説明

画像処理装置

【課題】照明条件の違いによる領域の見え方の変化を小さくすることができる画像処理装置を提供する。
【解決手段】事前に認識対象物を撮像したテンプレート画像を用いて、入力画像とのマッチング処理を行う画像処理装置1であって、入力画像の各画素位置でのエッジ方向及びエッジ強度に基づいて、入力画像をテンプレート画像と比較するための画像に変換する入力画像変換部4を備える。入力画像変換部4は、各画素位置でのエッジ方向に基づいて各画素位置での色味を決定する色味決定部21と、各画素位置でのエッジ強度に基づいて各画素位置での明るさを決定する明るさ率決定部22と、を含み、決定された色味及び明るさに基づいて各画素位置での画素値を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像処理装置として、画像を用いて対象物の識別を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の装置は、事前に識別対象物画像をテンプレート画像として記憶しておき、入力画像に含まれる識別対象物画像の画像情報(例えばエッジ方向、エッジ画素)とテンプレート画像の画像情報とに基づいてマッチング処理を行い、対象物を識別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−105649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の装置にあっては、識別対象物周辺の照明の状況が変化することにより認識精度が低下する場合がある。例えば、識別対象物周辺の照明の状況が変化した場合、識別対象画像のエッジ画素の認識状態が異なるものとなるため、様々な照明状況でのテンプレート画像を用意しなければ正確な識別を行うことができない。
【0005】
そこで、本発明はこのような技術課題を解決するためになされたものであって、照明条件の違いによる領域の見え方の変化を小さくすることができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る画像処理装置は、事前に認識対象物を撮像したテンプレート画像を用いて、入力画像とのマッチング処理を行う画像処理装置であって、前記入力画像の各画素位置でのエッジ方向及びエッジ強度に基づいて、前記入力画像を前記テンプレート画像と比較するための画像に変換する画像変換手段を備えることを特徴として構成される。
【0007】
本発明に係る画像処理装置では、画像変換手段により、入力画像の各画素位置でのエッジ方向及びエッジ強度に基づいて、入力画像がテンプレート画像と比較するための画像に変換される。エッジ方向及びエッジ強度を用いることで、入力画像を照明の変動に影響されない類似したパターンの画像に変換することができる。このように、照明条件の違いによる領域の見え方の変化を小さくすることができるので、照明の状況が変動する場合であっても識別対象物を識別することが可能となる。さらに、テンプレート画像を照明の状況に応じて複数記憶する必要がないので、リソースの効率化を図ることができる。
【0008】
ここで、前記画像変換手段は、各画素位置でのエッジ方向に基づいて各画素位置での色味を決定する色味決定手段と、各画素位置でのエッジ強度に基づいて各画素位置での明るさを決定する明るさ決定手段と、を含み、決定された色味及び明るさに基づいて各画素位置での画素値を算出することが好適である。このように構成することで、入力画像の色味及び明るさを変更して、テンプレート画像と比較するための画像に変換することができる。
【0009】
また、前記画像変換手段は、所定の画素位置でのエッジ方向を仮定し、仮定されたエッジ方向に伸び当該画素位置を通る線分で当該画素位置を含む所定領域を分割し、分割された領域ごとの輝度総和を比較してエッジ方向を決定することが好適である。このように構成することで、所定領域ごとの輝度総和を用いてエッジ方向を検証することができるので、予測結果の確からしさを検証してエッジ方向を決定することが可能となる。
【0010】
また、前記画像変換手段は、分割された前記領域ごとの輝度総和に基づいて当該画素位置でのエッジ強度を算出することが好適である。このように構成することで、エッジ方向を算出する際に生成したデータを用いてエッジ強度を算出することができるので、処理の効率化を図ることが可能となる。
【0011】
さらに、前記画像変換手段は、分割された前記領域ごとの輝度総和の差分が所定値より小さい場合には、前記所定領域を拡大してエッジ方向を再度決定することが好適である。このように構成することで、演算対象となる画像領域の状態に合わせてエッジ方向を再度決定することができるので、より正確なエッジ方向を決定することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、照明条件の違いによる領域の見え方の変化を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る画像処理装置を備える車両の構成概要を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る画像処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】第1実施形態に係る画像処理装置の動作を説明する概要図である。
【図4】第2実施形態に係る画像処理装置の構成を説明するブロック図である。
【図5】第2実施形態に係る画像処理装置で用いるエッジ方向別領域対を説明する概要図である。
【図6】第2実施形態に係る画像処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】第3実施形態に係る画像処理装置の構成を説明するブロック図である。
【図8】第3実施形態に係る画像処理装置の動作を示すフローチャートである。要図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
(第1実施形態)
本実施形態に係る画像処理装置は、例えば走行支援機能や運転支援機能を有する車両に好適に採用されるものである。
【0016】
最初に、本実施形態に係る画像処理装置を備える車両の概要から説明する。図1は、本実施形態に係る画像処理装置1を備える車両の概要図である。図1に示す車両3は、画像センサ30及びECU(Electronic Control Unit)2を備えている。ECUは、電子制御する自動車デバイスのコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random AccessMemory)等のメモリ、及び入出力インターフェイスなどを備えて構成されている。
【0017】
画像センサ30は、画像を撮像するセンサである。画像センサ30として、例えばCCDカメラ等が用いられる。また、画像センサ30は、撮像した画像情報をECU2へ出力する機能を有している。
【0018】
ECU2は、画像入力部20、色味決定部21、明るさ率決定部22、画素決定部23、マッチング処理部24及び色変換テーブル25を備えている。画像入力部20、色味決定部21、明るさ率決定部22、画素決定部23を備えて入力画像変換部(画像変換手段)4が構成され、入力画像変換部4及びマッチング処理部24を備えて画像処理装置1が構成される。
【0019】
画像入力部20は、識別処理の対象となる入力画像を入力する機能を有している。画像入力部20は、例えば、画像センサ30と接続されており、画像センサ30によって撮像された画像を入力画像として入力する。また、画像入力部20は、入力画像の各画素位置でのエッジ強度及びエッジ方向を算出する機能を有している。例えば、画像入力部20は、画像センサ30から入力した入力画像に対してソーベル(sobel)フィルタをかけて各画素位置でのエッジ強度を算出する。エッジ強度として、例えば水平方向のエッジ強度と垂直方向のエッジ強度を算出する。また、例えば、画像入力部20は、ソーベルフィルタにて算出された水平方向のエッジ強度と垂直方向のエッジ強度を用いてエッジ方向を算出する。ここで、水平方向のエッジ強度をD、水平方向のエッジ強度をDとすると所定の画素位置rでのエッジ方向θ[deg]は以下の式1で表すことができる。
【数1】


画像入力部20は、上記式1を用いて各画素位置でのエッジ方向を算出する。なお、エッジ強度及びエッジ方向の算出方法は上記に限られるものではなく、公知の手法を用いて算出してもよい。
【0020】
画像入力部20は、例えば、各画素位置でのエッジ強度を各画素位置の画素値としたエッジ強度画像、及び各画素位置でのエッジ方向を各画素位置の画素値としたエッジ方向画像を生成し、エッジ強度画像を明るさ率決定部22へ、エッジ方向画像を色味決定部21へ出力する機能を有している。
【0021】
色味決定部21は、各画素位置での色味を決定する機能を有している。色味は、例えば赤色R、緑色G、青色Bの3色で定義される。色味決定部21は、例えば色変換テーブル25を参照可能に構成されている。色変換テーブル25は、エッジ方向と色とを関連付けしたテーブルであって、例えばECU2の記録部に格納されている。色変換テーブル25には、近いエッジ方向同士は近い色、異なるエッジ方向同士は遠い色となるように、エッジ方向ごとに異なる色が登録されている。色味決定部21は、例えば色変換テーブル25を参照し、画像入力部20が出力したエッジ方向画像に基づいて、各画素位置での色味を決定する。あるいは、色味決定部21は、画像入力部20が出力したエッジ方向画像に基づいて、例えば以下の式2のように所定の画素位置rでの色味(R,G,B)を決定してもよい。
【数2】


色味決定部21は、決定された各画素位置での色味(R,G,B)を画素決定部23へ出力する機能を有している。
【0022】
明るさ率決定部22は、各画素位置での明るさを決定する機能を有している。明るさ率決定部22は、例えば、明るさ率を用いて各画素位置での明るさを設定する。明るさ率とは、各画素位置でのエッジ強度を1(エッジ強度が強い場合)〜0(エッジ強度が弱い場合)に正規化した値である。例えば、入力画像における原理的に算出可能なエッジ強度の最大値をHMAX、所定の画素位置rでのエッジ強度をDとすると、所定の画素位置rでの明るさ率Mは以下の式3で表される。
【数3】


明るさ率決定部22は、上記の式3及び画像入力部20が出力したエッジ強度画像に基づいて、各画素位置での明るさ率Mを決定する。そして、明るさ率決定部22は、決定された各画素位置での明るさ率Mを画素決定部23へ出力する機能を有している。
【0023】
画素決定部23は、各画素位置での画素値を決定する機能を有している。画素決定部23は、色味決定部21が出力した各画素位置での色味(R,G,B)、及び明るさ率決定部22が出力した各画素位置での明るさ率Mに基づいて各画素位置での画素値を決定する。例えば、以下の式4のように、色味と明るさ率との積算することにより所定の画素位置rでの画素値(R´,G´,B´)を決定する。
【数4】


画素決定部23は、上記の式4を用いて決定された各画素位置での画素値(R´,G´,B´)をマッチング処理部24へ出力する。このように、入力画像変換部4により、入力画像が変換される。
【0024】
マッチング処理部24は、事前に認識対象物を撮像したテンプレート画像を用いて、入力画像変換部4により変換された画像とのマッチング処理を行う。
【0025】
次に、本実施形態に係る画像処理装置1の動作について説明する。図2は、本実施形態に係る画像処理装置1の動作を示すフローチャートである。図2に示す制御処理は、例えばイグニッションオンされたタイミング又は画像センサ30の電源がONされたタイミングから所定の間隔で繰り返し実行される。
【0026】
図2に示す制御処理が開始されると、最初に画像入力部20が入力画像を取得し又は読み込みを行う(S10)。そして、画像入力部20が、例えばソーベルフィルタを用いて入力画像の各画素位置のエッジ強度Dを算出する(S12)。その後、画像入力部20が、S12の処理で算出されたエッジ強度D及び式1を用いて、入力画像の各画素位置のエッジ方向θを算出する(S14)。その後、明るさ率決定部22が、S12の処理で算出されたエッジ強度D及び式3を用いて、各画素位置の明るさ率Mを算出する(S16)。その後、色味決定部21が、S14の処理で算出された各画素位置のエッジ方向θ及び式2を用いて、各画素位置での色味(R,G,B)を算出する(S18)。そして、画素決定部23が、S16の処理で算出された各画素位置での明るさ率M、S16の処理で算出された各画素位置での色味(R,G,B)、及び式4を用いて、各画素位置での画素値(R´,G´,B´)を決定する(S20)。S20の処理が終了すると、図2に示す制御処理を終了する。
【0027】
図2に示す制御処理を実行することにより、入力画像が、エッジ画素判定をされることなく、エッジ強度及びエッジ方向を同時に考慮した画像に変換される。図3は、画像処理装置1により処理された画像の一例である。図3(A)は照明状況の異なる車両が撮像されている複数の入力画像であり、図3(B)は変換後の複数の画像である。すなわち、図3では、左右の対応する画像が変換前後を示すように並べて示されている。図3に示すように、変換された画像は、照明の状況に関らず、エッジが強い画素ではエッジ方向が見て取れるとともに、エッジが弱い部分ではエッジ方向に関らずエッジがないことが見て取れる。すなわち照明の影響に関らず類似したパターンの画像に変換されているといえる。このように、図2に示す制御処理を実行することにより、形状の類似性判定に必要な上記性質を持った画像を生成することができる。このため、照明変動の影響により、エッジ画素であったはずの画素を認識することができなかったり、見間違いが生じたりという状況を回避することが可能となる。
【0028】
以上、第1実施形態に係る画像処理装置1によれば、入力画像変換部4により、入力画像の各画素位置でのエッジ方向θ及びエッジ強度Dに基づいて、入力画像がテンプレート画像と比較するための画像に変換される。エッジ方向θ及びエッジ強度Dを用いることで、入力画像を照明の変動に影響されない類似したパターンの画像に変換することができる。すなわち、照明条件の違いによる領域の見え方の変化を小さくすることができる。このため、照明の状況が変動する場合であっても識別対象物を識別することが可能となる。さらに、テンプレート画像を照明の状況に応じて複数記憶する必要がないので、リソースの効率化を図ることができる。
【0029】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る画像処理装置は、第1実施形態に係る画像処理装置1とほぼ同様に構成されており、画像入力部20の機能の一部が相違する。よって、第2実施形態では第1実施形態との相違点を中心に説明し、重複する説明は省略する。
【0030】
第2実施形態に係る画像処理装置の構成は、第1実施形態に係る画像処理装置1とほぼ同様であり、画像入力部20の構成が一部相違する。図4は、画像入力部20の構成を示すブロック図である。図4に示すように、画像入力部20は、エッジ方向仮定部201、輝度総和比算出部202、エッジ情報算出部203及び領域対記憶部204を備えている。
【0031】
エッジ方向仮定部201は、各画素位置でのエッジ方向を仮定する機能を有している。例えば、エッジ方向仮定部201は、取りうるエッジ方向が予測できる場合、可能性の高いエッジ方向が存在する場合には、それらの方向をエッジ方向として仮定する。あるいは、計測したいエッジ方向の分解能がある場合には、それらの方向間隔でエッジ方向を仮定する。また、エッジ方向仮定部201は、仮定したエッジ方向を輝度総和比算出部202へ出力する機能を有している。
【0032】
輝度総和比算出部202は、エッジ方向仮定部201により仮定されたエッジ方向の確からしさを算出する機能を有している。輝度総和比算出部202は、仮定されたエッジ方向に伸び当該画素位置を通る線分で当該画素位置を含む所定領域を分割し、分割された領域ごとの輝度総和を算出して比を求め、当該比を確からしさとする機能を有している。なお、所定領域は適宜設定可能である。上記機能を発揮するため、輝度総和比算出部202は、例えば領域対記憶部204を参照可能に構成されている。領域対記憶部204は、エッジ方向と所定領域である領域対とを関連付けした情報が記憶されたものである。ここで領域対とは、例えば図5(A)に示すように、所定の画素位置(注目画素G1)を通りエッジ方向に伸びる線分Hを対称線とする矩形領域対Sである。各矩形領域対として、各矩形領域S1,S2の対称線である線分Hに平行な辺の方が、各矩形領域S1,S2の対称線である線分Hに垂直な辺よりも長い領域としてもよい。また、図5(B)に示すように、領域対はエッジ方向ごとに複数用意される。領域対記憶部204は、例えば、各矩形領域対の位置(注目画素を基準とした位置)及び形状を記憶している。
【0033】
輝度総和比算出部202は、所定の画素位置での仮定されたエッジ方向を検証する場合には、当該画素位置を注目画素とし、仮定されたエッジ方向を用いて領域対記憶部204を参照して領域対を特定し、2つの領域からなる領域対の領域ごとの輝度総和を算出して比を求め、当該比率を当該画素位置の仮定されたエッジ方向の信頼度とする。あるいは、輝度総和比算出部202は、2つの領域からなる領域対の領域ごとの平均輝度値を算出し、大きい方の平均輝度値に対する小さい方の平均輝度値の比率(輝度比率)を求め、当該比率を当該画素位置の仮定されたエッジ方向の信頼度とする。また、輝度総和比算出部202は、仮定されたエッジ方向の信頼度をエッジ情報算出部203へ出力する機能を有している。
【0034】
エッジ情報算出部203は、各画素位置での仮定されたエッジ方向ごとの信頼度を用いてエッジ方向を決定する機能を有している。エッジ情報算出部203は、例えば信頼度が最大値となるエッジ方向を当該画素位置でのエッジ方向とする。また、エッジ情報算出部203は、輝度総和比算出部202から取得した輝度比率のうちの最大値を当該画素位置でのエッジ強度とする機能を有している。なお、エッジ情報算出部203は、信頼度を用いたエッジ方向決定機能、輝度比率を用いたエッジ強度決定機能の何れか一方を備える構成とされていてもよい。
【0035】
画像入力部20のその他の機能は、第1実施形態に係る画像処理装置1の画像入力部20と同様である。
【0036】
次に、本実施形態に係る画像処理装置の画像入力部20の動作について説明する。図6は、本実施形態に係る画像処理装置の画像入力部20の動作を示すフローチャートである。図6に示す制御処理は、例えばイグニッションオンされたタイミング又は画像センサ30の電源がONされたタイミングから所定の間隔で繰り返し実行される。
【0037】
図6に示す制御処理が開始されると、最初にエッジ方向仮定部201が入力画像を取得し又は読み込みを行う(S30)。そして、エッジ方向仮定部201が、入力画像の各画素位置でのエッジ方向を仮定する(S32)。そして、輝度総和比算出部202が、領域対記憶部204を参照し、S32の処理で仮定された各エッジ方向に対応した「注目画素と領域対の位置」及び「領域形状」を読み出す(S34)。そして、輝度総和比算出部202が、S34の処理で読み出された「注目画素と領域対の位置」及び「領域形状」に基づいて、各画素位置における2つの領域に含まれる画素の輝度値を領域ごとに総和する集計を行い、領域ごとの平均輝度値を算出する(S36)。そして、輝度総和比算出部202が、S36の処理で算出された平均輝度値のうち、大きい方の平均輝度値に対する小さい方の平均輝度値の比(輝度比率)を画素位置ごとに算出する(S38)。そして、エッジ情報算出部203が、各画素位置において仮定されたエッジ方向ごとの輝度比率のうち最大となる輝度比率を選択してエッジ強度とするとともに、最大輝度比率となるエッジ方向を当該画素位置でのエッジ方向として出力する(S40)。S40の処理が終了すると、図6に示す制御処理を終了する。
【0038】
図6に示す制御処理を実行することにより、エッジ強度が輝度比率を用いて算出される。このため、照明条件が暗い場合であっても強度差を検知することができる。また、図6に示す制御処理を実行することにより、輝度比率がそのままエッジ強度とされる。このため、算出したエッジ強度を第1実施形態で説明した明るさ率としてそのまま利用することができる。したがって、処理の効率化を図ることが可能となる。また、図6に示す制御処理を実行することにより、エッジ方向ごとに領域が設定される。このため、エッジ方向が正しい場合には大きな反応が得られるように領域を設定することができる。したがって、複雑な背景領域を撮像した画像中に識別対象が存在する場合等、見分けのつきにくいエッジ方向を正確に検知することが可能となる。また、図6に示す制御処理を実行することにより、各領域の平均値を用いてエッジ強度及びエッジ方向が算出される。このため、ノイズの影響による入力画像上での見え方の違いを軽減することができる。さらに、図6に示す制御処理では、矩形領域を用いて輝度比率が算出される。矩形領域を用いることで、短い長さの直線で形状が近似しやすい物体(例えば車)の形状をくっきりと描写することができる。このため、検出精度を向上させることができる。
【0039】
以上、第2実施形態に係る画像処理装置によれば、第1実施形態に係る画像処理装置1と同様の効果を奏するとともに、領域対ごとの輝度総和を用いてエッジ方向を検証することができるので、予測結果の確からしさを検証してエッジ方向を決定することが可能となる。このため、エッジ方向の検出精度を向上させることができる。
【0040】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る画像処理装置は、第1,2実施形態に係る画像処理装置とほぼ同様に構成されており、画像入力部20の機能の一部が相違する。よって、第3実施形態では第1,2実施形態との相違点を中心に説明し、重複する説明は省略する。
【0041】
第3実施形態に係る画像処理装置の構成は、第1実施形態に係る画像処理装置1とほぼ同様であり、画像入力部20の構成が一部相違する。図7は、画像入力部20の構成を示すブロック図である。図7に示すように、画像入力部20は、第2実施形態に係る画像処理装置の画像入力部20とほぼ同様であり、再計算判定部205を備える点が相違する。
【0042】
エッジ方向仮定部201、輝度総和比算出部202、エッジ情報算出部203及び領域対記憶部204は第2実施形態とほぼ同様の機能を有しており、各画素位置でのエッジ方向及びエッジ強度の算出を所定の領域対を用いて行う。
【0043】
再計算判定部205は、エッジ情報算出部203により生成されたエッジ方向画像及びエッジ強度画像を取得し、エッジ方向画像及びエッジ強度画像上に、当該エッジ方向及びエッジ強度を生成する際に用いた所定の領域対よりも大きな領域対を設定する機能を有している。そして、再計算判定部205は、設定した大きな領域対内の各画素位置のエッジ方向及びエッジ強度を算出し、エッジ方向ごとにエッジ強度の総和を集計する機能を有している。そして、再計算判定部205は、エッジ強度の総和が最大となるエッジ強度総和最大値に対する所定のエッジ方向のエッジ強度総和の比率を算出する機能を有している。そして、再計算判定部205は、算出された比率が所定値(閾値)を超える場合には、より大きな領域対の輝度情報に基づいてエッジ方向を算出し直すように判定する機能を有している。この所定値は、要求される性能に応じて適宜設定可能である。また、再計算判定部205は、再計算の指示を輝度総和比算出部202及びエッジ情報算出部203へ出力する機能を有している。
【0044】
輝度総和比算出部202及びエッジ情報算出部203は、再計算の指示を受けた場合、より大きな領域対を再度選択してエッジ方向及びエッジ強度の再計算を行う。輝度総和比算出部202及びエッジ情報算出部203のその他の機能は、第2実施形態と同様である。
【0045】
次に、本実施形態に係る画像処理装置の画像入力部20の動作について説明する。図8は、本実施形態に係る画像処理装置の画像入力部20の動作を示すフローチャートである。図8に示す制御処理は、例えばイグニッションオンされたタイミング又は画像センサ30の電源がONされたタイミングから所定の間隔で繰り返し実行される。
【0046】
図8に示す制御処理が開始されると、最初にエッジ方向仮定部201が入力画像を取得し又は読み込みを行う(S50)。そして、エッジ方向仮定部201、輝度総和比算出部202、エッジ情報算出部203及び領域対記憶部204が協働して、小さい領域内の輝度情報に基づいて、エッジ方向・エッジ強度を算出する(S52)。なお、ここでは公知のソーベルフィルタを用いてエッジ方向・エッジ強度を算出してもよい。次に、再計算判定部205が、S52の処理で算出したエッジ方向画像及びエッジ強度画像上の対応する位置同士に、S52の処理で処理対象とした所定領域よりもサイズを大きくした領域対を設定する(S54)。そして、再計算判定部205が、設定された領域対に含まれる各画素位置において、エッジ方向ごとにエッジ強度の総和を集計する(S56)。そして、再計算判定部205が、S56の処理で集計されたエッジ強度の総和の最大値を特定し、エッジ強度総和最大値に対するそれ以外のエッジ強度総和の比率を算出する(S58)。そして、再計算判定部205は、S58の処理で算出された比率が所定値を超える場合には、より大きな領域を設定してエッジ方向・エッジ強度を算出するように再計算の指示を出力する(S60)。この場合、エッジ方向仮定部201、輝度総和比算出部202、エッジ情報算出部203及び領域対記憶部204が再度協働してエッジ方向・エッジ強度を算出する。一方、再計算判定部205は、S58の処理で算出された比率が所定値を超えない場合には再計算の指示を行わない(S60)。従って、S52の処理で算出されたエッジ方向・エッジ強度が採用される。S60の処理が終了すると、図8に示す制御処理を終了する。
【0047】
図8に示す制御処理を実行することにより、エッジ方向及びエッジ強度を算出した所定の領域よりも大きな領域を用いて算出済みのエッジ方向及びエッジ強度の信頼性が検証される。これにより、例えば、最初の領域内に特定の方向のエッジ及びノイズしかない場合には、領域をより大きく設定して再計算させることができるので、安定してエッジ方向を算出することが可能となる。また、領域内にさまざまな方向のエッジが存在し、エッジ方向を誤って仮定もしくは決定した場合であっても正しいエッジ方向に再計算することができる。このため、画像領域の状態にあわせて達成可能な計測性能を実現することが可能となる。
【0048】
以上、第3実施形態に係る画像処理装置によれば、第1,2実施形態に係る画像処理装置と同様の効果を奏するとともに、演算対象となる画像領域の状態に合わせてエッジ方向を再度決定することができるので、より正確なエッジ方向を決定することが可能となる。
【0049】
なお、上述した実施形態は本発明に係る画像処理装置の一例を示すものである。本発明に係る画像処理装置は、各実施形態に係る画像処理装置に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、各実施形態に係る画像処理装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0050】
例えば、上述した第1実施形態では、図2に示すように明るさ率決定処理(S16)のあとに色味決定処理(S18)を行う例を説明したが、色味決定処理のあとに明るさ率決定処理を実行してもよい。
【0051】
また、上述した第3実施形態では、第2実施形態で求めたエッジ方向及びエッジ強度を再計算する例を説明したが、これに限られるものではない。例えば、公知のソーベルフィルタを用いて所定領域のエッジ方向及びエッジ強度を算出し、再計算するか否か判定し、再計算の必要がある場合には、より大きな所定領域において公知のソーベルフィルタを用いてエッジ方向及びエッジ強度を算出するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…画像処理装置、2…ECU、4…入力画像変換部(画像変換手段)、20…画像入力部、21…色味決定部、22…明るさ率決定部、23…画素決定部、24…マッチング処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
事前に認識対象物を撮像したテンプレート画像を用いて、入力画像とのマッチング処理を行う画像処理装置であって、
前記入力画像の各画素位置でのエッジ方向及びエッジ強度に基づいて、前記入力画像を前記テンプレート画像と比較するための画像に変換する画像変換手段を備えること、
を特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画像変換手段は、
各画素位置でのエッジ方向に基づいて各画素位置での色味を決定する色味決定手段と、
各画素位置でのエッジ強度に基づいて各画素位置での明るさを決定する明るさ決定手段と、
を含み、
決定された色味及び明るさに基づいて各画素位置での画素値を算出する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像変換手段は、所定の画素位置でのエッジ方向を仮定し、仮定されたエッジ方向に伸び当該画素位置を通る線分で当該画素位置を含む所定領域を分割し、分割された領域ごとの輝度総和を比較してエッジ方向を決定する請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像変換手段は、分割された前記領域ごとの輝度総和に基づいて当該画素位置でのエッジ強度を算出する請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画像変換手段は、分割された前記領域ごとの輝度総和の差分が所定値より小さい場合には、前記所定領域を拡大してエッジ方向を再度決定する請求項3又は4に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−164991(P2011−164991A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27916(P2010−27916)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】