説明

画像形成デバイスのためのエンドレス可撓性部材

【課題】成型フォームから分離され、表面が、不完全性、例えばピット、谷、へこみ、起伏、しわ、くぼみなどが最小限で規則的である、画像形成デバイスに使用するための可撓性転写部材を提供する。
【解決手段】画像形成デバイスに使用するための可撓性部材が、非イオン性界面活性剤;フッ素化界面活性剤;またはその両方を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子写真画像形成デバイスに使用するための新規な可撓性転写部材、例えば中間転写ベルト(ITB)、例えば環状本体を有するエンドレスベルトが提供される。画像形成デバイスは、記録媒体上に固着されたトナー画像を生じる。
【背景技術】
【0002】
カラー画像を形成する画像形成装置では、個々の異なる色のトナー画像が互いに重ね合わされるので、エンドレスベルトは、最終的な複合カラー画像を構築する際に順に適用されるまたは受容される異なる色のトナー画像を運ぶユニットとして使用できる。エンドレスベルトはまた、異なる色のトナー画像を順に受容する記録媒体に転写するためのユニットとしても使用できる。
【0003】
エンドレス可撓性ベルトは、モールド、マンドレル、またはフォーム上にまたはこれらに付着したフィルムを生じさせることによって製造できる。
【0004】
こうした成型方法を用いる場合、フィルムは、成型フォームから分離されなければならず、好ましくはフィルムに対して最小の応力、変形、損傷などで分離されなければならない。さらに、フィルムは成型フォームから容易に取り除かれることが望ましい。
【0005】
電子写真の分野において、必ずしもではないが、電荷および潜像を運ぶ部材表面は、不完全性、例えばピット、谷、へこみ、起伏、しわ、くぼみなどが最小限で規則的であることが有益であり、不揃いな表面は、最大限の画像忠実度が所望される場合には有益でない。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に開示される態様によれば、電子写真に使用するための可撓性転写部材、例えば可撓性画像転写部材、例えば中間転写ベルト(ITB)を製造するためのフィルム形成組成物を提供し、ここでコーティング溶液は、形成されたフィルムのモールド、マンドレル、フォームなどからの取り除きを促進し、モールド、マンドレル、フォームまたは構造上への溶液の分散を促進する平滑化剤としても作用し得る非イオン性界面活性剤を含む。非イオン性界面活性剤は長い脂肪族鎖を含み得る。
【0007】
実施形態は、可撓性画像転写部材、例えば中間転写ベルト(ITB)を製造するためのフィルム形成組成物、例えばコーティング溶液を含み、この組成物が溶液の表面張力を下げるフッ素化界面活性剤を含み、結果として低い表面エネルギーのフィルムが得られる。フッ素化界面活性剤は、長い脂肪族鎖またはポリマー鎖を含み得る。
【0008】
別の実施形態において、フィルム形成組成物は、対象とする非イオン性界面活性と対象とするフッ素化界面活性剤とを含み得る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で使用される場合、用語「電子写真」、またはこれらの文法上の変形は、用語「乾式電子写真」と交換可能に使用される。一部の実施形態において、例えばカラー画像を形成する場合、画像の個々の色は順に適用されることが多い。故に、「部分画像」は、最終的または複合的なカラ―画像を得るために最後の色を適用する前の1つ以上の色を含む画像である。「可撓性」とは、例えばローラーを用いて操作するのに適合性であり、ローラーと共に使用される、例えばベルト、ウェブ、フィルムなどにおいて観察されるような、容易な変形能を示すことを意味する。
【0010】
本開示の趣旨上、「約」は、記載された値または中間値の20%以下の偏差を示すことを意味する。他の等価な用語としては、「実質的」および「本質的」、またはこれらの文法上の形式が挙げられる。
【0011】
可撓性画像形成部材は、中間転写部材、例えば中間転写ベルト(ITB)、フューザーベルト、圧力ベルト、輸液ベルト、輸送ベルト、現像剤ベルトなどを含むことができる。こうしたベルトは、支持体層、および場合により1つ以上の特定機能を有する層を含むことができる。
【0012】
高品質の画像転写を得るために、すなわち画像ずれを最小限にするために、転写部材の駆動中の撹乱による変位は、支持体または基材の厚さを、例えば約50μmに制限することによって低減できる。故に、基材または支持体の厚さは、約50μm〜約150μmまたは70μm〜約100μmであることができる。
【0013】
支持体、基材または層は、既知の材料、例えば合成材料、例えば樹脂、繊維性材料など、およびこれらの組み合わせで構成でき、例えば「The Encyclopedia of Engineering Materials and Processes,」Reinhold Publishing Corporation,Chapman and Hall,Ltd.,London,page 863,1963を参照のこと。
【0014】
好適な合成材料としては、液晶ポリマー、グラファイト、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルフルオライド、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレンおよびその他のフルオロカーボンポリマー;ポリブタジエンおよびスチレンとのコポリマー、ビニル/トルエン、アクリレート、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリエチルペンテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレンおよびアクリロニトリルコポリマー、ポリビニルクロライドおよびポリビニルアセテートコポリマーおよびターポリマー、シリコーン、アクリル系樹脂およびコポリマー、アルキドポリマー、アミノポリマー、セルロース系樹脂およびポリマー、エポキシ樹脂およびエステル、ポリアミド、フェノキシポリマー、フェノール性ポリマー、フェニレンオキシドポリマー、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエステル、ポリアリーレート、アクリル系樹脂、ポリアリールスルホン、ポリブチレン、ポリエーテルスルホン、ポリウレタン、ポリ(アミド−イミド)、コポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリアリールエーテルなど、およびこれらの混合物が挙げられる。ガラス繊維も使用できる。
【0015】
転写部材またはデバイスは、複数の層を有することができる。その場合には、第1の層は、画像が頂部に配向して固定される表面を有する多層転写部材の断面を見る場合に、最下層であり、または転写部材の支持体または基材であることができ、加えられる最後の層または最表面層(断面において、最上層または頂部層と記載される)は一般に、低表面エネルギーを有する層であり、すなわち水による湿潤性によって表されるような水滴に対して約70°以上または少なくとも約70°の接触角を有する材料で、そこに分散した電気伝導性剤を含む材料である。用語「水による湿潤性」とは、本明細書で使用される場合、試料の表面層を構成する材料の、この材料上の水滴に対する接触角を示すことを意味する。
【0016】
電気的特性、例えば表面およびバルク抵抗率、誘電率および放電を調節するために、電気的特性を調節する材料を基材または基材の表面層に添加できる。一般に、電気的特性を調節する材料は、フィルムの所望の抵抗率に基づいて選択できる。伝導性経路の数がパーコレーション閾値を常に十分上回り、それによって抵抗率の極端な変動を避けるように、電気的特性を調節する材料を高体積画分または充填で使用できる。組成物のパーコレーション閾値は、分散した相の体積濃度であり、その濃度未満では粒子と粒子との接触が非常に少ないので連結した領域が小さい。パーコレーション閾値を超える高濃度では、連結した領域がフィルムの体積を超えるのに十分大きい。Scher et al.,J Chem Phys,53(9)37593761,1970には、パーコレーションプロセスにおける密度の作用が議論されている。
【0017】
電気的特性を調節する材料の粒子形状は、体積充填に影響を及ぼし得る。体積充填は、粒子が、例えば球状、円形、不規則状、回転楕円体、海綿状、角状またはフレークもしくは葉状の形態であるかどうかに依存し得る。高いアスペクト比を有する粒子は、相対的に低いアスペクト比を有する粒子と同程度の高い充填を必要としない。相対的に高いアスペクト比を有する粒子は、フレークおよび葉状を含む。相対的に低いアスペクト比を有する粒子は、球状および円形粒子である。
【0018】
パーコレーション閾値は、実際、充填物のアスペクト比に依存して数体積%の範囲内である。いずれかの特定粒子の抵抗率に関して、コーティングされたフィルムの抵抗率は、層中の抵抗性粒子の体積画分を変更することによって約1桁にわたって変動させることができる。体積充填における変動により、抵抗率の微細な調整が可能である。
【0019】
抵抗率は、個々の粒子のバルク抵抗率および支持体または層における粒子の体積画分に対しておおよそ線形で変動する。2つのパラメータは独立に選択できる。いずれかの特定粒子の抵抗率に関して、部材の抵抗率は、粒子の体積画分を変更することによっておおまかに1桁にわたって変動できる。粒子のバルク抵抗率は、好ましくは、部材に所望されるバルク抵抗率より最大3桁まで下げて選択される。粒子が支持体または層とパーコレーション閾値を超える量で混合される場合、得られた強化部材の抵抗率は、充填の増大に比例して低下し得る。最終抵抗率の微細な調整は、充填に比例する変化に基づいて制御されてもよい。
【0020】
材料のバルク抵抗率は、材料の固有特性であり、均一な断面のサンプルから決定できる。バルク抵抗率は、こうしたサンプルの抵抗に、断面積を乗じ、サンプルの長さで除したものである。バルク抵抗率は、適用される電圧によりある程度変動し得る。
【0021】
表面またはシート抵抗率(オーム/平方、Ω/□と表される)は、こうした測定基準が材料の厚さおよび材料表面の汚染、例えば凝縮湿分に依存するので、材料の固有の特性ではない。表面作用がごくわずかであり、バルク抵抗率が等方性である場合、表面抵抗率は、バルク抵抗率を部材厚さで除したものである。フィルムの表面抵抗率は、フィルム表面上にある2つの平行接点間の抵抗率を測定することによってフィルムの厚さを知ることなく測定できる。平行接点を用いて表面抵抗率を測定する場合、末端作用が大きな誤差を生じないように接点ギャップより数倍長い接点長さを使用する。表面抵抗率は、測定された抵抗率に接点長さ対ギャップ比を乗じたものである。
【0022】
粒子は、得られる部材の所望のバルク抵抗率よりもわずかに低いバルク抵抗率を有するように選択できる。電気的特性を調節する材料としては、顔料、四級アンモニウム塩、炭素、染料、伝導性ポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されない。電気的特性を調節する材料は、支持体または層の総重量の約1重量%〜約50重量%または支持体または層の約5重量%〜約35重量%の範囲の量で添加されてもよい。
【0023】
故に、例えばカーボンブラックシステムは、層を伝導性にするために使用できる。これは、複数種のカーボンブラック、すなわち異なる、例えば粒子幾何学形状、抵抗率、化学作用、表面積および/またはサイズを有するカーボンブラックを用いることによって達成され得る。また、1種類のカーボンブラックまたは複数種のカーボンブラックを、他の非カーボンブラック伝導性充填剤と共に使用できる。
【0024】
複数種のカーボンブラックを用いる例は、それぞれが他のカーボンブラックと異なる少なくとも1つの特徴を有するカーボンブラックであり、構造化ブラック、例えば急勾配な抵抗率の傾きを有するVULCAN(登録商標)XC72と、低構造カーボンブラック、例えば高い充填剤充填での抵抗率が低いREGAL(登録商標)250Rとの混合を含む。所望の状態は、2種のカーボンブラックの組み合わせであり、これが、相対的に低いレベルの充填剤充填にて均衡がとれ制御された伝導率を与え、機械的特性を改善できる。
【0025】
混合カーボンブラックの別の例は、球状、フレーク、小板状、繊維、ウィスカーまたは長方形の粒子形状を有するカーボンブラックまたはグラファイトと、異なる粒子形状を有するカーボンブラックまたはグラファイトとを組み合わせて使用するものであり、良好な充填剤パッキングを得て、こうして良好な伝導率を得る。例えば、球状形状を有するカーボンブラックまたはグラファイトは、血小板形状を有するカーボンブラックまたはグラファイトと共に使用できる。カーボンブラックまたはグラファイト繊維と球体との比は約3:1であることができる。
【0026】
同様に、相対的に小さい粒径のカーボンブラックまたはグラファイトと共に相対的に大きい粒径のカーボンブラックまたはグラファイトとの使用により、より小さい粒子がポリマー基材のパッキング空隙領域に配向されることができ、粒子接触を改善する。例として、約1μm〜約100μmまたは約5μm〜約10μmの相対的に大きな粒径を有するカーボンブラックは、約0.1μm〜約1μmまたは約0.05μm〜約0.1μmの粒径を有するカーボンブラックと共に使用できる。
【0027】
別の実施形態において、カーボンブラックの混合物は、約30m/g〜約700m/gのBET表面積を有する第1のカーボンブラックと、約150m/g〜約650m/gのBET表面積を有する第2のカーボンブラックとを含むことができる。
【0028】
また、抵抗率の組み合わせを使用して、充填剤充填に関して抵抗率変化を小さくできる。例えば、約10−1〜約10オーム−cm、または約10−1〜約10オーム−cmの抵抗率を有するカーボンブラックまたは他の充填剤は、約10〜約10オーム−cmの抵抗率を有するカーボンブラックまたは他の充填剤と組み合わせて使用される。
【0029】
カーボンブラックに加えて他の充填剤が、ポリマー、樹脂またはフィルム形成組成物に添加でき、これらに分散できる。好適な充填剤としては、金属酸化物;窒化物;炭化物;および複合金属酸化物;雲母;およびこれらの組み合わせが挙げられる。任意の充填剤は、ポリマー/混合カーボンブラックコーティング中に、総固形分の約20%〜約75重量%、または総固形分の約40 %〜約60重量%の総固形分の量で存在できる。
【0030】
コーティング層の抵抗率は、約10Ω/□〜約1013Ω/□、約10Ω/□〜約1012Ω/□または約10Ω/□〜約1011Ω/□であることができる。
【0031】
別の実施形態において、ポリマー/カーボンブラック混合物の薄い絶縁層が使用され、この層は、約1μm〜約10μmまたは約4μm〜約7μmの誘電厚さを有する。
【0032】
ポリマー/カーボンブラック混合物コーティングの硬度は、約85ShoreA未満、約45ShoreA〜約65ShoreA、または約50ShoreA〜約60ShoreAであることができる。
【0033】
別の実施形態において、表面は、少なくとも約60°、少なくとも約70°、少なくとも約75°、少なくとも約90°、または少なくとも約95°の水接触角を有することができる。
【0034】
転写部材は、当該技術分野において既知の方法を用いて調製できる。例えば、部材の第1層を形成するために本明細書に教示されるようなまたは当該技術分野において既知のような金属、合成材料または他のフィルム形成組成物を、当該技術分野において既知のようにマンドレル、モールドまたはフォームに、あるいはスリーブ電極、マンドレル、モールドまたはフォームの内面に電着させることができる。材料を適用するための他の技術としては、液体および乾燥粉末スプレーコーティング、フローコーティング、浸漬コーティング、線巻ロッドコーティング、流動床コーティング、粉末コーティング、静電噴霧、超音波噴霧、ブレードコーティングなどが挙げられる。コーティングが噴霧によって適用される場合、噴霧は、機械的および/または電気的に、例えば静電噴霧によって補助できる。
【0035】
このようにフィルム形成溶液または組成物がフォーム、マンドレル、モールドなどに適用される場合、形成されたフィルムの取り除きは、無傷で、最小限の損傷にて、あるいは困難または介入のいずれかまたは両方がほとんどないのが望ましい。フォーム、マンドレル、モールドなどに直接添加される溶液中に非イオン性界面活性剤を含ませることにより、乾燥したおよび/または硬化したフィルムをそれらから続いて容易に取り除かれることを促進または向上させる。別の実施形態において、非イオン性界面活性剤はまた、モールド、フォーム、マンドレルなどにおける溶液の展延および平滑化を向上させる。
【0036】
非イオン性界面活性剤は、当該技術分野において既知であり、市販されている。脂肪族鎖を含む非イオン性界面活性剤が使用できる。長鎖、例えば8個を超える炭素、10個を超える炭素、12個を超える炭素などの脂肪族鎖も使用できる。例としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールエトキシレート;8−メチル−1−ノナノールプロポキシル化−ブロック−エトキシレート;Brij(脂肪族アルコールエーテルである);ポリエチレン−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(Sigma−Aldrich);Dowによって製造されるDowfax界面活性剤のポリプロピレングリコールおよびコポリマー;Myrj(脂肪酸エトキシレートである)、SynperonicPE(エチレンオキシド−プロピレンオキシドブロックコポリマーである)(Croda Chemicals);BIO−SOFT(登録商標)、脂肪族アルコール、アルコールまたは脂肪族アルキルエトキシレート;MAKON(登録商標)、デシルアルコール、トリデシルアルコールまたはノニルフェノールエトキシレート;StepFac、ノニルフェノールホスフェートエステル、POLYSTEP(登録商標)(アルキルフェノールエトキシレートである)(StepanCo.);などが挙げられ、これらは、層および得られる部材の目的用途に適合性であり、有害ではない。
【0037】
故に、1つ以上の非イオン性界面活性剤が、モールド、フォーム、マンドレルなどに直接適用されるフィルム形成溶液または組成物に添加され、当該技術分野において既知のように懸濁されまたは溶解される。第1の層を製造するための溶液または組成物に使用できる非イオン性界面活性剤の総量は、フィルム形成溶液または組成物の約0.05重量%〜約0.15重量%、約0.07重量%〜約0.13重量%、約0.08重量%〜約0.12重量%または約0.09重量%〜約0.11重量%の量で存在する。フィルムは、本明細書に教示されるようにまたは当該技術分野において既知のように、乾燥、加熱などによって得られる。
【0038】
すべての層または添加される最終層および最表面層に関して、規則的で不揃いが最小限の表面が望ましい場合、フッ素化界面活性剤、例えばポリマーを含むフッ素化界面活性剤がフィルム形成溶液に添加されて、表面張力を低下させ、低表面エネルギーおよび均一性の向上したフィルムを得る、すなわちピット形成、うねり、不規則性などの量を減らし、規則的な表面に寄与し得る。
【0039】
フッ素化界面活性剤は既知であり、市販されている。例としては、Novec(この一部は、非イオン性のポリマー性フルオロ界面活性剤であり、3Mから市販されている);Flexiwet(アニオン性、カチオン性または両性であることができる、ICT,Inc.製);FluorN(Cytonixから市販されているポリマー性界面活性剤である)などが挙げられ、これらは層および得られた部材の目的用途に適合性であり、有害ではない。
【0040】
故に、1つ以上のフッ素化界面活性剤が、フィルム形成溶液または組成物のすべてに添加され、または構築過程の部材に最後に適用される溶液または組成物に添加され、当該技術分野において既知のように溶液または組成物中に懸濁されまたは溶解される。層を製造するための溶液または組成物に使用できるフッ素化界面活性剤の総量は、フィルム形成溶液または組成物の約0.006重量%〜約0.06重量%、約0.008重量%〜約0.05重量%、0.009重量%〜約0.04重量%、または0.01重量%〜約0.03重量%の量で存在する。フィルムは、本明細書に教示されるようにまたは当該技術分野において既知のように、乾燥、加熱などによって得られる。
【0041】
一部の実施形態において、例えばフィルムが多官能性であってもよい単一層を含む場合、個々に使用する場合に上記で記載した量での非イオン性界面活性剤およびフッ素化界面活性剤の両方をそれぞれ、フィルム形成溶液に添加し、混合物に組み込み、次いで本明細書に教示されるまたは当該技術分野において既知の適用モードを用いて、モールド、マンドレル、フォームなどに適用する。
【0042】
コーティング溶液のすべての構成成分が、全体の表面張力に寄与する。故に、溶媒も高い表面張力に寄与し得る。例えば高い沸点および/または特定ポリマーの良好な溶解性のために、一般に使用される溶媒としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、およびメチルピロリドンが挙げられる。しかし、これらの3つの溶媒は、高い表面張力値を有する。対象とする2つの界面活性剤により、有益特性、例えば高沸点および特定ポリマーの良好な溶解性を有するこうした溶媒を、高い表面張力に寄与するという損益なく継続して使用できるようにする。
【実施例】
【0043】
比較例1
ジメチルホルムアミド(DMF)(10g)中の20%のフェノキシ樹脂であるPKHH−XLV(InChem Corp.)を、10−milのBirdバーを用いてステンレススチールのベルト上にコーティングし、65℃で30分間、145℃で30分間、および次いで180℃で30分間乾燥した。
【0044】
フィルムは、ステンレススチールのモールドから離型できなかった。さらに、フィルム表面は顕著なしわを示した。
【0045】
実施例1
DMF(10g)中の20%フェノキシ樹脂であるPKHH−XLVを、0.01gの非イオン性界面活性剤のStepFac−8171(Stepan)と混合した。30分間ロール混合した後、溶液を10−milのBirdバーを用いてステンレススチールのベルト上にコーティングし、65℃で30分間、145℃で30分間、および次いで180℃で30分間乾燥した。
【0046】
フィルムは、ステンレススチールのモールドから容易に離型した。しかし、フィルム表面はある程度のしわを示した。
【0047】
実施例2
DMF(10g)中の20%フェノキシ樹脂であるPKHH−XLVを、0.01gの非イオン性界面活性剤であるStepFac−8171(Stepan)および2mgのNovecFC−4432(3M)と混合した。30分間ロール混合した後、溶液を10−milのBirdバーを用いてステンレススチールのベルト上にコーティングし、65℃で30分間、145℃で30分間、および次いで180℃で30分間乾燥した。
【0048】
フィルムは、ステンレススチールのモールドから容易に離型した。さらに、フィルムは非常に平滑で、光沢のある表面を有していた。
【0049】
実施例3
上記3つのフィルムは、当該技術分野において既知の材料および方法を用いて表面ラフネスおよび水接触角を測定することによって分析した。
【0050】
表面ラフネスデータは、実施例1のフィルムが約1.08μmのピーク−谷値を有しており、実施例2のフィルムは、約80nmの表面ラフネスを有しており、Novec界面活性剤を使用することによる顕著な改善を示していた。
【0051】
表面エネルギーは、当該技術分野において既知の材料および方法を実施して水接触角およびホルムアミド接触角によって測定した。結果を以下の表にまとめている。この表から、Novec界面活性剤を含有する実施例2のフィルムは相当低い表面エネルギーを有していたことがわかる。
【表1】

【0052】
実施例2のフィルムは、約97.5°の水接触角を有し、実施例1のフィルムは約65°の水接触角を有していた。
【0053】
実施例4
ITB調製
DMF中の10gの20%フェノキシ樹脂であるPKHH−XLVを、1.95gのカーボンブラック分散溶液(固形分含有量18.38%)、0.01gの非イオン性界面活性剤StepFac−8171(Stepan)および2mgのフルオロ界面活性剤FC−4432(3M製)を混合した。30分間ロール混合した後、溶液を10−milのBirdバーを用いてステンレススチールのモールド上にコーティングし、65℃で30分間、145℃で30分間、および次いで180℃で30分間乾燥した。
【0054】
得られたITBは、当該技術分野において既知の材料および方法を実施して試験し、表面エネルギー試験結果を以下の表に示す。この表から、得られたITBは、例えば実施例1のフィルムに関して上記で与えられたデータに比べて低い表面エネルギーを有することがわかる。
【表2】

【0055】
水接触角は平均約98.6°であり、例えばフルオロ界面活性剤を含有しない実施例1のフィルムの水接触角と比べて、ITBの表面エネルギーが低いことを示す。
【0056】
ITBフィルムの表面抵抗率は9.95×1010Ω/□であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非イオン性界面活性剤およびフッ素化界面活性剤を含む可撓性転写部材。
【請求項2】
第1の層および最終層を含む複数の可撓性層を含む、請求項1に記載の転写部材。
【請求項3】
前記第1の可撓性層が前記非イオン性界面活性剤を含み、前記最終層が前記フッ素化界面活性剤を含む、請求項2に記載の転写部材。
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤が、約0.05重量%〜約0.15重量%の量で存在する、請求項1に記載の転写部材。
【請求項5】
前記フッ素化界面活性剤が、約0.006重量%〜約0.06重量%の量で存在する、請求項1に記載の転写部材。
【請求項6】
電気的特性を調節する材料をさらに含む、請求項1に記載の転写部材。
【請求項7】
前記材料がカーボンブラックを含む、請求項6に記載の転写部材。
【請求項8】
外面が、少なくとも約70°の水接触角;約10Ω/□〜約1013Ω/□の表面抵抗率;またはその両方を含む、可撓性転写部材。
【請求項9】
フッ素化界面活性剤を含む、請求項8に記載の転写部材。
【請求項10】
非イオン性界面活性剤を含む、請求項8に記載の転写部材。

【公開番号】特開2012−159838(P2012−159838A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−9354(P2012−9354)
【出願日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】