説明

画像処理装置

【課題】少ないメモリ容量でも多値画像データによるαブレンディング処理を伴う二値画像データの生成を可能にする。
【解決手段】印刷データには描画コマンドに加えて描画オブジェクト間の重なり領域情報として重なり領域データと重なり枚数データとを含ませておき,画像処理装置は,描画コマンドを処理するに際して,重なり領域については多値画像データで保持し,重なり領域以外の領域については二値画像データで保持し,重なり領域の多値画像データが全てそろった時点でαブレンディング処理を行い二値化して二値画像データに変換する。これにより,画像処理装置は必要最小限の多値画像データを保持すればよく,それ以外は全て二値画像データで保持できるので,メモリ容量を節約することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,画像処理装置に関し,特に,プリンタなどの画像形成装置の画像データを展開する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタなどの画像形成装置は,画像処理装置と印刷エンジンとを有し,画像処理装置が,ホストコンピュータから描画コマンドを含む印刷データを受信し,描画コマンドにしたがって印刷すべき画像データを生成し,印刷エンジンが,生成した画像データに基づいて画像を形成する。この画像処理装置では,描画コマンドに対応する画像オブジェクトを画像処理や印刷エンジンの動作に対応させるために複数の多角形に分解し,その多角形の画像データをバンドバッファ内でピクセル単位に展開する。
【0003】
特に,モノクロプリンタの場合は,バンドバッファ内にピクセル毎の二値画像データで展開し,二値画像データを印刷エンジンに転送してドット画像を形成させる。
【0004】
上記の画像処理装置による画像データの生成には,複数のオブジェクトが重なった場合のアルファブレンディング処理が含まれる。アルファブレンディング処理では,多角形の不透過率αを利用して,既存のピクセルデータDに描画オブジェクトのピクセルデータSをブレンドする処理であり,一般的に以下の演算によりブレンドされたピクセルデータD‘が求められる。
【0005】
D‘=αS+(1−α)D
この場合,D,Sは共に多値データ(256階調なら8ビット)である必要がある。二値化されたデータは,ピクセルにおいて色剤(トナー)によるドットを形成するか否かの情報(1ビット=二値)しか含まれていないので,上記のαブレンディング処理の演算を行うことはできない。
【0006】
このように他のオブジェクトと重なりを有する描画オブジェクトには,αブレンディング処理が必要になる。特許文献1によれば,重なり領域ではRGBによるαブレンディング処理をホストコンピュータで行い,αブレンディングが必要ない領域ではCMYKによるレンダリング処理をプリンタ側で行うことが記載されている。
【特許文献1】特開平11−355588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の通りαブレンディング処理を行うためには,既存画像Dと描画画像Sとが共に多値データである必要がある。したがって,従来の一般的な方法によれば,既存画像Dを多値のままバッファ内に展開し,後続の描画オブジェクトの描画画像Sと既存画像Dとをαブレンディング処理の演算を行い,演算結果を多値のままバッファ内に格納する。そして,1ページ内の全ての描画オブジェクトが完了した時点で,1ページの多値画像データを二値化処理して二値画像データにする。
【0008】
しかしながら,上記従来の一般的な方法によれば,全ての描画オブジェクトの処理が完了するまで多値の画像データを保持する必要がある。そのため,コストダウンの要請から大容量メモリを搭載できないプリンタでは,多値の画像データを保持するためのメモリ容量を確保することができない。
【0009】
少ないメモリ容量での画像処理を実現するために,例えば二値の画像データの既存画像Dと描画画像Sとをブレンド率に応じた面積率で演算する特殊なαブレンディング処理が提案されている。しかし,面積率で演算した場合,ピクセル単位でαブレンディングされないので,画質の低下を免れることができない。
【0010】
そこで,本発明の目的は,少ないメモリ容量でも多値画像データによるαブレンディング処理を伴う二値画像データの生成を可能にする画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために,本発明の第1の側面によれば,印刷データには描画コマンドに加えて描画オブジェクト間の重なり領域情報として重なり領域データと重なり枚数データとを含ませておき,画像処理装置は,一連の描画コマンドを処理するに際して,重なり領域については多値画像データで保持し,重なり領域以外の領域については二値画像データで保持し,重なり領域の多値画像データが全てそろった時点でαブレンディング処理を行い二値化して二値画像データに変換する。これにより,画像処理装置は必要最小限の多値画像データを保持すればよく,それ以外は全て二値画像データで保持できるので,メモリ容量を節約することができる。
【0012】
上記第1の側面において,好ましい態様によれば,重なり領域であっても描画対象の画像の不透過率αが0の場合は,描画対象の画像データSを破棄し,重なり領域であっても描画対象の画像の不透過率αが1の場合は,既存の多値画像データDを破棄して新たに描画対象の画像データSを保持する。
【0013】
上記の第1の側面において,好ましい態様によれば,画像処理装置は,描画コマンドを,その描画コマンドにより描画される図形を分割した1個または複数個の多角形の中間コードに変換し,中間コードの二値画像データを中間コードバッファに格納する。その場合,中間コードの多角形が重なり領域と重なる場合は,多値画像データのまま保存し,中間コードの多角形が重なり領域と重ならない場合は,多値画像データを二値画像データに変換して中間コードバッファに格納する。そして,重なり領域の中間コードが全て生成された後にそれらの多値画像データをαブレンディング演算し,更に演算結果を二値画像データに変換して中間コードバッファに格納する。1ページ分の描画コマンドの中間コードへの変換が終了した後,バンドバッファに中間コードの二値画像データを展開する。
【0014】
上記の目的を達成するために,本発明の第2の側面によれば,複数の描画コマンドを有する印刷データを処理して画素毎の二値画像データを生成する画像処理装置において,
前記描画コマンドは描画オブジェクトデータとその描画オブジェクトの多値画像データとを有し,印刷データは描画オブジェクト間の重なり領域と重なり枚数のデータを含む重なり領域情報を有し,
更に,画像データを格納するメモリと,
前記描画コマンドを解釈して,前記描画オブジェクトのうち前記重なり領域と一致する領域は前記多値画像データで前記メモリに保存し,前記描画オブジェクトのうち前記重なり領域と一致しない領域は前記多値画像データを二値画像データに変換して前記メモリに保存し,前記重なり領域と一致する領域を有する全ての描画オブジェクトが処理される段階で当該重なり領域と一致する領域の多値画像データをαブレンディング演算し,演算結果を二値画像データに変換して前記メモリに保存し,前記メモリに保存している二値画像データを前記メモリのバッファ領域に展開する画像処理ユニットとを有することを特徴とする。
【0015】
上記の第2の側面によれば,画像データを格納するメモリには多値画像データが必要最小限しか保存されず必要のない画像データは二値画像データとして保存される。よって,メモリ容量が小さくても多値画像データによるαブレンディング演算を含む画像処理が可能になる。
【0016】
上記本発明の第2の側面において,好ましい態様によれば,前記画像処理ユニットは,前記描画コマンドの描画オブジェクトを複数の多角形に分解し,前記第1の処理において,当該多角形が前記重なり領域と一致する場合は前記多角形の多値画像データで前記メモリに保存し,前記多角形が前記重なり領域と一致しない場合は前記多角形の二値画像データで前記メモリに保存し,前記第2の処理において,前記重なり領域と一致する多角形の多値画像データをαブレンディング演算する。
【0017】
上記本発明の第2の側面において,好ましい態様によれば,前記画像処理ユニットは,前記第1の処理と第2の処理で生成される二値画像データを,中間コードとして,前記メモリ内の中間コードバッファ領域に格納し,1ページ内の中間コードの生成が完了した後に,印刷エンジンの動作と並行して前記第3の処理を行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下,図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し,本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず,特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0019】
図1は,本実施の形態における画像処理装置を有する画像形成装置の構成図である。画像形成装置であるプリンタ20は,通信回線を介してホストコンピュータ10に接続され,ホストコンピュータ10にインストールされているプリンタドライバ12から,描画コマンドを含む印刷データ17を供給される。この印刷データ17は,印刷すべき描画オブジェクトについての複数の描画コマンドに加えて,描画オブジェクトの重なり領域情報を有する。重なり領域情報については後に詳述する。
【0020】
プリンタ20は,画像処理装置であるコントローラユニット200と,画像処理装置200が生成した二値画像データにしたがって画像を印刷する印刷エンジン250とを有する。画像処理装置200は,ホストコンピュータ10から印刷データ17を受信するインターフェースIFと,CPU202と,印刷データに含まれる描画コマンドから二値画像データを生成する画像処理プログラムを格納するプログラムメモリ204と,画像処理に際して各種のデータを保存するRAM206と,印刷エンジンとのインターフェース212とを有する。
【0021】
一方,印刷エンジン250は,例えば電子写真方式の場合は,エンジンコントローラ252と,二値画像データに対応して露光光を生成する光源254と,光源からの露光により潜像が形成されトナーが付着される感光体ドラム256と,図示しないトナー画像の印刷媒体(用紙)への転写手段,定着手段などを有する。
【0022】
画像処理装置200内のメモリ206は,印刷データに含まれる重なり領域情報を保存する領域210と,描画オブジェクトのうち重なり領域と一致する領域の多値画像データを保存する中間コード列の領域208と,描画オブジェクトのうち重なり領域と一致しない領域の二値画像データを保存する中間コードバッファ領域212と,中間コードバッファ領域212に保存される二値画像データを展開するバンドバッファ領域214とを有する。中間コードバッファ領域212には,重なり領域と一致する領域の多値画像データをαブレンディング演算した後に二値化された二値画像データも保存される。これらについては,後で具体例にしたがって詳述する。
【0023】
図2は,印刷される画像の具体例を示す図である。印刷エンジン250の一回の動作で印刷可能な印刷プレーンに対応する1ページPG内に,4つの描画オブジェクトOB1〜OB4が形成される画像例である。そして,描画オブジェクトOB2とOB3とが部分的に重なっている。また,1ページPGの画像は,複数のバンド領域,図2では一例として3つのバンド領域BAND0〜2に分割されて処理される。
【0024】
プリンタなどの画像形成装置では,描画オブジェクトを主走査方向であるX方向で分割した多角形,具体的には台形(三角形を含む)に分割し,それら台形の単位で画像処理を行う。
【0025】
図3は,描画オブジェクトOB2を複数の多角形(台形)に分割した例を示す図である。描画オブジェクトOB2は,右に傾いた矩形ADEHの図形であるので,その頂点D,Hを通過するX軸方向で分割した3つの多角形(三角形と台形)OB21,22,23に分割して処理される。
【0026】
図2に戻り,描画オブジェクトOB2とOB3とは,領域CDEGで重なっている。したがって,描画オブジェクトOB2の処理単位であるオブジェクトOB22,OB23が,描画オブジェクトOB3と重なる領域を有し,これらはαブレンディング演算が必要になる。一方,描画オブジェクトOB1,OB4は,いずれのオブジェクトとも重なっていない。よって,これらの描画オブジェクトはαブレンディング演算の必要がない。
【0027】
いずれも描画オブジェクトOB1〜OB4は,それら描画オブジェクトの領域や形状を定義する描画オブジェクトデータとその画像オブジェクト内の階調値を定義する多値画像データとを有する描画コマンドにより形成される。この階調値を定義する多値画像データとは,モノクロプリンタであれば,黒の階調値データであり,カラープリンタであればRGBの3プレーンの階調値データである。例えば,階調数が256であれば多値画像データは8ビットデータとなる。
【0028】
図4は,本実施の形態における画像処理プログラムによる画像処理のフローチャート図である。図2に示した1ページの画像を形成する場合を例にして,図3の画像処理手順を以下にて説明する。この説明にあたり,図5,6のメモリ領域のデータ保存状態を示す図を参照する。図5,6には,右から,重なり領域情報のメモリ210と,中間コードバッファ212と,中間コード列のメモリ208とが示され,上から下方向が時間軸tに対応する。時間の経過に伴ってどのようなデータがそれぞれのメモリ領域に保存されるかが示されている。
【0029】
まず,画像処理装置は,複数の描画コマンドと描画オブジェクトが重なり合う領域の情報とを有する印刷データを受信する。描画コマンドには描画オブジェクトの領域,形状のデータと,多値画像データとが含まれる。また,重なり領域情報には,重なり領域データと重なり枚数データ(重なり領域に重なっている描画オブジェクト数を示すデータ)とが含まれる。
【0030】
画像処理は,図2に示したバンド領域を一つの単位として処理するので,重なり領域CDFGとDEFとが隣接するバンド領域にまたがっている場合は,それらをバンド領域毎に分割し,重なり領域のデータを再構築する(S10)。図2の例では,バンド領域にまたがっていないので分割はされない。画像処理装置は,この2つの重なり領域情報を,重なり領域リストとしてメモリ206内の重なり領域情報のメモリ領域210内に保存する。その結果,図5に示すとおり,重なり領域情報のメモリ210には,2つの重なり領域CDFG,DEFの重なり領域データと重なり枚数データNOとが,重なり領域リストとして格納される。画像処理中は,この重なり領域リストが適宜参照される。
【0031】
次に,画像処理装置は,印刷データに含まれる描画コマンドを解釈して中間コードを生成する(S12)。この中間コードは,ページ記述言語などの高級言語で記述された描画コマンドから変換された低級言語で記述され,印刷時の画像データの展開処理を容易にする。この段階では,中間コードは,図3で示した主走査方向のX軸方向で分割された多角形毎に分割して,更にバンド領域毎に分割して生成される。したがって,図2の図形の例では,描画オブジェクトOB1,OB21,OB22,OB23,OB3,OB4に対応する中間コードが生成される。ただし,一連の描画コマンドは印刷ページ単位でランダムに供給されるので,処理対象の描画コマンドについて中間コードに変換される。また,この段階では,中間コードは多値画像データのままである。
【0032】
仮に,描画コマンドが描画オブジェクトOB1,2,3,4の順番で供給され,その順番に画像処理されるものとする。したがって,画像処理装置は,最初の描画オブジェクトOB1に対する描画コマンドを,描画オブジェクトOB1の中間コードに変換し,重なり領域リスト210を参照して,その中間コードの多角形OB1が重なり領域CDFG,DEFと一致する領域を有するか否かをチェックする(S14)。多角形OB1はいずれの重なり領域とも重なっていないので(S14のNO),画像処理装置は,描画オブジェクトOB1について中間コードの多値画像データを二値化し,その二値画像データを有する中間コードを中間コードバッファ212内に保存する(S26)。この二値化処理は,AMスクリーンまたはFMスクリーンによりドット画像を形成するか否かの1ビットのデータに変換する処理である。
【0033】
次に,描画オブジェクトOB2に対する描画コマンドが処理される。画像処理装置は,描画コマンドを解釈して,3つに分割した分割オブジェクトOB21〜23について多値画像データの中間コードを生成する。そして,画像処理装置は,重なり領域リスト210を参照して,これらの中間コードの多角形OB21〜23が重なり領域CDFG,DEFと一致する領域を有するか否かをチェックする(S14)。多角形OB21はいずれの重なり領域とも重なっていないので(S14のNO),画像処理装置は,描画オブジェクトOB21について中間コードの多値画像データを二値化し,その二値画像データを有する中間コードを中間コードバッファ212内に保存する(S26)。
【0034】
しかし,多角形OB22は重なり領域CDFGと一致する領域を有するので(S14のYES),重なり領域情報のメモリ210から,重なり領域CDFGの重なり枚数NOを−1減じて(S16),その重なり枚数が0でない限りは(S18のNO),多角形OB22の中間コードを多値画像データのまま中間コード列のメモリ208に保存し,重なり領域リスト210内の重なり領域CDFGのデータに関連付ける(S22)。その結果,図5に示されるとおり,重なり領域情報のメモリ210内の重なり領域CDFGに,図中300に示すとおりオブジェクトOB22が関連付けされている。
【0035】
さらに,多角形OB23も重なり領域DEFと一致する領域を有するので(S14のYES),重なり領域情報のメモリ210から,重なり領域DEFの重なり枚数NOを−1減じてNO=1とし(S16),その重なり枚数が0でない限りは(S18のNO),多角形OB23の中間コードを多値画像データのまま中間コード列のメモリ208に保存し,重なり領域リスト210内の重なり領域DEFのデータに関連付ける(S22)。
【0036】
次に,画像処理装置は,描画オブジェクトOB3の描画コマンドを処理する。このオブジェクトOB3は,重なり領域CDFGともDEFとも一致する領域を有するので(S14のYES),それぞれの重なり枚数NOを−1減じる(S16)。その結果,2つの重なり領域の重なり枚数NOはいずれも0になる。すなわち,もうこれ以上重なり合う描画オブジェクトは存在しないことが判明する(S18のYES)。
【0037】
そこで,画像処理装置は,重なり枚数NOが0になった多角形データ(CDFG,DEF)の関連付け情報300,3001に基づいて,中間コード列メモリ208内に格納されている中間コードのオブジェクトOB22,OB23と,処理中の中間コードのオブジェクトOB3とで,重なった領域の多値画像データをαブレンディング演算を行う(S20)。その結果,重なり領域CDFGでは,オブジェクトOB22の一部とオブジェクトOB3の一部とでαブレンディング演算され,重なり領域DEFでは,オブジェクトON23の全部とオブジェクトOB3の一部とでαブレンディング演算がされる。そして,重なり領域情報のメモリ210から重なり枚数NOが0になった重なり領域のデータを除去する(S24,図6参照)。これ以降は,新たな描画コマンドについて描画オブジェクトが,重なり領域リスト内の重なり領域と一致するか否かのチェックが不要になるので,不必要なデータは除去するのが望ましい。
【0038】
そして,画像処理装置は,αブレンディング演算された中間コードの多値画像データを二値化して,二値画像データを有する中間コードとして,中間コードバッファ212内に保存する。そして,最後の描画コマンドは描画オブジェクトOB4に関するものであり,この描画オブジェクトOB4はいずれの重なり領域とも一致しないので(S14のNO),その多値画像データは二値化され二値画像データの中間コードとして,中間コードバッファ212内に保存する(S26)。
【0039】
その結果,全ての描画コマンドの処理が完了し(S28のYES),全ての描画コマンドから変換された中間コード(二値画像データを有する)が中間コードバッファ212内にそろった状態になる。最後に,画像処理装置は,中間コードバッファ212内の中間コードを,メモリ206内のバンドバッファ214内に展開し,印刷エンジンに出力する。具体的には,図2のバンド領域毎にバンド領域内の中間コードの二値画像データを,バンドバッファ214の対応するバンド領域内に展開する。そして,展開が終了したバンド領域の二値画像データを,印刷エンジンの動作に並行して出力する。つまり,画像処理装置によるバンドバッファへの二値画像データの展開と,印刷エンジンによる印刷動作とが並行して行われる。これにより,印刷時間を短縮することができる。
【0040】
上記の画像処理において,画像処理プログラム204は,メモリ206内の各領域208,210,212,214の容量を,必要最小限の領域に維持するように制御する。そして,図5,6の時間軸tの方向でみれば,中間コードに対応するオブジェクトOB1,OB21,OB4は,最初から二値画像データでメモリ内に保存され,処理中を除いて,多値画像データのままメモリ内に保存されることはない。重なり領域と一致する領域を有するオブジェクトOB22,OB23だけが多値画像データのまま保留状態にされて,中間コード列のメモリ208内に保存されるだけである。また,重なり領域と一致する領域を有するオブジェクトOB3は,処理中に多値画像データの中間コードとされるが,重なり枚数が0になっていたため即座に保留状態のオブジェクトOB22,OB23とαブレンディング演算され,二値画像データに変換されてメモリに保存される。
【0041】
以上のように,他のオブジェクトと重なり合うために後のαブレンディング演算が必要な最小限のオブジェクトについてのみ多値画像データのまま一時的にメモリに保存されるが,それいがいのオブジェクトは全て二値画像データとしてメモリに保存される。よって,全ての描画オブジェクトについて多値画像データで保持した後にαブレンディング演算する場合に比較して,メモリ容量を大幅に減らすことができる。しかも,αブレンディング演算は,多値画像データどうしの演算になるので,画素毎に最適な階調値を求めることができ,高画質を実現できる。
【0042】
上記の実施の形態において,中間コード単位の多角形オブジェクトOB22は,その一部が他のオブジェクトOB4と重なっているので,オブジェクトOB22を重なり領域CDFGとそれ以外の領域BCGHとに分割し,重なり領域CDFGの部分のみ多値画像データの中間コードとして中間コード列領域内に保留状態にし,重なっていない領域BCGHは二値化して二値画像データの中間コードとして中間コードバッファ212内に保存するようにしてもよい。
【0043】
究極的には,多値画像データのまま保留状態にする領域は,画素単位の領域にすることができる。それにより,更にメモリ容量を減らすことができる。画素単位で重なり領域を管理する場合は,画素単位で重なり領域情報のデータも管理する必要がある。画素単位で重なり領域の有無を判断することで,最小限の領域についてのみ及び画像処理工程の最小期間内のみ多値画像データを保存すれば良いことになり,よりメモリ容量を節約することができる。
【0044】
図7は,第2の実施の形態における画像処理装置の構成図である。この例では,プリンタ20がホストベースプリンタであり,ホストコンピュータ10内のプリンタドライバ12が,ホストコンピュータ内のメモリ13を利用して,二値画像データの中間コード18を生成し,プリンタ20に供給する。よって,ホストコンピュータ10内のメモリ13には,中間コード列のメモリ領域14と,重なり領域情報のメモリ領域15と,中間コードバッファ16とが確保され,プリンタドライバ12が,図4の工程S10ないしS28の処理を実行する。
【0045】
一方,プリンタ20の画像処理装置200は,ホストコンピュータ10から供給される中間コード18を中間コードバッファ212内に一旦保存し,印刷エンジンの動作に並行して,バンドバッファ214内に中間コードバッファ内の中間コードの二値画像データを展開する。したがって,図7の例では,プリンタドライバ12とプリンタ20内の画像処理装置200とで,本実施の形態の画像処理装置が構成されることになる。この場合も,ホストコンピュータ10内のメモリ13のメモリ容量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施の形態における画像処理装置を有する画像形成装置の構成図である。
【図2】印刷される画像の具体例を示す図である。
【図3】描画オブジェクトOB2を複数の多角形(台形)に分割した例を示す図である。
【図4】本実施の形態における画像処理プログラムによる画像処理のフローチャート図である。
【図5】メモリ領域のデータ保存状態を示す図を参照する。
【図6】メモリ領域のデータ保存状態を示す図を参照する。
【図7】第2の実施の形態における画像処理装置の構成図である。
【符号の説明】
【0047】
10:ホストコンピュータ 12:プリンタドライバ
20:画像形成装置,プリンタ 200:コントローラユニット,画像処理装置
206:メモリ 208:中間コード列のメモリ領域
210:重なり領域情報のメモリ領域 212:中間コードバッファ
214:バンドバッファ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の描画コマンドを有する印刷データを処理して画素毎の二値画像データを生成する画像処理装置において,
前記描画コマンドは描画オブジェクトデータとその描画オブジェクトの多値画像データとを有し,印刷データは描画オブジェクト間の重なり領域と重なり枚数のデータを含む重なり領域情報を有し,
更に,画像データを格納するメモリと,
前記描画コマンドを解釈して,前記描画オブジェクトのうち前記重なり領域と一致する領域は前記多値画像データで前記メモリに保存し,前記描画オブジェクトのうち前記重なり領域と一致しない領域は前記多値画像データを二値画像データに変換して前記メモリに保存する第1の処理と,前記重なり領域と一致する領域を有する全ての描画オブジェクトが処理される段階で当該重なり領域と一致する領域の多値画像データをαブレンディング演算し,演算結果を二値画像データに変換して前記メモリに保存する第2の処理と,前記メモリに保存している二値画像データを前記メモリのバッファ領域に展開する第3の処理とを行う画像処理ユニットとを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1において,
前記画像処理ユニットは,
前記描画コマンドの描画オブジェクトを複数の多角形に分解し,
前記第1の処理において,当該多角形が前記重なり領域と一致する場合は前記多角形の多値画像データで前記メモリに保存し,前記多角形が前記重なり領域と一致しない場合は前記多角形の二値画像データで前記メモリに保存し,
前記第2の処理において,前記重なり領域と一致する多角形の多値画像データをαブレンディング演算することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1において,
前記画像処理ユニットは,前記第1の処理と第2の処理で生成される二値画像データを,中間コードとして,前記メモリ内の中間コードバッファ領域に格納し,1ページ内の中間コードの生成が完了した後に,印刷エンジンの動作と並行して前記第3の処理を行うことを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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