説明

画像形成方法および画像形成装置

【課題】感光体の偏磨耗を抑制する画像形成装置を提供すること。
【解決手段】感光体と、感光体表面を帯電する帯電手段と、帯電された感光体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、静電潜像を、研磨剤が外添されたトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像を感光体表面から記録媒体に転写する転写手段と、トナー像を記録媒体に転写した後の感光体表面に接触して設けられたブラシ部材と、ブラシ部材と接触した後の感光体表面に接触して設けられ、感光体表面に接触する部分が弾性部材からなるクリーニングブレードとを備え、研磨剤は平均粒径が0.6μm以上の無機粒子であり、感光体の軸方向におけるブラシ部材の感光体表面に対する当接圧が、軸方向の中央部において最大値を示し、弾性部材の100%モジュラスが6.5MPa以上である画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用して画像を形成する画像形成方法およびこれを用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真法を利用して画像を形成する複写機などの画像形成装置においては、以下の手順で画像が形成される。まず、静電潜像保持体表面を帯電した後、露光して静電潜像を形成する。続いて、現像剤により静電潜像を現像してトナー像を形成した後、このトナー像を記録媒体に転写し、更に加熱加圧して定着することにより画像を形成する。
【0003】
一方、トナー像を転写し終えた後の静電潜像保持体表面には、転写されなかったトナーなどが付着している。このため、これらの付着物を除去するために、ブラシやクリーニングブレードなどのクリーニング部材を利用してクリーニングが実施される。
クリーニング工程においては、所定のクリーニング効果を確保することは勿論であるが、その他にも、静電潜像保持体の磨耗抑制や、クリーニングブレードの磨耗抑制・めくれの防止などにも配慮する必要がある。
【0004】
これらの点も配慮した技術としては、例えば、ブラシローラのブラシ部材を、画像部と非画像部とで異なる性質に形成したクリーニング装置が提案されている(特許文献1参照)。更に、この技術では、静電潜像保持体の回転方向に対して、ブラシ部材が配置された位置よりも下流側にクリーニングブレードを配置することもできる。なお、ブラシローラのブラシ部材を、画像部と非画像部とで異なる性質に形成する方法としては、ブラシ部材の画像部に対応する領域に選択的に導電性物質を配合したり、ブラシ部材の画像部と非画像部とに対応する領域に硬度やブラシ密度に差を設けたりする方法が提案されている。
【0005】
また、この他にも、クリーニング装置としてクリーニングブラシ等の第1の清掃部材と、静電潜像保持体回転方向に対して第1の清掃部材の下流側に配置されたクリーニングブレードからなる第2の清掃部材とを備え、第1の清掃部材の両端部近傍におけるトナー除去能力が、中央部におけるトナー除去能力よりも低い画像形成装置が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−53486号公報
【特許文献2】特開2000−315040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、クリーニングブレードを用いた装置では、静電潜像保持体の回転に伴いクリーニングブレードの動的なたわみが発生し、静電潜像保持体の軸方向において、中央部よりも両端部の磨耗が促進される傾向にある。このような静電潜像保持体における偏磨耗の発生は、静電潜像保持体の寿命を縮める上に、長期間に渡る画像形成を実施した場合は画質欠陥の発生を招くことになる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、静電潜像保持体の偏磨耗を抑制する画像形成方法およびこれを用いた画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、
請求項1に係わる発明は、
一方向に回転するロール状の静電潜像保持体表面を帯電する帯電工程と、帯電された前記静電潜像保持体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像保持体表面に形成された前記静電潜像を、研磨剤が外添されたトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成するトナー像形成工程と、前記トナー像を前記静電潜像保持体表面から記録媒体に転写する転写工程と、前記トナー像を記録媒体に転写した後の前記静電潜像保持体表面に接触して設けられたロール状のブラシ部材により、前記静電潜像保持体表面をクリーニングする第1のクリーニング工程と、前記ロール状のブラシ部材と接触した後の前記静電潜像保持体表面に接触して設けられ、前記静電潜像保持体表面に接触する部分が弾性部材からなるクリーニングブレードにより、前記静電潜像保持体表面をクリーニングする第2のクリーニング工程と、を含み、
前記研磨剤は、平均粒径が0.6μm以上の無機粒子であり、
前記静電潜像保持体の軸方向における前記ロール状のブラシ部材の前記静電潜像保持体表面に対する当接圧が、前記軸方向の中央部において最大値を示し、
前記弾性部材の100%モジュラスが6.5MPa以上であることを特徴とする画像形成方法である。
【0008】
請求項2に係わる発明は、
一方向に回転するロール状の静電潜像保持体と、該静電潜像保持体表面を帯電する帯電手段と、帯電された前記静電潜像保持体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像保持体表面に形成された前記静電潜像を、研磨剤が外添されたトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記トナー像を前記静電潜像保持体表面から記録媒体に転写する転写手段と、前記トナー像を記録媒体に転写した後の前記静電潜像保持体表面に接触して設けられたロール状のブラシ部材と、前記ロール状のブラシ部材と接触した後の前記静電潜像保持体表面に接触して設けられ、前記静電潜像保持体表面に接触する部分が弾性部材からなるクリーニングブレードと、を少なくとも備え、
前記研磨剤は、平均粒径が0.6μm以上の無機粒子であり、
前記静電潜像保持体の軸方向における前記ロール状のブラシ部材の前記静電潜像保持体表面に対する当接圧が、前記軸方向の中央部において最大値を示し、
前記弾性部材の100%モジュラスが6.5MPa以上であることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
以上に説明したように、請求項1に記載の発明によれば、静電潜像保持体の偏磨耗を抑制する画像形成方法を提供することができる。
請求項2に記載の発明によれば、静電潜像保持体の偏磨耗を抑制する画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の画像形成方法は、一方向に回転するロール状の静電潜像保持体表面を帯電する帯電工程と、帯電された前記静電潜像保持体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像保持体表面に形成された前記静電潜像を、研磨剤が外添されたトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成するトナー像形成工程と、前記トナー像を前記静電潜像保持体表面から記録媒体に転写する転写工程と、前記トナー像を記録媒体に転写した後の前記静電潜像保持体表面に接触して設けられたロール状のブラシ部材により、前記静電潜像保持体表面をクリーニングする第1のクリーニング工程と、前記ロール状のブラシ部材と接触した後の前記静電潜像保持体表面に接触して設けられ、前記静電潜像保持体表面に接触する部分が弾性部材からなるクリーニングブレードにより、前記静電潜像保持体表面をクリーニングする第2のクリーニング工程と、を含むものである。
ここで、トナーに外添される研磨剤としては、平均粒径が0.6μm以上の無機粒子であり、前記静電潜像保持体の軸方向における前記ロール状のブラシ部材の前記静電潜像保持体表面に対する当接圧が、前記軸方向の中央部において最大値を示し、前記弾性部材の100%モジュラスが6.5MPa以上である。
【0011】
以下に、本発明を見出すに至った理由を説明する。
まず、既述したように、クリーニングブレードを用いて静電潜像保持体のクリーニングを行う場合、クリーニングブレードの動的なたわみの発生により静電潜像保持体軸方向両端部の磨耗が促進される。
このような偏磨耗を抑制するためには、静電潜像保持体の回転方向に対して、クリーニングブレードが配置された位置よりも上流側にロール状のブラシ部材(以下、「ロール状ブラシ」と称す場合がある)を配置し、静電潜像保持体の軸方向に対して、ロール状ブラシの静電潜像保持体に対する当接圧が中央部で最大値を示すように制御する方法が挙げられる。なお、静電潜像保持体の軸方向に対する当接圧は、特許文献1等に例示されるようにロール状ブラシの軸方向における植毛密度などにより制御できる。
【0012】
すなわち、ロール状ブラシの軸方向の当接圧に分布を設けることにより、ロール状ブラシでは、静電潜像保持体の中央部の磨耗が両端部よりも促進されることになる。それゆえ、クリーニングブレードで静電潜像保持体の両端部の磨耗が促進されても、静電潜像保持体の軸方向に対する磨耗は全体としては、均一化されるものと期待できる。
【0013】
しかしながら、本発明者らが鋭意検討したところ、上述した方法を採用しても、長期に渡って画像を形成した場合では、静電潜像保持体の偏磨耗を十分に抑制できないことを確認した。
これは、クリーニングブレードの動的なたわみに起因する静電潜像保持体の両端部の磨耗促進効果よりも、ロール状ブラシの軸方向の当接圧に分布を設けた場合の静電潜像保持体の中央部の磨耗促進効果の方が小さいためであると考えられる。
【0014】
それゆえ、静電潜像保持体の偏磨耗を抑制する上で、本発明者らは、クリーニングブレードの動的なたわみを小さくすることにより、クリーニングブレードの動的なたわみに起因する静電潜像保持体の両端部の磨耗促進効果を抑制することが重要であると考えた。すなわち、クリーニングブレードの動的なたわみを小さくする上では、ロール状ブラシを配置してこれにクリーニング機能を分担して負担させることによりクリーニングブレードの静電潜像保持体に対する当接圧を小さくすることの他に、低硬度のクリーニングブレードよりも高硬度のクリーニングブレードを用いることが好ましいと考えられる。
【0015】
一方、長期に渡って画像を形成する場合、例え、静電潜像保持体の偏磨耗を抑制できたとしても、転写されなかったトナーなどが静電潜像保持体表面に固着しやすくなるため、画質欠陥の発生を招いてしまうことになる。それゆえ、実用に耐えうるクリーニング効果を長期に渡って維持するためには、研磨剤の利用が欠かせない。
また、研磨剤を利用することにより、ロール状ブラシの軸方向中央部の磨耗をより促進できるため、静電潜像保持体の偏磨耗をより抑制できるものと考えられる。
【0016】
しかし、以上に説明した点を全て考慮しても実際には静電潜像保持体の偏磨耗を十分に抑制できない場合があった。
そこで、本発明者らが更に鋭意検討したところ、研磨剤がクリーニングブレードと静電潜像保持体とが接触する部分(ニップ部)に研磨剤が滞留していることが、静電潜像保持体の偏磨耗を引き起こしている原因であると推定した。すなわち、本発明者らは、クリーニングブレードの動的なたわみの発生によって、元来、静電潜像保持体の偏磨耗が発生しやすい傾向のあるところに、ニップ部に研磨剤が滞留することにより、偏磨耗が促進されるものと考えた。
【0017】
ニップ部における研磨剤の滞留を抑制するには、ニップ部を容易にすり抜ける形状やサイズを有する研磨剤を利用することが重要であると考えられる。しかし、ニップ部のすり抜け性を向上させるためには、研磨剤粒子の形状を球状に近づけることや、粒径を大きくすることが挙げられる。
しかし、研磨剤粒子の形状を球状に近づけると、角張った部分が無くなるために研磨剤そのものが持つ研磨効果が減殺され、クリーニング性が低下してしまう場合がある。また、研磨剤粒子の大径化は、クリーニングブレード先端部分の欠け(ブレード欠け)の発生を招きやすくする。しかし、ブレード欠けは、クリーニングブレードの動的なたわみの抑制も兼ねて高硬度のクリーニングブレードを採用すれば抑制することができる。
それゆえ、ニップ部における研磨剤の滞留を抑制するには、研磨剤粒子の粒径をより大きくすることが好適であると考えられる。以上に説明した点を考慮して、本発明者らは上述した本発明を見出した。
【0018】
ここで、研磨剤としては、平均粒径が0.6μm以上である無機粒子が用いられる。平均粒径が0.6μm未満では、クリーニングブレードと静電潜像保持体とにより形成されるニップ部に研磨剤が滞留しやすくなるため、静電潜像保持体の偏磨耗を抑制することができなくなる。なお、研磨剤の平均粒径は0.7μm以上であることが好ましく、0.8μm以上であることがより好ましいが、平均粒径が大きすぎる場合には、ブレード欠けが発生してしまう場合がある。この観点からは、研磨剤の平均粒径は1.2μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがより好ましい。
【0019】
研磨粒子の体積平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置[マスターサイザー2000(商品名)マルバーン社製]により測定することができる。測定は乾式サンプル分散ユニットScirocco2000に2.0gの試料を封入し、機器にあらかじめ登録された標準操作手順(SOP)ライブラリから、予想される粒径毎に対応した測定モードを選択し、自動測定にて実施した。ここで、「体積平均粒径」とは、粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積をそれぞれ小径側から累積分布を描いた場合に、累積が50%に達した時の粒径を意味する。
【0020】
また、研磨剤の硬度や形状については、特に限定されるものではないが、適度な研磨効果が発揮できるように適宜選択される。
具体的には、研磨剤のモース硬度は3以上であることが好ましく5以上であることがより好ましい。モース硬度が3未満では、研磨剤の研磨効果が不十分となり、長期に渡って画像を形成した場合に、静電潜像保持体表面に付着したトナー等の付着物を十分に除去できなくなり、クリーニング性が低下する場合がある。また、モース硬度が高すぎる場合は、ブレード欠けを招きやすくなる場合がある。それゆえ、モース硬度は9以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましい。
【0021】
一方、研磨剤の形状については、ブレード欠けや静電潜像保持体表面の傷の発生を抑制しつつ適度な研磨効果を確保するために、研磨剤の平均円形度が0.6以上0.95以下の範囲内であることが好ましく、0.75以上0.9以下の範囲内であることがより好ましい。
平均円形度が0.6未満の場合は、研磨剤の形状が著しく不定形となるため、ブレード欠けや静電潜像保持体表面の傷の発生を招いてしまう場合がある。一方、平均円形度が0.95を超えると、研磨剤の形状に角張った部分が少なくなり研磨剤の研磨効果が低下するため、長期に渡って画像を形成した場合に、クリーニング性が低下する場合がある。
【0022】
なお、本発明において平均円形度とは、フロー式粒子像分析装置FPIA−2000(東亜医用電子株式会社製)により計測した値を意味する。具体的な測定方法としては、予め不純固形物を除去した水100〜150ml中に、分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜0.5ml加え、更に測定試料を0.1〜0.5g程度加える。測定試料を分散した懸濁液は越音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、分散液濃度を3000〜1万個/μlとして前記装置により平均円形度を測定する。
【0023】
研磨剤の添加量としては、トナー100質量部に対して0.05質量部以上0.875質量部以下の範囲内が好ましく、0.10質量部以上0.50質量部以下の範囲内がより好ましい。
研磨剤添加量がトナー100質量部に対して0.05質量部未満の場合は、研磨効果が十分に得られず、長期に渡って画像を形成した場合に、クリーニング性が低下する場合がある。また、研磨剤添加量がトナー100質量部に対して0.875質量部を超える場合は、静電潜像保持体の磨耗速度が大きくなり、静電潜像保持体の寿命が短くなる場合がある。なお、研磨剤を構成する材料については後述する。
【0024】
一方、静電潜像保持体の軸方向におけるロール状ブラシの静電潜像保持体表面に対する当接圧は、軸方向の中央部において最大値を示すように制御される。なお、静電潜像保持体の軸方向に対する当接圧の具体的な制御方法の詳細については後述する。
ここで、「当接圧が、(静電潜像保持体)軸方向の中央部において最大値を示す」とは、当接圧の静電潜像保持体の軸方向に対するプロファイルが、中央部近傍で最大値を示し、両端部近傍で最小値を示すプロファイルであれば特に限定されない。
プロファイルの具体例としては、例えば、(1)中央部から両端部へと徐々に当接圧が減少するプロファイルや、(2)当接圧が中央部近傍で一定値(最大値)を維持し、中央部近傍から両端部へと徐々に減少するプロファイル、(3)中央部から両端部側へと徐々に当接圧が減少し、最端部から中央部側に向かう一定の領域では当接圧が一定値(最小値)を維持するプロファイル、(4)上記(2)および(3)に示すプロファイルをミックスしたタイプのプロファイルなどが挙げられる。
【0025】
これら4種類のプロファイルの一例を図1〜図4に示す。図1〜図4は、静電潜像保持体の軸方向に対するロール状ブラシの静電潜像保持体表面に対する当接圧変化のプロファイルの一例を示すグラフであり、横軸が静電潜像保持体の軸方向を、縦軸が当接圧を表す。ここで図1は、上記(1)に示すプロファイルの一例を示したものであり、中央部から端部へと曲線を描くように当接圧が減少するプロファイルを示したものである。また、図2は上記(2)に示すプロファイルの一例を示したものであり、当接圧が中央部近傍で一定値(最大値)を維持し、中央部近傍から両端部へと直線的に当接圧が減少するプロファイルを示したものである。また、図3は上記(3)に示すプロファイルの一例を示したものであり、中央部から両端部側へと直線的に当接圧が減少し、最端部から中央部側に向かう一定の領域では当接圧が一定値(最小値)を維持するプロファイルを示したものである。さらに、図4は上記(4)に示すプロファイルの一例を示したものであり、当接圧が中央部近傍で一定値(最大値)を維持し、最端部から中央部側に向かう一定の領域では当接圧が一定値(最小値)を維持し、当接圧が最大値を維持する領域と最小値を維持する領域との境界点では、当接圧が最大値から最小値へと一挙に変化しているプロファイルを示したものである。
【0026】
なお、当接圧は軸方向のいずれの箇所においても0.05gf/mm以上0.50gf/mm以下の範囲内に収まるように制御されることが好ましく、0.10gf/mm以上0.40gf/mm以下の範囲内に収まるように制御されることがより好ましい。当接圧が0.05gf/mm未満の場合には、ロール状ブラシによるクリーニング効果が不十分となる場合がある。この場合、これを補うために、クリーニングブレードの静電潜像保持体に対する当接圧を強くしなければならないため、クリーニングブレードの動的たわみが大きくなり静電潜像保持体の偏磨耗が促進される場合がある。また、当接圧が 0.50gf/mmを超える場合は、静電潜像保持体表面に傷が発生したり著しい磨耗が発生して、静電潜像保持体の寿命が短くなる場合がある。
さらに当接圧の最大値と最小値との比(最大値/最小値)は1.1以上3.0以下の範囲内が好ましく、1.5以上2.5以下の範囲内がより好ましい。最大値/最小値が1.1未満では、静電潜像保持体の偏磨耗が抑制できなくなる場合がある。また、最大値/最小値が3.0を超えると、静電潜像保持体の中央部で傷が発生したり著しい磨耗が発生して、静電潜像保持体の寿命が短くなる場合がある。
【0027】
当接圧は、測定端子幅1mmのロードセルを、ロール状ブラシと静電潜像保持体との当接部の軸方向の所定の位置に配置して、ロール状ブラシの中央部における食い込み量を1.3mmに設定し、ロール状ブラシの周速を283mm/sとしてロードセルに回転接触させた場合の圧力として測定した。
【0028】
なお、本発明では、トナー像を記録媒体に転写した後で且つロール状のブラシ部材と接触する前の静電潜像保持体表面に対して接触する導電性微細繊維布を配置してもよい。
この場合、平均粒径が0.6μm以上である研磨剤粒子の帯電極性に対して、逆極性の直流バイアスと、同極性の直流バイアスとを周期的に切り替えながら印加することで、導電性微細繊維布により研磨剤粒子を捕獲したり、一旦捕獲した研磨剤粒子を静電潜像保持体側へと放出することができる。
【0029】
次に、本発明の画像形成方法を用いた画像形成装置について説明する。本発明の画像形成装置は、一方向に回転するロール状の静電潜像保持体と、該静電潜像保持体表面を帯電する帯電手段と、帯電された前記静電潜像保持体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像保持体表面に形成された前記静電潜像を、研磨剤が外添されたトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記トナー像を前記静電潜像保持体表面から記録媒体に転写する転写手段と、前記トナー像を記録媒体に転写した後の前記静電潜像保持体表面に接触して設けられたロール状のブラシ部材と、前記ロール状のブラシ部材と接触した後の前記静電潜像保持体表面に接触して設けられ、前記静電潜像保持体表面に接触する部分が弾性部材からなるクリーニングブレードと、を少なくとも備えたものである。ここで、既述したように前記研磨剤は、平均粒径が0.6μm以上の無機粒子であり、前記静電潜像保持体の軸方向における前記ロール状のブラシ部材の前記静電潜像保持体表面に対する当接圧が、前記軸方向の中央部において最大値を示し、前記弾性部材の100%モジュラスが6.5MPa以上である。
【0030】
なお、転写手段は、中間転写体を利用した中間転写方式であってもよい。この場合、トナー像は、静電潜像保持体から中間転写体を介して記録媒体へと転写される。また、本発明の画像形成装置には、例えば、トナー像が転写された記録媒体を加熱加圧等を利用して定着する定着手段や、トナー像を転写した後の静電潜像保持体表面を除電する除電手段など、その他公知の部材や装置が用いられてもよい。
【0031】
−帯電手段−
本発明に用いられる帯電手段としては公知の帯電方式を利用した帯電器が適応可能である。例えばコロトロン帯電方式や接触帯電方式などを利用した帯電器が挙げられる。また接触帯電方式ではローラー状の帯電部材、ブレード状の帯電部材、ベルト状の帯電部材、ブラシ状の帯電部材、導電性ファーブラシ状の帯電部材などが適応可能である。特にローラー状の帯電部材、ブレード状の帯電部材については静電潜像保持体に対し、接触状態またはある程度の空隙(100μm以下)を有した非接触状態として配置しても構わない。
【0032】
ローラー状の帯電部材、ブレード状の帯電部材、ベルト状の帯電部材は帯電部材として有効な電気抵抗(10Ω〜10Ω)に調整された材料から構成される物であり、単層又は複数の層から構成されていても構わない。
帯電部材を構成する材質としてはウレタンゴム、シリコンゴム、フッソゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)、エピクロルヒドリンゴム等の合成ゴムやポリオレフィン、ポリスチレン、塩化ビニル等からなるエラストマーを主材料とし、導電性カーボン、金属酸化物、イオン導電剤等の任意の導電性付与剤を適量配合したものを用いることができる。これらの材料は、帯電部材として有効な電気抵抗を発現させることが容易である。
さらにナイロン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、シリコーン等の樹脂を塗料化し、そこに導電性カーボン、金属酸化物、イオン導電剤等の任意の導電性付与剤を適量配合し、得られた塗料をデイッピング、スプレー、ロールコート等の任意の手法により、積層して用いる事ができる。
【0033】
−現像手段−
本発明に用いられる現像手段としては、公知のものであれば特に限定されないが、例えば、キャリアとトナーとからなる現像ブラシを静電潜像保持体に接触させて現像させる二成分現像方式の現像手段や、導電ゴム弾性体搬送ロール(現像ロール)上にトナーを付着させ静電潜像保持体にトナーを現像する接触式一成分現像方式の現像手段などが利用できる。
二成分現像方式の場合、現像ロールの回転方向は静電潜像保持体の回転方向と同方向でも逆方向でも良く、静電潜像保持体と逆方向に周速差をつけると、静電潜像保持体上の残留トナーの回収性を上げることができる。なお、現像ロールに印加する電界は直流でも直流に交流を重畳させても良い。
【0034】
また、トナーの回収性および放電生成物の掻き取り性を向上させるために、現像ロール表面に形成される磁気ブラシは、静電潜像保持体に面する磁気ブラシ密度が常に一定になるように層規制部材により層規制されることによって、磁気ブラシ密度が適正な範囲内に調整されることが好ましい。
【0035】
現像ロールに印加するバイアスは、トナーの正規の極性が負極性である場合、−50V〜−600Vが良く、さらに好ましくは−100V〜−550Vである。さらに画質を向上させるために交流電界を重畳させてもよい。
【0036】
−転写手段−
本発明に用いられる転写手段としては公知の転写方式を利用したものが利用可能である。例えば、転写コロトロンや転写ロール等を用いた直接転写方式、中間転写ベルトや中間転写ドラム等の中間転写体を用いた中間転写方式、記録媒体を静電的に吸着して搬送し静電潜像保持体上のトナー像を転写する転写ベルト方式を利用した転写手段などが挙げられる。
【0037】
−ロール状ブラシ−
本発明に用いられるロール状ブラシとしては、静電潜像保持体の軸方向に対する当接圧が、中央部近傍で最大値を示し両端部近傍で最小値を示すように構成されたものであれば特に限定されないが、具体的には以下に例示するものが挙げられる。すなわち、(1)軸方向に対して中央部から両端部へと繊維の長さを短くしたロール状ブラシ、(2)軸方向に対して中央部から両端部へと繊維の材質を変化させたロール状ブラシ、(3)軸方向に対して中央部から両端部へと繊維の植毛密度を減少させたロール状ブラシ、および、(4)上記(1)〜(3)の態様を少なくとも2つ以上組み合わせた構成を有するロール状ブラシが挙げられる。なお、繊維の長さ、材質、植毛密度は、軸方向に対して連続的に変化させてもよいし、不連続的に変化させてもよい。
【0038】
図5は、本発明に用いられるロール状ブラシの一例を示す概略構成図であり、図5(A)が、軸方向に対して中央部から両端部へと繊維の長さを短くしたロール状ブラシの一例を示したものであり、図5(B)が、軸方向に対して中央部から両端部へと繊維の材質(又は植毛密度)を変化させたロール状ブラシの一例を示したものである。ここで、図中、100、102はロール状ブラシ、110、110S、110C、120、120S、120Cはブラシ繊維部分、130はロール軸を表す。
【0039】
図5(A)に示すロール状ブラシ100では、ロール軸130の軸方向に植毛されたブラシ繊維部分110が、繊維長さの長い領域110Cと、領域110Cの軸方向両側に配置された繊維長さの短い領域110Sとから構成されている。
また、図5(B)に示すロール状ブラシ102では、ロール軸130の軸方向に植毛されたブラシ繊維部分120が、繊維材質の硬い領域(又は植毛密度の高い領域)120Cと、領域120Cの軸方向両側に配置された繊維材質の柔らかい領域(又は植毛密度の低い領域)120Sとから構成されている。
なお、これら図5(A)や図5(B)に示すロール状ブラシを用いた場合、軸方向に対する当接圧のプロファイルは、図4に示されるパターンを示すことになる。
【0040】
ロール状ブラシの繊維の材質としては、ナイロン、アクリル又はポリプロピレンが好ましく、この中でも特にナイロンが長期安定性に優れるため好ましい。ロール状ブラシの回転方向は静電潜像保持体の回転方向と同方向でも逆方向でも良い。
【0041】
ロール状ブラシ表面の繊維密度は、15×10〜120×10本/inch(23.4〜186本/mm)が好ましい。繊維太さは2〜20デニールが好ましい。繊維長さ(但し、当該繊維長さには、起毛の接着層厚みは含まれない)は2.5mm〜7mmが好ましく、さらに好ましくは3mm〜6.5mmである。また、繊維の静電潜像保持体表面への進入量(食い込み量)は0.3mmから1.5mmが好ましい。なお当該進入量とは、繊維が真っ直ぐに伸びた状態で、静電潜像保持体表面に対して突き刺さったと仮定した場合の、静電潜像保持体表面から繊維先端までの距離を意味する。
【0042】
−クリーニングブレード−
本発明に用いられるクリーニングブレードは静電潜像保持体表面に接触する部分が弾性部材からなり、当該弾性部材の100%モジュラスが6.5MPa以上であることが必要であり、7.0Mpa以上であることがより好ましく、9.0MPa以上であることがさらに好ましい。
弾性部材の100%モジュラスが6.5MPa未満では、硬度が低下してクリーニングブレードの動的なたわみが大きくなるため、静電潜像保持体の偏磨耗を抑制できなくなる。一方、弾性部材の100%モジュラスが大きすぎる場合は、クリーニングブレードの静電潜像保持体に対する追従性が悪化し、良好なクリーニング性が得られなくなる場合がある。それゆえ、弾性部材の100%モジュラスは19.6MPa以下であることが好ましく、15.0MPa以下であることがより好ましい。
【0043】
また、弾性部材は、その破断伸びが250%以上であることが好ましく、300%以上であることがより好ましく、350%以上であることがさらに好ましい。
破断伸びが250%未満である場合、静電潜像保持体表面の異物とクリーニングブレードの先端とが強い力で衝突した際に、クリーニングブレードの先端が追従変形できず、比較的短期間の内にエッジ欠けが発生してしまう場合がある。
一方、破断伸びSが500%より大きい場合は、被クリーニング部材に対する追従性(密着性)が増し、被クリーニング部材との摩擦カが増大し、結果としてクリーニングブレードの磨耗が増大し易くなる場合がある。従って、磨耗抑制の観点から破断伸びは500%以下であることが好ましく、450%以下であることがより好ましく、400%以下であることが更に好ましい。
【0044】
なお、100%モジュラスおよび破断伸びはいずれも、J1SK6251に準拠して測定されるものである。即ち、ダンベル状3号形試験片を用い、引張速度500mm/minで計測して応力−歪み曲線を得(環境温度23℃)、この曲線を基に得られるものである。尚、測定装置は、東洋精機(株)製、ストログラフAEエラストマーを用いた。
【0045】
本発明に用いられるクリーニングブレードにおいては、少なくとも静電潜像保持体の表面と接する弾性部材が、少なくとも100%モジュラスが6.5MPa以上である材料から構成されるが、その他の部分(一部又は全部)の材料も100%モジュラスが6.5MPa以上である弾性部材から構成されていてもよい。
【0046】
クリーニングブレードを構成する材料としては、公知のゴム弾性体を用いることができ、必要に応じてその他の材料を添加してもよい。ゴム弾性体としては、特に限定されないが、ゴムウレタンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、アクリロニトリルゴム、ブタジエン系ゴム、スチレン系ゴムあるいはこれらの複合材を用いることができる。また、基材の形状としては板状が好適に用いられ、遠心成形、押し出し成形、型成形等を利用して形成することができる。
【0047】
しかしながら、100%モジュラスが6.5MPa以上であることに加えて、破断伸びが250%以上である材料としては、ハードセグメントおよびソフトセグメントを含むエラストマー材料を選択することが好ましい。エラストマー材料が、ハードセグメントおよびソフトセグメントの双方を含むことにより、100%モジュラスが6.5MPa以上且つ破断伸びが250%以上を満たすことが容易となり、耐磨耗性および耐欠け性の双方を、より高いレベルで両立させることができる。
【0048】
なお、「ハードセグメント」および「ソフトセグメント」とは、エラストマー材料中で、前者を構成する材料の方が、後者を構成する材料よりも相対的に硬い材料からなり、後者を構成する材料の方が前者を構成する材料よりも相対的に柔らかい材料からなるセグメントを意味する。
なお、ハードセグメント材料およびソフトセグメント材料の総量に対するハードセグメントを構成する材料の重量比(以下、「ハードセグメント材料比」と称す場合がある)としては、46質量%〜96質量%の範囲内であることが好ましく、50質量%〜90質量%の範囲内であることがより好ましく、60質量%〜85質量%の範囲内であることが更に好ましい。ハードセグメント材料比が46質量%未満の場合には、弾性部材の耐磨耗性が不充分となり、早期に磨耗が起きて長期に渡る良好なクリーニング性が維持できなくなる場合がある。一方、ハードセグメント材料比が96質量%を超える場合には、エッジ先端が硬くなり過ぎて柔軟性や伸張性が不充分となり、早期に欠けが発生して長期に渡る良好なクリーニング性が維持できなくなる場合がある。
【0049】
ハードセグメント材料とソフトセグメント材料との組み合わせとしては、公知の樹脂材料から選択できるが、例えば、以下のような組み合わせが好適である。
【0050】
即ち、ハードセグメント材料としては、ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。この場合のポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、1000〜4000の範囲内であることが好ましく、1500〜3500の範囲内であることがより好ましい。重量平均分子量が1000未満の場合は、クリーニングブレードが低温環境下で使用される場合にハードセグメントを構成するポリウレタン樹脂の弾性が失われるために、クリーニング不良が生じやすくなる場合がある。また、重量平均分子量が4000を超える場合は、ハードセグメントを構成するポリウレタン樹脂の永久歪みが大きくなり、クリーニング部材の先端部分を構成する弾性部材が、静電潜像保持体に対して接触する押圧力を保持することができなくなり、クリーニング不良が生じる場合がある。
【0051】
なお、上述したようなハードセグメント材料として用いられるポリウレタン樹脂としては、例えば、ダイセル化学社製、プラクセル205やプラクセル240などが挙げられる。
また、ハードセグメント材料としてポリウレタン樹脂を用いる場合、当該ハードセグメント材料に組み合わせるソフトセグメント材料としては、(a)イソシアネート基に対して反応可能な官能基を有する樹脂を用いることが好ましい。また、この樹脂の物性は、(b)ガラス転移温度が0℃以下、(c)25℃における粘度が600mPa・s〜35000mPa・s範囲内、(d)重量平均分子量が700〜3000の範囲内であることが好ましい。これらの物性が満たされない場合には、クリーニングブレードを作製する際の成形性が不充分となったり、クリーニングブレード自体の特性が不充分となったりする場合がある。
【0052】
なお、物性は、より好ましくは、ガラス転移温度が−10℃以下、25℃における粘度が1000mPa・s〜3000mPa・s範囲内、重量平均分子量が900〜2800の範囲内である。また、クリーニングブレードを遠心成型を利用して作製する場合、25℃における粘度が600mPa・s〜3500mPa・s範囲内であることが好ましい。
上記(a)〜(d)に示す構造および物性を満たすソフトセグメント材料としては、公知の樹脂から適宜選択することができるが、少なくとも末端にイソシアネート基に対して反応可能な官能基を有する柔軟性のある樹脂であることが好ましい。
また、樹脂は、柔軟性の点から、直鎖構造を有する脂肪族系の樹脂であることが好ましい。具体例としては、2つ以上のヒドロキシル基を含むアクリル樹脂や、2つ以上のヒドロキシル基を含むポリブタジエン樹脂、或いは、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0053】
2つ以上のヒドロキシル基を含むアクリル樹脂としては、例えば、総研化学社製のアクトフロー(グレード:UMB−2005B,UMB−2005P,UMB−2005,UME−2005等)を挙げることができ、2つ以上のヒドロキシル基を含むポリブタジエン樹脂としては、例えば、出光興産社製、R−45HT等を挙げることができる。
また、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂としては、従来の一般的なエポキシ樹脂のように硬くて脆い性質を有するものではなく、従来のエポキシ樹脂よりも柔軟強靭性であるものが好ましい。
【0054】
このようなエポキシ樹脂としては、例えば、分子構造の面では、その主鎖構造中に、主鎖の可動性を高くできるような構造(柔軟性骨格)を有するものが好適であり、柔軟性骨格としては、アルキレン骨格や、シクロアルカン骨格、ポリオキシアルキレン骨格等を挙げることができるが、特にポリオキシアルキレン骨格が好適である。
また、物性面では、従来のエポキシ樹脂と比べて、分子量に比して粘度が低いエポキシ樹脂が好適である。具体的には、重量平均分子量が900±100の範囲内程度であり、25℃における粘度が15000±5000mPa・sの範囲内であることが好ましく、15000±3000mPa・sの範囲内であることがより好ましい。このような特性を有するエポキシ樹脂としては、例えば、大日本インキ化学工業製、EPLICON EXA−4850−150等を挙げることができる。
【0055】
−静電潜像保持体−
本発明に用いられる静電潜像保持体としては、公知の静電潜像保持体が利用できるが、例えば、導電性基体上に少なくとも感光層が設けられた構成を有する有機感光体が利用できる。なお、感光層は、電荷発生層と電荷輸送層とこの順に積層させた層構成を有するような機能分離型のものでもよい。さらに、感光層の表面には、架橋構造を持つ樹脂を含む表面層を設けることもできる。これに加えて、感光層と導電性基体や、感光層と表面保護層との間に必要に応じて中間層を設けることもできる。また、架橋構造を持つ樹脂は電荷輸送性を有していることが好適である。
なお、以下の説明においては、本発明に用いられる静電潜像保持体が、機能分離型の有機感光体である場合を前提としてより詳細に説明するが、本発明に用いられる静電潜像保持体の層構成は以下の説明に限定されるものではない。
【0056】
導電性基体としては、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、亜鉛、ニッケル等の金属ドラム;シート、紙、プラスチック、ガラス等の基材上にアルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス鋼、銅−インジウム等の金属を蒸着したもの;酸化インジウム、酸化スズ等の導電性金属化合物を上記基材に蒸着したもの;金属箔を上記基材にラミネートしたもの;カーボンブラック、酸化インジウム、酸化スズ−酸化アンチモン粉、金属粉、ヨウ化銅等を結着樹脂に分散し、上記基材に塗布することによって導電処理したもの等が挙げられる。また、導電性基体の形状は、ドラム状、シート状、プレート状のいずれであってもよい。
【0057】
また、導電性基体として金属製パイプ基体を用いる場合、当該金属製パイプ基体の表面は素管のままのものであってもよいが、予め表面処理により基体表面を粗面化しておくことも可能である。かかる粗面化により、露光光源としてレーザービーム等の可干渉光源を用いた場合に、静電潜像保持体内部で発生し得る干渉光による木目状の濃度ムラを防止することができる。表面処理の方法としては、鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニング等が挙げられる。
特に、感光層との密着性向上や成膜性向上の点では、例えば、アルミニウム基体の表面に陽極酸化処理を施したものを導電性基体として用いることが好ましい。
【0058】
電荷発生層は、電荷発生材料を真空蒸着法により蒸着させて形成するか、有機溶剤及び結着樹脂を含む溶液を塗布することにより形成される。
【0059】
電荷発生材料としては、非晶質セレン、結晶性セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、その他のセレン化合物;セレン合金、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機系光導電体;又はこれらを色素増感したもの、無金属フタロシアニン,チタニルフタロシアニン,銅フタロシアニン,錫フタロシアニン,ガリウムフタロシアニンなどの各種フタロシアニン化合物;スクエアリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ系、アントラキノン系、ピレン系、ピリリウム塩、チアピリリウム塩等の各種有機顔料;又は染料が用いられる。
また、これらの有機顔料は一般に数種の結晶型を有しており、特にフタロシアニン化合物ではα型、β型などをはじめとしてさまざまな結晶型が知られているが、目的にあった感度その他の特性が得られる顔料であるならば、これらのいずれの結晶型でも用いることが可能である。
【0060】
なお、上述した電荷発生材料の中でも、フタロシアニン化合物が好ましい。この場合、感光層に光が照射されると、感光層に含まれるフタロシアニン化合物がフォトンを吸収してキャリアを発生させる。このとき、フタロシアニン化合物は、高い量子効率を有するため、吸収したフォトンを効率よく吸収してキャリアを発生させることができる。
【0061】
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、以下のものを例示することができる。即ちビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプなどのポリカーボネート樹脂およびその共重合体、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコン−アルキド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾールなどである。
【0062】
これらの結着樹脂は、単独であるいは2種以上混合して用いることが可能である。電荷発生材料と結着樹脂との配合比(電荷発生材料:結着樹脂)は、重量比で、10:1〜1:10の範囲が望ましい。また電荷発生層の厚みは、一般には0.01〜5μmの範囲内であることが好ましく0.05〜2.0μmの範囲内であることがより好ましい。
【0063】
また電荷発生層は、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として少なくとも1種の電子受容性物質を含有してもよい。電荷発生層に用いられる電子受容性物質としては、例えば無水琥珀酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピークリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸などを挙げることができる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl,CN,NO2等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特によい。
【0064】
電荷発生材料を樹脂中に分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、ダイノーミル、サンドミル、コロイドミルなどの方法を用いることができる。
電荷発生層を形成する為の塗布液の溶媒として公知の有機溶剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n―ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。
【0065】
電荷輸送層としては、公知の技術によって形成されたものを使用できる。電荷輸送層は、電荷輸送材料と結着樹脂とを用いて形成されていてもよく高分子電荷輸送材を用いて形成されていてもよい。
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの正孔輸送性化合物があげられる。
これらの電荷輸送材料は単独または2種以上混合して用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの電荷輸送材料は単独あるいは2種以上混合して用いることができるが、モビリティーの観点から、例えば、以下の構造式(1)〜(3)に示す材料を利用することが好ましい。
【0066】
【化1】

【0067】
構造式(1)中、R14は、水素原子またはメチル基を示す。また、nは1又は2を意味する。Ar6及びAr7は置換又は未置換のアリール基あるいは、−C(R18)=C(R19)(R20)、―CH=CH―CH=C(Ar)2を表わし、置換基としてはハロゲン原子、炭素数が1〜5の範囲のアルキル基、炭素数が1〜5の範囲のアルコキシ基、又は炭素数が1〜3の範囲のアルキル基で置換された置換アミノ基を示す。
【0068】
【化2】

【0069】
構造式(2)中R15、R15’は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭
素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、を表わす。R16、R16’、R17
、R17’は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル
基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、置換又は未置換のアリール基、あるいは、−C(R18)=C(R19)(R20)、―CH=CH―CH=C(Ar)2を表わす。
なお、構造式(1)および構造式(2)の置換基において、R18、R19、R20は水素原子、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアリール基を表す。mおよびnは0〜2の整数である。
【0070】
【化3】

【0071】
構造式(3)中、R21は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、置換又は未置換のアリール基、または、―CH=CH―CH=C(Ar)2を表す。
22、R23は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、置換又は未置換のアリール基を表す。
なお、構造式(1)〜構造式(3)の置換基において、Arは、置換又は未置換のアリール基を表す。
【0072】
さらに電荷輸送層に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材など高分子電荷輸送材を用いることもできる。これらの結着樹脂は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比(重量比)は10:1〜1:5が好ましい。
【0073】
また、高分子電荷輸送材を単独で用いることもできる。高分子電荷輸送材としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシランなどの電荷輸送性を有する公知のものを用いることができる。特に、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材は、高い電荷輸送性を有しており、とくに好ましいものである。高分子電荷輸送材はそれだけでも電荷輸送層として使用可能であるが、上記結着樹脂と混合して電荷輸送層を形成してもよい。
【0074】
電荷輸送層の厚みは一般的には、5〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。さらに電荷輸送層を設けるときに用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状もしくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0075】
また、複写機中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光、熱による静電潜像保持体の劣化を防止する目的で、感光層中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加することができる。例えば、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等があげられる。光安定剤の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体があげられる。
【0076】
また、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として、少なくとも1種の電子受容性物質を含有させることができる。本発明に用いる静電潜像保持体に使用可能な電子受容物質としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸等や、一般式(I)で示される化合物をあげることができる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系やCl,CN,NO2等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特に好ましい。
【0077】
静電潜像保持体の表面層には、少なくとも架橋構造を有する樹脂が含まれる。架橋構造を有する樹脂としては、架橋構造を有するフェノール系樹脂、ウレタン系樹脂、シロキサン系樹脂等が挙げられる。これらの架橋構造を有する樹脂は優れた体磨耗性を有しているため、長期に渡って使用しても、静電潜像保持体表面の磨耗や傷の発生を抑制することができる。なお、架橋構造を有する樹脂は、電荷輸送性を有するものであることが好ましい。
架橋構造を有する樹脂としては種々の材料を用いることが出来るが、特性上フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シロキサン樹脂などが好ましく、特にシロキサン系樹脂からなるものが好ましい。このうち特に、一般式 (I)や(II)で示される化合物から誘導される構造を有するものが強度、安定性に優れ特に好ましい。
【0078】
F−[D−Si (R(3−a) (I)
一般式(I)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基、Dは可とう性サブユニット、Rは水素、アルキル基、置換あるいは未置換のアリール基、Qは加水分解性基を表わし、aは1〜3の整数、bは1〜4の整数を表わす。
なお、一般式(I)中のDで示される可とう性サブユニットとしては、−(CH)n−基を必ず含み、これに−COO−、−O−、−CH=CH−、−CH=N−基を組み合わせた2価の直鎖基であってもよい。なお、−(CH)n−基のnは1〜5の整数を表す。また、Qで表される加水分解性基としては、−OR基(但し、Rはアルキル基を表す)を表す。
【0079】
F−((X)nR−ZH)m (II)
一般式(II)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基、Rはアルキレン基、Zは、−O−、−S−、−NH−、又は、−COO−、mは1〜4の整数を示す。Xは、−O−、又は、−S−を表し、nは0または1を示す。
一般式(I)、(II)で示される化合物のさらに好ましいものとして、有機基Fが特に下記一般式(III)で示されるものを用いたものを挙げることができる。
【0080】
【化4】

【0081】
一般式(III)中、Ar〜Arはそれぞれ独立に置換又は未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基又はアリ−レン基を示し、且つ、Ar〜Arのうち2〜4個は、一般式(I)中の−D−Si(R(3−a)で表される結合手を有する。Dは可とう性サブユニット、Rは水素、アルキル基、置換あるいは未置換のアリール基、Qは加水分解性基を表わし、aは1〜3の整数を表わす。
【0082】
一般式(III) におけるAr〜Arはそれぞれ独立に置換または未置換のアリール基を示し、具体的には、以下の構造群1に示されるものが好ましい。
【0083】
【化5】

【0084】
なお、構造群1中に示されるArは下記構造群2から選択されるものが好ましく、Z’は下記構造群3から選択されるものが好ましい
【0085】
【化6】

【0086】
【化7】

【0087】
構造群1〜3中、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基もしくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基、または未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基から選択される。
〜R13は、水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、もしくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基、または未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基、ハロゲンから選択される。
mおよびsは0または1を表わし、qおよびrは1から10の整数、tは1から3の整数を示す。ここで、Xは一般式(I)中に示した−D−Si(R(3−a)で表わされる基を示す。
また構造群3中に示されるWは下記構造群4で示されるものが好ましい。なお、構造群4中、s’は0〜3の整数を示す。
【0088】
【化8】

【0089】
また、一般式(III)におけるArの具体的構造としては、k=0の時は、上記構造群1に示したAr〜Arのm=1の構造が、k=1の時は、上記構造群1に示したAr〜Arのm=0の構造が挙げられる。
【0090】
なお、一般式(III)で示される化合物の具体例としては、以下の表1〜7に示す化合物(III−1)〜(III−61)を挙げることができるが、本発明に用いられる一般式(III)で示される化合物は、これらのみに限定されるものではない。
また、表1〜7中の「Ar」〜「Ar」の欄に示される構造式中、ベンゼン環に結合する”−S”基は、表1〜7中の「S」の欄に示される一価の基(一般式(I)中の−D−Si(R(3−a)で表される構造に相当する基)を意味する。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【0094】
【表4】

【0095】
【表5】

【0096】
【表6】

【0097】
【表7】

【0098】
一般式(II)の具体例としては、以下の(II)−1〜(II)〜26に示す化合物を挙げることができるが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0099】
【化9】

【0100】
【化10】

【0101】
【化11】

【0102】
また、強度、膜抵抗などの種々の物性をコントロールするために、下記一般式(IV)で示される化合物を添加することもできる。
Si (R(4−c) (IV)
一般式(IV)中、Rは水素、アルキル基、置換あるいは未置換のアリール基、Qは加水分解性基を表わし、cは1〜4の整数を表わす。
【0103】
一般式(VI)で示される化合物の具体例としては以下のようなシランカップリング剤があげられる。
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の四官能性アルコキシシラン(c=4);メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パ−フルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パ−フルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パ−フルオロオクチルトリエトシキシラン等の三官能性アルコキシシラン(c=3);ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン等の二官能性アルコキシシラン(c=2);トリメチルメトキシシラン等の1官能アルコキシシラン(c=1)等をあげることができる。膜の強度を向上させるためには3および4官能のアルコキシシランが好ましく、可とう性、製膜性を向上させるためには2および1官能のアルコキシシランが好ましい。
【0104】
また、主にこれらのカップリング材より作製されるシリコン系ハードコート剤も用いることができる。市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−40−2239(以上、信越シリコーン社製)、およびAY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)などを用いることができる。
【0105】
また、強度を高めるために、一般式(V)に示すような2つ以上のケイ素原子を有する化合物を用いることも好ましい。
B−(Si(R(3−a) (V)
一般式(V)中、Bは2価の有機基、Rは水素、アルキル基、置換あるいは未置換のアリール基、Qは加水分解性基を表わし、aは1〜3の整数を表わす。
具体的には、以下の表8に示す材料を好ましいものとしてあげることができるが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0106】
【表8】

【0107】
さらに、膜特性のコントロール、液寿命の延長、などのため、アルコール系、ケトン系溶剤に可溶な樹脂を添加しても良い。このような樹脂としてはとしては、ポリビニルブチラ−ル樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールやアセトアセタール等で変性された部分アセタ−ル化ポリビニルアセタ−ル樹脂などのポリビニルアセタール樹脂(たとえば積水化学社製エスレックB、Kなど)、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、フェノール樹脂などがあげられる。特に、電気特性上ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。
【0108】
また、放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、粒子分散性、粘度コントロール、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフの延長などの目的で種々の樹脂を添加することができる。特にシロキサン系の樹脂の場合はアルコールに溶解する樹脂を加えることが好ましい。
アルコール系溶剤に可溶な樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマ−ルやアセトアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルアセタ−ル樹脂などのポリビニルアセタール樹脂(たとえば積水化学社製エスレックB、Kなど)、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、フェノール樹脂などがあげられる。特に、電気特性上ポリビニルアセタ−ル樹脂が好ましい。
【0109】
上記樹脂の分子量は2000〜100000が好ましく、5000〜50000がさらに好ましい。分子量は2000より小さいと所望の効果が得られなくなり、100000より大きいと溶解度が低くなり添加量が限られてしまったり、塗布時に製膜不良の原因になったりする。添加量は1〜40質量%が好ましく、さらに好ましくは1〜30質量%であり、5〜20質量%が最も好ましい。1質量%よりも少ない場合は所望の効果が得られにくくなり、40質量%よりも多くなると高温高湿下での画像ボケが発生しやすくなる恐れがある。また、それらの樹脂は単独で用いてもよいが、それらを混合して用いてもよい。
【0110】
また、ポットライフの延長、膜特性のコントロールのため、下記一般式(VI)で示される繰り返し構造単位を持つ環状化合物、もしくはその化合物からの誘導体を含有させることも出来る。
【0111】
【化12】

【0112】
一般式(VI)中、A、Aはそれぞれ独立に一価の有機基を示す。
一般式(VI)で示される繰り返し構造単位を持つ環状化合物として、市販の環状シロキサンをあげることができる。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類、3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素含有シクロシロキサン類、メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサンなどのヒドロシリル基含有シクロシロキサン類、ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサンなどのビニル基含有シクロシロキサン類等の環状のシロキサン等をあげることができる。これらの環状シロキサン化合物は単独で用いても良いが、それらを混合して用いても良い。
【0113】
更に、静電潜像保持体表面の耐汚染物付着性、潤滑性を改善するために、各種粒子を添加することもできる。それらは、単独で用いることもできるが、併用してもよい。粒子の一例として、ケイ素含有粒子を挙げることができる。ケイ素含有粒子とは、構成元素にケイ素を含む粒子であり、具体的には、コロイダルシリカおよびシリコーン粒子等が挙げられる。ケイ素含有粒子として用いられるコロイダルシリカは、平均粒子径1〜100nm、好ましくは10〜30の酸性もしくはアルカリ性の水分散液、あるいはアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。表面層中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、製膜性、電気特性、強度の面から表面層の全固形分中の0.1〜50質量%の範囲、好ましくは0.1〜30質量%の範囲で用いられる。
【0114】
ケイ素含有粒子として用いられるシリコーン粒子は、球状で、平均粒子径1〜500nm、好ましくは10〜100nmの、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子、シリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。シリコーン粒子は、化学的に不活性で、樹脂への分散性に優れる小径粒子であり、さらに十分な特性を得るために必要とされる含有量が低いため、架橋反応を阻害することなく、静電潜像保持体の表面性状を改善することができる。即ち、強固な架橋構造中に均一に取り込まれた状態で、静電潜像保持体表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期間にわたって良好な耐摩耗性、耐汚染物付着性を維持することができる。静電潜像保持体における表面層中のシリコーン粒子の含有量は、表面層の全固形分中の0.1〜30質量%の範囲であり、好ましくは0.5〜10質量%の範囲である。
【0115】
また、その他の粒子としては、4弗化エチレン、3弗化エチレン、6弗化プロピレン、弗化ビニル、弗化ビニリデン等のフッ素系粒子や”第8回ポリマー材料フォ−ラム講演予稿集 p89”に示される様な、前記フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂からなる粒子、ZnO−Al、SnO−Sb、In−SnO、ZnO−TiO、ZnO−TiO、MgO−Al、FeO−TiO、TiO、SnO、In、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物をあげることができる。
また、同様な目的でシリコーンオイル等のオイルを添加することもできる。シリコーンオイルとしては、たとえば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル、アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノ−ル変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル等をあげることができる。
【0116】
また、上記粒子の表面層表面への露出率は40%以下であることが好ましい。前記範囲を超えると、粒子単体の影響が大きくなり、低抵抗化による像流れなどが発生しやすくなる。前記範囲内の更に好ましい範囲は30%以下であり、表面に露出した粒子がクリーニング部材で効果的にリフレッシュされ、長期に渡り、静電潜像保持体表面のトナー成分フィルミング抑制、放電生成物の除去、トルクの低減によるクリーニング部材の摩耗低減が維持される。
【0117】
また、可塑剤、表面改質剤、酸化防止剤、光劣化防止剤等の添加剤を使用することもできる。可塑剤としては、例えば、ビフェニル、塩化ビフェニル、ターフェニル、ジブチルフタレート、ジエチレングリコールフタレート、ジオクチルフタレート、トリフェニル燐酸、メチルナフタレン、ベンゾフェノン、塩素化パラフィン、ポリプロピレン、ポリスチレン、各種フルオロ炭化水素等が挙げられる。
【0118】
表面層にはヒンダ−トフェノール、ヒンダ−トアミン、チオエーテル又はホスファイト部分構造を持つ酸化防止剤を添加することができ、環境変動時の電位安定性・画質の向上に効果的である。酸化防止剤としては以下のような化合物、例えばヒンダ−トフェノール系として「Sumilizer BHT−R」、「Sumilizer MDP−S」、「Sumilizer BBM−S」、「Sumilizer WX−R」、「Sumilizer NW」、「Sumilizer BP−76」、「Sumilizer BP−101」、「Sumilizer GA−80」、「Sumilizer GM」、「Sumilizer GS」以上住友化学社製、「IRGANOX1010」、「IRGANOX1035」、「IRGANOX1076」、「IRGANOX1098」、「IRGANOX1135」、「IRGANOX1141」、「IRGANOX1222」、「IRGANOX1330」、「IRGANOX1425WL」、「IRGANOX1520L」、「IRGANOX245」、「IRGANOX259」、「IRGANOX3114」、「IRGANOX3790」、「IRGANOX5057」、「IRGANOX565」以上チバスペシャリティ−ケミカルズ社製、「アデカスタブAO−20」、「アデカスタブAO−30」、「アデカスタブAO−40」、「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」、「アデカスタブAO−70」、「アデカスタブAO−80」、「アデカスタブAO−330」以上旭電化製、ヒンダートアミン系として「サノールLS2626」、「サノールLS765」、「サノールLS770」、「サノールLS744」、「チヌビン144」、「チヌビン622LD」、「マークLA57」、「マークLA67」、「マークLA62」、「マークLA68」、「マークLA63」、「スミライザ−TPS」、チオエーテル系として「スミライザ−TP−D」、ホスファイト系として「マーク2112」、「マークPEP・8」、「マークPEP・24G」、「マークPEP・36」、「マーク329K」、「マークHP・10」が挙げられ、特にヒンダートフェノール、ヒンダートアミン系酸化防止剤が好ましい。さらに、これらは架橋膜を形成する材料と架橋反応可能な例えばアルコキシシリル基などの置換基で変性してもよい。
【0119】
表面層の形成に用いるコーティング液や、このコーティング液作製時に触媒を添加もしくは用いることが好ましい。用いられる触媒としては塩酸、酢酸、リン酸、硫酸などの無機酸、蟻酸、プロピオン酸、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸などの有機酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、トリエチルアミンなどのアルカリ触媒、さらに以下に示すような系に不溶な固体触媒を用いることもできる。
例えば、アンバーライト15、アンバーライト200C、アンバ−リスト15E(以上、ロ−ム・アンド・ハース社製);ダウエックスMWC−1−H、ダウエックス88、ダウエックスHCR−W2(以上、ダウ・ケミカル社製);レバチットSPC−108、レバチットSPC−118(以上、バイエル社製);ダイヤイオンRCP−150H(三菱化成社製);スミカイオンKC−470、デュオライトC26−C、デュオライトC−433、デュオライト−464(以上、住友化学工業社製);ナフィオン−H(デュポン社製)などの陽イオン交換樹脂;アンバーライトIRA−400、アンバーライトIRA−45(以上、ロ−ム・アンド・ハ−ス社製)などの陰イオン交換樹脂;Zr(OPCHCH SOH) ,Th(OPCHCHCOOH)などのプロトン酸基を含有する基が表面に結合されている無機固体;スルホン酸基を有するポリオルガノシロキサンなどのプロトン酸基を含有するポリオルガノシロキサン;コバルトタングステン酸、リンモリブデン酸などのヘテロポリ酸;ニオブ酸、タンタル酸、モリブデン酸などのイソポリ酸;シリカゲル、アルミナ、クロミア、ジルコニア、CaO、MgOなどの単元系金属酸化物;シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、ゼオライト類など複合系金属酸化物;酸性白土、活性白土、モンモリロナイト、カオリナイトなどの粘土鉱物;LiSO ,MgSOなどの金属硫酸塩;リン酸ジルコニア、リン酸ランタンなどの金属リン酸塩;LiNO ,Mn(NOなどの金属硝酸塩;シリカゲル上にアミノプロピルトリエトキシシランを反応させて得られた固体などのアミノ基を含有する基が表面に結合されている無機固体;アミノ変性シリコーン樹脂などのアミノ基を含有するポリオルガノシロキサンなどが挙げられる。
【0120】
また、コーティング液の作製の際に、光機能性化合物、反応生成物、水、溶剤などに不溶な固体触媒を用いると、塗工液の安定性が向上する傾向にあるため好ましい。系に不溶な固体触媒とは、触媒成分が一般式(I)、(II)、(III)、(V)で示される化合物や、他の添加剤、水、溶剤等に不溶であれば特に限定されない。これらの固体触媒の使用量は特に制限されないが、加水分解性基を有する化合物の合計100質量部に対して0.1〜100質量部が好ましい。また、これらの固体触媒は、前述の通り、原料化合物、反応生成物、溶剤などに不溶であるため、反応後、常法にしたがって容易に除去することができる。反応温度及び反応時間は原料化合物や固体触媒の種類及び使用量に応じて適宜選択されるものであるが、反応温度は通常0〜100℃、好ましくは10〜70℃、より好ましくは15〜50℃であり、反応時間は好ましくは10分〜100時間である。反応時間が前記上限値を超えるとゲル化が起こりやすくなる傾向にある。
【0121】
コーティング液作製工程において系に不溶な触媒を用いた場合は、強度、液保存安定性などを向上させる目的で、さらに系に溶解する触媒を併用することが好ましい。そのような触媒としては、前述のものに加え、アルミニウムトリエチレート、アルミニウムトリイソプロピレート、アルミニウムトリ(sec−ブチレート)、モノ(sec−ブトキシ)アルミニウムジイソプロピレート、ジイソプロポキシアルミニウム(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムジイソプロポキシ(アセチルアセトネート)、アルミニウムイソプロポキシ−ビス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(トリフルオロアセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)等の有機アルミニウム化合物を使用することができる。
【0122】
また、有機アルミニウム化合物以外には、ジブチルスズジラウリレート、ジブチルスズジオクチエ−ト、ジブチルスズジアセテート等の有機ズズ化合物;チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)等の有機チタニウム化合物;ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)等のジルコニウム化合物;等も使用することができるが、安全性、低コスト、ポットライフ長さの観点から、有機アルミニウム化合物を使用するのが好ましく、特にアルミニウムキレート化合物がより好ましい。これらの触媒の使用量は特に制限されないが、加水分解性基を有する化合物の合計100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、0.3〜10質量部が特に好ましい。
【0123】
また、有機金属化合物を触媒として用いた場合は、ポットライフ、硬化効率の面から、ともに多座配位子を添加することが好ましい。このような多座配位子としては、以下に示すようなもの及びそれらから誘導されるものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0124】
具体的には、アセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ジピバロイルメチルアセトン等のβ−ジケトン類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のアセト酢酸エステル類;ビピリジン及びその誘導体;グリシン及びその誘導体;エチレンジアミン及びその誘導体;8−オキシキノリン及びその誘導体;サリチルアルデヒド及びその誘導体;カテコ−ル及びその誘導体;2−オキシアゾ化合物等の2座配位子;ジエチルトリアミン及びその誘導体;ニトリロトリ酢酸及びその誘導体等の3座配位子;エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)及びその誘導体等の6座配位子;等を挙げることができる。さらに、上記のような有機系配位子の他、ピロリン酸、トリリン酸等の無機系の配位子を挙げることができる。多座配位子としては、特に2座配位子が好ましく、具体例としては、上記の他、下記一般式(VII)で表される2座配位子が挙げられる。中でも下記一般式(VII)で表される2座配位子がより好ましく、下記一般式(VII)中のRとRとが同一のものが特に好ましい。RとRとを同一にすることで、室温付近での配位子の配位力が強くなり、コーティング液のさらなる安定化を図ることができる。
【0125】
【化13】

【0126】
一般式(VII)中、R、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、もしくはフッ化アルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基を示す。
多座配位子の配合量は、任意に設定することができるが、用いる有機金属化合物の1モルに対し、0.01モル以上、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは1モル以上とするのが好ましい。
コーティング液の製造は、無溶媒下で行うこともできるが、必要に応じてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;等の他、種々の溶媒が使用できる。このような溶媒としては、沸点が100℃以下のものが好ましく、任意に混合して使用することができる。溶媒量は任意に設定できるが、少なすぎると有機ケイ素化合物が析出しやすくなるため、有機ケイ素化合物1質量部に対し0.5〜30質量部、好ましくは、1〜20質量部とするのが好ましい。
【0127】
コーティング液を硬化させる際の反応温度及び反応時間は特に制限されないが、得られるケイ素樹脂の機械的強度及び化学的安定性の点から、反応温度は好ましくは60℃以上、より好ましくは80〜200℃であり、反応時間は好ましくは10分〜5時間である。また、コーティング液の硬化により得られる表面層を高湿度状態に保つことは、表面層の特性の安定化を図る上で有効である。さらには、用途に応じてヘキサメチルジシラザンやトリメチルクロロシランなどを用いて表面層に表面処理を施して疎水化することもできる。
【0128】
架橋構造を有する樹脂に電荷輸送性材料を添加したり、電荷輸送性機能を付与した場合には、優れた機械強度を有する上に光電特性も十分であるため、これをそのまま積層型静電潜像保持体の電荷輸送層として用いることもできる。その場合、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。ただし、1回の塗布により必要な膜厚が得られない場合、複数回重ね塗布することにより必要な膜厚を得ることができる。複数回の重ね塗布を行なう場合、加熱処理は塗布の度に行なっても良いし、複数回重ね塗布した後でも良い。
【0129】
単層型感光層の場合は、前記の電荷発生物質と結着樹脂とを含有して形成される。結着樹脂としては、前記電荷発生層および電荷輸送層に用いられる結着樹脂と同様のものを用いることができる。単層型感光層中の電荷発生物質の含有量は、10から85質量%程度、好ましくは20から50質量%である。単層型感光層には、光電特性を改善する等の目的で電荷輸送物質や高分子電荷輸送物質を添加してもよい。その添加量は5〜50質量%とすることが好ましい。また、一般式(I)で示される化合物を加えてもよい。塗布に用いる溶剤や塗布方法は、上記と同様のものを用いることができる。膜厚は5〜50μm程度が好ましく、10〜40μmとするのがさらに好ましい。
【0130】
−中間転写体−
画像の形成が中間転写方式を利用して行われる場合、中間転写体が利用される。この中間転写体としては、ドラム状や無端ベルト状の公知の中間転写体を用いることができるが、中間転写ベルトを用いることが好ましい。
中間転写ベルトとしては公知のものが利用でき、例えば、基材のみからなる半導電性の無端ベルトや、基材の外周面側に弾性層を設けた半導電性の無端ベルト、また、基材の外周面側に弾性層と表面層とをこの順に積層した半導電性の無端ベルト等を用いることができる。
【0131】
−トナー−
本発明に用いられるトナーとしては、公知のトナーであれば特に限定されないが、既述したように外添剤として少なくとも平均粒径が0.6μm以上の無機粒子からなる研磨剤が外添されていることが必要である。
また、トナーには、結着樹脂や着色剤が含まれ、必要に応じて離型剤が含まれていてもよい。さらに、必要に応じて上述した以外の外添剤が添加されていてもよい。
【0132】
結着樹脂としては、具体的には、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル系単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルフォン酸ナトリウム等のエチレン性不飽和酸単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン類などの単量体からなる単独重合体、それらの単量体を2種以上組み合せた共重合体、又はそれらの混合物を挙げられる。
さらには、これら単独重合体、共重合体又は混合物に、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂等、非ビニル縮合系樹脂、又は、それらと前記ビニル系樹脂との混合物、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等を挙げることができる。
【0133】
上記着色剤は、従来より公知の着色剤を用いることができ、特に制限されない。例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレレートなどの種々の顔料や、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料などを1種又は2種以上を併せて使用することができる。
【0134】
離型剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;シリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス;ミツロウのごとき動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物系又は石油系のワックス、及びそれらの変性物などを挙げることができる。これらのうちの少なくとも1種をトナー粒子内に含有させるのがよい。
【0135】
また、トナーには、上記成分の他に、さまざまな特性を制御するために、種々の成分を含有させることができる。例えば、磁性トナーとして用いる場合、磁性粉(例えばフェライトやマグネタイト)、還元鉄、コバルト、ニッケル、マンガン等の金属、合金又はこれら金属を含む化合物などを含有させることもできる。さらに必要に応じて、4級アンモニウム塩、ニグロシン系化合物やトリフェニルメタン系顔料等の通常使用される帯電制御剤を適宜選択して含有させてもよい。
【0136】
さらに、トナーには、平均粒径が0.6μm以上の無機粒子からなる研磨剤に加えて、必要に応じて潤滑剤、転写助剤等の公知の外添剤を外添することができる。
平均粒径が0.6μm以上の無機粒子からなる研磨剤としては、例えばシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ、炭酸カルシウム素、炭酸カルシウム、炭酸マグウネシウムおよびりん酸カルシウム等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。
【0137】
また、上記無機粒子にテトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネートなどのチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤などで処理を行っても良い。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩による疎水化処理も好ましく行うことができる。
【0138】
また、トナーに外添される潤滑剤としては滑性粒子を用いることもできる。
この滑性粒子は、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩や、グラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸等の固体潤滑剤や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪族アミド類やカルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が使用でき、これら列挙した材料を単独あるいは併用しても良い。これらの中でも、本発明においては、ステアリン酸亜鉛を用いることが好ましい。
【0139】
滑性粒子の平均粒径としては、0.1〜10μmの範囲内が好ましく、0.2〜8μmの範囲内がより好ましい。なお、滑性粒子を粉砕することにより、粒度分布を小さくし、粒径を揃えてもよい。滑性粒子の添加量は、トナー粒子およびこの表面に外添された全ての添加剤に対して0.05〜2.0質量%の範囲内が好ましく、0.1〜1.5質量%の範囲内がより好ましい。
【0140】
本発明に用いられるトナーを製造する方法は、特に制約されるものではないが、例えば、通常の粉砕法や、分散媒中で作製する湿式溶融球形化法や、懸濁重合、分散重合、乳化重合凝集法等の既知の重合法によるトナー製造法などを用いることができる。
また、本発明に用いられるトナーには、上述した研磨剤、潤滑剤の他にも、例えば平均粒径10〜300nm程度のシリカおよびチタニア等の無機粒子などの種々の外添剤を適宜量外添することができる。
【0141】
−キャリア−
本発明に用いられる現像剤がトナーとキャリアとからなる二成分現像剤である場合、使用し得るキャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアを用いることができる。例えば、酸化鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物などの芯材のみからなるキャリア(ノンコートキャリア)や、これら芯材の表面に樹脂層を設けた樹脂コートキャリア等を用いることができる。
【0142】
樹脂コートキャリアに使用される被覆樹脂としては、キャリア用の樹脂層材料として用いられているものであれば公知の樹脂が利用でき、二種類以上の樹脂をブレンドして用いても良い。樹脂層を構成する樹脂としては大別すると、トナーに帯電性を付与するための帯電付与樹脂と、トナー成分のキャリアへの移行を防止するために用いられる表面エネルギーの低い樹脂とが挙げられる。
ここで、トナーに負帯電性を付与するための帯電付与樹脂としては、アミノ系樹脂、例えば、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂、およびエポキシ樹脂等があげられ、さらにポリビニルおよびポリビニリデン系樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エチルセルロース樹脂等のセルロース系樹脂等があげられる。
また、トナーに正帯電性を付与するための帯電付与樹脂としては、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。
トナー成分のキャリアへの移行を防止するために用いられる表面エネルギーの低い樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリ弗化ビニル樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、弗化ビニリデンと弗化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンと弗化ビニリデンと非弗化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、およびシリコーン樹脂等があげられる。
【0143】
また、樹脂層には、抵抗調整を目的として導電性粒子を添加してもよい。導電性粒子としては金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの導電粉は平均粒径1μm以下のものが好ましい。更に、必要に応じて、複数の導電性樹脂等を併用することができる。
【0144】
また、樹脂層には、帯電制御を目的として樹脂粒子を含有しても良い。樹脂粒子を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が利用できる。
熱可塑性樹脂の場合、ポリオレフィン系樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン;ポリビニルおよびポリビニリデン系樹脂、例えば、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテルおよびポリビニルケトン;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコン樹脂またはその変性品;フッ素樹脂、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン;ポリエステル;ポリカーボネート等が挙げられる。
【0145】
熱硬化性樹脂の例としては、フェノール樹脂;アミノ樹脂、例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂;エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0146】
また、ノンコートキャリアや、樹脂コートキャリアの芯材としては、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、ガラスビーズ等が挙げられるが、キャリアを磁気ブラシ法に用いるためには、磁性材料であることが好ましい。
芯材の体積平均粒径としては、一般的には10〜500μmであり、好ましくは30〜100μmである。
【0147】
樹脂コートキャリアを作製する場合に、芯材表面に樹脂をコーティングして樹脂被覆層を形成するには、前記被覆樹脂および必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液を用いて芯材を被覆する方法が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して適宜選択すればよい。
【0148】
具体的な樹脂被覆方法としては、キャリアの芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液をキャリアの芯材表面に噴霧するスプレー法、キャリアの芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法が挙げられる。
【0149】
以上に説明したキャリアを用いた二成分現像剤ではトナーとキャリアとの混合比(重量比)が、トナー:キャリア=1:100〜30:100程度の範囲であり、3:100〜20:100程度の範囲がより好ましい。
【0150】
−画像形成装置の具体例−
次に、本発明の画像形成装置の具体例を図面を用いてより詳細に説明する。図6は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略模式図であり、所謂タンデム型の画像形成装置について示したものである。
図6に示す画像形成装置1は、各色の画像データに対応して画像形成を行なう画像形成プロセス部20(図中、点線で囲まれた部分)、例えばパーソナルコンピュータ(PC)3やスキャナ等の画像読取装置4に接続され、これらから受信された画像データに対して所定の画像処理を施す画像処理部22、画像形成装置1を構成する各部の動作を制御する制御部60、画像形成装置1の各部に電力を供給する電源部65を含んで構成されている。
【0151】
画像形成プロセス部20は、一定の間隔を置いて水平方向に並列的に配置される4つの画像形成ユニット30Y,30M,30C,30K(以下、総称として「画像形成ユニット30」とも記す)を備えている。
画像形成ユニット30は、矢印A方向(反時計回り方向)に回転可能な静電潜像保持体31、静電潜像保持体31の表面を所定電位で一様に帯電する例えばスコロトロンで構成された帯電器32、静電潜像保持体31上に形成された静電潜像を現像する現像器33、転写後の静電潜像保持体31表面に残留したトナー等の帯電極性を一定(例えば、マイナス極性)に揃えるクリーニング前帯電器34、転写後の静電潜像保持体31の表面電荷を除電する除電ランプ35、転写後の静電潜像保持体31表面に残留したトナー等を清掃するクリーニング装置36、帯電前の潜像履歴を消去する帯電前ランプ37を含んで構成されている。
【0152】
ここで、各画像形成ユニット30Y,30M,30C,30Kは、現像器33に収納されたトナーを除いて、略同様に構成されている。
また、画像形成プロセス部20には、画像形成ユニット30の各々に配置された静電潜像保持体31を露光するレーザ露光装置26、画像形成ユニット30の各々の静電潜像保持体31上に形成された各色のトナー像が多重転写される中間転写ベルト41、画像形成ユニット30の各々にて形成された各色トナー像を一次転写部T1にて中間転写ベルト41上に順次転写(一次転写)させる一次転写ロール42、中間転写ベルト41上に転写された重畳トナー像を二次転写部T2にて記録媒体である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写ロール40、二次転写されたトナー像を用紙P上に定着させる定着器80を備えている。
【0153】
なお、本実施の形態において、中間転写ベルト41は、複数(本実施の形態では4つ)の支持ロール46〜49に掛け渡され、矢印B方向(時計回り方向)に循環するようになっている。ここで、支持ロール47は中間転写ベルト41の駆動ロールである。また、支持ロール46,48は中間転写ベルト41の張力を調整するテンションロールである。更に、支持ロール49は、二次転写ロール40をバックアップするバックアップロールである(以下、「バックアップロール49」として記載することがある)。
【0154】
画像形成装置1では、制御部60による制御の下で画像形成プロセス部20において画像形成動作が実行される。具体的には、PC3や画像読取装置4から入力された各色成分毎の画像データは、画像処理部22によって所定の画像処理が施された後、レーザ露光装置26に供給される。そして、レーザ露光装置26は、画像形成ユニット30の各々の静電潜像保持体31表面を走査露光する。
例えばイエロー(Y)の画像形成ユニット30Yでは、帯電器32により所定電位に一様に帯電された静電潜像保持体31が、レーザ露光装置26によりイエロー(Y)成分の画像データに基づいて変調されたレーザ光によって走査露光される。これにより、静電潜像保持体31上には、イエロー(Y)成分の静電潜像が形成される。形成された静電潜像は現像器33により現像され、静電潜像保持体31上にはイエロー(Y)のトナー像が形成される。これと同様に、画像形成ユニット30M,30C,30Kにおいても、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色トナー像が形成される。ここで、本実施の形態の現像器33に用いられるトナーは、マイナス極性を有するものである。
【0155】
各画像形成ユニット30にて形成された各色トナー像は、矢印B方向に循環移動する中間転写ベルト41上に、一次転写ロール42により順次静電転写される。それにより、中間転写ベルト41上には各色トナー像が重畳されたトナー像(重畳トナー像)が形成される。重畳トナー像は、中間転写ベルト41の移動に伴って二次転写ロール40とバックアップロール49とが配設された二次転写部T2に向けて搬送される。一方、用紙Pはピックアップロール72により用紙トレイ71から取り出され、搬送ロール73によって1枚ずつレジストロール74の位置まで搬送される。
そして、重畳トナー像が二次転写部T2に搬送されると、トナー像が二次転写部T2に搬送されるタイミングに合わせてレジストロール74から用紙Pが二次転写部T2に供給される。二次転写部T2では、二次転写ロール40とバックアップロール49との間に形成された転写電界の作用により、重畳トナー像は用紙P上に一括して静電転写(二次転写)される。
【0156】
その後、重畳トナー像が転写された用紙Pは、中間転写ベルト41から剥離され、搬送ベルト75に吸着された状態で定着器80まで搬送される。定着器80に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着器80によって熱および圧力による定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙積載部91に搬送される。一方、二次転写後に中間転写ベルト41に付着しているトナー(転写残トナー)は、二次転写の終了後に中間転写ベルト41に接して設置されたベルトクリーナ45によって除去され、次の画像形成サイクルに備えられる。
【0157】
一方、一次転写部T1での転写処理が行なわれた後の静電潜像保持体31表面では、静電潜像保持体31表面に残留したトナーや中間転写ベルト41から再転写したトナー等の帯電極性がクリーニング前帯電器34によりマイナス極性に揃えられる。さらに、除電ランプ35により転写後の静電潜像保持体31の表面電荷が除電されて、静電潜像保持体31の表面電位は例えば−50V程度に低下される。そして、クリーニング装置36によって静電潜像保持体31表面に残留したトナー等は除去される。また、クリーニング装置36を通過した静電潜像保持体31表面を帯電前ランプ37で全面露光することにより、帯電器32での帯電前に前回の画像形成サイクルで生じた潜像履歴を消去する処理が行なわれる。画像形成装置1では、このような画像形成サイクルを繰り返すことにより画像を形成する。
【0158】
次に、図6中に示すクリーニング装置36についてより詳細に説明する。図7は、本発明の画像形成装置に用いられるクリーニング装置の一例を示す概略模式図である。
クリーニング装置36は、時計回り方向に回転可能な静電潜像保持体31に当接するクリーニングブレード361、静電潜像保持体31表面に当接すると共に、静電潜像保持体31のクリーニングブレード361が配置された位置よりも静電潜像保持体31回転方向上流側に設けられ、かつ静電潜像保持体31と順方向に回転するロール状ブラシ362、ロール状ブラシ362に保持されたトナーをかき落とすフリッカーバー363、および、回収されたトナーを画像形成ユニットの外部に配置された回収ボックス(不図示)に搬出する回収オーガ364を備えている。なお、ロール状ブラシ362としては、例えば図5(A)や図5(B)に例示したものが利用できる。
【実施例】
【0159】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」はすべて「質量部」を意味する。
【0160】
−各種分散液の作製−
(樹脂粒子分散液の調整)
スチレン370g,n−ブチルアクリレート30g,アクリル酸8g、ドデカンチオール24g四臭化炭素4gを混合して溶解したものを、非イオン性界面活性剤(ノニポール400:三洋化成(株)製)6g及びアニオン性界面活性剤(ネオゲンSC:第一工業製薬(株)製)10gをイオン交換水550gに溶解したフラスコ中で乳化重合させ、10分間ゆっくり混合しながら、これに過硫酸アンモニウム4gを溶解したイオン交換水50gを投入した。
フラスコ内を窒素置換した後、フラスコ内の溶液を攪拌しながら温度が70℃になるまでオイルバスで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した。その結果、平均粒径150nm、ガラス転移温度Tg=58℃、重量平均分子量Mw=11500の樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液が得られた。この分散液の固形分濃度は40質量%であった。
【0161】
(着色剤分散液の調整)
・カーボンブラック(モーガルL:キャボット製):60g
・ノニオン性界面活性剤(ノニポール400:三洋化成(株)製):6g
・イオン交換水:240g
以上の成分を混合して、溶解、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50:IKA社製)を用いて10分間攪拌し、その後、アルティマイザーにて分散処理して平均粒径が250nmである着色剤(カーボンブラック)粒子が分散された着色剤分散剤を調整した。
【0162】
(離型剤分散液の調整)
・パラフィンワックス(HNP0190:日本精蝋(株)製、融点85℃):100g
・カチオン性界面活性剤 (サニゾールB50:花王(株)製):5g
・イオン交換水:240g
以上の成分を、丸型ステンレス鋼製フラスコ中でホモジナイザー(ウルトラタラックスT50:IKA社製)を用いて10分間分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、平均粒径が550nmである離型剤粒子が分散された離型剤分散液を調整した。
【0163】
−トナー母粒子の作製−
・樹脂粒子分散液:234部
・着色剤分散液 :30部
・離型剤分散液:40部
・ポリ水酸化アルミニウム(浅田化学社製、Paho2S):0.5部
・イオン交換水 :600部
以上の成分を、丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(ウルトラタラックスT50:IKA社製)を用いて混合し、分散した後、加熱用オイルバス中でフラスコ内を攪拌しながら40℃まで加熱した。
フラスコ内の溶液を40℃で30分保持した後、溶液中に生成した凝集粒子の体積平均粒径を確認した。その結果、凝集粒子の体積平均粒径は4.5μmであった。更に加熱用オイルバスの温度を上げて56℃で1時間保持した。この時点での凝集粒子の体積平均粒径は5.3μmであった。
【0164】
その後、この凝集体粒子を含む分散液に26質量部の樹脂粒子分散液を追加した後、加熱用オイルバスの温度を50℃まで上げて30分間保持した。この凝集粒子を含む分散液に、1N水酸化ナトリウムを追加して、フラスコ内の溶液のpHを7.0に調整した後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁気シールを用いて攪拌を継続しながら80℃まで加熱し、4時間保持した。
フラスコ内の溶液を冷却後、溶液中に生成したトナー母粒子を濾別し、イオン交換水で4回洗浄した後、凍結乾燥してトナー母粒子を得た。
トナー母粒子の体積平均粒径は5.7μm、平均形状係数SFは132であった。個数平均粒径は5.1μmであり、小径側粒子比率(粒径が(2/3)×個数平均粒径以下の粒子数/全粒子数)は4.3個数%であった。
【0165】
−研磨剤の作製・準備−
<研磨剤A>
研磨剤Aとして、ゾルゲル法で得られたシリカゾルにHMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理を行い、乾燥、粉砕することにより、平均粒子径500nm、モース硬度7、円形度0.8のシリカ粒子を作製した。
【0166】
<研磨剤B>
研磨剤Bとして、モース硬度7、平均粒径0.9μm、円形度0.8の酸化セリウム(三井金属鉱業社製)を準備した。
【0167】
<研磨剤C>
研磨剤Cとして、モース硬度9、平均粒径0.7μm、円形度0.8の酸化アルミニウム(住友化学工業製)を準備した。
【0168】
<研磨剤D>
研磨剤Dとして、ゾルゲル法で得られたシリカゾルにデシルトリメトキシシラン処理を行い、乾燥、粉砕することにより、モース硬度7、平均粒径1.15μm、円形度0.8のシリカ粒子を作製した。
【0169】
<研磨剤E>
研磨剤Eとして、モース硬度7、平均粒径0.65μm、円形度0.8の酸化セリウム (三井金属鉱業社製) を準備した。
【0170】
<研磨剤F>
研磨剤Fとして、ゾルゲル法で得られたシリカゾルにデシルトリメトキシシラン処理を行い、乾燥、粉砕することにより、モース硬度7、平均粒径1.25μm、円形度0.8のシリカ粒子を作製した。
【0171】
−キャリヤの作製−
・フェライト粒子(平均粒径:50μm):100部
・トルエン:14部
・スチレン/メタクリレート共重合体(スチレン/メタクリル酸成分比(モル比)=90/10):2部
・カーボンブラック(R330:キャボット社製):0.2部
まず、フェライト粒子を除く上記成分を10分間スターラーで撹拌させて、分散した被覆液を調整し、次に、この被覆液とフェライト粒子を真空脱気型ニーダーに入れて、60℃において30分撹拌した後、さらに加温しながら減圧して脱気し、乾燥させることによりキャリヤを得た。このキャリヤは、1000V/cmの印加電界時の体積固有抵抗値が1011Ωcmであった。
【0172】
−現像剤の作製−
現像剤はトナー母粒子の100部に、平均粒径15nmのデシルシラン処理した疎水性チタニア0.8部、平均粒径30nmの疎水性シリカ(NY50、日本アエロジル社製)1.5部、上記の研磨剤A〜Fから選択されたいずれか1種の研磨剤0.2部、及び滑性粒子(ステアリン酸亜鉛、昭和化学株式会社製)0.2部をヘンシェルミキサーを用い周速32m/秒で10分間ブレンドを行った。
その後、目開き45μmのシーブを用いて粗大粒子を除去し外添剤が添加されたトナーA〜Fを得た。
続いて、キャリア100部と外添剤が添加されたトナー6部とをV−ブレンダーで、40rpmで20分間攪拌し、目開き212μmのシーブで篩分することにより現像剤A〜Fを作製した。
【0173】
−クリーニングブレードの作製−
<クリーニングブレードAの作製>
ポリカプロラクトンポリオール(ダイセル化学工業株式会社製、プラクセル205、平均分子量529、水酸基価212KOHmg/g)と、ポリカプロラクトンポリオール(ダイセル化学工業株式会社製、プラクセル240、平均分子量4155、水酸基価27KOHmg/g)とを、ポリオール成分のハードセグメント材料として用いた。
また、2つ以上のヒドロキシル基を含むアクリル樹脂(綜研化学株式会社製、アクトフローUMB−2005B)を、ソフトセグメント材料として用いた。上記ハードセグメント材料と上記ソフトセグメント材料とを、8:2(質量比)の割合で混合した。
【0174】
次に、このハードセグメント材料とソフトセグメント材料との混合物100質量部に対して、イソシアネート化合物として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製、ミリオネートMT、以下「MD1」という)を6.26質量部加え、窒素雰囲気下で70℃、3時間反応させた。なお、この反応で使用したイソシアネート化合物量は、反応系に含まれる水酸基に対するイソシアネート基の比(イソシアネート基/水酸基)が0.5となるように選択したものである。
【0175】
続いて、上記イソシアネート化合物を更に34.3質量部加え、窒素雰囲気下で70℃,3時間反応させて、プレポリマーを得た。なお、プレポリマーの使用に際して利用したイソシアネート化合物の全量は40.56質量部であった。
【0176】
次に、このプレポリマーを100℃に昇温し、減圧下で1時間脱泡した。その後、プレポリマー100質量部に対して、1,4−ブタンジオールとトリメチロールプロパンとの混合物(質量比=60/40)を7.14質量部加え、3分間泡をかまないように充分に混合した。この混合物を、金型を調整した遠心成形機にて140℃で1時間硬化させ、平板を得た。この平板を110℃で24時間加熱して架橋反応を進行させた後、冷却し、所定寸法にカットして厚さ2mm、幅333mmのクリーニングブレードAを得た。このクリーニングブレードAの100%モジュラスは7.0MPaであった。
【0177】
<クリーニングブレードBの作製>
クリーニングブレードA1の作製において、ハードセグメント材料とソフトセグメント材料との混合物の代わりに、ポリオール成分としてコロネート4086(日本ポリウレタン工業株式会社製)を用いた。また、このポリオール成分100質量部に対して、イソシアネート化合物としてニッポラン4038(日本ポリウレタン工業株式会社製)を6.8質量部加えた。それ以外は、クリーニングブレードAと同様にしてクリーニングブレード(クリーニングブレードB)を作製した。このクリーニングブレードAの100%モジュラスは9.0MPaであった。
【0178】
−ロール状ブラシの作製−
<ロール状ブラシA>
直径19mm、軸長さ333mmのポリウレタン製のロール軸上に、毛足長さ2.8mm、密度5.0万本/inchの繊維(繊維太さ17デニール、ベルトロン、カネボウ社製)を接着剤により幅333mmに渡って植毛したものをロール状ブラシAとした。
【0179】
<ロール状ブラシB>
ロール状ブラシAの両端部から各々幅60mmの領域の繊維を0.2mmシャーリングしたものをロール状ブラシBとした。このロール状ブラシは 図5(A)に示す構成を有するものである。
【0180】
<ロール状ブラシC>
ロール状ブラシAの両端部から各々幅60mmの領域の繊維を、毛足長さ2.8mm、密度5.0万本/inchのUUナイロン(繊維太さ0.5デニール、東英産業製)に置き換えたものをロール状ブラシCとした。このロール状ブラシは 図5(B)に示す構成を有するものである。
【0181】
<ロール状ブラシD>
ロール状ブラシAの両端部から各々幅60mmの領域の繊維の植毛密度を、2.4万本/inchの繊維(繊維太さ17デニール、ベルトロン、カネボウ社製)に置き換えたものをロール状ブラシDとした。このロール状ブラシは 図5(B)に示す構成を有するものである。
【0182】
−感光体の作製−
4質量部のポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−S、積水化学工業株式会社製)を溶解したn−ブチルアルコール170質量部に、有機ジルコニウム化合物(アセチルアセトンジルコニウムブチレート)30質量部および有機シラン化合物(Y−アミノプロピルトリメトキシシラン)3質量部を添加、混合撹枠して、下引層形成用の塗布液を得た。
【0183】
この塗布液を、ホーニング処理により粗面化された外径40mm、長さ350mmのアルミニウム支持体の上に浸漬塗布し、室温で5分間風乾を行った。その後、支持体を10分間で50℃に昇温し、50℃,85%RH(露点47℃)の恒温恒湿槽中に入れて20分間加湿硬化促進処理を行った。その後、熱風乾燥機に入れて170℃で10分間乾燥を行い、下引層を形成した。
【0184】
電荷発生材料として塩化ガリウムフタロシアニンを15質量部と、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10質量部と、n−ブチルアルコール300質量部とを混合して混合液を得た。なお、混合は、混合物をサンドミルにて4時間分散させることで行なった。この分散液を、上記下引層上に浸漬塗布し、乾燥して膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0185】
次に、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジンを40質量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(分子量40,000)を60質量部とを、テトロヒドロフラン235質量部及びモノクロロベンゼン100質量部中に十分に溶解混合して塗布液を得た。この塗布液を、電荷発生層まで形成したアルミニウム支持体上に浸漬塗布し、120℃で40分乾燥することにより、膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0186】
保護層形成材料として、下記構造式(4)で示される化合物を2.5部、ショウノールBRL−204(昭和高分子製)を3部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(AO−80:旭電化製)を0.1部、フッ素グラフトポリマー(ZX007C:富士化成製)を0.2部、及びフッ素カップリング剤(KBM−7803:信越化学製)を0.1部混合し、イソプロピルアルコール5部、メチルブチルケトン5部に溶解させ、保護層形成用塗布液を得た。この塗布液を電荷輸送層の上にリング型浸漬塗布法により塗布し、室温で30分風乾した後、150℃で1時間加熱処理して硬化させ、膜厚約6μmの保護層を形成した。
【0187】
【化14】

【0188】
<画像形成テスト>
画像形成テストには、図7に示す構成を有するクリーニング装置を搭載した画像形成装置(富士ゼロックス社製、DocuCentre Color 6550I)を用いて行った。
【0189】
なお、クリーニング装置に用いたクリーニングブレードやロール状ブラシは表3に示すように適宜組み合わせを変えたが、いずれのクリーニングブレード、ロール状ブラシを用いた場合においても以下の条件で、クリーンブレード、ロール状ブラシをセットして用いた。
・クリーニングブレードの静電潜像保持体に対する当接角:22度
・クリーニングブレードの線圧:2.6kgf/cm
・ロール状ブラシ中央部における静電潜像保持体に対する食い込み量:1.2mm
・フリッカーバー:オレフィン系樹脂製、クリーニングブラシに対する食い込み量:1.2mm
【0190】
画像の形成は、常温常湿環境(22℃、55RH%)にて、A4サイズの用紙(富士ゼロックス社製、C2紙)を用いて、連続50000枚の画像形成テストを実施した。なお、画像としては、給紙方向の長さが170mm、幅方向長さが20mmである帯状のベタ画像(画像濃度100%の帯画像、および、ハーフトーン濃度30%となる帯画像)を2つ形成した。A4紙面全体での平均画像密度はおよそ8%である。
画像形成テストは、表9に示すようにクリーニングブレード、ロール状ブラシ、トナーに外添する研磨剤の組み合わせを変えて実施し、50000枚の画像形成後に、静電潜像保持体軸方向の中央部および端部の磨耗量を測定し、その比率を求めることにより偏磨耗を評価した。また、クリーニングブレード先端部の欠け(ブレード欠け)や、静電潜像保持体表面の傷(感光体傷)についても評価した。結果を表9に示す。
【0191】
【表9】

【0192】
なお、表9中に示す偏磨耗、ブレード欠け、感光体傷の評価方法および評価基準は以下の通りである。
【0193】
−偏磨耗−
まず、画像形成テスト前後の静電潜像保持体の膜厚を、静電潜像保持体の中央部(全幅350mm中の端部から170mmの位置)および端部近傍(全幅350mm中の端部から10mmの位置)について渦電流式膜厚測定装置(フィッシャー・インストルメンツ社製)により測定した。続いて、中央部および端部における画像形成テスト前後の静電潜像保持体の膜厚差を、中央部および端部の磨耗量として求めた。
そして、端部磨耗量と中央部磨耗量との比(端部磨耗量/中央部磨耗量)を計算して、以下の基準で偏磨耗の度合いを評価した。なお、許容範囲はG0〜G2である。
G0:端部磨耗量/中央部磨耗量=1.05以下。
G1:端部磨耗量/中央部磨耗量=1.05を超え1.15以下。
G2:端部磨耗量/中央部磨耗量=1.15を超え1.3以下。
G3:端部磨耗量/中央部磨耗量=1.3を超え1.5以下。
G4:端部磨耗量/中央部磨耗量=1.5を超える。
【0194】
−ブレード欠け−
ブレード欠けは、クリーニングブレードの断面側をキーエンス社製、レーザー顕微鏡VK−8510により観察した際に、静電潜像保持体表面側のエッジ欠落部深さを計測した。この際、幅が5μm以上の欠けの個数を評価した。ブレード欠けの評価基準を以下に示す。なお、許容範囲はG0〜G2である。
G0:幅5μm以上の欠け個数が0個
G1:幅5μm以上の欠け個数が1〜5個
G2:幅5μm以上の欠け個数が6〜10個
G3:幅5μm以上の欠け個数が11〜20個
G4:幅5μm以上の欠け個数が21〜30個
G5:幅5μm以上の欠け個数が31個以上
【0195】
−感光体傷−
感光体傷は、5万枚の画像を形成した後の静電潜像保持体表面の十点平均粗さRzを評価することにより実施した。
なお、十点平均粗さRzは、表面粗さ形状測定機(SURFCOM1500D−3DF、東京精密社製)を用いて測定した。なお、測定条件は、検出器S1500用標準/測定力0.7mN、測定子DT43801/先端形状2μmR60°円錐ダイヤモンド、測定面積4.0×2.0mm、測定ピッチX0.02mm/Y0.02mm、測定速度0.6mm/sとした。また、測定点としては、静電潜像保持体の中央部近傍(端部から170mmの位置)と端部近傍(端部から10mm)とについて各々1箇所づつ実施し、両者の平均値を十点平均粗さRzとして求めた。
○:Rzが3.0μm以下。
△:Rzが3.0μmを超え3.5μm未満(画質的に問題ないレベル)。
×:Rzが3.5μm以上(画像上に白筋発生)。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】静電潜像保持体の軸方向に対するロール状ブラシの静電潜像保持体表面に対する当接圧変化のプロファイルの一例を示すグラフである。
【図2】静電潜像保持体の軸方向に対するロール状ブラシの静電潜像保持体表面に対する当接圧変化のプロファイルの他の例を示すグラフである。
【図3】静電潜像保持体の軸方向に対するロール状ブラシの静電潜像保持体表面に対する当接圧変化のプロファイルの他の例を示すグラフである。
【図4】静電潜像保持体の軸方向に対するロール状ブラシの静電潜像保持体表面に対する当接圧変化のプロファイルの他の例を示すグラフである。
【図5】本発明に用いられるロール状ブラシの一例を示す概略構成図である。
【図6】本発明の画像形成装置の一例を示す概略模式図である。
【図7】本発明の画像形成装置に用いられるクリーニング装置の一例を示す概略模式図である。
【符号の説明】
【0197】
1 画像形成装置
20 画像形成プロセス部
22 画像処理部
26 レーザ露光装置
30、30Y、30M、30C、30B 画像形成ユニット
31 静電潜像保持体
32 帯電器
33 現像器
34 クリーニング前帯電器
35 除電ランプ
36 クリーニング装置
37 帯電前ランプ
40 二次転写ロール
41 中間転写ベルト
42 一次転写ロール
45 ベルトクリーナ
46、47、48、49 支持ロール
60 制御部
65 電源部
71 用紙トレイ
72 ピックアップロール
73 搬送ロール
74 レジストロール
75 搬送ベルト
80 定着器
91 排紙積載部
100、102 ロール状ブラシ
110、110C、110S、120、120C、120S ブラシ繊維部分
130 ロール軸
361 クリーニングブレード
362 ロール状ブラシ
363 フリッカーバー
364 回収オーガ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に回転するロール状の静電潜像保持体表面を帯電する帯電工程と、帯電された前記静電潜像保持体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像保持体表面に形成された前記静電潜像を、研磨剤が外添されたトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成するトナー像形成工程と、前記トナー像を前記静電潜像保持体表面から記録媒体に転写する転写工程と、前記トナー像を記録媒体に転写した後の前記静電潜像保持体表面に接触して設けられたロール状のブラシ部材により、前記静電潜像保持体表面をクリーニングする第1のクリーニング工程と、前記ロール状のブラシ部材と接触した後の前記静電潜像保持体表面に接触して設けられ、前記静電潜像保持体表面に接触する部分が弾性部材からなるクリーニングブレードにより、前記静電潜像保持体表面をクリーニングする第2のクリーニング工程と、を含み、
前記研磨剤は、平均粒径が0.6μm以上の無機粒子であり、
前記静電潜像保持体の軸方向における前記ロール状のブラシ部材の前記静電潜像保持体表面に対する当接圧が、前記軸方向の中央部において最大値を示し、
前記弾性部材の100%モジュラスが6.5MPa以上であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
一方向に回転するロール状の静電潜像保持体と、該静電潜像保持体表面を帯電する帯電手段と、帯電された前記静電潜像保持体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像保持体表面に形成された前記静電潜像を、研磨剤が外添されたトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記トナー像を前記静電潜像保持体表面から記録媒体に転写する転写手段と、前記トナー像を記録媒体に転写した後の前記静電潜像保持体表面に接触して設けられたロール状のブラシ部材と、前記ロール状のブラシ部材と接触した後の前記静電潜像保持体表面に接触して設けられ、前記静電潜像保持体表面に接触する部分が弾性部材からなるクリーニングブレードと、を少なくとも備え、
前記研磨剤は、平均粒径が0.6μm以上の無機粒子であり、
前記静電潜像保持体の軸方向における前記ロール状のブラシ部材の前記静電潜像保持体表面に対する当接圧が、前記軸方向の中央部において最大値を示し、
前記弾性部材の100%モジュラスが6.5MPa以上であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−69528(P2009−69528A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238417(P2007−238417)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】