説明

画像形成システム

【課題】全てのページに可変データが含まれる場合に、高粘弾性マーキング材料をデジタル方式で印刷する。
【解決手段】可調整抵抗材料を含む画像受容構造と、可調整抵抗材料をパターン状にプログラムすべく画像受容構造にエネルギービームを放射するエネルギー源と、を含む画像形成システムにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成システムに関し、特に、潜在的な抵抗層を用いてマーキング材料を転写する画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷技術には、印刷される全てのページに可変のテキストと画像とを含めることが可能なデジタル方式と、単一画像の大量複製を可能とするマスタープレートベース方式の2つの方式がある。デジタル印刷技術の一般的な例として、インクジェット、電子写真(EP)及び熱転写が挙げられる。マスターベース複製技術の一般的な例としてオフセットリソグラフィ、フレキソ印刷及びグラビアが挙げられる。
【0003】
乾式オフセット技術では、一般にシリコーンと呼ばれるパターン化されたポリジメチルシロキサン(PDMS)層がインクの転写阻止に利用される。ニップ(NIP)の高速剪断力の下では、インク内の粘弾性凝集力がシリコーンインタフェースにおいて表面粘着力より大きくなり、インクがシリンダの非画像部から排除される。非シリコーン領域では、接着力がインクの内的凝集力を上回り、インク被膜が分割され画像形成領域にインクの層を残す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6725777号
【特許文献2】米国特許公開第2003/0156178号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、全てのページに可変データが含まれる場合に、オフセットインクや乾式オフセットインクなどの高粘弾性マーキング材料(10,000〜1,000,000cpsの動粘性率を有するマーキング材料)をデジタル方式で印刷することは極めて困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様は、
可調整抵抗材料を含む画像受容構造と、
前記可調整抵抗材料をパターン状にプログラムすべく前記画像受容構造にエネルギービームを放射するエネルギー源と、
を含む画像形成システム、
を提供する。
【0007】
第1の態様において、
前記画像受容構造は複数の電極を含み、
前記可調整抵抗材料は前記電極に電気接続されてもよい。
【0008】
第1の態様のおいて、
前記画像受容構造は、
導電性基板と、
前記導電性基板上に配置される絶縁材料と、
前記絶縁材料上に配置される電極と、
を含み、
前記可調整抵抗材料は前記導電性基板と前記電極の両方に電気接続されてもよい。
【0009】
第1の態様の画像形成システムは、
導電性基板と、
前記導電性基板上に配置される絶縁材料と、
複数の可調整抵抗セルと、
を更に含み、
前記各可調整抵抗セルは、
前記絶縁材料における開口部と、
前記開口部の縁端からオフセットされた縁端を有する導電層と、
を有し、
前記導電層の前記縁端は、前記開口部の前記縁端から略等距離にあると共に、前記可調整抵抗材料は、前記導電層の前記縁端と前記開口部の前記縁端の間に配置されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態に従った可調整抵抗材料を有する画像形成システムを示す図である。
【図2】図1の可調整抵抗材料への接続の例を示すブロック図である。
【図3】一実施形態に従った画像受容構造上の電極配置を示す図である。
【図4】図3の画像受容構造の断面図である。
【図5】別の実施形態に従った画像受容構造上の電極配置を示す図である。
【図6】図5の画像受容構造の断面図である。
【図7】図6の画像受容構造上の可調整抵抗セルの例を示す平面図である。
【図8】一実施形態に従ったニップの断面図である。
【図9】図8のマーキング材料における熱放散を示す等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
通常、乾式オフセットインクはシリコーンに付着しないが、使用に向けた温度範囲を上回る温度に加熱すれば、乾式オフセットインクは容易にシリコーン層に付着する。場合によっては、約40度昇温させるだけで、乾式インクがシリコーン上に全く転写・被覆されていない状態から、シリコーン表面を完全に被覆した状態へ変化させることできる。乾式オフセットシステムが温度を数度以内に制御しなければならない理由の一つに、摩擦に関連した加熱によりしばしばプレートの調色を生じうる効果を克服することが挙げられる。用途によってはこの効果は不都合であるが、マーキング材料をデジタル方式で転写する際には有利に利用できる。更に、約40度という低温によりマーキング材料を変化させるために必要なエネルギーは、マーキング材料の相変化を誘発するために必要なエネルギーよりも小さくてすむ。
【0012】
一実施形態において、潜在的な電気的抵抗層(latent electrical resistive layer)を画像受容構造中に形成することができる。この電気抵抗層は、光学的又は電気的に加熱可能であり、高インピーダンス又は低インピーダンスな電気的状態から変形可能である。通常、相変化材料として知られているこのような材料の1つのクラスは、融点が低く結晶速度が速いGe2Sb2Te5などの2成分、3成分又は4成分の多様なカルコゲニド合金からなる。このような合金はDVDやR/W CD−ROMに使用できる。このような層の厚みはわずか数百オングストロームであることから、これらの層は、わずか1mW〜10mWの範囲で小電力半導体レーザによりアモルファス状態と結晶状態との間で繰り返し切り替えることが可能である。比較において、この電力は、熱転写印刷技術においてマーキング材料を直接加熱するのに必要な電力と比べてずっと少ない。いったん潜在的な抵抗性画像(latent resistive image)が形成されれば、一定の電圧を画像を抵抗層全体に印加し、像様熱パターンを供給することができる。電圧印加は列ベースの加熱に限定されず、高速の高電流電子ドライバを必要としない。
【0013】
一実施形態は、オフセットインクの各種湿し水パターニング、乾式オフセットインクの各種サーマルタック転写印刷、トナーのパターン状タックなど、高粘性マーキング材料を使用する各種新規な印刷概念、及び各種フロントロードインクのサーマルシューティング、又は既存の熱転写技術を利用した更に迅速な印刷方法に適用可能である。
【0014】
図1は、一実施形態に従った可調整抵抗材料を有する画像形成システム8を示す図である。この実施形態では、画像受容構造10は可調整抵抗材料12を含む。エネルギー源16は、可調整抵抗材料12をパターン状にプログラムするため画像受容構造10に対しエネルギービーム18を放射すべく構成されている。電源23は、可調整抵抗材料12に電流を供給すべく構成されている。
【0015】
一実施形態において、画像形成システム8は、ドナー構造22、画像様にマーキング材料を受け取る画像受容構造10及びエネルギー源16を含む。画像受容構造10は、マーキング材料層の画像がまず形成され、次いで当該画像が基板28に転写される表面を有する構造として定義される。画像受容構造10は、支持基板9上に付着される可調整抵抗材料12を形成する材料を含むことが可能である。図1に示される実施形態では、この支持基板9は透明な中空ドラムを含む。
【0016】
画像受容構造10は多層表面であってもよい。画像受容構造10は外側にマーキング材料受容層13を含むことが可能である。外層13は、マーキング材料の粘性又はタックが温度の画像様変化により十分に変更された際に、マーキング材料が外層13に付着することを選択的に可能とする材料から作られる。上述の如く、一実施形態において、この外層13は、乾式オフセットインクが加熱された際に外層13への選択的な転写を可能とするシリコーンなどのシロキサンからなってもよい。別の実施形態では、外層13はポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、側鎖液晶ポリマー、又はエネルギーの付与により表面粘性及び動的湿潤特性を変化させることのできる他の材料から作製可能である。
【0017】
一実施形態において、外層13は可調整抵抗材料12の上に配置される。但し、可調整抵抗材料12を構成する機能材料は外層13に組み込まれていてもよい。例えば、可調整抵抗材料12は、ナノ粒子材料が外層13の外表面の表面湿潤特性を大幅に変化させるものでなければ、外層13にナノ粒子材料を分散させることによって形成できる。この配置の下では、可調整抵抗材料12及び画像受容構造10は、1層の被覆材料において実現できる。
【0018】
ドナー構造22はマーキング材料の略一様な層を受容すべく構成される。形成ローラ、アニロックスローラ、ドクターブレードなどは全てドナー構造22上にマーキング材料を形成すべく利用できる。この実施形態では、マーキング材料の略一様な層が望ましい。従って、マーキング材料のこのような層を形成するに当たり任意の成形、調節などが利用できる。その結果、ドナー構造22の移動に伴ってマーキング材料がニップ11に入る際、マーキング材料の略一様な層がニップ11に入る。
【0019】
上述のように、粘弾性乾式オフセットインクはマーキング材料として利用できる。但し、マーキング材料はインクに制限されない。マーキング材料は、可変の内部凝集性を有する任意の材料とすることができる。特に、一定量の熱が付与されると内部凝集性が低減する任意の材料をマーキング材料として利用できる。例えば、マーキング材料は高粘弾性ゲル材料、粘弾性ワックスベース材料、低融点トナー、継ぎ目に沿ったボックスのラミネート又は接着に使用されるようなホットメルト、あるいは他の非線形性の高い粘弾性マーキング材料を含むことができる。特に、ホットメルト接着剤の継ぎ目における可変データのパターニングは、ベクトル走査接着剤ノズルベースシステムと比べてはるかに高い処理能力を可能としうる、興味深い用途である。
【0020】
電源23は可調整抵抗材料へ電流を供給可能な任意の各種回路とすることができる。例えば、電源は、交流(AC)電源、直流(DC)電源、交換電源、線形電源又はこれらの電源の組み合わせとすることができる。電源23は、可調整抵抗材料の全てに電力を供給可能であるが、必ずしもその必要はない。以下に更に詳細に記載されるように、電源は、全ての可調整抵抗材料よりも少ない数の可調整抵抗材料に一度に電流を供給すべく構成することができる。
【0021】
一実施形態において、電源23は電気誘導技術により可調整抵抗材料に電力を供給すべく構成することができる。例えば、高周波誘導コイル、一連のコイルなどを、可調整抵抗材料中の電流を誘導するために使用できる。電源23は可調整抵抗材料12中の電流を誘導すべく配置されるこのようなコイルから形成できる。
【0022】
本開示において使用されるように、エネルギー源16は、熱エネルギー、マイクロ波エネルギー、光学エネルギーなどを放射可能な任意のデバイス、装置、システムなどである。例えば、エネルギー源16は発熱体、メーザ、レーザなどを含んでいてもよい。別の実施形態において、個別にアドレスされた半導体レーザの多数の列を有するラスタ光学走査(ROS)システムは、データリッピング速度を向上させるためのエネルギー源として使用できる。一実施形態において、エネルギー源16は画像受容構造10の外側に配置される高電力LEDアレイであってもよい。他の実施形態では、エネルギー源はラスタ走査された高電力ダイオードレーザであってもよい。
【0023】
エネルギー源16は画像受容構造10の外部に示されているが、エネルギー源16は、可調整材料12のパターン状配置を行うことができればいずれの場所に配置されてもよい。例えば、エネルギー源16は画像受容構造10の内部に配置されてもよい。従って、エネルギービーム18は可調整材料12を調節するために画像受容構造10の基板9を通過してもよい。
【0024】
可調整抵抗材料12をパターン状に調整するため、エネルギー源16をパターン状に変調することができる。パターン状変調は任意の種類の変調とすることができる。振幅変調、周波数変調、オンオフ変調、直接変調、外部変調などが利用できる。例えば、可調整抵抗材料12の一部を別の抵抗率状態に変更するため、ファイバレーザ、半導体レーザなどの1種以上のレーザを可調整抵抗材料12全体にわたり走査することができる。エネルギー源16の強度、負荷サイクルなどはこのような異なる抵抗率状態を取得すべく変調可能である。その結果、可調整抵抗材料12は低抵抗率状態と高抵抗率状態の間で調整可能となる。
【0025】
被調整材料12を使用すると、画像様加熱に基づいてマーキング材料を画像受容構造10に選択的に転写することができる。上述の如く、エネルギー源16は可調整抵抗材料12の抵抗をパターン状に調整すべく使用される。マーキング材料はドナー構造22上に供給されることができる。電源23は被調整材料12にエネルギーを供給する。被調整材料12を有する画像受容構造10がドナー構造22上のマーキング材料に接触している場合に、このようなエネルギーを付与することができる。抵抗率がパターン状に調整されていることから、画像受容構造10はパターン状に加熱されることができる。上述の如く、画像受容構造へのマーキング材料の付着は、マーキング材料の温度と関連することがある。画像受容構造10をパターン状に加熱することで、マーキング材料はパターン状に加熱される。従って、画像受容構造10がドナー構造22上のマーキング材料から分離すると、マーキング材料はパターン状に転写される。従って、パターン状マーキング材料24が画像受容構造10に残留する。
【0026】
基板28を画像受容構造10と接触させてもよい。例えば、刻印ローラ26は、基板28を画像受容構造10に接触させることができる。パターン化マーキング材料24が移動されて基板28と接触すると、パターン化マーキング材料24は冷却され、内部粘着性を増大させることができる。その結果、パターン化マーキング材料24の画像受容構造10、特に外層13の表面への付着性が低下する。次いで、パターン化マーキング材料30は基板に転写される。
【0027】
上述の如く、シリコーン表面は通常はマーキング材料をはじくために使用される。マーキング材料を画像受容構造10に転写するための付着力をパターン状に増大させ、次いでマーキング材料を冷却して付着力を低下させることにより、マーキング材料の基板28への100%に近い効率的な転写が達成できる。上記説明では、基板28に転写される前にパターン化マーキング材料24を冷却するとしたが、内部結合状態が低い場合であっても、パターン化マーキング材料24の基板28への付着力が画像受容構造10への付着力よりも大きい限り、パターンマーキング材料24は効率的に転写される。一実施形態において、画像受容構造10の電子的及びリソグラフィックパターニングは必要ではない。
【0028】
一実施形態において、マーキング材料は固体状態から液体状態への相転移を行っていない。対照的に、付与された熱による昇温でマーキング材料の粘性が低下しても、マーキング材料は粘弾性状態を維持する。すなわち、粘性を変化させるには十分であるが、位相を変化させるには不十分な量のエネルギーがマーキング材料に伝達された。このことは、伝達されるエネルギーが相変化を誘発するエネルギー未満に限定されなくてはならないことを意味していない。対照的に、可調整抵抗材料12は相変化を生ずるべくマーキング材料をパターン状に加熱するために同様に使用可能である。
【0029】
上述の如く、画像受容構造10へのマーキング材料の付着性が変更される。更に、マーキング材料の内部粘着性は変更できる。すなわち、マーキング材料を加熱することにより、内部粘着性が、画像受容面10へのマーキング材料の付着性よりも低くなる。その結果、マーキング材料がニップ11から排出される際、付着性が内部粘着力よりも大きくなるためマーキング材料は画像受容面に付着することが可能となる。
【0030】
一実施形態において、画像受容面へのマーキング材料の付着性は、画像受容面の外層13の親和性の変化の影響を受ける場合がある。例えば、外層13が加熱されると、親油性、親水性又は同様の他の性質は加熱により変化する場合がある。従って、画像受容面10に対するマーキング材料の付着性の変化は、画像受容面10のマーキング材料の変化、マーキング材料の内部粘着性の変化、これらの変化の組み合わせのいずれによるものであっても、画像受容面10へのマーキング材料の転写を容易とすべく利用できる。
【0031】
一実施形態において、電源23は、材料をパターン状に加熱すべく可調整抵抗材料12に電圧を印加することが可能である。例えば、可調整抵抗材料12の調整された状態の抵抗比率が1:100であると仮定する。従って、同一の電圧が印加されると、可調整抵抗材料12において消散する電力の比率は100:1となる。
【0032】
一実施形態において、エネルギー源16が画像受容構造10上における可調整抵抗材料12の抵抗率調整を完了すると、ニップ11近傍において電源23を使用した選択的な電気的加熱が可能となる。以下に詳述されるように、可調整抵抗材料12に接続された電極に沿った電気抵抗による電圧降下は、その状態にかかわらず可調整抵抗材料12全体にわたる電圧降下より低くなることがある。従って、プログラムされた領域に熱を集中させるため、パターン状にプログラムされた材料により多くのエネルギーを向けることが可能である。
【0033】
上述の如く、画像受容構造10はパターン状に加熱される。ニップ11において、パターン状被調整材料12を有する画像受容構造をドナー構造22上のマーキング材料に接触させることが可能である。その結果、マーキング材料はドナー構造22からパターン状に分離される。
【0034】
一実施形態において、可調整抵抗材料12を特定の抵抗状態に変更するために第二のエネルギー源(図示せず)を使用できる。すなわち、パターン状マーキング材料24の画像受容構造10への転写後の時点で、第二のエネルギー源は、可調整抵抗材料12の抵抗率を略同一の状態に調整することができる。例えば、パターン状マーキング材料24が基板28に転写された後、可調整抵抗材料12を略同一の状態に調整することができる。更に、このような第二のエネルギー源は、ニップ11において可調整抵抗材料12が加熱されてから可調整抵抗材料12がエネルギー源16によって異なるパターンでプログラムされる前に、任意のタイミング及び/又は位置においてエネルギーを付与することができる。第二のエネルギー源は、エネルギー源16によってプログラムされる前に、可調整抵抗材料12中の潜在的な抵抗性画像を消去することができる。
【0035】
可調整抵抗材料12を消去するために別体のエネルギー源を記載したが、消去はエネルギー源16によって行うことも可能である。例えば、エネルギー源16からのエネルギービーム18の変調は、可調整抵抗材料12を加熱し、次に、異なる抵抗率を生じる可調整抵抗材料12の異なる部分についてエネルギー源16の変調を制御するように適切に構成することができる。
【0036】
図2は、図1の可調整抵抗材料への接続の例を示すブロック図である。本実施形態では、相変化材料32は可調整抵抗材料12の一部を表す。相変化材料32は、図1の外層13と同様の外層33によって被覆される。図2は、図1のニップ11における構造の関係を表す。従って、マーキング材料35は外層33及びドナー構造37と接触する。ドナー構造は、図1のドナー構造22の一部を示す。
【0037】
相変化材料32は電極30と電極34の間に接続される。電圧は電極30と電極34の間に印加することができる。従って、熱量39はその抵抗率に応じて相変化材料32中で消散し、少なくとも一部が外層33及びマーキング材料35に伝播される。
【0038】
一実施形態において、相変化材料32は電気的な双安定状態間で調整できる。すなわち、相変化材料32は信頼性を損ねることなく何度でも切り替え可能である。更に、相変化材料32は、例えば約10ナノ秒という高い切り替え速度を有することが可能である。これにより約100メガビット/秒のデータ転送速度が得られる。相変化材料32を調整するため、エネルギー源16をこのような速度で変調することができる。例えば、光学ラスタ出力走査(ROS)レーザダイオードシステムは、エネルギー源16として使用されるべくこのような速度で変調可能である。
【0039】
このような可調整抵抗特性を有する材料として、RW−CD及びRW−DVDに使用されるカルコゲニド材料、及び高速フォトクロミック切り替えに使用される二酸化バナジウム(VO2)が挙げられる。例えば、相変化材料32は、電気的抵抗が高い状態と低い状態との間で切り替えることが可能な任意の2成分、3成分又は4成分のカルコゲニド半導体合金を含むことができる。
【0040】
別の例において、相変化材料32は安定した電気的な切り替え状態を示すことで知られる任意の金属酸化物材料であってもよい。例えば、このような相変化金属酸化物として、Nb、Al、Ta、TiO、NiO、SrTiO、ZrO又はこれらの合金の他の複合物が挙げられる。
【0041】
これらの材料のうちのいくつかは、低エネルギーダイオードレーザによる数十億回のサイクルにわたって反復可能な双安定切り替え特性を示している。現在最も普及しているカルコゲニド材料のうちの1つは、化学組成がGeSbTeと著しく近似し、この用途に利用できるいわゆるGST材料である。GST材料及びVO2材料は、いずれもレーザ加熱することで抵抗率を桁違いに変更できる。例えば、多結晶状態におけるいくつかの相変化電気材料の抵抗率は、約0.01〜1.0オーム/cmの範囲とすることができ、アモルファス状態における抵抗率は約100〜1E5オーム/cmの範囲である。
【0042】
更に、両抵抗率状態は厚さ約10nm〜100nmの範囲の比較的薄い層として存在することができる。また、両抵抗率状態は、特定のレーザ変調方式によって昇温・冷却することにより光学的にプログラム可能な電気的性質におけるヒステリシスの劇的な変化を示す。更に、厚さが比較的薄いことから位相変更に要するエネルギー量が低減され、抵抗率を調整する際にダイオードレーザなどの小電力エネルギー源の利用及び/又は高い処理能力が得られる。
【0043】
一実施形態において、エネルギー源16は、相変化材料32を溶解し、再度凝固してアモルファス状態とすべく制御できる。その結果、高い抵抗値が存在し、発生する局部加熱量が低減される。例えば、レーザは、高いレーザパワーを用いて約10ナノ秒未満の繰返速度でパルス化できる。
【0044】
抵抗率を低いレベルに設定するため、相変化材料32を再結晶化し多結晶状態とすることができる。例えば、エネルギー源16はより低いエネルギー状態で連続的にレーザエネルギーを付与することができる。上記相変化材料は、十分な電力を与えられる再結晶時間が約10〜100ナノ秒となるように設計される。
【0045】
一実施形態において、双安定の相変化材料32を使用する場合、可調整抵抗材料12は双安定の抵抗率を有することができる。可調整抵抗材料12の位相をパターン状に変更することは、第一の抵抗率を有する第一の位相と、第一の抵抗率とは異なる第二の抵抗率を有する第二の位相との間で可調整抵抗材料12の位相をパターン状に変更することを含んでもよい。
【0046】
一実施形態において、画像受容構造10の層はエネルギー源からのエネルギービーム18に対し略透明となるように選択可能である。更に、層は反射を低減する屈折率整合特性を有するように選択可能である。従って、可調整抵抗材料12へのエネルギー伝達を増大することができる。更に、画像受容構造10の1つ以上の層が、可調整抵抗材料12の周囲層への移動又は拡散を許容しない不活性化層として作用することができる。
【0047】
更に、層は可調整抵抗材料12からの熱拡散を処理可能であるように選択できる。例えば、層はより低い熱伝導率を有すべく選択可能である。その結果、周囲層へ逃げる熱が減少するため、可調整抵抗材料12の位相を変更するために必要な熱を低減できる。あるいは、層はより高い熱伝導率を有すべく選択可能である。従って、可調整抵抗材料の特定のプログラムされた領域にエネルギーが付与されると、発生する熱はマーキング材料に効率よく転写される。一実施形態において、ZnS(80%)とSiO(20%)の混合物からなる誘電体層は、各種カルコゲニド相変化材料に関するこのような要件を満たすことが可能である。
【0048】
図3は、一実施形態に従った画像受容構造上の電極配置を示す図である。この実施形態は、可調整抵抗材料56を含む画像受容構造43と、可調整抵抗材料に接続された多数の電極を含む。可調整抵抗材料56は、電極38、40、42及び44に電気接続される材料を表す。ブラシ36及び46は電極と接触するために使用できる。
【0049】
一実施形態において、画像受容構造43はドラムであってもよい。図3は、ドラムの円柱面の一部の平面図を示していてもよい。ブラシ36及び46は、ドラムの回転に伴い、ドラムの各電極が回転してブラシ36又は46の対応する一方に接触するように配置できる。例えば、図3では、ブラシ46は電極40と接触して示されているが、ドラムの回転に伴い、電極44がブラシ46と接触することが可能である。
【0050】
画像受容面43の例としてドラムを示したが、任意の形状が利用できる。例えば、ブラシ36及び46の電極38、40、42、44及び任意の他の電極との接触を可能とする、ベルト構成などの任意の形状が利用できる。更に、ブラシには一度に1つの電極のみが接続されるものとして示したが、1つのブラシは多数の電極と接触してもよい。例えば、ブラシ36は、電極36及び42に同時に接触するサイズを有していてもよい。その結果、可調整抵抗材料56の多数の列を一度に加熱することができる。
【0051】
図4は、実施形態に従った画像受容構造の断面図である。図4の断面は図3の線45に沿った断面である。図3及び図4を参照すると、この実施形態では、誘電体59は基板48上に配置される。電極38、40、42及び44は誘電体59上に配置される。加熱は、電流がブラシ36と46の間を通過することで行われる。従って、電流は、電極38及び40の間、及び電極38と40の間の可調整抵抗材料56を通過することが可能である。
【0052】
図3又は図4の電極38、40、42及び44として、銅、アルミニウムなど、固有抵抗率が比較的低い任意の種類の導体材料を使用できる。更に、このような金属材料は、熱エネルギーの横への広がりを、電気的・熱的接地面として作用する基板48に向けて下方へ再度向けることにより、可調整抵抗材料56の隣接画素を熱的に分離すべく作用することができる。例えば、領域49において可調整抵抗材料56が加熱される場合、熱が領域51に移動することがありうる。しかし、電極54はより高い熱伝導率を有することが可能であるため、移動中の熱は、領域51及び領域51と接触している任意のマーキング材料にではなく電極54に向けられる可能性がある。従って、安定した高解像度熱画像がより長い期間にわたり形成できる。従って、可調整抵抗材料56を1ライン毎に加熱することができるが、必ずしもその必要はない。代わりに、ある範囲の画像形成面を直ちに加熱できる。従って、加熱された画像をニップの排出部に位置合わせする際の許容差を低減できる。すなわち、熱画像が熱消散を分離することでそのコントラストを長く維持すればするほど、熱画像はニップの前に確立され、ニップの排出部以降も保持されることができる。
【0053】
熱的・電気的絶縁層53が電極間に配置される。断熱層53は、電極38、40、42、44及び誘電体59の一部から可調整抵抗材料56を熱的に絶縁した。従って、可調整抵抗材料56からの低減された熱量は、電極38、40、42及び44、誘電体59、基板48などにおいて消失する。
【0054】
可調整抵抗材料56は、電極38、40、42、44及び断熱層53上に配置される。可調整抵抗材料56は電極38、40、42及び44に電気接続される。一実施形態において、電極38、40、42及び44は幅を変更可能な部分を有していてもよい。例えば、電極42は、第一の幅を有する第一の部分54と、第一の幅よりも大きい第二の幅を有する第二の部分52とを含む。第一の部分54は可調整抵抗材料56と直接接触している。電極42から可調整抵抗材料56を通過した電流は、ブラシ36と電極42との接続に入ることが可能である。第一の部分54よりも大きい第二の部分52は、電極38の長さに沿った低抵抗率経路を提供できる。第一の部分54は、抵抗率の低い第二の部分52から可調整抵抗材料56への接続を提供する。第二の部分54は可調整抵抗材料56の隣接領域への電流のみを概ね搬送するため、低密度電流が第二の部分54を通過する。その結果、第二の部分54をより小さくすることができ、ブラシ36と46との間の電圧降下に対する影響が低減する。従って、電流を効率的に可調整抵抗材料56に向けることが可能であり、可調整抵抗材料56は、大多数の電極から熱的に分離可能である。
【0055】
一実施形態において、画像のピクセレーションは電極により発生しうる。例えば、第一の電流は軸47に沿って電極38から電極40へ流れ、電流が通過する可調整抵抗材料56を加熱することが可能である。次に流れることが可能な別の電流は軸55に沿って電極40と42との間を流れる。従って、軸47の方向における解像度は電極間隔により制限される。対照的に、軸57では、可調整抵抗材料56の抵抗率は電極間隔に関係なく変更できる。例えば、高帯域で直接レーザを変調することによって、軸57に沿って高解像度制御を行うことができる。その結果、軸57に沿ったより高い有効画素密度が得られる。このことにより、高解像度、可変スポット幅グレースケールなどが達成できる。
【0056】
図5は、別の実施形態に従った画像受容構造上の電極配置を示す図である。この実施形態では、画像受容構造は、電極60、62、64、66及び可調整抵抗材料80が形成された導電性基板70を含む。ブラシ68は電極60、62、64及び66と接触可能である。電極60、62、64及び66は、可調整抵抗材料80の片側面への電気接続用に利用できる。別の接続は導電性基板70である。すなわち、可調整抵抗材料80の加熱用に使用される電流は、ブラシ68と導電性基板70の間を流れる。
【0057】
図6は、図5の画像受容構造の例の断面図である。電極60、62及び64は絶縁材料74上に配置される。絶縁材料74は導電性基板70上に配置される。この実施形態では、電極60、62及び64は2つの領域76及び78を含む。領域76は領域78よりも幅が狭く、領域78よりも厚い。従って、電流は、領域78を通過する際と比べて、より電圧降下が小さい状態で領域76を通過することができる。電流は、電圧降下が小さい状態で電極62の長さに沿って分配可能である。領域76よりも薄い領域78は、電流を可調整抵抗材料80に局部的に分配するために使用できる。すなわち、領域78は領域76と比べて搬送する電流が少なく、過度の電圧降下や関連する加熱を必要としないため薄くすることができる。
【0058】
開口部77及び79は導電性基板70を露出させている。可調整抵抗材料80は開口部77及び79を通じて導電性基板70と接触可能である。従って、電流は、可調整抵抗材料80及び対応する開口部77及び79を通じて電極60、62、64及び導電性基板70の間で流れることが可能である。シリコーンなどの外層82は、上述の如く、電極60、62、64及び可調整抵抗材料80を被覆する。
【0059】
図7は、図6の画像受容構造上の可調整抵抗セルの例を示す平面図である。本実施形態では、外層82は透明であるため、図示されない。更に、可調整抵抗材料80は図示された表面全体にわたって形成可能であることから、図示されない。但し、可調整抵抗材料80が表面全体にわたって形成されなければならないわけではない。例えば、可調整抵抗材料80は、電極上のより薄い領域78にのみ形成してもよい。
【0060】
図6及び図7を参照すると、本実施形態では、各可調整抵抗セルは開口部88を有する。開口部77及び79と同様に、開口部88は、導電性基板への電気接触を可能とする。開口部86は電極の開口部であり、絶縁材料74を露出する。より詳しくは、開口部86は電極のより薄い領域78における開口部である。
【0061】
開口部86及び88は同心円を形成する。従って、電極の領域78から導電性基板70までの距離は、略同一であってもよい。その結果、セル用の可調整抵抗材料80は同一抵抗率を有すべくプログラムされていると仮定すると、セルの抵抗はセル全体にわたって略均等に分配される。
【0062】
電流85、87及び89は、可調整抵抗セルを通って流れることが可能ないくつかの電流を表す。電流85は電極62の領域76を通って流れる電流である。電流87は領域78を通ってセルの可調整抵抗材料80へ流れる電流を表す。領域78の抵抗率は、最低抵抗率を有する状態における可調整抵抗材料80の抵抗率を概ね下回るよう選択可能である。従って、電流87が電極62から電極64に向けてより長い経路を移動しても、より長い経路による付加抵抗は可調整抵抗材料80の最低抵抗率よりも低く維持される。電流89は可調整抵抗材料80を通じた電流分布を表す。電極の領域76及び78の抵抗率が低いため、電流はセルの可調整抵抗材料80上に略均等に分配できる。その結果、セルにより発生される熱は略均等に分配される。
【0063】
電極の領域78の抵抗率は電極からの電流分布を局所化すべく選択可能である。例えば、電極60、64及び66は電極62に電気接続されているため、直接エネルギーを付与されなくても、電流85の一部がこれらの電極60、64及び66に流れることが可能である。しかし、電極の領域78が領域76を分離するため、他の電極へ流れる電流はいずれも電極の1つ以上の領域78を通過しなければならない。領域78は薄いため、領域76と比べて高い抵抗率を有することができる。従って、領域78の後続部分の各々について全抵抗が増大し、当該部分を流れる電流量が低減する。従って、領域78の抵抗率は、可調整抵抗セルの所与の列に電流を略均等に分配する大きさよりも小さく、且つ、可調整抵抗セルの多数の他の列を印加された電流から分離できる大きさを有するように選択可能である。その結果、エネルギーを付与される可調整抵抗セルの列を制御できる。
【0064】
領域78は電極間で電気接続されるものとして記載されたが、全ての電極を電気接続する必要はない。例えば、領域78中の空隙により1つ以上の電極を他の電極から分離することが可能である。例として円形を使用したが、開口部86及び88は他の形状を有していてもよい。セルの抵抗が略均等に分配されるものであれば任意の形状が使用できる。例えば、均等にセルの抵抗を分配すべく形成された隅角部を有する略正方形が使用できる。
【0065】
一実施形態において、可調整抵抗セルのサイズは、可調整抵抗材料をプログラムするために使用されるエネルギービーム18のスポットサイズより小さくすることができる。例えば、開口部88は直径約3μmとすることができ、開口部86は直径約9μmとすることができ、セル間隔は中心間で約12μmとすることができる。これにより、可調整抵抗セル密度は約2400dpiとすることができる。
【0066】
上記実施形態は一次元的に電極を略位置合わせしたが、電極は多次元的に位置合わせされることが可能である。例えば、電極は画像受容面の表面全体にわたり二次元的に位置合わせされることが可能である。
【0067】
一実施形態において、電流は画像受容構造10に対し垂直方向に流れることが可能である。例えば、画像受容構造は第一の電極、第一の電極上の第二の電極、及び第一の電極と第二の電極の間に配置される可調整抵抗材料を含むことが可能である。垂直方向配列のため、画像受容構造のパターニングの必要性、画像受容構造に対するエネルギービーム18の追跡の必要性、あるいは画像受容構造パターンに関連する他の要件が低減されあるいは不要となる。
【0068】
更に、熱を発生すべく電流が通過する可調整抵抗材料を通じた相対的距離は、水平方向の可調整抵抗材料の用途と比べて薄くすることができる。従って、可調整抵抗材料の抵抗率はより高くなるよう選択できる。例えば、金属酸化膜材料の組成物を調整することにより、カルコゲニド材料と比べて高い抵抗率を有する状態への切り替えを生じることができる。このような酸化物として、Nb、Al、Ta、TiO、NiO、SrTiO及びZrOが挙げられる。
【0069】
更に、第一の電極及び/又は第二の電極はエネルギービーム18のエネルギーに対し透明とすることが可能である。別の実施形態においては、網目状の薄膜導電層がこれら電極に用いられ得る。
【0070】
図8は、一実施形態に従ったニップの断面図である。一実施形態において、エネルギーは、熱が拡散する時間がなくなるよう、ドナー118と画像受容構造112の間のニップ領域に蓄積してもよい。熱が拡散する時間があると、所望の画像が押し流される可能性がある。距離120は、画像受容構造112の外層114の厚みである。距離122はニップにおけるマーキング材料116の厚みである。ドナー構造118と画像受容構造112とが位置109において最も接近する際、厚み122は最小となる。矢印130は、画像受容構造112の回転方向を示す。矢印134は、ドナー構造118の回転方向を示す。熱126が可調整抵抗材料128からマーキング材料116に転写される位置である領域124は、位置109からオフセットされている。すなわち、熱移動は、画像受容構造112とドナー構造118とが最も接近する場所である位置109から位置124がオフセットされることに伴い発生する。
【0071】
図9は、図8のマーキング材料における熱放散の等角図である。この図では、可調整抵抗材料138は基板136と外層140の間に示されている。この図は、エネルギー付与点から可調整抵抗材料138への熱伝導154を示している。
【0072】
図8及び9を参照すると、一実施形態において、画像形成が行われるためには、マーキング材料は、横方向への熱拡散時定数未満の期間においてニップ103の出口点105で外層140に転写される必要がある。さもなければ画像ボケが発生する可能性がある。従って、熱拡散領域ΔAは半径150を有する加熱領域の一部とすることができる。更に、垂直方向及び水平方向における熱の全体拡散率をあまり高くすべきでない。これにより、ニップ103の出口105で分離される機会を得る前にマーキング材料を冷却できる。マーキング材料132は、画像受容構造112に転写されるべく加熱されたマーキング材料を表す。
【0073】
位置124がニップ103の出口105から更に離間すると、熱拡散に要する時間は長くなり、マーキング材料116の温度はピーク値からより長い時間をかけて低下する。従って、一実施形態において、可調整抵抗材料128が加熱される位置124は、ニップ103の出口105に接近して配置できる。しかし、位置124がニップ出口105に近すぎる場合、マーキング材料116が外層140から部分的に持ち上げられ、非一様な転写が発生しうる。
【0074】
更に、マーキング材料116は、加熱された位置124の幅より薄くてもよい。その結果、一画素分のマーキング材料の分離動力学を近接画素の動力学から分離できる。一般的な乾式オフセットインクは約0.5〜1.0ミクロンの範囲の厚みで紙上に配置できる。従って、解像度1200dpi(21μm間隔)の場合でも、マーキング材料116の厚みと最近接画素の比率は約1:20である。
【0075】
熱拡散時定数はマーキング材料パラメータから推測できる。画像形成解像度が600dpiであるとき、加熱された画素領域は直径約42μmである。上述の如く、マーキング材料の厚み142は数ミクロン以下である。マーキング材料の厚み142は伝達される熱の幅150よりも著しく小さいことから、垂直方向の熱拡散は冷却時間定数全体に影響を及ぼす。すなわち、熱拡散は方向146及び152において発生しうるが、より多くの熱が、ドナー構造116に向かう方向148、あるいは画像受容構造112に向かう方向156に移動される。
【0076】
外層140の熱伝導率は公式化に依存する。化学的変性を行わない生来のPDMS材料が使用される場合、熱伝導率(κPDMS)が0.15〜0.2W/m−Kの範囲に接近していると予想される。マーキング材料142の正確な比熱及び熱伝導率は公式化毎に変化するが、乾式オフセットインク用標準値は桁数計算を行う際に利用できる。乾式インクに使用される高分子量オイルの一般的な熱価は、比熱cρ〜2000J/kg−Kであり、質量密度がρink〜1.0gm/ccであり、熱伝導率がκink〜0.15W/m−Kである。垂直方向の伝導が熱の損失に影響を及ぼすとすると、予測される熱時定数は、式1に示される相似関係から推測できる。
【0077】
=cρ*ρink*d/κPDMS (1)
【0078】
dは、ニップにおけるマーキング材料の吸収深さのおよその厚みである。上述した一般的な値について、全般的な吸収深さとしてd=2−3μmと仮定すると、拡散時間tは約100μsである。対照的に、インクを通じた横方向への熱拡散時定数は、熱が42μm移動しなければならないことから、約1msであると予想される。印刷速度が100ppmであるとき、プリンタの線形供給量は約0.5m/s以下である。この速度により、加熱された領域124はニップ103の出口105から約50ミクロン以内の位置となる。画像形成速度が増大すると、構造が所与の熱時定数内に移動する距離が大きくなることにより、上記要求は幾分緩和できる。
【0079】
一実施形態において、ドナー構造118の熱伝導率はマーキング材料116の熱伝導率を下回る。例えば、ドナー構造118は、大部分のUVインクと互換性を有する低熱伝導率材料で作製できる。エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)で被覆されたローラはUV硬化性インクと共に使用でき、約0.3W/m−K近傍の熱伝導率と共に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可調整抵抗材料を含む画像受容構造と、
前記可調整抵抗材料をパターン状にプログラムすべく前記画像受容構造にエネルギービームを放射するエネルギー源と、
を含む画像形成システム。
【請求項2】
前記画像受容構造は複数の電極を含み、
前記可調整抵抗材料は前記電極に電気接続される、
請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記画像受容構造は、
導電性基板と、
前記導電性基板上に配置される絶縁材料と、
前記絶縁材料上に配置される電極と、
を含み、
前記可調整抵抗材料は前記導電性基板と前記電極の両方に電気接続される、
請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項4】
導電性基板と、
前記導電性基板上に配置される絶縁材料と、
複数の可調整抵抗セルと、
を更に含み、
前記各可調整抵抗セルは、
前記絶縁材料における開口部と、
前記開口部の縁端からオフセットされた縁端を有する導電層と、
を有し、
前記導電層の前記縁端は、前記開口部の前記縁端から略等距離にあると共に、前記可調整抵抗材料は、前記導電層の前記縁端と前記開口部の前記縁端の間に配置される、
請求項1に記載の画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−20448(P2011−20448A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151830(P2010−151830)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】