に示すように、視聴者情報111は、視聴者41の、座標Pm、速度ベクトルVm及び顔の向きベクトルAmを含む。ここで添え字mは、視聴者41を識別するための識別子である。視聴者41の座標Pmは、視聴者41を代表する点の座標である。例えば、視聴者41の頭頂部中央の座標値を座標Pmとする。勿論、視聴者41の座標Pmを視聴者41の頭頂部中央の座標値に限定するものではない。座標Pm、速度ベクトルVm及び顔の向きベクトルAmを成分表示で表すと、以下のようになる。
Pm=(Pxm,Pym,Pzm)
Vm=(Vxm,Vym,Vzm)
Am=(Axm,Aym,Azm)
なお、視聴者情報111は上記3項目に限定されるものではない。即ち、さらに多くの項目を視聴者情報111が含むことを妨げない。
【0021】
次に、視聴者情報収集部21の動作について説明する。位置や速度を始めとする対象物の位置情報を取得する手法については、従来から多くの手法が提案されており、本発明は、位置情報の取得手法に依存したものではない。そこで、少なくとも視聴者41の座標Pm、速度ベクトルVm及び顔の向きベクトルAmを取得することができれば、何れの公知技術を使用して視聴者情報収集部21を構成してもよい。例えば、窪田進,丸山昌之,伊久美智則,高畠政実:複数の全方位カメラによる人物動線計測システム,東芝レビュー,Vol.63,No.10(2008)には、全方位カメラを用いて人物の動線を検出する手法が開示されている。この公知技術を応用して、視聴者41の座標Pm、速度ベクトルVm及び顔の向きベクトルAmを検出することが可能である。
【0022】
また、視聴者41の座標Pm及び速度ベクトルVmを検出する手段と、視聴者41の顔の向きベクトルAmを検出する手段とが夫々別であってもよい。この場合、視聴者41の座標Pm及び速度ベクトルVmと、視聴者41の顔の向きベクトルAmとを夫々別の手段で検出した後、視聴者情報収集部21がこれらを合成して視聴者情報111を形成する。例えば、超音波センサを使用した視聴者41の座標Pm及び速度ベクトルVmの検出手段と、カメラで撮影した映像から顔認識で顔の向きベクトルAmを検出する手段とを用いる構成が別々の検出手段を用いた例である。勿論、検出手段の組み合わせが、超音波センサによる座標Pm及び速度ベクトルVmの検出手段と、顔認識による顔の向きベクトルAmの検出手段との組み合わせに限定されるものではない。
【0023】
次に、接触や衝突の虞推測部22の動作について説明する。接触や衝突の虞推測部22は、視聴者情報111に基づいて、予め定められた期間Pt0内に表示面31と接触や衝突する虞を示す値を視聴者41毎に時々刻々と推測(推定)する。そして、接触や衝突の虞推測部22は、上記接触や衝突する虞を示す値に基づいて、接触や衝突の虞がある視聴者35を抽出する。その後、接触や衝突の虞推測部22は、接触や衝突の虞がある視聴者35の視聴者情報111を、虞あり対象者情報101として出力する。ここで、虞あり対象者情報101は、接触や衝突の虞がある視聴者35の、座標Pm、速度ベクトルVm、顔の向きベクトルAm及び接触や衝突する虞を示す値を含む情報である。
【0024】
なお、本発明においては、接触や衝突の虞を推測する手段を限定するものではない。従って、期間Pt0内に表示面31と接触や衝突する虞を推測できればどのような手段を使用してもよい。そこで、接触や衝突の虞推測部22の一例として、線形予測を使用した例について説明する。接触や衝突の虞推測部22の動作を説明するのに先立ち、緩衝距離Blと表示面31の範囲を表すベクトル方程式Dsとについて説明する。
【0025】
先ず、緩衝距離Blについて説明する。本実施形態では、緩衝距離Blを次のように定義する。即ち、緩衝距離Blとは、視聴者41が表示面31から緩衝距離Bl以上離れていれば、視聴者41が手を伸ばしても、その手が表示面31に接触しない距離である。従って、緩衝距離Blは、視聴者41の手の長さより大きい値を持つ。緩衝距離Blの値は、予め定めておいてもよいし、表示面31の形状、視聴者41の位置又は視聴者41の身長により、動的に算出してもよい。
【0026】
次に、表示面31の範囲を表すベクトル方程式Dsについて説明する。本実施形態において、表示面31は平面とする。そして表示面31は、枠等の部材の大きさも含めて、水平方向にdy、垂直方向にdzの大きさを持つとする。表示面31の範囲を表すベクトル方程式Dsの要素をDs=(Dsx,Dsy,Dsz)とすると、表示面31の範囲を表すベクトル方程式Dsは、以下の式1によって表される。本実施形態では、表示面31に向かって左側の下端が水平面と交わる点を原点とし、x軸を表示面31に対して垂直にとっているので、表示面31の範囲を表すベクトル方程式Dsのx成分Dsxの値は常に0である。勿論、表示面31の形状を平面に限定するものではない。表示面31が曲面であっても、ベクトル方程式Dsを定義すれば、同様に実施可能である。
【0027】
【数1】
【0028】
なお、表示面31において画素が存在する領域は、水平方向にdiy、垂直方向にdizの大きさを持つとする。以下、表示面31の画素が存在する領域を「表示面31の画素領域」と称す。ここで、表示面31の画素領域の、向かって左下の座標を、(0,dioy,dioz)とする。diy、diz、dioy及びdiozと、dy及びdzとは、次の式2に示す関係式を満たす。
【0029】
【数2】
【0030】
本実施形態では、接触や衝突する虞を示す値は、0、1、2の三値をとるものとする。そして、それぞれの値は以下の状態を示す。
接触や衝突する虞を示す値 状態
0 期間Pt0内に表示面31と接触や衝突する虞はない
1 期間Pt0内に表示面31と接触や衝突する虞はある
2 緩衝距離Bl内に視聴者35が存在する
即ち、視聴者35が手を伸ばせば接触や衝突の虞がある
【0031】
従って、本実施形態では、接触や衝突の虞推測部22は、接触や衝突する虞を示す値が1又は2の視聴者41については、接触や衝突の虞がある視聴者35として虞あり対象者情報101を生成する。そして、接触や衝突する虞を示す値が0の視聴者41については、接触や衝突の虞推測部22は、虞あり対象者情報101を生成しない。
【0032】
次に、図5に示すフローチャートを参照しながら、接触や衝突の虞推測部22が接触や衝突の虞を推測する処理について説明する。接触や衝突の虞推測部22は、視聴者41毎に図5に示す処理を時々刻々と繰り返し、接触や衝突の虞を推測する。
【0033】
ステップS101において、接触や衝突の虞推測部22は、視聴者41と表示面31との距離Lと、緩衝距離Blとを比較し、視聴者41の位置が表示面31から緩衝距離Blより離れているか否かを判定する。視聴者41と表示面31との距離Lは、視聴者41の座標Pmから表示面31の範囲を表すベクトル方程式Dsに下ろした垂線の長さを求めればよい。本実施形態では、表示面31は平面であるから、視聴者41と表示面31との距離Lは、視聴者41の座標Pmのx方向成分Pxmになる。従って、Pxm>Blであり、視聴者41の位置が表示面31から緩衝距離Blより離れている場合、処理はステップS102に移行する。一方、Pxm≦Blであり、視聴者41と表示面31との距離Lが緩衝距離Bl以下である場合、処理はステップS107に移行する。
【0034】
ステップS102において、接触や衝突の虞推測部22は、視聴者41の未来位置Fmを線形に予測する。ここで未来位置とは、期間Pt0内に視聴者41が到達すると予測される位置である。tを媒介変数とすると、視聴者41の未来位置Fmは次の式3で表される。
【0035】
【数3】
【0036】
ステップS103において、接触や衝突の虞推測部22は、表示面31の範囲を表すベクトル方程式Dsと視聴者41の未来位置Fmとの交点Gmを算出する。交点Gmにおいて、Ds=Fmである。この関係を成分表示で表すと、式4に示すようになる。式4を各変数について解いた結果が式5である。式5に示すt、Dsy、Dszの解が、それぞれのとり得る値の範囲内に存在する場合、交点Gmは存在する。即ち、式6に示す関係式が全て成立する場合、交点Gmは存在する。一方、式6を示す関係式のうち、成立しない関係式が一つでも存在する場合、交点Gmは存在しない。
【0037】
【数4】
【0038】
ステップS104において、接触や衝突の虞推測部22は、交点Gmが存在するか否かを判定する。交点Gmが存在しない場合、処理はステップS105に移行する。一方、交点Gmが存在する場合、処理はステップS106に移行する。交点Gmが存在しない場合、期間Pto内で、視聴者41が表示面31に接触や衝突する虞はない。そこでステップS105において、接触や衝突の虞推測部22は、接触や衝突する虞を示す値を0にする。一方、交点Gmが存在する場合、接触や衝突の虞推測部22は、期間Pt0内で、視聴者41が表示面31に接触や衝突する虞があると推測する。そこでステップS106において、接触や衝突の虞推測部22は、接触や衝突する虞を示す値を1にする。また、視聴者41と表示面31との距離が緩衝距離Bl以下である場合、現時点において、手を伸ばせば表示面31に接触や衝突する虞がある。そこでステップS107において、接触や衝突の虞推測部22は、接触や衝突する虞を示す値を2にする。
【0039】
次に、図6を参照しながら、警告表示重畳部12の動作について説明する。図6は、警告表示重畳部12の処理を示すフローチャートである。警告表示重畳部12は、接触や衝突の虞がある視聴者35毎に、時々刻々と映像入力102に対して図6に示す処理を繰り返すことにより、警告表示を重畳した映像103を出力する。
【0040】
ステップS111において、警告表示重畳部12は、座標Pmを通り顔の向きベクトルAmに平行な線分と、表示面31の範囲を表すベクトル方程式Dsとの交点Smを算出する。座標Pmを通り、顔の向きベクトルAmに平行な線分の成分表示は、uを媒介変数として、次の式7で表される。交点Smはベクトル方程式Ds上の点であるから、式8が成り立つ。式8をSymとSzmとについて解くと、交点Smの各成分の値は式9になる。
【0041】
【数5】
【0042】
ステップS112において、警告表示重畳部12は、警告表示領域Wsを、交点Smを中心にして設定する。警告表示領域Wsの形状は矩形であっても、楕円であってもよい。図7は、警告表示領域Wsの形状が矩形である場合と、警告表示領域Wsの形状が楕円である場合とを示す図である。
【0043】
図7(a)は、y軸方向に2Wsy、z軸方向に2Wszの大きさを持つ矩形の警告表示領域Ws51を示している。図7(b)は、2Wsyの長径、2Wszの短径を持つ楕円の警告表示領域Ws51を示している。勿論、警告表示領域Ws51の形状が楕円の場合、長径をy軸方向に限定するものではない。
【0044】
ここで、警告表示領域Ws51の大きさを示すWsyとWszとは、接触や衝突する虞を示す値に依存して決定する。接触や衝突する虞を示す値が1のときに使用するWsyとWszとを、それぞれWsy1とWsz1とし、接触や衝突する虞を示す値が2のときに使用するWsyとWszとを、それぞれWsy2とWsz2とする。そして、Wsy1、Wsy2、Wsz1、Wsz2の値は、次の式10を満たすものとする。ステップS112において、警告表示重畳部12は、接触や衝突する虞を示す値が1である場合、警告表示重畳部12は、Wsy1とWsz1とを選択して警告表示領域Ws51を設定する。一方、ステップS112において、接触や衝突する虞を示す値が2である場合、警告表示重畳部12は、Wsy2とWsz2とを選択して警告表示領域Ws51を設定する。
【0045】
【数6】
【0046】
Wsy1、Wsy2、Wsz1、Wsz2は、予め定めておいてもよいし、又は、接触や衝突の虞がある視聴者35と表示面31との距離L、及び、接触や衝突する虞を示す値から、ステップS112を実行する度に算出してもよい。ステップS113において、警告表示重畳部12は、警告表示領域Ws51と表示面31の画素領域との交点が存在するか否かを判定する。警告表示領域Ws51と表示面31の画素領域との交点が存在する場合、次の式11が成立する。従って、式11が真である場合、処理はステップS114に移行する。一方、式11が偽である場合、警告表示領域Ws51と表示面31の画素領域との交点が存在しないため、現時刻における当該接触や衝突の虞がある視聴者35に対する処理を終了する。
【0047】
【数7】
【0048】
ステップS114において、警告表示重畳部12は、警告表示領域Ws51の色相の平均値AHを求め、閾値AHth0と比較する。色相の平均値AHが閾値AHth0より大きい場合、処理はステップS115に移行する。一方、色相の平均値AHが閾値AHth0以下である場合、処理はステップS116に移行する。
【0049】
ここで、ステップS114における色相の平均値の算出方法は限定されない。従って、色相の平均値AHは、単純平均を用いても加重平均を用いて求めてもよい。閾値AHth0は、表示面31の特性や設置場所の状況に基づいて予め算出しておいてもよいし、ステップS114を実行する度、又は、表示面31の特性や設置場所の状況に変化がある度に算出してもよい。
【0050】
ステップS115において、警告表示重畳部12は、警告表示領域Ws51の色相をHth0%減少させる。ステップS116において、警告表示重畳部12は、警告表示領域Ws51の色相をHth1%増加させる。
【0051】
ここで、減少割合Hth0と増加割合Hth1とは、接触や衝突する虞を示す値に依存して決定される。接触や衝突する虞を示す値が1のときに使用するHth0とHth1との値を、それぞれHth01とHth11とする。また、接触や衝突する虞を示す値が2のときに使用するHth0とHth1との値を、それぞれHth02とHth12とする。そして、Hth01、Hth02、Hth11、Hth12は、次の式12を満たすものとする。ステップS115において、接触や衝突する虞を示す値が1である場合、警告表示重畳部12はHth01を選択し、警告表示領域Wsの色相をHth01%減少させる。一方、接触や衝突する虞を示す値が2である場合、警告表示重畳部12はHth02を選択し、警告表示領域Ws51の色相をHth02%減少させる。一方、ステップS116において、接触や衝突する虞を示す値が1である場合、警告表示重畳部12はHth11を選択し、警告表示領域Ws51の色相をHth11%増加させる。一方、接触や衝突Sる虞を示す値が2である場合、警告表示重畳部12はHth12を選択し、警告表示領域Ws51の色相をHth12%減少増加させる。
【0052】
【数8】
【0053】
Hth01、Hth02、Hth11及びHth12は、表示面31の特性及び設置場所の状況に基づいて予め定めておいてよい。又は、ステップS115又はS116を実行する度に、警告表示領域Ws51内の映像、表示面31の特性及び設置場所の状況に基づいて算出してもよい。以上のように、本実施形態では、警告表示に色相の変化を使用しているが、勿論、警告表示に色相の変化を使用することを限定するものではない。
【0054】
図8は、警告表示を重畳した映像を表示面31に表示した例を示す図である。図8(a)及び(b)において、接触や衝突の虞がある視聴者35の顔が向いている方向、即ち、接触や衝突の虞がある視聴者35の視野の中央部に、色相が変化した警告表示領域Ws51が出現する。図8に示す例では、表示物32上に警告表示領域Ws51が出現している。周りと色相が異なる警告表示領域Ws51が出現することで、接触や衝突の虞がある視聴者35は、表示面31の存在を認知する。一方、図8(a)に示すように、表示面31からの距離が遠かったり、図8(b)に示すように、顔の向きが接触や衝突の虞がある視聴者35と異なる場合には、衝突の虞がない視聴者36は警告表示領域Ws51を認知する可能性は低い。
【0055】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態に係る映像表示装置の構成は、図1に示した構成と同様である。図9は、第2の実施形態における接触や衝突の虞検出部11の構成を示す図である。図9に示す接触や衝突の虞検出部11は、視聴者情報収集部21、接触や衝突の虞推測部24及び存在認知推測部23を備える。
【0056】
図9に示す第2の実施形態における視聴者情報収集部21は、図3に示す第1の実施形態における視聴者情報収集部21と同様である。従って、第2の実施形態における視聴者情報収集部21より出力される視聴者情報111には、視聴者41の、座標Pm、速度ベクトルVm及び顔の向きベクトルAmが含まれる。なお、視聴者情報111は上記3項目に限定されるものではない。即ち、更に多くの項目が視聴者情報111に含まれることを妨げない。
【0057】
次に、存在認知推測部23の処理について説明する。存在認知推測部23は、視聴者41が表示面31の存在を認知しているか否かを推測し、その結果を存在認知推測値112として出力する。本実施形態では、存在認知推測値112は0、1の二値をとり、それぞれの値は以下の状態を示すものとする。
存在認知推測値 状態
0 視聴者41は表示面31の存在を認知していないと推測
1 視聴者41は表示面31の存在を認知していると推測
【0058】
表示面31に近づいてきた視聴者41は、表示面31の存在を認知し、接触や衝突すると判断すれば、接触や衝突を回避するために、速度を落とす、又は表示面31から遠ざかるように移動方向を変える。そこで、存在認知推測部23は、速度ベクトルVmの表示面31に対して垂直方向の成分を求め、その値を基に視聴者41が表示面31の存在を認知しているか否かを推測する。本実施形態では、表示面31は平面であるから、速度ベクトルVmの表示面31に対して垂直方向の成分はVxmである。よって、Vxmを次の表のように分類し、視聴者41が表示面31の存在を認知しているか否かを推測する。
【0059】
【表1】
【0060】
上記表において、分類1は、Vxmが0より大きく、表示面31から離れる方向に視聴者41は運動している。従って、存在認知推測部23は、視聴者41が表示面31との接触や衝突を回避するために運動していると推測し、存在認知推測値112の値を1にする。分類2は、Vxmが0に等しく、視聴者41と表示面31との距離は変化しない。この場合、存在認知推測部23は、視聴者41が表示面31の存在を認知していると推測し、存在認知推測値112の値を1にする。分類3は、Vxmが0以下であり、x軸は表示面31に近づく方向が負である。従って、視聴者41は表示面31に近づく方向に運動している。さらに、Vxmを時間で微分した値が0以下であるから、視聴者41は速度を変えずに、又は、速度を上げて表示面31に近づいている。この場合、存在認知推測部23は、視聴者41が表示面31の存在を認知していないと推測し、存在認知推測値112の値を0にする。分類4は、Vxmが0であり、且つ、Vxmを時間で微分した値が0より大きい。この場合、視聴者41は、表示面31に近づいているが、近づく速度は低下している。従って、存在認知推測部23は、視聴者41が表示面31の存在を認知していると推測し、存在認知推測値112の値を1にする。
【0061】
次に、接触や衝突の虞推測部24の処理について説明する。接触や衝突の虞推測部24は、視聴者情報111及び存在認知推測値に基づいて、予め定めた期間Pt0内に表示面31と接触や衝突する虞を示す値を、視聴者41毎に時々刻々と推測する。そして、接触や衝突の虞推測部24は、推測した接触や衝突する虞を示す値に基づいて、接触や衝突の虞がある視聴者35を抽出する。その後、存在認知推測部23は、接触や衝突の虞がある視聴者35の視聴者情報111を、虞あり対象者情報101として出力する。ここで、虞あり対象者情報101は、接触や衝突の虞がある視聴者35の、座標Pm、速度ベクトルVm、顔の向きベクトルAm、及び、接触や衝突する虞を示す値を含む情報である。
【0062】
第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、接触や衝突の虞推測部24が推測する接触や衝突する虞を示す値は、0、1、2の三値をとり、それぞれの値は以下の状態を示すとする。
接触や衝突する虞を示す値 状態
0 緩衝距離Bl外に視聴者41が存在し、
期間Pt0内に表示面31と接触や衝突する虞はないか、
又は、視聴者41が表示面31の存在を認知している
1 緩衝距離Bl外に視聴者41が存在し、
期間Pt0内に表示面31と接触や衝突する虞があり、
且つ、視聴者41が表示面31の存在を認知していない
2 緩衝距離Bl内に視聴者41が存在する
【0063】
接触や衝突の虞推測部24は、接触や衝突する虞を示す値が1又は2の視聴者41を、接触や衝突の虞がある視聴者35とし、虞あり対象者情報101を生成する。一方、接触や衝突する虞を示す値が0の視聴者41に対しては、接触や衝突の虞推測部24は虞あり対象者情報101を生成しない。
【0064】
図10は、第2の実施形態における接触や衝突の虞推測部24が接触や衝突の虞を推測する処理を示すフローチャートである。接触や衝突の虞推測部24は、視聴者41毎に図10に示す処理を時々刻々と繰返し、接触や衝突の虞を推測する。図10に示す処理のうち、ステップS101、S102、S103、S105、S106及びS107は、図5に示す第1の実施形態おける同一符号の処理と同様である。以下では、第1の実施形態における図5に示す処理との差異について説明を行うものとし、第1の実施形態と同様の処理については説明を省略する。
【0065】
ステップS124において、接触や衝突の虞推測部24は、交点Gmが存在するか否かを判定する。交点Gmが存在しない場合、処理はステップS105に移行する。一方、交点Gmが存在する場合、処理はステップS125に移行する。ステップS125において、接触や衝突の虞推測部24は存在認知推測値112を評価する。そして、存在認知推測値112が1、即ち、視聴者41が表示面31の存在を認知していると推測される場合、処理はステップS105に移行する。一方、存在認知推測値112が0、即ち、視聴者41が表示面31の存在を認知していないと推測される場合、処理はステップS106に移行する。
【0066】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態に係る映像表示装置の構成は図1に示した構成と同様である。また、第3の実施形態における接触や衝突の虞検出部11の構成は図3に示した構成と同様であるが、本実施形態では、接触や衝突の虞推測部22の実施にファジィ制御を応用している。なお、ファジィ制御は公知技術であり、例えば工場において、自動搬送車が障害物を回避する制御に利用されている。
【0067】
第3の実施形態における接触や衝突の虞推測部22は、ファジィ理論に基づき、視聴者41の座標Pmと速度ベクトルVmとから、視聴者41の未来位置が表示面31と交点を有する適合度を算出するための多次元メンバシップ関数μ(Pm,Vm)を設定する。そして、接触や衝突の虞推測部22は、この多次元メンバシップ関数μ(Pm,Vm)を使用して、接触や衝突の虞を推測する。
【0068】
ここで、多次元メンバシップ関数μ(Pm,Vm)は、表示面31の形状、表示面31を設置した場所の状況に依存する。ファジィ制御において、メンバシップ関数μは実験結果から最尤法で決定するのが一般的である。本発明は、多次元メンバシップ関数μ(Pm,Vm)の生成方法に依存したものではないので、多次元メンバシップ関数μ(Pm,Vm)は実験結果から最尤法で決定してよい。勿論、多次元メンバシップ関数μ(Pm,Vm)の生成を最尤法に限定するものではない。
【0069】
多次元メンバシップ関数μ(Pm,Vm)の値は、0以上1以下の値をとる。この値をそのまま虞あり対象者情報101に含めて、警告表示重畳部12で使用してもよい。又は、第1の実施形態に示した接触や衝突する虞を示す値と同じく、0、1、2の三値をとるようにしてもよい。この場合、多次元メンバシップ関数μ(Pm,Vm)の値を閾値Fth0と比較し、多次元メンバシップ関数μ(Pm,Vm)の値が閾値Fth0より大きければ、接触や衝突する虞を示す値を1とする。一方、多次元メンバシップ関数μ(Pm,Vm)の値が閾値Fth0以下である場合、接触や衝突する虞を示す値を0とする。そして、緩衝距離Bl内に視聴者41が存在すれば、多次元メンバシップ関数μ(Pm,Vm)の値に係わらず、接触や衝突する虞を示す値を2とする。
【0070】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態に係る映像表示装置の構成は図1に示した構成と同様である。図11は、第4の実施形態における警告表示重畳部12の処理を示すフロsーチャートである。以下、図11を参照しながら、第4の実施形態における警告表示重畳部12の処理について説明する。なお、図11に示す処理のうち、ステップS111、S112及びS113は、図6に示す第1の実施形態における同一符号の処理と同様である。以下では、第1の実施形態における図6に示す処理との差異について説明を行うものとし、第1の実施形態と同様の処理については説明を省略する。
【0071】
警告表示領域Ws51と表示面31の画素領域との交点が存在する場合、ステップS134において、警告表示重畳部12は、映像入力102において、交点Sm52の近傍に表示面31の後方から前方に向かうように運動している対象の存在を評価する。例えば、映像入力102が多くのボールが飛び跳ねているような映像であれば、ボールの中には表示面31の後方から前方に向かって飛んでくるボールが存在する。交点Sm52の近傍に表示面31の後方から前方に向かうように運動している対象が存在する場合、処理はステップS135に移行する。一方、交点Sm52の近傍に表示面31の後方から前方に向かうように運動している対象が存在しない場合、処理はステップS136に移行する。
【0072】
ステップS135において、警告表示重畳部12は、表示面31の後方から前方に向かうように運動している対象が警告表示領域Ws51に存在するように、映像入力102にアフィン変換を施して、警告表示を重畳した映像103を生成する。このとき、表示面31の後方から前方に向かうように運動している対象が複数存在する場合、交点Sm52に最も近い対象が警告表示領域Ws51に存在するようにアフィン変換を施す。
【0073】
交点Sm52の近傍に表示面31の後方から前方に向かうように運動している対象が存在しない場合、ステップS136において、警告表示重畳部12は、表示面31の後方から前方に向かうように運動する対象を警告表示領域Ws51に挿入して、警告表示を重畳した映像103を生成する。又は、ステップS136において、第1の実施形態で説明した警告表示領域Ws51の色相を変える手法を用いてもよい。
【0074】
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。第5の実施形態に係る映像表示装置の構成は図1に示した構成と同様である。図12は、第5の実施形態における警告表示重畳部12の処理を示すフローチャートである。以下、図12を参照しながら、第5の実施形態における警告表示重畳部12の処理について説明する。なお、図12に示す処理のうち、ステップS111、S112及びS113は、図6に示す第1の実施形態における同一符号の処理と同様である。以下では、第1の実施形態における図6に示す処理との差異について説明を行うものとし、第1の実施形態と同様の処理については説明を省略する。
【0075】
警告表示領域Ws51と表示面31の画素領域との交点が存在する場合、ステップS137において、警告表示重畳部12は接触や衝突の虞のある視聴者35を撮影する。そして、警告表示重畳部12は、撮影した映像を、鏡に映った映像の如くなるように、照明の映りこみ具合や、色相、彩度又は明度を補正する。そして、警告表示重畳部12は、このようにして得られた鏡面効果で視聴者を映した映像を、交点Sm52を中心に、警告表示領域Ws51に重畳して、警告表示を重畳した映像103を作成する。ここで、接触や衝突の虞のある視聴者35を撮影するカメラ等の装置は、視聴者情報収集部21を使用してもよいし、カメラ等の装置を別途設置し、使用してもよい。
【0076】
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。第6の実施形態に係る映像表示装置の構成は図1に示した構成と同様である。図13は、第6の実施形態における警告表示重畳部12の処理を示すフローチャートである。以下、図13を参照しながら、第6の実施形態における警告表示重畳部12の処理について説明する。なお、図13に示す処理のうち、ステップS111、S112及びS113は、図6に示す第1の実施形態における同一符号の処理と同様である。以下では、第1の実施形態における図6に示す処理との差異について説明を行うものとし、第1の実施形態と同様の処理については説明を省略する。
【0077】
警告表示領域Ws51と表示面31の画素領域との交点が存在する場合、ステップS133において、警告表示重畳部12は、接触や衝突の虞がある視聴者35と表示面31との距離Lと、緩衝距離Blとを比較する。接触や衝突の虞がある視聴者35と表示面31との距離Lが緩衝距離Bl未満である場合、処理はステップS137に移行する。一方、接触や衝突の虞がある視聴者35と表示面31との距離Lが緩衝距離Bl以上である場合、処理はステップS134に移行する。
【0078】
図13におけるステップS134、S135及びS136は、図11に示した第4の実施形態における同一符号の処理と同様である。また、図13におけるステップS137は、図12に示した第5の実施形態における同一符号の処理と同様である。即ち、接触や衝突の虞がある視聴者35と表示面31との距離が短く、緩衝距離Bl未満である場合、ステップS137において、第5の実施形態で説明した擬似的に鏡が存在するような映像による警告が実施される。一方、接触や衝突の虞がある視聴者35と表示面31との距離が離れており、接触や衝突の虞がある視聴者35と表示面31との距離Lが緩衝距離Bl以上である場合、ステップS135、S136において、第4の実施形態で説明した映像效果による警告が実施される。なお、ステップS136において、第1の実施形態で説明した警告表示領域Ws51の色相を変える手法を用いてもよい。
【0079】
上述した実施形態においては、接触や衝突する虞のある視聴者に対してのみ警告を発することができる。また、現実感のある映像を提供する映像表示装置の訴求效果を殺いでしまう装置や器具を使用しなくとも、或いは、視聴者が特別な装置や器具を所持していなくとも、接触や衝突の虞がある視聴者に対して警告を発することができる。さらに、視聴者の感興を殺がない警告を発することも可能である。
【0080】
よって、上述した実施形態によれば、接触や衝突する虞のある視聴者は、映像表示装置との接触や衝突を回避でき、不測の事態の発生を防止することができる。また、上述した実施形態によれば、接触や衝突の虞がない視聴者は警告に煩わされることがなく、接触や衝突の虞がある視聴者は警告を受けても感興を殺がれることがないため、映像表示装置が提供している情報に対してよい印象を保つことができる。さらに、上述した実施形態によれば、視聴者が特別な装置や器具を所持していなくとも接触や衝突を回避することが可能であるため、映像表示装置の設置場所が限定されないという效果もある。
【0081】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0082】
11:接触や衝突の虞検出部、12:警告表示重畳部、21:視聴者情報収集部、22、24:接触や衝突の虞推測部、23:存在認知推測部
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に対して視聴者が接触や衝突することを防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、屋外及び屋内を問わず、大型の映像表示装置を使用して様々な情報を提供する装置が広く使われている。例えば、駅前や商業地には、多種の広告を提供する屋外設置型の映像表示装置が多く存在する。また、駅や空港の建物内には、出発時刻及び到着時刻や運行状況を始めとする様々な情報や、広告を表示する映像表示装置が使われている。
【0003】
映像表示装置を構成する表示素子の大型化や高精度化が進んでいることから、今後、このような様々な情報を提供する装置の大型化が進むと見込まれている。また、表示素子の大型化や高精度化により、現実と見紛う映像を表示することが可能となる。現実と見紛う映像は視聴者に対する訴求效果が大きいため、今後、電子広告を始めとした情報提供装置に、大型である上に高精細な映像を表示可能な映像表示装置が広く使用されると予想される。
【0004】
しかし、このような映像表示装置が提供する表示映像に現実感があるため、視聴者が映像であると認知せず、実体が存在すると誤認する虞がある。そして、視聴者が映像であると認知せず、実体が存在すると誤認していると、思わぬ事態が発生する虞がある。従って、大型で且つ高精細な映像を表示する映像表示装置、又は、そのような映像表示装置を使用した情報提供装置には、視聴者の接触や衝突を回避する手法が使用されている。
【0005】
視聴者の接触や衝突を回避するための手法として、パイロン、柵又は綱等で、表示面を物理的に隔離する手法がある。本手法によれば、パイロン、柵又は綱の存在により、視聴者は表示面に接触や衝突するまで接近せず、視聴者の接触や衝突の回避が可能である。しかしながら、本手法では、表示面を物理的に隔離するためのパイロン、柵又は柵の存在が、視聴者に対する訴求效果を殺いでしまうという課題がある。
【0006】
また、別の手法として、接触や衝突の虞がある場合に、視聴者に対して音や光で警告を発して、視聴者の接触や衝突を回避する手法がある。本手法によれば、接触や衝突の虞があると判断すると、スピーカから警告音を発する、又は、警告灯を点滅或いは回転することで注意を促し、視聴者の接触や衝突を回避する。しかしながら、本手法には、接触や衝突の虞がない視聴者にも警告が達する上、視聴者の感興を殺いでしまうという課題がある。スピーカからの警告音や警告灯の警告光は、接触や衝突の虞がある視聴者のみならず、接触や衝突の虞がない視聴者にも到達する。従って、接触や衝突の虞がある視聴者、及び、接触や衝突の虞がない視聴者ともに、スピーカからの警告音又は警告灯の警告光により、感興を殺がれてしまう。さらに、感興を殺がれるのみならず、当該映像表示装置が表示している情報、例えば当該映像表示装置が電子広告装置である場合、対象の商品に対して、よくない印象を視聴者が持つ虞も否定できない。
【0007】
特許文献1には、視聴者と表示面との距離を測定し、その距離が適切でない場合、表示面に警告を表示する技術が開示されている。また、特許文献2には、接触や衝突の虞がある視聴者の携帯端末に警報を送信し、警告音を発する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3−200995号公報
【特許文献2】特開2006−331154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示される技術は、警告を発する条件が視聴者と表示面との距離のみであるため、接触や衝突の虞はないが、表示面までの距離が適切でない視聴者にも警告を発してしまうという課題がある。接触や衝突の虞はないが、表示面までの距離が適切でない視聴者の例として、表示面の前で停止している視聴者や、表示面と並行に移動している視聴者等が挙げられる。
【0010】
また、特許文献2に開示される技術は、警報を受信可能な携帯端末を所持していないと警告を受けることができないという課題がある。駅等の公共の場では、不特定多数の人間が出入りしているので、全ての視聴者が警報を受信可能な携帯端末を所持しているとは限らない。従って、本従来技術による接触や衝突回避は限定的となる。
【0011】
そこで、本発明の目的は、視聴者が表示装置に対して接触や衝突することを回避し、不測の事態の発生を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の画像処理装置は、画像を表示する表示装置に対して接触又は衝突の虞のある視聴者を検出する検出手段と、前記検出手段により前記表示装置に対して接触又は衝突の虞のある前記視聴者が検出された場合、前記表示装置に表示される画像に警告表示を重畳させる重畳手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、視聴者が表示装置に対して接触や衝突することを回避することができ、不測の事態の発生を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る映像表示装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態において使用する座標系を示す図である。
【図3】第1の実施形態における接触や衝突の虞検出部の構成を示す図である。
【図4】視聴者情報収集部によって生成される視聴者情報について説明するための図である。
【図5】接触や衝突の虞推測部が接触や衝突の虞を推測する処理を示すフローチャートである。
【図6】第1の実施形態における警告表示重畳部の処理を示すフローチャートである。
【図7】警告表示領域の例を示す図である。
【図8】警告表示を重畳した映像を表示面に表示した例を示す図である。
【図9】第2の実施形態における接触や衝突の虞検出部の構成を示す図である。
【図10】第2の実施形態における接触や衝突の虞推測部が接触や衝突の虞を推測する処理を示すフローチャートである。
【図11】第4の実施形態における警告表示重畳部の処理を示すフロsーチャートである。
【図12】第5の実施形態における警告表示重畳部の処理を示すフローチャートである。
【図13】第6の実施形態における警告表示重畳部の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した好適な実施形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0016】
先ず、本発明の実施形態を説明するにあたり、使用する座標系について説明する。図2は、本実施形態において使用する座標系を示す図である。本実施形態において使用する座標系は右手系である。即ち、表示面31に向かって左側の下端が水平面と交わる点を原点にとる。そして、x軸は原点において表示面31に対して垂直に定める。x軸の方向は表示面31から離れる方向とする。そして、右手系座標系になるようにy軸及びz軸を定める。なお、表示面31の形状は平面に限定するものではなく、表示面31は曲面であってもよい。表示面31が曲面であっても座標系は同様である。
【0017】
また、本発明の実施形態を説明するにあたり、視聴者を、接触や衝突の虞の有無で明確に区別する必要がある場合、接触や衝突の虞がある視聴者を視聴者35とし、接触や衝突の虞がない視聴者を視聴者36とする。図2において、接触や衝突の虞がある視聴者35は、表示面31に向かって移動していて、接触や衝突の虞がある。一方、接触や衝突の虞がない視聴者36は、表示面31に対して平行に移動していて、接触や衝突の虞はない。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る映像表示装置の構成を示す図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る映像表示装置は、接触や衝突の虞検出部11と警告表示重畳部12とを備える。接触や衝突の虞検出部11は、予め定められた期間Pt0内に表示面31と接触や衝突すると予測される視聴者を検出する。そして、接触や衝突の虞検出部11は、検出した視聴者毎の情報を収集して虞あり対象者情報101を生成し、警告表示重畳部12に対して出力する。警告表示重畳部12は、虞あり対象者情報101に基づいて、接触や衝突の虞がある視聴者が映像表示装置の存在を認知するに足る信号、即ち警告表示を映像信号に重畳させる。なお、本実施形態に係る映像表示装置は、画像処理装置の適用例となる構成である。
【0019】
ここで、接触や衝突の虞検出部11について詳細に説明する。図3は、接触や衝突の虞検出部11の構成を示す図である。図3に示すように、接触や衝突の虞検出部11は、視聴者情報収集部21及び接触や衝突の虞推測部22を備える。
【0020】
図4は、視聴者情報収集部21によって生成される視聴者情報(図3の111)について説明するための図である。図4に示すように、視聴者情報111は、視聴者41の、座標Pm、速度ベクトルVm及び顔の向きベクトルAmを含む。ここで添え字mは、視聴者41を識別するための識別子である。視聴者41の座標Pmは、視聴者41を代表する点の座標である。例えば、視聴者41の頭頂部中央の座標値を座標Pmとする。勿論、視聴者41の座標Pmを視聴者41の頭頂部中央の座標値に限定するものではない。座標Pm、速度ベクトルVm及び顔の向きベクトルAmを成分表示で表すと、以下のようになる。
Pm=(Pxm,Pym,Pzm)
Vm=(Vxm,Vym,Vzm)
Am=(Axm,Aym,Azm)
なお、視聴者情報111は上記3項目に限定されるものではない。即ち、さらに多くの項目を視聴者情報111が含むことを妨げない。
【0021】
次に、視聴者情報収集部21の動作について説明する。位置や速度を始めとする対象物の位置情報を取得する手法については、従来から多くの手法が提案されており、本発明は、位置情報の取得手法に依存したものではない。そこで、少なくとも視聴者41の座標Pm、速度ベクトルVm及び顔の向きベクトルAmを取得することができれば、何れの公知技術を使用して視聴者情報収集部21を構成してもよい。例えば、窪田進,丸山昌之,伊久美智則,高畠政実:複数の全方位カメラによる人物動線計測システム,東芝レビュー,Vol.63,No.10(2008)には、全方位カメラを用いて人物の動線を検出する手法が開示されている。この公知技術を応用して、視聴者41の座標Pm、速度ベクトルVm及び顔の向きベクトルAmを検出することが可能である。
【0022】
また、視聴者41の座標Pm及び速度ベクトルVmを検出する手段と、視聴者41の顔の向きベクトルAmを検出する手段とが夫々別であってもよい。この場合、視聴者41の座標Pm及び速度ベクトルVmと、視聴者41の顔の向きベクトルAmとを夫々別の手段で検出した後、視聴者情報収集部21がこれらを合成して視聴者情報111を形成する。例えば、超音波センサを使用した視聴者41の座標Pm及び速度ベクトルVmの検出手段と、カメラで撮影した映像から顔認識で顔の向きベクトルAmを検出する手段とを用いる構成が別々の検出手段を用いた例である。勿論、検出手段の組み合わせが、超音波センサによる座標Pm及び速度ベクトルVmの検出手段と、顔認識による顔の向きベクトルAmの検出手段との組み合わせに限定されるものではない。
【0023】
次に、接触や衝突の虞推測部22の動作について説明する。接触や衝突の虞推測部22は、視聴者情報111に基づいて、予め定められた期間Pt0内に表示面31と接触や衝突する虞を示す値を視聴者41毎に時々刻々と推測(推定)する。そして、接触や衝突の虞推測部22は、上記接触や衝突する虞を示す値に基づいて、接触や衝突の虞がある視聴者35を抽出する。その後、接触や衝突の虞推測部22は、接触や衝突の虞がある視聴者35の視聴者情報111を、虞あり対象者情報101として出力する。ここで、虞あり対象者情報101は、接触や衝突の虞がある視聴者35の、座標Pm、速度ベクトルVm、顔の向きベクトルAm及び接触や衝突する虞を示す値を含む情報である。
【0024】
なお、本発明においては、接触や衝突の虞を推測する手段を限定するものではない。従って、期間Pt0内に表示面31と接触や衝突する虞を推測できればどのような手段を使用してもよい。そこで、接触や衝突の虞推測部22の一例として、線形予測を使用した例について説明する。接触や衝突の虞推測部22の動作を説明するのに先立ち、緩衝距離Blと表示面31の範囲を表すベクトル方程式Dsとについて説明する。
【0025】
先ず、緩衝距離Blについて説明する。本実施形態では、緩衝距離Blを次のように定義する。即ち、緩衝距離Blとは、視聴者41が表示面31から緩衝距離Bl以上離れていれば、視聴者41が手を伸ばしても、その手が表示面31に接触しない距離である。従って、緩衝距離Blは、視聴者41の手の長さより大きい値を持つ。緩衝距離Blの値は、予め定めておいてもよいし、表示面31の形状、視聴者41の位置又は視聴者41の身長により、動的に算出してもよい。
【0026】
次に、表示面31の範囲を表すベクトル方程式Dsについて説明する。本実施形態において、表示面31は平面とする。そして表示面31は、枠等の部材の大きさも含めて、水平方向にdy、垂直方向にdzの大きさを持つとする。表示面31の範囲を表すベクトル方程式Dsの要素をDs=(Dsx,Dsy,Dsz)とすると、表示面31の範囲を表すベクトル方程式Dsは、以下の式1によって表される。本実施形態では、表示面31に向かって左側の下端が水平面と交わる点を原点とし、x軸を表示面31に対して垂直にとっているので、表示面31の範囲を表すベクトル方程式Dsのx成分Dsxの値は常に0である。勿論、表示面31の形状を平面に限定するものではない。表示面31が曲面であっても、ベクトル方程式Dsを定義すれば、同様に実施可能である。
【0027】
【数1】
【0028】
なお、表示面31において画素が存在する領域は、水平方向にdiy、垂直方向にdizの大きさを持つとする。以下、表示面31の画素が存在する領域を「表示面31の画素領域」と称す。ここで、表示面31の画素領域の、向かって左下の座標を、(0,dioy,dioz)とする。diy、diz、dioy及びdiozと、dy及びdzとは、次の式2に示す関係式を満たす。
【0029】
【数2】
【0030】
本実施形態では、接触や衝突する虞を示す値は、0、1、2の三値をとるものとする。そして、それぞれの値は以下の状態を示す。
接触や衝突する虞を示す値 状態
0 期間Pt0内に表示面31と接触や衝突する虞はない
1 期間Pt0内に表示面31と接触や衝突する虞はある
2 緩衝距離Bl内に視聴者35が存在する
即ち、視聴者35が手を伸ばせば接触や衝突の虞がある
【0031】
従って、本実施形態では、接触や衝突の虞推測部22は、接触や衝突する虞を示す値が1又は2の視聴者41については、接触や衝突の虞がある視聴者35として虞あり対象者情報101を生成する。そして、接触や衝突する虞を示す値が0の視聴者41については、接触や衝突の虞推測部22は、虞あり対象者情報101を生成しない。
【0032】
次に、図5に示すフローチャートを参照しながら、接触や衝突の虞推測部22が接触や衝突の虞を推測する処理について説明する。接触や衝突の虞推測部22は、視聴者41毎に図5に示す処理を時々刻々と繰り返し、接触や衝突の虞を推測する。
【0033】
ステップS101において、接触や衝突の虞推測部22は、視聴者41と表示面31との距離Lと、緩衝距離Blとを比較し、視聴者41の位置が表示面31から緩衝距離Blより離れているか否かを判定する。視聴者41と表示面31との距離Lは、視聴者41の座標Pmから表示面31の範囲を表すベクトル方程式Dsに下ろした垂線の長さを求めればよい。本実施形態では、表示面31は平面であるから、視聴者41と表示面31との距離Lは、視聴者41の座標Pmのx方向成分Pxmになる。従って、Pxm>Blであり、視聴者41の位置が表示面31から緩衝距離Blより離れている場合、処理はステップS102に移行する。一方、Pxm≦Blであり、視聴者41と表示面31との距離Lが緩衝距離Bl以下である場合、処理はステップS107に移行する。
【0034】
ステップS102において、接触や衝突の虞推測部22は、視聴者41の未来位置Fmを線形に予測する。ここで未来位置とは、期間Pt0内に視聴者41が到達すると予測される位置である。tを媒介変数とすると、視聴者41の未来位置Fmは次の式3で表される。
【0035】
【数3】
【0036】
ステップS103において、接触や衝突の虞推測部22は、表示面31の範囲を表すベクトル方程式Dsと視聴者41の未来位置Fmとの交点Gmを算出する。交点Gmにおいて、Ds=Fmである。この関係を成分表示で表すと、式4に示すようになる。式4を各変数について解いた結果が式5である。式5に示すt、Dsy、Dszの解が、それぞれのとり得る値の範囲内に存在する場合、交点Gmは存在する。即ち、式6に示す関係式が全て成立する場合、交点Gmは存在する。一方、式6を示す関係式のうち、成立しない関係式が一つでも存在する場合、交点Gmは存在しない。
【0037】
【数4】
【0038】
ステップS104において、接触や衝突の虞推測部22は、交点Gmが存在するか否かを判定する。交点Gmが存在しない場合、処理はステップS105に移行する。一方、交点Gmが存在する場合、処理はステップS106に移行する。交点Gmが存在しない場合、期間Pto内で、視聴者41が表示面31に接触や衝突する虞はない。そこでステップS105において、接触や衝突の虞推測部22は、接触や衝突する虞を示す値を0にする。一方、交点Gmが存在する場合、接触や衝突の虞推測部22は、期間Pt0内で、視聴者41が表示面31に接触や衝突する虞があると推測する。そこでステップS106において、接触や衝突の虞推測部22は、接触や衝突する虞を示す値を1にする。また、視聴者41と表示面31との距離が緩衝距離Bl以下である場合、現時点において、手を伸ばせば表示面31に接触や衝突する虞がある。そこでステップS107において、接触や衝突の虞推測部22は、接触や衝突する虞を示す値を2にする。
【0039】
次に、図6を参照しながら、警告表示重畳部12の動作について説明する。図6は、警告表示重畳部12の処理を示すフローチャートである。警告表示重畳部12は、接触や衝突の虞がある視聴者35毎に、時々刻々と映像入力102に対して図6に示す処理を繰り返すことにより、警告表示を重畳した映像103を出力する。
【0040】
ステップS111において、警告表示重畳部12は、座標Pmを通り顔の向きベクトルAmに平行な線分と、表示面31の範囲を表すベクトル方程式Dsとの交点Smを算出する。座標Pmを通り、顔の向きベクトルAmに平行な線分の成分表示は、uを媒介変数として、次の式7で表される。交点Smはベクトル方程式Ds上の点であるから、式8が成り立つ。式8をSymとSzmとについて解くと、交点Smの各成分の値は式9になる。
【0041】
【数5】
【0042】
ステップS112において、警告表示重畳部12は、警告表示領域Wsを、交点Smを中心にして設定する。警告表示領域Wsの形状は矩形であっても、楕円であってもよい。図7は、警告表示領域Wsの形状が矩形である場合と、警告表示領域Wsの形状が楕円である場合とを示す図である。
【0043】
図7(a)は、y軸方向に2Wsy、z軸方向に2Wszの大きさを持つ矩形の警告表示領域Ws51を示している。図7(b)は、2Wsyの長径、2Wszの短径を持つ楕円の警告表示領域Ws51を示している。勿論、警告表示領域Ws51の形状が楕円の場合、長径をy軸方向に限定するものではない。
【0044】
ここで、警告表示領域Ws51の大きさを示すWsyとWszとは、接触や衝突する虞を示す値に依存して決定する。接触や衝突する虞を示す値が1のときに使用するWsyとWszとを、それぞれWsy1とWsz1とし、接触や衝突する虞を示す値が2のときに使用するWsyとWszとを、それぞれWsy2とWsz2とする。そして、Wsy1、Wsy2、Wsz1、Wsz2の値は、次の式10を満たすものとする。ステップS112において、警告表示重畳部12は、接触や衝突する虞を示す値が1である場合、警告表示重畳部12は、Wsy1とWsz1とを選択して警告表示領域Ws51を設定する。一方、ステップS112において、接触や衝突する虞を示す値が2である場合、警告表示重畳部12は、Wsy2とWsz2とを選択して警告表示領域Ws51を設定する。
【0045】
【数6】
【0046】
Wsy1、Wsy2、Wsz1、Wsz2は、予め定めておいてもよいし、又は、接触や衝突の虞がある視聴者35と表示面31との距離L、及び、接触や衝突する虞を示す値から、ステップS112を実行する度に算出してもよい。ステップS113において、警告表示重畳部12は、警告表示領域Ws51と表示面31の画素領域との交点が存在するか否かを判定する。警告表示領域Ws51と表示面31の画素領域との交点が存在する場合、次の式11が成立する。従って、式11が真である場合、処理はステップS114に移行する。一方、式11が偽である場合、警告表示領域Ws51と表示面31の画素領域との交点が存在しないため、現時刻における当該接触や衝突の虞がある視聴者35に対する処理を終了する。
【0047】
【数7】
【0048】
ステップS114において、警告表示重畳部12は、警告表示領域Ws51の色相の平均値AHを求め、閾値AHth0と比較する。色相の平均値AHが閾値AHth0より大きい場合、処理はステップS115に移行する。一方、色相の平均値AHが閾値AHth0以下である場合、処理はステップS116に移行する。
【0049】
ここで、ステップS114における色相の平均値の算出方法は限定されない。従って、色相の平均値AHは、単純平均を用いても加重平均を用いて求めてもよい。閾値AHth0は、表示面31の特性や設置場所の状況に基づいて予め算出しておいてもよいし、ステップS114を実行する度、又は、表示面31の特性や設置場所の状況に変化がある度に算出してもよい。
【0050】
ステップS115において、警告表示重畳部12は、警告表示領域Ws51の色相をHth0%減少させる。ステップS116において、警告表示重畳部12は、警告表示領域Ws51の色相をHth1%増加させる。
【0051】
ここで、減少割合Hth0と増加割合Hth1とは、接触や衝突する虞を示す値に依存して決定される。接触や衝突する虞を示す値が1のときに使用するHth0とHth1との値を、それぞれHth01とHth11とする。また、接触や衝突する虞を示す値が2のときに使用するHth0とHth1との値を、それぞれHth02とHth12とする。そして、Hth01、Hth02、Hth11、Hth12は、次の式12を満たすものとする。ステップS115において、接触や衝突する虞を示す値が1である場合、警告表示重畳部12はHth01を選択し、警告表示領域Wsの色相をHth01%減少させる。一方、接触や衝突する虞を示す値が2である場合、警告表示重畳部12はHth02を選択し、警告表示領域Ws51の色相をHth02%減少させる。一方、ステップS116において、接触や衝突する虞を示す値が1である場合、警告表示重畳部12はHth11を選択し、警告表示領域Ws51の色相をHth11%増加させる。一方、接触や衝突Sる虞を示す値が2である場合、警告表示重畳部12はHth12を選択し、警告表示領域Ws51の色相をHth12%減少増加させる。
【0052】
【数8】
【0053】
Hth01、Hth02、Hth11及びHth12は、表示面31の特性及び設置場所の状況に基づいて予め定めておいてよい。又は、ステップS115又はS116を実行する度に、警告表示領域Ws51内の映像、表示面31の特性及び設置場所の状況に基づいて算出してもよい。以上のように、本実施形態では、警告表示に色相の変化を使用しているが、勿論、警告表示に色相の変化を使用することを限定するものではない。
【0054】
図8は、警告表示を重畳した映像を表示面31に表示した例を示す図である。図8(a)及び(b)において、接触や衝突の虞がある視聴者35の顔が向いている方向、即ち、接触や衝突の虞がある視聴者35の視野の中央部に、色相が変化した警告表示領域Ws51が出現する。図8に示す例では、表示物32上に警告表示領域Ws51が出現している。周りと色相が異なる警告表示領域Ws51が出現することで、接触や衝突の虞がある視聴者35は、表示面31の存在を認知する。一方、図8(a)に示すように、表示面31からの距離が遠かったり、図8(b)に示すように、顔の向きが接触や衝突の虞がある視聴者35と異なる場合には、衝突の虞がない視聴者36は警告表示領域Ws51を認知する可能性は低い。
【0055】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態に係る映像表示装置の構成は、図1に示した構成と同様である。図9は、第2の実施形態における接触や衝突の虞検出部11の構成を示す図である。図9に示す接触や衝突の虞検出部11は、視聴者情報収集部21、接触や衝突の虞推測部24及び存在認知推測部23を備える。
【0056】
図9に示す第2の実施形態における視聴者情報収集部21は、図3に示す第1の実施形態における視聴者情報収集部21と同様である。従って、第2の実施形態における視聴者情報収集部21より出力される視聴者情報111には、視聴者41の、座標Pm、速度ベクトルVm及び顔の向きベクトルAmが含まれる。なお、視聴者情報111は上記3項目に限定されるものではない。即ち、更に多くの項目が視聴者情報111に含まれることを妨げない。
【0057】
次に、存在認知推測部23の処理について説明する。存在認知推測部23は、視聴者41が表示面31の存在を認知しているか否かを推測し、その結果を存在認知推測値112として出力する。本実施形態では、存在認知推測値112は0、1の二値をとり、それぞれの値は以下の状態を示すものとする。
存在認知推測値 状態
0 視聴者41は表示面31の存在を認知していないと推測
1 視聴者41は表示面31の存在を認知していると推測
【0058】
表示面31に近づいてきた視聴者41は、表示面31の存在を認知し、接触や衝突すると判断すれば、接触や衝突を回避するために、速度を落とす、又は表示面31から遠ざかるように移動方向を変える。そこで、存在認知推測部23は、速度ベクトルVmの表示面31に対して垂直方向の成分を求め、その値を基に視聴者41が表示面31の存在を認知しているか否かを推測する。本実施形態では、表示面31は平面であるから、速度ベクトルVmの表示面31に対して垂直方向の成分はVxmである。よって、Vxmを次の表のように分類し、視聴者41が表示面31の存在を認知しているか否かを推測する。
【0059】
【表1】
【0060】
上記表において、分類1は、Vxmが0より大きく、表示面31から離れる方向に視聴者41は運動している。従って、存在認知推測部23は、視聴者41が表示面31との接触や衝突を回避するために運動していると推測し、存在認知推測値112の値を1にする。分類2は、Vxmが0に等しく、視聴者41と表示面31との距離は変化しない。この場合、存在認知推測部23は、視聴者41が表示面31の存在を認知していると推測し、存在認知推測値112の値を1にする。分類3は、Vxmが0以下であり、x軸は表示面31に近づく方向が負である。従って、視聴者41は表示面31に近づく方向に運動している。さらに、Vxmを時間で微分した値が0以下であるから、視聴者41は速度を変えずに、又は、速度を上げて表示面31に近づいている。この場合、存在認知推測部23は、視聴者41が表示面31の存在を認知していないと推測し、存在認知推測値112の値を0にする。分類4は、Vxmが0であり、且つ、Vxmを時間で微分した値が0より大きい。この場合、視聴者41は、表示面31に近づいているが、近づく速度は低下している。従って、存在認知推測部23は、視聴者41が表示面31の存在を認知していると推測し、存在認知推測値112の値を1にする。
【0061】
次に、接触や衝突の虞推測部24の処理について説明する。接触や衝突の虞推測部24は、視聴者情報111及び存在認知推測値に基づいて、予め定めた期間Pt0内に表示面31と接触や衝突する虞を示す値を、視聴者41毎に時々刻々と推測する。そして、接触や衝突の虞推測部24は、推測した接触や衝突する虞を示す値に基づいて、接触や衝突の虞がある視聴者35を抽出する。その後、存在認知推測部23は、接触や衝突の虞がある視聴者35の視聴者情報111を、虞あり対象者情報101として出力する。ここで、虞あり対象者情報101は、接触や衝突の虞がある視聴者35の、座標Pm、速度ベクトルVm、顔の向きベクトルAm、及び、接触や衝突する虞を示す値を含む情報である。
【0062】
第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、接触や衝突の虞推測部24が推測する接触や衝突する虞を示す値は、0、1、2の三値をとり、それぞれの値は以下の状態を示すとする。
接触や衝突する虞を示す値 状態
0 緩衝距離Bl外に視聴者41が存在し、
期間Pt0内に表示面31と接触や衝突する虞はないか、
又は、視聴者41が表示面31の存在を認知している
1 緩衝距離Bl外に視聴者41が存在し、
期間Pt0内に表示面31と接触や衝突する虞があり、
且つ、視聴者41が表示面31の存在を認知していない
2 緩衝距離Bl内に視聴者41が存在する
【0063】
接触や衝突の虞推測部24は、接触や衝突する虞を示す値が1又は2の視聴者41を、接触や衝突の虞がある視聴者35とし、虞あり対象者情報101を生成する。一方、接触や衝突する虞を示す値が0の視聴者41に対しては、接触や衝突の虞推測部24は虞あり対象者情報101を生成しない。
【0064】
図10は、第2の実施形態における接触や衝突の虞推測部24が接触や衝突の虞を推測する処理を示すフローチャートである。接触や衝突の虞推測部24は、視聴者41毎に図10に示す処理を時々刻々と繰返し、接触や衝突の虞を推測する。図10に示す処理のうち、ステップS101、S102、S103、S105、S106及びS107は、図5に示す第1の実施形態おける同一符号の処理と同様である。以下では、第1の実施形態における図5に示す処理との差異について説明を行うものとし、第1の実施形態と同様の処理については説明を省略する。
【0065】
ステップS124において、接触や衝突の虞推測部24は、交点Gmが存在するか否かを判定する。交点Gmが存在しない場合、処理はステップS105に移行する。一方、交点Gmが存在する場合、処理はステップS125に移行する。ステップS125において、接触や衝突の虞推測部24は存在認知推測値112を評価する。そして、存在認知推測値112が1、即ち、視聴者41が表示面31の存在を認知していると推測される場合、処理はステップS105に移行する。一方、存在認知推測値112が0、即ち、視聴者41が表示面31の存在を認知していないと推測される場合、処理はステップS106に移行する。
【0066】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態に係る映像表示装置の構成は図1に示した構成と同様である。また、第3の実施形態における接触や衝突の虞検出部11の構成は図3に示した構成と同様であるが、本実施形態では、接触や衝突の虞推測部22の実施にファジィ制御を応用している。なお、ファジィ制御は公知技術であり、例えば工場において、自動搬送車が障害物を回避する制御に利用されている。
【0067】
第3の実施形態における接触や衝突の虞推測部22は、ファジィ理論に基づき、視聴者41の座標Pmと速度ベクトルVmとから、視聴者41の未来位置が表示面31と交点を有する適合度を算出するための多次元メンバシップ関数μ(Pm,Vm)を設定する。そして、接触や衝突の虞推測部22は、この多次元メンバシップ関数μ(Pm,Vm)を使用して、接触や衝突の虞を推測する。
【0068】
ここで、多次元メンバシップ関数μ(Pm,Vm)は、表示面31の形状、表示面31を設置した場所の状況に依存する。ファジィ制御において、メンバシップ関数μは実験結果から最尤法で決定するのが一般的である。本発明は、多次元メンバシップ関数μ(Pm,Vm)の生成方法に依存したものではないので、多次元メンバシップ関数μ(Pm,Vm)は実験結果から最尤法で決定してよい。勿論、多次元メンバシップ関数μ(Pm,Vm)の生成を最尤法に限定するものではない。
【0069】
多次元メンバシップ関数μ(Pm,Vm)の値は、0以上1以下の値をとる。この値をそのまま虞あり対象者情報101に含めて、警告表示重畳部12で使用してもよい。又は、第1の実施形態に示した接触や衝突する虞を示す値と同じく、0、1、2の三値をとるようにしてもよい。この場合、多次元メンバシップ関数μ(Pm,Vm)の値を閾値Fth0と比較し、多次元メンバシップ関数μ(Pm,Vm)の値が閾値Fth0より大きければ、接触や衝突する虞を示す値を1とする。一方、多次元メンバシップ関数μ(Pm,Vm)の値が閾値Fth0以下である場合、接触や衝突する虞を示す値を0とする。そして、緩衝距離Bl内に視聴者41が存在すれば、多次元メンバシップ関数μ(Pm,Vm)の値に係わらず、接触や衝突する虞を示す値を2とする。
【0070】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態に係る映像表示装置の構成は図1に示した構成と同様である。図11は、第4の実施形態における警告表示重畳部12の処理を示すフロsーチャートである。以下、図11を参照しながら、第4の実施形態における警告表示重畳部12の処理について説明する。なお、図11に示す処理のうち、ステップS111、S112及びS113は、図6に示す第1の実施形態における同一符号の処理と同様である。以下では、第1の実施形態における図6に示す処理との差異について説明を行うものとし、第1の実施形態と同様の処理については説明を省略する。
【0071】
警告表示領域Ws51と表示面31の画素領域との交点が存在する場合、ステップS134において、警告表示重畳部12は、映像入力102において、交点Sm52の近傍に表示面31の後方から前方に向かうように運動している対象の存在を評価する。例えば、映像入力102が多くのボールが飛び跳ねているような映像であれば、ボールの中には表示面31の後方から前方に向かって飛んでくるボールが存在する。交点Sm52の近傍に表示面31の後方から前方に向かうように運動している対象が存在する場合、処理はステップS135に移行する。一方、交点Sm52の近傍に表示面31の後方から前方に向かうように運動している対象が存在しない場合、処理はステップS136に移行する。
【0072】
ステップS135において、警告表示重畳部12は、表示面31の後方から前方に向かうように運動している対象が警告表示領域Ws51に存在するように、映像入力102にアフィン変換を施して、警告表示を重畳した映像103を生成する。このとき、表示面31の後方から前方に向かうように運動している対象が複数存在する場合、交点Sm52に最も近い対象が警告表示領域Ws51に存在するようにアフィン変換を施す。
【0073】
交点Sm52の近傍に表示面31の後方から前方に向かうように運動している対象が存在しない場合、ステップS136において、警告表示重畳部12は、表示面31の後方から前方に向かうように運動する対象を警告表示領域Ws51に挿入して、警告表示を重畳した映像103を生成する。又は、ステップS136において、第1の実施形態で説明した警告表示領域Ws51の色相を変える手法を用いてもよい。
【0074】
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。第5の実施形態に係る映像表示装置の構成は図1に示した構成と同様である。図12は、第5の実施形態における警告表示重畳部12の処理を示すフローチャートである。以下、図12を参照しながら、第5の実施形態における警告表示重畳部12の処理について説明する。なお、図12に示す処理のうち、ステップS111、S112及びS113は、図6に示す第1の実施形態における同一符号の処理と同様である。以下では、第1の実施形態における図6に示す処理との差異について説明を行うものとし、第1の実施形態と同様の処理については説明を省略する。
【0075】
警告表示領域Ws51と表示面31の画素領域との交点が存在する場合、ステップS137において、警告表示重畳部12は接触や衝突の虞のある視聴者35を撮影する。そして、警告表示重畳部12は、撮影した映像を、鏡に映った映像の如くなるように、照明の映りこみ具合や、色相、彩度又は明度を補正する。そして、警告表示重畳部12は、このようにして得られた鏡面効果で視聴者を映した映像を、交点Sm52を中心に、警告表示領域Ws51に重畳して、警告表示を重畳した映像103を作成する。ここで、接触や衝突の虞のある視聴者35を撮影するカメラ等の装置は、視聴者情報収集部21を使用してもよいし、カメラ等の装置を別途設置し、使用してもよい。
【0076】
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。第6の実施形態に係る映像表示装置の構成は図1に示した構成と同様である。図13は、第6の実施形態における警告表示重畳部12の処理を示すフローチャートである。以下、図13を参照しながら、第6の実施形態における警告表示重畳部12の処理について説明する。なお、図13に示す処理のうち、ステップS111、S112及びS113は、図6に示す第1の実施形態における同一符号の処理と同様である。以下では、第1の実施形態における図6に示す処理との差異について説明を行うものとし、第1の実施形態と同様の処理については説明を省略する。
【0077】
警告表示領域Ws51と表示面31の画素領域との交点が存在する場合、ステップS133において、警告表示重畳部12は、接触や衝突の虞がある視聴者35と表示面31との距離Lと、緩衝距離Blとを比較する。接触や衝突の虞がある視聴者35と表示面31との距離Lが緩衝距離Bl未満である場合、処理はステップS137に移行する。一方、接触や衝突の虞がある視聴者35と表示面31との距離Lが緩衝距離Bl以上である場合、処理はステップS134に移行する。
【0078】
図13におけるステップS134、S135及びS136は、図11に示した第4の実施形態における同一符号の処理と同様である。また、図13におけるステップS137は、図12に示した第5の実施形態における同一符号の処理と同様である。即ち、接触や衝突の虞がある視聴者35と表示面31との距離が短く、緩衝距離Bl未満である場合、ステップS137において、第5の実施形態で説明した擬似的に鏡が存在するような映像による警告が実施される。一方、接触や衝突の虞がある視聴者35と表示面31との距離が離れており、接触や衝突の虞がある視聴者35と表示面31との距離Lが緩衝距離Bl以上である場合、ステップS135、S136において、第4の実施形態で説明した映像效果による警告が実施される。なお、ステップS136において、第1の実施形態で説明した警告表示領域Ws51の色相を変える手法を用いてもよい。
【0079】
上述した実施形態においては、接触や衝突する虞のある視聴者に対してのみ警告を発することができる。また、現実感のある映像を提供する映像表示装置の訴求效果を殺いでしまう装置や器具を使用しなくとも、或いは、視聴者が特別な装置や器具を所持していなくとも、接触や衝突の虞がある視聴者に対して警告を発することができる。さらに、視聴者の感興を殺がない警告を発することも可能である。
【0080】
よって、上述した実施形態によれば、接触や衝突する虞のある視聴者は、映像表示装置との接触や衝突を回避でき、不測の事態の発生を防止することができる。また、上述した実施形態によれば、接触や衝突の虞がない視聴者は警告に煩わされることがなく、接触や衝突の虞がある視聴者は警告を受けても感興を殺がれることがないため、映像表示装置が提供している情報に対してよい印象を保つことができる。さらに、上述した実施形態によれば、視聴者が特別な装置や器具を所持していなくとも接触や衝突を回避することが可能であるため、映像表示装置の設置場所が限定されないという效果もある。
【0081】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0082】
11:接触や衝突の虞検出部、12:警告表示重畳部、21:視聴者情報収集部、22、24:接触や衝突の虞推測部、23:存在認知推測部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示装置に対して接触又は衝突の虞のある視聴者を検出する検出手段と、
前記検出手段により前記表示装置に対して接触又は衝突の虞のある前記視聴者が検出された場合、前記表示装置に表示される画像に警告表示を重畳させる重畳手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記検出手段は、
前記視聴者の位置及び前記視聴者の速度ベクトルのうちの少なくとも何れか一方を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された情報に基づいて、前記視聴者が前記表示装置に対して接触又は衝突する虞を推定する第1の推定手段とを有し、
前記第1の推定手段による推定結果に基づいて、前記表示装置に対して接触又は衝突の虞のある前記視聴者を検出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記検出手段は、
前記視聴者が前記表示装置の存在を認知しているか否かを推定する第2の推定手段を更に有し、
前記第1の推定手段は、前記取得手段により取得された情報と、前記第2の推定手段による推定結果とに基づいて、前記表示装置に対して接触又は衝突の虞のある前記視聴者を検出することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記重畳手段は、複数の警告表示から、前記表示装置に表示される画像に重畳させる前記警告表示を選択することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記重畳手段は、前記第1の推定手段による推定結果に応じて、複数の警告表示から、前記表示装置に表示される画像に重畳させる前記警告表示を選択することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記警告表示は、前記警告表示に該当する領域の色相を変化させた画像、当該画像処理装置の後方から前方に移動する対象を含む画像、及び、鏡面効果で前記視聴者を映した画像のうちの少なくとも何れか一つを含む画像であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記第1の推定手段は、
前記視聴者の位置及び前記視聴者の速度ベクトルに基づいて、前記視聴者の未来の位置を予測する予測手段を有し、
前記予測手段により予測された位置と前記表示装置とが交点を有する場合、前記視聴者は前記表示装置に対して接触又は衝突の虞があると推定することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記第1の推定手段は、前記視聴者の位置と前記視聴者の速度ベクトルに基づいて前記視聴者の未来の位置が前記表示装置と交点を有する適合度を算出するための、ファジィ理論に基づく多次元メンバシップ関数を用いて、前記視聴者が前記表示装置に対して接触又は衝突の虞を推定することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項9】
画像処理装置によって実行される画像処理方法であって、
画像を表示する表示装置に対して接触又は衝突の虞のある視聴者を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにより前記表示装置に対して接触又は衝突の虞のある前記視聴者が検出された場合、前記表示装置に表示される画像に警告表示を重畳させる重畳ステップとを有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
画像を表示する表示装置に対して接触又は衝突の虞のある視聴者を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにより前記表示装置に対して接触又は衝突の虞のある前記視聴者が検出された場合、前記表示装置に表示される画像に警告表示を重畳させる重畳ステップとをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項1】
画像を表示する表示装置に対して接触又は衝突の虞のある視聴者を検出する検出手段と、
前記検出手段により前記表示装置に対して接触又は衝突の虞のある前記視聴者が検出された場合、前記表示装置に表示される画像に警告表示を重畳させる重畳手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記検出手段は、
前記視聴者の位置及び前記視聴者の速度ベクトルのうちの少なくとも何れか一方を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された情報に基づいて、前記視聴者が前記表示装置に対して接触又は衝突する虞を推定する第1の推定手段とを有し、
前記第1の推定手段による推定結果に基づいて、前記表示装置に対して接触又は衝突の虞のある前記視聴者を検出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記検出手段は、
前記視聴者が前記表示装置の存在を認知しているか否かを推定する第2の推定手段を更に有し、
前記第1の推定手段は、前記取得手段により取得された情報と、前記第2の推定手段による推定結果とに基づいて、前記表示装置に対して接触又は衝突の虞のある前記視聴者を検出することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記重畳手段は、複数の警告表示から、前記表示装置に表示される画像に重畳させる前記警告表示を選択することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記重畳手段は、前記第1の推定手段による推定結果に応じて、複数の警告表示から、前記表示装置に表示される画像に重畳させる前記警告表示を選択することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記警告表示は、前記警告表示に該当する領域の色相を変化させた画像、当該画像処理装置の後方から前方に移動する対象を含む画像、及び、鏡面効果で前記視聴者を映した画像のうちの少なくとも何れか一つを含む画像であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記第1の推定手段は、
前記視聴者の位置及び前記視聴者の速度ベクトルに基づいて、前記視聴者の未来の位置を予測する予測手段を有し、
前記予測手段により予測された位置と前記表示装置とが交点を有する場合、前記視聴者は前記表示装置に対して接触又は衝突の虞があると推定することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記第1の推定手段は、前記視聴者の位置と前記視聴者の速度ベクトルに基づいて前記視聴者の未来の位置が前記表示装置と交点を有する適合度を算出するための、ファジィ理論に基づく多次元メンバシップ関数を用いて、前記視聴者が前記表示装置に対して接触又は衝突の虞を推定することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項9】
画像処理装置によって実行される画像処理方法であって、
画像を表示する表示装置に対して接触又は衝突の虞のある視聴者を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにより前記表示装置に対して接触又は衝突の虞のある前記視聴者が検出された場合、前記表示装置に表示される画像に警告表示を重畳させる重畳ステップとを有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
画像を表示する表示装置に対して接触又は衝突の虞のある視聴者を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにより前記表示装置に対して接触又は衝突の虞のある前記視聴者が検出された場合、前記表示装置に表示される画像に警告表示を重畳させる重畳ステップとをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−73222(P2013−73222A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214651(P2011−214651)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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