説明

画像形成媒体、画像形成媒体の作製方法および画像形成方法

【課題】周囲の紫外線への露出によって画像または画像コントラストが劣化することなく長時間安定なままである画像再形成可能な画像形成媒体を提供する。
【解決手段】基材と、基材上にコーティングした、または基材に含浸させた画像化層であって、少なくとも1つのフォトクロミックユニットがその中にグラフト化されたポリマを含み、任意選択でポリマ結合剤に分散させたフォトクロミックポリマを含む画像化層と、を含み、画像化層は、熱および光に反応して無色状態と着色状態との間で可逆的な遷移を示し、画像化層は、光がない中で加熱された場合には、着色状態から無色状態への遷移を示さない画像形成媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、画像再形成可能な用紙へのインクレス印刷のための基材、方法および装置を対象とする。特に、諸実施形態では、本開示は、フォトクロミックポリマまたはポリマ骨格にグラフト化されたフォトクロミック材料を含み、任意選択でポリマ結合剤に分散される組成物など、熱および光によって画像形成可能でかつ消去可能な組成物を利用するインクレス印刷用紙など、画像再形成可能なインクレス印刷基材を対象とする。画像化材料に熱および紫外線を加えて変色させることによって画像化を行い、画像化材料に可視光と任意選択で熱とを加えて変色を逆行させることによって消去を行う。他の諸実施形態は、インクレス印刷基材を用いるインクレス印刷法、ならびにこのような印刷のための装置およびシステムを対象とする。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷は、十分に確立された市場であり、またプロセスであり、基材上にインクの液滴を像様に噴出することによって画像が形成される。インクジェットプリンタは、家庭環境およびビジネス環境で、特に、インクジェットプリンタのコストは低いため家庭環境で広く使用されている。これらのインクジェットプリンタにより通常、標準的な事務用紙、透明紙、印画紙など幅広い基材上に、白黒の文章から写真画像に及ぶ高品質画像を生成することが可能となる。
【0003】
しかしながら、プリンタのコストが低いにもかかわらず、交換インクジェットカートリッジのコストが高いことがあり、時折プリンタ自体のコストよりも高いことがある。これらのカートリッジは頻繁に交換しなければならず、したがってインクカートリッジの交換コストは、インクジェット印刷に関する主な消費者の苦情である。よって、インクカートリッジの交換コストを低減することは、インクジェットプリンタのユーザに対する著しい向上となるはずである。
【0004】
加えて、多くの紙文書が読まれた後、程なく処分される。紙は安価ではあるが、処分される紙文書の量は莫大であり、これら処分される紙文書の処理により、重大なコストの問題および環境問題が浮上する。したがって、所望の画像を含むための新しい媒体を、またこのような媒体を作製し使用するための方法を提供することが引き続き望まれる。その態様において、再利用可能で、コストおよび環境の問題を削減することが望ましいはずであり、また、最終使用者にとって慣習的に受入れ可能で使用および保存が容易である媒体を提供するためにフレキシブルで紙のようであることも望ましい。
【0005】
一時的な画像形成および画像蓄積のために利用可能な技術があるが、これらの技術は通常、紙の代用品としての大部分の用途について望ましいとはいえない結果しかもたらさない。例えば、代替技術には、液晶ディスプレイ、電気泳動ディスプレイおよびジリコン(gyricon)画像媒体が含まれる。しかしながら、これらの代替技術は多くの例において、所望の画像再形成可能性(reimageability)を提供するが、伝統的な紙の外観および感触を有する文書を提供しないことがある。
【0006】
フォトクロミック材料、すなわち、可逆的にまたは不可逆的に光誘起により変色する材料を用いる画像化技法が公知であり、例えば、米国特許第3,961,948号は、有機膜形成結合剤中に分散した少なくとも1種のフォトクロミック材料を含むフォトクロミックな画像化層における可視光誘起による変化に基づく画像化方法を開示している。
【0007】
これらの、また他のフォトクロミックな(あるいは画像再形成可能なまたは電気的な)用紙は、画像および文書を一時的に蓄積するために何度も再利用することができる画像化媒体を提供することができるため望ましい。例えば、フォトクロミックに基づく媒体についての用途には、例えば電子ペーパ文書など、画像再形成可能な文書が含まれる。画像再形成可能な文書により、情報をユーザが望む限り保持することが可能となり、その後、情報を消去することも、または異なる情報を有する画像化システムを用いて画像再形成可能な文書を再画像化することもできる。
【0008】
上述の手法により画像再形成可能な一時的な文書が提供されてきたが、より長い画像寿命、ならびに、より望ましい紙のような外観および感触を提供する画像再形成可能な用紙の設計が望まれる。例えば、フォトクロミック紙向けの公知の手法により一時的な可視画像が提供される場合、これらの可視画像は、周囲の室内光中にも、また特に太陽光中にも存在する紫外線などの紫外線、ならびに可視光の影響を非常に受けやすい。この紫外線および可視光の存在により、可視画像が紫外線による劣化の影響を受けやすくなるため、画像化されていない領域が暗くなり、それにより所望の画像と背景領域または画像化されていない領域との間のコントラストが低下する。
【0009】
すなわち、一時的な文書に関係する問題は、フォトクロミック分子が吸収する周囲の紫外線〜可視光(<420nmなど)に対する画像化されていない領域の感度である。しばらくすると画像化されていない領域が着色し、文書の見栄えが悪くなる。というのは、ホワイトと着色状態との間のコントラストが減少するからである。米国特許出願第10/834,529号に記載されている1つの手法は、材料の異性化(すなわち、着色の誘発)が可能な365nm前後を中心とする入射光の帯域通過窓(band−pass window)を作製することによって波長<420nmの光に対して画像を安定化させることである。しかしながら、これらの文書の画像化されていない領域は、依然として365nm前後を中心とする波長の紫外線〜可視光の影響を受けやすい。
【0010】
公知の一時的な文書に一般に関係する別の問題は、書込みについてでさえ変色プロセスが遅いことがあることである。すなわち、コーティングされた基材中の分子幾何学により、フォトクロミック材料が無色状態から着色状態へ、または逆に、配向を速く変化させることが困難であることがある。結果として、書込みプロセスが遅くなってしまうことがあるために、より長い書込み露光の適用が必要となる。
【0011】
【特許文献1】米国特許第3,961,948号明細書
【特許文献2】米国特許出願第10/834,529号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
一時的な文書など画像再形成可能な媒体上に形成される画像が、周囲の紫外線への露出によって画像または画像コントラストが劣化することなく長時間安定なままであることが一部の用途では望ましい。しかしながら、媒体の再画像化を可能にするために、必要に応じて、この画像を消去することができることも望まれる。書込みプロセスおよび消去プロセスが速く、適切な書込みまたは消去露光の適用により、可能な限り速くフォトクロミック材料が状態を変化させることも望まれる。電子ペーパ文書は紙面画像を、ユーザがその紙面画像を見る必要がある限り、周囲の光によって画像を劣化させることなく維持すべきである。その後、ユーザがコマンドで、この画像を消去する、または異なる画像と置き換えることができることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示は、諸実施形態において、熱および光によって画像形成可能でも消去可能でもあり、フォトクロミックポリマまたはポリマ骨格にグラフト化されたフォトクロミック材料を含み、任意選択でポリマ結合剤に分散される組成物を利用する画像再形成可能な画像形成媒体を提供することによって、これらの、また他の要求に対処することができる。画像化材料に熱および紫外線を加えて変色させることによって画像化を行い、画像化材料に可視光と任意選択で熱とを加えて変色を逆行させることによって消去を行う。本開示は、他の諸実施形態において、画像再形成可能なインクレス印刷基材を用いるインクレス印刷法、ならびにこのような印刷のための装置およびシステムを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
一般に、様々な例示的な諸実施形態において、任意選択でポリマ結合剤に分散させたフォトクロミックポリマを含む組成物など、熱および光によって画像形成可能でも消去可能でもある組成物を用いて形成されるインクレスで画像再形成可能な用紙または画像形成媒体が提供される。画像化層(imaging layer)を紫外線および熱にさらすことにより、フォトクロミックポリマが無色状態から着色状態に容易に変換し、その後、熱および光が取り除かれると着色状態でロッキングされる。同様に、画像化層を可視光および任意選択の熱にさらすことにより、フォトクロミックポリマが着色状態から無色状態に容易に変換し、その後、熱および光が取り除かれると無色状態でロッキングされる。この加熱により一般に、着色状態と無色状態との間の切替えに関与する異性化プロセスに必要な幾何学的変化に必要となる、フォトクロミック成分についてのより高い移動度が提供される。したがってこの組成物は、画像形成媒体における、透明状態と着色状態の間で可逆的な遷移を示す。着色状態とは、諸実施形態において、例えば、可視波長が存在することを指し、同様に、無色状態とは、諸実施形態において、例えば、可視波長が全くまたは実質的に存在しないことを指す。
【0015】
諸実施形態では、この画像形成媒体が一般に、適切な基材材料上にコーティングした、もしくは適切な基材材料に含浸させた、または第1の基材材料と第2の基材材料(すなわち、基材材料とオーバーコート層)との間にはさまれた、もしくは積層された画像化層を含む。
【0016】
この画像化層は、任意選択でポリマ結合剤に分散される任意の適切なフォトクロミックポリマ、またはポリマ骨格にグラフト化されたフォトクロミック材料を含むことができる。このフォトクロミックポリマは通常、基本ポリマ骨格にグラフト化された適切なフォトクロミック材料もしくはフォトクロミックユニットを有する任意の適切なポリマであり、このフォトクロミック材料はポリマ主鎖に、またはポリマの側鎖(side chain)または側枝(branch)に含めることができる。フォトクロミック材料およびポリマは、グラフト化された状態にある場合に、熱および紫外線などの光にさらすと、フォトクロミック材料が第1の透明または無色状態から第2の着色状態へと容易に切り替わることができ、可視光などの光と任意選択で熱とにさらすとフォトクロミック材料が第2の着色状態から第1の透明または無色状態へと容易に切り替わることができるように選択される。諸実施形態における着色状態の変化は可逆的であり、したがって画像を「消去する」ことができ、画像形成媒体をブランク状態に戻すことができる。
【0017】
諸実施形態において、画像化層を形成するために任意の適切な組成物を使用することができる。例えば、画像化層は、任意選択でポリマ結合剤に分散されるフォトクロミックポリマ、またはポリマ骨格にグラフト化されたフォトクロミック材料を含むことができる。これらの活性画像化材料は、溶媒、溶液、ポリマ結合剤等に分散させる、マイクロカプセル化した材料の形で提供する、閉じたマトリックスに組み込んで画像化組成物を定位置に保持するなど、画像化層を形成するための任意の適切な媒体に分散させることができる。諸実施形態において、この画像形成反応は、透明状態と着色状態との間の異性化による変化は時間が経っても材料を消費しないため、ほぼ無限回数可逆的となることができる。
【0018】
任意の適切なフォトクロミック材料を使用し、ポリマに組み込むことができ、このフォトクロミック材料は熱および光にさらすと必要とされる変色を示す。このフォトクロミック材料は、異なる吸収スペクトルを有する2つの形の間で電磁放射の吸収によって一方向または両方向に誘起される化学種の可逆的な転換であるフォトクロミズムを示すことができる。第1の形は熱力学的に安定で、紫外線などの光の吸収によって誘起して第2の形に変換することができる。第2の形から第1の形への逆反応が、例えば熱的にまたは可視光などの光の吸収によって、あるいはその両方によって起こることがある。フォトクロミック材料の様々な例示的な諸実施形態は、3つまたはそれ以上の形の間で可逆的な転換が起こる可能性がある場合には、2つを上回る形の間の化学種の可逆的な転換も網羅することができる。諸実施形態のフォトクロミック材料は、各々が可逆的に相互変換可能な形を有する1種、2種、3種、4種またはそれ以上の異なるフォトクロミック材料で構成することができる。本明細書中で使用する用語「フォトクロミック材料」とは、フォトクロミック材料の特定の種のすべての分子を、それらの一時的な異性型にかかわらず指す。例えば、フォトクロミック材料がいかなる瞬間でも、スピロピランおよびメロシアニンとして異性型を示すスピロピラン種である場合、フォトクロミック材料の分子は完全にスピロピランであっても、完全にメロシアニンであっても、またはスピロピランとメロシアニンとの混合物であってもよい。様々な例示的な諸実施形態では、フォトクロミック材料の各タイプについて、一方の形は無色または弱く着色し、他方の形は異なる色に着色していてよい。
【0019】
このフォトクロミック材料は、例えば有機フォトクロミック材料を含むフォトクロミック紙を提供する際に有用な任意の適切なフォトクロミック材料でよい。フォトクロミック材料の例には、スピロピラン類、スピロオキサジン類およびチオスピロピラン類のような関連化合物、ベンゾおよびナフトピラン類(クロメン類)、スチルベン、アゾベンゼン類、ビスイミダゾール類、スピロジヒドロインドリジン類、キノン類、ペリミジンスピロシクロヘキサジエノン類、ビオロゲン類、フルギド類、フルジミド類、ジアリールエテン類、ヒドラジン類、アニル類、アリールジスルフィド類、アリールチオスルホネート類等が含まれる。アリールジスルフィド類およびアリールチオスルホネート類において、適切なアリール基には、フェニル、ナフチル、フェナントレン、アントラセン、およびそれらの置換された基等が含まれる。これらの材料は様々に、スピロピラン類やその関連化合物などは複素環開裂(heterocyclic cleavage)を受け、ヒドラジンやアリールジスルフィド化合物などは同素環開裂(homocyclic cleavage)を受け、アゾ化合物、スチルベン化合物等はシス−トランス異性化を受け、フォトクロミックキノン類などはプロトンまたは基転移光互変異を受け、ビオロゲン類などは電子移動によりフォトクロミズムを受けることができる。材料の具体例には、以下のものが含まれる。
【0020】
【化1】

【0021】
これらの構造において、様々なR基(すなわち、R、R、R、R、R)は独立して、これらに限定されないが、水素;シクロプロピル、シクロヘキシルなどの環状アルキル基、ならびにビニル(HC=CH−)、アリル(HC=CH−CH−)、プロピニル(HC≡CH−)などの不飽和アルキル基を包含するメチル、エチル、プロピル、ブチルなどのアルキル(前記のそれぞれについて、アルキル基は、1〜約30など炭素数が1〜約50以上である);フェニル、ナフチル、フェナントレン、アントラセン、それらの置換された基等を包含し、約6〜約20など炭素数が約6〜約30であるようなアリール;約7〜約30など炭素数が約7〜約50であるようなアリールアルキル;シリル基;ニトロ基;シアノ基;フルオライド、クロライド、ブロマイド、アイオダイド、およびアスタタイドなどのハライド原子;第一、第二、および第三アミンを包含するアミン基;ヒドロキシ基;例えば、1〜約30など炭素数が1〜約50であるようなアルコキシ基;約6〜約20など炭素数が約6〜約30であるようなアリールオキシ基;1〜約30など炭素数が1〜約50であるようなアルキルチオ基;約6〜約20など炭素数が約6〜約30であるようなアリールチオ基;アルデヒド基;ケトン基;エステル基;アミド基;カルボン酸基;スルホン酸基等を包含する任意の適切な基でよい。これらのアルキル、アリール、およびアリールアルキル基は、例えば、シリル基;ニトロ基;シアノ基;フルオライド、クロライド、ブロマイド、アイオダイド、およびアスタタイドなどのハライド原子;第一、第二、および第三アミンを包含するアミン基;ヒドロキシ基;1〜約10など炭素数が1〜約20であるようなアルコキシ基;約6〜約10など炭素数が約6〜約20であるようなアリールオキシ基;1〜約10など炭素数が1〜約20であるようなアルキルチオ基;約6〜約10など炭素数が約6〜約20であるようなアリールチオ基;アルデヒド基;ケトン基;エステル基;アミド基;カルボン酸基;スルホン酸基などの基で置換することもできる。ArおよびArは、独立して、これらに限定されないが、フェニル、ナフチル、フェナントレン、アントラセン等、ならびにアルキル、アリール、およびアリールアルキル基についての前述した置換基のいずれかを包含する置換基を含む、任意の好適なアリールまたはアリールを含有する基でよい。スピロピランの構造式におけるXは、N、O、Sなどの好適なヘテロ原子である。Yは、−N−または−CH−であってもよい。ビオロゲンの構造式におけるXは、例えば、F、Cl、Br、I、BF、PF、B(C等であってもよい。アリールチオスルホネートにおけるXは、例えば、−O−、S、−NH−等でよい。
【0022】
諸実施形態において、フォトクロミック材料がポリマ鎖にグラフト化されているため、着色型および無色型の一方から他方へと変換するために熱および光照射の下で十分な移動度を示すようフォトクロミック材料を選択することが望ましい。例えば、一部のフォトクロミック紙では、小分子フォトクロミック材料が単にポリマ結合剤に分散している。このため、時間が経つと着色状態から透明状態へと望ましくなく、または時期早尚に緩和して戻るのに十分な分子の移動度がある。この退色反応には幾何学的変化が必要であり、媒体中での移動度を増大させることにより、この幾何学的変化はより容易となる。この退色の速度を大幅に落とし、したがってより長持ちする画像を提供するためには、フォトクロミック材料の移動度を低減させることが望まれる。したがって、諸実施形態では、ポリマのフォトクロミック材料を使用する。フォトクロミック材料はポリマ鎖に付着しているため、フォトクロミック材料の移動度が低減され、結果として、望ましくない退色反応の速度が大幅に落とされる、または退色反応が削除される。しかしながら、(そのガラス転移温度を下回る温度におけるポリマのような)粘性の高い媒体中では着色反応も遅く、それにより書込みプロセスが困難となる。このため、諸実施形態では、紫外線照射と共に熱を加えることによって、フォトクロミック材料の移動度を増大させる。これにより速い書込みがもたらされる。
【0023】
しかしながら、書込みに、また任意選択で消去に熱を使用するため、フォトクロミック材料が熱的に安定であることが諸実施形態では望まれる。すなわち、フォトクロミックポリマに熱を加えるだけでは、異なる着色状態と透明状態との間でフォトクロミック材料が切り替わらないことが諸実施形態では望まれる。例えば、一般的なフォトクロミック材料のスピロピランは熱的に安定ではない。この材料は、加熱されるとその着色状態から色あせる。したがって、これらの諸実施形態において使用することができる熱的に安定な適切なフォトクロミック材料には、例えば、ジアリールエテンおよびフルギドのフォトクロミック材料が含まれる。これらのフォトクロミック材料の例示的な構造、およびこれらのフォトクロミック材料がどのように状態変化するのかを以下に示す。
【0024】
【化2】



【0025】
フォトクロミック材料はポリマ鎖にグラフト化され、このグラフト化は(基本)ポリマ主鎖または骨格にあっても、ポリマ主鎖に付着している側鎖にあっても、これらの両方にあってもよい。加えて、諸実施形態において、個々のポリマ鎖は1つまたは複数のフォトクロミックユニットを含むことができ、1つまたは複数の異なるタイプのフォトクロミックユニットを含むことができる。したがって、ポリマ鎖にグラフト化されたフォトクロミック材料の例示的な描写を以下に示す。
【0026】
【化3】

【0027】
nはポリマ鎖の繰り返し単位の数を表し、約5〜約200など1〜約1,000以上の範囲に及ぶことができる。
【0028】
任意の適切なポリマ骨格を、ポリマ含有フォトクロミック材料を形成する鎖として使用することができる。ポリマは公知の方法によって合成することができる。例えば、1つの適切な方法は、重合可能な基に付着しているフォトクロミック基を含むモノマの重合にある。この方法を用いることによって2つのタイプのポリマ、ポリマ骨格に付着したフォトクロミック基および主鎖にフォトクロミック基を含む主鎖ポリマを得ることができる。アクリルまたはメタクリル二重または三重結合を含むがこれらに限定されない重合可能な基を用いることによって、側鎖ポリマを合成することができる。重合可能な基の具体例には、HC=CH−C(O)−O−(アクリル)、HC=C(CH)−C(O)−O−(メタクリル)、HC=C(C)−C(O)−O−(エタクリル)、−CH=CH(ビニル)、および−C(CH)=CH等が含まれる。例えば、上に示すフルギドポリマは、AIBNのようなラジカル開始剤の存在下における単量体フルギド−OOC−C(CH)=CH単量体の重合によって得られる。例えば、フォトクロミック基を含む二官能性分子と第2の二官能性分子との間の縮合反応によって、主鎖ポリマを合成することができる。これらの材料の製造に使用可能な典型的な縮合反応には、エステル化、アミド形成、エーテル形成他が含まれる。例えば、上に示すジアリールエテンポリマは、HO−ジアリールエテン−OHとカルボン二価酸HOOC−(CH−COOHとの縮合によって得られる。これらの合成手順は、重合の当業者には周知である。
【0029】
別の適切な方法は、既に形成されたポリマ鎖の後官能基化(post−functionalization)で成り立つ。このプロセスでは、あらかじめ形成されたポリマ鎖の主鎖または側鎖基にフォトクロミック化合物を化学結合させる。例えば、ポリアクリル酸ポリマを適切にアルコールで終端したフォトクロミック基と反応させることによって、使用可能なフォトクロミックポリマを得ることができる。後官能基化は、完全であっても部分的にすぎなくてもよい。
【0030】
適切なポリマには、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなポリアルキルアクリレート類、ポリカーボネート類、ポリエチレン類、酸化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン類、ポリ(スチレン)−co−(エチレン)、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリアリールスルホン類、ポリアリールエーテル類、ポリオレフィン類、ポリアクリレート類、ポリビニル誘導体、セルロース誘導体、ポリウレタン類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリエステル類、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等が含まれるが、これらに限定されない。ポリスチレン−アクリロニトリル、ポリエチレン−アクリレート、塩化ビニリデン−塩化ビニル、酢酸ビニル−塩化ビニリデン、スチレン−アルキド樹脂、などの共重合体材料も、適切なポリマ材料の例である。これらの共重合体は、ブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であっても、交互共重合体であってもよい。一部の諸実施形態では、ポリメチルメタクリレートまたはポリスチレンが、コストおよび広い利用可能性の点でポリマ鎖となる。
【0031】
画像形成材料(フォトクロミックポリマ)は、任意選択で、追加のポリマ結合剤など任意の適切なキャリアに分散させることができる。
【0032】
有機ポリマまたは水性ポリマに分散可能な組成物は共に、使用する成分に応じて使用することができる。例えば、水性の組成物にはポリビニルアルコールが適切な適用溶媒であり、有機可溶性組成物にはポリメチルメタクリレートが適している。
【0033】
ポリマ結合剤の適切な例には、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなポリアルキルアクリレート類、ポリカーボネート類、ポリエチレン類、酸化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン類、ポリ(スチレン)−co−(エチレン)、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリアリールスルホン類、ポリアリールエーテル類、ポリオレフィン類、ポリアクリレート類、ポリビニル誘導体、セルロース誘導体、ポリウレタン類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリエステル類、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等が含まれるが、これらに限定されない。ポリスチレン−アクリロニトリル、ポリエチレン−アクリレート、塩化ビニリデン−塩化ビニル、酢酸ビニル−塩化ビニリデン、スチレン−アルキド樹脂、などの共重合体材料も、適切な結合剤材料の例である。これらの共重合体は、ブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であっても、交互共重合体であってもよい。一部の諸実施形態では、ポリメチルメタクリレートまたはポリスチレンが、コストおよび広い利用可能性の点でポリマ結合剤となる。したがって、これらの任意選択のポリマ結合剤材料は、ポリマにはポリマ鎖にグラフト化されたフォトクロミック材料がなく、任意選択の結合剤ポリマはフォトクロミックポリマと化学結合していないこと以外は、フォトクロミックポリマを形成する際に使用する基本ポリマと同じでよい。このポリマ結合剤は、使用した場合、コーティングまたは被膜形成組成物を提供する役割を有する。しかしながら、諸実施形態では、フォトクロミック材料それ自体がポリマであるため、別のポリマ結合剤は必要とされない。
【0034】
ポリマ結合剤として相変化材料を使用することもできる。相変化材料は当技術分野で公知であり、例えば、Baker Petrolite,Inc.製のPolywax(登録商標)2000、Polywax(登録商標)1000、Polywax(登録商標)500などの結晶性ポリエチレン類、Baker−Hughes Inc.製のX−2073などの酸化ワックスおよびMekonワックス、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/一酸化炭素共重合体、ポリエチレン−b−(ポリエチレングリコール)類等を含む、アルキレン部分がエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン等でよいポリエチレン−b−ポリアルキレングリコールなどの結晶性ポリエチレン共重合体、結晶性ポリアミド類、ポリエステルアミド類、ポリビニルブチラール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、加水分解ポリビニルアルコール、ポリアセタール、結晶性ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンスクシネート)、結晶性セルロースポリマ、脂肪アルコール類、エトキシ化脂肪アルコール類等、ならびにこれらの混合物を含む。
【0035】
諸実施形態において、画像化組成物をある形で適用し、使用するために別の形に乾燥させることができる。したがって、例えば、フォトクロミックポリマを含む画像化組成物と、任意選択の結合剤ポリマとを、基材に塗布する、または基材に含浸させるために溶媒に溶解させる、または分散させることができ、この溶媒を後に蒸発させて乾燥層を形成する。
【0036】
一般に、画像化組成物は、組成物の乾燥総重量の、約30〜約70重量パーセントのキャリアなど約5〜約99.5重量パーセントのキャリアと、約0.1〜約5重量パーセントのフォトクロミックポリマ画像化材料など約0.05〜約50重量%のフォトクロミックポリマ画像化材料と、など、適切な量でキャリアおよび画像化材料を含むことができる。
【0037】
画像形成媒体基材に画像化層を適用するために、画像形成層組成物を任意の適切なやり方で塗布することができる。例えば、画像形成層組成物を任意の適切な溶媒またはポリマ結合剤と混合塗布し、後に硬化または乾燥させて所望の層を形成する。さらに、この画像形成層組成物を、別個の異なる層として支持基材に適用する、または支持基材に含浸させるように塗布することができる。
【0038】
画像形成媒体は、少なくとも一方の面に画像化層がコーティングまたは含浸された支持基材を含むことができる。要望に応じて、基材のいずれか一方の面のみに、または両方の面に画像化層をコーティングまたは含浸することができる。画像化層の両方の面にコーティングする、または含浸する場合、あるいは画像のより高い可視性が望まれる場合、支持基材と画像化層(1つまたは複数)との間、またはコーティングした画像化層とは反対の支持基材面に不透明な層を含めることができる。したがって、例えば、片面の画像形成媒体が望まれる場合、画像形成媒体は、一方の面に画像化層をコーティングまたは含浸し、他方の面に例えば白色層など不透明な層をコーティングした支持基材を含むことができる。また、画像形成媒体は、一方の面に画像化層がコーティングまたは含浸され、基材と画像化層との間に不透明な層を有する支持基材を含むことができる。両面の画像形成媒体が望まれる場合、画像形成媒体は、両面に画像化層がコーティングまたは含浸され、コーティングされた2つの画像化層間に少なくとも1つの不透明な層が挿入された支持基材を含むことができる。もちろん、必要に応じて、従来の紙など不透明な支持基材を、別個の支持基材および不透明な層の代わりに使用することもできる。
【0039】
任意の適切な支持基材を使用することができる。例えば、支持基材の適切な例には、ガラス、セラミックス、木、プラスチック、紙、繊維、織物製品、ポリマ膜、金属などの無機基材等が含まれるが、これらに限定されない。プラスチックは、例えば、ポリエチレン膜、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホンなどのプラスチック膜でよい。紙は、例えば、XEROX(登録商標)4024用紙などの普通紙、罫線入りノート用紙、ボンド紙、Sharp Companyのシリカコート紙などコート紙、Jujo紙等でよい。基材は単層、あるいは各層が同一または異なる材料である多層であってよい。諸実施形態において、基材は、例えば、約0.3mm〜約5mmの範囲の厚さを有するが、必要に応じて、これ以上またはこれ以下の厚さも使用することができる。
【0040】
画像形成媒体において不透明な層を使用する場合、任意の適切な材料を使用することができる。例えば、白い紙のような外観が望まれる場合、二酸化チタン、または酸化亜鉛、無機炭酸塩等のような他の適切な材料の薄いコーティングにより不透明な層を形成することができる。不透明な層は、例えば、約0.1mm〜約5mmなど約0.01mm〜約10mmの厚さを有することができるが、他の厚さを使用することもできる。
【0041】
必要に応じて、塗布された画像化層の上にさらなるオーバーコーティング層を塗布することもできる。例えば、さらなるオーバーコーティング層を塗布して、基材の上の定位置で下層をさらに接着させる、耐摩耗性を提供する、外観および感触を改善すること等ができる。オーバーコーティング層は基材材料と同一であっても異なっていてもよいが、諸実施形態において、オーバーコーティング層および基材層の少なくとも一方は、形成された画像の可視化を可能にするために透明である。オーバーコーティング層は、例えば、約0.1mm〜約5mmなど約0.01mm〜約10mmの厚さを有することができるが、他の厚さも使用できる。しかしながら、諸実施形態において、画像化工程時に形成される水の容易な蒸発を画像化後の加熱工程において可能にするためには、オーバーコーティング層を使用しない。例えば、必要に応じて、または必要であれば、コーティングされた基板を、プラスチックシートなどの支持シート間に積層することができる。
【0042】
画像化材料を基材上にコーティングさせる、または基材に含浸させる諸実施形態では、当技術分野において利用可能な任意の適切な方法によってコーティングを行うことができ、コーティング方法は特に限定されない。例えば、画像化材料組成物の溶液に基材をディップコーティングし、その後、任意の必要な乾燥を行うことによって画像化材料を基材上にコーティングさせる、または基材に含浸させることも、あるいは基材を画像化組成物でコーティングしてその層を形成することもできる。同様に、類似の方法によって保護コーティングを適用することもできる。
【0043】
その方法の態様において、本開示は、基材と、任意選択でポリマ結合剤に分散されるフォトクロミックポリマ、またはポリマ骨格にグラフト化されたフォトクロミック材料を含む画像化層とで構成される画像形成媒体を提供することを含み、この組成物は、基材上へのまたは基材内へのドライコーティングとして提供することができる。別個の書込みおよび消去プロセスを提供するために、画像化材料に熱と紫外線など第1の波長の光とを加えて変色させることによって画像化を行い、画像化材料に可視光など第2の波長の光と任意選択で熱とを加えて変色を逆行させることによって消去を行う。したがって、例えば、画像化層全体が、透明状態から着色状態へとフォトクロミック材料を変換させる第1の(紫外線など)波長で敏感になることができ、着色状態から透明状態へとフォトクロミック材料を変換させて戻す第2の異なる(可視光など)波長で敏感になることができる。
【0044】
諸実施形態において、光照射の前または光照射と同時に、画像化層に加熱を適用する。この熱により、画像化組成物、特にフォトクロミックポリマの温度が上昇して、画像化組成物の移動度を上昇させ、したがって、一方の色状態から他方の色状態へのより容易で、かつより速い変換を可能にする。加熱により画像化組成物が所望の温度まで照射中に上昇する場合に、この加熱を照射前または照射中に適用することができる。任意の適切な加熱温度を使用することができるが、例えば、使用する特定の画像化組成物に依存することになる。例えば、フォトクロミックポリマが、グラフト化されたフォトクロミックユニットを有する非晶質ポリマである場合、この加熱を行って、フォトクロミックポリマをそのガラス転移温度まで、またはガラス転移温度から約10℃以内、約50℃以内もしくは約100℃以内のガラス転移温度近くまで上昇させることができる。この加熱温度は、フォトクロミックポリマ骨格またはポリマ結合剤の化学的劣化が起こらないのであれば、必要なだけ高くてよい。他の諸実施形態では、例えば、フォトクロミックポリマが、グラフト化されたフォトクロミックユニットを有するポリマを含む相変化組成物である場合、この加熱を行って、フォトクロミックポリマをその融点まで、または融点から約5℃以内、約10℃以内もしくは約20℃以内の融点近くまで上昇させることができるが、一部の諸実施形態では、基材上のフォトクロミックポリマの望ましくない動き、または流れを回避するために、この温度が融点を超えないことが望まれる。
【0045】
書込みプロセスでは、発光ダイオード(LED)などの紫外線源など適切な活性化波長の画像化光に、フォトクロミックポリマが、そのガラス転移温度もしくは融解温度である、またはガラス転移温度もしくは融解温度近くの温度である場合、画像形成媒体を像様にさらす。画像化光はフォトクロミックポリマに十分なエネルギを供給して、フォトクロミックユニットを透明状態から着色状態へと異性化させるなど変換し、画像化位置に着色画像を生成する。画像形成媒体の特定の位置に照射されるエネルギの量およびその位置でのフォトクロミックポリマの温度の一方または両方は、その位置で生成される色の強度または濃さに影響を与えることができる。したがって、例えば、より少ない量のエネルギを与え、またはこの位置でより低温のフォトクロミックポリマにこのエネルギを与え、したがってより少ない量の着色フォトクロミックユニットを発生させることによって、より弱い強度の画像を形成することができ、この位置により多くの量のエネルギを与え、またはこの位置でより高温のフォトクロミックポリマにこのエネルギを与え、したがってより多くの量の着色フォトクロミックユニットを発生させることによって、より強い強度の画像を形成することができる。適切なフォトクロミックポリマおよび照射条件を選択すると、画像形成媒体の特定の位置における照射されるエネルギの量およびポリマ温度の変化により階調画像の形成が可能となることがあるが、他の適切なフォトクロミック材料を選択するとフルカラー画像の形成が可能となることがある。
【0046】
書込みプロセスによって画像が形成されると、フォトクロミックポリマの温度が低下して画像をロックする。すなわち、温度が低下すると、フォトクロミックユニットの移動度が減少し、したがって容易に切り替わって無色状態に戻ることはできない。加熱された温度からのこのような冷却は、追加の冷却効果のない放射冷却、周囲空気流による冷却など、任意の適切なやり方によって行うことができる。したがって、この画像化基材は、長寿命の画像寿命を示す画像再形成可能な基材を提供するが、この基材を望まれるように消去することができ、追加の画像化サイクルに再利用することができる。
【0047】
消去プロセスでは、フォトクロミックポリマが任意選択で、そのガラス転移温度もしくは融解温度である、またはガラス転移温度もしくは融解温度近くの温度である場合に、可視光など異なる波長の照射光を使用すること以外は基本的に書込みプロセスを繰り返す。この消去プロセスは、フォトクロミックユニットを着色状態から透明状態へと異性化させるなど変換し、画像化位置にある、先に形成された画像を消去する。この消去手順は、望まれるように、像様に行っても、または画像化層全体に行ってもよい。選択した光波長にさらすことでのみ消去される一部の組成物を提供することができ、一方、加熱条件下で選択した光波長にさらすことでのみ消去することができるより頑丈で熱的に安定な他の組成物を提供することができる点で、加熱工程は任意である。
【0048】
一時的な画像を形成し、その一時的な画像を消去するために使用する別々の画像化光は、例えば単一波長または波長帯域など、任意の適切な所定の波長範囲を有することができる。様々な例示的な諸実施形態において、これらの画像化光は、単一波長または狭い波長帯域を各々有する紫外線(UV)および可視光である。例えば、紫外線は、約365nmの単一波長や約360nm〜約370nmの波長帯域など、約200nm〜約475nmの紫外線波長域から選択することができる。画像を形成するために、また画像を消去するために、画像形成媒体をそれぞれ画像化光または消去光に約10ミリ秒〜約5分、特に約30ミリ秒〜約1分の範囲の時間さらすことができる。画像化光および消去光は、約0.1mW/cm〜約100mW/cm、特に約0.5mW/cm〜約10mW/cmの範囲の強度を有することができる。
【0049】
様々な例示的な諸実施形態では、例えばコンピュータまたは発光ダイオード(LED)アレイスクリーンによって、所定の画像に対応する画像化光を発生させることができ、画像形成媒体をLEDスクリーン上にまたはLEDスクリーンに近接させて所望の期間置くことによって、画像形成媒体上に画像を形成する。他の例示的な諸実施形態では、紫外線ラスタ出力スキャナ(ROS:Raster Output Scanner)を使用して、像様パターンに紫外線を発生させることができる。この実施形態は、例えば、別の従来のやり方で印刷画像を生成するためにコンピュータで駆動することができるプリンタ装置に特に適用可能である。すなわち、このプリンタは一般に、インク滴を像様に噴出するインクジェットプリントヘッドを、画像形成媒体を像様に露光する適切な紫外線プリントヘッドに置き換えることができること以外は、従来のインクジェットプリンタに対応することができる。この実施形態では、紫外線源を用いて書込みを行うので、インクカートリッジの交換は不要となる。使用することができる他の適切な画像化技法には、マスクを通して画像形成媒体に紫外線を照射すること、ライトペンを用いるなどによって画像形成媒体にピンポイント紫外線源を像様に照射すること等が含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
画像化基材を再利用するために画像を消去するには、様々な例示的な諸実施形態において、基材を適切な画像化光にさらして画像を消去することができる。基材全体を瞬時に消去光にさらす、基材を走査するなどによって連続的に基材全体を消去光にさらすなど、任意の適切なやり方でこのような消去を行うことができる。他の諸実施形態では、ライトペンを用いるなどによって、基材上の特定の点で消去を行うことができる。
【0051】
様々な例示的な諸実施形態によれば、観測者に対して画像を可視化する色コントラストとは、例えば、2つ、3つまたはそれ以上の異なる色の間のコントラストでよい。用語「色」は、色相、明度、彩度など複数の態様を包含することができ、2つの色が少なくとも1つの態様で異なる場合には、一方の色は他方の色とは異なることがある。例えば、色相および彩度は同じであるが明度が異なる2つの色は、異なる色とみなされるはずである。画像がユーザの肉眼で見える限り、例えば、レッド、ホワイト、ブラック、グレー、イエロー、シアン、マゼンタ、ブルー、パープルなど任意の適切な色を使用して色コントラストを生成することができる。しかしながら、望ましい最大色コントラストの点では、所望の色コントラストは、白い背景にグレー、ダークグレーまたはブラックの画像、明るいグレーの背景にグレー、ダークグレーまたはブラックの画像など、明るいまたは白い背景にダークグレーまたはブラックの画像である。
【0052】
様々な例示的な諸実施形態において、色コントラストは、例えば可視時間中に減少するなど、変化することがあるが、語句「色コントラスト」は、可視時間中に変化するのか一定であるのかにかかわらず、画像をユーザに対して識別可能にするのに十分な任意の程度の色コントラストを包含することができる。
【実施例】
【0053】
<実施例1>
エステル化反応についての穏やかな条件を提供することが知られている標準的なDCCカップリング手順によるジアリールエテンジフェノール(1)と二価酸(2)との間のエステル化反応によって、ジアリールエテンポリマ(3)を合成する(例えば、J.March、Advanced Organic Chemistry、第4版、1992年を参照のこと)。ジアリールエテンジフェノール(1)は、文献(Kawai,S.−H.、Gilat,S.L.、Ponsinet,R.、Lehn,J.−M.、Chem.Eur.J.、1995年、1、285)に以前報告された。
【0054】
【化4】

【0055】
1Lのトルエン中に125gのPMMAを含むポリメチルメタクリレート溶液2.5mlにポリマ(3)100mgを溶解させることによって、コーティング組成物を作製する。この組成物を撹拌して、フォトクロミックポリマ(3)の完全な溶解を確実にする。この組成物を、ギャップを3ミルに設定したブレードを用いることによって、Xerox4024用紙基材上にコーティングさせる。これにより、両面がコーティングされた用紙媒体が提供される。
【0056】
同時に加熱しながら所望の領域を紫外線(365nm)にさらすことによって、この用紙に書込みを行う。この加熱により、より速い書込みが確実となる。印刷した用紙は、周囲の室内光条件で保持した場合、1日よりも長い期間可読である。比較のための、上述のように調製した非ポリマの小分子材料をベースとするスイッチは、周囲の室内光条件で保持した場合、約20時間以内に色あせた。
【0057】
望まれる場合には、同時に加熱しながら高強度の可視光にさらすことによって、この用紙に消去を行う。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上にコーティングした、または前記基材に含浸させた画像化層であって、少なくとも1つのフォトクロミックユニットがその中にグラフト化されたポリマを含み、任意選択でポリマ結合剤に分散させたフォトクロミックポリマを含む画像化層と、
を含み、
前記画像化層は、熱および光に反応して無色状態と着色状態との間で可逆的な遷移を示し、
前記画像化層は、光がない中で加熱された場合には、前記着色状態から無色状態への遷移を示さないことを特徴とする画像形成媒体。
【請求項2】
画像形成媒体を作製する方法であって、
基材に画像化層組成物を塗布する工程を含み、
前記画像化層組成物が、少なくとも1つのフォトクロミックユニットがその中にグラフト化されたポリマを含み、任意選択でポリマ結合剤に分散させたフォトクロミックポリマを含み、
前記画像化層は、熱および光に反応して無色状態と着色状態との間で可逆的な遷移を示し、
前記画像化層は、光がない中で加熱された場合には、前記着色状態から無色状態への遷移を示さないことを特徴とする画像形成媒体の作製方法。
【請求項3】
画像を形成する方法であって、
基材と、
前記基材上にコーティングした、または前記基材に含浸させた画像化層であって、少なくとも1つのフォトクロミックユニットがその中にグラフト化されたポリマを含み、任意選択でポリマ結合剤に分散させたフォトクロミックポリマを含む画像化層と、
を含む画像形成媒体を設ける工程と、
前記フォトクロミックポリマのガラス転移温度もしくは融解温度、または前記フォトクロミックポリマのガラス転移温度または融解温度近くまで前記フォトクロミックポリマを加熱する工程と、
前記画像形成媒体を第1の波長の紫外線照射に像様にさらして可視画像を形成する工程と、
を含み、
前記画像化層は、熱および光に反応して無色状態と着色状態との間で可逆的な遷移を示し、
前記画像化層は、光がない中で加熱された場合には、前記着色状態から無色状態への遷移を示さないことを特徴とする画像形成方法。

【公開番号】特開2008−310321(P2008−310321A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153942(P2008−153942)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】