説明

画像形成方法

【課題】インクジェット法により水性の画像を形成する際、環境に対する負荷を抑えながら、印画物のブロッキング、滲み及び光沢変化が抑制された画像形成方法を提供する。
【解決手段】水及び顔料を含むインク組成物を用いてインクジェット法により記録媒体上に画像を記録する画像記録工程と、水及び体積平均粒子径が15〜60μmである架橋有機粒子又は無機粒子を含む粒子含有組成物を前記画像上に付与する粒子付与工程と、ポリマーを含むポリマー含有組成物を前記画像上に付与するポリマー付与工程と、前記ポリマーを皮膜化する皮膜化工程とを含む画像形成方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成に好適な画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷等の商業用印刷機により印刷された印刷物は、排紙部で大量かつ高速に積み重ねられていく。そうすると、印刷物に印刷されたインク(画像)が、積み重ねられた別の印刷物と密着してしまい、それらの密着した印刷物を引き離すと、インクが印刷物から剥がれて別の印刷物に付着する現象(ブロッキング)が生じることがある。このブロッキングを抑制するため、オフセット印刷では、印画後に、ブロッキング抑制剤としてデンプン等の粉末(パウダー)を散布し印画物表面に付着させることにより、インク同士の貼り付きを防止している。
例えば、特許文献1では、オフセット印刷において、粉末を印刷物面に少量散布する方法が提案されている。また、特許文献2では、粒状ワックス及びエマルジョン樹脂を含むコート剤をオフセット印刷面上に付与し、ブロッキング性等を改良する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−130621号公報
【特許文献2】特開2007−296637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法で画像上に付与されたパウダーは、印刷中の紙の移動や、印刷後の紙の仕分けの際に容易に画像上からこぼれ落ち、ブロッキングの抑制に未だ改良の余地がある。
また特許文献2に記載の方法はオフセット印刷(油性インク)により画像を形成した場合に用いるものであるため、水性インクで形成した画像に特許文献2の方法を適用すると、画像のにじみ等の問題が発生する。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、インクジェット法により水性の画像を形成する際、環境に対する負荷を抑えながら、印画物のブロッキング、滲み及び光沢変化が抑制された画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
項1. 水及び顔料を含むインク組成物を用いてインクジェット法により記録媒体上に画像を記録する画像記録工程と、水及び体積平均粒子径が15μm〜60μmである架橋有機粒子又は無機粒子を含む粒子含有組成物を前記画像上に付与する粒子付与工程と、ポリマーを含むポリマー含有組成物を前記画像上に付与するポリマー付与工程と、前記ポリマーを皮膜化する皮膜化工程とを含む画像形成方法。
項2. 前記粒子含有組成物における架橋有機粒子が、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル又はポリエチレンを含む粒子である、項1に記載の画像形成方法。
項3. 前記粒子含有組成物における無機粒子がシリカ粒子である、項1に記載の画像形成方法。
項4. 前記粒子含有組成物における架橋有機粒子または無機粒子の体積平均粒子径が20μm〜40μmである、項1〜項3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
項5. 前記ポリマーのガラス転移温度Tg、あるいは融点Tmの低い方が、−50℃〜90℃である、項1〜項4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
項6. 前記粒子付与工程が、前記粒子含有組成物を加熱ローラ表面に供給し、前記加熱ローラを前記記録媒体に押圧する工程である、項1〜項5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、環境に対する負荷を抑えながら、印画物のブロッキング、滲み及び光沢変化が抑制された画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の画像形成方法について詳細に説明する。
【0008】
本発明の画像形成方法は、水及び顔料を含むインク組成物を用いてインクジェット法により記録媒体上に画像を記録する画像記録工程と、水及び体積平均粒子径が15〜60μmである架橋有機粒子又は無機粒子を含む粒子含有組成物を前記画像上に付与する粒子付与工程と、ポリマーを含むポリマー含有組成物を前記画像上に付与するポリマー付与工程と、前記ポリマーを皮膜化する皮膜化工程とを含むことを特徴とする。
一般的に、水性のインク組成物を用いて記録した画像上に水性の液体を付与すると、水性のインク組成物で記録した画像が溶解し、滲み等の問題が発生する。したがって、通常は水性のインク組成物で記録した画像上に水性の液体を付与することは考えられない。しかし本発明では、水を含有するインク組成物で画像を記録した後、水を含む粒子含有組成物及びポリマー含有組成物を前記画像上に付与することで、画像の滲みを抑制しながら、ブロッキング耐性及び光沢変化も抑制させることに成功した。さらには、水を使用しているため環境への負荷を低減することも可能になり、かつ光沢性の変化を抑制することにも成功した。
【0009】
本発明では、画像記録工程、粒子付与工程、ポリマー付与工程、皮膜化工程をこの順序で行ってもよいし、画像記録工程、ポリマー付与工程、粒子付与工程、皮膜化工程の順に行ってもよい。また、粒子付与工程とポリマー付与工程を同時に行ってもよい。すなわち、水、体積平均粒子径が15〜60μmである架橋有機粒子又は無機粒子及びポリマーを含む組成物を、画像上に付与することで、粒子付与工程とポリマー付与工程を同時に行ってもよい。本発明の画像形成方法は、画像記録工程、ポリマー付与工程、粒子付与工程、皮膜化工程の順序で行うことが好ましい。
以下、各工程を詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とは、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0010】
≪画像記録工程≫
本発明の画像形成方法は、水及び顔料を含むインク組成物を用いてインクジェット法により記録媒体上に画像を記録する画像記録工程を含む。以下に画像記録工程について詳細に説明する。
【0011】
<インクジェット法>
本発明で用いるインクジェット法は、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット法、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。尚、前記インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
【0012】
インクジェット法で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
尚、前記インクジェット法により記録を行う際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0013】
インクジェットヘッドとしては、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式と、記録媒体の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とがある。ライン方式では、記録素子の配列方向と直交する方向に記録媒体を走査させることで記録媒体の全面に画像記録を行なうことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、キャリッジの移動と記録媒体との複雑な走査制御が不要になり、記録媒体だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。本発明で用いるインクジェット記録方法は、これらのいずれにも適用可能であるが、一般にダミージェットを行なわないライン方式に適用した場合に、吐出精度及び画像の耐擦過性の向上効果が大きい。
【0014】
インクジェットヘッドから吐出されるインク組成物の液滴量としては、高精細な画像を得る観点で、0.5〜15pl(ピコリットル)が好ましく、1〜12plがより好ましく、更に好ましくは2〜10plである。
【0015】
<記録媒体>
本発明における画像記録工程は、記録媒体上に画像を記録するものである。
記録媒体には、特に制限はないが、一般のオフセット印刷などに用いられる、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする一般印刷用紙を用いることができる。
【0016】
記録媒体としては、一般に市販されているものを使用することができ、例えば、王子製紙(株)製の「OKプリンス上質」、日本製紙(株)製の「しおらい」、及び日本製紙(株)製の「ニューNPI上質」等の上質紙(A)、王子製紙(株)製の「OKエバーライトコート」及び日本製紙(株)製の「オーロラS」等の微塗工紙、王子製紙(株)製の「OKコートL」及び日本製紙(株)製の「オーロラL」等の軽量コート紙(A3)、王子製紙(株)製の「OKトップコート+」及び日本製紙(株)製の「オーロラコート」等のコート紙(A2、B2)、王子製紙(株)製の「OK金藤+」及び三菱製紙(株)製の「特菱アート」等のアート紙(A1)等が挙げられる。また、インクジェット記録用の各種写真専用紙を用いることも可能である。
【0017】
記録媒体の中でも、一般のオフセット印刷などに用いられるいわゆる塗工紙が好ましい。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。特に、原紙とカオリン及び/又は重炭酸カルシウムを含むコート層とを有する塗工紙を用いるのが好ましい。これらは、アート紙、コート紙、軽量コート紙、又は微塗工紙であることがより好ましい。
【0018】
<インク組成物>
本発明における画像記録工程で用いるインク組成物は、水及び顔料を含んでいるものであれば限定はなく、公知又は市販のものを使用することができる。
【0019】
(顔料)
本発明における顔料としては、その種類に特に制限はなく、従来公知の有機及び無機顔料を用いることができる。例えば、アゾレーキ、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、酸化チタン、酸化鉄系、カーボンブラック系等の無機顔料が挙げられる。また、カラーインデックスに記載されていない顔料であっても水相に分散可能であれば、いずれも使用できる。更に、前記顔料を界面活性剤や高分子分散剤等で表面処理したものや、グラフトカーボン等も勿論使用可能である。前記顔料のうち、特に、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、カーボンブラック系顔料を用いることが好ましい。
【0020】
本発明に用いられる有機顔料の具体的な例を以下に示す。以下の色材は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
オレンジ又はイエロー用の有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメント・オレンジ31、C.I.ピグメント・オレンジ43、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー13、C.I.ピグメント・イエロー14、C.I.ピグメント・イエロー15、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・イエロー74、C.I.ピグメント・イエロー93、C.I.ピグメント・イエロー94、C.I.ピグメント・イエロー128、C.I.ピグメント・イエロー138、C.I.ピグメント・イエロー151、C.I.ピグメント・イエロー155、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー185等が挙げられる。
【0021】
マゼンタまたはレッド用の有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメント・レッド2、C.I.ピグメント・レッド3、C.I.ピグメント・レッド5、C.I.ピグメント・レッド6、C.I.ピグメント・レッド7、C.I.ピグメント・レッド15、C.I.ピグメント・レッド16、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド53:1、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド123、C.I.ピグメント・レッド139、C.I.ピグメント・レッド144、C.I.ピグメント・レッド149、C.I.ピグメント・レッド166、C.I.ピグメント・レッド177、C.I.ピグメント・レッド178、C.I.ピグメント・レッド222、C.I.ピグメント・バイオレット19等が挙げられる。
【0022】
グリーンまたはシアン用の有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメント・ブルー15、C.I.ピグメント・ブルー15:2、C.I.ピグメント・ブルー15:3、C.I.ピグメント・ブルー15:4、C.I.ピグメント・ブルー16、C.I.ピグメント・ブルー60、C.I.ピグメント・グリーン7、米国特許4311775号明細書に記載のシロキサン架橋アルミニウムフタロシアニン等が挙げられる。
【0023】
ブラック用の有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメント・ブラック1、C.I.ピグメント・ブラック6、C.I.ピグメント・ブラック7等が挙げられる。
【0024】
本発明における顔料は、分散剤によって水系溶媒に分散されていてもよい。分散剤としては、ポリマー分散剤でも低分子の界面活性剤型分散剤でもよい。また、ポリマー分散剤としては水溶性の分散剤でも非水溶性の分散剤の何れでもよい。
【0025】
本発明におけるポリマー分散剤のうち水溶性分散剤としては、親水性高分子化合物を用いることができる。例えば、天然の親水性高分子化合物では、アラビアガム、トラガンガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、アラビノガラクトン、ペクチン、クインスシードデンプン等の植物性高分子、アルギン酸、カラギーナン、寒天等の海藻系高分子、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等の動物系高分子、キサンテンガム、デキストラン等の微生物系高分子などが挙げられる。
【0026】
また、天然物を原料として化学修飾した親水性高分子化合物としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素系高分子、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム等のデンプン系高分子、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の海藻系高分子などが挙げられる。
【0027】
また、合成系の水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、四級アンモニウムやアミノ基等のカチオン性官能基の塩を側鎖に有する高分子化合物等が挙げられる。
【0028】
ポリマー分散剤のうち非水溶性分散剤としては、疎水性部と親水性部の両方を有するポリマーを用いることができる。例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。
ポリマー分散剤の酸価としては、処理液が接触したときの凝集性が良好である観点から、100mgKOH/g以下が好ましい。更には、酸価は、25〜100mgKOH/gがより好ましく、30〜90mgKOH/gが特に好ましい。
【0029】
顔料の体積平均粒子径としては、10〜200nmが好ましく、10〜150nmがより好ましく、10〜130nmがさらに好ましい。体積平均粒子径は、200nm以下であると色再現性が良好になり、インクジェット法で打滴する際の打滴特性が良好になり、10nm以上であると耐光性が良好になる。また、顔料の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布又は単分散性の粒径分布のいずれであってもよい。また、単分散性の粒径分布を持つ色材を2種以上混合して使用してもよい。なお、粒子の体積平均粒径は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)によって測定することができる。
【0030】
顔料のインク組成物中における含有量としては、画像濃度の観点から、インク組成物に対して、1〜25質量%であることが好ましく、2〜20質量%がより好ましい。
【0031】
(ポリマー粒子)
本発明におけるインク組成物は必要に応じてポリマー粒子を含有することが好ましい。これにより、画像の耐擦過性、定着性等をより向上させることができる。
【0032】
本発明におけるポリマー粒子としては、例えば、熱可塑性、熱硬化性あるいは変性のアクリル系、エポキシ系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリアミド系、不飽和ポリエステル系、フェノール系、シリコーン系、又はフッ素系の樹脂、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、又はポリビニルブチラール等のポリビニル系樹脂、アルキド樹脂、フタル酸樹脂等のポリエステル系樹脂、メラミン樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アミノアルキド共縮合樹脂、ユリア樹脂、尿素樹脂等のアミノ系材料、あるいはそれらの共重合体又は混合物などのアニオン性基を有する樹脂の粒子が挙げられる。これらのうち、アニオン性のアクリル系樹脂は、例えば、アニオン性基を有するアクリルモノマー(アニオン性基含有アクリルモノマー)及び必要に応じて該アニオン性基含有アクリルモノマーと共重合可能な他のモノマーを溶媒中で重合して得られる。前記アニオン性基含有アクリルモノマーとしては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、及びホスホン基からなる群より選ばれる1以上の基を有するアクリルモノマーが挙げられ、中でもカルボキシル基を有するアクリルモノマー(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマル酸等)が好ましく、特にはアクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。ポリマー粒子は、1種単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
本発明におけるポリマー粒子の分子量範囲は、重量平均分子量で、3000〜20万であることが好ましく、5000〜15万であることがより好ましく、10000〜10万であることが更に好ましい。上記重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(ポリスチレン換算)で測定される。
【0034】
ポリマー粒子の平均粒子径は、体積平均粒子径で10〜400nmの範囲が好ましく、10〜200nmの範囲がより好ましく、10〜100nmの範囲が更に好ましく、特に好ましくは10〜50nmの範囲である。この範囲とすることにより、製造適性、保存安定性等が向上する。ポリマー粒子の平均粒子径は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒径を測定することにより求められるものである。
【0035】
ポリマー粒子のインク組成物中における含有量としては、画像の光沢性などの観点から、インク組成物に対して、1〜30質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましい。
【0036】
(水)
インク組成物は、水を含有するものであるが、水の量には特に制限はない。中でも、水の好ましい含有量は、10〜99質量%であり、より好ましくは30〜80質量%であり、更に好ましくは50〜70質量%である。
【0037】
(水溶性有機溶媒A)
本発明におけるインク組成物は、必要に応じて上記水に加えて水溶性有機溶媒Aを含有していてもよい。尚、ここでいう水溶性とは、25℃において蒸留水に0.5質量%以上溶解することを意味する。前記水溶性有機溶媒は、25℃において蒸留水に1質量%以上溶解することが好ましく、3質量%以上溶解することがより好ましい。
このような水溶性有機溶媒Aとしては、吐出性の観点から、アルキレンオキシアルコールが好ましい。更にはアルキレンオキシアルコールの少なくとも1種とアルキレンオキシエーテルの少なくとも1種とを含む2種以上の水溶性有機溶媒Aを含有する場合が特に好ましい。
【0038】
前記アルキレンオキシアルコールとしては、好ましくは、プロピレンオキシアルコールである。プロピレンオキシアルコールとしては、例えば、サンニックスGP250、サンニックスGP400(三洋化成工業(株)製)が挙げられる。
【0039】
前記アルキレンオキシアルキルエーテルとしては、好ましくは、アルキル部位の炭素数が1〜4のエチレンオキシアルキルエーテル又はアルキル部位の炭素数が1〜4のプロピレンオキシアルキルエーテルである。アルキレンオキシアルキルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルなどが挙げられる。
また、上記の水溶性有機溶媒Aに加え、必要に応じて、乾燥防止、浸透促進、粘度調整などを図る目的で、他の有機溶媒を含有してもよい。
【0040】
(その他の添加剤)
インク組成物は、上記の成分に加え、必要に応じて、その他の添加剤を含むことができる。その他の添加剤としては、例えば、活性エネルギー線により重合する重合性化合物、重合開始剤、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、ワックス、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、インク組成物を調製後に直接添加してもよく、インク組成物の調製時に添加してもよい。
【0041】
≪粒子付与工程≫
本発明の画像形成方法は、水及び体積平均粒子径が15〜60μmである架橋有機粒子又は無機粒子を含む粒子含有組成物を前記画像上に付与する粒子付与工程を含む。
粒子含有組成物を付与する方法は限定されないが、例えば、転写法、スプレー法、塗布法、浸漬法などの公知の方法を用いることができる。塗布法としては、バーコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター等を用いた公知の塗布方法によって行なうことができる。本発明では特に、前記粒子含有組成物をスプレー又は塗布により画像上に付与することが好ましく、ロールを用いて塗布を行うことが最も好ましい。
【0042】
<粒子含有組成物>
本発明における粒子付与工程で用いる粒子含有組成物は、水及び体積平均粒子径が15〜60μmである架橋有機粒子又は無機粒子を含んでいるものであれば限定はない。
【0043】
(水)
本発明における粒子含有組成物は、水を含有するものであるが、水の量には特に制限はない。中でも、水の好ましい含有量は、1〜99質量%であり、より好ましくは10〜80質量%であり、更に好ましくは15〜60質量%である。
【0044】
(体積平均粒子径が15〜60μmである架橋有機粒子又は無機粒子)
本発明における粒子含有組成物には、体積平均粒子径が15〜60μmである架橋有機粒子又は体積平均粒子径が15〜60μmである無機粒子が含まれる。架橋有機粒子又は無機粒子の体積平均粒子径は、15〜40μmが好ましく、20〜40μmがさらに好ましい。体積平均粒径をこの範囲とすることで、画像部の定着オフセットをより抑制することができ、さらに、粒子を画像上に付与した際の粒子の散乱による画像光沢変化が抑制できる。なお、本発明における体積平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分析計マイクロトラックMT3000II(日機装(株)製)によって測定される値である。測定は、20質量%の粒子水分散物100μlに対してイオン交換水10mlを加えて測定用サンプル液を調製し、これを25℃に調温して行なえばよい。
本発明における有機架橋粒子および無機粒子は、後述するポリマー含有組成物に含まれるポリマーとは異なり、皮膜化しないことが好ましい。
粒子含有組成物における架橋有機粒子及び無機粒子の含有量は、0.5〜50質量%であることが好ましく、10〜45質量%であることがさらに好ましく、15〜40質量%であることが最も好ましい。
【0045】
−架橋有機粒子−
本発明における架橋有機粒子は、架橋された有機粒子であれば限定されない。架橋有機粒子はTgが100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがさらに好ましく、130℃以上であることが最も好ましい。なお、本発明において架橋有機粒子のガラス転移温度Tgは、JIS K6900に従い測定することができる。
有機粒子の架橋構造の有無は次のように考えることができる。有機粒子のTgが、それを構成するポリマーの一般的なTgよりも高い場合、又はそのポリマーの一般的なTg以下で有機粒子のTgが観測されない場合、当該有機粒子は架橋構造を有していると考えられる。例えば、ポリメチルメタクリレートからなる有機粒子のTgをDSCにより140℃まで測定しTgが観測されなかった場合、当該有機粒子のTgは一般的なポリメチルメタクリレートのTg(105℃)よりも高いため、当該有機粒子は架橋構造を有していると考えられる。
本発明における架橋有機粒子としては、例えば、アクリロニトリル-スチレン共重合体、ポリスチレン、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル、ポリイソボニルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンなどが挙げられ、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルがより好ましく、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルがさらに好ましく、なかでもポリメチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。なお、ポリメチル(メタ)アクリレートとは、ポリメチルアクリレート及びポリメチルメタアクリレート(PMMA)のうち少なくとも1種をいう。
架橋有機粒子としては、既に分散体として市販されているものを用いてもよい。分散体として市販されている架橋有機粒子を用いる場合は、凍結乾燥等の公知の方法で一度粉体化して用いることができる。
【0046】
架橋有機粒子の具体例としては、MX−1500(総研化学社製、架橋PMMA15μm)、MX−2000(総研化学社製、架橋PMMA20μm)、MX−3000(総研化学社製、架橋PMMA30μm)、MR−20G(総研化学社製、架橋PMMA20μm)、MR−30G(総研化学社製、架橋PMMA30μm)、MR−60G(総研化学社製、架橋PMMA60μm)、SGP−70C(総研化学社製、ポリスチレン20μm)、YK−30(東洋紡、33μmポリアクリロニトリル)などが挙げられるが、より好ましくは、MX−1500(総研化学社製、架橋PMMA15μm)、MX−2000(総研化学社製、架橋PMMA20μm)、MX−3000(総研化学社製、架橋PMMA30μm)、MR−20G(総研化学社製、架橋PMMA20μm)、MR−30G(総研化学社製、架橋PMMA30μm)、SGP−70C(総研化学社製、ポリスチレン20μm)、YK−30(東洋紡、33μmポリアクリロニトリル)などが挙げられ、さらに好ましくは、MX−2000(総研化学社製、架橋PMMA20μm)、MX−3000(総研化学社製、架橋PMMA30μm)、MR−20G(総研化学社製、架橋PMMA20μm)、MR−30G(総研化学社製、架橋PMMA30μm)、YK−30(東洋紡、33μmポリアクリロニトリル)などが挙げられる。
なお、上記のカッコ内に示す数値(μm)は体積平均粒径である。体積平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分析計マイクロトラックMT3000II(日機装(株)製)によって測定される値である。測定は、20質量%の粒子水分散物100μlに対してイオン交換水10mlを加えて測定用サンプル液を調製し、これを25℃に調温して行なえばよい。
本発明における架橋有機粒子は、架橋構造を有する架橋ポリマー粒子を用いることで、長期保存安定性に対して、より効果がある。具体的には、架橋密度が0.01〜50質量%であることが好ましく、0.1〜40質量%がより好ましく、1〜20質量%が最も好ましい。架橋密度は公知の方法で測定することができる。
【0047】
−無機粒子−
本発明における無機粒子としては、シリカ(二酸化珪素)、酸化チタン、水酸化アルミニウム、等の粒子が挙げられ、シリカ粒子を用いることが好ましい。
酸化チタン粒子として、MT−150A(テイカ社製、15μm)、MT−100HD(テイカ社製、15μm)、MT−300HD(テイカ社製、25μm)、MT−500HD(テイカ社製、30μm)、MT−500B(テイカ社製、35μm)、MT−500SA(テイカ社製、35μm)、MT−600B(テイカ社製、50μm)、MT−600SA(テイカ社製、50μm)などが挙げられる。
水酸化アルミニウム粒子としては、B303(日本軽金属社製、30μm)、B153(日本軽金属社製、15μm)などが挙げられる。
シリカ粒子として、SUNSIL−150H−SC(SUNJIN CHEM.、シリカ15μm)、シリカマイクロビードP−4000(日揮触媒化成社製、20μm)等を用いることができる。
なお、上記のカッコ内に示す数値(μm)は体積平均粒径である。体積平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分析計マイクロトラックMT3000II(日機装(株)製)によって測定される値である。測定は、20質量%の粒子水分散物100μlに対してイオン交換水10mlを加えて測定用サンプル液を調製し、これを25℃に調温して行なえばよい。
【0048】
(水溶性有機溶媒B)
本発明における粒子含有組成物には、水溶性有機溶媒Bを含有することもできる。尚、ここでいう水溶性とは、25℃において蒸留水に0.5質量%以上溶解することを意味する。前記水溶性有機溶媒Bは、25℃において蒸留水に1質量%以上溶解することが好ましく、3質量%以上溶解することがより好ましい。
水溶性有機溶媒Bとしては、アルコール系媒体、アミド系媒体、スルホン系媒体、ニトリル系媒体が挙げられ、より好ましくは、アルコール系媒体、アミド系媒体、スルホン系媒体が挙げられ、さらに好ましくは、アルコール系媒体、アミド系媒体が挙げられ、特に好ましくは、アルコール系媒体が挙げられる。
アルコール系媒体としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、グリセリン、エチレングリコール、エチレングリコールモノエチルグリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、乳酸エチル、乳酸メチル、トリメチロールプロパン、MFG、GP−250、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1,2−ヘキサンジオールなどが挙げられ、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノエチルグリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、乳酸エチル、乳酸メチル、トリメチロールプロパン、MFG、1,2−ヘキサンジオールなどが挙げられるが、さらに好ましくは、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノエチルグリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、1,2−ヘキサンジオールなどが挙げられる。
アミド系媒体としては、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミドなどが挙げられるが、より好ましくは、2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリノンが挙げられ、さらに好ましくは、2−ピロリドンが挙げられる。
スルホン系媒体としては、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
ニトリル系媒体としては、アセトニトリルが挙げられる。
上記水溶性有機溶媒Bは、単体で用いても、二つ以上併用してもよい。本発明における粒子含有組成物が水溶性有機溶媒Bを含有する場合、粒子含有組成物における水溶性有機溶媒Bの含有量は1〜90質量%であることが好ましく、2〜70質量%であることがさらに好ましく、5〜50質量%である事が最も好ましい。
【0049】
(界面活性剤)
本発明における粒子含有組成物には、該粒子の分散性向上、あるいはインクジェット画像上への付与する際の塗布性向上を目的に、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ベタイン界面活性剤等が挙げられる。特開昭59−157636号公報の第(37)〜(38)頁、リサーチディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも用いることができる。また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載のフッ素(フッ化アルキル系)系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等も挙げられ、耐擦過性を良化することもできる。
【0050】
≪ポリマー付与工程≫
本発明の画像形成方法は、ポリマーを含むポリマー含有組成物を前記画像上に付与するポリマー付与工程を含む。ポリマー含有組成物に含まれるポリマーは、後述する皮膜化工程において皮膜化することを特徴とする。
ポリマー含有組成物を付与する工程は限定されないが、例えば、転写法、スプレー法、塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行なうことができる。塗布法としては、バーコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター等を用いた公知の塗布方法によって行なうことができる。インクジェット法の詳細については、既述の通りである。本発明では特に、前記ポリマー含有組成物をインクジェット法により画像上に付与することが好ましい。
【0051】
ポリマー粒子含有組成物をインクジェット法により付与することで、所望の範囲に選択的にポリマー付与工程を実施することができるため好ましい。
【0052】
本発明方法においては、ポリマー含有組成物の画像上への付与量は、好ましくは、5mg/m以上200mg/m以下、より好ましくは、10mg/m以上150mg/m以下、さらに好ましくは、20mg/m以上100mg/m以下である。
【0053】
<ポリマー含有組成物>
本発明におけるポリマー付与工程で用いるポリマー含有組成物は、ポリマーを含有すれば限定されない。また、ポリマー含有組成物中のポリマーは加熱等により皮膜化することを特徴とする。
【0054】
(ポリマー)
本発明に用いることができるポリマーとしては、アクリル酸(又はメタクリル酸)あるいはその誘導体(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタアクリル酸、又はメタアクリル酸メチル等)の重合体若しくは共重合体であるアクリル酸系ポリマー、あるいはポリウレタン、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−ビニルアセテート(EVA)、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム(MBR)若しくはアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)等のゴム系ポリマー、でんぷん、変性でんぷん、ゼラチン、カゼイン、若しくは大豆蛋白などの天然高分子化合物、あるいはカルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、若しくはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等のセルロース変性ポリマー、あるいはポリビニルアルコール(PVA)、変性PVA、ポリアクリルアミド、ポリエチレン、ポリアセタール樹脂、グアーガム、ポリエステル、ポリビニルピロリドン、エチレン−ポリビニルアルコール共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドの共重合体、あるいはそのブロックポリマー、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシドのブロックポリマー、ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドのブロックポリマー等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
これらのうち、(メタ)アクリル酸系ポリマー、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド又はポリプロピレンオキシドを含むポリマーを用いることが好ましい。ここで、(メタ)アクリル酸ポリマーとは、メタクリル酸ポリマーまたはアクリル酸ポリマーを意味する。
前記ポリマーの数平均分子量は、特に制限はないが、1,000〜500,000であることが好ましく、1,000〜200,000であることがさらに好ましく、1,000〜100,000であることがより好ましく、1,000〜70,000であることが最も好ましい。
【0055】
前記ポリマー含有組成物におけるポリマーの含有量は、1質量%〜50質量%であることが好ましく、2質量%〜40質量%であることがさらに好ましく、2質量%〜30質量%であることが最も好ましい。
【0056】
前記ポリマーのガラス転移温度Tg(あるいは融点Tm)は、特に制限はないが、−50℃〜90℃が好ましく、−30℃〜80℃がさらに好ましく、−20℃〜70℃が最も好ましい。なお、ポリマーのTg(あるいはTm)は、JIS K6900に従い測定することができる。なお、ポリマーにTgとTmの両方が存在する場合、Tg及びTmのうち低い方が上記の範囲に入ることが好ましく、Tg及びTmのうちいずれか一方しか存在しない場合は、その値が上記の範囲に入ることが好ましい。
【0057】
(水)
本発明におけるポリマー粒子含有組成物は、水を含有することが好ましい。中でも、水の好ましい含有量は、10〜99質量%であり、より好ましくは30〜80質量%であり、更に好ましくは50〜70質量%である。
【0058】
≪皮膜化工程≫
本発明の画像形成方法は、前記ポリマーを皮膜化する皮膜化工程を含む。以下に皮膜化工程について詳細に説明する。
【0059】
本発明における皮膜化工程は、前記ポリマーを皮膜化することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明における皮膜化は、加熱等により行うことができる。ポリマー含有組成物が付与された画像を加熱することにより皮膜化工程を行うことが好ましく、前記ポリマー含有組成物が付与された画像に加熱ローラを押圧することにより行うことがさらに好ましい。加熱により皮膜化する際の加熱温度は、ポリマーのガラス転移温度よりも高いことを必要とする。これにより、ポリマーの皮膜化を促進することが可能となる。
【0060】
本発明における皮膜化工程は、例えば、インク組成物及びポリマー含有組成物が付与された記録媒体(印画物)を加熱ローラで押圧することにより行うことができる。この際、加熱ローラ表面に粒子含有組成物を付着しておくことで、15μm〜60μmの粒子を印画物表面に付与するとともにポリマーを皮膜化することができ、粒子付与工程と皮膜化工程を一工程でできるため好ましい。
【0061】
押圧の方法は限定的でなく、例えば、(i)加圧ローラを更に使用し、これら一対のローラ(加熱ローラ及び加圧ローラ)の間を、記録された画像面が加熱ローラ表面に接するように通過させる方法、(ii)2つの加熱ローラを用い、これら一対の加熱ローラの間を通過させる方法、(iii)搬送ベルト上で搬送されてくる印画物を、記録された画像面が加熱ローラ表面に接するように通過させる方法、(iv)これら方法の組合せ等が挙げられる。
【0062】
加熱ローラの表面温度(加熱温度)は、ポリマー含有組成物中のポリマーを皮膜化できる温度であれば限定的でなく、ポリマーのTg(あるいはTm)以上であればよい。これにより、画像の膜強度を向上させることができる。
【0063】
加熱の方法は、特に制限されないが、ニクロム線ヒーター等の発熱体で加熱する方法、温風又は熱風を供給する方法、ハロゲンランプ、赤外線ランプなどで加熱する方法など、非接触で加熱する方法を好適に挙げることができる。
【0064】
前記加熱ローラとしては、金属製の金属ローラであってもよく、金属製の芯金の表面に弾性体からなる被覆層及び必要に応じて表面層(離型層ともいう)が設けられたローラであってもよい。金属ローラ及び金属製の芯金は、例えば、鉄製、アルミニウム製、SUS製等の円筒体で構成することができる。被覆層は、特に、離型性を有するシリコーン樹脂またはフッ素樹脂で形成されるのが好ましい。また、加熱ローラの一方の芯金内部には、発熱体が内蔵されていることが好ましく、ローラ間に記録媒体を通すことによって、加熱処理と加圧処理とを同時に施したり、あるいは必要に応じて、2つの加熱ローラを用いて記録媒体を挟んで加熱してもよい。発熱体としては、例えば、ハロゲンランプヒーター、セラミックヒーター、ニクロム線等が好ましい。
【0065】
押圧する際の圧力としては、表面平滑化の点からは、0.1MPa〜3.0MPaの範囲が好ましく、より好ましくは0.1MPa〜1.0MPaの範囲であり、更に好ましくは0.1MPa〜0.5MPaの範囲である。
【0066】
記録媒体が加熱ローラを通過する際の好ましいニップ時間は、1ミリ秒〜10秒であり、より好ましくは2ミリ秒〜1秒であり、更に好ましくは4ミリ秒〜100ミリ秒である。また、好ましいニップ幅は、0.1mm〜100mmであり、より好ましくは0.5mm〜50mmであり、更に好ましくは1mm〜10mmである。
【0067】
記録媒体を搬送するベルト基材としては限定的でなく、例えば、シームレスのニッケル電鍮が好ましく、基材の厚さは10μm〜100μmが好ましい。また、ベルト基材の材質としては、ニッケル以外にもアルミニウム、鉄、ポリエチレン等を用いることができる。シリコーン樹脂あるいはフッ素樹脂を設ける場合は、これら樹脂を用いて形成される層の厚みは、1μm〜50μmが好ましく、更に好ましくは10μm〜30μmである。
【0068】
また、前記圧力(ニップ圧)を実現するには、例えば、加熱ローラ等のローラ両端に、ニップ間隙を考慮して所望のニップ圧が得られるように、張力を有するバネ等の弾性部材を選択して設置すればよい。
【0069】
記録媒体の搬送速度は、200mm/秒〜700mm/秒の範囲が好ましく、より好ましくは300mm/秒〜650mm/秒であり、更に好ましくは400mm/秒〜600mm/秒である。
本発明の画像形成方法では、画像記録工程、粒子付与工程、ポリマー付与工程または皮膜化工程のいずれかの後に、インク乾燥ゾーン等の装置を設けて乾燥工程を行ってもよい。
【0070】
≪処理液付与工程≫
本発明では、インク組成物を用いてインクジェット法によって記録媒体上に画像を記録する画像記録工程に加えて、インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液を記録媒体上に付与する処理液付与工程を設けることが好ましい。処理液付与工程は、本発明における画像記録工程の前又は後のいずれに設けてもよい。
【0071】
本発明における処理液は、既述のインク組成物と接触することで凝集体を形成可能なように構成されたものである。具体的には、処理液は、インク組成物中の顔料などの分散粒子を凝集させて凝集体を形成可能な凝集剤を少なくとも含むことが好ましく、必要に応じて、他の成分を用いて構成することができる。
【0072】
(処理液)
処理液は、既述のインク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を少なくとも含み、必要に応じて、さらに他の成分を用いて構成することができる。
【0073】
本発明における凝集剤は、記録媒体上においてインク組成物と接触することにより、インク組成物を凝集(固定化)可能なものであり、固定化剤として機能する。例えば、処理液を記録媒体(好ましくは、塗工紙)に付与することにより記録媒体上に凝集剤が存在している状態で、インク組成物がさらに着滴して凝集剤に接触することにより、インク組成物中の成分を凝集させて、インク組成物を記録媒体上に固定化することができる。
凝集剤としては、酸性化合物、多価金属塩、又はカチオン性ポリマー等を挙げることができる。これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。本発明においては、インク組成物の凝集性の観点から、酸性化合物が好ましい。
【0074】
−酸性化合物−
酸性化合物としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、およびこれらの化合物の誘導体等が好適に挙げられる。
【0075】
これらの中でも、水溶性の高い酸性化合物が好ましい。また、インク組成物と反応してインク全体を固定化させる観点から、3価以下の酸性化合物が好ましく、2価以上3価以下の酸性化合物が特に好ましい。
酸性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
前記処理液が酸性化合物を含む場合、処理液のpH(25℃)は、0.1〜6.8であることが好ましく、0.5〜6.0であることがより好ましく、0.8〜5.0であることがさらに好ましい。
【0077】
前記酸性化合物の含有量は、前記処理液の全質量に対し、40質量%以下であることが好ましく、15〜40質量%であることがより好ましい。酸性化合物の含有量を15〜40質量%とすることでインク組成物中の成分をより効率的に固定化することができる。
さらに酸性化合物の含有量は、前記処理液の全質量に対し、15質量%〜35質量%であることが好ましい。
【0078】
−多価金属塩−
本発明における多価金属塩は、アルカリ土類金属、亜鉛族金属等の2価以上の金属を含む化合物であり、Ca2+、Cu2+、Al3+等の金属イオンの酢酸塩、酸化物等を挙げることができる。
本発明において、前記多価金属塩を含む処理液が付与された記録媒体にインク組成物を吐出したときのインク組成物の凝集反応は、インク組成物中に分散した粒子、例えば、顔料に代表される着色剤や、樹脂粒子等の粒子の分散安定性を減じ、インク組成物全体の粘度を上昇させることで達成することができる。例えば、インク組成物中の顔料や、樹脂粒子などの粒子がカルボキシル基等の弱酸性の官能基を有するとき、当該粒子は前記弱酸性の官能基の働きにより分散安定化しているが、当該粒子の表面電荷を、多価金属塩と相互作用させることにより減じ、分散安定性を低下することができる。したがって、処理液に含まれる固定化剤としての多価金属塩は、凝集反応の観点で、価数が2価以上、すなわち多価であることが必要であり、凝集反応性の観点で、3価以上の多価金属イオンからなる多価金属塩であることが好ましい。
【0079】
以上の観点から、本発明における処理液に用いることのできる多価金属塩は、以下に示す多価金属イオンと陰イオンとの塩、ポリ水酸化アルミニウムおよびポリ塩化アルミニウムのいずれか1種以上であることが好ましい。
【0080】
多価金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Sr2+、Zn2+、Ba2+、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、Fe2+、La3+、Nd3+、Y3+、およびZr4+などが挙げられる。これら多価金属イオンを処理液中に含有させるためには、前記多価金属の塩を用いればよい。
塩とは、上記のような多価金属イオンと、これらのイオンに結合する陰イオンとから構成される金属塩のことであるが、溶媒に可溶なものであることが好ましい。ここで、前記溶媒とは、多価金属塩とともに処理液を構成する媒質であり、例えば、水や後述する有機溶剤が挙げられる。
【0081】
前記多価金属イオンと塩を形成するための好ましい陰イオンとしては、例えば、Cl、NO、I、Br、ClO、CHCOO、SO2−などが挙げられる。
多価金属イオンと陰イオンとは、それぞれ単独種または複数種を用いて多価金属イオンと陰イオンとの塩を形成することができる。
【0082】
上記以外の多価金属塩としては、例えば、ポリ水酸化アルミニウムおよびポリ塩化アルミニウムなどが挙げられる。
【0083】
本発明においては、反応性や着色性、さらには取り扱いの容易さなどの点から、多価金属イオンと陰イオンとの塩を用いることが好ましく、多価金属イオンとしては、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Al3+およびY3+から選ばれる少なくとも1種が好ましく、さらには、Ca2+が好ましい。
また、陰イオンとしては、溶解性などの観点から、NOが特に好ましい。
前記多価金属塩は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0084】
前記多価金属塩の含有量は、前記処理液の全質量に対し、15質量%以上である。多価金属塩の含有量を15質量%以上とすることでより効果的にインク組成物中の成分を固定化することができる。
多価金属塩の含有量は、前記処理液の全質量に対し、15質量%〜35質量%であることが好ましい。
【0085】
多価金属塩の記録媒体への付与量としては、インク組成物を凝集させるに足る量であれば特に制限はないが、インク組成物を固定化し易いとの観点から、0.5g/m〜4.0g/mであることが好ましく、0.9g/m〜3.75g/mであることがより好ましい。
【0086】
−カチオン性ポリマー−
カチオン性ポリマーとしては、ポリ(ビニルピリジン)塩、ポリアルキルアミノエチルアクリレート、ポリアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリ(ビニルイミダゾール)、ポリエチレンイミン、ポリビグアニド、及びポリグアニドから選ばれる少なくとも1種のカチオン性ポリマーである。
カチオン性ポリマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記カチオン性ポリマーの中でも、凝集速度の観点で有利な、ポリグアニド(好ましくは、ポリ(ヘキサメチレングアニジン)アセテート、ポリモノグアニド、ポリメリックビグアニド)、ポリエチレンイミン、ポリ(ビニルピリジン)が好ましい。
【0087】
前記カチオン性ポリマーの重量平均分子量としては、処理液の粘度の観点では分子量が小さい方が好ましい。処理液をインクジェット方式で記録媒体に付与する場合には、500〜500,000の範囲が好ましく、700〜200,000の範囲がより好ましく、更に好ましくは1,000〜100,000の範囲である。重量平均分子量は、500以上であると凝集速度の観点で有利であり、500,000以下であると吐出信頼性の点で有利である。但し、処理液をインクジェット以外の方法で記録媒体に付与する場合には、この限りではない。
【0088】
前記処理液はカチオン性ポリマーを含むが、処理液のpH(25℃)は、1.0〜10.0であることが好ましく、2.0〜9.0であることがより好ましく、3.0〜7.0であることがさらに好ましい。
【0089】
カチオン性ポリマーの含有量は、前記処理液の全質量に対して、1質量%〜35質量%であることが好ましく、5質量%〜25質量%であることがより好ましい。
カチオン性ポリマーの塗工紙への付与量としては、インク組成物を安定化させるに足る量であれば特に制限はないが、インク組成物を固定化し易いとの観点から、0.5g/m〜4.0g/mであることが好ましく、0.9g/m〜3.75g/mであることがより好ましい。
【0090】
処理液の粘度としては、インク組成物の凝集速度の観点から、1〜30mPa・sの範囲が好ましく、1〜20mPa・sの範囲がより好ましく、2〜15mPa・sの範囲がさらに好ましく、2〜10mPa・sの範囲が特に好ましい。なお、粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて20℃の条件下で測定されるものである。
【0091】
また、処理液の表面張力としては、インク組成物の凝集速度の観点から、20〜60mN/mであることが好ましく、20〜45mN/mであることがより好ましく、25〜40mN/mであることがさらに好ましい。なお、表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用いて25℃の条件下で測定されるものである。
【実施例】
【0092】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0093】
なお、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定した。GPCは、HLC−8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ2000(いずれも東ソー(株)製の商品名)を用いて3本直列につなぎ、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。また、条件としては、試料濃度を0.45質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、RI検出器を用いて行なった。また、検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製した。酸価は、JIS規格(JIS K0070:1992)に記載の方法により求めた。
粒子の体積平均粒径は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)によって測定した。測定は、20質量%の粒子水分散物100μlに対してイオン交換水10mlを加えて測定用サンプル液を調製し、これを25℃に調温して行なった。
【0094】
<インク組成物の調製>
(シアンインクC1の組成)
下記の組成となるように、シアンインクC1を調製した。
・シアン顔料(ピグメント・ブルー15:3) : 4質量%
・アクリル系ポリマー分散剤
(酸価65.2mgKOH/g、重量平均分子量44600) : 2質量%
・アクリル系ポリマー粒子(重量平均分子量66000) : 4質量%
・サンニックスGP250 :10質量%
(三洋化成工業(株)製、水溶性有機溶剤)
・トリプロピレングリコールモノエチルエーテル :10質量%
(和光純薬工業(株)製、水溶性有機溶剤)
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製、界面活性剤) : 1質量%
・マイクロクリスタリンワックス : 2質量%
(日本精蝋(株)製HI−MIC1090)
上記成分にイオン交換水を加えて100質量%となるように調整した。
【0095】
アクリル系ポリマー分散剤は下記のスキームにしたがって合成した。
即ち、攪拌機、冷却管を備えた1000mlの三口フラスコにメチルエチルケトン88gを加え窒素雰囲気下で72℃に加熱し、ここにメチルエチルケトン50gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、ベンジルメタクリレート60g、メタクリル酸10g、メチルメタクリレート30gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後メチルエチルケトン2gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温し4時間加熱した。得られた反応溶液は大過剰量のヘキサンに2回再沈殿し、析出した樹脂を乾燥してアクリル系ポリマー分散剤を96g得た。
得られた樹脂の組成はH−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は44600であった。さらに、JIS規格(JISK0070:1992)記載の方法により、このアクリル系ポリマー分散剤の酸価を求めたところ、65.2mgKOH/gであった。
【0096】
アクリル系ポリマー粒子は下記スキームにしたがって合成した。
即ち、攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットルの三口フラスコで形成された反応容器に、メチルエチルケトン360.0gを仕込んで、75℃まで昇温した。
次に、反応容器内の温度を75℃に保ちながら、フェノキシエチルアクリレート180.0g、メチルメタクリレート162.0g、アクリル酸18.0g、メチルエチルケトン72g、及び「V−601」(和光純薬(株)製)1.44gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。
滴下完了後、「V−601」0.72g、メチルエチルケトン36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌後、さらに「V−601」0.72g、イソプロパノール36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌した後、85℃に昇温して、さらに2時間攪拌を続けた。
得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は66000であり、酸価は38.9(mgKOH/g)であった。重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出した。使用カラムはTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製)を用いた。
次に、共重合体の重合溶液668.3gを秤量し、イソプロパノール388.3g、1mol/L NaOH水溶液145.7mlを加え、反応容器内温度を80℃に昇温した。次に蒸留水720.1gを20ml/minの速度で滴下し、水分散化せしめた。その後、大気圧下にて反応容器内温度80℃で2時間、85℃で2時間、90℃で2時間保った後、反応容器内を減圧にし、イソプロパノール、メチルエチルケトン、蒸留水を合計で913.7g留去した。これにより、固形分濃度28.0%のアクリル系ポリマー粒子の水分散物(エマルジョン)を得た。
【0097】
(マゼンタインクM1の組成)
前記シアンインクC1の組成中のシアン顔料を、顔料の量が同量になるようにマゼンタ顔料(ピグメント・レッド122)に変更したこと以外は、シアンインクC1と同様の組成とした。
【0098】
(イエローインクY1の組成)
前記シアンインクC1の組成中のシアン顔料を、顔料の量が同量になるようにイエロー顔料(ピグメント・イエロー74)に変更したこと以外は、シアンインクC1と同様の組成とした。
【0099】
(ブラックインクK1の組成)
前記シアンインクC1の組成中のシアン顔料を、顔料の量が同量になるようにブラック顔料(カーボンブラック)に変更したこと以外は、シアンインクC1と同様の組成とした。
【0100】
<処理液の調製>
下記組成となるように各成分を混合し、処理液を調製した。
・マロン酸(2価のカルボン酸、和光純薬工業(株)製) 15.0質量%
・ジエチレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業(株)製) 20.0質量%
・N−オレオイル−N−メチルタウリンナトリウム(界面活性剤) 1.0質量%
・イオン交換水 64.0質量%
【0101】
処理液の物性値は、粘度2.6mPa・s、表面張力37.3mN/m、pH1.6であった。なお、表面張力の測定は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用いて、白金プレートを用いたウィルヘルミ法にて25℃の条件下で行なった。粘度の測定は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて30℃の条件下で行なった。pHは、東亜DKK(株)製のpHメータWM−50EGを用い、原液のまま25℃にて測定した。
【0102】
<実施例1>
(ポリマー含有組成物Aの調製)
攪拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下漏斗を備えたフラスコに、イオン交換水100mL及び過硫酸カリウム0.1gを入れ、窒素雰囲気下で攪拌しながら、前記フラスコ内の温度が70℃になるまで加熱した。また、別途、反応容器に、イオン交換水100mL、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0g、スチレン30g、2−エチルヘキシルアクリレート70g及びメタクリル酸5gを入れ、3時間攪拌して乳化物を調製した。その後、前記乳化物を、滴下漏斗を用いて前記フラスコ内に少しずつ滴下し、ポリマー含有組成物Aの原液を調製した。
前記ポリマー含有組成物Aの原液を、室温まで冷却した後、このポリマー含有組成物Aの原液を0.4μmのフィルターでろ過し、更に前記ポリマーの濃度が4%となるように蒸留水を加えてポリマー含有組成物Aを得た。ポリマー含有組成物Aのポリマーのガラス転移温度Tg(JIS K6900に従い測定)は−5℃であった。
【0103】
(粒子含有組成物Aの調製)
・イソプロピルアルコール 45.0質量%
・水 24.0質量%
・PMMA粒子(綜研化学(株)製、MX−3000、体積平均粒径30μm、Tg>140℃) 30.0質量%
・オルフィンE1010(三洋化成社製) 1.0質量%
上記組成の液1Lをシルバーソン製乳化装置で1000rpm、60分混合させ、粒子含有組成物Aを作成した。
【0104】
(画像記録及び評価)
以下に示すように、インクC1/M1/Y1/K1/粒子含有組成物A/ポリマー含有組成物Aを用いて画像の形成を行い、下記評価を行なった。評価結果は、下記表に示す。
【0105】
−画像形成−
GELJET GX5000プリンターヘッド(リコー社製のフルラインヘッド)を用意し、これに繋がる貯留タンクを上記で得たシアンインクC1、マゼンタインクM1、イエローインクY1、ブラックインクK1、ポリマー含有組成物Aに詰め替えた。記録媒体としてシルバーダイヤ(商品名、日本製紙(株)製)を、500mm/秒で所定の直線方向に移動可能なステージ上に固定し、これに上記で得た処理液をワイヤーバーコーターで約1.5μm(マロン酸0.34g/m相当)の厚みとなるように塗布し、塗布直後に50℃で2秒間乾燥させた。
その後、GELJET GX5000プリンターヘッド(リコー社製のフルラインヘッド)を、前記ステージの移動方向(副走査方向)と直交する方向に対して、ノズルが並ぶラインヘッドの方向(主走査方向)が75.7°傾斜するように固定配置し、記録媒体を副走査方向に定速移動させながらインク液滴量8.0pL、吐出周波数24kHz、解像度1200dpi×600dpiの吐出条件にてライン方式で吐出し、ベタ画像を印字して評価サンプルを得た。印字直後、70℃で7秒間乾燥させた。次に粒子含有組成物Aを0.2g/mとなるようにスプレーで全面に吹き付け、粒子含有組成物を付与した。
インク組成物、ポリマー含有組成物及び粒子含有組成物を付与した記録媒体を、60℃に加熱された一対のローラ間(加熱ローラ及び加圧ローラ)に記録媒体を通過させ、ニップ圧0.25MPa、ニップ幅4mmにて定着処理を実施し、ポリマー含有組成物中のポリマーを皮膜化して評価サンプルを得た。なお、加熱ローラ(定着ローラ)は、内部にハロゲンランプが内装されたSUS製の円筒体の芯金の表面がシリコーン樹脂で被覆されたものを使用した。
【0106】
−ブロッキング評価−
得られた印字物を二つ作成し、それら画像同士を合わせて、0.5cm×3cmの面積で100N、35℃の条件で1分間押さえつけた後、合わせた画像を剥がして、画像の様子を目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。
A:自然に剥がれ、互いの紙への色移りもみられなかった。
B:くっつきが生じ、互いの紙への色移りが多少みられた。
C:くっつきが強く、互いの紙へ多く色移りし、実用上問題があるレベル。
【0107】
−光沢評価−
得られた印字物の画像部を目視で観察し、各粒子分散液を吹き付ける前後でその光沢を下記評価基準に従って評価した。
A:粒子分散液塗布前後に大きな光沢変化がみられない。
B:粒子分散液塗布前後で僅かな光沢変化がみられるが、実用上問題ないレベル。
C:粒子分散液塗布前後で光沢変化がみられ、実用上問題があるレベル。
【0108】
−滲み評価−
得られた印字物に対して、顕微鏡で50倍に拡大して画像の滲みを観察し、下記評価基準に従って評価した。
A:印字面の画像の滲みは全く視認できなかった。
B:印字面の画像の滲みが、わずかに視認されたが、実用上問題ないレベル。
C:印字面の画像の滲みが視認でき、実用上問題があるレベル。
【0109】
−耐擦性評価−
得られた印字物に対して、3cm×1cm×5cm、200gの文鎮を用意して、マット紙シルバーダイヤを巻きつけ、前記文鎮の1cm×5cmの部分が接触するように、画像上に載せ、5往復擦った後、画像の様子を目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。
A:印字面の画像の削れは全く視認できなかった。
B:印字面の画像の削れが、わずかに視認されたが、実用上問題ないレベル。
C:印字面の画像の削れが視認でき、実用上問題があるレベル。
【0110】
<実施例2>
実施例1のポリマー含有組成物Aの代わりに、以下のポリマー含有組成物Bを使用する以外は、実施例1と同様に実施した。ポリマー含有組成物Bのポリマーのガラス転移温度Tg(JIS K6900に従い測定)は85℃であった。
(ポリマー含有組成物Bの調製)
・ポリビニルアルコール(「PVA117」、クラレ製) 2.0質量部
・オルフィンE1010(三洋化成社製) 1.0質量部
・グリセリン 5.0質量部
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル 4.0質量部
・イオン交換水 88.0質量部
上記組成となるように混合して調製した。
【0111】
<実施例3>
実施例1のポリマー含有組成物Aの代わりに、以下のポリマー含有組成物Cを使用する以外は、実施例1と同様に実施した。ポリマー含有組成物Cのポリマーのガラス転移温度Tg(JIS K6900に従い測定)は−44℃であった。
(ポリマー含有組成物Cの調製)
・Witcobond W-290H(Witco Chemical製、Tg−44℃) 5.0質量部
・オルフィンE1010(三洋化成社製) 1.0質量部
・グリセリン 5.0質量部
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル 4.0質量部
・イオン交換水 85.0質量部
上記組成となるように混合して調製した。
【0112】
<実施例4>
実施例1のポリマー含有組成物Aの代わりに、以下のポリマー含有組成物Dを使用する以外は、実施例1と同様に実施した。ポリマー含有組成物DのポリマーのTm(JIS K6900に従い測定)は57℃であった。
(ポリマー含有組成物Dの調製)
・ニューポールPE−108(三洋化成社製)(PEO-PPO-PEO) 2.0質量部
・オルフィンE1010(三洋化成社製) 1.0質量部
・IPA 10.0質量部
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル 4.0質量部
・イオン交換水 83.0質量部
上記組成となるように混合して調製した。
なお、PEOはポリエチレンオキシド、PPOはポリプロピレンオキシドを意味する。
【0113】
<実施例5>
実施例3の粒子含有組成物AにおけるPMMAの代わりに、SGP−70C(総研化学社製、ポリスチレン、体積平均粒径20μm、Tg>140℃)を使用した粒子含有組成物Bを用いる以外は、実施例3と同様に実施した。
【0114】
<実施例6>
実施例3のPMMAの代わりに、SUNSIL−150H−SC(SUNJIN CHEM.、シリカ、体積平均粒径15μm)を使用した粒子含有組成物Cを用いる以外は、実施例3と同様に実施した。
【0115】
<実施例7>
実施例3のPMMAの代わりに、YK−30(東洋紡、体積平均粒径33μm、ポリアクリロニトリル、Tg>140℃)を使用した粒子含有組成物Dを用いる以外は、実施例3と同様に実施した。
【0116】
<実施例8>
実施例3のPMMAの代わりに、AR650MX(製造元:東洋紡社製、体積平均粒径:40μm、成分:PMMA、Tg>140℃)を使用した粒子含有組成物Eを用いる以外は、実施例3と同様に実施した。
【0117】
<実施例9>
実施例3のPMMAの代わりに、SGP−150C(製造元:総研化学社製、体積平均粒径:55μm、成分:ポリスチレン、Tg>140℃)を使用した粒子含有組成物Fを用いる以外は、実施例3と同様に実施した。
【0118】
<実施例10>
実施例3のPMMAの代わりに、MR−60G(製造元:総研化学社製、体積平均粒径:60μm、成分:PMMA、Tg>140℃)を使用した粒子含有組成物Gを用いる以外は、実施例3と同様に実施した。
【0119】
<実施例11>
実施例3における粒子含有組成物の画像上への付与をスプレーではなく以下のように行う以外は、実施例3と同様に実施した。
粒子含有組成物Cを不織布に30g/mになるように含浸させ、ウェブAを作製した。
ウェブAを加熱ローラに接触するように設置し、60℃に加熱された一対のローラ間(加熱ローラ及び加圧ローラ)に記録媒体を通過させ、ニップ圧0.25MPa、ニップ幅4mmにて定着処理を実施し、評価サンプルを得た。
なお、加熱ローラ(定着ローラ)は、内部にハロゲンランプが内装されたSUS製の円筒体の芯金の表面がシリコーン樹脂で被覆されたものを使用した。
【0120】
<実施例12>
実施例3において、ポリマー含有組成物の付与を、粒子含有組成物を付与した後に行った以外は、実施例3と同様に行った。
【0121】
<比較例1>
実施例3において、ポリマー含有組成物Cを使用しない以外は、実施例3と同様に実施した。
【0122】
<比較例2>
実施例3において、粒子含有組成物Aを使用しない以外は、実施例3と同様に実施した。
【0123】
【表1】



【0124】
以上から、本発明によれば、画像の滲み、光沢変化を抑制しつつ、ブロッキングを改良できることがわかった。さらに、本発明は水溶性のインク組成物及び粒子含有組成物を用いるため、環境への負荷を低減することも可能となった。また、本発明における粒子含有組成物の画像上への付与を加熱ローラで行うことで、粒子付与工程と皮膜化工程を同時に実施することが可能となり、耐ブロッキング、画像の滲み、光沢変化をさらに改良できることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水及び顔料を含むインク組成物を用いてインクジェット法により記録媒体上に画像を記録する画像記録工程と、
水及び体積平均粒子径が15μm〜60μmである架橋有機粒子又は無機粒子を含む粒子含有組成物を前記画像上に付与する粒子付与工程と、
ポリマーを含むポリマー含有組成物を前記画像上に付与するポリマー付与工程と、
前記ポリマーを皮膜化する皮膜化工程と
を含む画像形成方法。
【請求項2】
前記粒子含有組成物における架橋有機粒子が、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル又はポリエチレンを含む粒子である、請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記粒子含有組成物における無機粒子がシリカ粒子である、請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記粒子含有組成物における架橋有機粒子または無機粒子の体積平均粒子径が20μm〜40μmである、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記ポリマーのガラス転移温度Tg、あるいは融点Tmの低い方が、−50℃〜90℃である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記粒子付与工程が、前記粒子含有組成物を加熱ローラ表面に供給し、前記加熱ローラを前記記録媒体に押圧する工程である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の画像形成方法。

【公開番号】特開2012−40817(P2012−40817A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185525(P2010−185525)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】