説明

画像形成方法、画像形成装置

【課題】トナーを用いて作製された箔転写面上に、シワのない良好な仕上がりを有し、強固な接着強度を有する箔画像を形成する画像形成方法を提供する。
【解決手段】ガラス転移温度が60℃以下のトナーで形成された箔転写面と転写箔Fを接触させ、この状態で端部外径が他部位の外径よりも大きい駆動ローラR1と従動ローラR2で形成されるニップ部Rnを通過させることで、箔転写面へ箔転写を行う画像形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体(画像支持体)上に箔画像を形成する画像形成方法に関し、電子写真方式により箔転写面というトナー画像領域を形成し、このトナー画像領域上に箔を転写させて箔画像を形成する画像形成方法と画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、製本、商業印刷分野やカードビジネス分野、あるいは、化粧品容器等のプラスチック成形等の分野では、「箔押し」と呼ばれる処理技術が行われている。この技術は、「ホットスタンプ法」とも呼ばれ、金属製の押し型と呼ばれる圧着部材を用いて熱と圧力の作用で基体表面に箔で形成した文字や絵柄を転写させ、一般印刷で表現が困難な金属感や光沢のある高級なイメージを付与することができる。また、最近ではキャッシュカードやクレジットカード等の偽変造防止やセキュリティのために設けられるホログラムにも箔転写の技術が展開されている。
【0003】
箔押しに使用される転写箔は、たとえば、樹脂製のフィルム状基材面に離型剤層を設け、その上に保護層や転写材層、接着剤層を配置させた構造を有し、箔を含有する転写材層は主に金属蒸着やインクを用いて形成されるものである。この様な構造を有する転写箔は、箔を転写させる素材や用途が拡大に伴って改良が進められてきた。たとえば、有機ケイ素化合物と反応性有機化合物を含有した保護層を設けることにより箔画像の耐久性を向上させたものや、基材から剥離した後に電子線照射を行って強固な保護層を形成する様にした転写箔等が検討された(たとえば、特許文献1、2参照)。また、前述したキャッシュカードやクレジットカード用の転写箔は、精密な模様を正確に、かつ、バリや欠け等の不良を発生させない転写が求められ、たとえば、高分子液晶材料を転写材層に含有させてこの課題を解消している(たとえば、特許文献3参照)。
【0004】
一方、手間をかけずに箔転写を行う方法も検討され、その中に、トナーを用いて基体上に樹脂層を形成し、その上に箔を転写する技術が検討されていた。この技術では、加熱によりトナーが軟化あるいは溶融することにより生ずる接着力と転写箔の接着層が溶融することにより生ずる接着力との相乗的な作用が得られるので基体と箔の間に強固な接着力を発現させることができる。具体的には、基体上にトナーを用いて凸状の画像や意匠模様画像を形成し、形成したトナー画像面に転写箔を重ね合わせて熱圧着して、箔の転写を行うものがある(たとえば、特許文献4参照)。
【0005】
また、基材上に予めトナーを付着させておき、この上に蒸着箔シートを重ね、その上からアイロンでホットプレスした後、蒸着箔シートを基材から剥がすことにより、基材上に金属箔を転写させる技術もある(たとえば、特許文献5参照)。この様に、トナーを用いて箔を転写する技術では、従来技術では必要とされていた押し型を使用せずに箔の転写が行えるので、箔の転写作業の短縮化や箔の転写を行う装置の簡素化を可能にしている。
【0006】
以上の様に、基体上に箔画像を形成する方法の1つに、トナーで作製した箔転写面と転写箔を加熱、溶融し、箔転写面上に接着層を介して箔画像を転写する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−1995号公報
【特許文献2】特開2007−157159号公報
【特許文献3】特開2009−90464号公報
【特許文献4】特開平1−200985号公報
【特許文献5】特開2000−127691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した箔転写面と転写箔を加熱、溶融させて箔画像を形成する方法には、形成した箔画像上に微細なシワが発生し易い傾向がみられた。これは、箔転写面を軟化、溶融させる熱量が転写箔接着層の加熱、溶融には過剰なものになるため、箔に歪みが生じて、シワを発生させているものとみられた。そこで、転写箔への過剰な熱供給を防ぐために供給熱量を低めに抑えるために加熱温度を低めに設定すると、箔転写面は十分に軟化できず、転写した箔画像を強固に保持する接着力が得られなくなった。
【0009】
この様に、従来技術では箔転写面を軟化、溶融させる加熱温度と転写箔を溶融させる加熱温度に差がみられ、シワのない良好な仕上がりを有し、強固な接着強度を有する箔画像を形成するには、両者の温度特性を揃える必要があることに本発明者は気付いた。また、生産現場におかれては、生産性の観点から箔転写面と転写箔が短時間で軟化、溶融する性能を有することが求められていた。
【0010】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、同レベルの加熱温度で箔転写面と転写箔を軟化、溶融させることにより、シワのない良好な仕上がりを有し、かつ、強固に接着した箔画像を形成する画像形成方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題が以下に記載のいずれかの構成により解消されるものであることを見出した。すなわち、請求項1に記載の発明は、
『少なくとも、
感光体を露光して静電潜像を形成する工程と、
静電潜像が形成された前記感光体にトナーを供給して箔転写面を形成する工程と、
前記感光体に形成された箔転写面を基体に転写する工程と、
前記基体に転写された箔転写面を定着する工程と、
前記箔転写面が定着された基体に転写箔を供給する工程と、
前記転写箔を前記箔転写面に接触させた状態のもとで加熱して前記箔転写面に箔を転写する工程を有する画像形成方法であって、
前記箔転写面の形成に使用されるトナーはガラス転移温度が60℃以下であり、
前記転写箔を前記箔転写面に接触させた状態のもとで加熱して前記箔転写面に箔を転写する工程は、前記転写箔と前記箔転写面が駆動ローラと従動ローラにより形成されるニップ部を通過するときに加熱して前記箔転写面へ箔を転写するものであり、
前記駆動ローラは、長手方向端部における外径が長手方向端部以外の部位における外径よりも大きいものであることを特徴とする画像形成方法。』というものである。
【0012】
請求項2に記載の発明は、
『前記駆動ローラの長手方向端部における外径と長手方向で最も小さな外径を有する部位における外径の差が0.05mm以上0.4mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。』というものである。
【0013】
請求項3に記載の発明は、
『前記従動ローラは、長手方向端部における外径が長手方向端部以外の部位における外径よりも小さいもの及び長手方向における外径が同じもののいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成方法。』というものである。
【0014】
請求項4に記載の発明は、
『前記従動ローラが、長手方向端部における外径が長手方向端部以外の部位における外径よりも小さいものであるとき、
前記従動ローラの長手方向端部における外径と長手方向で最も大きな外径を有する部位における外径の差が0.2mm以下であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成方法。』というものである。
【0015】
請求項5に記載の発明は、
『前記転写箔と前記箔転写面が定着された基体は、前記駆動ローラと前記従動ローラにより形成されるニップ部を100mm/秒以上400mm/秒以下の速度で通過するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成方法。』というものである。
【0016】
請求項6に記載の発明は、
『前記転写箔は、軟化点温度が75℃以上105℃以下の接着層を有するものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成方法。』というものである。
【0017】
請求項7に記載の発明は、
『前記駆動ローラと前記従動ローラの少なくとも一方が加熱手段を有するものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成方法。』というものである。
【0018】
請求項8に記載の発明は、
『少なくとも、
露光手段による露光により静電潜像を形成する感光体と、
静電潜像が形成された前記感光体にトナーを供給して箔転写面を形成する箔転写面形成手段と、
前記感光体に形成された箔転写面を基体に転写する転写手段と、
前記基体に転写された箔転写面を定着する定着手段と、
前記定着手段により箔転写面が定着された基体に転写箔を供給する転写箔供給手段と、
前記転写箔供給手段により供給された転写箔を前記箔転写面に接触させ、前記箔転写面に前記転写箔が接触した状態の下で加熱して、前記箔転写面に箔を転写させる箔転写手段を有する画像形成装置であって、
前記箔転写面形成手段より供給されるトナーはガラス転移温度が60℃以下であり、
前記箔転写手段は、
少なくとも、長手方向端部における外径が長手方向端部以外の部位における外径よりも大きい駆動ローラと、従動ローラを有するものであり、
前記接触した状態の箔転写面と転写箔が前記駆動ローラと従動ローラにより形成されるニップ部を通過させるときに加熱を行って前記箔転写面へ箔を転写するものであることを特徴とする画像形成装置。』というものである。
【0019】
請求項9に記載の発明は、
『前記駆動ローラの長手方向端部における外径と長手方向で最も小さな外径を有する部位における外径の差が0.05mm以上0.4mm以下であることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。』というものである。
【0020】
請求項10に記載の発明は、
『前記従動ローラは、長手方向端部における外径が長手方向端部以外の部位における外径よりも小さいもの及び長手方向における外径が同じもののいずれかであることを特徴とする請求項8または9に記載の画像形成装置。』というものである。
【0021】
請求項11に記載の発明は、
『前記従動ローラが、長手方向端部における外径が長手方向端部以外の部位における外径よりも小さいものであるとき、
前記従動ローラの長手方向端部における外径と長手方向で最も大きな外径を有する部位における外径の差が0.2mm以下であることを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。』というものである。
【0022】
請求項12に記載の発明は、
『前記駆動ローラと前記従動ローラにより形成されるニップ部を通過するときの、前記転写箔と前記箔転写面が定着された基体の速度が、100mm/秒以上400mm/秒以下であることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の画像形成装置。』というものである。
【0023】
請求項13に記載の発明は、
『前記転写箔は、軟化点温度が75℃以上105℃以下の接着層を有するものであることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の画像形成装置。』というものである。
【0024】
請求項14に記載の発明は、
『前記駆動ローラと前記従動ローラの少なくとも一方が加熱手段を有するものであることを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載の画像形成装置。』というものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、箔転写面形成用のトナーのガラス転移温度を60℃以下にし、箔転写面上に箔を転写する際に使用する駆動ローラを端部外径が他部位の外径よりも大きいものにすることで、シワ発生がなく強固な接着強度を有する箔画像の形成を可能にしている。すなわち、上記構成により、少ない加熱量で箔転写面の軟化、溶融が行える様になり、転写箔には余分な熱が加わらない様になったので、熱に起因する転写箔のシワ発生を防止することが可能になった。また、箔転写面上に箔を転写するニップ部では、駆動ローラにより転写箔の外側に向かって引っ張られる力が作用し、機械的なストレスに起因する転写箔のシワ発生を防止できる様にした。その結果、シワのない良好な仕上がりを有し、かつ、箔転写面上に強固に接着した耐久性に優れる箔画像を形成することが可能になった。
【0026】
また、上記構成によれば、箔転写時間の短縮化も可能になり、後述する実施例に記載の様に、たとえばニップ部における搬送速度が100mm/秒以上400mm/秒以下のときでも、基体上に強固な箔画像を安定して形成することが可能になった。また、箔画像を形成する際に必要な熱量も低減化され、環境にやさしい箔画像形成を可能にすることも基体される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】箔転写面Hを有する基体Pと転写箔Fを重ね合わせた状態にしてニップ部Rnを通過させるときの搬送状態を模式的に示した図である。
【図2】本発明で使用される駆動ローラの形状と好ましく使用される従動ローラの形状を示す図である。
【図3】基体上に形成された箔転写面上に箔を転写する手順を示す模式図である。
【図4】静電潜像方式により箔転写面を形成する箔転写面形成装置の概略図である。
【図5】基体上にフルカラーのトナー画像と箔画像を形成することが可能な画像形成装置の断面構成図である。
【図6】中間転写ベルト、定着装置、転写箔供給部の配置例を示す概略図である。
【図7】転写箔の断面構造を示す模式図である。
【図8】実施例で使用した評価用試料(プリント物)に作製した箔画像のレイアウトを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、基体(画像支持体)上に箔転写面というトナー画像領域を形成し、このトナー画像領域上に箔を転写して箔画像を形成する画像形成方法に関する。そして、本発明は、箔転写面の形成に使用されるトナーのガラス転移温度を60℃以下とし、転写箔を箔転写面に転写するときに使用する駆動ローラの長手方向端部外径を長手方向端部以外の部位の外径よりも大きいものにすることで上記課題を解消することを見出している。
【0029】
本発明者は、転写箔にシワが発生する原因について検討を行い、シワの発生要因には、箔転写面へ箔を接着させるための加熱に起因するものと、転写箔がニップ部を通過するときに駆動ローラより受けるストレスに起因するものの2つがあると考えた。箔転写面に箔を転写するときは、加熱により箔転写面と転写箔接着層の両方を軟化、溶融させ、箔転写面上に箔を接着させていた。この様に、箔転写面と転写箔接着層の両者がもつ接着力を相乗的に作用させて基体上に箔を接着していたが、箔転写面と転写箔接着層の軟化、溶融性がアンバランスなため、転写箔には熱が余分に供給され、その結果、転写箔にシワが発生すると考えられた。そこで、本発明者は、箔転写面を形成するトナーのガラス転移温度を下げることにより、転写箔接着層が軟化、溶融する加熱温度で箔転写面もほどよく軟化、溶融させようと考え、これを実現するトナーのガラス転移温度を見出そうと検討した。そして、ガラス転移温度が60℃以下のトナーを用いることにより、転写箔接着層と同じ加熱温度で箔転写面の軟化、溶融が行えることを見出したのである。この様にして、加熱に起因するシワの発生を防ぐことを可能にした。
【0030】
また、本発明者は、ニップ部通過するときに転写箔へ作用する力にも着目し、ニップ部を通過するときに転写箔にいろいろな方向から力が作用してひずみを生じ、その結果、シワを発生させるものと考えた。そこで、ニップ部を通過させるときに、たとえば図1中の白抜き矢印方向の様に、つまり、転写箔の幅方向外側に向けて転写箔を引っ張る力を加えながら搬送を行えばシワが発生しなくなると考えた。図1は、箔転写面Hを有する基体Pと転写箔Fを重ね合わせた状態にしてニップ部Rnを通過させるときの搬送状態を模式的に示した図で、シワ発生を防ぐために転写箔Fには白抜き矢印方向へ引っ張り力が作用していることを示している。図1(a)は転写箔Fと基体Pの搬送状態を上方から見た図、図1(b)は搬送状態を側面より見た図、図1(c)は搬送状態を正面より見た図で、図中のR1は駆動ローラ、R2は従動ローラ、Rnはニップ部を表す。
【0031】
本発明者は、図1の白ぬき矢印で示す方向へ引っ張る力を転写箔に作用させてニップ部を通過させることが可能な駆動ローラを検討した。そして、駆動ローラの形状を、たとえば、図2(a)に示す様なものにすることで、転写箔へ余分な力を加えず、しかも転写箔の幅方向外側へ引っ張り力を発現する駆動ローラが得られることを見出した。すなわち、駆動ローラの外径を長手方向に沿って変化させ、転写箔の端部を圧着する形状にして、図1に示す白抜き矢印方向の引っ張り力のみを転写箔に作用させ、それ以外の余計な力が転写箔に加わらない様にしたのである。すなわち、本発明者は、駆動ローラの長手方向端部で転写箔を圧着させる構造が、図1の白抜き矢印で示す転写箔の幅方向外側に向けて引っ張る力を最も付与し易い構造であると考えたのである。
【0032】
本発明者は、図2(a)の形状を有する駆動ローラを用いて転写箔をニップ部通過させると、駆動ローラは両端で転写箔を圧着するとともに、十分な搬送性も付与していることを見出した。この様に、図2(a)に示す形状を有する駆動ローラは、転写箔をニップ部通過させるとき、転写箔の幅方向外側に向かって引っ張る力を付与することにより、駆動ローラより受けるストレスに起因するシワの発生を回避することができる。
【0033】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0034】
ここで、本発明で用いられている用語について説明する。先ず、「箔転写面」とは、画像支持体やプラスチック成形品等の基体上の箔を転写させる領域のことで、本発明に係るトナーを用いて形成されるものである。
【0035】
また、本発明では、「製品」や「基体」という用語が用いられているが、いずれも公知の画像形成方法により画像を形成することが可能な「画像支持体」と呼ばれる支持体より構成されるものである。ここで、本発明でいう「製品」とは、「基体」の上に少なくとも箔を転写させ、箔により装飾された形態のもので、ユーザが使用可能な状態のものをいう。また、本発明でいう「基体」とは、箔による装飾を施すもののことをいい、具体的には、紙やPET(ポリエチレンテレフタレート)ベース等の画像支持体と呼ばれるものが代表的であるが、立体形状のプラスチック成形品等もその範疇に含むものとする。なお、本発明では、箔転写面が形成されたものや箔を転写したもの等、ユーザへの提供可能な状態の前段階におかれているものも「基体」と呼ぶ。
【0036】
さらに、本発明でいう「箔」とは、「転写箔」とも呼ばれるもので、一般印刷では表現が困難な金属感や光沢感を有する文字や絵柄を画像支持体上に付与するために使用されるものである。転写箔は表現の種類により、金銀箔、カラー顔料箔、ホログラム箔等、様々な種類のものがあるが、本発明ではその種類は限定されるものではない。これら転写箔を用いることにより、金色や銀色の画像や金属光沢をもったカラー画像表現、あるいはホログラム画像の形成を可能にしている。また、転写箔の構成は、たとえば、後述する図7に示す様な層構造を有するものである。すなわち、ベースとなる支持体の上に、離型層、箔の層、接着層等が設けられた構成を有するもので、画像支持体上にトナーで形成された箔転写面に接着可能にしたものである。なお、箔の層は着色層や蒸着層等から構成されるものであり、また、離型層は剥離層とも呼ばれるものである。
【0037】
最初に、本発明に係る画像形成方法(以下、箔転写方法ともいう)の概要を説明する。なお、本発明に係る画像形成方法の詳細な内容については後で詳述する。本発明で行われる箔転写方法は、たとえば、以下に示す(1)から(7)の工程を経て行われるものである。すなわち、
(1)感光体を露光して静電潜像を形成する工程
(2)静電潜像が形成された感光体に箔転写面形成用のトナーを供給して箔転写面を形成する工程
(3)感光体上に形成された箔転写面を基体に転写する工程
(4)基体上に転写された箔転写面を加熱して定着する工程
(5)定着処理した箔転写面を有する基体に転写箔を供給する工程
(6)箔転写面と転写箔を加熱して箔を箔転写面へ転写する工程
(7)転写箔を基体より除去する工程
を有するものである。この様に、上記箔転写方法では、先ず、感光体を露光して箔転写面の形状に対応する静電潜像を形成し、静電潜像が形成された感光体上にトナーを供給して箔転写面を形成する。そして、感光体上に形成された箔転写面を基体に転写し、箔転写面を加熱して基体上に定着させる。さらに、箔転写面を形成した基体に転写箔を供給して転写箔と箔転写面とが接触した状態を形成し、この状態で加熱を行うことにより箔転写面上に箔を転写させる。
【0038】
本発明は、上記(2)等の工程でガラス転移温度が60℃以下のトナーを用い、上記(6)の工程で端部外径が端部以外の部位の外径よりも大きい形状を有する駆動ローラを使用することにより、本発明の効果が奏することを見出している。
【0039】
本発明で用いられるトナーについて説明する。本発明で用いられるトナーは、ガラス転移温度が60℃以下のものである。本発明では、トナーのガラス転移温度を上記範囲にすることで、当該トナーを用いて形成された箔転写面は、転写する転写箔と同じ加熱温度で軟化、溶融することができる。後述する様に、市販の転写箔には軟化温度が80℃から120℃のいわゆるホットメルトタイプと呼ばれる接着剤が用いられている。箔転写面を形成するトナーのガラス転移温度が高いと、箔転写面を軟化、溶融させる加熱温度が高いものになり、転写箔には過剰な熱量が供給されることになった。
【0040】
本発明では、箔転写面を転写箔と同じ加熱温度で軟化、溶融することができるので、ガラス転移温度の高いトナーで形成した箔転写面を軟化するときの様な転写箔への過剰な熱供給が起こらず、熱に起因する転写箔のシワ発生を防ぐことができる。すなわち、従来技術では箔転写面を形成するトナーを軟化、溶融する際、たとえば、120℃〜155℃の加熱温度が必要であったが、これよりもはるかに低い温度領域で軟化、溶融する転写箔には過剰な熱でありシワの発生要因になった。
【0041】
トナーのガラス転移温度を測定する方法としては、示差熱量分析装置(DSC)による測定が代表的なものである。示差熱量分析装置の具体的なものとしては、たとえば、「DSC−7示差走査カロリメータ(パーキンエルマー製)」、「TAC7/DX熱分析装置コントローラ(パーキンエルマー製)」等が挙げられる。
【0042】
示差熱量分析装置によるガラス転移温度の具体的な測定方法は、たとえば、昇温・冷却条件として、−30℃で1分間放置後、10℃/分の条件で100℃まで昇温し(第一の昇温過程)、次いで100℃で1分間放置後、10℃/分の条件で0℃まで冷却する(第一の冷却過程)。この操作により前履歴を消去する。次いで、0℃で1分間放置後、10℃/分の条件で100℃まで昇温する(第二の昇温過程)。そして、セカンドヒート(第二の昇温)の吸熱ピーク温度を求め、ガラス転移温度Tgとする方法が挙げられる。
【0043】
なお、ガラス転移温度Tgは、測定時、ガラス転移領域におけるDSCサーモグラムのガラス転移点以下のベースラインの延長線と、ピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの間での最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度と定める。
【0044】
示差熱量分析装置によるガラス転移温度の具体的な測定手順としては、トナー4.5mg〜5.0mgを小数点以下2桁まで精秤しアルミニウム製パン(KITNo.0219−0041)に封入し、装置のサンプルホルダにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用する。測定条件は、測定温度0℃〜200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat−Cool−Heatの温度制御を行い、その2nd.Heatにおけるデータをもとに解析を行う。
【0045】
また、ガラス転移温度は、原子間力顕微鏡を用いて測定することも可能である。すなわち、原子間力顕微鏡のステージを0〜80℃まで加熱し、トナー切片やブロックの硬さが変化する温度をガラス転移温度Tgとすることも可能である。
【0046】
また、本発明に係るトナーについて、そのガラス転移温度を60℃以下の範囲に制御する方法としては、たとえば、トナーを構成する樹脂の組成や分子量等の因子を制御する方法が挙げられる。そして、樹脂の組成を制御する具体的な方法の一つに、ビニル系共重合体を構成する単量体のうち、ガラス転移温度を下げる傾向のある単量体の組成比を変えて、ガラス転移温度を制御する方法がある。
【0047】
ガラス転移温度を下げる重合性単量体としては、たとえば、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等が挙げられる。共重合体樹脂において、これらの重合性単量体の含有量を増大させることで樹脂のガラス転移温度を低くすることが可能である。
【0048】
次に、上記(6)の工程で用いられる駆動ローラと従動ローラについて説明する。上記(6)の工程は、図1に示す様に、箔転写面Hが形成された基体Pと転写箔Fを重ねた状態で搬送させ、駆動ローラR1と従動ローラR2により形成されるニップ部Rnを通過させることにより行われるものである。すなわち、駆動ローラR1と従動ローラR2により形成されるニップ部Rnを通過するときに、箔転写面Hが形成された基体Pと転写箔Fは加熱され、軟化、溶融した箔転写面上に接着層が軟化、溶融した箔が転写される。
【0049】
本発明で使用される駆動ローラについて説明する。本発明では、加熱転写手段を構成する駆動ローラは、長手方向端部における外径が前記長手方向端部以外の部位における外径よりも大きいものであり、たとえば、図2(a)に示す形状を有するものである。
【0050】
図2(a)に示す駆動ローラR1は、長手方向端部Reにおける外径Deが長手方向端部以外の部位における外径Dよりも大きい形状を有するものであり、一般に「逆クラウン」と呼ばれる形状のものである。この様に、駆動ローラR1を「逆クラウン」形状にすることで、駆動ローラR1は2つの端部Reで転写箔Fを圧着し、転写箔Fには図1の白抜き矢印方向の力、すなわち、転写箔の幅方向外側に向かう引っ張り力が作用してシワの発生が回避される。
【0051】
なお、本発明でいう「端部」は、図2(a)中のReで表される個所で、Reで表される個所の外径DeがRe以外の部位における外径Dよりも大きいものである。ところで、「端部」は、必ずしも実際に端部を形成する個所のみに限定されるものではなく、実際の端部よりも任意の長さだけ中央寄りの個所を「端部」としてもよい。たとえば、全長が360mmの駆動ローラの端部における外径を測定する際、実際の端部よりも30mm中央寄りの個所を「端部」とし、当該個所の外径をそのローラの端部における外径としてもよい。
【0052】
図2(a)の逆クラウン形状の駆動ローラは、長手方向中央部Rcを中心に直線で逆クラウン形状を形成しているが、円弧や双曲線、あるいは直線と曲線の両方を用いて、逆クラウン形状を形成するものでもよい。
【0053】
図2(a)に示すローラの様に、長手方向における外径が各個所で異なるローラの形状を定量する手段の1つに「クラウン量」と呼ばれるものがあり、最大外径と最小外径の差で規定されるものである。図2(a)に示す駆動ローラは、端部Reの外径が最大外径であり、ローラ中央部Rcの外径が最小外径であることから、クラウン量は(ローラ中央部Rcの外径Dc)−(ローラ端部Reの外径De)より求められる。なお、ローラの形状が逆クラウンの場合、クラウン量の値に−(マイナス)の符号を付して「逆クラウン量」と呼ぶこともあり、ローラの形状がクラウンの場合、クラウン量の値に+(プラス)の符号を付して「正クラウン量」と呼ぶこともある。
【0054】
本発明では、駆動ローラのクラウン量、すなわち、駆動ローラの長手方向端部における外径と長手方向で最も小さな外径を有する部位における外径の差は、特に限定されるものではないが、0.05mm以上0.4mm以下であることが好ましい。クラウン量の値が前記範囲のとき、ローラ面は端部から中心部に向けて緩やかな傾斜が形成され、この緩やかな傾斜により駆動ローラ端部では転写箔を適度な力で引っ張ることができるものと考えられる。その結果、転写箔には図1に示す白抜き矢印方向の引っ張り力が適度な大きさで付与されることになり、転写箔にシワを発生させずに安定した搬送が行える。また、駆動ローラの回転により付与される搬送性が転写箔と基体へ効果的に伝達されるので、安定した搬送を確実に行うことができるので好ましい。また、駆動ローラの回転力は従動ローラにも確実かつ効率よく伝達され、従動ローラの回転に負うことの多い基体の搬送性にも寄与することができる。
【0055】
なお、本発明では、駆動ローラが上記構成の形状をとることにより、ニップ部では両端部以外の個所において転写箔と箔転写面の圧接性が低下して搬送不良の発生が懸念されたが、後述する実施例の結果に示す様に、搬送不良は発生しなかった。
【0056】
次に、前述の駆動ローラとともにニップ部を形成する従動ローラについて説明する。従動ローラは、ニップ部において駆動ローラとともに転写箔と箔転写面を有する基体に搬送性を付与するものである。本発明では、従動ローラの形状は特に限定されるものではないが、転写箔と基体に搬送性を効率よく付与させる観点から、転写箔や基体に対して適度な圧接力を付与することが可能な形状であることが好ましい。
【0057】
この観点から、従動ローラの形状は、図2(b)に示す長手方向端部における外径が長手方向端部以外の部位における外径よりも小さいもの、及び、図2(c)に示す長手方向における外径が同じもののいずれかであることが好ましい。図2(b)に示す従動ローラR2は、長手方向端部における外径が前記長手方向端部以外の部位における外径よりも小さいものであるが、言い換えると、ローラ端部の外径が端部以外の個所の外径よりも小さい正クラウン形状のものである。また、図2(c)に示す従動ローラR2は、外径が同じで均一なストレート形状のものである。
【0058】
従動ローラが、図2(b)に示す長手方向端部における外径が長手方向端部以外の部位における外径よりも小さい正クラウン形状の場合、クラウン量は前述した駆動ローラ端部における転写箔への接触を阻害しない程度であれば特に限定されるものではない。すなわち、従動ローラの最大径を有する部位が基体を押し、駆動ローラが端部以外の個所で転写箔と接触する様になると、転写箔には図1の白抜き矢印方向の力以外の力が作用する様になり、転写箔にシワを発生させることになるので、この様な現象を発生させる従動ローラは使用できない。本発明では、図2(b)に示す形状の従動ローラを使用する場合、長手方向端部における外径と長手方向で最も大きな外径を有する部位における外径の差が0.2mm以下であることが好ましい。
【0059】
また、本発明では、従動ローラの形状を長手方向端部における外径が長手方向端部以外の部位における外径よりも小さいもの及び長手方向における外径が同じもののいずれかにすることにより、従動ローラと画像支持体の接触面積が増大して、ニップ部における転写箔と箔転写面の圧接性を向上させて、良好な搬送性にも寄与しているものとみられる。
【0060】
次に、本発明に係る画像形成方法(以下、箔転写方法ともいう)について説明する。本発明で行われる箔転写方法は、前述した様に、たとえば、以下に示す(1)から(7)の工程を経て行われるものである。すなわち、
(1)感光体を露光して静電潜像を形成する工程
(2)静電潜像が形成された感光体に本発明に係る箔転写面形成用トナーを供給して箔転写面を形成する工程
(3)感光体上に形成された箔転写面を基体に転写する工程
(4)基体上に転写された箔転写面を加熱して定着する工程
(5)定着処理した箔転写面を有する基体に転写箔を供給する工程
(6)転写箔を加熱する工程
(7)転写箔を基体より除去する工程
を有するものである。この様に、上記箔転写方法では、先ず、感光体を露光して箔転写面の形状に対応する静電潜像を形成し、静電潜像が形成された感光体上にトナーを供給して箔転写面を形成する。そして、感光体上に形成された箔転写面を基体に転写し、箔転写面を加熱して基体上に定着させる。さらに、箔転写面を形成した基体に転写箔を供給して転写箔と箔転写面とが接触した状態を形成し、この状態で加熱を行うことにより箔転写面上に箔を転写させる。
【0061】
本発明で行われる箔転写方法について図3を用いて具体的に説明する。図3は上記(1)〜(7)の工程のうち、(4)〜(7)の工程を反映させた箔転写方法の手順を示す模式図である。すなわち、図3に示していない上記(1)〜(3)の工程を経て基体P上に箔転写面Hを形成し、当該基体Pに転写箔Fを供給して、供給された転写箔Fを箔転写面Hに接触させ、この状態で加熱を行い箔転写面Hに箔f2を転写するものである。以下、図3の(a)〜(d)を具体的に説明する。
【0062】
図3(a)は、シート状の基体P上に本発明に係るトナーを用いて作製された箔転写面が形成された基体Pの断面図である。なお、上記(1)〜(3)の工程を経て基体P上に箔転写面Hを形成する方法については後述する図4を用いて後述する。
【0063】
次に、図3(b)は基体Pに転写箔Fを供給した状態を示すもので、転写箔Fは箔転写面Hと接触状態を形成する様に供給される。このとき、供給された転写箔Fは基体P上全面に接触することが想定されるもので、少なくとも基体表面に凸状に形成されている箔転写面Hには接触状態を形成しているといえる。本発明で使用される転写箔Fは、ベースとなるフィルムf0上に少なくとも箔層f2を有するもので、箔転写面Hへの接着性を向上させるために接着層f1を有するものであってもよい。なお、本発明に使用可能な転写箔Fの詳細な説明は後で行う。
【0064】
図3(c)は、転写箔Fを接触させた状態の基体Pが、駆動ローラR1と従動ローラR2の間(ニップ部)を通過している様子を示すもので、転写箔Fは基体P上の箔転写面Hに接触している状態でニップ部を通過する。ここで、駆動ローラR1と従動ローラR2は加熱加圧ローラとしても機能するものである。すなわち、基体Pが駆動ローラR1と従動ローラR2の間(ニップ部)を通過しているとき、箔転写面Hと転写箔Fの接着層f1は加熱により軟化、溶融して、転写箔Fが箔転写面H上に溶着する。
【0065】
そして、駆動ローラR1と従動ローラR2のニップ部通過後は、箔転写面Hと接着層f1は冷却により両者が溶着した状態で固化し、転写箔Fは箔転写面Hとの間に強固な接着状態を形成する。この様に、転写箔Fは、基体P上の箔転写面Hと接触している領域と箔転写面Hとの間に接着状態を形成するもので、箔転写面Hの形状と一致した形状の箔が転写される様にしている。
【0066】
次に、図3(d)は、箔転写面Hを介して転写箔Fが接着した基体Pより転写箔Fを除去する様子を示すもので、転写箔Fを除去すると基体Pの箔転写面H上には接着層f1を介して箔層f2が転写される。本発明では、箔転写面形成用トナーの使用により箔転写面Hの形状に対応させた形状に箔層f2を転写させるもので、金属製の押し型を使用せずに箔層f2を所定形状に転写することが可能である。
【0067】
この様に、基体P上への箔転写は、基体Pが駆動ローラR1と従動ローラR2の間に形成されるニップ部を通過するときに箔転写面Hと転写箔Fの接着層f1を軟化、溶融させて両者を溶着させる。そして、ニップ部を通過後、箔転写面Hと接着層f1を溶着状態のまま冷却することにより固化して転写箔Fと基体Pの間に接着状態を形成する。さらに転写箔Fを除去することにより、箔転写面H上に箔層f2が転写される。
【0068】
以上の手順を経て、図3(e)に示す様に、基体(画像支持体)P上に、箔転写面形成用トナーで作製された箔転写面Hを介して箔層f2が転写され、箔画像Sが形成される。そして、本発明によれば、この様に形成された箔画像Sを有する基体P上に、たとえば、トナー画像形成を行うために、箔を転写した基体Pを再び加熱しても、箔転写面Hを変形させず、箔画像Sにシワ発生と呼ばれる画像不良が発生せず、箔の剥離を起こさない。したがって、本発明は基体Pに耐久性に優れた箔画像を付与することにより、基体P上に箔画像Sを有する構成の製品Qの美的外観向上にも寄与している。
【0069】
次に、本発明で行われる箔転写方法で行われる「基体上への箔転写面の形成」を行う箔転写面形成装置の一例を説明する。図4の箔転写面形成装置1は、前述した(1)〜(7)の工程のうち(1)〜(3)の工程の実施が可能なもので、露光により静電潜像を形成する感光体11Hを有するものである。そして、当該感光体11Hに箔転写面形成用のトナーを供給して静電潜像に対応した箔転写面Hを形成する箔転写面形成用トナー供給装置21Hを有するものである。さらに、形成した箔転写面Hを感光体11Hより基体Pへ転写する転写ローラ13Hを有するものである。
【0070】
すなわち、図4に示す箔転写面形成装置は、本発明で規定する、
「少なくとも、
露光手段による露光により静電潜像を形成する感光体と、
静電潜像が形成された前記感光体にトナーを供給して箔転写面を形成する箔転写面形成手段と、
前記感光体に形成された箔転写面を基体に転写する転写手段と、
前記基体に転写された箔転写面を定着する定着手段と、
前記定着手段により箔転写面が定着された基体に転写箔を供給する転写箔供給手段と、
前記転写箔供給手段により供給された転写箔を前記箔転写面に接触させ、前記箔転写面に前記転写箔が接触した状態の下で加熱して、前記箔転写面に箔を転写させる箔転写手段を有する画像形成装置」の一部を構成するものである。
【0071】
図4の箔転写面形成装置1では、図中の帯電ローラ12Hにより帯電された感光体11H上に露光光Lが照射されて静電潜像が形成される。感光体11H上に形成された静電潜像は、感光体11Hの近傍に配置されている箔転写面形成用トナー供給装置21Hより箔転写面形成用トナーの供給を受けることにより箔転写面を形成する。このとき、箔転写面形成用トナー供給装置21H内では内蔵されているトナー供給ローラ14が回転し、トナー供給ローラ14に付着させたトナーが感光体11Hに供給され、感光体11H上に箔転写面を形成する。
【0072】
次に、除電ランプ22により感光体11H上の電荷が除電されると、感光体11H上の箔転写面は感光体11Hと転写ローラ13Hとが近接する転写部で基体P上に転写される。図4に示す基体Pは、転写紙に代表されるシート形状のもので図示しない給紙カセットより搬送ローラ23により転写部へ搬送され、転写ローラ13Hにより箔転写面形成用トナーと逆極性の電荷が付与される。基体Pは転写ローラ13Hにより付与された逆極性を有する電荷の静電作用により感光体11Hより箔転写面を転写することが可能である。
【0073】
箔転写面が転写された基体Pは、感光体11Hより分離された後、搬送ベルト24により図示しない定着装置に搬送される。定着装置はたとえば加熱ローラと加圧ローラ等より構成される定着手段を有し、基体P上に形成された箔転写面を溶融して定着させる。
【0074】
以上の手順により、図4の箔転写面形成装置1では、感光体11H上に箔の形状に対応した静電潜像が形成され、箔転写面形成用トナーの供給により感光体11H上に箔転写面が形成される。そして、感光体11H上に形成された箔転写面は転写ローラ13Hにより基体Pに転写される。
【0075】
なお、図中の帯電ローラ12Hは、たとえば、以下の手順により感光体11Hの帯電が可能である。すなわち、帯電ローラ12Hは電源27より直流(DC)成分と交流(AC)成分からなるバイアス電圧の印加を受けて感光体ドラム11Hを帯電する。図4に示す帯電ローラ12を用いる帯電はいわゆる接触方式と呼ばれるもので、本発明では図4に示す帯電方式の他に、後述する図5に示す装置で使用される非接触方式の帯電を感光体に行うことも可能である。帯電ローラ12Hに印加されるバイアス電圧は、たとえば、直流成分である±500〜1000VのDCバイアスと、交流成分である100Hz〜10kHz、200〜3500VのACバイアスとを重畳させてなるもの等がある。
【0076】
なお、図4中の転写ローラ13Hも帯電ローラ12Hと同様、電源28より直流(DC)成分と交流(AC)成分からなるバイアス電圧の印加を受け、転写部位で感光体11H上に形成された箔転写面を基体P上に転写させる。転写ローラ13Hに印加されるバイアス電圧の具体例としては、帯電ローラ12Hに印加されるバイアス電圧の具体例と同様、直流成分の±500〜1000VのDCバイアスと交流成分の100Hz〜10kHz、200〜3500VのACバイアスとを重畳させたものがある。
【0077】
帯電ローラ12Hと転写ローラ13Hは、感光体11Hに圧接した状態で従動あるいは強制回転している。これらローラの感光体ドラム11Hへの押圧力は、たとえば、9.8×10−2〜9.8×10−1N/cmであり、ローラの回転速度は、たとえば、感光体11の周速の1〜8倍である。なお、前記ローラの感光体11Hへの押圧力は、たとえば、帯電ローラ12の両端に1N〜10N程度の押圧力を加えることで実現が可能である。
【0078】
なお、基体Pへ箔転写面を転写した感光体11Hは、クリーニング装置25に設けられたクリーニングブレード25bにより除去され、次の箔転写面形成を行う状態にする。
【0079】
なお、本発明は、基体上の箔転写面に箔を転写した後、箔が転写された基体上にトナーを用いて可視画像を形成することも可能である。具体的には、基体上に箔転写面を形成し、当該箔転写面上に箔を転写した後、転写した箔の周囲に電子写真方式の画像形成方法によりトナー画像を形成する方法が挙げられる。また、箔の上にもカラートナーを載せて色味を変えた画像を作成することも可能で、これらの方法により、箔を転写した製品にさらなる光輝表現を付与することが可能である。
【0080】
図5は、基体上に箔転写面を形成し、形成した箔転写面の上に箔を転写し、さらに、箔を転写した基体上にカラートナーを用いてフルカラー画像を形成することが可能な画像形成装置の断面構成図である。図5に示す画像形成装置で行われる基体上への箔転写面形成は、図4に示す箔転写面形成装置1とほぼ同じ手順で行われる。また、図5の画像形成装置1は、箔転写面形成用トナーを用いて形成された箔転写面Hを加熱、加圧して基体上に定着する定着装置50を有している。
【0081】
図5に示す画像形成装置1は、「タンデム型カラー画像形成装置」と呼ばれる電子写真方式の画像形成装置と同じ構成を有し、箔転写面形成部20Hと複数組のトナー画像形成部20Y、20M、20C、20Bk、ベルト状の中間転写ベルト26と給紙装置40、定着装置50等を有するものである。また、図5の箔転写面形成装置1には、中間転写ベルト26の下方に転写箔供給部70が設けられている。
【0082】
すなわち、図5に示す画像形成装置1は、本発明で規定する、
「少なくとも、
露光手段による露光により静電潜像を形成する感光体と、
静電潜像が形成された前記感光体にトナーを供給して箔転写面を形成する箔転写面形成手段と、
前記感光体に形成された箔転写面を基体に転写する転写手段と、
前記基体に転写された箔転写面を定着する定着手段と、
前記定着手段により箔転写面が定着された基体に転写箔を供給する転写箔供給手段と、
前記転写箔供給手段により供給された転写箔を前記箔転写面に接触させ、前記箔転写面に前記転写箔が接触した状態の下で加熱して、前記箔転写面に箔を転写させる箔転写手段を有する画像形成装置」に該当するものである。
【0083】
図5の画像形成装置1は、先ず、箔転写面形成部20Hの感光体11Hに形成した箔転写面用のトナー層を基体P上に転写し、このトナー層を定着装置50で定着して箔転写面Hを形成する。そして、箔転写面Hを有する基体P上に転写箔を供給し、定着装置50を再度通過させて箔転写面H上に箔を転写させる。さらに、箔が転写されている基体P上にカラートナーを供給してフルカラー画像を形成し、フルカラー画像の形成された基体Pを定着装置50で定着する。この様な手順で、図5の箔転写面形成装置1は、基体P上に箔の画像とトナー画像が形成された製品Qを作製することができる。すなわち、図5に示す箔転写面形成装置1は、本発明でいう「箔転写面に箔が転写されている基体を加熱する工程」を経る画像形成が行えるものである。
【0084】
なお、図5の箔転写面形成装置1は、転写箔供給部70を中間転写ベルト26の下方に配置しているが、転写箔供給部70の配置場所はここに限定されるものではなく、転写箔を供給した後に定着装置50の加熱と加圧の作用で箔の転写が行える個所であればよい。
【0085】
また、中間転写ベルト26、定着装置50、転写箔供給部70の配置は、図5の箔転写面形成装置1に示すものの他に、たとえば、図6に示す配置にすることも可能である。図6の箔転写面形成装置1は、中間転写ベルト26、定着装置50、転写箔供給部70が順次配置されている。また、図中の矢印は基体Pの搬送方向を表す。図6の転写箔供給部70は、転写箔供給ロール71、箔転写ローラ73a、73b、転写箔巻き取りローラ72を有し、転写箔供給ロール71より転写箔Fが供給され、箔転写の行われた使用済みの転写箔Fは転写箔巻き取りローラ72に巻き取られる。なお、図6では箔転写面形成部20Hやトナー画像形成部20Y、20M、20C、20Bk等は省略してある。また、図6については後で詳細に説明する。
【0086】
図5に示す箔転写面形成装置1をさらに説明する。箔転写面形成装置1の上部には、画像読取部60が設置されている。原稿台上に載置された原稿は画像読取部60の原稿画像走査露光装置の光学系により画像が走査露光され、ラインイメージセンサに読み込まれる。ラインイメージセンサにより光電変換されたアナログ信号は、制御手段においてアナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を行った後、露光部30H、30Y、30M、30C、30Bkに入力される。
【0087】
なお、図5では構成要素を総称する場合はアルファベットの添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成要素を指す場合にはH(箔転写面用)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)の添え字を付した参照符号で示している。
【0088】
箔転写面形成用のトナーを供給する箔転写面形成部20H、イエロー色のトナー画像形成を行うイエロー画像形成部20Y、マゼンタ色のトナー画像形成を行うマゼンタ画像形成部20M、シアン色のトナー画像形成を行うシアン画像形成部20C、及び黒色のトナー画像を形成する黒色画像形成部20Bkは、それぞれ以下の構成を有する。すなわち、
(1)ドラム状の感光体11(11H、11Y、11M、11C、11Bk)
(2)帯電極12(12H、12Y、12M、12C、12Bk)
(3)露光部30(30H、30Y、30M、30C、30Bk)
(4)箔転写面形成用トナー供給装置21H及び現像装置21(21Y、21M、21C、21Bk)
(5)クリーニング装置25(25H、25Y、25M、25C、25Bk)。
【0089】
感光体11は、たとえば、有機光導電体を含有させた樹脂よりなる感光層がドラム状の金属基体の外周面に形成されてなる有機感光体よりなり、搬送される製品Pを構成する基体Pの幅方向(図5において紙面に対して垂直方向)に伸びる状態で配設されている。感光層を構成する樹脂には、たとえば、ポリカーボネート樹脂等の公知の感光層形成用樹脂が用いられる。なお、図5に示す実施形態では、ドラム状の感光体11を用いた構成例を説明しているが、これに限られずベルト状の感光体を用いてもよい。
【0090】
箔転写面形成用トナー供給装置21Hは、本発明に係る箔転写面形成用トナー(T)とキャリアからなる2成分箔転写面形成剤を内包する。また、現像装置21はそれぞれイエロートナー(Y)、マゼンタトナー(M)、シアントナー(C)及び黒色(Bk)の異なる色のトナーとキャリアからなる2成分現像剤を内包する。2成分箔転写面形成剤は、フェライトをコアとしてその周りに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと本発明に係る箔転写面形成用トナーとから構成されるものである。また、2成分現像剤は、フェライトをコアとしてその周りに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと公知の結着樹脂と公知の顔料やカーボンブラック等の着色剤、荷電制御剤、シリカ、酸化チタン等を含有してなる各色のトナーとから構成される。
【0091】
キャリアは、たとえば平均粒径が10〜50μm、飽和磁化10〜80emu/gを有しトナーは粒径4〜10μmである。また、本発明で使用される箔転写面形成用のトナーを含めて、図5に示す箔転写面形成装置で使用される各トナーの帯電特性は、負帯電特性であり平均電荷量としては−20〜−60μC/gであることが好ましい。2成分箔転写面形成剤及び2成分現像剤は、これらキャリアとトナーとをトナー濃度が4質量%〜10質量%にとなる様に混合、調整したものである。
【0092】
中間転写体である中間転写ベルト26は、複数のローラにより回転可能に支持されている。中間転写ベルト26はたとえば10〜1012Ω・cmの体積抵抗を有する無端形状のベルトである。中間転写ベルト26は、たとえば、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)等の公知の樹脂材料を用いて形成することができる。中間転写ベルト26の厚みは50〜200μmが好ましい。
【0093】
箔転写面形成用トナー供給装置21Hより感光体11H上に形成された箔転写面Hは、回転する中間転写ベルト26上に一次転写ローラ13Hにより転写される(一次転写)。中間転写ベルト26上に転写された箔転写面Hは、後述する給紙装置40より供給された基体P上に転写され(二次転写)、箔転写面Hが転写された基体Pは後述する定着装置50を通過することで箔転写面Hが定着される。
【0094】
そして、箔転写面Hが定着された基体Pは、一度排紙ローラ47を有する排紙搬送路を搬送された後、搬送路48を経由して転写箔供給路51に搬送され、ここで転写箔供給部70より転写箔の供給を受ける。さらに、基体Pは転写箔が供給された状態で再び定着装置50を通過し、定着装置50を構成する駆動ローラR1と従動ローラR2の加熱、加圧により箔転写面H上に箔が転写される。この様に、図5に示す画像形成装置1は、基体P上の箔転写面Hを定着した基体Pを、定着装置50に再度通過させることにより、箔画像Sを形成するものである。そして、後述する実施例で線状の箔画像形成を精度よく行える様に、すでに定着した箔転写面Hを再び加熱しても、箔転写面Hは加熱の影響で変形することはなく、所定形状の箔画像Sを基体P上に忠実に形成することを可能にしている。
【0095】
次に、上記手順で箔転写面Hの形成、及び、箔の転写が行われた基体Pは、前述の搬送路48よりトナー画像形成用搬送路48Bを経由して中間転写ベルト26の前に搬送され、今度は、トナー画像形成が行われる。先ず、トナー供給装置21Y、21M、21C、21Bkからの各色トナーにより各感光体11Y、11M、11C、11Bk上に形成された各色トナー画像も回転する中間転写ベルト26上に一次転写ローラ13Y、13M、13C、13Bkにより順次転写され、中間転写ベルト26上には合成されたフルカラー画像が形成される。一方、箔転写面Hを転写した感光体11Hとトナー画像を転写した感光体11Y、11M、11C、11Bkは各クリーニング装置25(25H、25Y、25M、25C、25Bk)により残留トナーが除去される。
【0096】
なお、箔画像Sとカラー画像形成が行われる基体Pは、給紙装置40を構成する基体収納部(トレイ)41内に収容されている。そして、画像形成時には、第1給紙部42より給紙ローラ43、44、45A、45B、レジストローラ(第2給紙部)46等を経て、2次転写ローラ13Aへ搬送され、当該個所で箔転写面Hあるいはカラー画像の転写が行われる(二次転写)。
【0097】
なお、箔転写面形成装置1の下部に鉛直方向に縦列配置された3段の基体収納部41は、ほぼ同一の構成を有するので同符号を付した。また、3段の給紙部42もほぼ同一の構成を有するので同符号を付した。基体収納部41と給紙部42を含めて給紙装置40という。
【0098】
製品Qを構成する基体P上に転写された箔転写面Hとフルカラー画像は、箔転写面Hとフルカラー画像を加熱、加圧して溶融、硬化する定着装置50により基体P上に固定される。基体Pは、搬送ローラ対57に挟持されて搬送され、排紙搬送路に設けられた排紙ローラ47から排出され、装置外の排紙トレイ90上に載置される。
【0099】
一方、二次転写ローラ13Aにより基体P上に箔転写面Hとフルカラートナー画像を転写し、さらに、基体Pを曲率分離させた中間転写ベルト26は、中間転写ベルト用のクリーニング装置261により残留したトナーが除去される。
【0100】
なお、基体Pの両面に箔画像とフルカラー画像を形成した製品Qを作製する場合は、基体Pの第1面に箔画像とフルカラー画像を形成し、さらに、これらを溶融、硬化した後、基体Pを分岐板49により排紙搬送路から分岐させる。そして、搬送路48に導入して表裏反転して再び給紙ローラ45Bに搬送させる。基体Pは箔転写面形成部20H、各色の画像形成部20Y、20M、20C、20Bkにより第2面上にも箔転写面Hとフルカラートナー画像を形成し、定着装置50により加熱加圧処理されて排紙ローラ47により装置外に排出される。この様にして、基体Pの両面に箔画像とフルカラートナー画像を形成することができる。
【0101】
また、図6の様に中間転写ベルト26、定着装置50、転写箔供給部70を配置した箔転写面形成装置1は、たとえば、以下の手順で箔転写面Hの形成、箔の転写、トナー画像形成を行うことができる。すなわち、
(1)二次転写ローラ13Aの個所で中間転写ベルト26上に形成された箔転写面Hを基体Pに転写させる。
(2)基体Pを定着装置50に通過させて箔転写面Hを定着させる。
(3)転写箔供給部70を構成する駆動ローラR1と従動ローラR2により、基体P上に転写箔Fを供給するとともに加熱処理を行い、箔転写面H上に箔を転写して箔画像Sを形成する。
(4)搬送路48経由で箔画像Sを形成した基体Pを中間転写ベルト26に搬送し、フルカラートナー画像を基体P上に転写させる。
(5)基体Pを定着装置50に通過させてフルカラートナー画像を定着させる。
(6)基体Pは転写箔供給部70をそのまま通過させ、排紙ローラ47を介して装置外に排紙する。
【0102】
以上の手順により、図5や図6に示す箔転写面形成装置1は、基体P上に箔転写面Hを形成し、形成した箔転写面H上に転写箔を転写させる。そして、箔が転写されている基体P上にカラートナーを用いてフルカラー画像を形成することを可能にする。
【0103】
次に、図7を用いて本発明に使用可能な転写箔の一例を説明する。図7は本発明で使用可能な転写箔の断面構造の一例を示すものである。図7に示す転写箔Fは、樹脂等からなるフィルム状の支持体f0と、着色剤や金属等を含有する箔層f2、接着性を発現する接着層f1を有し、箔層f2と接着層f1が基体P上に転写される。接着層f1は、転写箔Fの最表面に好ましく設けられるもので、基体P表面に箔層f2を強固に付着させる上で好ましいものである。また、図7に示す転写箔Fは、支持体f0と箔層f2の間に離型層f3を有するものである。以下、支持体f0、箔層f2、接着層f1の各層について説明する。
【0104】
先ず、支持体f0は、樹脂等からなるフィルムまたはシートである。支持体f0の材料としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリイミド樹脂等の公知の樹脂材料が挙げられる。また、これら樹脂材料の他に紙等の材料を使用することも可能である。
【0105】
また、支持体f0は、単層構造あるいは多層構造のいずれの構造を有するものを使用することができる。支持体f0に多層構造を採用する場合、支持体f0は箔層f2側の最表面層として剥離抵抗の調節に利用可能な離型層f3を含むものが好ましい。離型層f3の材料としては、たとえば、メラミンもしくはイソシアネートを硬化剤として用いた熱硬化性樹脂、アクリレートもしくはエポキシ樹脂を含有した紫外線または電子線硬化性樹脂に公知の離型剤を添加したものが挙げられる。離型層f3に添加可能な公知の離型剤としては、たとえば、フッ素系またはシリコン系のモノマーまたはポリマー等が挙げられる。
【0106】
箔層f2は、着色剤や金属材料等を含有し基体P上に転写後は美的外観を発現するものであり、基体P上に転写する時には支持体f0よりスムーズに剥離する性能が求められるとともに転写後は基体Pの最表面を形成するものなので耐久性も求められている。箔層f2は、上記性能を満たす公知の樹脂を、たとえば、グラビアコータ、マイクログラビアコータ及びロールコータ等のコータを用いて支持体f0上に塗布することにより形成が可能である。この様な公知の樹脂としては、たとえば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられ、当該樹脂中に公知の染料や顔料等を添加して着色することも可能である。
【0107】
また、メタリックな光沢を有する仕上がりの箔を形成する場合は、金属等を用いて公知の方法で前述の樹脂に反射層を設けることにより形成することが可能である。反射層を形成する金属材料としては、たとえば、アルミニウム、スズ、銀、クロム、ニッケル、金等の担体の他に、ニッケル−クロム−鉄合金や青銅、アルミ青銅等の合金を使用することも可能である。上記金属材料を用いて反射層を形成する方法としては、たとえば、蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法等の公知の方法が挙げられ、厚さ約10nmから約100nmの反射層を形成することが可能である。また、反射層には、たとえば、水洗シーライト加工、エッチング加工、レーザ加工等の公知の加工方法を利用して規則的な模様を付与するパターニング処理を施すことも可能である。
【0108】
接着層f1は、たとえば、加熱により粘着性を発現させるいわゆるホットメルトタイプと呼ばれる感熱性の接着剤を含有するもの等がある。感熱性の接着剤としては、たとえば、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂及びエチレン−ビニルアルコール共重合体等のホットメルトタイプの接着剤に使用可能な公知の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらホットメルトタイプの接着剤は、軟化点温度が80℃〜120℃のものが多く流通しており、転写箔用接着層には製本用の軟化点温度が75℃〜105℃のものが好ましく使用される。本発明では、箔転写面Hを形成するトナーのガラス転移温度を60℃以下にすることで、箔転写面Hと接着層f1のそれぞれが同じレベルの加熱温度で軟化、溶融する様にしている。また、接着層f1の形成方法としては、たとえば、グラビアコータ、マイクログラビアコータ及びロールコータ等のコータを用いて上述した樹脂を箔層f2上に塗布することにより形成することが可能である。
【実施例】
【0109】
以下、実施例を挙げて本発明の実施態様を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、下記文中に「部」と記載されている個所があるが「質量部」を表すものである。
【0110】
1.「箔転写面形成用トナーA〜C」及び「箔転写面形成用現像剤A〜C」の作製
前述した多段重合法による樹脂微粒子の作製工程と乳化会合法による凝集、融着工程を経て、ガラス転移温度の異なる3種類の「箔転写面形成用トナーA〜C」を作製した。さらに、これら箔転写面形成用トナーを後述する手順で樹脂コートキャリアと混合して「箔転写面形成用現像剤A〜C」を作製した。
【0111】
1−1.「箔転写面形成用トナーA」の作製
(1)「樹脂微粒子A2」の作製
下記に示す様に、三段階の重合反応を経て、すなわち多段重合法により「樹脂微粒子A3」を作製した。
【0112】
(第一段重合)
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器にポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム5質量部とイオン交換水800質量部を投入し、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら温度を83℃に昇温させた。
【0113】
昇温後、下記化合物を80℃にて溶解させた重合性単量体溶液を添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX(エム・テクニック社製)」により、1時間混合分散処理を行い、乳化粒子を含有する分散液を調製した。なお、重合性単量体溶液に含有される化合物は、以下のものである。すなわち、
スチレン 256質量部
n−ブチルアクリレート 73質量部
メタクリル酸 29質量部
n−オクチルメルカプタン 5.4質量部
パラフィンワックス 113質量部
上記分散液に、過硫酸カリウム(KPS)12質量部をイオン交換水230質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、液温を82℃にて1時間加熱、撹拌して重合反応を行うことにより、「樹脂微粒子A1」の分散液を作製した。
【0114】
(第二段重合)
上記「樹脂微粒子A1」の分散液中に、過硫酸カリウム(KPS)10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加した後、82℃の温度条件下に、下記化合物を溶解させた重合性単量体溶液を1.5時間かけて滴下した。なお、重合性単量体溶液に含有される化合物は以下のものである。すなわち、
スチレン 442質量部
n−ブチルアクリレート 102質量部
n−オクチルメルカプタン 7.5質量部
滴下終了後、液温を82℃の下で2時間にわたり加熱、撹拌を行って重合反応を行った後、28℃まで冷却して「樹脂微粒子A2」の分散液を作製した。
【0115】
(2)「箔転写面形成用トナーA」の作製
(凝集・融着工程)
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、
「樹脂微粒子A2」 450質量部(固形分換算)
イオン交換水 900質量部
ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム 2質量部
を投入、撹拌した。反応容器内の温度を25℃に調整後、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを10に調整した。
【0116】
次に、塩化マグネシウム・6水和物70質量部をイオン交換水105質量部に溶解した水溶液を撹拌の下で30℃にて30分間かけて添加した。添加後、3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて87℃まで昇温させ、87℃に保持させたままの状態で上記「樹脂微粒子A2」の凝集、融着を継続した。この状態で「マルチサイザー3(ベックマンコールター社製)」を用いて形成されている粒子の粒径測定を行い、粒子の体積基準メディアン径が6.7μmになったときに、塩化ナトリウム73質量部をイオン交換水290質量部に溶解させた水溶液を添加して凝集を停止させた。
【0117】
凝集停止後、熟成処理として液温を88℃にして加熱撹拌を行い、「FPIA−2100(シスメックス社製)」を用いて凝集粒子の平均円形度が0.960になるまで融着を継続させて「トナー母体粒子A」を形成した。前記熟成処理を行った後、液温を30℃に冷却し、塩酸を使用して液中のpHを2に調整して撹拌を停止した。
【0118】
上記工程を経て作製した「トナー母体粒子A」をバスケット型遠心分離機「MARKIII 型式番号60×40(松本機械(株)製)」で固液分離し、「トナー母体粒子A」のウェットケーキを形成した。このウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機でろ液の電気伝導度が5μS/cmになるまで40℃のイオン交換水で洗浄した後「フラッシュジェットドライヤ(セイシン企業(株)製)」に移し、水分量が0.5質量%になるまで乾燥処理を行って「トナー母体粒子A」を作製した。
【0119】
(外添処理)
作製した「トナー母体粒子A」100質量部に対して下記外添剤を以下の量添加し、ヘンシェルミキサ(三井三池鉱業社製)で外添処理を行うことにより「箔転写面形成用トナーA」を作製した。
【0120】
ヘキサメチルシラザン処理したシリカ(平均一次粒径12nm、疎水化度68)
1.0質量部
n−オクチルシラン処理した二酸化チタン(平均一次粒径20nm、疎水化度63)
0.3質量部
なお、ヘンシェルミキサによる外添処理は、撹拌羽根の周速35m/秒、処理温度35℃、処理時間15分の条件の下で行った。
【0121】
以上の手順により、「箔転写面形成用トナーA」を作製した。なお、上記手順で作製した「箔転写面形成用トナーA」は、体積基準メディアン径が6.7μm、前記測定方法によりガラス転移温度を測定したところ52.3℃のものであった。
【0122】
1−2.「箔転写面形成用トナーB、C」の作製
(1)「箔転写面形成用トナーB」の作製
前記「箔転写面形成用トナーA」の作製で、第一段重合で使用する重合性単量体溶液中の化合物の添加量を以下の様に変更した他は同じ条件で「樹脂微粒子B1」の分散液を作製した。すなわち、
スチレン 260質量部
n−ブチルアクリレート 65質量部
メタクリル酸 33質量部
n−オクチルメルカプタン 5.4質量部
パラフィンワックス 113質量部
また、第二段重合で使用する重合性単量体溶液中の化合物の添加量を以下の様に変更した他は同じ条件で「樹脂微粒子B2」の分散液を作製した。すなわち、
スチレン 452質量部
n−ブチルアクリレート 92質量部
n−オクチルメルカプタン 7.5質量部
さらに、凝集・融着工程で使用する「樹脂微粒子A2」の分散液を、上記「樹脂微粒子B2」の分散液に変更した他は同じ手順をとることにより、「箔転写面形成用トナーB」を作製した。なお、上記手順で作製した「箔転写面形成用トナーB」は、体積基準メディアン径が「箔転写面形成用トナーA」と同様6.7μmであり、前記測定方法によりガラス転移温度を測定したところ60.0℃のものであった。
【0123】
(2)「箔転写面形成用トナーC」の作製
前記「箔転写面形成用トナーA」の作製で、第一段重合で使用する重合性単量体溶液中の化合物の添加量を以下の様に変更した他は同じ条件で「樹脂微粒子C1」の分散液を作製した。すなわち、
スチレン 262質量部
n−ブチルアクリレート 61質量部
メタクリル酸 35質量部
n−オクチルメルカプタン 5.4質量部
パラフィンワックス 113質量部
また、第二段重合で使用する重合性単量体溶液中の化合物の添加量を以下の様に変更した他は同じ条件で「樹脂微粒子C2」の分散液を作製した。すなわち、
スチレン 456質量部
n−ブチルアクリレート 88質量部
n−オクチルメルカプタン 7.5質量部
さらに、凝集・融着工程で使用する「樹脂微粒子A2」の分散液を、上記「樹脂微粒子C2」の分散液に変更した他は同じ手順をとることにより、「箔転写面形成用トナーC」を作製した。なお、上記手順で作製した「箔転写面形成用トナーC」は、体積基準メディアン径が「箔転写面形成用トナーA」と同様6.7μmであり、前記測定方法によりガラス転移温度を測定したところ65.0℃のものであった。
【0124】
1−3.「箔転写面形成用現像剤A〜C」の調製
前記「箔転写面形成用トナーA〜C」に対して、アクリル樹脂を被覆した体積平均粒径40μmのフェライトキャリアをV型混合機を用いて混合し、トナー濃度が6質量%の2成分現像剤の形態をとる「箔転写面形成用現像剤A〜C」を調製した。
【0125】
2.評価用転写箔及び駆動ローラと従動ローラの用意
2−1.「転写箔F1〜F5」の用意
図7に示す層構造を有する転写箔Fについて、接着層f1以外の層は(株)村田金箔製の金箔「BL 2号金2.8」と同じものを用い、接着層f1に以下に示す軟化点温度の異なる市販のホットメルト接着剤を用いて金箔「転写箔F1〜F4」を用意した。
【0126】
「転写箔F1」は、日信化学工業(株)製の製本用ホットメルト接着剤「BR−4301」(軟化点温度75℃)を用いて接着層f1を形成したものである。また、「転写箔F2」は、日信化学工業(株)製の製本用ホットメルト接着剤「B−9500」(軟化点温度85℃)を用いて接着層f1を形成したものである。また、「転写箔F3」は、日信化学工業(株)製の製本用ホットメルト接着剤「BR−4305」(軟化点温度101℃)を用いて接着層f1を形成したものである。さらに、「転写箔F4」は、日信化学工業(株)製の包装用ホットメルト接着剤「HN−602」(軟化点温度110℃)を用いて接着層f1を形成したものである。
【0127】
また、接着層f1以外の層は(株)村田金箔製のホログラム箔「KP015YPP」(と同じもので、接着層f1に日信化学工業(株)製の製本用ホットメルト接着剤「B−9500」(軟化点温度85℃)を用いたものを用意し、これを「転写箔F5」とした。
【0128】
2−2.駆動ローラと従動ローラの用意
箔画像形成と箔の転写が行える様に公知の方法で改造した市販のデジタルカラー複合機「bizhub C353(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製)」に使用される定着装置用の加熱ローラ及び加圧ローラとして以下のものを用意した。すなわち、駆動ローラとして用いられる加熱ローラには下記「駆動ローラR10〜R16」を用意し、従動ローラとして用いられる加圧ローラには下記「従動ローラR20〜R23」を用意した。
【0129】
(1)「駆動ローラR10〜R16」の用意
駆動ローラである加熱ローラは、外径70mm、厚さ10mmのアルミニウム製円筒状芯金表面に市販のフッ素樹脂PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)を公知の方法で20μmになる様に被覆したものである。そして、前記アルミニウム製円筒状芯金表面を公知の方法で加工したものの表面に前述のフッ素樹脂PFAの被覆層を形成することにより、以下に示す形状の「駆動ローラR10〜R16」を作製した。
【0130】
ここで、長手方向端部Reの外径を70mmにして、他の部位の外径を端部Reの外径よりも小さくする様に前記芯金を加工処理して、逆クラウン形状を有する5種類の「駆動ローラR10〜R14」を用意した。逆クラウン形状を有する「駆動ローラR10〜R14」の最小外径を有する個所は、図2(a)に示す様に長手方向中央部Rcとした。また、長手方向に対して外径が変化していないフラットな形状の「駆動ローラR15」と、長手方向中央部Rcの外径を70mm、端部Reの外径が最小の69.5mmとなる様に加工することにより、クラウン形状を有する「駆動ローラR16」を用意した。
【0131】
「駆動ローラR10〜R16」の形状、長手方向端部の外径、長手方向中央部の外径、外径差を下記表1に示す。すなわち、
【0132】
【表1】

【0133】
(2)「従動ローラR20〜R22」の用意
従動ローラである加圧ローラは、外径60mm、厚さ10mmのアルミニウム製円筒状芯金表面に市販のシリコーンゴムを公知の方法で3mmになる様に被覆したものである。この長手方向に対して外径変化がないフラットな形状の従動ローラを「従動ローラR20」とした。また、長手方向中央部Rcの外径を60mmにして、端部の外径が最小になる様に前記芯金を公知の方法で加工することによりクラウン形状を有する「従動ローラR21とR22」を用意した。さらに、端部Reの外径を60mm、長手方向中央部の外径が最小の59.8mmとなる様に加工することにより逆クラウン形状を有する「従動ローラR23」を用意した。
【0134】
「従動ローラR20〜R23」の形状、長手方向中央部の外径、長手方向端部の外径、外径差を下記表2に示す。すなわち、
【0135】
【表2】

【0136】
3.評価実験
3−1.
(1)「実施例1〜14」と「比較例1〜3」の設定
前述した「箔転写面形成用トナー現像剤A〜C」、「転写箔F1〜F5」、「駆動ローラR10〜R16」及び「従動ローラR20〜R22」を表3に示す様に組み合わせ、前記市販のデジタルカラー複合機に搭載した。ここで、本発明の構成を満たす様に箔転写面形成用トナーと駆動ローラを組み合わせたものを「実施例1〜14」とし、本発明の構成を満たしていない箔転写面形成用トナーと駆動ローラの組み合わせを「比較例1〜3」とした。
【0137】
【表3】

【0138】
(2)評価条件
上記「実施例1〜14」と「比較例1〜4」を評価するにあたり、評価条件を以下の様に設定した。先ず、箔画像を形成する基体は、市販のB4サイズの画像支持体「OKトップコート+(坪量157g/m、紙厚131μm)(王子製紙(株)製)」を用いた。
【0139】
評価用試料(プリント物)は、図8に示すレイアウトのもので、基体Pの4隅と中央部にベタの箔転写面と前記ベタの箔転写面の間に線状の箔転写面を形成し、これらの箔転写面上に箔を転写してベタの箔画像Sbと線状の箔画像Ssを形成したものである。ここで、線状の箔転写面は幅2mmの線画を1.5mm幅間隔で配置したものであり、箔を転写するときの熱の影響で箔転写面が変形しないことを把握するために設けたものである。また、箔転写面を形成する際のトナー供給量を4g/mに設定している。なお、図8中の矢印は基体の搬送方向を示すものである。
【0140】
上記デジタルカラー複合機は、先ず、前記基体P上に箔転写面形成用トナーを用いて箔転写面を形成し、箔転写面を形成した後、図3に示す手順で箔転写面上に箔を転写するものである。また、上記デジタルカラー複合機は、定着装置を構成する駆動ローラである加熱ローラの表面温度を135℃に設定し、駆動ローラと従動ローラで形成されるニップ部における基体Pの搬送速度を変化可能な様に公知の方法で改造したものである。
【0141】
また、上記駆動ローラ(加熱ローラ)と従動ローラ(加圧ローラ)の内部に各々ハロゲンランプを配置し、サーミスタによる温度制御が行える様にしてあり、駆動ローラと従動ローラで形成されるニップ幅を9mmに設定した。
【0142】
(2)評価項目
評価は、常温常湿環境(温度20℃、相対湿度50%RH)下で、1つの評価について、100枚の連続プリントを行い、10枚目、50枚目、100枚目のプリント物に形成された箔画像上におけるシワ発生の有無、線画像仕上がり、転写箔の接着性について評価を行った。また、連続プリント時における搬送性の評価も行った。
【0143】
〈シワ発生の有無〉
10枚目、50枚目、100枚目のプリント物について、肉眼及び倍率10倍のルーペを用いてプリント物上の5個のベタ箔転写面に形成された箔画像を目視観察し、以下の様に評価を行い、○と△を合格とした。すなわち、
○;肉眼観察とルーペ観察の両方で全ての箔画像にシワの発生はみられなかった
△;ルーペ観察により微小なシワが発生している箔画像がみられたが、肉眼観察では凝視しないと分からないレベルだったので、実用上問題なしと判断した
×;肉眼観察によりシワの発生が認められる箔画像があり、実用上問題と判断した。
【0144】
〈線画像仕上がり〉
10枚目、50枚目、100枚目のプリント物について、肉眼及び倍率10倍のルーペを用いてプリント物上に形成された4個の線状箔画像を目視観察し、以下の様に評価を行い、○と△を合格とした。すなわち、
○;全ての線状箔画像について、肉眼観察でつぶれのない独立した線画像で形成されているものであることが認められた。また、ルーペ観察により隣接線画像同士のくっつきや部分的な箔のはがれがないことも認められた
△;ルーペ観察により線画像上に部分的な箔はがれがみられたものがあったが、肉眼観察では全ての線状箔画像がつぶれのない独立した線画像で形成されているものであると認められ、実用上問題なしと判断した
×;肉眼観察により隣接する線画像同士のくっつきが認められる線状箔画像が1個所以上あり、実用上問題と判断した。
【0145】
〈転写箔接着性〉
10枚目、50枚目、100枚目のプリント物について、5個のベタ箔画像にテープを貼りつけた後、手でそのテープを剥がす。テープを剥がしたときの箔画像の接着状態を肉眼及び倍率10倍のルーペで観察して以下の様に評価した。テープは市販品である「スコッチメンディングテープ MP−18(住友スリーエム(株)製)」を使用し、○と△を合格とした。すなわち、
○;全てのベタ箔画像について、ルーペ観察で確認可能なレベルの微細な剥離は起きなかった
△;ルーペ観察で確認可能なレベルの微細な剥離を起こしたベタ箔画像があったが、肉眼では確認困難なレベルであり、実用上問題なしと判断した
×;肉眼観察で箔の剥離が確認されるものが1個所以上あり実用上問題と判断した。
【0146】
〈搬送不良の有無〉
連続プリント実施中の搬送状態を目視観察し、先発のプリント物の搬送が遅れて後続のプリント物に追いつかれてプリント物の重なりが生じなかったものを合格(搬送不良なし)とし、搬送中のプリント物が重なりを起こしたものを不合格(搬送不良有り)とした。
【0147】
以上の結果を表4に示す。
【0148】
【表4】

【0149】
表4に示す様に、本発明の構成を有する条件下で箔画像形成を行った「実施例1〜14」は、いずれも、ベタ箔画像の評価でシワ発生が見られず、実用に耐え得るレベルの接着性が得られているものであることが確認された。また、線状箔画像の評価により、加熱を繰り返しても箔転写面が変形せず、独立した線画像より構成される線状箔画像を確実に形成するものであることが確認された。さらに、搬送不良を起こさずにプリント物をスムーズに連続作成することが可能なものであることも確認された。一方、本発明の構成を満たさない条件下で箔画像形成を行った「比較例1〜4」では、上記「実施例1〜14」で得られた様な性能を発現できないことが確認された。
【符号の説明】
【0150】
1 箔転写面形成装置(画像形成装置)
11(11H、11Y、11M、11C、11Bk) 感光体
12(12H、12Y、12M、12C、12Bk) 帯電ローラ、帯電極
13(13A、13H、13Y、13M、13C、13Bk) 転写ローラ
14 トナー供給ローラ
20H 箔転写面形成部
20Y、20M、20C、20Bk トナー画像形成部
21H 箔転写面形成用トナー供給装置
21Y、21M、21C、21Bk トナー供給装置(現像装置)
23 搬送ローラ
25(25H、25Y、25M、25C、25Bk) クリーニング装置
26 中間転写ベルト
30(30H、30Y、30M、30C、30Bk) 露光部
50 定着装置
51 転写箔供給路
60 画像読取部
70 転写箔供給部
71 転写箔供給ローラ
72 転写箔巻き取りローラ
F 転写箔
f0 支持体
f1 接着層
f2 箔層
P 基体(画像支持体)
S 箔画像
Sb ベタの箔画像
Ss 線状の箔画像
R1 駆動ローラ
R2 従動ローラ
Re 端部
Rc 中心部
Rn ニップ部
D 外径
De ローラ端部における外径
Dc ローラ中心部における外径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
感光体を露光して静電潜像を形成する工程と、
静電潜像が形成された前記感光体にトナーを供給して箔転写面を形成する工程と、
前記感光体に形成された箔転写面を基体に転写する工程と、
前記基体に転写された箔転写面を定着する工程と、
前記箔転写面が定着された基体に転写箔を供給する工程と、
前記転写箔を前記箔転写面に接触させた状態のもとで加熱して前記箔転写面に箔を転写する工程を有する画像形成方法であって、
前記箔転写面の形成に使用されるトナーはガラス転移温度が60℃以下であり、
前記転写箔を前記箔転写面に接触させた状態のもとで加熱して前記箔転写面に箔を転写する工程は、前記転写箔と前記箔転写面が駆動ローラと従動ローラにより形成されるニップ部を通過するときに加熱して前記箔転写面へ箔を転写するものであり、
前記駆動ローラは、長手方向端部における外径が長手方向端部以外の部位における外径よりも大きいものであることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記駆動ローラの長手方向端部における外径と長手方向で最も小さな外径を有する部位における外径の差が0.05mm以上0.4mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記従動ローラは、長手方向端部における外径が長手方向端部以外の部位における外径よりも小さいもの及び長手方向における外径が同じもののいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記従動ローラが、長手方向端部における外径が長手方向端部以外の部位における外径よりも小さいものであるとき、
前記従動ローラの長手方向端部における外径と長手方向で最も大きな外径を有する部位における外径の差が0.2mm以下であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記転写箔と前記箔転写面が定着された基体は、前記駆動ローラと前記従動ローラにより形成されるニップ部を100mm/秒以上400mm/秒以下の速度で通過するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記転写箔は、軟化点温度が75℃以上105℃以下の接着層を有するものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記駆動ローラと前記従動ローラの少なくとも一方が加熱手段を有するものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項8】
少なくとも、
露光手段による露光により静電潜像を形成する感光体と、
静電潜像が形成された前記感光体にトナーを供給して箔転写面を形成する箔転写面形成手段と、
前記感光体に形成された箔転写面を基体に転写する転写手段と、
前記基体に転写された箔転写面を定着する定着手段と、
前記定着手段により箔転写面が定着された基体に転写箔を供給する転写箔供給手段と、
前記転写箔供給手段により供給された転写箔を前記箔転写面に接触させ、前記箔転写面に前記転写箔が接触した状態の下で加熱して、前記箔転写面に箔を転写させる箔転写手段を有する画像形成装置であって、
前記箔転写面形成手段より供給されるトナーはガラス転移温度が60℃以下であり、
前記箔転写手段は、
少なくとも、長手方向端部における外径が長手方向端部以外の部位における外径よりも大きい駆動ローラと、従動ローラを有するものであり、
前記接触した状態の箔転写面と転写箔が前記駆動ローラと従動ローラにより形成されるニップ部を通過させるときに加熱を行って前記箔転写面へ箔を転写するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記駆動ローラの長手方向端部における外径と長手方向で最も小さな外径を有する部位における外径の差が0.05mm以上0.4mm以下であることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記従動ローラは、長手方向端部における外径が長手方向端部以外の部位における外径よりも小さいもの及び長手方向における外径が同じもののいずれかであることを特徴とする請求項8または9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記従動ローラが、長手方向端部における外径が長手方向端部以外の部位における外径よりも小さいものであるとき、
前記従動ローラの長手方向端部における外径と長手方向で最も大きな外径を有する部位における外径の差が0.2mm以下であることを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記駆動ローラと前記従動ローラにより形成されるニップ部を通過するときの、前記転写箔と前記箔転写面が定着された基体の速度が、100mm/秒以上400mm/秒以下であることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記転写箔は、軟化点温度が75℃以上105℃以下の接着層を有するものであることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記駆動ローラと前記従動ローラの少なくとも一方が加熱手段を有するものであることを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−145622(P2012−145622A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1767(P2011−1767)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】